説明

ウレタン系樹脂用可塑剤、それを用いたウレタン系樹脂組成物及びその硬化物

【課題】ウレタン系樹脂の原料であるポリオール、ポリイソシアネート、さらにはこれらが反応して生成するウレタン系樹脂との相溶性に優れ、これらに配合することで溶液粘度を大幅に低下することができ、かつ加熱損失が少ないウレタン系樹脂用可塑剤、それを用いたウレタン系樹脂組成物及びその硬化物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるエステル化合物を必須成分として含有することを特徴とするウレタン系樹脂用可塑剤を用いる。
【化1】


(式中、R及びRはそれぞれ独立に炭素原子数6〜12のアルキル基を表し、Xは炭素原子数3〜8のアルキレン基を表す。また、a及びbはそれぞれ独立に2〜10の整数を表し、aとbの合計は4〜20である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン系樹脂用可塑剤、それを用いたウレタン系樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気・電子部品には、湿気、粉塵等を含む雰囲気や、振動、衝撃等から保護する目的で、シーリング材又はポッティング材といわれる電気絶縁封止剤が用いられている。その材料として、優れた絶縁特性、可撓性を有する点、比較的安価である点などから、ウレタン系樹脂が広く用いられている。近年、電気機器は年々小型軽量化による気密性の高さや、使用電流量の増加等により、電気電子部品は耐熱性が要求されている。こうした背景から、それに用いる原料についても従来以上の耐熱性が求められている。
【0003】
電気絶縁封止剤には、溶液粘度の調整のために、安価でウレタン系樹脂の原料である各種ポリオールとの相溶性に優れることから、ジオクチルフタレート(DOP)等のフタル酸エステルが主に使用されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、DOPを始めとしたフタル酸エステルは、内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)に該当するとされ、その使用が制限されている問題がある。また、フタル酸エステルは、比較的揮発性が高い物質であり、電気・電子部品の温度上昇により、フタル酸エステルが揮発して電気・電子機器内部を汚染する問題があった。
【0004】
また、耐熱性を有する可塑剤として、例えば、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル等が知られている。しかしながら、これらの可塑剤は、加熱による揮発は少ないが、ウレタン系樹脂との相溶性が悪いため、ウレタン系樹脂組成物に配合しても粘度が低下しない問題があった。
【0005】
さらに、これらの問題を解決するために、加熱時の可塑剤が揮発する加熱損失の少ないシーリング材用可塑剤として、ポリエーテルとイソシアネートを反応させた化合物が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この可塑剤も、溶液粘度を効果的に低下できず、加熱損失が高く耐熱性が不足していた。
【0006】
そこで、電気絶縁封止剤の粘度調整を容易に行うことができ、溶液粘度の低下効果に優れ、かつ加熱損失が少ないウレタン系樹脂用可塑剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−109326号公報
【特許文献2】特開2001−64505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、ウレタン系樹脂の原料であるポリオール、ポリイソシアネート、さらにはこれらが反応して生成するウレタン系樹脂との相溶性に優れ、これらに配合することで溶液粘度を大幅に低下することができ、かつ加熱損失が少ないウレタン系樹脂用可塑剤、それを用いたウレタン系樹脂組成物及びその硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、特定のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルと特定の二塩基酸とをエステル化反応させて得られたポリエーテルエステル化合物をウレタン系樹脂用可塑剤として用いることにより、ポリオール、ポリイソシアネート、無機充填材等からなるウレタン系樹脂組成物の溶液粘度が大きく低下し、かつ硬化物の加熱損失が少ないことを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表されるエステル化合物を必須成分として含有することを特徴とするウレタン系樹脂用可塑剤、それを用いたウレタン系樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【0011】
【化1】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に炭素原子数6〜12のアルキル基を表し、Xは炭素原子数3〜8のアルキレン基を表す。また、a及びbはそれぞれ独立に2〜10の整数を表し、aとbの合計は4〜20である。)
【発明の効果】
【0012】
