説明

ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーターレセプターに結合する環状ペプチド

【課題】uPAのuPARへの結合を阻害して、癌細胞の成長または転移を阻止するのに有用な化合物を提供する。
【解決手段】第1アミノ酸のCα炭素と第11アミノ酸のCα炭素の間の長さ寸法が、約4オングストローム単位と12オングストローム単位の間になるように、連結単位(L)で11個のアミノ酸を連結した環状ペプチド化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある種の環状ペプチドに関し、このペプチドは、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーターのための細胞表面レセプターに結合し、それにより、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーターのこの細胞表面レセプターへの結合を阻害できる。本発明はまた、これらのペプチドを含有する薬学的組成物に関し、そしてウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーターのその細胞表面レセプターへの結合を阻害するためのこれらのペプチドの使用に関する。ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーターのその細胞表面レセプターへの結合の阻害から生じる効果には、タンパク質分解の阻害;プログラム化した遺伝子発現の阻害;細胞の運動、移動および形態形成の阻害;ある種のプロ成長因子(pro−growth factor)の成長因子の活性化形態への活性化の阻害;血管形成の阻害;腫瘍の転移の阻害;ある形態の失明の処置における網膜新血管形成の阻害;および関節炎のような炎症性疾患の処置としての組織再構築の阻害が挙げられる。本発明のペプチドは、適切な放射性、蛍光発生的、発色性または化学性の標識を運搬でき、また、組織試料中のウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーターレセプターレベルを定量化するのに使用でき、従って、このレセプターが病理学的な役割を果たす全ての疾患(上で述べたものを含めて)における診断手段または予診手段として、使用できる。
【背景技術】
【0002】
ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーター(uPA)は、細胞外タンパク質分解の主要な増幅カスケード(major amplified cascade)の開始剤であることが確認されている。このカスケードは、制御したとき、ある種の通常の生理学的なプロセスに重要であるが、制御不全のときには、病理学的なプロセス(例えば、癌における細胞侵入および転移)に強く関係している。Danoら、Adv.Cancer Res.、44:139−266(1985)。細胞は、不活性形態、pro−uPAまたは単一鎖uPAとして、uPAを発現し、次いで、これは、そのレセプターであるuPARに結合する。この結合事象は、2鎖uPAへの活性化に必須である。Ellisら、J.Biol.Chem.、264:2185−88(1989)。ヒトpro−uPAのアミノ酸配列は、以下である:
【化1】

【0003】
上記pro−uPAのアミノ酸の配列は、以下のようなそれらの標準的な3文字略語により表わされている:

