説明

ウシ乳汁成長因子

【課題】 従来技術関連の困難または欠陥の1つ以上を克服するか、少なくとも軽減する成長因子の提供。
【解決手段】 アミノ酸配列DGNSTRSPEDDGLLCGDHAENCPATTTQPKRRGHFSRCPKQYKHYCIKGRCRFVVAEQTPSCVCDEGYAGARCERVDLFYを含むウシ乳汁成長因子(BMGF)であるポリペプチド、またはその機能的に活性なフラグメントを含む単離されたポリペプチドであって、EGFレセプターに結合し、実質的または部分的に精製された形態であるポリペプチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウシ乳汁、乳製品または乳製品抽出物からの、新規の成長因子に関する。本発明は、上記成長因子の成熟型および前駆体型をコードする核酸を単離、クローニングおよび配列決定するための組換え型DNA技術の使用、ならびに、上記成長因子の組換え製造におけるこれらの核酸の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
成長因子は、細胞送達、成長および発育、アポトーシス、胚形成、免疫応答の開始、細胞の生存および分化、創傷治癒、および癌等の、広範囲の生理学的経過および病理学的経過に関与している。治療に使用される可能性があるため、当然のこととして、正常な成長調節を推進する基本的なメカニズムを理解するためばかりでなく、成長因子の単離、特性化、および成長因子の機能的メカニズムの明確化に大いなる関心がよせられている。
【0003】
成長因子はバイオテクノロジー産業において、培養中の細胞の成長に使用される規定された培地の必須成分も含む。長年にわたって、細胞成長に必須の成分を培地に補足するために動物の血清が使用されてきた。ウシ胎仔血清(FBS)が最もよく使用されるが、製薬工程における動物を供与源とするタンパク質およびヒトを供与源とするタンパク質の安全性に関する市場および規制の問題がある。
【0004】
乳汁を主成分とする血清代替品を使用してかなりの進歩を遂げたにも関わらず、細胞培養培地の補足物としてのウシ体液を取り巻く安全性の問題(潜伏病原体に感染する可能性の結果として(たとえば、ウシ海綿状脳症(BSE))は、これらが安全ではないと考えられることを意味する。したがって、既知の供与源で且つ規定された純度の成長因子を含む完全に規定された細胞培養培地の開発に注意が集中した。これは、精製された天然分子または組換え分子により、細胞培養培地の成長因子成分が提供されることを意味する。
【0005】
乳汁は、乳幼児の成長および発育に必要な、重要な栄養物である。乳汁は、カゼイン、ラクトフェリン、ラクトアルブミン、ラクトース、およびビタミン類、イオン、酵素等の、様々な他の成分等の栄養源である。多数の成長因子が、ヒトおよびウシの乳汁で同定されている。この中には、インシュリン様成長因子IおよびII、線維芽細胞成長因子、トランスフォーミング成長因子β、および血小板由来成長因子などが含まれる。ヒト乳汁中に表皮成長因子が存在するが、ウシ乳汁では、納得できるほど証明されていない(Iacopetta et al., Acta Paediatr, 81, 287, (1992))。乳腺の発生および分化(Collier et al, Livestock Production Science,35,21,(1993))、発育中の新生児免疫系の調節(Ishizaka et al. Cellular Immunol, 159, 77, (1994))、胃腸の成長および成熟(Read et al, Pediatric Research, 18, 133, (1984))、および他の器官における可能な作用を含め、幾つかの役割が、乳汁由来成長因子について提案されている。乳汁由来成長因子は、培養中の様々な細胞の成長を支持することも証明されている。さらに、チーズ製造の副生成物であるウシ乳汁の乳清は、哺乳類細胞の成長を短期的にまたは長期的に支持することもでき(Derouiche et al, Lait, 70, 313, (1990); Damerdji et al., Biotechnology Tech,2,253, (1988))、抗腫瘍活性を有することも証明されている(Bounous et al, Clin. Invest. Med. 11, 312, (1988))。従来技術としては、哺乳類細胞培養における血清の代替品としての、複数の細胞成長刺激因子を含有するウシ乳汁乳清抽出物の使用について記述している、本出願者に付与されたオーストラリア特許第645589号が挙げられる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、従来技術関連の困難または欠陥の1つ以上を克服すること、少なくとも軽減することである。
【0007】
したがって、本発明の第1の態様において、ウシ乳汁、乳製品または乳製品抽出物から得られる新規の成長因子(以後、ウシ乳汁成長因子(BMGF)と呼ぶ)が提供される。本明細書で使用する用語「乳汁」は、ヒトまたは動物を供与源とする必乳期分泌物を指す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】オーストラリア特許AU645589号に従って調製されたウシのチーズ乳清抽出物(GFE−2)を、酸性化および限外濾過ならびに一連のクロマトグラフィーステップに供した。この図は、おのおののクロマトグラフィーステップにおける、タンパク質の溶出プロファイルとEGF−受容体結合アッセイの活性を示す。
【図2】図2は、BMGFのSDS−PAGEを示す図である。還元(R)条件または非還元(N)条件下、8〜25%成形済phastゲルを用いたPharmacia Phastsystemで、BMGFの精製調製物を分析し、次いで、銀染色により可視化した。各図の左の数字は、サイズ標準の移動位置を表す(94kDa、ホスホリラーゼb、67kDa、アルブミン、43kDa、オボアルブミン、30kDa、カルボニックアンヒドラーゼ、20.1kDa、トリプシンインヒビター、14.4kDa、α−ラクトアルブミン)。
【図3】図3は、BMGFのアミノ酸配列決定を示す図である。Xは、アミノ末端配列決定で同定されなかったアミノ酸を示す。
【図4】図4は、BMGFの脱グリコシル化を示す図である。NANaseII、O−グリコシダーゼDSおよびPNGaseFの存在下および非存在下で、精製されたBMGFをインキュベートし、10〜20%のTricineゲルを用いたSDS−PAGEで分析した。(詳細については、実施例3参照)。
【図5】図5は、BMGFのヌクレオチド配列および推定されるアミノ酸配列を示す図である。
【図6】図6は、pGH(1-46)-Met-BMGF発現ベクターの構築を示す図である。矢印は、オーセンティックBMGFを生成するための臭化シアン切断の部位を示す。
【図7】図7は、精製された組換え型オーセンティックBMGF(A)および組換え型pGH(1-46)-Met BMGF融合タンパク質(B)のC4逆相HPLCを示す図である。挿入図は還元条件(R)および非還元条件(N)における、精製された調製物のSDS−PAGE分析である。
【図8】図8は、様々な培養細胞系の増殖に及ぼすBMGFの影響を示す図である。細胞増殖を、BMGFの濃度上昇に対する応答として表し、BMGFの非存在下でインキュベートした細胞を上回るパーセント上昇として示す。50ng/mlの濃度のインシュリン様成長因子1類似体(LR3IGF−1)の存在下および非存在下で、BMGFの濃度を上昇させながら、Balb/c 3T3細胞およびIEC−6細胞をインキュベートした。
【図9】図9は、BMGF(500μg/kg/日)または媒体(0.1Mの酢酸)を7日間注入した後の、Sprague-Dawleyラットの、総体重に対する消化管の重量(g/kg)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
BMGFは、実質的に純粋な形であってもよく、部分的に純粋な形であってもよい。「実質的に純粋」という用語は、ここでは少なくとも約70%純粋であるBMGFの純度を述べるのに用いる。
【0010】
「部分的に純粋」という用語は、ここでは、タンパク質1mgあたり0.3ユニット以上の特定の活性を有するBMGFの純度を述べるのに用いる。
【0011】