本発明のウレタン系樹脂用可塑剤は、ウレタン系樹脂溶液の粘度を効果的に低下できるため、ハンドリング性が向上するだけでなく、耐熱性に優れることから、可塑剤の加熱損失が少ない。このことから、耐熱性が求められるウレタン樹脂系樹脂組成物に用いることができる。用途としては、水分や湿気から保護するために使用される封止剤、シーリング剤、ポッティング剤、コーティング剤、コンデンサーやコンバーターの絶縁材などが挙げられる。より具体的には、電気洗濯機、便座、湯沸し器、浄水器、風呂、食器洗浄機等のスイッチ部、電動工具、自動車、バイク等に使用されている電子、電気部品などが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のウレタン系樹脂用可塑剤は、下記一般式(1)で表されるエステル化合物を必須成分として含有するものである。
【0014】
【化2】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に炭素原子数6〜12のアルキル基を表し、Xは炭素原子数3〜8のアルキレン基を表す。また、a及びbはそれぞれ独立に2〜10の整数を表し、aとbの合計は4〜20である。)
【0015】
上記一般式(1)で表されるエステル化合物は、ポリエチレンオキサイドの片末端に脂肪族アルコールを付加したポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(A)と脂肪族ジカルボン酸(B)とを反応させて得ることができる。
【0016】
前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(A)の原料である脂肪族アルコールとしては、ウレタン系樹脂及びその原料との相溶性が良好であることから、炭素原子数数6〜12の脂肪族アルコールであり、炭素原子数6〜10の脂肪族アルコールがより好ましい。脂肪族アルコールのアルキル基は直鎖状であっても、分岐状があってもよい。このような脂肪族アルコールとしては、例えば、ヘキサノール、2級ヘキサノール、イソヘキサノール、ヘプタノール、2級ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、2級オクタノール、イソオクタノール、ノナノール、2級ノナノール、1―デカノール、イソデシルアルコール、2級デカノール、ウンデカノール、2級ウンデカノール、2―メチルデカノール、ラウリルアルコール、2級ドデカノール等が挙げられる。これらの脂肪族アルコールは、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0017】
前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(A)の原料であるポリエチレンオキサイドとしては、その付加モル数は、ウレタン樹脂系樹脂組成物の溶液粘度の低下能力と可塑剤の耐熱性(耐揮発性)のバランスが良好であることから、2〜10モルであるが、4〜8モルがより好ましい。また、ウレタン系樹脂との相溶性を調整するため、ポリエチレンオキサイドの原料であるエチレンオキサイドの一部にプロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド等を用いて共重合した共重合体を用いてもよい。この共重合体はランダム状であっても、ブロック状であってもよい。なお、ポリエチレンオキサイドの原料であるエチレンオキサイドの一部にプロピレンオキサイド等を用いる場合、ポリエチレンオキサイド及びその他のアルキレンオキサイドの合計モル数中、その他のアルキレンオキサイドのモル比率は0〜50モル%の範囲が好ましい。前記ポリエチレンオキサイドは、エチレンオキサイドのアニオン開環重合反応等により得ることができる。
【0018】
前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(A)は、市販品が用いることができ、例えば、日油株式会社製の「ノニオンEH−204」、「ノニオンEH−208」、「ノニオンID−203」、「ノニオンID−206」、「ノニオンID−209」、「ノニオンK−204」等、青木油脂工業株式会社製の「ブラウノンEH−4」、「ブラウノンEH−6」等が挙げられる。これらポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(A)は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0019】
前記脂肪族ジカルボン酸(B)は、アルキレン基の両末端に2つのカルボキシル基を有する化合物である。この脂肪族ジカルボン酸の中でも、ウレタン系樹脂及びその原料との相溶性をより向上できることから、炭素原子数5〜10の脂肪族系ジカルボン酸が好ましい。このような脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。これらの中でも、商業的に入手し易いことから、アジピン酸とセバシン酸が好ましい。これらの脂肪族ジカルボン酸は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0020】
本発明のウレタン系樹脂用可塑剤の必須成分である前記一般式(1)で表されるエステル化合物は、上記原料を反応器に仕込み、通常のエステル化反応させることにより製造することができる。また、このエステル化反応を促進する目的で、エステル化触媒を用いることが好ましい。
【0021】
