説明

エアゾール製品用の噴射部材

【課題】コインを用いて容易にバルブを開放させ、その状態でロックし、エアゾール組成物を確実に全量排出することができるエアゾール製品用の噴射部材を提供する。
【解決手段】エアゾールバルブのステムに装着され、上下動可能な押しボタン151と、エアゾール容器の頭部に装着されるカバー部材132とからなり、前記カバー部材132が、円筒状の装着部146と、前記押しボタンのほぼ全体を覆うカバー部149と、前記カバー部の後方上部の上部開口部に配置され前記装着部の後方上端と薄肉部150で連結された操作部151とからなり、前記カバー部の天部に係止部153が形成されており、前記係止部の下面153aが操作部の上面151aとほぼ同じの高さになるように構成されており、前記係止部の下面153aと操作部の上面151aとの間にコインを挿入して、エアゾールバルブを開放位置で保持する、噴射部材130。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアゾール製品用の噴射部材に関する。さらに詳しくは、不要になったエアゾール製品を廃棄する際、エアゾール容器内に残っているエアゾール組成物を簡単な方法により確実に外部へ全量排出することができるエアゾール製品用の噴射部材に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2001−180773号公報
【特許文献2】特開2002−12276号公報
【特許文献3】特開2000−177786号公報
【特許文献4】特開平9−40045号公報
【特許文献5】特開2002−2838号公報
【特許文献6】特開2000−191062号公報
【特許文献7】特開2002−53187号公報
【特許文献8】特開2000−191060号公報
【特許文献9】特開2002−193362号公報
【特許文献10】特開2001−301853号公報
【特許文献11】特開2003−12061号公報
【特許文献12】特開2001−31158号公報
【特許文献13】再公表特許WO2003/076306号公報
【0003】
エアゾール容器は、耐圧容器と、その開口部に取付けられたエアゾールバルブとからなり、容器内に内容物として有効成分を含む原液と、液化石油ガスやジメチルエーテルなどの可燃性の液化ガスなどの噴射剤を充填し、さらに噴射部材を装着してエアゾール製品となる。
エアゾール製品は常温で0.2〜0.6MPa程度の圧力があり、噴射部材を押し下げるなどの噴射操作によりバルブを開放すると容器内部のエアゾール組成物は外部に噴射される。
【0004】
現在、不要になったエアゾール製品は消費者により容器内にエアゾール組成物が残っていない状態(空の状態)にしてもらい不燃性のゴミとして回収されているが、回収する際にパッカー車などの回収車内でエアゾール製品が圧縮されて容器が破裂し、火災を起こす事故が発生している。エアゾール製品には、使い切ってから廃棄するように注意書きや表示を設けているが、依然として容器内部にエアゾール組成物が残ったままの状態で廃棄されていることがあり、火災事故を引き起こしやすくなっている。
【0005】
しかし、消費者が使用目的とは別に自発的に容器内が空になるまで噴射操作を行うことは手間である。特に多くのエアゾール製品は、指で噴射部材の押しボタンを押し下げて噴射操作を行うが、完全に噴射が終了するまで噴射部材を押し続ける必要があり、手間がかかる。
【0006】
このような問題に対して、エアゾール容器内に残っているエアゾール組成物を排出しやすくする手段として、たとえば押しボタンなどを取り外し、排出具をバルブに直接取り付け、バルブを常時開放状態とする排出機構が知られている(特許文献1、2、3、4参照)。そして、このような機構を有するものであって、エアゾール製品の通常の使用を妨げないように、上述の排出具がエアゾール製品のキャップに取り付けられているものを特許文献1は開示しており、特許文献1のキャップを耐圧容器の底部に取り付けられているものを特許文献3は開示している。また、特許文献4は押しボタンを取り外し、押しボタンを反転させてキャップの内部に装着し、キャップをカバー部材に装着することでバルブを開放状態にするものを開示している。
【0007】