ここで、BMGF活性の測定単位として用いられた「1ユニット」という用語は、明細書の実施例1で述べたアッセイ条件下において、125Iで標識した組換え型ヒト表皮成長因子が、AG2408細胞への結合の50%と競合するのに必要なBMGFの総量によって定義される。
【0012】
天然のグリコシル化型のBMGFは、SDS−PAGEで測定したとき、約21〜25kDaの分子量を有していてもよい。BMGFは、線維芽細胞または上皮細胞、またはそれらの両方の増殖を刺激する能力を有する。
【0013】
本発明のこの態様の好ましい形態では、BMGFは、下記のようなアミノ酸配列を有してもよい。DGNSTRSPEDDGLLCGDHAENCPATTTQPKRRGHFSRCPKQYKHYCIKGRCRFVVAEQTPSCVCDEGYAGARCERVDLFY
【0014】
本明細書で開示されるBMGFは成長因子の表皮成長因子群のひとつである。BMGFは80個のアミノ酸残基および8個のハーフシステイン、マウスの膵臓のβ腫瘍細胞の規定された培地から精製された表皮細胞様分子にも述べられているパターン(Shing et al, Science, 259, 1604, (1993))を含む。ヒト型のこの成長因子のアミノ酸配列はベータセルリンとよばれ、ヒト腺癌細胞系統から得られた核酸配列からも導き出される(Sasada et al, Biochem. Biophys. Res. Commun. 190, 1173, (1993))。BMGFとマウスベータセルリン(58の同一の残基を有する)とヒトベータセルリン(72の同一の残基を有する)の間の配列相同性に基づくと、BMGFはベータセルリンのウシ型であろう。明らかに、それは同じ分子でない。ウシのチーズ乳清抽出物から単離されたBMGFは21〜25kDaの分子量を有し、これは天然のマウスベータセルリンにおいて報告されている分子量32kDaよりも実質的に小さいサイズである。
【0015】
本発明は、BMGFの前駆体型およびBMGFの機能的に活性なフラグメント(ペプチド)も、その範囲内に含む。このようなフラグメントは、増強または縮小された成長刺激活性を有する可能性、またはBMGFの刺激活性に応答する細胞の範囲を拡大または制限する可能性、あるいはそれらの両方の可能性がある。それらは、消化管損傷の予防もしくは修復、または創傷治癒等の領域で有用な可能性があるが、その限りではない。
【0016】
当業者に周知の方法によって、これらを生成することができる。位置指定突然変異誘発等の(しかし、それに限定されない)遺伝子レベルでの方法、または化
学的修飾等の(しかし、それに限定されない)タンパク質レベルでの方法は、本発明の範囲内である。
【0017】
本発明のこの態様の好ましい形態では、BMGFのフラグメントは、下記のアミノ酸配列 DGNSTRSPEDDGLLCGDHAENCPATTTQPKRRGHF、または GYAGARCERVDLFY、または DGNSTRSPEDDGLLCGDHAENCPATTTQPK、または RRGHFSRCPK、または QYK、または HYCIK、または GRCRFVVAEQTPSCVCDEGYAGARCERVDLFYを含んでもよい。
【0018】
本発明は、実質的にグリコシル化されていないBMGFも提供する。たとえば、グリコシル化されたBMGFを酵素的に脱グリコシル化ステップに供し、脱グリコシル化型を回収することによって、これを調製することができる。非グリコシル化型または部分的に非グリコシル化型のBMGFは、SDS−PAGEで測定したとき、約9〜14kDaの分子量を有してもよい。
【0019】
本発明のこの態様のさらなる好ましい形態では、BMGFは、ウシ乳汁、ウシ乳汁製品またはウシ乳汁製品抽出物から得られる。さらに好ましくは、BMGFは、チーズ乳清から得られ、最も好ましくは、ウシのチーズ乳清抽出物から得られる。
【0020】
本発明のさらなる態様において、実質的に純粋な形または部分的に純粋な形で、BMGFを、ウシ乳汁または乳製品から単離する方法が提供される。好ましくは、BMGFは、ウシ乳汁またはウシ乳汁製品から単離される。さらに好ましくは、BMGFは、チーズ乳清またはチーズ乳清抽出物から単離され、最も好ましくは、ウシのチーズ乳清またはウシのチーズ乳清抽出物から単離される。グリコシル化型のBMGFは、SDS−PAGEで測定したとき、約21〜25kDaの分子量を有していてもよい。BMGFは、線維芽細胞および/または上皮細胞、および/または骨芽細胞の増殖を刺激する能力を有してもよい。
【0021】
本発明のこの態様の好ましい形態では、BMGFは下記のようなアミノ酸配列を有してもよい。
DGNSTRSPEDDGLLCGDHAENCPATTTQPKRRGHFSRCPKQYKHYCIKGRCRFVVAEQTPSCVCDEGYAGARCERVDLFY
【0022】
本発明のこの態様において、実質的に純粋なBMGFを単離する方法は、乳汁または乳製品または乳製品抽出物を、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーおよび逆相高速液体クロマトグラフィー等の様々なクロマトグラフィー方法または、必要に応じてさらなる精製工程、あるいはそれらの両方に供することを含む。「乳製品」は、チーズ乳清、スキムミルク、酸(カゼイン)、乳清および初乳を含んでもよい。上に略述したクロマトグラフィー工程の前に、乳汁または乳製品をAU645589号に略述されている工程に供し、乳製品抽出物を得ることが好ましい。AU645589号を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。本明細書では、「乳製品抽出物」を、オーストラリア特許AU645589号に記載の方法によって、乳汁または乳製品から調製された抽出物と定義する。明確にするために、乳製品抽出物の定義は、チーズ乳清抽出物を含む。
【0023】
各精製ステップから回収され、且つ適当なアッセイ、たとえば、AG2804細胞を使用した放射性受容体アッセイ、または、たとえば、Balb/c 3T3細胞を使用した細胞成長アッセイで生物学的活性を示す試料分画をプールし、次の精製ステップに進めることができる。プールされた分画のそれぞれからの試料を、用量応答分析(a dose response analysis)に供し、それによって、前述のアッセイにおける最大活性の50%応答を引き出すのに必要な物質の量を推定することができる。この量を「1ユニット」と定義し、この値を、各プール内の物質の量に関する値と共に利用して、精製収率、および本方法の各ステップにおける比活性を算出することができる。実質的に純粋なBMGFの等質性は、SDS−PAGEの結果、約21〜25kDaの1つのバンドとしての泳動N末端配列分析、質量分析法、またはEGF受容体への特異的結合、あるいはそれらを組み合わせた方法により、実証することができる。
【0024】
本発明のこの態様の好ましい形態において、実質的に純粋なBMGFを単離する方法であって、ウシ乳汁、乳製品または乳製品抽出物を提供するステップと、ウシ乳汁、乳製品または乳製品抽出物を限外濾過に供して第1分画を得るステップと、上記第1分画を陰イオン交換クロマトグラフィーに供して第2分画を得るステップと、上記第2分画をゲル濾過クロマトグラフィーに供して第3分画を得るステップと、上記第3分画を逆相高速液体クロマトグラフィー((RP)HPLC)に供して第4分画を得るステップと、上記第4分画をアフィニティクロマトグラフィーに供して第5分画を得るステップと、上記第5分画を(RP)HPLCに供して第6分画を得るステップと、上記第6分画を(RP)HPLCに供して実質的に純粋なBMGFを得るステップとを含む方法が提供される。
【0025】
本発明のこの態様のさらなる好ましい形態において、実質的に純粋なBMGFを単離する方法であって、AU645589号に従って調製された乳製品抽出物を提供するステップと、上記乳製品抽出物を酸性化に供するステップと、上記酸性化された乳製品抽出物を限外濾過に供して第1分画を得るステップと、上記第1分画を陰イオン交換クロマトグラフィーに供して第2分画を得るステップと、上記第2分画をゲル濾過クロマトグラフィーに供して第3分画を得るステップと、上記第3分画を逆相高速液体クロマトグラフィー((RP)HPLC)に供して第4分画を得るステップと、上記第4分画をアフィニティクロマトグラフィーに供して第5分画を得るステップと、上記第5分画を(RP)HPLCに供して第6分画を得るステップと、上記第6分画を(RP)HPLCに供して実質的に純粋なBMGFを得るステップとを含む方法が提供される。