前記エステル化触媒として、金属又は有機金属化合物を用いることができる。具体的には、周期律表2族、4族、12族、13族及び14族からなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属や有機金属化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ハフニウム、ゲルマニウム等の金属;チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート、オクタン酸スズ、2−エチルヘキサンスズ、アセチルアセトナート亜鉛、4塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウムテトラヒドロフラン錯体、4塩化ハフニウム、4塩化ハフニウムテトラヒドロフラン錯体、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム等の金属化合物などが挙げられる。これらの中でも、反応性、取扱いやすさ、エステル化反応により得られたエステル化合物の保存安定性が良好であることから、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート等のチタンアルコキサイドが好ましい。
【0022】
また、前記エステル化触媒の使用量は、エステル化反応を制御でき、かつ得られるエステル化合物の着色を抑制できる範囲の量であればよく、前記多価アルコールと前記モノジカルボン酸との合計量に対し、10〜2,000ppmの範囲が好ましく、20〜1,000ppmの範囲がより好ましい。
【0023】
前記エステル化合物を製造する際、前記エステル化触媒を添加する時期は、前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(A)と前記脂肪族ジカルボン酸(B)とを反応器に仕込むのと同時に添加してもよく、昇温途中に添加してもよく、エステル化触媒を分割して添加してもよい。
【0024】
前記エステル化合物を製造する際の反応温度は、各原料が蒸発や昇華することを抑制しつつ反応を促進し、反応により生成するエステル化合物の熱分解、着色を抑制できることから、60〜300℃の範囲が好ましく、100〜250℃の範囲がより好ましい。また、ウレタン系樹脂用可塑剤を製造する際の反応時間は、2時間以上であることが好ましく、4〜100時間の範囲であることがより好ましい。
【0025】
上記の製造方法により得られるエステル化合物は、高温高湿下でも加水分解をうけにくく安定であり、後述するウレタン系樹脂との相溶性が良いためブリードを引き起こしにくく、かつウレタン系樹脂溶液の粘度低下効果に優れることから、30以下の水酸基価を有し、かつ2以下の酸価を有するものが好ましく、20以下の水酸基価を有し、かつ1以下の酸価を有するものがより好ましい。
【0026】
本発明のウレタン系樹脂組成物は、ポリオール、ポリイソシアネート、無機充填剤及び本発明のウレタン系樹脂用可塑剤を含有する組成物である。
【0027】
本発明のウレタン系樹脂組成物の1成分であるポリオールは、1分子中に2つ以上の水酸基を有する化合物である。このポリオールとしては、例えば、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0028】
前記ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン等のジエン化合物と必要によりスチレン、アクリロニトリルなどとを、例えば、金属リチウム、金属カリウム、金属ナトリウムなどのアニオン重合触媒の存在下で重合させた後、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合させて得られるポリオール;前記ジエン化合物を、例えば、過酸化水素等の水酸基を有するラジカル開始剤によりラジカル重合させて得られるポリオール;これらのポリオールを水素添加したものなどが挙げられる。これらのポリオレフィンポリオールは、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0029】
前記ポリエーテルポリオールとしては、分子中に2〜3つの水酸基を有する化合物、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド、又はそれらの混合物を、アルカリ触媒等の存在下で付加重合させたポリアルキレンポリオール;テトラヒドロフランをカチオン触媒下で重合させたポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。これらのポリエーテルポリオールは、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0030】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、二塩基酸と多価アルコールの重縮合反応、カプロラクトンの開環重合又はアルキレンカーボネートとグリコールのエステル交換反応から得られ、具体例としては、ダイマー酸系ジオール、セバシン酸系ポリエステルポリオール、コハク酸系ポリエステルポリオール、)、ヒマシ油,水素化ヒマシ油,ヒマシ油エステル交換物等のポリオール化合物等が挙げられる。
【0031】
また、上記以外のポリオールとしては、例えば、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール,2,3−ペンタンジオール,2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、グリセリン、N,N−ビス−2−ヒドロキシプロピルアニリン、N,N’−ビスヒドロキシイソプロピル−2−メチルピペラジン、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラヒドロフラン/アルキレンオキサイド共重合ポリオール、エポキシ樹脂変性ポリオール、部分ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体及びこれらの化合物の水素添加化合物等が挙げられる。