【0004】
pro−uPAの構造を、図1に示す。
【0005】
uPAは、(1)N−末端上皮成長因子様のドメイン、(2)クリングル(kringle)ドメインおよび(3)C−末端セリンプロテアーゼドメインを含有する3ドメインタンパク質である。pro−uPAのためのレセプター(uPAR)は、糖脂質により細胞膜に固定した多ドメインタンパク質であり、それにより、uPAの活性化が細胞周囲の事象であることが確実となる。Behrendtら、Biol.Chem.Hoppe−Seyler、376:269−79(1995)。uPA活性は、プラスミノゲンアクチベーター阻害剤(PAI−1およびPAI−2)(これらは、結合したuPAに結合して不活性化する)により、細胞表面に限られている。このuPA活性の厳しい制御は、uPAが基質、プラスミノゲン(これは、血漿中で高濃度で存在する)に作用するので、必要である。Robbins、Meth.Enzymol.19:184−99(1970)。プラスミノゲンに対するuPAの作用の生成物であるプラスミンは、強力で幅の広いスペクトルを有するプロテアーゼであり、これは、細胞外マトリックスタンパク質を直接分解するだけでなく、潜在形態の他のプロテアーゼ(いくつかのメタロプロテアーゼを含めて)を活性化する。Werbら、N.Eng.J.Med.、296:1017−1023(1977);Mignattiら、Cell、47:487−98(1986);Heら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、86:2632−36(1989);およびMatrisian、Bioessays、14:455−63(1992)。
【0006】
腫瘍生物学では、細胞外タンパク質分解と血管形成の間の関係は、明白である。血管が成長するための新しい空間を形成するためには、既存細胞外マトリックスの崩壊および分解が必要である。タンパク質分解および血管形成のプロセスは、非常によく調和している。例えば、2個の傑出した血管形成成長因子である塩基性線維芽細胞成長因子および血管内皮成長因子は、uPAの産生を著しく上方制御した。(Montesanoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、83:7297−7301(1986);Pepperら、Biochem.Biophys.Res.Comm.181:902−906(1991))および内皮細胞によるuPARの発現(Mignattiら、J.Cell Biol.、113:1193−1201(1991);Mandriotaら、J.Biol.Chem.270:9709−9716(1995))を著しく上方制御する。それゆえ、uPA/uPARは、癌のための抗転移/抗血管形成療法を開発するための新たな標的として出現しており、この場合に、殆どの研究が行われている(Fazioliら、Trends Pharmacological Sci.15:25−29(1994))。
【0007】
しかしながら、uPA/uPARの相互作用は、タンパク質分解を細胞表面に局在化させる以上にはるかに進行する。全てのタンパク質分解効果からは無関係に、uPAによるuPARの単なる占拠は、間接的な手段により、以下の効果の1個またはそれ以上に至る信号形質導入事象を誘発する:有糸分裂誘発(Rabbaniら、J.Biol.Chem.267:14151−56(1994));c−fos遺伝子の発現(Dumlerら、FEBS Lett.322:37−40(1994));マクロファージによるシステイン−およびメタロプロテアーゼ発現(Raoら、J.Clin.Invest.96:465−74(1995));細胞骨格の硬さの増大に至る機械的な力の移動(Wangら、Am.J.Physiol.268:C1062−C1066(1995));内皮細胞の移動(Odekonら、J.Cellul.Physiol.150:258−63(1992));内皮細胞の管状構造への形態形成(Schnaperら、J.Cellul.Physiol.165:107−118(1995));および内皮細胞の変形および運動(Luら、FEBS Lett.380:21−24(1996))。これらの現象の全ては、uPAのuPARへのアクセスをブロックすることにより、ブロックされる。uPAの結合を防止したuPARのアンタゴニストは、従って、uPA活性化を先取りすることにより、タンパク質分解活性を妨害し、そしてさらに、単一形質導入のためのuPARの能力を大きく減少させる。
【0008】
uPAR拮抗作用に付随した抗血管形成効果(Minら、Cancer Res.56:2428−33(1996))により、uPARアンタゴニストは、不適切な血管形成(例えば、失明に至る眼球の血管形成)により特徴づけられる他の疾患において、役割を果たすことができるはずである。さらに、uPARアンタゴニストはまた、炎症性疾患(例えば、関節リウマチ)において、治療上の役割を果たすと思われる(Rondayら、Br.J.Rheum.35:416−423(1996))。
【0009】
薬剤療法への1つのアプローチは、uPA自体を、その触媒セリンプロテアーゼドメインで標的にすることである。Yangら、Fibrinolysis、6(Suppl.1):31−34、(1992)。アミロライド(Vassalliら、FEBS Lett.、214:187−191(1987);およびKellenら、Anticancer Res.8:1373−76(1988))およびp−アミノベンズアミジン(Geratzら、Thrombosis Res. 24:73−83(1981);およびBillstroemら、Int. J. Cancer、61:542−47(1995))は、この部位の競合的阻害剤であり、そしてインビボでの抗転移活性を有する。他のセリンプロテアーゼと比較したuPAの選択的な阻害は、フェニルグアニジンで明らかであり(Yangら、J.Med.Chem.33:2956−61(1990))、そしてベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキサミジンでは、さらに明らかであった(Bridges、Bioorganic & Medicinal Chemistry、1:403−410(1993);Towleら、Cancer Res.、53:2553−59(1993);およびRabbaniら、Int.J.Cancer、63:840−56(1995))。
【0010】
uPA−uPAR相互作用のための結合エピトープを規定するために、セリンプロテアーゼドメインを欠いているuPAのアミノ末端断片(残基1〜135)が、高い親和性のサブナノモル結合に充分となることが、最初に明らかとなった。(Stoppelliら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:4939−43(1985))。さらに別の研究により、成長因子ドメイン単独(残基1〜48)が、この結合を与えることが明らかとなった。(Robbiatiら、Fibrinolysis、4:53−60(1990);およびStratton−Thomasら、Protein Engineering8:463−70(1995))。Danoらは、1990年10月18日に公開されたWO 90/12091において、uPAアミノ残基12〜32のuPAR結合部位と同一または実質的に同一の配列を含む物質を投与することにより、uPAのuPARへの結合を防止できたことを開示している。RosenbergおよびStratton−ThomasによるWO 94/28145(1994年12月8日)は、uPAがuPARに結合するのを防止する脱フコシル化(de−fucosylated)HuPA1−48の調製および使用を開示している。
【0011】
この成長因子ドメイン内のペプチド断片に関する初期の研究により、残基20〜30は結合の特異性を与えるが、適切な結合立体配置を得るためには、残基20〜30に加えて、残基13〜19が必要であることが明らかになった。具体的には、その開鎖形態で2個のシステイン(第3のシステインは、Alaにより置換され、所望でないジスルフィド結合の形成を防止する)を含有するペプチド[Ala19]uPA−(12−32)は、100nMのIC50で、uPAのuPARへの結合を防止した。その酸化された環状形態(これは、Cys13およびCys31の間にて、鎖内ジスルフィド結合を有する)では、このペプチドは、40nMのIC50で、結合を防止した。残基13〜19は、間接的に作用して、残基20〜30が正しい結合立体配置に達するのを助ける足場を提供することが提案された。Appellaら、J.Biol.Chem.262:4437−40(1987)。
【0012】
これらの結果は、以下の報告がなされたときに、部分的に確認された:線状ペプチド20〜30は、1,000nMのIC50で、uPAのuPARへの結合を阻害した。より長いペプチド17〜34は、100nMのIC50を有しており、それよりずっと強力である。マウスにおけるマウスLewis Lung癌肺のマウス配列阻害自然転移から誘導される対応する、より長いペプチド(17〜34)が効果がないことも明らかとなった。他方、対応する線状のより短いペプチド(20〜30)は、効果を有さなかった。Kobayashiら、Int.J.Cancer、57:727−33(1994)。RosenbergおよびDoyle(1994年12月8日)によるWO 94/28014は、15nM〜>50μMのIC50値で、uPARへの結合に対してuPAのN−末端断片と競合したバクテリオファージ上で現れた25個のランダムペプチドの調製および使用を開示している。
【0013】
最も最近では、Magdolenら、「Systematic Mutational Analysis of the Receptor−binding Region of the Human Urokinase−type Plasminogen Activator」、Eur.J.Biochem.、237:743−51(1996)は、Asn22、Lys23、Tyr24、Phe25、Ile28およびTyp30が、保持すべき重要な側鎖であるという発見と共に、uPAのアミノ末端断片の結合ループのアラニン走査突然変異誘発を記述している。さらに、Magdolenらは、Hansenら、Biochemistry、33:4847−64(1994)を引用して、Thr18とAsn32の間の領域が、リング様構造にされたフレキシブルな7残基オメガループからなることを開示している。Cys19およびCys31は、互いに非常に近接しているものの(0.61nm)、それらは、互いには、ジスルフィド結合を形成しない。代わりに、Cys19は、Cys11とジスルフィド結合を形成し、そしてCys31は、Cys13と結合を形成する。図2を参照せよ。従って、uPA上のuPAR結合部位は、簡単で小さな環構造を形成しない。
【0014】
一部の科学者は、ペプチドアナログの1個またはそれ以上の成長因子ドメインを環化してそれらの競争結合活性を高める可能性を調査したが、構造の一部の他の束縛型修飾を少なくとも追加することなしには、大きな成功が得られなかった。
例えば、Chamberlinら、J.Biol.Chem.270:21062−21067(1995)では、分子内ジスルフィド結合の導入により束縛されたペプチドはまた、相当な活性を得るためには、そのペプチドループ内のプロリンを他の単位で置換することが必要であった。Lougheedら(Protein Sci.、4:773−80(1995))は、トロンボモジュリンの5番目のEGF様ドメインに由来のペプチドが、非常に弱い生物学的活性を有しており、これは、環化により僅かに(2倍)高められることを発見した。アミノ酸の「尾部」の追加的存在およびアミノ酸の1個の欠落は、共に、必要であることが分かっており、当時でさえも、最高のペプチド(epptide)は、弱い活性であるに過ぎなかった(マイクロモル範囲という表現(text))。それゆえ、環化それ自体は、著しい活性を与えなかった。さらに、トロンボモジュリンの他の研究者は、5番目のEGF様ドメインでの架橋するジスルフィド結合の数は、直接的というよりもむしろ逆比例して、阻害効力に関係していることを見出した。Hunterら、Protein Sci.、4:2129−37(1995)。
【0015】
本発明者は、ペプチド断片20〜30から誘導した新規な環状構造(ここで、残基20は、残基30と共有結合している)が、uPARへの結合能を示し、そしてuPAのuPARへの結合のアンタゴニストであることを発見した。これらのペプチドは、[Ala19]uPA−(12−32)(Appellaら、上記)またはuPA17−34(Kobayashiら、上記)のいずれよりも短いが、ほぼ同程度に効果的に結合する。従来考えられていたこととは反対に、[Ala19]uPA−(12−32)中のVal20への8個のアミノ酸N−末端およびuPA17−34中のTrp30への4個のアミノ酸CO末端は、高い結合親和性には必要ではないことが発見された。いずれの特定の理論によっても束縛することを望まないものの、現在では、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーターにて、そのレセプターとの結合に必要な最小の結合エピトープは、11個だけのアミノ酸のループであると思われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題と課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、式1または式2の環状ペプチド化合物である:
【化2】

