説明

エアゾール装置

【課題】簡便な操作で、エアゾール容器内に残留した内容物を安全且つ確実に排出することができ、カバーキャップを取り外す際に、ステムが破損したり、噴射ボタンが外れ飛んだりすることを防止したエアゾール装置を提供する。
【解決手段】エアゾール容器2からカバーキャップ4を取り外し、当該カバーキャップ4の噴射ボタン3に対する向きが第1の状態から第2の状態に入れ替わるようにエアゾール容器2に再装着することによって、エアゾール容器2内に残留した内容物がカバーキャップ4内に排出可能とされたエアゾール装置1であって、内筒部13の下端部が、外筒部12の前面側を開放する噴射用開口部18aから臨む高さにあって、内筒部13の前面側を開放する噴射用開口部18bが、内筒部13の下端側から噴射ボタン3の移動方向に沿って切り欠かれたスリットからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エアゾール装置は、噴射ボタンを押圧操作することにより、エアゾール容器内のガスや液体を噴射させるものである。また、塗料や殺虫剤、化粧料等の内容物を収容するエアゾール容器には、主剤(液体や固体等からなる噴射剤以外の内容物)と噴射剤(液化石油ガス・ジメチルエーテル・イソペンタン等の可燃性ガスや、窒素・炭酸ガス等の圧縮ガス)とが充填されており、一般的に主剤がなくなり噴霧が終了した場合でも、少量の噴射剤が容器内に残留してしまう。
【0003】
ところで、このようなエアゾール装置を廃棄する際には、ゴミ収集や圧縮処理の際の安全性を考慮して、使用者により音がしなくなるまで噴射ボタンを押し続けるか、又は、エアゾール容器に穴を開けるかといった作業によって、使用済のエアゾール容器内に残留する噴射剤を排出しなければならない。しかしながら、残留する噴射剤を手動で排出する作業は、エアゾール容器の噴射ボタンを長時間押し続けなければならず非常に面倒である。また、噴射ボタンを長時間押し続けるには、しばしばエアゾール容器を持ち替えたりして容器内に残留する内容物を噴射し続けなければならず、確実に内容物を排出できない場合がある。さらに、これらの作業は手間がかかることから、エアゾール容器内に残留する内容物を完全に排出されないまま廃棄されてしまうという問題もある。
【0004】
そこで、エアゾール容器の噴射ボタンとカバーキャップとが一体化されたワンタッチキャップ式のエアゾール装置において、使用後にエアゾール容器からカバーキャップを取り外し、噴射ボタンに対する向きを入れ替えてエアゾール容器に再装着することによって、このエアゾール容器内に残留した内容物を排出する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
しかしながら、このようなエアゾール装置では、エアゾール容器に対してカバーキャップを捩りながら取り外す場合よりも、エアゾール容器に対してカバーキャップを片側に傾けながら抉るように取り外す場合において、カバーキャップが噴射ボタンに接触する可能性が高くなる。この場合、噴射ボタンに斜め方向の外力が加わることによって、この噴射ボタンと一緒に倒れ込んだステムが破損したり、衝撃によって噴射ボタンが外れ飛んだりすることがあるため、安全面での対策が必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3137691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の事情に鑑みて提案されたものであり、簡便な操作で、エアゾール容器内に残留した内容物を安全且つ確実に排出することができ、カバーキャップを取り外す際に、ステムが破損したり、噴射ボタンが外れ飛んだりすることを防止したエアゾール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、内容物が収容されたエアゾール容器と、エアゾール容器のステムの先端部に取り付けられた噴射ボタンと、エアゾール容器の上部に被せられたカバーキャップとを備え、噴射ボタンを押圧操作することによって、噴射ボタンと一体に押し下げられたステムを通じてエアゾール容器に収容された内容物が噴射され、エアゾール容器内に残留した内容物を排出する際に、エアゾール容器からカバーキャップを取り外し、当該カバーキャップの噴射ボタンに対する向きが第1の状態から第2の状態に入れ替わるようにエアゾール容器に再装着することによって、エアゾール容器内に残留した内容物がカバーキャップ内に排出可能とされたエアゾール装置であって、噴射ボタンが、ステムと嵌合されるステム嵌合部と、ステム嵌合部と連通される噴射口と、側方に向かって突出されるガイド突起とを有し、カバーキャップが、エアゾール容器の上部に着脱自在に装着される外筒部と、噴射ボタンを上下方向に移動可能に収容すると共に噴射ボタンの上部を外方に臨ませる内筒部と、外筒部及び内筒部の前面側を開放する噴射用開口部と、第1の状態において内筒部に挿入された噴射ボタンのガイド突起を上下方向に移動可能に案内するガイドスリットと、第2の状態において内筒部に挿入された噴射ボタンのガイド突起の移動を規制するガイド規制部とを有し、なお且つ、内筒部の下端部が、外筒部の前面側を開放する噴射用開口部から臨む高さにあって、内筒部の前面側を開放する噴射用開口部が、内筒部の下端側から噴射ボタンの移動方向に沿って切り欠かれたスリットからなることを特徴とするエアゾール装置である。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、噴射ボタンが、側方に向かって突出される抜止め突起を有し、カバーキャップが、第1の状態において内筒部に挿入された噴射ボタンの抜止め突起と係合される抜止め部を有し、抜止め部に抜止め突起が係合されることによって、内筒部の下端開口部からの噴射ボタンの抜け止めがなされることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール装置である。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、抜止め部に抜止め突起が係合された状態において、内筒部の上端開口部から外方に臨む噴射ボタンの上端部が外筒部の上端部から突出しない位置にあり、一対のガイド突起が一対のガイドスリットの上端部に当接されることによって、噴射ボタンの内筒部内での移動が規制されることを特徴とする請求項2に記載のエアゾール装置である。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、カバーキャップをエアゾール容器の上部に被せ、カバーキャップの内筒部内に保持された噴射ボタンを下方へと押圧しながら、ステムの先端部に取り付けることによって、抜止め突起と抜止め部との係合が解除されることを特徴とする請求項3に記載のエアゾール装置である。
【0012】
また、請求項5に係る発明は、噴射ボタンの抜け止めがなされた状態において、噴射ボタンがカバーキャップの内筒部内で上下方向に移動可能に保持されることを特徴とする請求項2に記載のエアゾール装置である。
【0013】
また、請求項6に係る発明は、内筒部のうち少なくとも噴射用開口部を形成するスリットとガイドスリットとの間が弾性変形可能とされていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のエアゾール装置である。
【0014】
また、請求項7に係る発明は、噴射ボタンが、下端部に裾筒部を有し、この裾筒部が、エアゾール容器の上端部の外周に設けられた巻締め部の内側に進入可能とされていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のエアゾール装置である。
【0015】
また、請求項8に係る発明は、カバーキャップが、内筒部の噴射口と対向する面側を開放するスリットからなる排出用開口部を有し、第2の状態では、噴射口が排出用開口部に臨む位置にあり、噴射口から噴射された内容物が排出用開口部を通じて外筒部と内筒部との間の空間へと排出されることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のエアゾール装置である。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明に係るエアゾール装置では、エアゾール容器からカバーキャップを取り外す際に、ステムが破損したり、噴射ボタンが外れ飛んだりすることを防止しながら、噴射ボタンに対する向きを入れ替えてカバーキャップをエアゾール容器に再装着するといった簡単な操作で、エアゾール容器内に残留した内容物を安全且つ確実にカバーキャップ内に排出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明を適用したエアゾール装置の通常使用時の静止状態を示す縦断面図である。
【図2】図2は、図1に示すエアゾール装置の通常使用時の噴射状態を示す縦断面図である。
【図3】図3は、図1に示すエアゾール装置の噴射ボタンを示す底面図である。
【図4】図4は、図3中に示す噴射ボタン線分A−A’線による縦断面図である。
【図5】図5(a)は、噴射ボタンの斜視図、(b)は噴射ボタンの上面図、噴射ボタンをステムに取り付けた状態を示す正面図である。
【図6】図6は、図1に示すエアゾール装置のカバーキャップを示す底面図である。