【0026】
上記乳汁、乳製品または乳製品抽出物を、さらに、酸性化ステップに供することが好ましい。この酸性化ステップは、限外濾過の前に実施することが好ましい。さらに好ましくは、酸性化はpH2.5で実施する。
【0027】
上記限外濾過は、好ましくは約50〜150kDa、さらに好ましくは、約100kDaの排除限界を有する膜を使用して実施する。
【0028】
上記陰イオン交換クロマトグラフィーは、アガロースを主成分とする陰イオン交換カラムを使用して実施することが好ましい。
【0029】
上記限外濾過は、約3kDa〜70kDaの範囲の分子量を有するタンパク質を分離するカラムを使用して実施することが好ましい。
【0030】
上記第1回(RP)HPLCは、C4マトリックスまたはC18マトリックスを使用して実施することが好ましい。
【0031】
上記アフィニティクロマトグラフィーは、ヘパリン/アガロースを主成分とするアフィニティカラムを使用して実施することが好ましい。
【0032】
上記第2回(RP)HPLCは、C4マトリックスまたはC18マトリックスを使用して実施することが好ましい。
【0033】
上記第3回(RP)HPLCは、C4マトリックスまたはC18マトリックスを使用して実施することが好ましい。
【0034】
出発物質として、AU645589号に従って調製された乳製品抽出物を製造する代わりに、ウシ乳汁または乳製品を使用することが可能である。この方法を選択する場合、陰イオン交換クロマトグラフィーステップの前に、予備的精製ステップを使用して、脂肪、固形分および酸性タンパク質を除去することが可能である。
【0035】
実質的に精製されたBMGFを、BMGFを認識するかまたはBMGFを結合する、あるいはその両方の働きをするポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の産生に使用することが可能であり、これは本発明の範囲内にあると考えられる。
【0036】
したがって、本発明のさらなる態様において、BMGFに対するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体が提供される。
【0037】
BMGFのエピトープに対する抗体の産生に使用することが可能な様々な方法が、当技術分野で知られている。ウサギ、マウス、ヤギ等を含むが、それに限定されない様々な宿主動物を、BMGFタンパク質で免疫化した後、これらのBMGF抗体の産生に使用することが可能である。宿主に応じて、免疫学的応答を高めるためにアジュバントを使用することが可能であり、その例として、フロイント(Freunds)(完全および不完全)が挙げられるが、その限りではない。in vitroで、細胞系による抗体分子の連続産生を可能にする技術を使用することにより、モノクローナル抗体を調製することが可能である。これらの技術としては、ハイブリドーマ技術(Kohler and Milstein, Nature 256,495 (1975))が挙げられるが、その限りではない。BMGFに対する抗体を、たとえば、成長因子に関するスクリーニングアッセイ、およびBMGFタンパク質のアフィニティ精製で、様々な組織、体液および細胞系におけるBMGFの成熟型および前駆体型の検出に使用することができる。
【0038】
本発明のさらなる態様において、BMGFまたはBMGFの機能的に活性なフラグメントをコードするそのフラグメントを提供する。この核酸はBMGFの成熟型をコードしてもよく、または前駆体型をコードしてもよい。
【0039】
好ましくは、上記核酸は、図5に示す配列を有する。
【0040】
遺伝暗号が縮重しているため、それをコードする他の核酸配列または機能的に等価のアミノ酸配列は、本発明の範囲内に含まれる。BMGFヌクレオチド配列のこのような交替は、結果として同じ遺伝子産物または機能的に等価の遺伝子産物を生じる異なるヌクレオチドの置換を含んでもよい。欠失および/または付加を有し、且つ結果として機能的に等価の遺伝子産物を生じる核酸配列も、本発明の範囲内に含まれる。さらに、この遺伝子産物は、機能的に活性な生成物を依然として産生する配列内のアミノ酸残基の欠失、付加または置換を含んでもよい。
【0041】
本発明のさらなる態様において、BMGFまたはBMGFの機能的に活性なフラグメントをコードするそのフラグメントを単離する方法を提供する。この核酸は、BMGFの成熟型をコードしてもよく、または前駆体型をコードしてもよい。
【0042】
BMGFをコードする核酸は、BMGF活性を産生する細胞源から得ることが可能である。たとえば、核酸源として腎細胞を使用してもよい。BMGFをコードする核酸は、BMGFのmRNAを相補的cDNAに逆転写し、次に、成熟タンパク質または前駆体タンパク質の一部、好ましくはN末端部分およびC末端部分をコードする核酸配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって得ることが好ましい。好ましくは、上記オリゴヌクレオチドプライマーは、下記の配列
5' ATC TAG GTT ACC ATG GAT GGG AAT TCA ACC AGA 3' 5' ATC TAG GTT ACC GGC GAT GGG AAT TCA ACC AGA 3' 5' CTA GAT AAG CTT TCA TCA GTA AAA CAA GTC AAC TCT 3'またはこれらと実質的に相同の配列を有する。
【0043】
上記オリゴヌクレオチドプライマーは、核酸の指向性のクローニングを容易にするために、制限酵素部位を含むことが好ましい。
【0044】
さらに好ましくは、上記プライマーは下記のヌクレオチド配列を含む。 5' GGG AAT TCA ACC AGA 3' 5' GTA AAA CAA GTC AAC TCT 3'
【0045】
最も好ましくは、上記プライマーは、 5' GGG AAT TCA ACC AGA AGT CCT GAA 3' 5' GTA AAA CAA GTC AAC TCT CTC ACA CCT 3'である。
【0046】
したがって、本発明のこの態様の好ましい形態において、BMGF、またはBMGFの機能的に活性なフラグメントをコードするそのフラグメントを単離する方法であって、BMGF活性を有する細胞供与源を提供するステップと、この細胞を処理して、それからmRNAを得るステップと、このようにして得られたmRNAを処理して、それからcDNAを生成するステップと、このようにして得られたcDNAを、オリゴヌクレオチドプライマーを使用したPCRによって増幅して、核酸を生成するステップとを含む方法を提供する。
【0047】
存在するタンパク質をコードする核酸を得るための、当業者に周知の他の方法および、BMGFの成熟型または前駆型をコードする核酸を得るためのこれらの方法の使用も本発明の範囲に含まれる。これらの方法は、BMGFの成熟型および/または前駆体型の核酸配列またはアミノ酸配列の知見から核酸を化学的に合成するか、あるいは、BMGFの成熟型または前駆体型、あるいはそれらの両方の一部もしくは全部をコードするヌクレオチド配列に相同の同位元素標識核酸配列または非同位元素標識核酸配列を用いて、cDNAまたはゲノムライブラリー、あるいはそれらの両方をスクリーニングするか、好ましくは、ウシライブラリーをスクリーニングするかの、いずれかを含む(が、これに限定されない)。
【0048】
当業者に周知の、組換えDNAテクノロジーの標準技術を使用して、BMGFの成熟型または前駆体型をコードする核酸を適当なベクター、たとえば発現ベク
ターにクローニングすることができる。
【0049】
したがって本発明のさらなる態様において、BMGFをコードする核酸、またはBMGFの機能的に活性なフラグメントをコードする核酸を含むベクターが提供される。
【0050】
この核酸はBMGFの成熟型をコードしてもよく、または前駆体型をコードしてもよい。
【0051】
上記核酸はウシBMGFをコードすることが好ましい。さらに好ましくは、この核酸は図5に示す配列を有する。
【0052】
多数のベクター宿主系が利用可能であり、その例としてpBR322またはpUC誘導体等のプラスミド、あるいはλ誘導体等のバクテリオファージが挙げられる(が、これに限定されない)。
