説明

エアゾール製品およびそれに用いられる噴射部材

【課題】製造が容易であり、使用開始するまでの気密性高く、長時間経過しても噴射剤の漏洩が小さく、透過による酸素や水分の濃度上昇がない、エアゾール製品およびそれに用いる噴射部材を提供する。
【解決手段】耐圧性を有する容器本体11と、その口部16を塞ぐ蓋部12とからなるエアゾール容器と、エアゾール容器内に充填されるエアゾール組成物Aとからなるエアゾール製品10。蓋部12は、中心孔を有するステムラバー21と、そのステムラバーの上面に中心孔を閉鎖するように設けられた閉鎖膜23と、そのステムラバーを覆うようにしてステムラバー21および閉鎖膜23を容器本体の口部16に固着するカバー22とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアゾール製品およびそれに用いられる噴射部材に関する。特に、使用開始するまでの気密性が高いエアゾール製品およびそれに用いられる噴射部材に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール製品は容器本体にエアゾールバルブを固着したエアゾール容器と、そのエアゾール容器内に充填される原液および原液を噴射するための噴射剤を含むエアゾール組成物とからなる。エアゾール容器は気密性に優れているが、エアゾール製品を保管しておくと時間の経過に伴い、噴射剤が徐々に漏洩し、漏洩量が多くなると噴射状態が変化し、有効成分の濃度が濃くなるなどの問題を生ずる。とくに噴射剤を多く含有するエアゾール組成物が充填されたエアゾール製品の場合、漏洩量が多くなって有効成分の濃度が変化しやすく、医薬品、医薬部外品では使用できなくなる。
【0003】
特許文献1には、エアゾールバルブにステムを設けず、噴射部材にステムを設けたエアゾール製品が開示されている。また、このエアゾール製品は、バルブの開口部に内容物および空気の遮断性に優れたフィルムが貼着されている。そして、フィルムを剥がし、噴射部材を装着することにより使用する。そのため、初期使用まではバルブとフィルムによる二重構造でシールされ、噴射剤の透過による噴射状態の変化を防止する。
【0004】
特許文献2には、容器本体と蓋材とからなり、蓋材を破断することにより容器本体内のエアゾール組成物の全量を噴射するエアゾール製品が開示されている。この蓋材は、アルミニウムなどの金属で一体に成形されるマウンティングカップからなり、長期保存に適している。
【0005】
特許文献3には、ステムラバーの下面にガス不透過性のフィルムを設けたエアゾール製品が開示されており、特許文献4にはステムラバーの両面にガス不透過性のフィルムを設けたエアゾール製品が開示されている。これにより、エアゾール組成物の噴射剤のステムラバーからの透過を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のエアゾール製品の一実施形態を示す側面断面図である。
【図2】図2a、bはそれぞれ図1のエアゾール製品のステムラバーの側面断面図、斜視図であり、図2cはステムラバーの他の実施形態を示す側面断面図である。
【図3】図3a、bはそれぞれ図1のエアゾール製品に噴射部材を取り付けた側面図である。
【図4】図4aは、図1の一部拡大側面断面図であり、図4bは、図3aの一部拡大側面断面図である。
【図5】本発明のエアゾール製品の他の実施形態を示す側面断面図である。
【図6】図6aは本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す側面断面図であり、図6bはその蓋部を示す側面断面図であり、図6cはその噴射部材を示す側面断面図である。
【図7】図7は本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す側面断面図である。
【図8】図8aは本発明のエアゾール製品および噴射部材のさらに他の実施形態を示す側面断面図であり、図8bはその開封状態を示す側面断面図である。
【図9】図9a、b、cは、図8aの噴射部材の側面断面図、上面図、正面図である。
【図10】図10a、b、cは、図8aの噴射部材のカバー部材の側面断面図である。
【図11】図11aは、図8aの噴射部材の押しボタンの側面断面図であり、図11bは、その操作部材の側面断面図であり、図11c、dはストッパー部材の側面断面図および上面図である。
【図12】図12aは本発明のエアゾール製品および噴射部材のさらに他の実施形態を示す側面断面図であり、図12bはその開封状態を示す側面断面図である。
【図13】図13aは本発明のエアゾール製品および噴射部材のさらに他の実施形態を示す側面断面図であり、図13bはその開封状態を示す側面断面図である。
【図14】図14a〜図14eは、それぞれ本発明の噴射部材のステムのさらに他の実施形態を示す側面図である。