ここで、式1では、XからX11のすべては、L−系列アミノ酸を表わし、式2では、XからX11のすべては、D−系列アミノ酸を表わす;
は、Val、ProまたはAlaである;
は、SerまたはAlaである;
は、AsnまたはGlnである;
は、LysまたはHisである;
は、Tyr、Trp、Phe、置換Phe、二置換Phe、ホモフェニルアラニン、β−(3−ピリジル)アラニン、β−(2−チエニル)アラニン、β−(1−ナフチル)アラニンまたはβ−(2−ナフチル)アラニンである;
は、Tyr、Trp、Phe、置換Phe、二置換Phe、ホモフェニルアラニン、β−(3−ピリジル)アラニン、β−(2−チエニル)アラニン、β−(1−ナフチル)アラニンまたはβ−(2−ナフチル)アラニンである;
は、SerまたはAlaである;
は、AsnまたはAlaである;
は、Ile、LeuまたはValである;
10は、HisまたはAlaである;
11は、Tyr、Trp、Phe、置換Phe、二置換Phe、ホモフェニルアラニン、β−(3−ピリジル)アラニン、β−(2−チエニル)アラニン、β−(1−ナフチル)アラニンまたはβ−(2−ナフチル)アラニンである;そして
Lは、XおよびX11を連結したとき、アミノ酸XのCα炭素とアミノ酸X11のCα炭素の間の長さ寸法が、約4オングストローム単位と12オングストローム単位の間になるような連結単位である;
但し、該化合物が式1であるとき、Lは、ジスルフィド結合により連結された2個のシステイン単位を含有しない。
【0017】
他の実施態様では、本発明の化合物は、特に、癌の処置において、uPAのuPARへの結合を阻害するための方法および治療組成物で使用される。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明の環状ペプチド化合物は、式1であるか、または式2の対応するレトロ−インベルソ(retro−inverso)環状ペプチド化合物であるか、いずれかであり得る。本発明の環状ペプチド化合物が式1のとき、XからX11の全ては、L−系列の天然アミノ酸を表わす。他方、本発明の化合物が式2のとき、XからX11の全ては、D−系列の非天然アミノ酸を表わす。しかしながら、式1または式2のいずれであれ、X、XまたはX11のいずれか1個は、置換フェニルアラニンまたは二置換フェニルアラニンであり、この置換基は、ハロ(例えば、4−フルオロ、4−クロロ、4−ブロモまたは3,4−ジクロロ);低級アルキル(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、第三級ブチルまたはn−ペンチル);ニトロなどである。
【0019】
本発明の化合物のリンカー部分Lは、X11とXの間でブリッジを形成し、それにより、この化合物を環化する。リンカーLは、アミノ酸XのCα炭素とアミノ酸X11のCα炭素の間の長さ寸法を約4オングストローム単位と12オングストローム単位の間、好ましくは、約5オングストローム単位と10オングストローム単位の間、さらに好ましくは、約6オングストローム単位と8オングストローム単位の間に設定するような、ほとんどいずれの二価基でもあり得る。
【0020】
式1の化合物
式1では、XをXに結合するアミド結合CO−NHは、C=O部分がアミノ酸Xからであり、そしてNH部分がアミノ酸Xからであるようにされる。同じ配列は、XとXの間の結合などに適用される。言い換えれば、このペプチドは、そのN末端として、Xを有し、そのC末端として、X11を有する。
【0021】
しかしながら、Lは、非置換の場合、ジスルフィド結合により連結された2個のシステイン単位を含有できないこと、そのN末端にてR基で置換され得ず、そのC末端にてR基で置換され得ず、またはN末端またはC末端の両方にて、それぞれ、RおよびR(ここで、Rはアセチルであり、そしてRはアミノであり、その結果、C末端が第一級カルボキサミドである)で変性され得ないことに注目すべきである。このように除外されたL基の特定の例には、以下が挙げられる:
【化3】

【0022】
式1の化合物を調製するためには、Lは、その末端の1個では、アミノ酸X11のα−カルボキシル基の炭素に化学的に結合できる官能基を提供し、そしてその他方の末端では、アミノ酸Xのα−アミノ窒素原子に化学的に結合できる官能基を提供するように、選択される。
【0023】
あるいは、線状ペプチドX−X−X−X−X−X−X−X−X−X10−X11は、最終リンカー基(すなわち、L)の一部を含有するそのX11末端にて、延長により合成でき、そして後に、所望のペプチド鎖の合成後、X末端は、L基で延長して、化合物L−X−X−X−X−X−X−X−X−X−X10−X11−Lが得られる。LおよびLの遊離末端は、次いで、互いに化学的に結合できる。このようにして、あらかじめ結合した断片LおよびLからの環化工程中に、リンカーLが形成できる。Lについての以下に示す例では、Lの方向は、左から右に読むと、XからX11であり、すなわち、LのCO−末端は、Xに接続されており、そしてLのNH末端は、X11に接続されている。
【0024】
式1について有用なL基の典型的な例には、以下が挙げられる:
【化4】

Lがシステインまたはホモシステイン残基を含有するとき、このような残基の鏡像異性体中心の立体配置は、L−またはD−のいずれかであり得る。
【0025】
式2の化合物(レトロ−インベルソ化合物)
本発明の環状ペプチド化合物が式2のとき、アミノ酸X〜X11は、式1について上で記述したL−系列の天然アミノ酸の立体配置とは反対の鏡像異性体立体配置を有する「D−系列」の非天然ペプチドである。式2では、X11をX10に結合するアミド結合CO−NHは、C=O部分がアミノ酸X11からであり、そしてNH部分がアミノ酸X10からであるようにされる。同じ配列は、X10とXの間の結合などに適用される。言い換えれば、このペプチドは、そのN末端として、X11を有し、そのC末端として、Xを有する。
式2の上記構造では、L部分は、上記のように、その末端の1個では、α−カルボキシル基よりもむしろ、X11残基のα−アミノ窒素原子に化学的に結合できる官能基を提供し、そしてその他方の末端では、α−アミノ窒素原子よりもむしろ、アミノ酸Xのα−カルボキシル基の炭素に化学的に結合できる官能基を提供するように、選択される。
【0026】
また、上記のように、線状ペプチドX−X−X−X−X−X−X−X−X−X10−X11は、そのX末端にてL基を用い、そしてそのX11末端にてL基を用いて合成でき、化合物L−X−X−X−X−X−X−X−X−X−X10−X11−Lが得られ、その結果、LおよびLの遊離末端は、化学的に結合して、本発明の環状レトロ−インベルソ化合物を形成できる。
【0027】
Lについて以下で示す例では、Lの方向は、左から右に読むと、XからX11であり、すなわち、LのNH−末端は、Xに共有結合されており、そしてLのCO末端は、X11に接続されている。これらのリンカーがシステインまたはホモシステイン残基を含有する場合、このような残基の鏡像異性体中心の立体配置は、D−形態またはL−形態のいずれかであり得る。
【0028】
式2のレトロ−インベルソペプチドの有用なL基の例には、以下が挙げられる:
【化5】

