説明

エアゾール組成物

【課題】エアゾール組成物でありながら、液相が少なくとも3層に分離されてなるエアゾール組成物を提供すること。これにより、溶解性の異なる複数の有効成分を各層に選択的に配合でき、かつ、液化ガスを含んでいることにより噴射状態を調整しやすく冷却効果が得られる。エアゾール組成物を提供することができる。また、エアゾール組成物において、分離した各層を着色し製品のコンセプトカラーや国旗など特徴のある外観を演出できるエアゾール組成物を提供すること。
【解決手段】水性成分と、油性成分と、液化ガスとを含むエアゾール組成物であり、該エアゾール組成物の液相が、少なくとも3層に分離されてなるエアゾール組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール組成物に関する。さらに詳しくは、液相が少なくとも3層に分離されてなることを特徴とするエアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多層に分離した液相を有する組成物が種々提案されている。たとえば特許文献1には、界面活性剤、油剤、水溶性塩または有機酸、低級アルコール、水を含有する多層型液体化粧料が開示されている。特許文献2には、水、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、水溶性塩または有機酸、液体油を含む多層化粧料が開示されている。また、特許文献3には、流動油分、水溶性溶媒、水、界面活性剤を含有した多重相分離型洗浄料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−40413号公報
【特許文献2】特許第4045237号公報
【特許文献3】特開平10−101529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、2層に分離した液相を有する組成物しか開示されておらず、さらに液化ガスを含んだエアゾール組成物ではない。また、特許文献2には、3層に分離する化粧料が開示されているが、液化ガスを含んだエアゾール組成物ではない。また、特許文献3も同様に、粉体層を加えた3層に分離した相を有する組成物しか開示されておらず、液相が3層に分離した組成物は得られていない。また、エアゾール組成物ではない。すなわち、液化ガスを含んでおらず、エアゾール製品特有の霧状の噴射や泡状の噴射ができないという問題がある。また、このように噴射方法の制限があるため、たとえば噴射によるマッサージ効果や噴射による冷感の付与などの諸効果が得られないという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる従来の問題に鑑みてなされたものであり、液化ガスを含むエアゾール組成物でありながら、液相が少なくとも3層に分離されてなるエアゾール組成物を提供することを目的とする。これにより、溶解性の異なる複数の有効成分を各層に選択的に配合でき、かつ、さらに液化ガスを含んでいることにより噴射によるマッサージ効果や噴射による冷感の付与などの諸効果を得ることができる。さらに、エアゾール組成物において、分離した各層を着色し製品のコンセプトカラーや国旗など特徴のある外観を演出できるエアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエアゾール組成物は、水性成分と、油性成分と、液化ガスとを含むエアゾール組成物であり、該エアゾール組成物の液相が、少なくとも3層に分離されてなるエアゾール組成物である。
【0007】
前記液相が、水層と、第一油層と、該第一油層と分離した第二油層とを含むことが好ましい。
【0008】
前記液相が、水層と、第一油層と、該第一油層と分離した第二油層とからなる3層に分離されてなることが好ましい。
【0009】
前記油性成分が、親水基を含む親水性油分と、親水基を含まない親油性油分とからなることが
好ましい。
【0010】
前記油性成分として液密度が前記水性成分の液密度より大きい油性成分を含有することが好ましい。
【0011】
前記液化ガスとして液密度が前記水性成分の液密度より大きい重質液化ガスを含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエアゾール製品によれば、液化ガスを含むエアゾール組成物でありながら、液相が少なくとも3層に分離されてなるエアゾール組成物を提供することができる。また、その組成等によっては、温度変化により層の数が変化するエアゾール組成物を提供することもできる。これにより、溶解性の異なる複数の有効成分を各層に選択的に配合でき、液化ガスを含んでいることにより噴射によるマッサージ効果や噴射による冷感の付与などの諸効果が得られるエアゾール組成物を提供することができる。また、エアゾール組成物において、分離した各層を着色し製品のコンセプトカラーや国旗など特徴のある外観を演出できるエアゾール組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】参考例にかかるエアゾール製品の液相の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるエアゾール製品の液相の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるエアゾール製品の液相の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかるエアゾール製品の液相の断面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるエアゾール製品の液相の断面図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかるエアゾール製品の外観の写真である。図6(A)は温度上昇前の外観の写真である。図6(B)は温度上昇後の外観の写真である。
