説明

エア−バッグ用のインフレータ

エア−バッグ用のインフレータは、加圧ガスを含む少なくとも一つのガス容器(1,2)を具備する。破断可能な箔を未破断状態に維持するために箔に係合する支持部材(15)がある。支持部材(15)は、支持部材(15)に直接係合するピストン要素(20)の一部(23)により初期状態に固定される。ピストン要素(20)は、初期状態からピストン要素がもはや支持部材(15)に係合しない解放状態へピストン要素を駆動するために起爆用口火(11)に結合される。これは、支持部材(15)が、箔(9)が破断する状態へ移動してガスが容器から脱け出すことを可能にする。好適な実施形態は、二つのガス容器を有し、容器は各々、単一のピストン部材に直接係合する支持部材により保持されるそれぞれの箔ごとにシールされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事故が発生した場合に車の乗員に防護を提供するために車中に設けられるエア−バッグなど、エア−バッグ用のインフレータに関する。
【背景技術】
【0002】
加圧状態のガスを含む一〜二個の容器又は圧力容器を組み込むエア−バッグ用インフレータを設けることが提案されてきた。容器は各々、金属箔によりシールできる。金属箔は最初に、箔の外部に接する定位置に保持される支持要素によって支持される。エア−バッグが膨張状態にあるとき、支持部材は、金属箔から離されて、箔が破断することを可能にし、ひいてはガスがガス容器から脱け出しエア−バッグの内部に流入してエア−バッグが膨張することを可能にしている。
【0003】
この一般型の従来提案されたインフレータでは、一個のガス容器は酸化可能なガス状の燃料を含み、またもう一個の容器は酸化ガスを含む。ガスは、ガス容器から脱け出すとき混合される。その後に、ガスがエア−バッグ内部にあるとき、エア−バッグの膨張を達成するためガスに点火できる。
【0004】
独国特許第1,939,375号明細書は、この一般型のインフレータを示す。好適な実施形態において、比較的複雑な装置が、箔を初期状態に支持する支持要素を固定するために設けられる。装置は、製造するのが困難であり、かつ多数の部品を伴うので、比較的高価になっている。
【0005】
従来技術に伴うさらなら問題は、ガス容器内部に加圧ガスを有するインフレータが極めて高い温度にさらされる場合、例えばインフレータが取り付けられる車が出火する場合、ガス容器が爆発するかもしれない危険性があることである。これは車の内部に閉じ込められた人または消火にあたる消防士のいずれにも極めて不利であることは当然である。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、改良されたインフレータを提供することを探究する。
【0007】
この発明によって、エア−バッグ用のインフレータが提供される。インフレータは、加圧ガスを含む少なくとも一つのガス容器を具備し、ガス容器は、破断可能な箔によりシールされ、破断可能な箔を未破断状態に保持するために破断可能な箔に係合する支持部材がある。支持部材は、定位置に取り付けられかつ支持部材に直接係合するピストン要素の一部により定位置に固定され、ピストン要素は、初期状態からピストン要素が支持部材にもはや係合しない解放状態へピストン要素を駆動するために起爆用口火と結合され、支持部材は箔が破断する状態へ移動しガスをガス容器から脱け出させることを可能にしている。
【0008】
支持部材は、基部からほぼ垂直に延びる支持アームの形のブラケットの一部として形成されるのが好ましい。
【0009】
支持部材は、降伏可能であり、また一定の閾値を超えるガス容器のガス圧に応じて降伏して、箔が破断できるよう構成されるのが有利である。
【0010】
ガス容器のガス圧が一定の閾値を超えて、箔が破断できるとき、機械的に脆弱な線が破断し、かつ支持部材が降伏するように、支持部材は、機械的に脆弱な線を有するのが都合がよい。
【0011】
二個のガス容器が設けられ、各々は前記破断可能な箔を有し、かつ各箔は前記支持部材と結合されるのが有利である。
【0012】
二つの支持部材は、単一のブラケットの一部を形成し、支持部材は単一のピストン要素のそれぞれの部分により係合されるのが好ましい。
【0013】
ガス容器の各々は、二つの平行に離間した平面壁のそれぞれ一つによりシールされ、各壁はそれぞれ開口を有し、各開口はそれぞれ前記破断可能な箔によりシールされ、前記ピストンは二つの壁の間に区画形成されるチャンバに設けられるのが都合がよい。
【0014】
一方の容器は燃料又は酸化可能なガスを含み、またもう一方の容器は酸化ガスを含むのが好ましい。