【図7】図7は、図6中に示すカバーキャップの線分B−B’による縦断面図である。
【図8】図8は、図1に示すエアゾール装置の残留内容物排出時の状態を示す縦断面図である。
【図9】図9は、図1に示すエアゾール装置の噴射ボタンがカバーキャップに対して抜止めされた状態を示す縦断面図である。
【図10】図10は、噴射ボタンの変形例を示す斜視図である。
【図11】図11は、図10に示す噴射ボタンがカバーキャップに対して抜止めされた状態を示す縦断面図である。
【図12】図12は、噴射ボタンの別の変形例を示し、(a)はその側面図、(b)はその縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用したエアゾール装置について、図面を参照して詳細に説明する。
先ず、本発明の一実施形態として図1及び図2に示すエアゾール装置1の構成について説明する。なお、図1は、エアゾール装置1の通常使用時における静止状態を示し、図2は、エアゾール装置1の通常使用時における噴射状態を示す。
【0019】
このエアゾール装置1は、図1及び図2に示すように、内容物が収容されたエアゾール容器2と、エアゾール容器2に収容された内容物を噴射させるための噴射ボタン3と、エアゾール容器2の上部に被せられたカバーキャップ4とを備えている。
【0020】
エアゾール容器2は、例えばスチールやアルミニウム等からなる金属製の耐圧容器であり、この耐圧容器の上部に設けられたマウンティングカップ2aと、このマウンティングカップ2aの内側中央部から突出するステム2bと、このステム2bを下方に押し下げることにより開放されるバルブ機構(図示せず。)とを有している。また、マウンティングカップ2aの外周部は、耐圧容器の上端部に巻き締めされることによって巻締め部2cを形成している。
【0021】
なお、このエアゾール容器2に収容される内容物としては、特に限定されるものではなく、例えば、殺虫剤、忌避剤、殺菌剤、芳香剤、室内消臭剤、整髪剤、ヘアケア剤、育毛トニック剤、シェービングフォーム、制汗消臭剤、ガラスクリーナー、エアコン洗浄剤、防水剤、塗料、工業用スプレーなどを挙げることができる。そして、エアゾール容器2には、このような各種目的に応じた有効成分の他に必要に応じて溶剤や補助剤などを含む原液と、液体ガスや圧縮ガスなどの噴射剤とが内容物として充填されている。
【0022】
噴射ボタン3は、図1、図2、図3、図4及び図5に示すように、ボタン本体5と、このボタン本体5の底部にステム2bと嵌合されるステム嵌合部6と、このボタン本体5の前方側面にステム嵌合部6と連通される噴射口7と、このボタン本体5の両側面から側方に向かって突出される一対のガイド突起8とを有し、これらが一体に成形されたプラスチック部材からなっている。
【0023】
ボタン本体5は、全体が略筒状を為すと共に、その水平断面が前後方向に長い長円形状(いわゆるレーストラック形状)を為す側壁部5aと、この側壁部5aの上面を閉塞する上壁部5bとを有している。また、ボタン本体5は、この噴射ボタン3を押圧操作し易くするために、上壁部5bを凹ませた形状を有している。
【0024】
側壁部5aの前方側面には、噴射口7から噴射された内容物を放射状に放出させるための噴射ガイド9が設けられている。噴射口7は、この噴射ガイド9の底面中央部に穿設された孔部によって形成されている。
【0025】
ステム嵌合部6は、ボタン本体5の底面中央部に位置して上壁部5bの下面から垂下されている。このステム嵌合部6は、略円筒状を為すと共に、その内側に連通孔6aとステム嵌合孔6bとを有している。このうち、連通孔6aは、噴射口7と連通される部分であり、このステム嵌合部6の上端部から長さ方向の中途部に亘って穿設されている。一方、ステム嵌合孔6bは、ステム2bの先端部が嵌合される部分であり、連通孔6aの下端部からステム嵌合部6の下端部まで穿設されている。また、ステム嵌合孔6bは、ステム2bの外径に対応した径を有し、連通孔6aは、このステム嵌合孔6bよりも小さな径を有している。これにより、連通孔6aとステム嵌合孔6bとの間に形成される段部は、ステム2bの先端が当接される当接面6cを形成している。さらに、ステム嵌合孔6bの下端部には、このステム嵌合孔6bにステム2bを嵌合し易くするためのテーパー面6dが設けられている。
【0026】
一対のガイド突起8は、一対の側壁部5aの下部側中央部よりも前方側に位置して互いに対向して配置されている。
【0027】
噴射ボタン3には、ボタン本体5の両側面から側方に向かって突出される一対の抜止め突起21が設けられている。なお、本実施形態では、一対の抜止め突起21が一対の側壁部5aの中央部よりも後方側に位置して互いに対向して配置されている。また、これら一対の抜止め突起21は、一対のガイド突起8よりも下方に配置されている。