【図7】本発明の一実施形態にかかるエアゾール製品の外観の写真である。図7(A)は温度上昇前の外観の写真である。図7(B)は温度上昇後の外観の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のエアゾール組成物は、水性成分と、油性成分と、液化ガスとを含むエアゾール組成物であり、該エアゾール組成物の液相が、少なくとも3層に分離されてなるエアゾール組成物である。なお、温度変化により液相の層の数が変化するエアゾール組成物の場合は、最も多く分離した際の層の数が少なくとも3層であればよい。つまり温度変化により、例えば3層から2層に、2層から3層に、層の数が変化するエアゾール組成物も本発明のエアゾール組成物に含む。
【0015】
前記水性成分は単独で、あるいは水溶性の有効成分や液化ガスの一部または全部を溶解した状態で水層を構成する。
【0016】
前記水性成分としては、たとえば、精製水、イオン交換水などの水、エタノール、プロパノールなどの炭素数が2〜3個の1価アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリンなどの炭素数が2〜6個のポリオール、およびこれらの混合物などがあげられる。
【0017】
前記水性成分の配合量は、エアゾール組成物中1〜60重量%、さらには3〜55重量%であることが好ましい。1重量%よりも少ない場合および60重量%よりも多い場合は3層以上の液相を形成しにくくなる。また、噴射物が凍結しやすくなるという点から、前記水性成分の配合量を1〜25重量%とすることがより好ましく、さらに、噴射物が立体的に凍結しやすくなるという点から、前記水性成分の配合量を2〜10重量%とすることがさらに好ましい。
【0018】
前記油性成分は単独で、あるいは油溶性の有効成分や液化ガスの一部または全部を溶解した状態で油層を構成する。
【0019】
油性成分として、親水基(水酸基、カルボキシル基など)を含む親水性油分と、親水基を含まない親油性油分を用いることが好ましく、2層以上の油層を形成することができる。
【0020】
2層の油層を形成した場合、一方の油層を第一油層と、他方の油層を第二油層とすることができる。
【0021】
前記親水性油分としては、たとえば、メドウフォーム油、オリーブ油、ツバキ油、トウモロコシ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヤシ油などの油脂、エイコセン酸、オレイン酸などの不飽和脂肪酸、オレイルアルコール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチル(エチルヘキサン酸セチル)、ヒドロシキシステアリン酸オクチル、ヒドロシキシステアリン酸エチルヘキシルキシル、ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、ジネオペンタン酸ジエチルペンタンジオール、ジ−2−エチルへキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジラウリン酸ジエチレングリコール、ジステアリン酸ジエチレングリコール、ジイソステアリン酸ジエチレングリコール、ジオレイン酸ジエチレングリコール、ジラウリン酸トリエチレングリコール、ジステアリン酸トリエチレングリコール、ジイソステアリン酸トリエチレングリコール、ジオレイン酸トリエチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、トリ2−エチルへキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリルなどのエステル油、およびこれらの混合物などがあげられる。なお、液密度が1.06〜1.08(g/ml)であるコハク酸ジエトキシエチルなどの液密度が水性成分よりも大きいもの、好ましくは液密度が1(g/ml)より大きいものを用いる場合は、水層よりも下に油層が出来るため、液化ガスを配合し易く液化石油ガスのみで水層よりも上に油層を形成することができる。また、温度変化により層の数が変化しやすい点から、エステル油を用いることが好ましく、エチルヘキサン酸セチルなどの直鎖の高級アルコールと脂肪酸とのエステル油を用いることがさらに好ましい。
【0022】
前記親油性油分としては、たとえば、(ジ)メチルポリシロキサン、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル、ケロシン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、流動パラフィン、イソパラフィンなどの炭化水素、およびこれらの混合物などがあげられる。特に3層を形成し易い点からシリコーンオイルを用いることが好ましい。また、温度変化により層の数が変化しやすい点から、炭化水素を用いることが好ましく、ケロシンを用いることがより好ましい。
【0023】
前記油性成分の配合量は、エアゾール組成物中10〜70重量%、さらには15〜65重量%であることが好ましい。前記油性成分の配合量が10重量%未満の場合および70重量%を超える場合、液化ガスを充填すると油層が1つになり、3層以上の液相を形成しにくくなる傾向がある。
【0024】
前記親水性油分の配合量は、エアゾール組成物中1〜69重量%、さらには5〜60重量%であることが好ましい。前記親水性油分の配合量が1〜69重量%から外れる場合、液化ガスを充填すると2層以上の油層が1つになり、3層以上の液相を形成しにくくなる傾向がある。