【図15】図15a〜図15cは、図14a〜図14eによって破断したステムラバーおよび閉鎖膜の上面図および側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明のエアゾール製品および噴射部材を図面を用いて説明する。
図1のエアゾール製品10は、耐圧性を有する容器本体11と、その開口部を塞ぐ蓋部12と、容器本体内に充填されるエアゾール組成物Aとからなり、蓋部12は後述する閉鎖膜23が針等により破断可能に構成されている。
【0025】
容器本体11は、円筒状の胴部13と、その下端を閉じる底部14と、胴部上端に形成され、外側に拡径する段部15と、その段部の上端に形成される口部16とからなる。この口部16の上部が容器本体の開口部となる。口部16には、後述するステムラバーを保持するステムラバー保持部17が形成されている。ステムラバー保持部17は、口部16の内面に形成された段部17aと、その段部の底面から上方に突出した突出部17bとからなる。この容器本体11は、合成樹脂によって成形されるが、エアゾール組成物の透過を考慮し、厚さが0.3〜7mm、特に0.5〜5mmとなるようにしている。しかし、アルミニウム、ブリキなどの金属や耐圧ガラスなどガス不透過性を有し、耐圧性を有する他の材質を用いても良い。
【0026】
蓋部12は、容器本体の上端に係合されるステムラバー21と、そのステムラバーを容器本体11に固着するためのカバー22と、ステムラバー21の上面に設けられた閉鎖膜23とからなる。
【0027】
ステムラバー21は、図2a、bに示すように、リング状で中心孔21aを有し、カバー22と容器本体11との間をシールするものである。また、図2cのステムラバー21bのように、中心孔21aの上端が上面21cで塞がっていてもよい。あるいは、上面の中心に中心孔21aと同じ大きさの薄膜を備えていてもよい。ステムラバー21は、アクリロニトリルゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴムなどの合成ゴムやエラストマーなどにより成形される。
【0028】
カバー22は、側壁26と、その上端を塞ぐ上面27とからなり、上面27の中心には開口孔28が形成されている。開口孔28とステムラバーの中心孔21aは同軸上に配置される。本実施形態では開口孔28は上方に突出しているおり、そのため後述する噴射部材を真っ直ぐ下方に挿入しやすくなり、閉鎖膜を均等に破りやすい。この開口孔は突出していなくてもよい。カバー22は、アルミニウムなどの金属板から成形される。なお、上面27の内面には、後述する閉鎖膜との気密性を高くするためにポリプロピレンなどの合成樹脂をラミネートしてもよい。
【0029】
閉鎖膜23は、ステムラバーの中心孔21aを塞ぐものであり、ステムラバーの上面全体に接着剤等で固定されている。閉鎖膜23はステムラバーの上面全体に設けられているため、カバー上面27とステムラバー保持部17との間で保持され、ステムラバー21から剥がれることはない。このような閉鎖膜23としてはアルミニウムなどの延性を有する金属箔が用いられる。閉鎖膜23はステムラバー21を透過したガスを封止する作用も奏する。なお、閉鎖膜23は、想像線で示すように、ステムラバーの下面に設けても良く、両方に設けても良い。また、閉鎖膜23をステムラバーの上面に設ける場合には、カバー上面の内面との気密性を高くするために、閉鎖膜の上面にポリプロピレンなどの合成樹脂をラミネートしてもよい。
【0030】
エアゾール組成物Aは、原液と噴射剤とからなり、原液を霧状に噴射したり、泡、クリーム状、または、液滴状に噴出する。本発明のエアゾール製品は、噴射剤として液化ガスを用いても、しかも薫蒸剤などのように多く配合しても、漏洩量をきわめて少なくすることができるため、液化ガスを30〜95重量%、好ましくは40〜90%、特に好ましくは50〜85重量%と多く含有しているエアゾール組成物に対しても、安定である。また、噴射剤として圧縮ガスあるいは圧縮ガスと液化ガスとの混合ガスを用い、その内部圧力を0.4〜0.8MPa、好ましくは0.5〜0.75MPa、特に好ましくは0.6〜0.7MPaとしても漏洩量がきわめて少なく、安定である。
【0031】
このような液化ガスとして、ジメチルエーテル、液化石油ガスおよびこれらの混合物などが挙げられ、特にジメチルエーテル、もしくはジメチルエーテルを含む液化ガスが好ましい。また、圧縮ガスとしてはチッ素ガス、炭酸ガス、圧縮空気などが挙げられる。
原液は、アルコールや炭化水素系溶剤などを主成分とするスプレー用原液や、水を主成分とするフォーム用原液、ゲル用原液が挙げられ、特にスプレー用原液が好ましい。
【0032】