【0028】
ボタン本体5の下端部には、裾筒部10が設けられている。この裾筒部10は、全体が略筒状を為すと共に、その平面形状が長円形状(非円形状)であるボタン本体5aに対して、マウンテンカップ2aの巻締め部2cの内側に対応した円形状を有してボタン本体5と一体に形成されている。また、裾筒部10は、この噴射ボタン3をステム2bの先端部に取り付けた状態において、巻締め部2cの内側に進入可能とされると共に、その上面が巻締め部2cの上端と同じ高さ又はそれよりも上方に位置している。
【0029】
裾筒部10の両側面には、一対のスリット11が設けられている。これら一対のスリット11は、一対のガイド突起8の延長線上に位置して、裾筒部10の下端部からボタン本体5の側壁部5aに至るまで切り欠くように形成され、なお且つ、その幅がガイド突起8の幅と同じか、又はそれ以上となるように形成されている。
【0030】
カバーキャップ4は、図1、図2、図6及び図7に示すように、エアゾール容器2の上部に着脱自在に装着される外筒部12と、噴射ボタン3を上下方向に移動可能に収容すると共に噴射ボタン3の上部を外方に臨ませる内筒部13と、外筒部12と内筒部13との間の上面を閉塞する上壁部14とを有し、これらが一体に成形されたプラスチック部材からなっている。
【0031】
外筒部12は、略円筒状を為すと共に、エアゾール容器2の外径とほぼ同径であり、その下部側の内周面には、周方向に亘って凸部12aが設けられている。そして、カバーキャップ4は、この外筒部12の凸部12aを上記巻締め部2cと耐圧容器との間に形成された凹部に嵌合させることによって、エアゾール容器2の上部に着脱自在に装着することが可能となっている。
【0032】
内筒部13は、噴射ボタン3の形状に合わせて前後方向に長い長円形状(いわゆるレーストラック形状)を有しており、なお且つ、上記噴射ボタン3が上下方向に移動可能に収容されるように、上記ボタン本体5の外径よりも僅かに大きい内径を有している。この内筒部13は、外筒部12の内側中央部に配置されており、その上端開口部13aが外部に臨んでいる。一方、内筒部13の下端部には、この内筒部13の内側に噴射ボタン3を挿入し易くするためのテーパー面13cが設けられている。
【0033】
また、カバーキャップ4には、この内筒部13から外方に臨む噴射ボタン3を押圧操作し易くするための操作用凹部15が設けられている。この操作用凹部15は、内筒部13に収容された噴射ボタン3の周囲の上壁部14及び外筒部12の背面側の一部を凹ませてなる形状を有している。
【0034】
内筒部13は、上壁部14の中央部から垂下されて、その下端部が後述する外筒部12側の噴射用開口部18aから臨む高さで形成されている。具体的に、内筒部13の下端部は、噴射用開口部18aを正視したときに、この噴射用開口部18aを形成する孔部の上端と下端との間に位置している。なお、本実施形態では、噴射用開口部18aを正視した見たときに、この噴射用開口部18aを形成する孔部のほぼ中間に内筒部13の下端部が位置している。
【0035】
内筒部13の両側面には、通常使用時において、内筒部13の下端開口部13bから内側に挿入された噴射ボタン3の一対のガイド突起8を上下方向に移動可能に案内する一対のガイドスリット16が設けられている。これら一対のガイドスリット16は、内筒部13の両側面の中央部よりも前方側に位置して、ガイド突起8を案内するのに充分な幅で内筒部13の下端側から噴射ボタン3の可動範囲に亘って直線状に切り欠くように形成されている。
【0036】
また、内筒部13の両側面には、後述する残留内容物排出時において、この内筒部13の下端開口部13bから内側に挿入された噴射ボタン3の一対のガイド突起8の移動を規制する一対のガイド規制部17が設けられている。これら一対のガイド規制部17は、残留内容物排出時に一対のガイド突起8が当接される部分として、内筒部13の上記ガイドスリット16を挟んだ後方側の下端部により形成されている。
【0037】
なお、一対のガイド規制部17は、このような形状のものに必ずしも限定されるものではなく、例えば、上記ガイドスリット16を挟んだ後方側の下端部に位置する段差部や、切欠き部、スリットなどにより形成してもよい。
【0038】
カバーキャップ4には、外筒部12及び内筒部13の前面側を開放する噴射用開口部18a,18bが設けられている。これら噴射用開口部18a,18bのうち、外筒部12側の噴射用開口部18aは、外筒部12の前面、すなわち通常使用時において噴射ボタン3の噴射口7と対向する面に設けられた円形状の孔部である。一方、内筒部13側の噴射用開口部18bは、内筒部13の前面、すなわち通常使用時において噴射ボタン3の噴射口7と対向する面に設けられたスリットであり、内筒部13の下端側から噴射ボタン3の移動方向(上下方向)に沿って切り欠くように形成されている。