【0025】
前記親油性油分の配合量は、エアゾール組成物中1〜69重量%、さらには5〜60重量%であることが好ましい。前記親油性油分の配合量が1〜69重量%から外れる場合、液化ガスを充填すると2層以上の油層が1つになり、3層以上の液相を形成しにくくなる傾向がある。
【0026】
前記液化ガスはエアゾール容器内では蒸気圧を有する液体であり、液化ガス単独で液化ガス層を形成したり、油性成分に溶解して油層を、あるいは水性成分に溶解して水層を形成することができる。
【0027】
液化ガスとしては、たとえば、ブタン、プロパン、およびこれらの混合物などの液化石油ガス、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エン、トランス−2,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エンなどのハイドロフルオロオレフィン、ジメチルエーテル、およびこれらの混合物などがあげられる。
【0028】
液化石油ガスとハイドロフルオロオレフィンは油性成分に溶解して油層を形成しやすく、ジメチルエーテルは油性成分に溶解して油層を形成することもできるが、水性成分に溶解して水層を形成することもできる。また、液化石油ガスは25℃においての液密度が0.5〜0.6(g/ml)であるため水層の上部に油層を形成しやすく、ハイドロフルオロオレフィンは25℃においての液密度が1.1〜1.3(g/ml)であるため水層の下部に油層を形成しやすい。液化石油ガスは油性成分よりも液密度が小さく、ハイドロフルオロオレフィンは油性成分よりも液密度が大きいため、油層の液密度を調整して水性成分との分離速度を調整することができる。また、ハイドロフルオロオレフィンのような液密度が大きい重質液化ガスを用いると油層の下にも液化ガス層を形成することもできる。特に、温度変化により層の数が変化するエアゾール組成物とする場合は、ハイドロフルオロオレフィンを用いることが好ましく、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エンを用いることがさらに好ましい
【0029】
液化ガスの配合量は、エアゾール組成物中1〜80重量%、さらには3〜75重量%であることが好ましい。配合量が1重量%よりも少ない場合は全量吐出することが難しくなり、80重量%よりも多い場合は3層以上の液相を形成しにくくなる。また、前記液化ガスの配合量を55〜80重量%にすることにより噴射物が凍結しやすくなる傾向がある。
【0030】
特に、温度変化により層の数が変化するエアゾール組成物とする場合は、前記油性成分とハイドロフルオロオレフィンの配合割合(油性成分/ハイドロオレフィン)を20/80〜40/60にすることが好ましく、22/78〜35/65にすることがさらに好ましい。
【0031】
また本発明は、分離された各層において有効成分を配合することができる。
【0032】
前記有効成分は分離された各層への溶解性に応じて適宜選択して配合することで、溶解性の異なる複数の有効成分を別個に配合して同時に吐出することができ、尿素のように水により加水分解される成分や、塩化マグネシウムのように水と反応する成分は油性成分に配合して安定に保存することができ、また、色素は各層を着色し、製品のコンセプトカラーや国旗など特徴のある外観を演出することができる。
【0033】
前記油性成分および/または親油性液化ガスに溶解しやすい有効成分(以下、油溶性有効成分という)としては、たとえば、パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、オクトクレリン、オキシベンゾン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、パラアミノ安息香酸などの紫外線吸収剤、N,N−ジエチル−m−トルアミド(ディート)、ハーブエキスなどの害虫忌避剤、フタルスリン、アレスリン、ペルメトリンテフルスリン、ベンフルスリンなどの殺虫成分、α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤、レチノール、dl−α−トコフェロール、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、フィロキノン、メナキノンなどのビタミン類およびこれらの誘導体、グリチルリチン酸などの抗炎症剤、硝酸ミコナゾール、硝酸スルコナゾール、クロトリマゾールなどの抗真菌剤、サリチル酸メチル、インドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェンなどの消炎鎮痛剤、l−メントール、カンフルなどの清涼化剤、ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸メチルなどの消臭成分、油溶性香料などがあげられる。
【0034】
前記油溶性有効成分の配合量は、エアゾール組成物中0.1〜12重量%であることが好ましく、さらには1〜10重量%であることが好ましい。前記油溶性有効成分の配合量が0.1重量%よりも少ない場合は有効成分の効果が不充分になりやすく、12重量%よりも多い場合は3層以上の液相を形成しにくくなる。
【0035】