また、押しボタンなどの噴射部材を取り付けたまま排出具を取り付け、バルブを常時開放状態とする排出機構が知られている。特許文献5は、キャップの天面に押しボタンを押し下げる突起と、カバー部材にキャップを装着するための係合突起とが設けられており、キャップを反転させ、キャップの上面をカバー部材に取り付けることにより、押しボタンを押し下げ、バルブを常時開放状態とするものを開示している。また、特許文献6、7はキャップの天面の一部を折り曲げる、あるいは押し下げた状態で容器に装着することにより、押しボタンを押し下げ、バルブを常時開放状態とするものを開示している。
【0008】
さらに、押しボタンとカバー部材またはキャップとを用いバルブを常時開放状態とすることができる排出機構が知られている。特許文献8は、押しボタンに取り付けられた回動突起を上方に立ち上げ、キャップを容器に取り付けることにより、その回動突起がキャップ天面と当接し、押しボタンが押し下げられるものを開示している。特許文献9は、押しボタンを回転して押しボタンの突起をカバー部材に係合させ、押しボタンを押し下げ位置に保持するものを開示している。特許文献10は、押しボタンを押し下げた状態で押しボタン後部のレバーを摘んで回し、レバーをカバー部材の溝に係合させるものを開示している。また、特許文献11は、押しボタンを押し下げた後、押しボタン後部の回動レバーを回すことにより回動レバーをカバー部材に係合させるものを開示している。
【0009】
そして、特許文献12は押しボタンとカバー部材とからなる噴射部材であって、押しボタンを押し下げた後、押しボタンの上面とカバー部材との間に平板を挟むことによって、ボタンを常時押し下げ状態とすることができるものを開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、押しボタンとカバー部材とからなる噴射部材であって、硬貨などのコインを用いて、簡単な方法でエアゾール容器内に残っているエアゾール組成物を確実に全量排出することができるエアゾール製品用の噴射部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のエアゾール製品用の噴射部材は、耐圧容器の開口部にエアゾールバルブを固着したエアゾール容器に装着される噴射部材であって、エアゾールバルブのステムに装着され、上下動可能な押しボタンと、その押しボタンを覆うようにエアゾール容器の頭部に装着されるカバー部材とからなり、前記カバー部材が、エアゾール容器に装着される円筒状の装着部と、前記押しボタンのほぼ全体を覆うカバー部と、前記カバー部の後方上部の上部開口部に配置され前記装着部の後方上端と薄肉部で連結された操作部とからなり、前記カバー部の天部に係止部が形成されており、前記係止部の下面が操作部の上面とほぼ同じ高さまたは操作部の上面より若干低くなるように構成されており、前記係止部の下面と操作部の上面との間にコインを挿入して、エアゾールバルブを開放位置で保持することを特徴としている(請求項1)。
【0012】
本発明のエアゾール製品用の噴射部材の第2の態様は、耐圧容器の開口部にエアゾールバルブを固着したエアゾール容器に装着される噴射部材であって、エアゾールバルブのステムに装着され、上下動可能な押しボタンと、エアゾール容器の頭部に装着されるカバー部材とからなり、前記カバー部材が、エアゾール容器に装着される装着部と、その装着部から上方に延びる一対の側壁部を有し、前記それぞれの側壁部の内面に内向きに突出する突出部が形成されており、前記突出部の下面が押しボタンの上面とほぼ同じ高さとなるように構成されており、前記突出部と押しボタンの上面との間にコインを挿入して、エアゾールバルブを開放位置で保持することを特徴としている(請求項2)。
【0013】
本発明の噴射部材の第2の態様において、前記突出部が、傾斜した上面を有する上部と、押しボタンの上面に対して平行な下面を有する下部とからなるものが好ましい(請求項3)。また、前記側壁部の噴射孔側の上部に係止段部が形成されており、前記突出部の下部の下面と係止段部の下面とは同じ高さであるものが好ましい(請求項4)。
【0014】