【0039】
また、噴射口7からは内容物が放射状に噴射されるため、内筒部13側の噴射用開口部18bは、上記噴射ガイド9の径とほぼ同じ幅のスリットで形成されると共に、外筒部12側の噴射用開口部18aは、内筒部13側の噴射用開口部18bの幅よりも大径の孔部とされている。
【0040】
カバーキャップ4には、内筒部13の背面側を開放する排出用開口部20が設けられている。この排出用開口部20は、内筒部13の背面、すなわち残留内容物排出時において噴射ボタン3の噴射口7と対向する面に設けられたスリットであり、内筒部13の下端側から噴射ボタン3の移動方向(上下方向)に沿って切り欠くように形成されている。
【0041】
また、内筒部13の両側面には、一対の抜止め部22が設けられている。これら一対の抜止部22は、内筒部13の両側面の中央部よりも後方側に位置して、内筒部13の下端部から内側に向かって僅かに突出して設けられている。
【0042】
次に、以上のような構造を有するエアゾール装置1の通常使用時における動作について説明する。
このエアゾール装置1では、先ず、図1に示す通常使用時の静止状態においては、ステム嵌合部6のステム嵌合孔6aにエアゾール容器2のステム2bが嵌合されると共に、ステム2bの先端が当接面6cに当接されることによって、噴射ボタン3がステム2bの先端部に取り付けられた状態となっている。
【0043】
そして、この状態で、カバーキャップ4がエアゾール容器2の上部に被せられた状態となっている。このとき、噴射ボタン3側の噴射口7とカバーキャップ4側の噴射用開口部18a,18bとが互いに同じ向きとなるように、カバーキャップ4をエアゾール容器2の上部に装着する。これにより、内筒部13の下端開口部13bから挿入された噴射ボタン3の一対のガイド突起8が一対のガイドスリット16に係合された状態で、噴射ボタン3が内筒部13内に上下方向に移動可能な状態で収容される。
【0044】
なお、カバーキャップ4の噴射ボタン3に対する向きが、このような通常使用時の状態にあるときを第1の状態といい、この第1の状態では、噴射口7が噴射用開口部18a,18bに臨む位置にある。
【0045】
次に、通常使用時において、エアゾール容器2に収容された内容物を噴射するときは、図2に示すように、内筒部13の上端開口部13aから外方に臨む噴射ボタン3を下方に向かって押圧操作する。これにより、噴射ボタン3と一体に押し下げられたステム2bを通じて、エアゾール容器2に収容された内容物がステム嵌合部6の連通孔6aを通じて噴射口7から噴射され、この噴射口7から噴射された内容物が噴射用開口部18a,18bを通じてカバーキャップ4の外部へと放射状に放出される。一方、この内容物の噴射を止めるときは、上述した噴射ボタン3に対する押圧を解除する。これにより、噴射ボタン3と一体に押し下げられたステム2bが再び元の位置に戻って噴射が停止される。
【0046】
次に、上記エアゾール装置1の残留内容物排出時における動作について説明する。
上記エアゾール装置1では、エアゾール容器2が使用済みとなり、エアゾール容器2内に残留した内容物を排出する際に、先ず、エアゾール容器2からカバーキャップ4を取り外す。
【0047】
次に、図8に示すように、噴射ボタン3側の噴射口7とカバーキャップ4側の噴射用開口部18a,18bとが互いに逆向きとなるように、カバーキャップ4の向きを入れ替えてエアゾール容器2の上部に再装着する。このとき、内筒部13の下端開口部13bから挿入された噴射ボタン3の一対のガイド突起8が一対のガイド規制部17に当接されることによって、噴射ボタン3が強制的に押し下げられた状態となる。これにより、ステム2bが連続的に押し下げられた状態となり、エアゾール容器2内に残留した内容物がステム嵌合部6の連通孔6aを通じて噴射口7から噴射され、この噴射口7から噴射された残留内容物が排出用開口部20を通じて外筒部12と内筒部13との間の空間S1へと排出される。また、この噴射口7から噴射された内容物が裾筒部10のスリット11を通して噴射ボタン3の内側の空間S2へと排出される。
【0048】
この場合、エアゾール容器2内に残留した内容物をカバーキャップ4の内部に排出することで、残留内容物が周囲に飛散することを防止することが可能である。特に、このエアゾール装置1では、噴射口7から噴射された内容物が排出用開口部20を通じて外筒部12と内筒部13との間の空間S1へと排出される。さらに、噴射口7から噴射された内容物が裾筒部10のスリット11を通して噴射ボタン3の内側の空間S2へと排出される。したがって、このエアゾール装置1では、このようなカバーキャップ4の内側の空間S1及び噴射ボタン3の内側の空間S2を残留内容物の排出に有効に利用することが可能である。