前記水性成分および/または親水性液化ガスに溶解しやすい有効成分(以下、水溶性有効成分という)としては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、コラーゲン、キシリトール、ソルビトール、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、dl−ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、カゼイン、レシチン、尿素などの保湿剤、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、感光素、パラクロルメタクレゾールなどの殺菌消毒剤、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチルなどの消臭成分、グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、トリプトファン、シスチン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンなどのアミノ酸、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸ナトリウムなどのビタミン類、水溶性香料などがあげられる。
【0036】
前記水溶性有効成分の配合量は、エアゾール組成物中0.005〜5重量%、さらには0.01〜3重量%であることが好ましい。配合量が0.005重量%よりも少ない場合は水溶性有効成分の効果が得られにくく、5重量%よりも多い場合は3層以上の液相を形成しにくくなる。
【0037】
前記エアゾール組成物は、耐圧容器に水性成分と、油性成分と、液化ガスを充填し、耐圧容器にエアゾールバルブを固着してエアゾール容器を密封することにより製造できる。なお、液化ガスはエアゾールバルブを固着してからエアゾールバルブを通じて充填してもよく、エアゾールバルブを固着する直前にアンダーカップ充填により充填しても良い。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けることによりエアゾール製品となる。
【0038】
前記耐圧容器としては、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂製耐圧容器、ガラス製耐圧容器、アルミ、ブリキなどの金属製耐圧容器を使用することができる。ただし、3層を形成することにより外観の意匠性を付与する場合には、樹脂製耐圧容器などの透明の容器を使用することが好ましい。外観の意匠性としては、たとえば水溶性色素や油溶性色素などを使用してそれぞれの層を着色することにより製品のコンセプトカラーや国旗など特徴のある外観を演出することができる。
【0039】
また、エアゾール組成物の圧力を調整するために、加圧剤として炭酸ガス、チッ素ガス、圧縮空気、酸素ガスなどの圧縮ガスを用いることができる。
【0040】
本願のエアゾール組成物は、液相が、少なくとも3層に分離されてなることから、有効成分を分離された各層への溶解性に応じて適宜選択して配合することで、溶解性の異なる複数の有効成分を別個に配合して同時に吐出することができ、尿素のように水により加水分解される成分や、塩化マグネシウムのように水と反応する成分は油性成分に配合して安定に保存することができ、また、分離した各層を色素で着色し製品のコンセプトカラーや国旗など特徴のある外観を演出することができるエアゾール組成物である。そのため、化粧料用エアゾール製品または医薬品用エアゾール製品に使用するエアゾール組成物として好適である。さらに温度変化により層の数が変化するエアゾール組成物の場合、温度センサーにもなり外観でおおよその温度を知ることができる。
【0041】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
評価方法を以下に示す。
【0043】
(層の数の測定)
製造したエアゾール製品の25℃での、液相において形成される層の数を目視により測定した。
エアゾール製品の液相の断面図を図1〜5に示す。図1のエアゾール製品における液相は2層に分離している。参照符号1aは第一液層を表し、1bは第二液層を表している。図2のエアゾール製品における液相は3層に分離している。参照符号2aは第一液層を表し、2bは第二液層を表し、2cは第三液層を表している。図3のエアゾール組成物は、液相が4層に分離している。参照符号3aは第一液層を表し、3bは第二液層を表し、3cは第三液層を表し、3dは第四液層を表している。図4のエアゾール製品における液相は3層に分離している。参照符号4aは第一液層を表し、4bは第二液層を表し、4cは第三液層を表している。図5は、図4のエアゾール組成物を35℃に温度変化させ4aと4cとが相溶した場合の状態を表す。この場合の参照符号5aは図4の4aと4cとが相溶した液層を、5bは図4の4bが沈降した液層を表す。実施例において形成された各液層を表4および5に、比較例において形成された各液層を表6に、処方例において形成された各液層を表7に示す。
【実施例】
【0044】
実施例1〜7
表1に記載の配合により水性成分と、油性成分とを調製し、調製された水性成分と、油性成分とをポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを固着し液化ガスとして液化石油ガス(0.45MPa(25℃))を充填した。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けエアゾール製品を製造した。得られたエアゾール製品について、形成された層の数を測定した。結果を表4に示す。
【0045】
実施例8