【0053】
本発明のベクターを使用して、宿主細胞において組換え型BMGFを発現させることが可能である。
【0054】
したがって本発明のさらなる態様において、組換え型BMGFが提供される。
【0055】
組換え型BMGFは実質的に純粋な形であってもよく、部分的に純粋な形であってもよい。組換え型BMGFは、好ましくは少なくとも約70%純粋であり、さらに好ましくは少なくとも約90%純粋であり、最も好ましくは少なくとも約99%純粋である。この組換え型BMGFは、SDS−PAGEで測定したとき、非グリコシル化で約9kDaの分子量を有してもよい。この組換え型BMGFは、線維芽細胞および/または上皮細胞、および/または骨芽細胞の増殖を刺激する能力を有してもよい。
【0056】
本発明のこの態様の好ましい形態において、上記組換え型BMGFは、下記のようなアミノ酸配列を有してもよい。
DGNSTRSPEDDGLLCGDHAENCPATTTQPKRRGHFSRCPKQYKHYCIKGRCRFVVAEQTPSCVCDEGYAGARCERVDLFY
【0057】
本発明は、組換え型BMGFの前駆体型および組換え型BMGFの機能的に活性なフラグメント(ペプチド)も、その範囲内に含む。
【0058】
本発明のこの態様の好ましい形態において、BMGFの上記フラグメントは、下記のアミノ酸配列 DGNSTRSPEDDGLLCGDHAENCPATTTQPKRRGHF、または GYAGARCERVDLFY、または DGNSTRSPEDDGLLCGDHAENCPATTTQPK、または RRGHFSRCPK、または QYK、または HYCIK、または GRCRFVVAEQTPSCVCDEGYAGARCERVDLFY、またはこれに実質的に相同の配列を含んでもよい。
【0059】
本発明は、組換え型BMGFを産生する方法であって、BMGF、ならびにBMGFの機能的に活性なフラグメントをコードするそのフラグメントを含むベクター、および宿主細胞を提供するステップと、上記ベクターを上記宿主細胞に導入するステップと、上記組換え型BMGFを発現させるステップと、上記組換え型BMGFを単離するステップとを含む方法も提供する。
【0060】
上記ベクターを、形質転換、形質導入、高電圧パルス法および感染等(これに限定されない)の方法によって、宿主細胞に導入することが可能である。宿主細胞としては、E. coli細胞等の細菌が挙げられるが、これに限定されない。
【0061】
この組換え型BMGFを、融合タンパク質として発現させることが可能である。本発明のこの態様に従って形成される融合タンパク質は、宿主細胞内の封入体として単離することが可能である。
【0062】
このようにして形成された組換え型BMGFを、好ましくは宿主細胞の破壊後に、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィーおよび/または、必要に応じてさらなる精製工程等の技術を使用した、当業者に周知の従来のポリペプチド精製方法によって単離できることは理解されるであろう。この組換え型BMGFは、当業者に周知の従来の方法を使用して融合タンパク質として単離することもでき、その融合パートナーから切断することもできる。
【0063】
本発明のこの態様の好ましい形態において、本出願者に付与されたオーストラリア特許第633099号(その全開示内容を引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に従って、ブタ成長ホルモンの一部が任意に切断可能な配列を介して、BMGFのN末端配列に連結された融合タンパク質として、上記組換え型BMGFを調製することが可能である。
【0064】
天然由来の成熟型または前駆体型のBMGF、およびその融合パートナーを含むまたは含まない成熟型または前駆体型のいずれかとして単離される組換え型BMGFタンパク質を含む本発明のBMGF(およびその突然変異体、類似体、フラグメントおよび誘導体)を、単独でまたは他の因子(たとえば、IGF−1またはIGF−1類似体(これに限定されない))と組み合せて、あるいは、たとえば、胎仔血清の補足物として、in vitroにおける、哺乳類細胞あるいはより組織化された構造、たとえば、皮膚の成長または増殖あるいはそれらの両方に、単独でまたは他の因子と組み合せて、創傷治癒または組織修復、あるいはそれらの両方の増進、たとえば、表面創傷の治療に、単独でまたは他の因子と組み合せて、炎症性腸疾患および粘膜免疫性等の、消化管バリア機能障害関連の病気の予防、緩和または治療に、乳児用調合乳の補足物として、歯周病の予防、治療または
緩和に、美容上の用途に使用することが可能である。
【0065】
したがって本発明は、哺乳類の細胞および組織の成長または増殖、あるいはそれらの両方を促進するための組成物であって、培地、好ましくは規定された培地と共に、BMGF、あるいはBMGFの突然変異体、類似体および誘導体、BMGFの前駆体型および融合タンパク質型ならびにBMGFの機能的に活性なフラグメント(ペプチド)の有効量を含有する組成物を提供する。
【0066】
本発明は、哺乳類の細胞および組織の成長または増殖、あるいはそれらの両方を促進するための方法であって、BMGF、あるいはBMGFの突然変異体、類似体および誘導体、BMGFの前駆体型および融合タンパク質型ならびにBMGFの機能的に活性なフラグメント(ペプチド)の有効量を含有する培地中で、上記細胞または組織を成長させることを含む方法も提供する。
【0067】
「有効量」という言葉は、ここでは統計上有意な反応を95%信用できるレベルで誘発するのに十分な量を意味するBMGFを用いる方法において用いられる(p<0.05となるのは、その効果が偶然のみによる場合である)。
【0068】
本発明のさらなる態様において、哺乳類の細胞および組織の成長または増殖、あるいはそれらの両方を促進するための方法であって、相乗的に応答をするIGFの有効量とともに、BMGF、あるいはBMGFの突然変異体、類似体および誘導体、BMGFの前駆体型および融合タンパク質型ならびにBMGFの機能的に活性なフラグメント(ペプチド)の有効量を含有する培地中で、上記細胞または組織を成長させることを含む方法も提供する。
【0069】
本発明のさらなる様態において培地に含まれるIGFまたはインシュリン様成長因子は、IGF−1、IGF−2または、本出願者に付与されたオーストラリア特許第633099号に述べられているLR3IGF−1のような機能的に活性なIGFの突然変異体、または類似体であってもよい。
【0070】
本発明のさらなる態様において、表面創傷を治療するための組成物であって、薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤または担体と共に、BMGF、あるいはBMGFの突然変異体、類似体および誘導体、BMGFの前駆体型および融合タンパク質型ならびにBMGFの機能的に活性なフラグメント(ペプチド)の有効量を含有する組成物が提供される。
【0071】
本発明は、創傷治癒または組織修復、あるいはそれらの両方を増進するための方法であって、BMGF、あるいはBMGFの突然変異体、類似体および誘導体、BMGFの前駆体型および融合タンパク質型ならびにBMGFの機能的に活性なフラグメント(ペプチド)の有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む方法も提供する。
【0072】
治療することが可能な創傷のタイプに制限はなく、この例としては、表面潰瘍(たとえば、圧迫性潰瘍、静脈鬱滞性潰瘍、糖尿病性潰瘍および粥腫性潰瘍)、火傷または偶発性創傷(裂傷および切り傷等)ならびに胃および腸(大腸および小腸)等の上皮で覆われた器官に対する創傷、ならびに目の角膜損傷等が挙げられる(が、それに限定されない)。創傷部位へのBMGFの適用は、粉末、ゲル、軟膏または包帯の形であってもよく、BMGFを組み込んだ他の創傷用包帯であってもよい。BMGFは、単独または他の成長因子を含む混合物のいずれで創傷に塗布してもよく、他の成分、たとえば、アジュバント、担体および可溶化剤と併用してもよい。組成物中のBMGFの濃度は重要ではないが、細胞増殖、特に上皮細胞増殖を惹起するのに十分でなければならない。
【0073】