【0049】
なお、カバーキャップ4の噴射ボタン3に対する向きが、このような残留内容物排出時の状態にあるときを第2の状態といい、この第2の状態では、噴射口7が排出用開口部20に臨む位置にある。
【0050】
また、本発明では、カバーキャップ4の再装着位置がわかるように、噴射ボタン3の上面の前面側とカバーキャップの上面の背面側とに、それぞれ目印となる凸部19a,19bが設けられている。これにより、一旦取り外したカバーキャップ4をその向きを入れ替てエアゾール容器2に再装着するときに、図8に示すように、互いの凸部19a,19bの向きを合わせるだけで容易に位置合わせすることができる。
【0051】
ところで、本発明を適用したエアゾール装置1では、内筒部13の下端部が外筒部12の前面側を開放する噴射用開口部18aから臨む高さにあって、内筒部13の前面側を開放する噴射用開口部18bが内筒部13の下端側から噴射ボタン3の移動方向に沿って切り欠かれたスリットにより形成されている。
【0052】
この場合、噴射ボタン3の内筒部13に挿入される部分を短くすることによって、エアゾール容器2からカバーキャップ4を取り外す際に、ステム2bの先端部に取り付けられた噴射ボタン3に内筒部13が引っ掛かりづらくすることができる。また、噴射ボタン3を内筒部13から容易に抜け出させることができる。
【0053】
さらに、上記内筒部13は、噴射用開口部18bを形成するスリットと一対のガイドスリット16との間の側壁、及び、排出用開口部20を形成するスリットと一対のガイドスリット16との間の側壁が弾性変形可能となっている。
【0054】
このため、エアゾール容器2からカバーキャップ4を取り外す際に、ステム2bの先端部に取り付けられた噴射ボタン3に内筒部13が接触したとしても、この内筒部13の側壁が弾性変形することによって、噴射ボタン3に不要な力が加わることを防止することができる。
【0055】
これにより、本発明を適用したエアゾール装置1では、エアゾール容器2からカバーキャップ4を取り外す際に、噴射ボタン3の押圧方向とは異なる方向の外力がステム2bに加わることによる損傷等からステム2bを保護することが可能であり、また噴射ボタン3が外れ飛んだりすることも防止することが可能である。
【0056】
なお、ステム2bの先端部に取り付けられた噴射ボタン3の内筒部13により囲繞される部分については、噴射ボタン3を上下方向に移動可能に収容する範囲でより短く設定することが好ましく、具体的には、噴射ボタン3の全高に対して少なくも60%以下とすることが好ましく、50%以下とすることがより好ましい。
【0057】
また、本発明を適用したエアゾール装置1では、噴射ボタン3の裾筒部10がマウンテンカップ2aの巻締め部2cの内側に進入可能とされている。この場合、ステム2bの先端部に取り付けられた噴射ボタン3に内筒部13が接触し、倒れ込もうとする噴射ボタン3に対して裾筒部10が巻締め部2cの内面に当接しながら、噴射ボタン3のそれ以上の倒れ込みを防止する。これにより、エアゾール容器2からカバーキャップ4を取り外す際に、ステム2bが破損したり、噴射ボタン3が外れ飛んだりすることを防止することが可能である。
【0058】
以上のように、本発明を適用したエアゾール装置1では、エアゾール容器2からカバーキャップ4を取り外す際に、ステム2bが破損したり、噴射ボタン3が外れ飛んだりすることを防止しながら、噴射ボタン3に対する向きを入れ替えてカバーキャップ4をエアゾール容器2に再装着するといった簡単な操作で、エアゾール容器2内に残留した内容物を安全且つ確実にカバーキャップ4内に排出することが可能である。
【0059】
ところで、上述したカバーキャップ4と噴射ボタン3とは、嵩張らないように一体化された状態で取り扱われる。例えば、カバーキャップ4及び噴射ボタン3を成形する成形メーカでは、カバーキャップ4の内筒部13に噴射ボタン3を収容したものを、輸送箱に多数詰め込んだ状態で出荷する。しかしながら、輸送中に輸送箱に加わる振動や落下による衝撃等によっては、カバーキャップ4の内筒部13から噴射ボタン3が脱落してばらけてしまうことがある。
【0060】
そこで、本発明を適用したエアゾール装置1では、図9に示すように、上記噴射ボタン3の一対の抜止め突起21が上記カバーキャップ4の一対の抜止め部22と係合されることによって、内筒部13の下端開口部13bからの噴射ボタン3の抜け止めがなされている。
【0061】