表1に記載の配合により水性成分と、油性成分とを調製し、調製された水性成分と、油性成分とを透明なガラス製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを固着し液化ガスとしてジメチルエーテルを充填した。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けエアゾール製品を製造した。得られたエアゾール製品について、形成された層の数を測定した。結果を表4に示す。
【0046】
実施例9
表1に記載の配合により水性成分と、油性成分とを調製し、調製された水性成分と、油性成分とをポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを固着し液化ガスとして液化石油ガスとジメチルエーテルの混合ガスを充填した。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けエアゾール製品を製造した。得られたエアゾール製品について、形成された層の数を測定した。結果を表4に示す。
【0047】
実施例10〜15
表1に記載の配合により水性成分と、油性成分とを調製し、調製された水性成分と、油性成分とをポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを固着し液化ガスとして液化石油ガス(0.45MPa(25℃))を充填した。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けエアゾール製品を製造した。得られたエアゾール製品について、形成された層の数を測定した。結果を表4に示す。
【0048】
実施例16
表1に記載の配合により水性成分と、油性成分とを調製し、調製された水性成分と、油性成分とをポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを固着し液化ガスとして重質液化ガスを充填した。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けエアゾール製品を製造した。得られたエアゾール製品について、形成された層の数を測定した。結果を表4に示す。
【0049】
実施例17〜26
表2に記載の配合により水性成分と、油性成分とを調製し、調製された水性成分と、油性成分とをポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを固着し液化ガスとして重質液化ガスを充填した。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けエアゾール製品を製造した。得られたエアゾール製品について、形成された層の数を測定した。結果を表5に示す。また、実施例21のエアゾール製品の温度変化による外観の変化を図6(A)および(B)に、実施例22のエアゾール製品の温度変化による外観の変化を図7(A)および(B)に示す。
【0050】
比較例1〜2
表3に記載の配合により水性成分と、油性成分とを調製し、調製された水性成分と、油性成分とをポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを固着し液化ガスとして液化石油ガス(0.45MPa(25℃))を充填した。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けエアゾール製品を製造した。得られたエアゾール製品について、形成された層の数を測定した。結果を表6に示す。
【0051】
比較例3
表3に記載の配合により水性成分と、油性成分とを調製し、調製された水性成分と、油性成分とをポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを固着し液化ガスとして液化石油ガス(0.45MPa(25℃))を充填した。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けエアゾール製品を製造した。得られたエアゾール製品について、形成された層の数を測定した。結果を表6に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
実施例1〜3、5〜9および14は、液相が3層に分離し、第一液層が第一油層、第二液層が第二油層、第三液層が水層を形成した(図2)。実施例10〜13および実施例16は、液相が3層に分離し、第一液層が第一油層、第二液層が水層、第三液層が第二油層を形成した(図2)。
【0058】
実施例4と実施例15は、液相が4層に分離し、第一液層が第一油層、第二液層が第二油層、第三液層が第三油層、第四液層が水層を形成した。なお、第一液層(第一油層)と第三液層(第三油層)との間に球状の第二液層(第二油層)を形成した(図3)。
【0059】
実施例17〜26は、いずれも液相が3層に分離し、第一液層が第一油層、第二液層が水層、第三液層が第二油層を形成した。このうち実施例17、21、25および26は図2および図6(A)(実施例21)に示すような3層を形成し、実施例18〜20および実施例22〜24は図4および図7(A)(実施例22)に示すような第一液層(第一油層)と第三液層(第二油層)との間に球状の第二液層(水層)を形成した。
【0060】
さらに、実施例21、25および26は温度が25℃から35℃に上昇することで第一液層と第三液層が相溶し、第二液層が液相の上部に上昇した(図6(B))。その後、温度が35℃から25℃に降下すると温度が上昇する前の3層を再び形成した(図2および図6(A))。また、実施例22〜24は温度が25℃から35℃に上昇することで第一液層と第三液層が相溶し図5に示す5aとなり、第二液層5bがエアゾール容器の底部に沈降した(図5および図7(B))。その後、温度が35℃から25℃に降下すると温度が上昇する前の3層を再び形成した(図4および図7(A))。これは温度変化にともない相溶性が変化することで第一液層と第三液層とが相溶し、そして、この相溶後の液比重と第二液層の液比重との違いにより、第二液層が上昇または沈降するものである。つまり、本実施例の場合、第一液層と第三液層との含有率による相溶後の液比重または第二液層の液比重を調整することで、温度変化による第二液層の挙動を調節することができる。