【0029】
一般的な化学合成手順
本発明のペプチドを、組み換えDNA技術を用いて調製しないとき、それらは、好ましくは、固相合成(例えば、Merrifield、J.Amer.Chem.Soc.、85:2149−54(1963)に一般的に記述されたものがあるが、当該技術分野で公知の他の等価の化学合成もまた、有用である)を用いて、調製される。固相ペプチド合成は、保護α−アミノ酸を適切な樹脂にカップリングすることにより、ペプチドのC−末端から開始できる。このような出発物質は、α−アミノ保護アミノ酸を、エステル結合により、クロロメチル化樹脂もしくはヒドロキシメチル化樹脂に結合させるか、またはアミド結合により、BHA樹脂もしくはMBHA樹脂に結合させることにより、調製できる。
【0030】
ヒドロキシメチル樹脂の調製は、Bodanskyら、Chem.Ind.、38:1597−98(1966)により、記述されている。クロロメチル化樹脂は、BioRad Laboratories、Richmond、Calif.およびLab.Systems、Inc.から市販されている。このような樹脂の調製は、Stewartら、「Solid Phase Peptide Synthesis」(Freeman & Co.、San Francisco 1969)、Chapter 1,1−6に記述されている。BHAおよびMBHA樹脂支持体は、市販されており、一般に、合成される所望のポリペプチドがC−末端に非置換アミドを有するときのみ、使用される。
【0031】
アミノ酸XからX11は、ペプチド結合の形成のための当該技術分野で周知の技術を用いて、成長ペプチド鎖にカップリングできる。例えば、1つの方法は、アミノ酸のカルボキシル基を成長ペプチド鎖の遊離のN−末端アミノ基との反応を受けやすくする誘導体へと、アミノ酸を転化することを包含する。具体的には、保護アミノ酸のC−末端は、C−末端とエチルクロロホルメート、フェニルクロロホルメート、第二級ブチルクロロホルメート、イソブチルクロロホルメートまたはピバロイルクロライドなどの酸塩化物との反応により、混合無水物に転化できる。
【0032】
あるいは、アミノ酸のC−末端は、活性エステル(例えば、2,4,5−トリクロロフェニルエステル、ペンタクロロフェニルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、p−ニトロフェニルエステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、または1−ヒドロキシベンゾトリアゾールから形成したエステル)に転化できる。
【0033】
他のカップリング法は、適切なカップリング剤(例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドまたはN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド)の使用を包含する。当業者に明らかな他の適切なカップリング剤は、Grossら、The Peptide:Analysis、Structure、Biology、Vol.I:、「Major Methods of Peptide Bond Formation」(Academic Press 1979)に開示されており、その開示内容は、本明細書中で参考として援用される。
【0034】
このペプチド合成で使用する各アミノ酸のα−アミノ基は、それらの活性α−アミノ官能性に関係する副反応を防止するために、カップリング反応中に、保護しなければならないことが分かる。ある種のアミノ酸は、反応性側鎖官能基(例えば、スルフヒドリル、アミノ、カルボキシルおよびヒドロキシル)を含有すること、およびこのような官能基がまた、初期カップリング工程および引き続くカップリング工程の両方の間に、(1)α−アミノ基部位または(2)反応性側鎖部位のいずれかで化学反応が起こることを防止するために、適切な保護基で保護しなければならないこともまた、理解するべきである。
【0035】
このペプチドを合成する際に使用する特定の保護基の選択では、典型的には、以下の一般的な規則に従う。具体的には、α−アミノ保護基は、(a)カップリング反応で使用する条件下にて、α−アミノ官能性を不活性とするべきであり、(b)側鎖保護基を除去せずかつこのペプチド断片の構造を変えない条件下にて、このカップリング反応後に、容易に除去可能であるべきである、そして(c)カップリング直前に、活性化の際のラセミ化の可能性を実質的に少なくするべきである。
【0036】
他方、側鎖保護基は、(a)カップリング反応で使用する条件下にて、側鎖官能基を不活性にするべきであり、(b)α−アミノ保護基を除去する際に使用する条件下にて、安定であるべきであり、そして(c)そのペプチド鎖の構造を変えない反応条件下にて、所望の完全に組み立てたペプチドから容易に除去可能であるべきである。
【0037】
ペプチド合成に有用であることが知られている保護基が、それらの除去に使用される試薬との反応性において異なることは、当業者に明らかである。例えば、ある種の保護基(例えば、トリフェニルメチルおよび2−(p−ビフェニル)イソプロピルオキシカルボニル)は、非常に不安定であり、そして穏やかな酸条件下にて、切断できる。他の保護基(例えば、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、t−アミルオキシカルボニル、アダマンチル−オキシカルボニルおよびp−メトキシベンジルオキシカルボニル)は、より安定であり、それらの除去には、中程度に強い酸(例えば、トリフルオロ酢酸、塩酸、または酢酸中の三フッ化ホウ素)が必要である。さらに他の保護基(例えば、ベンジルオキシカルボニル(CBZまたはZ)、ハロベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル シクロアルキルオキシカルボニルおよびイソプロピルオキシカルボニル)は、さらに、より安定であり、そしてそれらの除去には、さらにより強い酸(例えば、フッ化水素、臭化水素、またはトリフルオロ酢酸中のトリフルオロ酢酸ホウ素)が必要である。
当該技術分野で公知の適切な保護基は、Grossら、The Peptide:Analysis、Structure、Biology、Vol.3:、「Protection of Functional Groups in Peptide Synthesis」(Academic Press 1981)に記述されている。
【0038】
α−アミノ基を保護するかまたは側鎖基を保護するのに有用なアミノ酸保護基のクラスの中には、以下が含まれる:
(1)α−アミノ基については、3つの保護基の典型的なクラスには、以下がある:
(a)芳香族ウレタン型保護基(例えば、フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、CBZ、および置換CBZ(例えば、p−クロロベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、およびp−メトキシベンジルオキシカルボニル、o−クロロベンジルオキシカルボニル、2,4−ジクロロベンジルオキシカルボニル、2,6−ジクロロベンジルオキシカルボニル)など);(b)脂肪族ウレタン型保護基(例えば、BOC、t−アミルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、2−(p−ビフェニル)−イソプロピルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニルなど);および(c)シクロアルキルウレタン型保護基(例えば、シクロペンチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニルおよびシクロヘキシルオキシカルボニル)。好ましいα−アミノ保護基は、BOCおよびFMOCである。
(2)Lys中に存在する側鎖アミノ基については、上記(1)で述べた基のいずれか(例えば、BOC、2−クロロベンジルオキシカルボニルなど)により、保護を行うことができる。
(3)Argのグアニジノ基については、ニトロ基、トシル基、CBZ基、アダマンチルオキシカルボニル基、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル基、2,3,6−トリメチル−4−メトキシフェニルスルホニル基またはBOC基により、保護を行うことができる。
(4)Ser、ThrまたはTyrの水酸基については、例えば、t−ブチル;ベンジル(BZL);または置換BZL(例えば、p−メトキシベンジル、p−ニトロベンジル、p−クロロベンジル、o−クロロベンジルおよび2,6−ジクロロベンジル)により、保護を行うことができる。
(5)AspまたはGluのカルボキシル基については、例えば、BZL、t−ブチル、シクロヘキシル、シクロペンチルなどのような基を用いたエステル化により、保護を行うことができる。
(6)Hisのイミダゾール窒素については、適切には、保護基として、ベンジルオキシメチル(BOM)またはトシル部分が使用される。
(7)Tyrのフェノール性水酸基については、適切には、テトラヒドロピラニル、第三級ブチル、トリチル、BZL、クロロベンジル、4−ブロモベンジルおよび2,6−ジクロロベンジルのような保護基が使用される。好ましい保護基は、ブロルベンジルオキシカルボニルである。
(8)AsnまたはGlnの側鎖アミノ基については、好ましくは、キサンチル(Xan)が使用される。
(9)Metについては、このアミノ酸は、好ましくは、保護されないままである。
(10)Cysのチオ基については、典型的には、p−メトキシベンジルが使用される。
【0039】
成長ペプチド鎖の最初のC−末端アミノ酸(例えば、Lys)は、典型的には、適切に選択した保護基(例えば、BOC)により、そのN−アミノ酸位置で保護される。BOC−Lys−(2−クロロベンジルオキシカルボニル)−OH基は、まず、約25℃で、2時間にわたって、攪拌しながら、イソプロピルカルボジイミドを用いてベンジルヒドリルアミン樹脂にカップリングできるか、またはHorikiら、Chemistry Letters、165−168(1978)で述べられている手順に従って、クロロメチル化樹脂にカップリングできる。BOC−保護アミノ酸の樹脂支持体へのカップリングに続いて、α−アミノ酸保護基は、通常、典型的には、塩化メチレン中のトリフルオロ酢酸(TFA)またはTFA単独を用いることにより、除去される。α−アミノ基の脱保護反応は、広範囲の温度にわたって起こり得るが、通常、約0℃と室温の間の温度で行われる。
【0040】
他の標準的なα−アミノ基脱保護試薬(例えば、ジオキサン中のHCl)、および特定のα−アミノ保護基の除去のための条件は、当業者の技術の範囲内である(例えば、Luebkeら、Chemie und Biochemie der Aminosaueren、Peptide und Proteine I、Chapter II−1、102−117(Georg Thieme Verlag Stuttgart 1975)(その内容は、本明細書中で参考として援用されている)に記述の技術)。α−アミノ保護基の除去に続いて、未保護のα−アミノ基(これは、一般に、依然として、側鎖は保護されている)は、意図された順序で、段階的な様式でカップリングできる。
【0041】
この段階的なアプローチに対する代替的な方法には、断片縮合法(fragment condensation method)があり、この方法では、予め形成した短い長さのペプチド(それぞれ、所望の配列の一部を表している)が、固相支持体に結合したアミノ酸の成長鎖にカップリングされる。この段階的なアプローチに特に適切なカップリング試薬には、N,N’−ジシクロヘキシル−カルボジイミドまたはジイソプロピルカルボジイミドがある。また、断片アプローチには、カップリング試薬の選択、ならびに、所望の性質およびサイズの断片をカップリングするのに必要な断片化パターンの選択は、成功のために重要であり、これらは、当業者に公知である。
【0042】
それぞれ保護されたアミノ酸またはアミノ酸配列は、通常、化学量論量より過剰な量で、固相反応器に導入され、そしてカップリングは、適切には、有機溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、CHClまたはそれらの混合物)中で行われる。カップリングが不完全な場合、カップリング手順は、通例、次のアミノ酸へのカップリングの準備におけるN−アミノ保護基の除去前に、繰り返される。α−アミノ保護基の除去に続いて、残りのα−アミノおよび側鎖保護アミノ酸は、意図された順序で、段階的な様式でカップリングできる。合成の各段階でのカップリング反応の成功をモニターしてもよい。合成をモニターする好ましい方法は、Kaiserら、Anal.Biochem.、34:595(1970)に記述のようなニンヒドリン反応による。カップリング反応はまた、周知の商業的な方法および装置(例えば、Beckman 990 Peptide Synthesizer)を用いて、自動的に実施できる。
【0043】
所望のペプチド配列が完成すると、保護ペプチドを、樹脂支持体から切断しなければならず、そして全ての保護基を除去しなければならない。切断反応および保護基の除去は、適切には、脱保護反応と同時にまたはそれに引き続いて、達成される。ペプチドを樹脂に固定する結合がエステル結合の場合、それは、エステル結合を破壊し、そして樹脂マトリックスに浸透できる任意の試薬により、切断できる。1つの特に有用な方法は、液状無水フッ化水素での処理による。この試薬は、通常、樹脂からペプチドを切断するだけでなく、全ての酸不安定性保護基を除去し、そしてそれにより、完全に脱保護したペプチドを直接与える。酸不安定性ではない追加の保護基が存在する場合、追加の脱保護工程を行わなければならない。これらの工程は、特定の必要性および状況に応じて、上記フッ化水素処理の前または後のいずれかで実施できる。
【0044】
クロロメチル化樹脂を使用するとき、フッ化水素切断/脱保護処理により、一般に、遊離のペプチド酸が形成される。ベンズヒドリルアミン樹脂を使用する場合、フッ化水素処理により、一般に、遊離のペプチドアミドが得られる。アニソールおよびジメチルスルフィドの存在下にて、0℃での、1時間にわたるフッ化水素との反応により、側鎖保護基が除去され、そして、同時に、ペプチドが樹脂から解離される。
【0045】
保護基を除去することなしにペプチドを切断することが望ましいとき、保護ペプチド−樹脂は、メタノール分解に供することができ、それにより、そのC−末端カルボキシル基がメチル化された保護ペプチドを得る。このメチルエステルは、引き続いて、穏やかなアルカリ条件下にて加水分解されて、遊離のC−末端カルボキシル基が得られる。ペプチド鎖上の保護基は、次いで、強酸(例えば、液状フッ化水素)での処理により、除去できる。特に有用なメタノール分解のための技術には、Mooreら、Peptides、Proc.Fifth Amer.Pept.Symp.518−521(Goodmanら編、1977)の方法があり、この方法では、保護ペプチド−樹脂は、クラウンエーテルの存在下にて、メタノールおよび青酸カリウムで処理される。
【0046】
クロロメチル化樹脂を使用する場合、樹脂から保護ペプチドを切断する他の方法には、(l)アミノ分解および(2)ヒドラジン分解が挙げられる。望ましい場合、得られるC−末端アミドまたはヒドラジドは、遊離のC−末端カルボキシル部分に加水分解でき、そして保護基は、通常どおりに除去できる。N−末端α−アミノ基上に存在する保護基は、保護ペプチドが支持体から切断される前または後のいずれかで、除去できる。
【0047】
本発明のポリペプチドの精製は、典型的には、クロマトグラフィー法(例えば、分取HPLC(逆相HPLCを含めて)、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、分配(Partition)クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー(モノクローナル抗体カラムを含めて)など、または他の向流分配などの従来の技術)を用いて、達成される。
【0048】
本発明の化合物は、競合リガンド結合アッセイにおいて、それらがpro−uPAのuPARへの結合を阻害する能力について、容易に試験できる。このアッセイは、好ましくは、試験ウェルの壁にコーティングされて分子を捕捉する作用をするチャイニーズハムスターの卵巣細胞に由来の組み換え可溶性ヒトウロキナーゼレセプター(uPAR)(これは、捕捉分子として作用する)を用いる固相イムノアッセイである。試験される化合物は、uPAR上の結合部位について、pro−uPAと競争する。
試験ウェルの壁上でuPARに結合するpro−uPAの量は、ビオチン化されたモノクローナル抗uPA抗体(これは、次に、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼにより認識される)で検出できる。基質として、過ホウ素酸塩(perborate)および3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(「TMB」)を添加することにより、ペルオキシダーゼが青色生成物を発生することが可能になり、これは、それゆえ、比色分析の信号を与える。アッセイの感度は、好ましくは、試験溶液に硫酸(これは、容易に読み取れる黄色を与える)を添加することにより、さらに高められる。
【0049】
一般に、試験化合物のuPARへの結合が高くなる程、pro−uPAの結合からの排除が大きくなり、そして発生する光学信号が少なくなる。この捕捉型アッセイの特異性は、使用されるuPARの純度に固有のものであり、この純度自体は、SDS−PAGE、非還元(non−reducing)ウエスタンブロット分析(インタクトなuPARの公知分子量である46kDでの明瞭な単一バンド)により、試験できる。
【0050】
このアッセイでの検出抗体は、uPAのクリングルドメイン内でのエピトープを認識し、それゆえ、このクリングルドメインを欠いているポリペプチド(例えば、uPAの成長因子ドメイン)または成長因子ドメインの一部を表わすペプチド誘導体(例えば、本発明の化合物)の競争的結合を測定するのに、適切である。このアッセイは、3個の異なる形態のuPAに対して、有効である:(1)pro−uPA(単一鎖uPAとしても知られている);(2)高分子量uPA(2本鎖uPAとしても知られている);および(3)低分子量uPA。
【0051】
典型的なアッセイ手順は、以下のようである:
uPARを、96ウェルプレート中のマイクロテストウェルにコーティングする。0.8nM(160ng/mL)のpro−uPAを、連続希釈濃度の試験化合物とともにインキュベートする。pro−uPAおよび試験化合物の両方を、0.1% Triton X−100および1.0%ウシ血清アルブミン(pH7.4)を有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈する。pro−uPA/試験化合物の混合物の1ウェルあたりの全容量は、50μLである。そしてリガンドを、4℃で、およそ16時間にわって、一晩結合させる。ウェルを、生理食塩水洗浄緩衝液(100mMリン酸三ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、pH7.4、1% Triton X−100および0.025%ナトリウムアジドを含有する)で4回洗浄する。検出抗体溶液(50μL)を添加し、そして混合物を室温で1時間保持する。ウェルを洗浄緩衝液で洗浄する。
次に、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(50μL)を添加し、そして室温で1時間インキュベートする。ウェルを、再度、洗浄緩衝液で洗浄する。最後に、ペルオキシダーゼ基質TMB(50μL)および過ホウ酸塩(perborate)を添加し、そして20分間反応させて、青色を発生させる。硫酸(0.5M、50μL)を添加すると、黄色が生じる。次いで、この黄色の吸光度を、Dynatech Laboratoriesが製造したMRXマイクロプレートリーダーにて、450ナノメーターで読み取る。各試験化合物を、5つの異なる濃度で、3回ずつアッセイする。
【0052】
pro−uPAのuPARへの結合の阻害は、通常、用量に関係しており、その結果、50%の結合阻害を生じるのに必要な試験化合物の濃度(IC50値)は、容易に決定される。一般に、本発明の化合物は、約10−5モル未満、すなわち、約10μM未満のIC50値を有する。好ましくは、本発明の化合物は、約10−6モル未満、すなわち、約1μM未満のIC50値、さらにより好ましくは、約10−7モル未満のIC50値を有する。
【0053】
投与および用途
本発明の薬学的組成物中で使用できる本発明の環状ペプチド化合物には、上記化合物の全てだけでなく、これらの化合物の薬学的に受容可能な塩が挙げられる。塩基性基を含有する本発明の化合物の薬学的に受容可能な酸付加塩は、適切な場合、当該技術分野に公知の方法により、塩基性アミンの存在下にて、強いまたは中程度に強い非毒性の有機酸または無機酸を用いて、形成される。本発明に含まれる酸付加塩の代表的なものには、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩および硝酸塩が挙げられる。
【0054】
酸性基を含有する本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩基付加塩は、有機塩基および無機塩基から、公知の方法により調製され、そしてこれらには、例えば、非毒性のアルカリ金属塩基およびアルカリ土類塩基(例えば、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化アンモニウム);ならびに非毒性の有機塩基(例えば、トリエチルアミン、ブチルアミン、ピペラジンおよびトリ(ヒドロキシメチル)メチルアミン)が挙げられる。
【0055】
上述したように、本発明の化合物は、uPAの形成を阻害する能力、それ自体を抗腫瘍活性の形態で表わすことができる特性を有する。本発明の化合物は、それ自体で活性であり得るか、またはインビボで活性化合物に転化されるプロドラッグであり得る。
【0056】
本発明の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な塩は、好都合な投薬形態(例えば、カプセル、錠剤または注射可能製剤)に組み入れることができる。個体形態または液状の薬学的に受容可能なキャリアを使用してもよい。好ましくは、本発明の化合物は、例えば、注射により、全身的に投与される。注射を使用する場合、注射は、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射または腹腔内注射でもあり得る。注射可能物は、溶液もしくは懸濁液のいずれかとして、注射前の液体中の溶液または懸濁液に適切な個体形状として、または乳濁液としてのいずれかで、通常の形態で、調製され得る。
【0057】
固体形態キャリアには、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム二水和物、石膏、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸が挙げられる。液状キャリアには、シロップ、落花生油、オリーブ油、生理食塩水、水、デキストロース、グリセロールなどが挙げられる。同様に、キャリアまたは希釈剤には、任意の延長放出性物質(例えば、グリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレート)を、単独でまたはワックスと共に、含有できる。液状キャリアを使用する場合、その調製物は、シロップ、エリキシル、乳濁液、柔軟ゼラチンカプセル、滅菌注射可能液体(例えば、溶液)、例えば、アンプル、または水性もしくは非水性の液体懸濁液の形態であり得る。このような薬学的組成物の要約は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton Pennsylvania(Gennaro第18版、1990)に見られ得る。
【0058】
薬学的調製物は、以下の、製薬化学者の慣用技術により製造され、この方法は、適切な成分を混合し、顆粒化し、そして圧縮する工程(錠剤形態に必要な場合)か、または混合し、充填し、そして適切に溶解させて、経口投与、非経口投与、局所投与、経皮投与、膣内投与、鼻腔内投与、気管支内投与、眼内投与、耳内投与および直腸内投与に望ましい製品を得る工程などの工程を包含する。もちろん、これらの組成物はまた、少量の非毒性補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤など)も含有できる。
【0059】
本発明の組成物は、さらに、抗腫瘍剤である1種またはそれ以上の他の化合物、例えば、有糸分裂阻害剤(例えば、ビンブラスチン);アルキル化剤(例えば、メトトレキセート、プリトレキシム(pritrexim)またはトリメトレキセート(trimetrexate));代謝拮抗薬(例えば、5−フルオロウラシルおよびシトシンアラビノシド);インターカレート(intercalating)抗体(例えば、アドリアマイシンおよびブレオマイシン);酵素(例えば、アスパラギナーゼ);トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド);または生物学的応答調節剤(例えば、インターフェロン)を含有できる。
【0060】
本発明の化合物はまた、1種またはそれ以上の他の化合物(抗菌剤、抗真菌剤、駆虫剤、抗ウイルス剤、抗乾癬剤および抗コクシジウム剤を含めて)を含有できる。例示的な抗菌剤には、例えば、スルホンアミド(例えば、スルファメトキサゾール、スルファジアジン、スルファメータ(sulfameter)またはスルファドキシン(sulfadoxin));DHFR阻害剤(例えば、トリメトプリム、ブロモジアプリムまたはトリメトレキセート);ペニシリン;セファロスポリン;アミノグリコシド;タンパク質合成の静菌阻害剤;キノロンカルボン酸およびそれらの縮合イソチアゾールアナログなどが挙げられる。
【0061】
本発明の他の局面は、uPAのuPARへの結合を防止する治療プロセスに関し、このプロセスは、脊椎動物宿主(例えば、哺乳類または鳥類)に、本発明によるuPAのuPARへの結合を阻害する有効量を投与する工程を包含する。本発明の化合物は、哺乳類宿主(例えば、ヒト宿主、および獣医の介護を受けることが多い他の動物宿主)の処置に、特に有用である。さらに、適切な放射性 蛍光発生的、発色性または化学性の標識を運搬できる本発明のペプチドはまた、組織試料中のuPARレベルを定量化するのに使用でき、従って、このレセプターが病理学的な役割を果たす疾患にて、用途を有する。
【0062】
上記環状ペプチド化合物のいずれか、またはそれらの薬学的に受容可能な塩は、本発明の治療プロセスで使用され得る。この化合物は、希釈剤またはキャリアを含有する薬学的に受容可能な組成物(例えば、上記のもの)の形態で、本発明の治療プロセスで投与できる。これらの化合物の用量は、好ましくは、有効量の活性化合物を含有する薬学的投薬単位を含む。有効量とは、1種またはそれ以上の薬学的投薬単位の投与により、uPAのuPARへの結合を阻害して、それから有益な効果を誘導するのに充分な量を意味する。
【0063】
投与する化合物の量は、活性成分の選択、処置される病気、投与様式、個々の検体、および医師の判断に依存する。調製物の特異性に依存して、より少ないかまたはより多い用量が必要とされ得る。脊椎動物宿主に対する代表的な1日投薬量単位は、脊椎動物宿主の体表面積1平方メートルあたり、約5,000mgまでの量の活性化合物を含有する。全身的な投与には、約0.05〜10mg/kgの範囲の投薬量が提案されている。局所投与には、約0.01〜20%の濃度範囲、好ましくは、1〜5%の濃度範囲の活性成分の投薬量が提案されている。経口投与には、約10〜300mgの範囲の合計1日投薬量が提案されている。しかしながら、個々の処置レジメンに関する変数の数は多いので、前述の範囲は、単に、提案的なものにすぎず、そしてこれらの推奨される値からの相当な逸脱が予想される。
【0064】
選択される用量は、任意の公知の投与方法(局所的または経皮的(例えば、軟膏、クリームまたはゲル);経口的;直腸的(例えば、坐剤);非経口的(注射または連続的な注入による);膣内から;鼻腔内から;気管支内から;耳内から;または眼内を含む)により、uPAのuPARへの結合の阻害により媒介される処置が必要な温血動物、または哺乳類(例えば、ヒト(患者))に投与できる。
【0065】
本発明の環状ペプチド化合物は、さらに、1個またはそれ以上の、以下の効果を奏することによりとして、特徴づけることができる:uPARへのuPAの結合の阻害剤効果、タンパク質分解阻害剤効果、プログラム化遺伝子発現の阻害効果;細胞の運動、移動および形態形成の阻害効果;ある種のプロ成長因子の、成長因子の活性化形態への活性化を遅らせる効果;抗血管形成効果;腫瘍転移の阻害効果;網膜新血管形成の低減;および関節炎のような炎症性疾患に対する保護効果を生じる。これらの化合物は、腫瘍を持っている(horboring)脊椎動物宿主において、抗腫瘍効果を生じるのに、特に有用である。
【0066】
本発明の化合物の製造および精製のさらに詳細な説明は、以下の特定の例証的な実施例で示すが、これは、いずれの様式でも、本発明の範囲を限定する意図はない。
【実施例1】
【0067】
以下の化合物の合成:
【化6】