このようなエアゾール製品10は、次のようにして製造される。容器本体11に原液を充填し、次いで液化ガスをアンダーカップ充填もしくは冷却充填する。次に閉鎖膜23が設けられたステムラバー21をステムラバー保持部17に載置し、カバー22を被せる。ステムラバー21とカバー22は予め一体にして取り扱うこともできる。そして、カバー22を押圧しながら、側壁26の下端を容器本体11の段部15または胴部13上端にカシめる。また噴射剤として圧縮ガスを用いる場合は、前述のアンダーカップ充填により充填することができる。
【0033】
このエアゾール製品10は、たとえば図3a、bに示す噴射部材30a、bを用いて使用することができる。
図3aの噴射部材30aは、噴射孔を備えた本体31と、その本体周縁から下に延びる着脱部32と、本体中央から下に延びるステム孔を備えたステム33とからなる。
【0034】
本体31は、円柱状のものであり、側面に形成された噴射孔36と、後述するステム内通路と噴射孔36とを連通する本体内通路37とを備えている。
着脱部32は、円筒状の側壁38と、その側壁下端に形成された内側に突出した係合部39とからなる。
【0035】
ステム33は、図4bに示すように、本体中央から下に延びる円筒状の連結部41と、その連結部41より縮径している円筒状のステム本体42とからなる。ステム本体42は、下端に底部43を有しており、底部43からいくらか上方の側面にステム孔44を有している。連結部41の形状は、カバー22の開口孔28より大きく構成されている。底部43は本発明でいう破断部であり、中央が凹んだ皿状を呈している。また、円筒状の連結部41およびステム本体42の中心孔が上記本体内通路37と連通するステム内通路45を構成している。そのため、噴射孔36とステム孔44は、本体内通路37とステム内通路45によって連通している。さらに、ステムの底部43は、ステム内通路45と連通する連通孔43aが形成されている。
【0036】
図3aに戻って、この噴射部材30aのエアゾール製品10への取り付け法は、使用するときに噴射部材30aのステム33をカバー22の開口孔28から挿入し、噴射部材30aの着脱部32の係合部39がカバーの側壁の下部段部15aと係合するように押し込んで行う。ここでステムの連結部41は、カバー22の開口孔28内に挿入できない形状を有しているため、連結部41と開口孔28とが当接し、噴射部材30aを押し込みすぎることがない(図4b参照)。これによりステム44が閉鎖膜23を破り、エアゾール製品10が開放され、噴射部材30aの噴射孔36からエアゾール組成物Aが吐出される。
【0037】
エアゾール製品を使用する前は、図4aに示すように、エアゾール製品10内にエアゾール組成物Aが充填されており、内部圧力が大気圧に比べて高くなっているため、ステムラバー21の中心孔21aに位置する閉鎖膜23の中心部位23aは、内部圧力を受けて上方に突出するように山型となっている。一方、図4bに示すように、ステム33の底部は凹状を呈している。そのため、閉鎖膜23の中心部位23aの形状と、ステム33の底部43の形状とが合致し、閉鎖膜23の中心部位23aを確実にかつ隙間なく円形に破ることができる。そのため、エアゾール組成物Aはステム33をステムラバーの中心孔21aに挿入した部分からわき漏れすることなくカバーの開口孔28から漏れることがない。
【0038】
また、閉鎖膜23が破られることによりステム内通路45と容器本体内とは圧力差が生まれ、エアゾール組成物Aはステム孔44および連通孔43a方向に移動する。これにより、破られた閉鎖膜の中心部位23aは、ステム内通路45と容器本体内との圧力差により容器本体内に落ちることなくステム23の底部43にしっかり保持される。これにより、破られた閉鎖膜の中心部位23aが浮遊して、ステム孔44等を塞ぐことを防止する。そのため、エアゾール組成物の吐出が邪魔されることがない。
【0039】
図3bの噴射部材30bは、本体46が細長い筒状体となっており、噴射孔47が上方を向いており、連結部が除かれており、倒立で使用されるためステムが短くなっている。他の構成は図3aの噴射部材30aと実質的に同じである。そしてエアゾール製品を倒立状態にして使用する以外は、図3aの噴射部材30aと同様の使用方法にて吐出させることができる。なお、本発明のエアゾール製品は閉鎖膜がカバーの開口孔よりも内部にあるため、開口孔28の直径が3〜7mmと小さい場合、開口孔28を覆うキャップを省略することができる。
【0040】
図5のエアゾール製品50は、蓋部12aが、容器本体51の口部に挿入されるハウジング52と、そのハウジングの上端に配置されるステムラバー21と、そのステムラバーの上面に設けられた閉鎖膜23と、ハウジング52およびステムラバー21を容器本体51に固着するためのカバー22とからなる。ステムラバー21と閉鎖膜23は図2aまたは図2bと実質的に同じものである。また、カバー22も図1と実質的に同じである。
【0041】