本発明の噴射部材のいずれの態様においても、前記カバー部材の装着部のやや後部上方には、スリットが形成されており、このスリットにコインを差し込み、コインの後端を持ち上げることによりコインがエアゾールバルブと当接して支点となり、てこの原理で合成樹脂製のカバー部材を金属製のエアゾール容器から取り外すことができるものが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエアゾール製品用の噴射部材(請求項1)は、カバー部材のカバー部の天部に係止部を備えており、その係止部の下面が操作部の上面とほぼ同じ高さあるいは操作部の上面より若干低くなるように構成されており、その係止部の下面と操作部の上面との間にコインを挿入してエアゾールバルブを開放位置で保持できるため、日常生活で使用する硬貨などのコインを操作したエアゾールバルブの開放を容易に行うことができ、エアゾール製品使用後の内容物の排出が容易である。
【0016】
本発明のエアゾール製品用の噴射部材の第2の態様(請求項2)は、カバー部材が装着部から上方に延びる一対の側壁部を有し、その側壁部の内面に突出部が形成されており、前記突出部の下面が押しボタンの上面とほぼ同じ高さとなるように構成されており、その突出部と押しボタンの上面との間にコインを挿入して、エアゾールバルブを開放位置で保持できるため、エアゾール製品使用後の内容物の排出が容易である。
【0017】
このような噴射部材であって、前記突出部が、傾斜した上面を有する上部と、押しボタンの上面に対して平行な下面を有する下部とからなる場合(請求項3)、コインの挿入が一層容易である。
【0018】
さらに、前記側壁部の噴射孔側の上部に係止段部が形成されており、前記突出部の下部の下面と係止段部の下面とが同じ高さにある場合(請求項4)、コインをしっかり保持することができる。
【0019】
上述したいずれの噴射部材であって、前記カバー部材の装着部のやや上方には、スリットが形成されており、このスリットにコインを差し込み、コインの後端を持ち上げることによりコインがエアゾールバルブと当接して支点となり、てこの原理でカバー部材を取り外すことができる場合(請求項5)は、コインを用いて排出処理した後、引き続きコインを用いて合成樹脂製のカバー部材を金属製のエアゾール容器から取り外すことができ、分別廃棄しやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明のエアゾール製品に用いられる噴射部材の実施形態を図面を用いて説明する。図1は本発明の範囲外の噴射部材を取り付けたエアゾール製品の一実施形態を示す側面図、図2a、図2b、図2c、図2dは図1に用いられている噴射部材を示す正面図、背面図、側面図、平面図、図3aは図1に用いられている噴射部材を示す側面断面図、図3bは図1に用いられている噴射部材にコインを取り付けたときの状態を示す側面断面図、図4は本発明の噴射部材の実施形態を示す側面断面図、図5aは図4の噴射部材にコインを取り付けたときの側面断面図、図5bおよび図5cはその噴射部材にコインを取り付けたときの背面図、平面図、図6aは本発明の噴射部材の他の実施形態を示す側面断面図、図6bはその平面図、図6cはその噴射部材の一部斜視図、図6d、図6eはその噴射部材に用いられる突出部の側面図、図6fはその噴射部材に用いられる突出部の他の実施形態を示す一部斜視図、図7a、図7bは図6aの噴射部材にコインを取り付ける手段を示す側面断面図、図7cはその噴射部材を取り外す手段を示す側面断面図、図8a、図8b、図8c、図8dは本発明の噴射部材のさらに他の実施形態を示す正面図、背面図、側面断面図、平面図である。
【0021】
図1に示すエアゾール製品10は、耐圧容器11と、その耐圧容器の開口部に固着したエアゾールバルブ12(以下、バルブ)とからなるエアゾール容器13と、エアゾール容器の頭部に装着した噴射部材14と、エアゾール容器内部に充填されているエアゾール組成物Aとからなる。
【0022】
耐圧容器11は、従来公知のものであり、ブリキ、錫−ニッケル系鋼板(TNS)などの金属板を円筒状にした胴部11bに、底部11aと目金11cとを二重巻き締めにより固着した3ピース缶であり、目金の上端開口にはビード部11dを形成している。なお、耐圧容器11として、例えば、アルミニウム、ブリキ等の金属板をインパクト加工または絞り加工などによって有底筒状に形成し、さらにネッキング加工、カーリング加工によって肩部、ビード部を形成したものを用いても良い。また、合成樹脂や耐圧ガラスなど、耐圧性を有する他の材質のものであってもよい。