出発物質は、BOC−L−Cys(S−p−メトキシベンジル)−O−樹脂(樹脂1グラムあたり、0.84ミリ当量のレベルで置換した)であった。残りのL−アミノ酸のそれぞれは、以下からなる合成サイクルにて、順に添加した。
【0068】
1.TFA脱保護
樹脂を、ジクロロメタン(DCM)中の50%トリフルオロ酢酸(DCM)(樹脂容量あたり、2〜3容量)で処理することにより、出発物質のα−アミノ窒素から、BOC保護基を除去した。混合物を室温で30分間攪拌し、次いで、排出した。次いで、樹脂を、等量のイソプロパノールで1分間にわたり1回洗浄し、そして等量のメタノールで2回洗浄した(各洗浄には、1分間かけた)。
【0069】
2.カップリング
脱保護樹脂を、DCM中の10%トリエチルアミンの等容量で2回洗浄し(各洗浄には、1分間かけた)、そして等容量のメタノールで2回洗浄し(各洗浄には、1分間かけた)、そして等容量のDCMで2回洗浄した(各洗浄には、1分間かけた)。樹脂に、BOC−保護アミノ酸(3当量、DCMに溶解したか、またはDCMおよびN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)の混合物中に溶解した)を添加し、そして混合物を数秒間攪拌した。次いで、ジシクロヘキシルカルボジイミド(「DCC」)(DCM中の1M溶液、3当量)を添加し、そして全混合物を60〜120分間攪拌した。樹脂を、等容量のメタノールで2回洗浄し、次いで、等容量のDCMで2回洗浄した。カップリングの完了を評価するためのニンヒドリン試験用に、少量の試料を取り出した。一般に、もし、完了していなければ、カップリング工程2を繰り返す。もし、完了していれば、合成は、キャップ化工程3に続く。
5個のN−末端アミノ酸(Val−Ser−Asn−Lys−Tyr)のそれぞれの場合には、カップリングは、部分的に完了しているにすぎず、従って、少なくとも1回繰り返した。4−ブロモ酪酸のカップリングは、まず、カップリング工程2について上で記述したように、DCCを用いて試みたが、不完全であった。対称無水物法、ペンタフルオロフェニルエステル法を用い、最後に、ブロモブチリルクロライドを用いて、3個のマニュアル繰り返しカップリングを実施した。これらの手順に続くニンヒドリン試験から、事実上、カップリングが完了していることが明らかとなった。
α−BOC誘導体として、全てのアミノ酸を使用した。側鎖保護基は、以下の通りであった:

ブロモ酪酸とのカップリング前に、トリプトファン残基のホルミル基は、室温で、30分間にわたって、DMF中の20%ピペリジンで処理することにより、除去した。
【0070】
3.キャップ化
樹脂を、室温で、5分間にわたって、等容量の無水酢酸(DCM中の20%溶液)と共に攪拌した。樹脂を、等容量のメタノールで2回洗浄し、次いで、等容量のDCMで2回洗浄した。
【0071】
4.HF切断
所望のアミノ酸配列を有する樹脂(1.0グラム)を、テフロン性反応容器に置き、そして無水アニソール(1mL)を添加した。溶液を液体Nで冷却し、そしてその中へ、無水HF(10mL)を蒸留した。温度を、氷水で、0℃まで上げた。混合物を、この温度で1時間攪拌し、次いで、HFを0℃で留去した。残留物を無水エーテルで洗浄し、そしてCHCN:HOの1:1混合物を用いて、ペプチドを抽出した。
【0072】
5.環化
上記ペプチド溶液を、およそ1000mLの最終容量まで、HOで希釈し、pHを、NaHCOを用いて、8.0まで調整した。環化を、分析用HPLCによりモニターした。2〜3日後、クロマトグラムでは、それ以上のシフトが認められず、環化は完了したと判断された。
【0073】
6.精製
濁った環化反応混合物を、1μMフィルターで濾過した。濾液をpH4.0に調整し、そしてWaters C18分取カラム(直径2インチ、粒径15〜20μm、細孔サイズ300Å)に充填した。充填されたカラムを、線形勾配として適用される2成分溶離液(溶液B中の15%の溶液Aから開始し、そして溶液B中の40%の溶液Aで終了する)で溶出した。溶液Aは、HO中の0.1% TFAであり、そして溶液Bは、CHCN中の0.1% TFAであった。所望の純度に等しい純度かそれより良好な純度を示す画分をプールし、そして凍結乾燥して、精製最終生成物を、トリフルオロ酢酸塩とした。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】pro−uPA分子またはその主な切断部位の模式的な描写である。
【図2】ヒトuPAのNH末端成長因子ドメインを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1または式2の環状ペプチド化合物:
【化1】