消化管は腸内腔に存在する潜在的に有害な物質により絶えず攻撃されているため、その後の正常な粘膜バリアのメンテナンスが、成人および乳幼児の生命に極めて重大である。バリア機能は、たとえば高投与量化学療法、感染および外傷の間に起こるような上皮表面への損傷によって損なわれる可能性がある。さらに、通常の抗原および管腔の抗原に感作した後に発生する炎症誘発性応答は、上皮損傷および高い浸透性につながる。この免疫機能保全は、脂肪便症および炎症性腸疾患を含む疾患の病因において重要な役割を果たすと考えられる。BMGFの上皮細胞刺激活性を考えると、本発明のさらなる用途は、単独で、または、他の成長因子と組み合せのいずれかで、好ましくは溶腸性製剤として炎症性腸疾患および粘膜免疫性等の消化管機能障害関連の病気を治療、緩和または予防することである。
【0074】
したがって本発明のさらなる態様において、消化管機能障害関連の病気を治療、緩和または予防するための組成物であって、薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤または担体と共に、BMGF、あるいはBMGFの突然変異体、類似体および誘導体、BMGFの前駆体型および融合タンパク質型ならびにBMGFの機能的に活性なフラグメント(ペプチド)の有効量を含有する組成物が提供される。
【0075】
本発明は、消化管機能障害関連の病気を予防、緩和または治療するための方法であって、BMGF、あるいはBMGFの突然変異体、類似体および誘導体、BMGFの前駆体型および融合タンパク質型ならびにBMGFの機能的に活性なフラグメント(ペプチド)の有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む方法も提供する。
【0076】
本発明は、歯周病を予防または治療するための方法であって、BMGF、あるいはBMGFの突然変異体、類似体および誘導体、BMGFの前駆体型および融合タンパク質型ならびにBMGFの機能的に活性なフラグメント(ペプチド)の有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む方法も提供する。
【0077】
美容上の用途におけるBMGFの使用であって、BMGF、あるいはBMGFの突然変異体、類似体および誘導体、BMGFの前駆体型および融合タンパク質型ならびにBMGFの機能的に活性なフラグメント(ペプチド)の有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む使用も提供する。
【0078】
本発明は、栄養成分と共に、BMGF、あるいはBMGFの突然変異体、類似体および誘導体、BMGFの前駆体型および融合タンパク質型ならびにBMGFの機能的に活性なフラグメント(ペプチド)を含む、乳児用調合物も提供する。
好ましくは、この乳児用調合物は調合乳である。
【0079】
本明細書の説明および請求項を通して、語「含む(comprise)」およびその語の変形、たとえば「含んでいる(comprising)」や「含む(comprises)」は、他の添加物、成分、整数またはステップを排除するものではない。
【0080】
次に、添付の実施例および図面を参照しながら、本発明をさらに完全に説明する。しかし、以下の説明は例示に過ぎず、いかなる形でも、上記の本発明の一般性に対する制限としてとらえてはならないことを理解すべきである。
【実施例】
【0081】
[実施例1 ウシのチーズ乳清抽出物からのBMGFの単離]
[ステップ1 限外濾過サイズ排除]
6Lのウシのチーズ乳清抽出物(AU645589号に略述されているものに従って調製されたGFE−2)(タンパク質濃度=40mg/ml)を、HClでpH2.5に酸性化し、次いで、Sartorius Sarton II クロスフロー(crossflow)濾過ユニット(Sartorius社製, Gottingen, Germany)に取り付けられた100kDaのポリスルホネート排除膜を通過させてマイクロフィルトレーションした。このステップで得られた透過物を、0.1μmの中空線維カートリッジを備えたAmicon DC-10限外濾過ユニット(Amicon社製, Danvers, MA)を使用して、ダイアフィルトレーションし、次いで、同じユニットを使用して、3kDaの三酢酸セルロース膜を通過させて約1.8Lに濃縮した。
【0082】
[ステップ2 陰イオン交換クロマトグラフィー]
脱塩して濃縮した透過物を、固体Tris Baseで20mMのTris−HCl(pH7.5)とし、5MのHClでpHを7.5に調整し、1μmの膜を通過させて濾過し、FPLCシステム(Pharmacia社製, Sweden)に取り付けられたQ−セファロースカラム(5×15cm、Pharmacia社製, Sweden)に、流速5ml/分で適用した。次いで、このカラムを20mMのTris−HClで洗浄し、カラムに結合したままのタンパク質(BMGFを含む)を、20mMのTris−HClに溶解した0〜0.6MのNaClの線形塩勾配(linear salt gradient)2.1Lにより、流速5ml/分にて溶離した。30mlの分画を回収し、BMGF活性について分析した(図1)。活性を、表皮成長因子(EGF)受容体結合活性として測定した。BMGFを含有する分画をプールし、次いで、H2O(2×20L)に対して16時間透析し、凍結乾燥させた。
【0083】
[EGF受容体結合アッセイ]
AG2804芽細胞上に存在する特異的EGF受容体に結合する[125I]−rhEGFに関する競合によって、BMGFを測定した。簡単に記載すると、24ウェルプレートの10%のFBSを加えたDMEM中で、AG2804細胞を70〜80%密集まで成長させた。この細胞を結合緩衝液(100mMのHepes(pH7.6)、120mMのNaCl、5mMのKCl、1.2mMのMgSO・7HO、8mMのグルコース、0.1%のBSA)で2回洗浄し、次いで、カラム分画および[125I]−rhEGF(10000cpm)と共に、結合緩衝液中で、4℃にて18時間インキュベートした。この段階の終わりに、細胞をHanks緩衝食塩水(HBSS)で3回洗浄し、1mlの0.5MのNaOH、0.1%のTriton X−100で、室温にて30分間溶解した。細胞溶解物の放射能をガンマカウンターで測定した。カラム分画の代わりに結合緩衝液を加えることにより、総結合量を測定した。試料の代わりに、過剰の(100ng)非標識rhEGFを加えることにより、非特異的結合を測定したところ、通常、総結合量の約5%であった。アッセイにおいて、非標識rhEGFの量を増加させて(0.2〜100ng)使用することにより、EGF競合用の標準曲線を得た。
【0084】
[ステップ3 ゲル濾過クロマトグラフィー]
上記ステップからの凍結乾燥したBMGFプールを、15mlの150mMのNaCl、1Mの氷酢酸、および10%(v/v)のCH3CNで再構成し、0.22μmの膜を通過させて濾過し、FPLCに取り付けられたSuperdex-75 35/600(3.5×60cm、Amersham Pharmacia Biotech社製, Sydney, Australia)カラムに、流速3.5ml/分で適用する。17.5mlの分画を回収し、BMGF活性について分析する(図1)。
【0085】
[ステップ4 C4 RP−HPLC]
BMGF活性を含有する分画をプールし、0.1%のTFAで1:4に希釈し、0.1%のTAFで平衡化したDelta−Pack C4 RP−HPLCカラム(15μm、300Å、25×100mm、Millipore-Waters社製, Lane Cove, New South Wales, Australia)に適用する。このカラムを0.1%のTFAで徹底的に洗浄し、次いで結合タンパク質を、0〜80%のCH3CNの線形勾配および0.08%のTFAで流速5ml/分にて80分にわたって溶離する。10mlの分画を回収し、BMGF活性を含有する分画(図1)をプールして凍結乾燥させる。
【0086】
[ステップ5 アフィニティクロマトグラフィー]
上記ステップからの凍結乾燥したプールを、20mlの20mMのTris−HCl(pH7.5)で再構成し、FPLCに取り付けられた5mlのHiTrap ヘパリン−セファロースアフィニティカラム(Amersham Pharmacia Biotech社製, Sydney, Australia)に流速0.5ml/分にて適用する。O.D.280nmがベースラインに戻るまで、このカラムを20mMのTris−HCl(pH7.5)で洗浄し、次いで結合タンパク質を20mMのTris−HCl(pH7.5)に溶解した0〜1MのNaClの線形塩勾配75mlで溶離する。1mlの分画を回収し、BMGF活性を含有するものをプールする。