【0023】
バルブ12も従来公知のものであり、耐圧容器11のビード部11dに固定されるマウンティングカップ19と、そのマウンティングカップの中央に保持される筒状のハウジング20と、そのハウジング内に上下移動自在に収容され、スプリングにより常時上向きに付勢されているステム21と、ステム21がスプリングの反発力により上向きに付勢されている状態でステムのステム孔を覆いエアゾール容器内部を密封するステムラバー(図示せず)と、前記ハウジングの下端から耐圧容器本体の底部に延びているディップチューブ22とからなる。
【0024】
噴射部材14は、エアゾール容器の頭部(マウンティングカップのカール部分)に装着されるカバー部材24と、ステムの上部に装着される押しボタン25とからなる。前記カバー部材24は、図2a〜図2d、図3a、図3bに示すように、マウンティングカップのカール部分に装着するため装着部27と、押しボタン25の両側面を覆う一対の側壁部24aとを備えている。前記側壁部24aは、押しボタン25の両側面を覆うように装着部27から上方に延びており側壁部24aの天面は押しボタンの天面25aよりも高い位置にある。該側壁部24aにより、未使用時は押しボタン25にモノが当たって不意にエアゾール組成物が噴射するなどの誤作動を防止できると共に、通常の使用においては指で、また排出操作のときはコインを用いて押しボタン25を垂直下方へ押し下げることが容易にでき、バルブを確実に開放することができる。また、図2bに示すように、側壁部24aの後部には水平方向に延びるスリット30が形成されている。このスリット30の幅は1〜3mm、好ましくは1〜2.5mmであり、スリット30の下面30aは、押しボタン25を押し下げていない状態に置いて、押しボタンの天面25aよりも下方にある。
【0025】
カバー部材24の噴射孔側(前面)は押しボタン25が押し下げられた状態でも噴射孔36が露出するように窪んでおり、カバー部材24の後部側は、押しボタンの頭部を指で押し下げられるように窪んでいる。
前記押しボタン25は、ステム21に装着するためのステム装着部35と、エアゾール組成物を外部(大気)に噴射するための噴射孔36と、ステム装着部35と噴射孔36とをつなぐ通路37とを有する(図3a参照)。
【0026】
コイン16は、図2dの想像線で示すように薄厚の円板であり、その大きさは直径が20〜30mm、厚さが1〜3mmであり、硬貨やメダルなどを用いることができる。コインは、銅、亜鉛、すず、ニッケル、アルミニウムおよびこれらの混合物(合金)などの金属からなるものが好ましく、ポリアセタールやポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステルなどの合成樹脂製のカバー部材よりも硬度が高いため、コインを挿入しやすく、またコインを引き抜きやすい。また、コイン16の厚さは前記スリット30の幅より若干大きいものが好ましい。これにより、コイン16をスリット30に嵌入すると、コインとスリットとの間の摩擦により、コイン16は外れにくくなる。また、このコイン16は、日常生活で使用している硬貨を用いることができるため、付属のコインを紛失してもこれらの硬貨を用いて排出操作を行うことができる。また、この実施形態ではコイン16をエアゾール製品に備えたものを開示しているが、硬貨等の日常品を用いることができるため、エアゾール製品の付属品として設けなくてもよい。
【0027】
このような噴射部材14を取り付けたエアゾール製品10は、通常の使用に置いては、押しボタンの天面(上面)25aを指で押し下げることにより、押しボタンと共にステムが押し下げられてバルブのステム孔が開放される。このときエアゾール容器内部と大気とが連通し、エアゾール容器内部のエアゾール組成物がディップチューブを通ってハウジング内部に供給され、さらにステム孔、押しボタンの通路を経由して噴射孔から大気中へ噴射される。
【0028】