容器本体51は、円筒状の胴部53と、その下端を閉じる底部54と、胴部上端に形成され、縮径する首部55と、その首部の上端に形成される拡径した口部56とからなる。胴部53と首部55および首部55と口部56との間にはそれぞれ第1段部55a、第2段部55bが形成されている。この容器本体51は、アルミニウム、ブリキなどの金属によって成形される。しかし、合成樹脂や耐圧ガラスなど耐圧性を有する他の材質を用いても良い。
【0042】
ハウジング52は、円筒状の基部57と、その基部の下端中央に形成され、縮径する円筒状のディップチューブ係合部58とからなり、基部57とディップチューブ係合部58の中央は連通している。基部57の上端には、段部59aと、その段部の底面に上方に突出した突出部59bとからなるステムラバー保持部59が形成されている。また基部の側面上部には、容器本体の口部56と係合する第1係合段部60が形成されており、基部の側面下部には、シール材61を介して容器本体の第1段部55aと係合する第2係合段部62が形成されている。
【0043】
このエアゾール製品50を製造するには、容器本体51に原液を充填し、液化ガスをアンダーカップ充填もしくは冷却充填する。次いでハウジング52と、閉鎖膜23が設けられたステムラバー21と、カバー22とを一体に組み立てた蓋部を容器本体51内に挿入し、蓋部を押圧しながら、カバーの下端を容器本体11の第2段部55bまたは首部55にカシめる。また噴射剤として圧縮ガスを用いる場合は、前述のアンダーカップ充填により充填することができる。
このようなエアゾール製品50は、図1のエアゾール製品10と同様に図3a、bなどの噴射部材30a、30bが使用される。
【0044】
図6のエアゾール製品70は、容器本体71と、マウンティングカップを備えた蓋材72とを備えたものである。
【0045】
容器本体71は、円筒状の胴部73と、その下端を閉じる底部74と、胴部上端に形成され、外側に湾曲しながら縮径する肩部75と、肩部上端に形成されるビード部76とからなる。この容器本体71は、アルミニウム、ブリキなどの金属板を絞り加工またはインパクト加工などにより胴部73と肩部を成形し、肩部上端にカーリング加工を施してビード部76を形成し、さらに胴部の下端に底部を二重巻締めなどにより取り付けて成形される。また、底部74は中心に向けてテーパ状に盛り上がる山型に形成している。これにより、内圧に対する容器の耐圧性が高まり変形しにくい。なお、合成樹脂や耐圧ガラスなど、耐圧性を有する他の材質のものを用いてもよい。また、底部74はインパクト成形などにより胴部73と一体に成形してもよい。
【0046】
蓋部72は、図6bに示すように、容器本体71のビード部76に固定されるマウンティングカップ78と、そのマウンティングカップの下面中央に保持される筒状のハウジング80と、ハウジングの下端に連結されるディップチューブ81と、ハウジング80の上端とマウンティングカップ78の間に保持されるステムラバー21と、そのステムラバーの上面に設けられた閉鎖膜23とからなる。ステムラバー21と、閉鎖膜23とは図2aまたは図2cに用いられているものと実質的に同じである。
【0047】
マウンティングカップ78はカバーとして作用し、ガスケット79を介してビード部76にクリンプされる湾曲フランジ84と、ハウジング80を保持する有底筒状のハウジング保持部85と、湾曲フランジ84とハウジング保持部85とをつなぐ環状凹部86と、中心にステムを通す開口孔87とを備えている。マウンティングカップ78は、アルミニウムやブリキなどの金属板から成形される。
【0048】
ガスケット79は、ビード部76と湾曲フランジ84との間をシールするものであり、アクリロニトリルゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴムなどの合成ゴムやエラストマーなどからなる。
【0049】
ハウジング80は、外フランジ部89を有し、下端にディップチューブ係合部90を有する筒状のものであり、上面開口部にステムラバー保持部91が形成されている。このハウジング80は、ハウジング保持部85を外フランジ89を覆うようにしてカシめることにより保持される。ハウジング80は、ポリアセタール、ポリアミドなどの合成樹脂により成形される。
【0050】
ディップチューブ81は、容器本体の下部から内容物を吸い上げるものであり、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどの合成樹脂からなる。
【0051】