ここで、式1では、XからX11のすべては、L−系列アミノ酸を表わし、式2では、XからX11のすべては、D−系列アミノ酸を表わす;
は、Val、ProまたはAlaである;
は、SerまたはAlaである;
は、AsnまたはGlnである;
は、LysまたはHisである;
は、Tyr、Trp、Phe、置換Phe、二置換Phe、ホモフェニルアラニン、β−(3−ピリジル)アラニン、β−(2−チエニル)アラニン、β−(1−ナフチル)アラニン、またはβ−(2−ナフチル)アラニンである;
は、Tyr、Trp、Phe、置換Phe、二置換Phe、ホモフェニルアラニン、β−(3−ピリジル)アラニン、β−(2−チエニル)アラニン、β−(1−ナフチル)アラニン、またはβ−(2−ナフチル)アラニンである;
は、SerまたはAlaである;
は、AsnまたはAlaである;
は、Ile、LeuまたはValである;
10は、HisまたはAlaである;
11は、Tyr、Trp、Phe、置換Phe、二置換Phe、ホモフェニルアラニン、β−(3−ピリジル)アラニン、β−(2−チエニル)アラニン、β−(1−ナフチル)アラニン、またはβ−(2−ナフチル)アラニンである;そして
Lは、XおよびX11を連結した場合、アミノ酸XのCα炭素とアミノ酸X11のCα炭素の間の長さ寸法が、約4オングストローム単位と12オングストローム単位の間になるような連結単位である;
但し、該化合物が式1の化合物であるとき、Lは、ジスルフィド結合により連結された2個のシステイン単位を含有しない。
【請求項2】
アミノ酸XのCα炭素とアミノ酸X11のCα炭素の間の前記長さ寸法が、約5オングストローム単位と10オングストローム単位の間である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
アミノ酸XのCα炭素とアミノ酸X11のCα炭素の間の前記長さ寸法が、約6オングストローム単位と8オングストローム単位の間である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物が式1の化合物であり、そしてXからX11の全てが、L−系列の天然アミノ酸を表わす、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Lが、以下からなる群から選択される、請求項4に記載の化合物:
【化2】