また、エアゾール製品が不要になり廃棄したいときには、指などで押しボタンの天面(上面)25aを押し下げ、この状態でコイン16をスリット30に挿入する。このとき、押しボタンの天面(上面)25aはコイン16の下面と当接するため、指を離しても押しボタン25は上昇せずにエアゾールバルブが開放している位置で維持される(図3b参照)。コイン16を挿入している間はエアゾール製品は大気と連通した開放状態が維持されるため、エアゾール容器内部に残っているエアゾール組成物を全量排出することができる。なお、スリット30に挿入したコイン16には、スプリングの反発力が押しボタン25を介して容器の軸方向上向きに加わるため、コイン16とスリット30との間の半径方向の摩擦力は一層高くなり、コイン16は外れにくくなる。エアゾール製品から排出が停止すると、コイン16を引き抜くことでコイン16を回収することができる。なおコイン16をつけたまま廃棄した場合は、エアゾール製品を回収する人が排出処理を行ったエアゾール製品であることを認識することができるため、さらに好ましい。この場合、耐圧容器と同じ材質のコインを用いることが、リサイクルしやすい点から好ましい。
【0029】
図4の噴射部材130は、バルブのステムに装着される押しボタン131と、その押しボタンを覆うようにエアゾール容器に装着されたカバー部材132とから構成される。
【0030】
押しボタン131は、噴射ノズル(ロングノズル)133と、その噴射ノズルを結合しバルブのステムに装着された押しボタン本体134とからなる。
噴射ノズル133は、押しボタン本体134の係合部135と係合する基端部136と、基端部に装着され内部に噴射通路(第1通路137)を有するノズル部138と、ノズル部の先端に装着され噴射孔139を有する噴射部140とから構成されている。基端部136は半球状ないし半円柱状であり、押しボタン本体134の係合部135との係合個所を軸として90度回動できるように構成されている。さらに基端部136には、第1通路137と独立し、かつ、第1通路の軸方向と垂直に延びる第2通路141が形成されており、第2通路の先端には噴射孔142を有するチップ143が装着されている。
【0031】
押しボタン本体134は、噴射ノズル133と係合する係合部135と、ステムに装着されるステム装着部144と、係合部とステム装着部とを連通するL字型通路145とから構成されている。
【0032】
カバー部材132は、エアゾール容器の巻締部に装着される円筒状の装着部146と、押しボタンのほぼ全体を覆うカバー部149と、装着部の後方上端と薄肉部150で連結され押しボタンを押し下げるための操作部151とから構成されている。また、カバー部149は装着部の後方上部に形成された上部開口部147と、前方に形成された前方開口部148とを有している。さらに、カバー部の天面(天部)152の一部に係止部153が形成されており、この係止部の下面153aが操作部の天面(上面)151aと同じ高さ、あるいは操作部の天面(上面)151aより若干低くなるように構成されている。
【0033】
このように構成される噴射部材130は、通常の使用においては、上部開口部147に指を挿入して操作部151を操作すると、押しボタン131が押し下げられてバルブが開放され、エアゾール容器内部のエアゾール組成物がステムを経由してL字型通路145に流出する。このとき噴射ノズルが図4のようにエアゾール容器の軸線と平行である場合は、エアゾール組成物はL字型通路145から第2通路141を通り、チップ143の噴射孔142から外部に噴射される。一方、噴射ノズルを90度回動してエアゾール容器の軸と垂直にした場合は、エアゾール組成物はL字型通路145から第1通路137を通り、噴射部140の噴射孔139から外部に噴射される。
【0034】
また、エアゾール製品が不要になり廃棄したい場合には、カバー部の上部開口部147からコイン16を入れ、操作部151を押し下げながら係止部の下面153aと操作部の天面(上面)151aとの間にコイン16を挿入する(図5a〜c参照)。挿入したコイン16はバルブスプリングの反発力が下方から加わった状態で係止部下面153aに当接するため、しっかりと保持される。これにより押しボタン131を押し下げた状態、つまりエアゾール容器内部と大気とを連通させた状態で保持することができ、エアゾール容器内部に残存していたエアゾール組成物を全量排出することができる。なお、この実施の形態では操作部151はカバー部149と薄肉部150で連結しているが、押しボタン131と一体にしても良い。
【0035】