このようなエアゾール製品70は、次のようにして製造される。初めに、容器本体71に原液を充填する。次いでガスケット79、ハウジング80、ディップチューブ81およびステムラバー21をマウンティングカップ78に取り付けた蓋部72を容器本体71の口部に載置する。そして、マウンティングカップの湾曲フランジ84と容器本体71のビード部76の間から噴射剤を充填する(アンダーカップ充填)。最後にマウンティングカップ78を容器本体71に対して下に押圧しながら、マウンティングカップ78の環状凹部86の側壁86aを外方にカシめて容器本体71のビード部から肩部75の内面にかけて突出させ固定する。
【0052】
このものも図6cの噴射部材92を用いて吐出させることができる。この噴射部材92は図3bの噴射部材30bとほぼ同一であり、ノズルとステムを兼ねる筒状の本体93と、その本体をマウンティングカップ78のハウジング保持部85の外周に被せて固定するための有底筒状の固定部94とを有する。固定部94の下端には、ハウジング保持部85の根本の縮径された部位に係合する係合部95が設けられている。上方に突出するノズルは図3bの場合と、本体93の下部は図4bのステム本体42と、それぞれ実質的に同一であるので、同じ符号を附して説明を省略する。
【0053】
図7のエアゾール製品96は、閉鎖膜23を破断した後も、繰り返し使用できるものであり、ハウジング52内に上下移動自在に配置され、閉鎖膜23を破断したステムを保持する弁皿97と、その弁皿をステムラバーに常時付勢するスプリング98とを備えたものである。容器本体51、ステムラバー21、カバー22、閉鎖膜23およびハウジング52からなる蓋部12a、シール材61は図5のエアゾール製品50と実質的に同じものである。
【0054】
弁皿97は、底部97aを有する筒状のものであり、底部97aの中心にはステム本体の底部43と係合する凸部97bが形成されている。また、底部97aの下面側縁には、スプリング98と係合する係合部99が形成されている。
スプリング98は、ハウジング52の底に配置され、弁皿97を上に押し上げるものである。
【0055】
このエアゾール製品96は、例えば、図3bの噴射部材30bあるいは図6cの噴射部材92のようにステム本体が短く、さらに係合部39を備えていないものを用いて開放する。つまり、ステム本体42をハウジング52内に挿入するようにして閉鎖膜23を破断する。このとき閉鎖膜23の破断部はステム本体42の底部43に保持されたままステム本体の底部43と弁皿の凸部97bとは係合する。これによりステム本体42は弁皿97に支持される。このとき、噴射部材のステム本体42の側面に形成されたステム孔44はステムラバー21に覆われており、エアゾール組成物は噴射されない。そして、スプリング98に抗ってステム本体42を弁皿97ごと押し下げることにより、弁皿97の上端とステムラバー21の下面との間に隙間ができ、エアゾール組成物が噴射部材の噴射孔より噴射される。ステム本体に対する押し下げ力を弱めると、スプリング98が弁皿を元の位置に戻し、弁皿97の上端がステムラバー21の下面と当接してシールされる。噴射部材は使用後取り外してもよく、装着しておいてもよい。このようにエアゾール製品96は、ステム本体42を押し下げるたびに噴射ができる。
【0056】
図8に示す噴射製品100は、図6に示すようなエアゾール製品70と、その蓋部72の外周に取り付けられた噴射部材102とからなり、噴射部材102をエアゾール製品に取り付けた状態で操作することによりエアゾール製品の閉鎖膜を開封するものである。
【0057】
図9の噴射部材102は、エアゾール製品に装着されるカバー部材106と、そのカバー部材の中心で上下移動自在に配置され、前方に内容物を噴射させる押しボタン107と、押しボタン107を下方に移動させる噴射操作をするための操作部材108とからなる。
【0058】
図10に示すカバー部材106は、マウンティングカップ78の湾曲フランジ84(図8参照)の外周と装着する環状の装着部111と、その装着部から上方に延びる一対の側壁部112と、環状に設けられたガイド部113と、装着部111とガイド部113とを連結する連結部114と、装着部111の外周にエアゾール製品の容器本体71の肩部全体を覆う保護部115とを備えている。
【0059】
装着部111は、湾曲フランジ84の外周と嵌合するように設けられており、エアゾール容器と着脱自在に固定されている。保護部115は、装着部111を外力等から保護し、装着部111の湾曲フランジ84からの脱離を防止するものである。
【0060】
側壁部112は、外力等から押しボタンの誤操作を防止するため、押しボタンの両側面を覆うように設けられている。また、この側壁部112の前部上端には操作部材108を回動自在に連結する軸受け部112aが設けられている。装着部111の上の前部には、前壁116が設けられており、中央部に切欠き116aが形成されている。しかし、エアゾール組成物を噴射できるように開放されていれば、前壁はあってもなくてもよい。また、装着部111の上の後部も操作部材108を操作するために開放されている。しかし、装着部111の上の後部も操作部材108の操作の邪魔にならない程度に後壁が設けられて良い。この前壁または後壁はカバー部材106を強固にすることができ、かつ、外力等から押しボタンの誤操作を防止しえるものである。