【請求項6】
前記化合物が式2の化合物であり、そしてXからX11の全てが、D−系列の非天然アミノ酸を表わす、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Lが、以下からなる群から選択される、請求項6に記載の化合物:
【化3】

【請求項8】
前記化合物が、約10−5モル未満、すなわち、約10μM未満のIC50値を示す、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物が、約10−6モル未満のIC50値を示す、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物が、10−7モルの範囲のIC50値を示す、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
uPAのuPARへの結合を阻害する方法であって、該方法は、生体細胞を、式1または式2の環状ペプチド化合物と接触させる工程を包含する:
【化4】

ここで、式1では、XからX11のすべては、L−系列アミノ酸を表わし、そして式2では、XからX11のすべては、D−系列アミノ酸を表わす;
は、Val、ProまたはAlaである;
は、SerまたはAlaである;
は、AsnまたはGlnである;
は、LysまたはHisである;
は、Tyr、Trp、Phe、置換Phe、二置換Phe、ホモフェニルアラニン、β−(3−ピリジル)アラニン、β−(2−チエニル)アラニン、β−(1−ナフチル)アラニン、またはβ−(2−ナフチル)アラニンである;
は、Tyr、Trp、Phe、置換Phe、二置換Phe、ホモフェニルアラニン、β−(3−ピリジル)アラニン、β−(2−チエニル)アラニン、β−(1−ナフチル)アラニン、またはβ−(2−ナフチル)アラニンである;
は、SerまたはAlaである;
は、AsnまたはAlaである;
は、Ile、LeuまたはValである;
10は、HisまたはAlaである;
11は、Tyr、Trp、Phe、置換Phe、二置換Phe、ホモフェニルアラニン、β−(3−ピリジル)アラニン、β−(2−チエニル)アラニン、β−(1−ナフチル)アラニン、またはβ−(2−ナフチル)アラニンである;そして
Lは、XおよびX11を連結した場合、アミノ酸XのCα炭素とアミノ酸X11のCα炭素の間の長さ寸法が、約4オングストローム単位と12オングストローム単位の間になるような連結単位である;
但し、該化合物が式1の化合物であるとき、Lは、ジスルフィド結合により連結された2個のシステイン単位を含有しない。
【請求項12】
前記アミノ酸XのCα炭素とアミノ酸X11のCα炭素の間の前記長さ寸法が、約5オングストローム単位と10オングストローム単位の間である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アミノ酸XのCα炭素とアミノ酸X11のCα炭素の間の前記長さ寸法が、約6オングストローム単位と8オングストローム単位の間である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が式1の化合物であり、そしてXからX11の全てが、L−系列の天然アミノ酸を表わす、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
Lが、以下からなる群から選択される、請求項14に記載の方法:
【化5】

【請求項16】
前記化合物が式2の化合物であり、そしてここで、XからX11の全てが、D−系列の非天然アミノ酸を表わす、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
Lが、以下からなる群から選択される、請求項16に記載の方法:
【化6】

【請求項18】
前記化合物が、約10−5モル未満のIC50値を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物が、約10−6モル未満のIC50値を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物が、約10−7モル未満のIC50値を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
癌細胞の成長または転移を阻害する効果を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
(a)式1または式2の環状ペプチド化合物;および(b)薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物:
【化7】

ここで、式1では、XからX11のすべては、L−系列アミノ酸を表わし、式2では、XからX11のすべては、D−系列アミノ酸を表わす;
は、Val、ProまたはAlaである;
は、SerまたはAlaである;
は、AsnまたはGlnである;
は、LysまたはHisである;
は、Tyr、Trp、Phe、置換Phe、二置換Phe、ホモフェニルアラニン、β−(3−ピリジル)アラニン、β−(2−チエニル)アラニン、β−(1−ナフチル)アラニン、またはβ−(2−ナフチル)アラニンである;
は、Tyr、Trp、Phe、置換Phe、二置換Phe、ホモフェニルアラニン、β−(3−ピリジル)アラニン、β−(2−チエニル)アラニン、β−(1−ナフチル)アラニン、またはβ−(2−ナフチル)アラニンである;
は、SerまたはAlaである;
は、AsnまたはAlaである;
は、Ile、LeuまたはValである;
10は、HisまたはAlaである;
11は、Tyr、Trp、Phe、置換Phe、二置換Phe、ホモフェニルアラニン、β−(3−ピリジル)アラニン、β−(2−チエニル)アラニン、β−(1−ナフチル)アラニン、またはβ−(2−ナフチル)アラニンである;そして
Lは、XおよびX11を連結した場合、アミノ酸XのCα炭素とアミノ酸X11のCα炭素の間の長さ寸法が、約4オングストローム単位と12オングストローム単位の間になるような連結単位である;
但し、該化合物が式1の化合物である場合、Lは、ジスルフィド結合により連結された2個のシステイン単位を含有しない。
【請求項23】
前記アミノ酸XのCα炭素とアミノ酸X11のCα炭素の間の前記長さ寸法が、約5オングストローム単位と10オングストローム単位の間である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記アミノ酸XのCα炭素とアミノ酸X11のCα炭素の間の前記長さ寸法が、約6オングストローム単位と8オングストローム単位の間である、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
前記化合物が式1の化合物であり、そしてXからX11の全てが、L−系列の天然アミノ酸を表わす、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
Lが、以下からなる群から選択される、請求項25に記載の組成物:
【化8】

【請求項27】
前記化合物が式2であり、そしてXからX11の全てが、D−系列の非天然アミノ酸を表わす、請求項22に記載の組成物。
【請求項28】
Lが、以下からなる群から選択される、請求項27に記載の組成物:
【化9】

【請求項29】
前記化合物が、約10−5モル未満のIC50値を示す、請求項22に記載の組成物。
【請求項30】
前記化合物が、約10−6モル未満のIC50値を示す、請求項22に記載の組成物。
【請求項31】
前記化合物が、約10−7モル未満のIC50値を示す、請求項22に記載の組成物。
【請求項32】
注射用に適切な形態である、請求項22に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−24015(P2009−24015A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189878(P2008−189878)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【分割の表示】特願平10−522577の分割
【原出願日】平成9年10月12日(1997.10.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(503369738)アングストロム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】