図6a、図6bの噴射部材160は、エアゾール容器に装着する装着部161およびその装着部から上方に延びている一対の側壁部162を備えているカバー部材163と、エアゾール組成物を三方向に同時に噴射する3つの噴射孔164a、164b、164cを有する噴射ノズル164を装着した押しボタン165とから構成されている。側壁部162の内面には図6bの二点鎖線で示すように、エアゾール容器の中心軸(ステム)を含む面上に、内向きに突出する突起(突出部)166が2ヶ所形成されており、側壁部の噴射孔側の上部には係止段部(係止部)167が形成されている。突起166は、側壁部の内面に対して傾斜した天面を有する突起上部166aと押しボタンの天面(上面)に対して平行な下面を有する突起下部166bとから構成されている(図6c〜6e参照)。また押しボタンの天面(上面)には、円弧状の側壁165bがその両側端に突出して設けられており、押しボタンを押し下げていない状態では側壁165bの上端は突起の下面166bと同じ、または下面166bよりも上方にあるのが好ましい。さらに、突起の下面166bと係止段部の下面167aとは、挿入したコインを水平状態にしてしっかり保持できるように同じ高さであることが好ましい。なお押しボタンの天面(上面)165aにはエアゾール組成物の種類や噴射方向を示す表示、たとえばマークや点字などを設けても良い。
【0036】
このように構成される噴射部材160は、通常の使用においては、押しボタンの天面165aを指で押し下げるとバルブが開放され、エアゾール容器内部のエアゾール組成物がステム、押しボタン内の通路を通り、3つの噴射孔164a、164b、164cからそれぞれ上斜め方向、水平方向、下斜め方向に噴射される。噴射された粒子は噴射のエネルギーが3方向に分散されるため遠方には到達しないが、近距離で広範囲に拡散する。また噴射された粒子はヘアスプレーや空間用殺虫剤などのように微細な粒子径ではないため、床面に噴射しても跳ね返りが無く、たとえば、カーペットや畳などに噴射するエアゾール製品に好適に用いることができる。
【0037】
また、エアゾール製品が不要になり廃棄したい場合には、先ず図7aのように側壁部上部の係止段部167と側壁部内面の突起上部166aとの間に斜め上方からコイン16を挿入する。このときコインは先端16aが側壁部の内壁に当接するまで挿入するのが好ましい。次いで図7aの状態からコイン16が斜め上方を向いている後端16bを下方に押し下げると、コインの先端16aと側壁部の内壁との当接部付近を軸として、コイン16は突起上部166aの斜面に沿って下方に移動し、さらに突起を乗り越え、コインの上面が突起下面166bに係止される(図7b参照)。これにより、押しボタンはバルブが開放される位置まで押し下げられる。このときコイン16は係止段部の下面167aおよび突起の下面166bと押しボタンの側壁165bとの間で保持され、エアゾール容器内部と大気とを連通させた状態で保持することができ、エアゾール容器内部に残存していたエアゾール組成物を全量排出することができる。
【0038】
さらに、この噴射部材160はカバー部材の装着部161のやや上方にスリット168を設けている。このスリット168はカバー部材163の取り外し手段であり、スリット168にコイン16を差し込み、コインの後端16bを図7cの矢印の方向に持ち上げることにより、コインがバルブに当接して支点となり、テコの原理を利用してカバー部材をエアゾール容器から取り外すことができる。これにより、エアゾール容器内のエアゾール組成物をコインを用いて排出処理した後、引き続きコインを用いて合成樹脂製のカバー部材を金属製のエアゾール容器から取り外すことができ分別廃棄しやすくなる。
【0039】
図6fにこの噴射部材160に用いられる突出部の他の形態を示す。この突出部169は、突出部上部169aと突出部下部169bとから構成されている。この突出部上部169aの上端が側壁部162と連結しており、その上端から側壁部の内側方向に傾斜しながら突出している。また、突出部下部169bは、突出部上部の下端から垂直方向下に延びている。さらに、側壁部162の突出部169との連結部(突出部上部の上端)から下方はスリットが形成されている。このように構成されているため、図7aのようにコインを斜め挿入して、コインの後端付近をコインが平行となるように押し下げると突出部は下方にたわみ、突出部169自体が板バネとして作用する。そのため、図7aの状態から図7bの状態に操作するとき、一層滑らかに操作することができる。