【0087】
[ステップ6 C18 RP−HPLC#1]
ヘパリン−セファロースプールを10%のプロパノール、0.13%のHFBAで1:4に希釈し、Nova-Pack C18 RP-HPLCカラム(4μm、60Å、8×100mm、Millipore-Waters社製, Lane Cove, New South Wales, Australia)に、1ml/分の流速で適用する。このカラムを10%のプロパノール、0.13%のHFBAで洗浄し、結合したタンパク質を10分間にわたり10〜24%のプロパノール、0.13%のHFBA、次いで、160分間にわたり24〜40%のプロパノール、0.13%のHFBAという2段階勾配で溶離する。1ml分画を回収し、BMGF活性に関して分析する(図1)。
【0088】
[ステップ7 C18 RP−HPLC#2]
上記ステップからのBMGF活性を含有する分画をプールし、0.1%のTFAで1:3に希釈し、上と同じカラムに1ml/分の流速で適用する。このカラムを0.1%のTFAで洗浄し、結合したタンパク質を10分間にわたり0〜10%のCH3CN、次いで250分間にわたり10〜35%のCH3CNという2段階勾配で1ml/分の流速にて溶離する(図1)。2ml分画を回収し、BMGF活性について分析する。BMGF活性を含有する分画をプールし、必要な時まで−20℃で保存する。
【0089】
精製の結果の概要を表1に示す。上記BMGFは、最高99%(99%を含む)純粋で、且つ約21〜25kDaの分子量を有する形態で、最後のC18 RP−HPLCステップからの活性分画に存在する。これらの基準は、Pharmacia Phast システム(図2参照)を用いて実行した、銀染色された8〜25%勾配のSDS−PAGEゲルおよびN末端配列分析から推定される。
【0090】
【表1】

【0091】
[実施例2 BMGFのN末端配列分析およびペプチド配列分析]
ウシBMGFおよびエンドプロテアーゼLys−C消化により生成したペプチドフラグメントのアミノ酸配列を、Hewlett-Packard G1000Aタンパク質シークエンサーを使用して決定した。20μgの精製BMGFを、変性緩衝液(6Mグアニジン−HCl、100mMのTris-Cl(pH8.5)、5mMのEDTA)400μlに溶解した100μlの4mMのDTTにより、暗所で室温にて30分間還元した。変性緩衝液中に200μCiのヨード[2−3H]酢酸を含有する1μmolのヨード酢酸を加え、上述の通りにインキュベートすることにより、変性し、還元されたBMGFをS−カルボキシメチル化した。次に、変性緩衝液に溶解したヨード酢酸16μmolを加え、インキュベーションをさらに15分間続けた。5μlのTFAを加えることにより反応を停止させ、[3H]カルボキシメチル化したBMGFをRP−HPLCで回収した。[3H]カルボキシメチル化BMGFを真空下で乾燥させ、N末端から配列決定するか、あるいは100μlのTris−HCl(pH8.5)中、37℃にて16時間、エンドプロテアーゼLys−C(0.5μg、Promega)で消化した。5μlのTFAを加えることにより反応を停止させ、このようにして得られたペプチドフラグメントを、C18 RP-HPLCカラム(2.1×30mm、Bownlee Lab製, Santa Clara, CA)で、70分間にわたり、0.25ml/分の流速で0〜50%のCH3CNおよび0.08%のTFAの線形勾配を使用して分離した。ペプチド含有分画を真空下で乾燥させ、配列を決定した(図3)。
【0092】
[実施例3 BMGFの脱グリコシル化]
1.5mlポリプロピレン微量遠沈管内で、10μgの純粋なBMGFを乾燥させ、16μlの50mMリン酸ナトリウム(pH6.0)に再懸濁し、0.2ユニットのα2−3,6−ノイラミニダーゼ(NANase II)および0.002ユニットのエンド−α−アセチルガラクトサミニダーゼ(O−グリコシダーゼ DS)(BioRad製, Richmond, California)を加え、この反応混合物を37℃で1時間インキュベートした。次いで、500mMリン酸ナトリウム(2塩基)で反応体積を40μlに増やし、2.5μlの2%SDSおよび1Mのβ−メルカプトエタノールを加えた。次いで、反応混合物を95℃に5分間加熱し、氷上に置き、次いで2.5μlのNonidet−P40および0.005ユニットのPeptide−N4(アセチル−β−グルコサミニル)−アスパラギンアミニダーゼ(PMGase F)(BioRad, Richmond, California)を加え、37℃で3時間インキュベートした。次いで、反応混合物を真空下で乾燥させ、SDS−PAGE還元緩衝液に再懸濁し、10〜20%のTricineゲル(Novex)で実行した(図4)。
【0093】
[実施例4 BMGFの成熟型のクローニング]
BMGFのN末端アミノ酸配列およびC末端アミノ酸配列(実施例2参照)に相当する2つのオリゴヌクレオチドプライマー(下記参照)を化学的に合成し、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)による、ウシBMGFの完全成熟型をコードするヌクレオチド配列の増幅に使用した。
プライマー1 5' GAT GGG AAT TCA ACC AGA AGT CCT GAA 3'
プライマー2 5' GTA AAA CAA GTC AAC TCT CTC ACA CCT 3'
【0094】
RNeasy Miniキット(Qiagen社製, Clifton Hill, Victoria, Australia)を使用して、80〜90%密集Madin−Darbyウシ腎細胞(MDBK,ATCC CCL 22)から全RNAを単離した。オリゴdTプライマーおよびSuperscriptII(Life Technologies社製, Melbourne, Australia)を使用して、1μgの全MDBK RNAからcDNAを合成した。上記プライマーと共に、次のcDNAをPCR用の鋳型として使用した。50μlの60mMのTris−SO4、18mMの(NH42SO4、1.5mMのMgSO4(pH9.1)、0.2mMのdNTP、各プライマー200ng、1UのeLONGase(Life Technologies社製, Melbourne, Australia)および1μlのcDNAで、PCRを実施した。最初に94℃で3分間インキュベートした後、94℃で1分、50℃で1分、および68℃で1分、続いて最後に68℃で3分延長し、30サイクルの増幅を実施した。
【0095】
2%のアガロースゲルによる電気泳動でPCR反応を分析した。240bpの生成物ゲルから切り取り、Promega PCR Preps Purificationキットを使用して精製した。製造業者の説明書に従って、精製したPCR生成物を、ベクターpCR−Blunt(Invitrogen)に平滑末端連結した。BMGFベクター構築物をE. coli TOP 10(Invitrogen)細胞に形質転換し、50μg/mlのカナマイシンを含有するLB寒天プレートで選択した。Amplicycle シークエンシングキット(Perkin-Elmer社製)ならびに普遍M13前進プライマー(−40)および逆プライマーを使用して、ジデオキシ鎖終結法(Sanger et al., Natl. Acad. Sci. U.S.A. 74, 5463, (1977))により、成熟BMGFの完全ヌクレオチド配列(図5参照)を決定した。
【0096】
[実施例5 E. coliのBMGF cDNA発現プラスミドの構築]
発現ベクター構築のための成熟BMGF[Asp1-Tyr80]の全80アミノ酸をコードするDNAを得るために、RNeasy Miniキット(Qiagen社製, Clifton Hill, Victoria, Australia)を使用して、80〜90%密集Madin−Darbyウシ腎細胞(MDBK,ATCC CCL 22)から全RNAを単離した。オリゴdTプライマーおよびSuperscriptII(Life Technologies, Melbourne, Australia)を使用して、1μgの全MDBK RNAからcDNAを合成した。以下に示すプライマーと共に、次のcDNAをPCR用の鋳型として使用した。PCR条件は上述と同じであった。