【0061】
ガイド部113は、環状に配置された鉛直軸方向に延びる複数の部材からなっており、下端に内側に突出する凸部117が形成されている。押しボタン107の上下方向の移動をガイドするものである。この実施形態では複数の部材からなっているが、円筒状の一つの部材からなっていてもよい。
【0062】
図11aに示す押しボタン107は、円筒状のボタン本体121と、その下端に取り付けられる破断部を備えたやじり部材122と、本体の前部に取り付けられるノズル部材123とからなる。
【0063】
ボタン本体121は、下円筒部124と、その上端に設けられた円筒状の噴射部125とからなり、下円筒部124の内部と噴射部125の内部とは連通している。また、下円筒部124の上端内部にはやじり連結部126が形成されており、下端外周には外方向に突出した係合部127が環状に形成されている。また、下円筒部の内面にも係止突起127a、bがハウジング保持部85と係止するように形成されている。さらに、噴射部125の先端にはノズル連結部128が形成されている。
【0064】
やじり部材122は、下円筒部124内に収められてやじり連結部126に固定されるものであり、閉鎖膜を破断する円筒状のステム129と、その上端に設けられた円筒状の係合部130とからなり、ステム129の内部と係合部130の内部とは連通している。ステム129は、底面の外面がV字の凹状を呈しており、その縁部で閉鎖膜が破断できるように構成されている。係合部130は、やじり連結部126内に挿入される挿入部130aと、やじり連結部126と当接するフランジ部130bとからなり、挿入部130aの外周には係合突起130cが形成されている。
【0065】
ノズル部材123は、ボタン本体121を通ってきたエアゾール組成物の通路径を絞り、所望の噴射状態にする噴射孔131と、ノズル連結部128と係合する円筒状の係合部132とからなり、噴射孔131と係合部132の内部とは連通している。係合部132は、ノズル連結部128内に挿入される挿入部132aと、ノズル連結部128と当接するフランジ部132bとからなり、挿入部132aの外周には係合突起132cが形成されている。
【0066】
この押しボタン107は、やじり部材122とノズル部材123とは、それらをボタン本体121に連結することにより、連通する。このように構成されているため、やじり部材122のステム129で閉鎖膜を破ることにより、エアゾール容器内と押しボタンとは連通し、エアゾール組成物が噴射孔131より噴射される。
【0067】
図11bに示す操作部材108は、前部を中心に回動する平板状の操作部本体136と、その前部に設けられた軸部137とからなる。操作部本体136の上面は、中部から後部にかけて若干下方にテーパしている。
【0068】
このように構成された噴射部材101は、押しボタンの下円筒部124がカバー部材のガイド部113内に内挿されるように設けられ、操作部材108の軸137がカバー部材の軸受け部112aと係合するように連結される。そして、噴射部材101は次のように操作される。図8に戻って操作部材108の上面後部を下方に押し下げることにより、操作部材108は、カバー部材の前部上端を中心に回動する。これにより、操作部材の操作部本体136の下面が押しボタン107の上端と当接し、押しボタン107が下方に押し下げられる。このとき、押しボタンの下円筒部124は、カバー部材のガイド部113によりガイドされ、真っ直ぐ下に移動する。このとき下円筒部の係合部127はガイド部の凸部117を乗り越えて移動する。
【0069】
図8bに示すように、このように押しボタンが移動することによりやじり部材122のステム129は、マウンティングカップの開口孔87内に真っ直ぐ挿入され、閉鎖部23を破り、ステムラバー21の中心孔21aと連通する。一方、押しボタンの下円筒部の係合部127はカバー部材のガイド部の凸部117に係止され、開封状態で維持される。
このように噴射部材101は、使用するときに操作することにより始めてエアゾール製品100を開封するものである。この噴射部材101は、てこを利用して軽い力で閉鎖膜を破断できるように操作部材108を備えているが、操作部材を設けなくてもよい。この場合、操作者が直接押しボタン107を押し下げることになる。
【0070】