【0040】
図8aの噴射部材170は、エアゾール容器の頭部に装着されるカバー部材171と、ステムに装着される押しボタン172とからなり、前記カバー部材は装着部173と、その装着部から上方に延びている一対の側壁部174a、174bと、装着部の後方上部にスリット176を備えている(図6b)。この両側壁部174a、174bの内面には、図6の噴射部材160と同じように内側に向かって突出する突起175が形成されており、また、側壁部の噴射孔側の上部にはやや下方に延びる係止段部177が形成されている。なお突起175は、エアゾール容器の中心軸から後方に2ヶ所設けられている。押しボタン172も図6の噴射部材160と同じように、天面172aの両側端に円弧状の側壁172bが突出しており、押しボタンを押し下げていない状態では側壁172bの上端は突起の下面175bよりも上方にある(図8c)。また押しボタンの天面172aにエアゾール組成物の種類や噴射方向を示す表示、たとえばマークや点字などを設けても良い。
【0041】
このように構成される噴射部材170は、通常の使用においては、押しボタンの天面172aを指で押し下げるとバルブが開放され、エアゾール容器内部のエアゾール組成物がステム、押しボタン内の通路を通り、噴射孔から噴射される。この実施の形態では1つの噴射孔からエアゾール組成物を噴射するため、噴射された粒子は遠方に到達しやすく、空間に噴射する殺虫剤などのエアゾール製品に好適に用いられる。
【0042】
また、エアゾール製品が不要になり廃棄したい場合には、図7aと同じように、側壁部上部の係止段部177と側壁部内面の突起上面175aとの間に斜め上方からコイン16を挿入する。次いでコインの後端16bを下方に押し下げると、コイン16は突起上面175aの斜面に沿って下方に移動し、さらに突起を乗り越えることにより、コイン上面が突起下面175bより係止され、バルブが開放される位置で保持される。このときコイン16は係止段部の下面177aおよび突起の下面175bと押しボタンの側壁172bとの間で保持され、エアゾール容器内部と大気とを連通させた状態で保持することができ、エアゾール容器内部に残存していたエアゾール組成物を全量排出することができる。さらに、カバー部材のスリット176にコイン16を差し込み、コインの後端を持ち上げることにより、テコの原理を利用してカバー部材をエアゾール容器から取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の噴射部材を取り付けたエアゾール製品の一実施形態を示す側面図である。
【図2】図2a、図2b、図2c、図2dは図1に用いられている噴射部材を示す正面図、背面図、側面図、平面図である。
【図3】図3aは図1に用いられている噴射部材を示す側面断面図、図3bは図1に用いられている噴射部材にコインを取り付けたときの状態を示す側面断面図である。
【図4】本発明の噴射部材のさらに他の実施形態を示す側面断面図である。
【図5】図5aは図4の噴射部材にコインを取り付けたときの側面断面図であり、図5bおよび図5cはその噴射部材にコインを取り付けたときの背面図、平面図である。
【図6】図6aは本発明の噴射部材のさらに他の実施形態を示す側面断面図であり、図6bはその平面図、図6cはその噴射部材の一部斜視図であり、図6d、図6eはその噴射部材に用いられる突起の側面図であり、図6fはその噴射部材に用いられる突起の他の実施形態を示す一部斜視図である。
【図7】図7a、図7bは図6aの噴射部材にコインを取り付ける手段を示す側面断面図であり、図7cはその噴射部材を取り外す手段を示す側面断面図である。
【図8】図8a、図8b、図8c、図8dは本発明の噴射部材のさらに他の実施形態を示す正面図、背面図、側面断面図、平面図である。
【符号の説明】
【0044】
A エアゾール組成物
10 エアゾール製品
11 耐圧容器
11a 底部
11b 胴部
11c 目金
11d ビード部
12 バルブ
13 エアゾール容器
14 噴射部材
16 コイン
19 マウンティングカップ
20 ハウジング
21 ステム
22 ディップチューブ
24 カバー部材
24a 側壁部
25 押しボタン
25a 押しボタンの天面
27 装着部