具体的に、一対の抜止め突起21は、内筒部13の下端開口部13bから噴射ボタン3が挿入されることによって、排出用開口部20を形成するスリットと一対のガイドスリット16との間の側壁を弾性変形させながら、内筒部13の内部へと進入した後、一対の抜止め部22と係合される。これにより、内筒部13の下端開口部13bからの噴射ボタン3の抜け止めがなされ、カバーキャップ4の内筒部13から噴射ボタン3が脱落してばらけてしまうことを防止することが可能である。
【0062】
また、このとき内筒部13の上端開口部13aから外方に臨む噴射ボタン3の上端部は、外筒部12の上端部から突出しない位置にあり、一対のガイド突起8が一対のガイドスリット16の上端部に当接されることによって、噴射ボタン3の内筒部13内での移動が規制されている。これにより、噴射ボタン3をカバーキャップ4の内筒部13内に安定した状態で一体に保持することができる。
【0063】
以上のようにして、本発明では、上述した輸送中に輸送箱に加わる振動や落下による衝撃等によって、カバーキャップ4の内筒部13から噴射ボタン3が脱落してばらけてしまうことを未然に防止することが可能である。
【0064】
なお、このエアゾール装置1では、上記図1に示すように、カバーキャップ4をエアゾール容器2の上部に被せ、このカバーキャップ4の内筒部12内に保持された噴射ボタン3を下方へと押圧しながら、ステム2bの先端部に取り付けることによって、上述した一対の抜止め突起21と一対の抜止め部22との係合が解除される。これにより、上記エアゾール装置1の残留内容物排出時には、噴射ボタン3がステム2bの先端部に取り付けられた状態のまま、カバーキャップ4のみを取り外すことが可能である。
【0065】
なお、一対の抜止め突起21は、上記図5に示すように、一対のガイド突起8よりも下方に配置された構成となっているが、例えば図10に示す一対の抜止め突起21Aのように、一対のガイド突起8よりも上方に配置された構成とすることも可能である。この場合、図11に示すように、一対の抜止め突起21Aがカバーキャップ4の一対の抜止め部22と係合されることによって、内筒部13の下端開口部13bからの噴射ボタン3の抜け止めがなされるが、この噴射ボタン3は、内筒部12内で上下方向に移動可能な状態で遊びを設けて保持される。これにより、カバーキャップ4の内筒部13内に保持された噴射ボタン3に衝撃等が加わっても、噴射ボタン3が内筒部12内で移動するため、衝撃等を吸収して、この衝撃等の弾みでカバーキャップ4の内筒部13から噴射ボタン3が脱落してばらけてしまうことを未然に防止することが可能である。
【0066】
また、上記抜止め突起21,21A及び抜止め部22の配置については、これらの配置に必ずしも限定されるものではなく、適宜に変更して実施することができる。例えば、上記一対の抜止め突起21,21Aは、一対の側壁部5aの中央部よりも後方側に配置されているが、これらを一対の側壁部5aの中央部に配置し、これに対応して上記一対の抜止め部22を内筒部13の両側面の中央部に配置してもよい。この場合、カバーキャップ4の内筒部13に対して噴射ボタン3をバランスよく保持することができる。
【0067】
また、本発明を適用したエアゾール装置は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本考案の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0068】
例えば、上記噴射ボタン3は、その形状について特に限定されるものではなく、上述した水平断面が長円形状となるもの以外にも、例えば円形、楕円形、長方形等となるものであってもよい。何れの形状も、カバーキャップ4の噴射ボタン3に対する向きを上記第1の状態から上記第2の状態に入れ替えることが可能である。また、上記カバーキャップ4の内筒部13の形状についても、上記噴射ボタン3に対応した形状とすればよい。
【0069】
また、図12(a),(b)に示すように、上記噴射ボタン3の下端部にボタン本体5と同径の裾筒部10を設け、この裾筒部10がマウンテンカップ2aの巻締め部2cの内側に進入可能とした構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…エアゾール装置 2…エアゾール容器 2b…ステム 3…噴射ボタン 4…カバーキャップ 7…噴射口 8…ガイド突起 10…裾筒部 11…スリット 12…外筒部 13…内筒部 16…ガイドスリット 17…ガイド規制部 18a,18b…噴射用開口部 20…排出用開口部 21,21A…抜止め突起 22…抜止め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容されたエアゾール容器と、