【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
2%のアガロースゲルによる電気泳動でPCR反応を分析した。273bpの生成物をゲルから切り取り、Promega PCR Preps Purificationキットを使用して精製した。精製したPCR生成物およびプラスミドp[Met1]−pGH(1〜46)を、制限酵素Hpa IおよびHind III(New England Biolbs)で消化し、消化したPCR生成物を、T4 DNAリガーゼ(Promega)で、リニアにしたp[Met1]−pGH(1〜46)に連結した(図6)。p[Met1]−pGH(1〜46)は、強力なtrcプロモーターの下流にあるメチオニル・ブタ成長ホルモンの最初の46アミノ酸をコードするヌクレオチド配列を含む、発現ベクターである(GroPep Pty Ltdが所有し、特許権を得ている)。ベクター構築物をE. coli JM101 (lacq)に形質転換し、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天プレートで選択した。
【0100】
[実施例6 E. coli形質転換体により生成されるオーセンティックBMGFの精製]
プラスミド[Met1]−pGH(1〜46)−Met−BMGFを含むE. coli JM101菌株を単一コロニーとして選択し、60mMのK2HPO4、33mMのKH2PO4、7.5mMの(NH42SO4、1.7mMのクエン酸ナトリウム、10μMのMgSO4.7H2O、0.2%のD−グルコース、0.0005%のチアミンおよび50μg/mlのアンピシリンから成るスターター培養20mlの接種に使用した。この培養を37℃で16時間成長させた。次いで、スターター培養を使用して、各3Lの成長培地(30mMのNH4Cl、7mMのK2SO4、12mMのKH2PO4、19mMのNa2HPO4、139mMのD−グルコース、2.4mMのMgSO4.7H2O、0.0004%のチアミン、0.035mMのFe(II)SO4.7H2O、0.0074mMのMnSO4・7H2O、0.0008mMのCuSO4・7H2O、0.074mMのクエン酸三ナトリウム、50μg/mlのアンピシリン(pH6.9))が入っている2つの5L発酵槽(Applicon)を接種した。600nmにおける吸光度のO.D.が4.0に達するまで細菌を37℃で成長させ、次いで、0.33mMのIPGTで誘導し、グルコースが、pHの急な上昇によって示される限界値になるまで培養を続けた。温度、pHおよび酸素の制御は、自動管理下にあった(FC4データシステム、Real Time Engineering)。Rannieホモジナイザーを5回通過させた後、5000p.s.iで細胞を破壊し、遠心分離(10000rpm、25分、4℃)で封入体を回収した。6000rpmにおける遠心分離により、30mMのNaCl、10mMのKH2PO4、0.5mMのZnCl2で、この封入体を2回洗浄し、−80℃で保存した。
【0101】
20gのバッチ内で、洗浄した封入体を解凍し、8Mの尿素、0.1MのTr
is−HCl、40mMのグリシン、40mMのジチオトレイトール、および0
.5mMのZnCl2(pH9.0)に10%(w/v)で懸濁し、室温で30分間攪拌した。可溶化した封入体を14000rpmにて20分間遠心分離し、結果として得られた上清を、Cellufine GCL-1000を詰めて、2ml/分の流速にて、8Mの尿素、0.1MのTris−HCl、40mMのグリシン、1.6mMのジチオトレイトールおよび0.5mMのZnCl2(pH9.0)で平衡化したPharmacia-LKB XXカラムで、脱塩した。30ml分画を回収し、組換え型[Met1]−pGH(1〜46)−Met−BMGF融合タンパク質を含有する分画をプールし、このプールを、4Mの尿素、40mMのグリシン、0.1MのTris−HCl、5mMのEDTA、0.4mMのDTTおよび1mMの2−ヒドロキシエチルジスルフィド、pH9.0中に、最終タンパク質濃度が0.1mg/mlになるように希釈することにより、酸化的再生に供する。室温で3時間攪拌した後、HClでpHを6.45に調整することにより、反応を停止させた。
【0102】
次に、再生した融合タンパクを、15ml/分の流速にて8Mの尿素、50mMの酢酸アンモニウム(pH6.45)で平衡化したSepharose Fast Flow S (Amersham Pharmacia Biotech, Sydney, Australia)100mlを詰めた、Pharmacia-LKB XK50カラムに充填した。OD280nmがベースラインに戻るまで、このカラムを上記緩衝液で洗浄した。次いで、このカラムを、同じ緩衝液に溶解した0〜0.7MのNaClの線形塩勾配で、15ml/分の流速にて溶離した。30ml分画を回収し、融合タンパク質を含む分画をプールした。
【0103】
この融合タンパク質のプールを脱塩し、C4 Prep-Pakカラム(40mm×100mm;300Å、15μm;Millipore-Waters社製, Lane Cove, New South Wales, Australia)を用いた逆相HPLCクロマトグラフィーでさらに精製した。このタンパク質プールをTFAが0.1%になるように調整し、50ml/分にてC4カラムに充填した。このカラムを0.1%のTFAで徹底的に洗浄し、0.08%のTFAの存在下、18〜50%(v/v)アセトニトリルの勾配で、20ml/分の流速にて、90分にわたってタンパク質を溶離した。30mlの分画を回収し、プールされた融合タンパク質を含有する分画を凍結乾燥した。
【0104】
融合タンパク質プールをマイクロボア逆相HPLC(2.1mm×100mm、Brownlee Lab製, Santa Clara, Ca)で分析して、1つのタンパク質ピークが同定された(図7B)。BMGF調製物の純度をN末端配列分析でさらに確認すると、予期されるBMGFに関する末端配列を与え、おおよその純度は99%以上であった。還元条件下もしくは非還元条件下におけるSDS−PAGEの後、予期された14.5kDaの単一タンパク質も検出された(図7B、挿入図)。
【0105】
オーセンティックBMGFを生成するために、10mg/mlのタンパク質濃度にて、100倍モル過剰な臭化シアンを含有する0.13MのHClに凍結乾燥タンパク質を可溶化することにより、融合タンパク質を切断した。この切断反応を、暗所にて室温で、25時間実施した。切断後、1MのNaClでカラムからバッチ状にタンパク質を溶離したこと以外は上述の通りに、イオン交換クロマトグラフィーで反応混合物から臭化シアンを除去した。
【0106】
オーセンティックBMGFを融合パートナーから逆相HPLCで分離した。S−セファロースタンパク質プールを0.1%のTFAで1:4(v/v)に希釈し、50ml/分の流速にて、C4 Prep-Pakカラム(25mm×100mm;300Å、15μm;Millipore-Waters社製, Lane Cove, New South Wales, Australia)に適用した。OD280nmがベースラインに戻るまで、このカラムを0.1%のTFAで徹底的に洗浄し、次いで、0.08%のTFAの存在下、16〜32%(v/v)アセトニトリルの勾配で、20ml/分の流速にて150分にわたって、このカラムを溶離した。26mlの分画を回収し、純粋なBMGFを含有する分画をプールした。
【0107】
最終BMGFタンパク質プールのマイクロボアC4逆相HPLC(2.1mm×100mm)による分析で、1つのタンパク質ピークが同定された。BMGF調製品の純度をさらに確認した。BMGF調製物の純度をN末端配列分析でさらに確認すると、予期されるBMGFに関する末端配列を与え、おおよその純度は99%以上であった。エレクトロスプレーイオン化質量分析法により決定された組換え型BMGFの分子量は8995.1±0.83であった。これは、BMGFアミノ酸配列から算出した理論上の分子量8995.02と一致する。還元条件または非還元条件で、SDS−PAGE後、約9kDaの1つのタンパク質ピークが検出された(図7A、挿入図)。
【0108】
[実施例7 BMGFの分裂促進活性]