30 スリット
30a スリットの下面
35 ステム装着部
36 噴射孔
37 通路
130 噴射部材
131 押しボタン
132 カバー部材
133 噴射ノズル
134 押しボタン本体
135 係合部
136 基端部
137 第1通路
138 ノズル部
139 噴射孔
140 噴射部
141 第2通路
142 噴射孔
143 チップ
144 ステム装着部
145 L字型通路
146 装着部
147 上部開口部
148 前方開口部
149 カバー部
150 薄肉部
151 操作部
151a 操作部の天面
152 カバー部材の天面
153 係止部
153a 係止部の下面
160 噴射部材
161 装着部
162 側壁部
163 カバー部材
164 噴射ノズル
164a、b、c 噴射孔
165 押しボタン
165a 押しボタンの天面
165b 円弧状の側壁
166 突起
166a 突起上部
166b 突起下部
167 係止段部
167a 係止段部の下面
168 スリット
169 突出部
169a 突出部上部
169b 突出部下部
170 噴射部材
171 カバー部材
172 押しボタン
172a 押しボタンの天面
172b 側壁
173 装着部
174a、b 側壁部
175 突起
175b 突起下面
176 スリット
177 係止段部
177a 係止段部の下面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧容器の開口部にエアゾールバルブを固着したエアゾール容器に装着される噴射部材であって、
エアゾールバルブのステムに装着され、上下動可能な押しボタンと、
その押しボタンを覆うようにエアゾール容器の頭部に装着されるカバー部材とからなり、
前記カバー部材が、エアゾール容器に装着される円筒状の装着部と、前記押しボタンのほぼ全体を覆うカバー部と、前記カバー部の後方上部の上部開口部に配置され前記装着部の後方上端と薄肉部で連結された操作部とからなり、
前記カバー部の天部に係止部が形成されており、
前記係止部の下面が操作部の上面とほぼ同じの高さまたは操作部の上面より若干低くなるように構成されており、
前記係止部の下面と操作部の上面との間にコインを挿入して、エアゾールバルブを開放位置で保持する、噴射部材。
【請求項2】
耐圧容器の開口部にエアゾールバルブを固着したエアゾール容器に装着される噴射部材であって、
エアゾールバルブのステムに装着され、上下動可能な押しボタンと、
エアゾール容器の頭部に装着されるカバー部材とからなり、
前記カバー部材が、エアゾール容器に装着される装着部と、その装着部から上方に延びる一対の側壁部を有し、
前記それぞれの側壁部の内面に内向きに突出する突出部が形成されており、
前記突出部の下面が押しボタンの上面とほぼ同じ高さになるように構成されており、
前記突出部と押しボタンの上面との間にコインを挿入して、エアゾールバルブを開放位置で保持する、噴射部材。
【請求項3】
前記突出部が、傾斜した上面を有する上部と、押しボタンの上面に対して平行な下面を有する下部とからなる、請求項2記載の噴射部材。
【請求項4】
前記側壁部の噴射孔側の上部に係止段部が形成されており、前記突出部の下部の下面と係止段部の下面とは同じ高さである、請求項3記載の噴射部材。
【請求項5】
前記カバー部材の装着部のやや後部上方に、スリットが形成されており、
このスリットにコインを差し込み、コインの後端を持ち上げることによりコインがエアゾールバルブと当接して支点となり、てこの原理で合成樹脂製のカバー部材を金属製のエアゾール容器から取り外すことができる、請求項1または2記載の噴射部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−331844(P2007−331844A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232189(P2007−232189)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【分割の表示】特願2004−377612(P2004−377612)の分割
【原出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【Fターム(参考)】