前記エアゾール容器のステムの先端部に取り付けられた噴射ボタンと、
前記エアゾール容器の上部に被せられたカバーキャップとを備え、
前記噴射ボタンを押圧操作することによって、前記噴射ボタンと一体に押し下げられたステムを通じて前記エアゾール容器に収容された内容物が噴射され、
前記エアゾール容器内に残留した内容物を排出する際に、前記エアゾール容器から前記カバーキャップを取り外し、当該カバーキャップの前記噴射ボタンに対する向きが第1の状態から第2の状態に入れ替わるように前記エアゾール容器に再装着することによって、前記エアゾール容器内に残留した内容物が前記カバーキャップ内に排出可能とされたエアゾール装置であって、
前記噴射ボタンは、前記ステムと嵌合されるステム嵌合部と、前記ステム嵌合部と連通される噴射口と、側方に向かって突出されるガイド突起とを有し、
前記カバーキャップは、前記エアゾール容器の上部に着脱自在に装着される外筒部と、前記噴射ボタンを上下方向に移動可能に収容すると共に前記噴射ボタンの上部を外方に臨ませる内筒部と、前記外筒部及び前記内筒部の前面側を開放する噴射用開口部と、前記第1の状態において前記内筒部に挿入された噴射ボタンの前記ガイド突起を上下方向に移動可能に案内するガイドスリットと、前記第2の状態において前記内筒部に挿入された噴射ボタンの前記ガイド突起の移動を規制するガイド規制部とを有し、
なお且つ、前記内筒部の下端部が、前記外筒部の前面側を開放する噴射用開口部から臨む高さにあって、前記内筒部の前面側を開放する噴射用開口部が、前記内筒部の下端側から前記噴射ボタンの移動方向に沿って切り欠かれたスリットからなることを特徴とするエアゾール装置。
【請求項2】
前記噴射ボタンは、側方に向かって突出される抜止め突起を有し、
前記カバーキャップは、前記第1の状態において前記内筒部に挿入された噴射ボタンの前記抜止め突起と係合される抜止め部を有し、
前記抜止め部に前記抜止め突起が係合されることによって、前記内筒部の下端開口部からの前記噴射ボタンの抜け止めがなされることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール装置。
【請求項3】
前記抜止め部に前記抜止め突起が係合された状態において、前記内筒部の上端開口部から外方に臨む噴射ボタンの上端部が前記外筒部の上端部から突出しない位置にあり、前記一対のガイド突起が前記一対のガイドスリットの上端部に当接されることによって、前記噴射ボタンの前記内筒部内での移動が規制されることを特徴とする請求項2に記載のエアゾール装置。
【請求項4】
前記カバーキャップを前記エアゾール容器の上部に被せ、前記カバーキャップの内筒部内に保持された噴射ボタンを下方へと押圧しながら、前記ステムの先端部に取り付けることによって、前記抜止め突起と前記抜止め部との係合が解除されることを特徴とする請求項3に記載のエアゾール装置。
【請求項5】
前記噴射ボタンの抜け止めがなされた状態において、前記噴射ボタンが前記カバーキャップの内筒部内で上下方向に移動可能に保持されることを特徴とする請求項2に記載のエアゾール装置。
【請求項6】
前記内筒部のうち少なくとも前記噴射用開口部を形成するスリットと前記ガイドスリットとの間が弾性変形可能とされていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のエアゾール装置。
【請求項7】
前記噴射ボタンは、下端部に裾筒部を有し、この裾筒部が、前記エアゾール容器の上端部の外周に設けられた巻締め部の内側に進入可能とされていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のエアゾール装置。
【請求項8】
前記カバーキャップは、前記内筒部の前記噴射口と対向する面側を開放するスリットからなる排出用開口部を有し、
前記第2の状態では、前記噴射口が前記排出用開口部に臨む位置にあり、前記噴射口から噴射された内容物が前記排出用開口部を通じて前記外筒部と前記内筒部との間の空間へと排出されることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のエアゾール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−42860(P2010−42860A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16723(P2009−16723)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】