この噴射部材101には、外力から誤操作によるエアゾール製品100の開封を防止するべく操作部材108をロックする手段が設けられている。この実施形態では、図9に示すように操作部材108とカバー部材106の間に、操作部材108の回動をロックするストッパー部材109を備えている。このストッパー部材109は、図11c、dに示すように、取手部141と、その両端から前方に延びる脚部142と、取手部中央と連結したロック部143とからなるU字状のものである。ロック部143は、カバー部材106の一部と操作部材108の一部との間に実質的に隙間なく配置されるものであり、これにより操作部材108の下方への移動を防止する。脚部142の先端には係合突起142aが形成されており、カバー部材に設けられた係止部142b(図10b参照)と係合してストッパー部材109は、カバー部材106に保持される。
【0071】
図12の噴射製品150は、押しボタンの天面を指で直接押し下げて操作することにより閉鎖膜を破断してエアゾール製品を開封することができる噴射部材を備えたものあり、エアゾール製品150aと、噴射部材151とからなる。エアゾール製品の容器本体150bは、従来公知のスリーピース缶であり、胴部上端に肩部およびビード部を構成する目金部150cを備えたものである。胴部上端と目金部150cの下端は、二重巻き締めにより連結されている。この噴射部材151は、押しボタンの噴射孔が斜め上方を向いたものであり、カバー部材152と、押しボタン153ととからなる。
カバー部材152は、装着部111と、ガイド部113と、連結部114とを備えたものである。
【0072】
押しボタン153は、円筒状のボタン本体157と、その下端に取り付けられるやじり部材122と、ボタン本体の前部に取り付けられるノズル部材123とからなる。やじり部材122とノズル部材123とは図8のものと実質的に同じである。
ボタン本体157は、円筒部124aからなり、その上端にノズル連結部128が形成されている。円筒部は、図8の下円筒部124と同様に、やじり連結部、係合部、係止突起が形成されている。
【0073】
このように構成された噴射部材151も、押しボタン153の天面を下方に押し下げることにより、押しボタンの円筒部124aがカバー部材のガイド部113にガイドされて真っ直ぐ下に移動し、ステム129が閉鎖部23を破り、ステムラバー21の中心孔を開放する。
【0074】
図13の噴射製品160は、図1のエアゾール製品10と、噴射部材161とを備えたものである。
噴射部材161は、上底162を備えた筒状のボタン本体163と、その上底162の中央から上方に延びる噴射部164と、その上底162の中央から下方に延びるステム165とからなる。
ボタン本体163の中部内面には内側に突出した第1係合突起166が形成されており、下端内面には内側に突出した第2係合突起167が形成されている。
【0075】
このエアゾール製品10と噴射部材161とは、噴射部材161のボタン本体163の内部にエアゾール製品10を挿入して組み立てられる。つまり、使用する前は、エアゾール製品10のカバー22が噴射部材の第1係合突起166と第2係合突起167との間で保持される。そして、カバー22が第1係合突起166を乗り越えるように、エアゾール製品10を噴射部材161側に押し込むことにより、ステム165が閉鎖膜を破り、エアゾール製品10を開封する。
この噴射製品160にも、外力による誤操作を防止すべくロックする手段を設けても良い。例えば、ボタン本体163の側面であって第1係合突起の近辺に、穴を形成し、図13の想像線で示すように、係止部材169を着脱自在に挿入できるようにしてもよい。
【0076】
図14a、b、c、d、eのステム171a、b、c、d、eは、本発明の噴射部材に用いられるステムを示す。
ステム171aは、下面がV字の凹状を呈している。ステム171bは、下面がV字の凹状を呈しており、ステム171aより鋭角なV字となっている。ステム171cは、下面が皿状の凹状を呈している。ステム171dは、下方に向かって縮径する錐状のものである。ステム171eは、斜面状の下面を呈しているものである。
これらのステムを備えたやじり部材を図8の噴射部材に装着して図2cのステムラバー21cおよび閉鎖膜23の破断試験を行った。このとき閉鎖膜として、アルミニウム箔を用いた。
【0077】
いずれのステムも閉鎖膜およびステムラバーを簡単に破断した。一方、破断した閉鎖膜の形状が異なる結果となった。
ステム171a、b、cは、図15aに示すように、ステムラバーおよび閉鎖膜をきれいに打ち抜いた。そして、打ち抜いたラバー172は「へ」の字に変形され、ステムの底面に保持された。
ステム171dは、図15bに示すように、ステムラバーおよび閉鎖膜を破断したが、破断された部位173は、打ち抜かれた穴の周囲に残り、打ち抜かれた穴はきれいな円とはならなかった。
ステム171eは、ステムラバーおよび閉鎖膜を破断したが、破断された一部174がそれぞれステムラバーおよび閉鎖膜に残った。
【0078】