【0061】
実施例1〜26および比較例1〜3のエアゾール容器を上下に振り、内容物を分散させた状態で噴射状態を確認すると、実施例21、23、24および26では噴射すると第一油層と水層が噴射面で平らに凍結し、実施例22および25は立体的に凍結した。それ以外の実施例および比較例の噴射状態は全て霧状であった。
【0062】
【表6】

【0063】
比較例1〜3は、液相が2層に分離し、第一液層が油層、第二液層が水層を形成した(図1)。
【0064】
処方例1(忌避剤)
以下の各成分をポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを固着し液化ガスとして液化石油ガス(0.45MPa(25℃))を充填した。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けエアゾール製品を製造した。液相において形成される層の数を目視により測定した。結果を表7に示す。
【0065】
精製水 28.3
エタノール 3.8
メドウフォーム油(*1) 21.3
N,N−ジエチル−m−トルアミド 7.0
ジメチルポリシロキサン(*3) 28.3
液化石油ガス 11.3
合計 100.0(重量%)
【0066】
処方例2(UVカットスプレー)
以下の各成分をポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを固着し液化ガスとして液化石油ガス(0.3MPa(25℃))を充填した。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けエアゾール製品を製造した。液相において形成される層の数を目視により測定した。結果を表7に示す。
【0067】
精製水 28.3
エタノール 3.8
メドウフォーム油(*1) 19.4
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル(*7) 8.9
ジメチルポリシロキサン(*3) 28.3
液化石油ガス 11.3
合計 100.0(重量%)
(*7)Uvinul MC80N(商品名)BASFジャパン株式会社製
【0068】
処方例3(消炎鎮痛剤)
以下の各成分をポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを固着し液化ガスとして液化石油ガス(0.4MPa(25℃))を充填した。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けエアゾール製品を製造した。液相において形成される層の数を目視により測定した。結果を表7に示す。
【0069】
精製水 28.3
エタノール 3.8
メドウフォーム油(*1) 26.3
サリチル酸メチル 2.0
ジメチルポリシロキサン(*3) 28.3
液化石油ガス 11.3
合計 100.0(重量%)
【0070】
処方例4(冷感効果)
以下の各成分をポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを固着し液化ガスとして液化石油ガス(0.45MPa(25℃))を充填した。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けエアゾール製品を製造した。液相において形成される層の数を目視により測定した。結果を表7に示す。
【0071】
精製水 28.9
エタノール 3.8
メドウフォーム油(*1) 26.8
メントール(*8) 0.3
ジメチルポリシロキサン(*3) 28.9
液化石油ガス 11.3
合計 100.0(重量%)
(*8)l−メントール(商品名)鈴木薄荷株式会社製
【0072】
処方例5(着色・国旗例:スロバキア)
以下の各成分をポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを固着し液化ガスとして液化石油ガス(0.45MPa(25℃))を充填した。そこへ0.6MPaまで窒素加圧を行った。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けエアゾール製品を製造した。液相において形成される層の数を目視により測定し、各層の色を確認した。結果を表7に示す。
【0073】
精製水 31.4
赤色色素(*9) 0.1
エタノール 3.8
メドウフォーム油(*1) 31.3
青色色素(*10) 0.1
ジメチルポリシロキサン(*3) 31.3
液化石油ガス 2.0
合計 100.0(重量%)
(*9)食用赤色102号(商品名)東京化成工業株式会社製、水溶性色素
(*10)フタロシアニンブルー(商品名)大東化成工業株式会社製、油溶性色素
【0074】
処方例6(着色・国旗例:オランダ)
以下の各成分をポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを固着し液化ガスとして液化石油ガス(0.45MPa(25℃))を充填した。そこへ0.6MPaまで窒素加圧を行った。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けエアゾール製品を製造した。液相において形成される層の数を目視により測定し、各層の色を確認した。結果を表7に示す。
【0075】