【0032】
また、ポリオールとしてカーボネートジオールを用いても良く、例えば、α,ω−ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、α,ω−ポリ(3−メチル−ペンタメチレンカーボネート)ジオール等が挙げられる。これらの市販品としては、ダイセル化学株式会社製の「PLACELCD−205」、「PLACEL205PL」、「PLACEL205HL」、「PLACEL210」、「PLACEL210PL」、「PLACEL210HL」「PLACEL220]、「PLACEL220PL」、「PLACEL220HL」等が挙げられる。
【0033】
前記ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等のポリオールの中でも、耐クラック性が高いこと、寿命の長いことから、ポリオレフィンポリオールが好ましく、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンジオール、水添ポリイソプレンジオール、水添ポリブタジエンジオールがより好ましい。ポリブタジエンポリオールの市販品としては、出光石油化学株式会社製の「PolybdR−15HT」、「PolybdR−45HT」等が挙げられ、ポリイソプレンジオールの市販品としては、出光石油化学株式会社製の「Polyip」等が挙げられ、水添ポリイソプレンジオールの市販品としては、出光石油化学株式会社製の「エポール」が挙げられる。これらのポリオールは、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0034】
本発明のウレタン系樹脂組成物の1成分であるポリイソシアネートは、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物である。このポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の脂肪族−芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート;前記ポリイソシアネート化合物の環化三量体(イソシアヌレート変性体)、及びビューレット変性体やエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリアルカジエンポリオール、ポリアルカジエンポリオールの水素化物、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、ヒマシ油系ポリオール等のポリオール化合物と前記ポリイソシアネート化合物との付加反応物等が挙げられる。これらのポリイソシアネートは、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0035】
また、上記に例示したポリイソシアネートのイソシアネート基をフェノール系化合物、オキシム系化合物、イミド系化合物、メルカプタン系化合物、アルコール、ε−カプロラクタム、エチレンイミン、α−ピロリドン、マロン酸ジエチル、亜硫酸水素ナトリウム、ホウ酸等のブロック剤でブロックしたブロックイソシアネートも用いることができる。これらイソシアネートの中でも、常温で液状のものが、ハンドリング性、混合性が良好であるため好ましい。
【0036】
前記ポリイソシアネートの使用量は、前記ポリオール化合物の1当量に対し、0.8〜1.2当量の範囲で用いるのが好ましい。
【0037】
本発明のウレタン系樹脂用可塑剤のウレタン系樹脂組成物中の配合量は、ウレタン系樹脂組成物の十分な粘度低下、ウレタン系樹脂組成物の硬化物の十分な可撓性及び強度等の各種物性を得られることから、1〜30重量%の範囲が好ましく、3〜20重量%の範囲がより好ましく、5〜15重量%の範囲がさらに好ましい。
【0038】
本発明のウレタン系樹脂用可塑剤は、イソシアネート基と、水酸基又はアミノ基砥の反応によって硬化するウレタン系樹脂であれば、効果的に性能を発現することができる。
【0039】
本発明のウレタン系樹脂組成物の1成分である無機充填材としては、例えば、フュームシリカ、沈降性シリカ、結晶シリカ、水和アルミナ、水酸化アルミニウム、無水珪酸、含水珪酸、カーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン、ガラス繊維、フィラメント等が挙げられる。これらの中でも、放熱性に優れることから、アルミナ、シリカが好ましい。
【0040】
前記無機充填剤のウレタン系樹脂組成物中の配合量は、十分な熱伝導性が得られ、ハンドリング性が高い粘度となり、難燃性、熱伝導性等を十分に向上できることから、10〜90質量%の範囲が好ましく、20〜80質量%の範囲がより好ましく、40〜70質量%の範囲がさらに好ましい。
【0041】