【0015】
燃料又は酸化可能なガスは、水素、エタン、メタン、プロパン、又はブタンから成るのが都合がよい。
【0016】
酸化可能なガスは一つ以上の不活性ガスと混合されるのが有利である。
【0017】
酸化ガスは、空気、酸素、又は亜酸化窒素であるのが好ましい。
【0018】
酸化ガスは、一つ以上の不活性ガスと混合されるのが都合がよい。
【0019】
二個のガス容器からの混合ガスに点火するために、起爆用口火からインフレータの外部まで火炎チャネルが設けられるのが有利である。
【0020】
代わりの実施形態においては、二個のガス容器からの混合ガスに点火するために第二の起爆用口火が設けられる。
【0021】
第二の起爆用口火は第一の起爆用口火に隣接して取り付けられ、かつ火炎ガイドを設けられるのが都合がよい。
【0022】
あるいは、第二の起爆用口火はインフレータの外部に取り付けられる。
【0023】
本発明はまた、前述の型のインフレータを設けられたエア−バッグにも関する。
【0024】
本発明が一層容易に納得でき、またその結果さらにその特徴が理解できるために、本発明は添付の図面を参照して事例により説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
最初に図1を参照すると、インフレータは、第一のガス容器1と第二のガス容器2を具備する。第二のガス容器2は一部が示されるのみだが、第二の容器2は第一の容器1の鏡像である。ガス容器1は基部と管状側壁を有し、またその基部に設けられた充填開口3を備えて示される。
【0026】
ガス容器1と2の開放端部は、中央収納部4に固定される。中央収納部は、二つの離間した垂直平面壁5,6を有し、それらの間にチャンバ7を区画形成する。垂直壁は各々、狭い頂部と広い基部を持つ鐘形を有し、それは図2から分る。壁5,6は各々、それぞれのガス容器1,2の端部をシールする。各壁の中央部分に、壁5の開口8など開口が形成され、開口は金属箔9など金属箔によってシールされている。金属箔はしたがって、ガス容器1をシールする役割を果す。対応する開口8と金属箔は、ガス容器2をシールする壁5に設けられる。
【0027】
二つの壁5と6の間のチャンバに第一の起爆用口火装置10が取り付けられる。第一の起爆用口火装置10は、管状支持体12内部に取り付けられる点火装置付起爆用口火11を具備し、管状支持体12は起爆用口火11の上方に延びかつ円形断面チャンバを区画形成している。支持体12の上部は、“U”字形ブラケット13を支持し、ブラケット13は、水平な基部14と基部から垂直に延びる二つの直立する平坦なアーム15と16を(示される配向に)有している。この実施形態の直立するアーム15,16は、各アームが基部14に接続される位置に機械的に脆弱な線を各々設けられる。ブラケットは、適切な形状を有するよう曲げられ又は折り畳まれる平坦な金属製ストリップから形成される、あるいはプラスチック材料から成型されてもよい。
【0028】
開口19は、基部14の中央部分に設けられ、開口は点火装置付起爆用口火11の上方(示される配向に)に配置されている。ピストン要素20の一部は、説明されるように開口19を通って延びる。
【0029】
ピストン要素20は、支持体12により起爆用口火上方に区画形成される円形断面チャンバ内部に収納されたピストンヘッド21を設けられる。ピストンは、ピストンヘッド21から、ブラケット13の基部14に形成される開口19を通って上向きに延びるピストンロッド22を含む。ピストンロッド22の上端部は、外向きに延び、かつ図1に図示される構成部品の初期状態において、ブラケット13のアーム15,16の最上端部に直接係合する外向き支持フランジ23を支持する。
【0030】
ブラケット13のアーム15,16は、ガス容器1と2をシールする箔に隣接してある。アーム15,16は、箔を支持する支持部材として機能を果す。
【0031】
第二の起爆用口火装置24は、対向壁5と6との間のチャンバ7に配置されて設けられ、第二の起爆用口火24は管状の火炎ガイド25の内部にある。管状の火炎ガイド25は開いた上端部26を有する。
【0032】
対向壁5と6の最上部分は各々、チャンバ7からインフレータの外部まで通じているガス流開口27,28を設けられる。さらなる開口29,30も、チャンバ7の頂部に設けられる。
【0033】