この試験により、ステム171a、b、cは、きれいに閉鎖膜を打ち抜くことができ、かつ、その打ち抜いたラバー172はステムの底部に保持された。また、保持されたラバーによってステム内の通路は詰まることもなかった。ステム171d、eは閉鎖膜を簡単に破断したが、その破断形状が円状にならなかった。この場合、ステムとステムラバーとの間のシール性が低下し、エアゾール組成物が沸き漏れする可能性が残った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧性を有する容器本体およびその開口部を塞ぐ蓋部を備えたエアゾール容器と、そのエアゾール容器内に充填されるエアゾール組成物とからなり、
前記蓋部は、中心孔を有するステムラバーと、そのステムラバーの上面および/または下面に中心孔を覆うように設けられたガス不透過性の閉鎖膜と、そのステムラバーを覆うようにしてステムラバーおよび閉鎖膜を容器本体の開口部に固着するカバーとを備え、
前記カバーの前記中心孔と重なる位置に開口孔が形成された、エアゾール製品。
【請求項2】
前記ステムラバーの中心孔の上端または下端が、上面または下面により塞がっており、その上面または下面に前記閉鎖膜が設けられている、請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項3】
前記ステムラバーの中心孔は、ステムラバーを貫通しており、その中心孔を閉鎖するように閉鎖膜が設けられている、請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項4】
前記ステムラバーが、容器本体の上端に形成されたステムラバー保持部と、カバーとの間に固着される請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項5】
前記蓋部が、上端にステムラバー保持部を有するハウジングをさらに備え、
前記ステムラバーが、前記ステムラバー保持部と、カバーとの間に固着される請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項6】
前記エアゾール組成物が、原液と液化ガスとからなり、前記液化ガスが30重量%以上である、請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項7】
前記エアゾール組成物が、原液と圧縮ガスとからなり、内部圧力が0.4〜0.8MPaである、請求項1記載のエアゾール製品。
【請求項8】
請求項1記載のエアゾール製品の閉鎖膜を開封し、エアゾール組成物を噴射する噴射部材であって、
噴射孔を備えた本体と、
本体中央から下に延び、下端に閉鎖膜を開封するための破断部を備えたステムとからなり、
前記噴射孔と破断部とが通路によって連通した、噴射部材。
【請求項9】
前記ステムの底面の外面が凹状を呈する破断部であり、その外面に通路と連通した連通孔が形成されている、請求項8記載の噴射部材。
【請求項10】
前記ステムの底面の外面がV字状を呈する破断部である、請求項9記載の噴射部材。
【請求項11】
前記ステムの底面の外面がU字状を呈する破断部である、請求項9記載の噴射部材。
【請求項12】
前記ステムの下部側面にステム孔が形成されている、請求項9記載の噴射部材。
【請求項13】
前記噴射部材が、容器本体または蓋部に係合し、エアゾール製品を開放状態で維持するための係合部を備えている、請求項8記載の噴射部材。
【請求項14】
前記ステムが、閉鎖膜を破断する開封状態と、前記ステムが閉鎖膜と離れた封緘状態との間を移動可能に構成されている、請求項8記載の噴射部材。
【請求項15】
前記ステムの移動を上下方向にガイドするガイド部を備えた、請求項14記載の噴射部材。
【請求項16】
エアゾール容器に装着されるカバー部材と、
そのカバー部材に上下移動自在に内挿される押しボタンとからなり、
前記カバー部材が、円筒状のガイド部を備え、
前記押しボタンが、そのガイド部内を上下に移動する円筒部を備え、
前記円筒部にステムが設けられている、請求項15記載の噴射部材。
【請求項17】
前記ガイド部が内側に突出する凸部を備えており、
前記円筒部が外側に突出する係合部を備えており、
前記押しボタンが移動して円筒状の係合部が凸部を乗り越えることにより、前記封緘状態から開封状態となる、請求項15記載の噴射部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−298480(P2009−298480A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115978(P2009−115978)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(390035909)興国インテック株式会社 (18)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】