本発明のウレタン系樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、本発明のウレタン系樹脂用可塑剤以外の公知の可塑剤を併用してもよい。他の可塑剤を併用する場合、硬化物に弾性を付与するとともに、組成物調製時に低粘度化を図ることができることから、水酸基を有さない可塑剤を用いることが好ましい。このような可塑剤としては、例えば、トリエチルヘキシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート等のトリメリテート系可塑剤;テトラエチルヘキシルピロメリテート、テトライソデシルピロメリテート等のピロメリテート系可塑剤;トリクレジルフォスフェート、トリスキシレニルフォスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルホスフェート、トリフェニルフォスフェート等のリン酸エステル、ポリエステルなどが挙げられる。ただし、これらの可塑剤の配合量は、本発明のウレタン系樹脂組成物中に配合する可塑剤の全配合量の半分以下であることが好ましい。
【0042】
また、本発明のウレタン系樹脂組成物には、硬化反応の促進のため、触媒を配合しても構わない。この触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート(DTD)、アルキルチタン酸塩、有機珪素チタン酸塩、スタナスオクトエート、オクチル酸鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ジブチル錫ジオルソフェニルフェノキサイド、錫オキサイドとエステル化合物(ジオクチルフタレート等)の反応生成物などの金属系触媒、モノアミン類(トリエチルアミン等)、ジアミン類(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等)、トリアミン類(N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン等)、環状アミン類(トリエチレンジアミン等)などのアミン系触媒が挙げられる。これらの触媒は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。
【0043】
本発明のウレタン系樹脂組成物の硬化物は、該組成物に硬化剤を加えて加熱することにより得ることができる。前記硬化剤としては、上記したポリイソシアネートと同様のものを用いることができる。
【0044】
本発明のウレタン系樹脂組成物の硬化条件は、とくに制限されないが、該組成物を減圧、遠心力等を利用した脱泡装置により脱泡させた後、対象物に流し込み、50〜100℃の範囲で加熱する方法が挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、酸価及び水酸基価の測定は、下記の条件により行った。
【0046】
[酸価の測定条件]
JIS K 0070−1992に準じて測定した。
【0047】
[水酸基価の測定条件]
JIS K 0070−1992に準じて測定した。
【0048】
[粘度の測定条件]
内径約1cmの硝子製ビスチューブにサンプルを入れて、コルク栓で蓋をし、5mm程の空間を開けた状態にする。それを、25℃の恒温槽に1時間静置し、ガードナー気泡粘度計(株式会社東洋精機製)にて粘度測定を行った。
【0049】
下記実施例1〜5及び比較例1〜8にしたがって、可塑剤を製造又は用意した。
【0050】
(実施例1)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、アジピン酸(以下、「AA」と略記する。)を219gと、テトラオキシエチレン−モノ−2−エチルヘキシルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数4;以下、「4EO−MO」と略記する。)を1,102gと、トルエンを66gと、チタンテトライソプロポキシド(以下、「TiPT」と略記する。)を0.4gとを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85質量%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、エステル化合物(1)を得た。このエステル化合物(1)の酸価は0.6、水酸基価は16、ガードナー粘度はA1であった。また、外観は透明の液体であった。
【0051】
(実施例2)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、AAを146gと、オクタオキシエチレン−モノ−2−エチルヘキシルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数8;以下、「8EO−MO」と略記する。)を1、157gと、トルエンを65.0gと、TiPTを0.4gとを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85質量%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、エステル化合物(2)を得た。このエステル化合物(2)の酸価は0.6、水酸基価は18、ガードナー粘度はB−Cであった。また、外観は透明の液体であった。
【0052】
(実施例3)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、セバシン酸(以下、「SA」と略記する。)を202gと、8EO−MOを1,157gと、トルエンを68gと、TiPTを0.4gとを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85質量%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、エステル化合物(3)を得た。このエステル化合物(3)の酸価は0.7、水酸基価は20、ガードナー粘度はC2−Dであった。また、外観は透明の液体であった。