精製水 31.4
青色色素(*11) 0.1
エタノール 3.8
メドウフォーム油(*1) 31.3
赤色色素(*12) 0.1
ジメチルポリシロキサン(*3) 31.3
液化石油ガス 2.0
合計 100.0(重量%)
(*11)食品青色一号(商品名)東京化成工業株式会社製、水溶性色素
(*12)R202リソールルビンBCA(商品名)大東化成工業株式会社製、油溶性色素
【0076】
処方例7(着色・国旗例:アルゼンチン)
以下の各成分をポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを固着し液化ガスとして液化石油ガス(0.45MPa(25℃))を充填した。そこへ0.6MPaまで窒素加圧を行った。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けエアゾール製品を製造した。液相において形成される層の数を目視により測定し、各層の色を確認した。結果を表7に示す。
【0077】
精製水 31.4
青色色素(*11) 0.1
エタノール 3.8
メドウフォーム油(*1) 31.3
青色色素(*13) 0.1
ジメチルポリシロキサン(*3) 31.3
液化石油ガス 2.0
合計 100.0(重量%)
(*13)青色403号(商品名)大東化成工業株式会社製、油溶性色素
【0078】
処方例8(冷却殺虫剤;着色・国旗例:日本)
以下の各成分をポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを固着し液化ガスとしてトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エンを充填した。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けエアゾール製品を製造した。液相において形成される層の数を目視により測定し、各層の色を確認した。結果を表7に示す。
【0079】
精製水 4.00
赤色色素(*9) 0.01
ケロシン(*14) 28.80
フタルスリン 0.10
トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エン 67.09
合計 100.00(重量%)
【0080】
処方例9(害虫忌避剤;着色・国旗例:日本)
以下の各成分をポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填した。耐圧容器にエアゾールバルブを固着し液化ガスとしてトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エンを充填した。さらに、前記エアゾールバルブに噴射部材を取り付けエアゾール製品を製造した。液相において形成される層の数を目視により測定し、各層の色を確認した。結果を表7に示す。
【0081】
精製水 6.50
赤色色素(*9) 0.01
メドウフォーム油(*1) 32.50
ジメチルポリシロキサン(*3) 32.50
ハーブエキス 0.10
トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エン 28.39
合計 100.00(重量%)
【0082】
【表7】

【0083】
処方例1〜7は、液相が3層に分離し、第一液層が第一油層、第二液層が第二油層、第三液層が水層を形成した(図2)。また、処方例8および9も液相が3層に分離し、第一液層(第一油層)と第三液層(第二油層)との間に球状の第二液層(水層)を形成した(図5および図7)。処方例8は25℃では液相が3層であったが、35℃では第一油層と第二油層が溶解して2層に変化した。そして、処方例5〜9は、表7に示すように液層が着色された。
【符号の説明】
【0084】
10 エアゾール製品
1、2、3 液相
1a、2a、3a、4a、6a、7a 第一液層
1b、2b、3b、4b、6b、7b 第二液層
2c、3c、4c、6c、7c 第三液層
3d 第四液層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性成分と、油性成分と、液化ガスとを含むエアゾール組成物であり、
該エアゾール組成物の液相が、少なくとも3層に分離されてなるエアゾール組成物。
【請求項2】
前記液相が、水層と、第一油層と、該第一油層と分離した第二油層とを含む請求項1記載のエアゾール組成物。
【請求項3】
前記液相が、水層と、第一油層と、該第一油層と分離した第二油層とからなる3層に分離されてなる請求項1または2記載のエアゾール組成物。
【請求項4】
前記油性成分が、親水基を含む親水性油分と、親水基を含まない親油性油分とからなる請求項1〜3のいずれか1項に記載のエアゾール組成物。
【請求項5】
前記油性成分として液密度が前記水性成分の液密度よりも大きな油性成分を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアゾール組成物。
【請求項6】
前記液化ガスとして液密度が前記水性成分の液密度よりも大きな重質液化ガスを含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のエアゾール組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−46482(P2012−46482A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105494(P2011−105494)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】