ガス容器1と2は両方とも不活性ガスを含むとよいが、本発明の好適な実施形態においては、一方のガス容器は、例えば、水素、メタン、エタン、プロパン、又はブタン、あるいは一つ以上の当該ガスの混合物などの燃焼可能なガス状の燃料を含む。燃料は、純粋な形もしくは混合物または窒素、アルゴン、ヘリウム、又は二酸化炭素など不活性ガスと混合されて提供されるとよい。容器内部のガス圧は、ガスが一部液化状態にあるようにできる。もう一方のガス容器2は、空気、酸素、又は亜酸化窒素など酸化ガスを含むとよい。酸化ガスはこの場合もやはり、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、又はその混合物などの不活性ガスと混合されるとよい。この場合もやはり、圧力は、ガスが一部液化されるようにできる。
【0034】
エア−バッグが膨張された状態にあるとき、第一の起爆用口火11が駆動される。起爆用口火により発生したガスは、ピストン20を上向きに移動するピストンヘッド21に力を加える。ピストン20はしたがって、ピストンヘッド21がブラケット13の基部14の下部側面に係合する位置へ移動する、また外向きのフランジ23は、ブラケット13のアーム15,16の上端部の上方に上向きに移動される。アーム15,16は、その上端部においてもはや支持されない。このことは、アームが機械的に脆弱な線17,18の周囲に内向きに旋回することを可能にして、アーム15,16が、箔9などの箔に対する支持をもはや提供せず、箔が破断することを可能にしている。図3の矢印により示されるように、ガス容器1と2からのガスはしたがって、開口8など今開いている開口を通り、ピストン20の外向きのフランジ23を通り越し、そしてガス流開口27,28,29,30を通り抜けエア−バッグの内部に流入する。ガスが流動すると、ガスは混合される。
【0035】
ガスがエア-バッグの内部に流動して、エア-バッグを一部膨張させたとき、第二の起爆用口火24は点火され、また起爆用口火からの火炎は、火炎ガイド25により上向きにされる。火炎は、チャンバ7の内部と、エア-バッグの内部の混合ガスに点火する。混合ガスに点火すると、ガスの温度が上昇してガスの容積を大幅に増大し、エア−バッグの急速な膨張を達成している。
【0036】
ガス容器1又はガス容器2のどちらかの内部のガス圧が、エア−バッグの使用前に受容できない水準に上昇する場合、箔9などそれぞれの金属箔に加えられる圧力は、ブラケット3のそれぞれのアーム15,16に加えられる力がアームを図5に示されるように機械的に脆弱な線17又は18で折れ、かつ降伏するようにさせる。アームはしたがって、箔から離れて移動し、箔が破断することを可能にし、ひいてはガス容器自体が爆発する危険性なしにガスが脱け出すことを可能にしている。自動車火災がある場合、この種の圧力逃し弁がないならばガス容器はガスの内部圧力のため爆発するかもしれないことが理解される。
【0037】
改良された実施形態では、ブラケットのアーム15,16は、高圧のガスに晒されたとき、脆弱な線で折れるのではなく、降伏しかつ変形するよう構成される。どちらの場合にも、アームは一定の閾値を超える高いガス圧に応じて降伏する。
【0038】
本発明は、二つのガス容器が設けられる好適な実施形態を参照して記載されたが、本発明は単一のガス容器に適用できることが理解される。その状態においては、ブラケット13は単に、基部14とアーム15など一つの直立するアームを具備するにすぎない。
【0039】
本発明は、第二の起爆用口火24が壁5と6との間に設けられる実施形態を参照して記載されたが、ひとたび混合ガスがエア−バッグの内部に存在するならば、多くの異なる技術が混合ガスに点火するために使用できる。例えば、第一の点火装置からインフレータの外部へ延びている別の火炎チャネルを設けることができる。さらなる選択は、第一の点火装置からインフレータ付近のエア−バッグ内部に取り付けられる第二の点火装置まで延びている点火装置用ケーブルを使用することである。他の方法も利用できる。
【0040】
この明細書と請求項に使用されるとき、用語“具備する”と“具備している”及びその変形は、特定の機能、段階又は構成部品が含まれることを意味する。用語は、他の機能、段階又は構成部品の存在を排除するとは解釈されない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明に記載の初期状態のインフレータの一部の側部断面図である。
【図2】図2は、図1のインフレータの横断面図である。
【図3】図3は、作動状態にあるときのインフレータを図示する、図1に対応する図である。
【図4】図4は、図2に対応する図であり、この場合もやはり作動状態にあるときのインフレータを示している。
【図5】図5は、別の状態にあるインフレータを示している図1に対応する別の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エア−バッグ用のインフレータであって、