【0053】
(実施例4)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、AAを146gと、オクタオキシエチレン−モノ−n−ヘキシルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数8;以下、「8EO−MH」と略記する。)を1,090gと、トルエンを62gと、TiPTを0.4gとを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85質量%リン酸水溶液を0.2g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、エステル化合物(4)を得た。このエステル化合物(4)の酸価は0.5、水酸基価は16、ガードナー粘度はBであった。また、外観は透明の液体であった。
【0054】
(実施例5)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、AAを146gと、オクタオキシエチレン−モノラウリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数8;以下、「8EO−ML」と略記する。)を1,291gと、トルエンを71gと、TiPTを0.5gとを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85質量%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、エステル化合物(5)を得た。このエステル化合物(5)の酸価は0.8、水酸基価は20、ガードナー粘度はD−Eであった。また、外観は透明の液体であった。
【0055】
(比較例1)
比較例1として、ジ−2−エチルヘキシルフタレートを用いた。このDOPの酸価は0.3、水酸基価は2、ガードナー粘度はA1−Aであった。また、外観は透明の液体であった。
【0056】
(比較例2)
比較例2として、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート(以下、「TOTM」と略記する。)を用いた。このTOTMの酸価は0.4、水酸基価は2、ガードナー粘度H−Iはであった。また、外観は透明の液体であった。
【0057】
(比較例3)
比較例として、テトラ−2−エチルヘキシルピロメリテート(以下、「TOPM」と略記する。)を用いた。このTOPMの酸価は0.6、水酸基価は3、ガードナー粘度はQであった。また、外観は透明の液体であった。
【0058】
(比較例4)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、2−エチルヘキサン酸(以下、「2EHA」と略記する。)を633.6gと、PEG(日油株式会社製「PEG#600」;エチレンオキサイドの平均付加モル数:13;以下、「PEG」と略記する。)を1,200gと、TiPTを0.18gとを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85質量%リン酸水溶液を0.12g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、エステル化合物(6)を得た。このエステル化合物(6)の酸価は0.9、水酸基価は6、ガードナー粘度はBであった。また、外観は透明の液体であった。
【0059】
(比較例5)
温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル(プロピレンオキサイドの平均付加モル数5;以下、「PPO−MB」と略記する。)を726g、トリレンジイソシアネート(以下、「TDI」と略記する。)を165g仕込み、80℃、10時間反応させて、ウレタン化合物(1)を得た。このウレタン化合物(1)の酸価は0.1、水酸基価は10、ガードナー粘度はEであった。また、外観は透明の液体であった。
【0060】
(比較例6)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、AAを175gと、オクタオキシエチレン−モノメチルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数8;以下、「8EO−MM」と略記する。)を1,106gと、トルエンを64gと、TiPTを0.4gとを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85質量%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、エステル化合物(7)を得た。このエステル化合物(7)の酸価は0.5、水酸基価は14、ガードナー粘度はAであった。また、外観は透明の液体であった。
【0061】
(比較例7)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、AAを117gと、オクタオキシエチレン−モノセチルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数8;以下、「8EO−MC」と略記する。)を1,141gと、トルエンを63gと、TiPTを0.4gとを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85質量%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、エステル化合物(8)を得た。このエステル化合物(8)の酸価は0.9、水酸基価は19、ガードナー粘度はG−Hであった。また、外観は透明の液体であった。