一連の細胞系のオーセンティックBMGFおよび組換え型BMGFの分裂促進活性をメチレンブルー細胞増殖アッセイで測定した。細胞系を96ウェルプレートで、10〜20×104細胞/mlの密度で継代培養し、5%のCO2下37℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートをDMEMで徹底的に洗浄して残留培地を除去し、その後天然BMGFまたは組換え型BMGFを様々な濃度で加えた(図8参照)。一部の細胞系では、BMGFと50ng/mlのLR3IGF−1との共インキュベーションの影響を試験した。48時間インキュベーション後、0.15MのNaClでプレートを2回洗浄し、細胞の単層を固定し、1%メチレンブルーを加えて600nmにおける吸光度を測定することにより、細胞質量を定量した。ウシのチーズ乳清抽出物から単離されたBMGFも、組換えによって生成したBMGFも、Balb/c 3T3細胞において、同等の効力であった。BMGFは、上皮細胞、線維芽細胞および骨芽細胞を含む広範囲の細胞系を刺激した。この例としては、Balb/c 3T3細胞、HaCaT細胞、IEC−6細胞、SF3169細胞、Mv1Lu細胞およびCalOst細胞などが挙げられる。場合によっては、たとえば、消化管上皮細胞系IEC−6では、BMGFがLR3IGF−1と相乗的に作用した。
【0109】
[実施例8 消化管成長に対するBMGFの作用]
媒体(0.1Mの酢酸)またはBMGF(500μg/kg/日)が入っている浸透圧ミニポンプを、オスのSprague Dawleyラット(投与群当たり8匹)の肩甲骨上領域の皮下に移植し、そのラットを、Tecniplast代謝ケージ内で、25℃、12時間、明/暗周期に維持した環境で、7日間飼育した。動物は、水および高炭水化物飼料を絶えず入手できた。7日後、ラットをCO2過剰投与により屠殺し、総消化管重量を測定した。体重kg当たりの総消化管重量は、7日後、BMGF投与ラットで25%高かった(図9)。
【0110】
[実施例9 クリーム(O/Wタイプ)
成分 %
ソルビタンモノステアレート 2.0
ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート 3.0
セチルアルコール 5.0
軽流動パラフィン 8.0
ミリスチン酸イソプロピル 2.0
有効物質BMGF 1.0−10-5
プロピレングリコール 2.0
グリセリン 2.0
脱イオン水 76
保存料およびその他の安定剤(適量)
【0111】
水性相を55〜60℃に加熱し、有効物質をその中に溶解し、勢いよく攪拌することにより、融解した脂質相をその中に分散させる。室温に冷却し、均質化させる。同様の方式で、それぞれ0.4μg/ml、4μg/mlまたは20μg/mlを含有するクリームを製造することができる。このクリーム100μl/cm2創傷を塗布する。
【0112】
[実施例10 軟膏(W/Oタイプ)]
成分 %
ソルビタントリオリエート 5.0
ワックス(微晶質) 3.0
軽流動パラフィン 9.0
ミリスチン酸イソプロピル 10.0
ラノリンアルコール 3.0
有効物質BMGF 1.0-10−5
プロピレングリコール 2.0
グリセリン 2.0
硫酸マグネシウム(含水) 0.7
脱イオン水 65.3
保存料およびその他(適量)
【0113】
穏やかに加熱しながら上記有効成分を水性相に溶解し、その溶液を溶融した脂質相に分散させる。室温に冷却し均質化させる。同様の方式で、軟膏100μl/cm2創傷を塗布する。
【0114】
[実施例11 口内洗浄剤]
成分 %
有効成分BMGF 1.0-10-3
ポリエチレングリコール(7)−グリセロールココエート 2.0
脱イオン水 13
グリセリン(86%) 18
ペパーミントオイル 10
エタノール 55
保存料およびその他(適量)
【0115】
有効物質を脱イオン水に溶解する。PEG(7)−グリセリルココエートおよびグリセリンnを溶液に加えて溶解する。ペパーミントオイルをエタノールに溶解し、2つの溶液を攪拌しながら混合する。この溶液を使用前に1:10まで希釈する。
【0116】
[実施例12 非経口用溶液]
成分
有効物質BMGF 1mg/ml
±ヒト血清アルブミン 1mg/ml
アルギニンまたはグリセリン 20mg/ml
±炭水化物 5〜20mg/ml
pH7
【0117】
上記炭水化物はグルコース、マンノース、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチまたはそれらの混合物である。リン酸塩、コハク酸塩、アミノ酸またはそれらの混合物でpHを調製する。
【0118】
0.5ml中に0.5mgのBMGFが入ったバイアルを製造して凍結乾燥させる。
【0119】
[実施例13 練り歯磨き]
有効物質BMGF 1.0-10-5
メチルセルロース 0.8g
炭酸カルシウム 30g
コロイド状シリカ 3g
軽流動パラフィン 2g
グリセリン 20g
甘味料
香味料
保存料
脱イオン水 合計 100g
【0120】
有効物質とメチルセルロースとの混合物を含む粉末を、脱イオン水、パラフィンおよびグリセリンの一部で湿らせる。添加物を溶液に加える。残りの水で仕上げた後、ペーストを均一化する。
【0121】
最後に、本明細書に略述した本発明の精神から逸脱することなく、様々な変更、修飾および/または付加を行うことができることを理解されたい。
【図1−1】

【図1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のアミノ酸配列
DGNSTRSPEDDGLLCGDHAENCPATTTQPKRRGHFSRCPKQYKHYCIKGRCRFVVAEQTPSCVCDEGYAGARCERVDLFY
を含むウシ乳汁成長因子(BMGF)であるポリペプチド、またはその機能的に活性なフラグメントを含む単離されたポリペプチドであって、該ポリペプチドはEGFレセプターに結合し、
該ポリペプチドが実質的に精製され、または部分的に精製された形態であるポリペプチド。
【請求項2】
SDS−PAGEで測定したとき、21〜25kDaの分子量を有する請求項1に記載のBMGFまたはその機能的に活性なフラグメント。
【請求項3】
SDS−PAGEで測定したとき、9〜14kDaの分子量を有する非グリコシル化型または部分的非グリコシル化型の請求項1に記載のBMGFまたはその機能的に活性なフラグメント。
【請求項4】
ウシ乳汁、乳製品または乳製品抽出物から得られる請求項1〜3のいずれか1に記載のBMGFまたはその機能的に活性なフラグメント。
【請求項5】
BMGF、またはその機能的に活性なフラグメントをコードする核酸分子であって、配列番号2で示される配列、またはその機能的に活性なフラグメントをコードする配列を有する核酸分子。
【請求項6】
創傷治癒または組織修復、あるいはそれらの両方を増進するための薬剤の製造における、請求項1〜3のいずれかに記載のBMGF、またはその機能的に活性なフラグンメントの有効量の使用。
【請求項7】
消化管バリア機能障害関連の病気を予防、緩和もしくは治療するための薬剤の製造における、請求項1〜3のいずれかに記載のBMGF、またはその機能的に活性なフラグンメントの有効量の使用。
【請求項8】
歯周病を予防、緩和もしくは治療するための薬剤の製造における、請求項1〜3のいずれかに記載のBMGF、またはその機能的に活性なフラグンメントの有効量の使用。
【請求項9】
美容における供給を提供するための薬剤の製造における、請求項1〜3のいずれかに記載のBMGF、またはその機能的に活性なフラグンメントの有効量の使用。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−99088(P2010−99088A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13455(P2010−13455)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【分割の表示】特願2000−520478(P2000−520478)の分割
【原出願日】平成10年11月12日(1998.11.12)
【出願人】(500216237)ノヴォザイムズ・バイオファーマ・エイユー・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】