前記インフレータは、加圧ガスを含む少なくとも一つのガス容器(1,2)を具備し、
前記ガス容器は、破断可能な箔(9)によりシールされ、
前記破断可能な箔を未破断状態に保持するために前記破断可能な箔に係合する支持部材(15)があるものにおいて、
前記支持部材は、定位置に取り付けられ、かつ前記支持部材に直接係合するピストン要素(20)の一部(23)により定位置に固定され、
前記ピストン要素は、初期状態から前記ピストン要素が前記支持部材にもはや係合しない解放状態へピストン要素を駆動するために起爆用口火と結合し、前記支持部材は前記箔(9)が破断する状態へ移動してガスを前記ガス容器から脱け出させることを可能にすることを特徴とする、
インフレータ。
【請求項2】
前記支持部材(15)は、基部(14)からほぼ垂直に延びる支持アームの形のブラケット(13)の一部として形成される、請求項1に記載のインフレータ。
【請求項3】
前記支持部材(15)は降伏可能であり、また一定の閾値を超えるガス容器のガスの圧力に応じて降伏して、前記箔が破断できるよう構成される、請求項1−2のいずれか一項に記載のインフレータ。
【請求項4】
前記支持部材(15)は、機械的に脆弱な線(17)を有して、ガス容器のガス圧が一定の閾値を超えて前記箔が破断できるとき、前記機械的に脆弱な線(17)は破断し、かつ前記支持部材は降伏する、請求項3に記載のインフレータ。
【請求項5】
二つのガス容器(1,2)が設けられ、各々は前記破断可能な箔(9)を有し、また各箔は前記支持部材(15,16)と結合する、請求項1−4のいずれか一項に記載のインフレータ。
【請求項6】
前記二つの支持部材(15,16)は、単一のブラケット(13)の一部を形成し、前記支持部材は単一のピストン要素(20)のそれぞれの部分により係合される、請求項5に記載のインフレータ。
【請求項7】
前記ガス容器(1,2)は各々、二つの平行に離間した平面壁(5,6)のそれぞれの一つによりシールされ、各壁はそれぞれの開口(8)を有し、各開口はそれぞれの前記破断可能な箔(9)によりシールされ、前記ピストン(20)は、前記二つの壁の間に区画形成されるチャンバに設けられる、請求項5−6のいずれか一項に記載のインフレータ。
【請求項8】
一方の容器(1)には、燃料又は酸化可能なガスがあり、またもう一方の容器(2)には酸化ガスがある、請求項5−7のいずれか一項に記載のインフレータ。
【請求項9】
前記燃料又は酸化可能なガスは、水素、エタン、メタン、プロパン、又はブタンから成る、請求項8に記載のインフレータ。
【請求項10】
前記酸化可能なガスは、一つ以上の不活性ガスと混合される、請求項9に記載のインフレータ。
【請求項11】
前記酸化ガスは、空気、酸素、又は亜酸化窒素である、請求項5−9のいずれか一項に記載のインフレータ。
【請求項12】
前記酸化ガスは、一つ以上の不活性ガスと混合される、請求項11に記載のインフレータ。
【請求項13】
前記二つのガス容器(1,2)からの混合ガスに点火するために、火炎チャネルが、前記起爆用口火(11)から前記インフレータの外部まで設けられる、請求項5−12のいずれか一項に記載のインフレータ。
【請求項14】
前記二つのガス容器からの混合ガスに点火するために、第二の起爆用口火(24)が設けられる、請求項5−12のいずれか一項に記載のインフレータ。
【請求項15】
前記第二の起爆用口火(24)は、前記第一の起爆用口火に隣接して取り付けられ、かつ火炎ガイド(25)を設けられる、請求項14に記載のインフレータ。
【請求項16】
前記第二の起爆用口火は、前記インフレータの外部に取り付けられる、請求項14に記載のインフレータ。
【請求項17】
請求項1−16のいずれか一項に記載のインフレータを設けられたエア−バッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−509834(P2008−509834A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525572(P2007−525572)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【国際出願番号】PCT/SE2005/001055
【国際公開番号】WO2006/016840
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(500404203)オートリブ ディベロップメント アクティエボラーグ (54)
【Fターム(参考)】