【0062】
(比較例8)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び分留用ト字管を備えた内容量3Lの四つ口フラスコに、AAを117gと、ウンデカオキシエチレン−モノ−2−エチルヘキシルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数11;以下、「11EO−MO」と略記する。)を1,179gと、トルエンを65gと、TiPTを0.4gとを仕込んだ後、窒素ガスを塔頂温度100℃以下に維持するように100〜500ml/分の範囲で吹き込みながら、230℃まで昇温した。次いで、230℃で生成する水分を除去しながら、脱水エステル化反応を行った。反応生成物の酸価が2以下になった時点で85質量%リン酸水溶液を0.3g仕込み、減圧を開始し、230℃の状態で0.67kPa以下に減圧して、トルエン及び未反応アルコールを除去した。トルエン及び未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を珪藻土で濾過して取り出し、エステル化合物(9)を得た。このエステル化合物(9)の酸価は0.7、水酸基価は20、ガードナー粘度はD−Eであった。また、外観は微白濁の液体であった。
【0063】
上記の実施例1〜5及び比較例1〜8で製造又は用意した可塑剤について、原料及び特性値を表1及び2にまとめた。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
なお、表2中の略号は、下記のものを表す。
2EHOH:2−エチルヘキシルアルコール
PA:無水フタル酸
TMA:無水トリメリット酸
PMA:無水ピロメリット酸
【0067】
上記の実施例1〜5及び比較例1〜8で製造又は用意した可塑剤について、下記の評価を行った。
【0068】
[ポリオールとの相溶性の評価]
ポリブタジエンポリオール(出光興産株式会社製「R−45HT」;数平均分子量:2800、官能基数:2.3、ヨウ素価:398、水酸基価:46)を100質量部と、ヒマシ油系ポリオール(伊藤製油株式会社製「URIC Y−403」;水酸基価:152、酸価:1.5)を70質量部と、ヒマシ油系ポリオール(伊藤製油株式会社製「URIC H−31」;水酸基価:160、酸価:1.8)を30質量部と、上記の実施例1〜5及び比較例1〜8で製造又は用意した各可塑剤を100質量部とを半月板付攪拌機にて10分間混合した。得られた溶液の外観を目視で観察し、成分の分離の有無、透明性で相溶性を確認した。なお、相溶性は、下記の基準で評価した。
○:分離がなく透明である。
×:分離があるか、又は白濁している。
【0069】
[ポリオールに対する粘度低下能の評価]
上記のポリオールとの相溶性の評価で調製した溶液を容量100cmのガラス瓶に90g入れた後、液温が25℃にセットされた回転粘度計(東機産業株式会社製「TRV101F」;ローターNo.3、回転数60rpm)にて粘度を測定した。得られた粘度から、ポリオールに対する粘度低下能を下記の基準で評価した。なお、粘度測定はポリオールと可塑剤との混合溶液の外観に分離がなく透明であったもののみについて、粘度測定した。下記の測定及び評価についても同様である。
○:粘度が500mPa・s未満である。
△:粘度が500mPa・s以上800mPa・s未満である。
×:粘度が800mPa・s以上である。
【0070】
[ウレタン系樹脂組成物に対する粘度低下能の評価]
上記のポリオールとの相溶性の評価で調製した溶液を300質量部と、無機充填材として球状アルミナ(電気化学工業株式会社製「DAM10」;体積平均粒子径8.6μm)を500質量部とをディスパー(プライミクス株式会社製の機種名「TKホモディスパー2.5型」)にて分散させて均一な分散液にした後、液温が25℃にセットされた回転粘度計(東機産業株式会社製「TRV101F」;ローターNo.4、回転数6rpm)にて粘度測定した。得られた粘度から、ウレタン系樹脂組成物に対する粘度低下能を下記の基準で評価した。
◎:粘度が40Pa未満である。
○:粘度が40Pa以上60Pa未満である。
△:粘度が60Pa以上80Pa未満である。
×:粘度が80Pa以上である。
【0071】
[ウレタン系樹脂組成物への硬化剤の配合]
上記で調製したウレタン系樹脂組成物800質量部に、硬化剤(日本ポリウレタン株式会社製「ミリオネートMR−100」;ポリイソシアネート成分:ポリメリックMDI)を50質量部加えて、半月板付攪拌機にて10分間混合させた後、0.27mPaに減圧して3分間脱泡して、硬化剤を配合したウレタン系樹脂組成物を得た。
【0072】
[ウレタン系樹脂組成物の硬化物(ウレタン系樹脂)のショア硬度の測定]
上記で得られた硬化剤を配合したウレタン系樹脂組成物20gを直径60mmの金属シャーレの中に注入し、ギア老化試験機(株式会社東洋精機製作所製「ACRギアー・オーブン」)に入れ、90℃で4時間加熱して硬化を行った後、得られた硬化物を室温まで自然冷却させて、ショア硬度の測定用のサンプルを得た。次いで、得られたサンプルについて、JIS K 6253にしたがい、アスカーA型硬度計(高分子計器株式会社製)を用いてショア硬度を測定した。
【0073】
[ウレタン系樹脂組成物の硬化物(ウレタン系樹脂)の耐加熱損失性の評価]
上記で得られた硬化剤を配合したウレタン系樹脂組成物5gを直径60mmの金属シャーレの中に注入し、ギア老化試験機(株式会社東洋精機製作所製「ACRギアー・オーブン」)に入れ、90℃で4時間加熱して硬化を行った後、得られた硬化物を室温まで自然冷却させて、耐加熱損失性評価用のサンプルを得た。このサンプルについて、質量を測り、加熱前質量とした。次いで、加熱前質量を測ったサンプルをギア老化試験機(株式会社東洋精機製作所製「ACRギアー・オーブン」)に入れ、150℃で300時間加熱した後、室温まで自然冷却させた。再び質量を測り、加熱後質量とした。得られた加熱前質量及び加熱後質量を用いて、下式(1)により加熱減量率を算出した。
加熱減量率(%)=(加熱前質量−加熱後質量)/加熱前質量×100 (1)
【0074】
上記で算出した加熱減量率の値から、下記の基準で耐加熱損失性を評価した。
○:加熱減量率が1%未満である。
△:加熱減量率が1%以上3%未満である。
×:加熱減量率が3%以上である。
【0075】
上記の測定及び評価の結果を表3及び4に示す。
【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
表3に示した実施例1〜5の評価結果から、本発明のウレタン系樹脂用可塑剤は、ポリオールとの相溶性が良好であり、本発明のウレタン系樹脂用可塑剤を用いたウレタン系樹脂組成物は、低粘度であることから、ハンドリング性に優れることが分かった。また、本発明のウレタン系樹脂用可塑剤を用いたウレタン系樹脂組成物の硬化物(ウレタン系樹脂)は高い耐加熱損失性を示したことから耐熱性に優れることが分かった。
【0079】
一方、表4に示した比較例1〜8の評価結果から、下記のことが分かった。
【0080】
比較例1〜3は、従来から可塑剤として広く用いられてきた材料である。比較例1のDOPは、ウレタン系樹脂組成物の粘度をある程度低下することはできるが、加熱残量率が高く加熱損失が大きい問題があることが分かった。また、比較例2のTOTM及び比較例3のTOPMは、加熱残量率が比較的低く良好な耐加熱損失性を有していたが、ウレタン系樹脂組成物の粘度をハンドリング性が良好な低粘度にすることができない問題があることが分かった。
【0081】
比較例4は、ポリエチレングリコールとモノカルボン酸とを反応させたエステル化合物であるが、ウレタン系樹脂組成物の粘度をハンドリング性が良好な低粘度にすることができるが、加熱残量率が高く加熱損失が大きい問題があることが分かった。
【0082】
比較例5は、エステル化合物ではなく、ウレタン化合物を用いた例であるが、ウレタン系樹脂組成物の粘度をある程度低下することはできるが、加熱残量率も高く加熱損失が大きい問題があることが分かった。
【0083】
比較例6は、本発明のウレタン系樹脂用可塑剤の必須成分である一般式(1)で表されるエステル化合物のR及びRが炭素原子数6〜12の範囲から外れ、炭素原子数が1である例である。この比較例6のエステル化合物は、ポリオールとの相溶性が悪く、ウレタン系樹脂組成物の可塑剤として用いることができないことが分かった。
【0084】
比較例7は、本発明のウレタン系樹脂用可塑剤の必須成分である一般式(1)で表されるエステル化合物のR及びRが炭素原子数6〜12の範囲から外れ、炭素原子数が16である例である。この比較例7のエステル化合物は、加熱残量率が比較的低く良好な耐加熱損失性を有していたが、ウレタン系樹脂組成物の粘度をハンドリング性が良好な低粘度にすることができない問題があることが分かった。
【0085】
比較例8は、本発明のウレタン系樹脂用可塑剤の必須成分である一般式(1)で表されるエステル化合物のエチレンオキサイドの付加モル数であるa及びbが2〜10の範囲から外れ、11である例である。この比較例8のエステル化合物は、ポリオールとの相溶性が悪く、ウレタン系樹脂組成物の可塑剤として用いることができないことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるエステル化合物を必須成分として含有することを特徴とするウレタン系樹脂用可塑剤。
【化1】

(式中、R及びRはそれぞれ独立に炭素原子数6〜12のアルキル基を表し、Xは炭素原子数3〜8のアルキレン基を表す。また、a及びbはそれぞれ独立に2〜10の整数を表し、aとbの合計は4〜20である。)
【請求項2】
前記一般式(1)中のR及びRが、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基及びラウリル基からなる群から選ばれるアルキル基である請求項1記載のウレタン系樹脂用可塑剤。
【請求項3】
前記一般式(1)中のXが、ブチレン基又はオクチレン基である請求項1記載のウレタン系樹脂用可塑剤。
【請求項4】
ポリオール、ポリイソシアネート、無機充填剤及び請求項1〜3のいずれか1項記載のウレタン系樹脂用可塑剤を含有するウレタン系樹脂組成物であって、該ウレタン系樹脂組成物中の前記ウレタン系樹脂用可塑剤の含有量が1〜30質量%であることを特徴とするウレタン系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4記載のウレタン系樹脂組成物に硬化剤を加え硬化させたことを特徴とする硬化物。

【公開番号】特開2012−77234(P2012−77234A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225615(P2010−225615)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】