説明

エアドライヤの取付装置

【課題】車両のフレームの前後方向へ延びるサイドレールにエアドライヤを縦置状態に支持するエアドライヤの取付装置において、エアドライヤの交換などの作業負担を軽減しえる手段を提供する。
【解決手段】フレーム側ブラケット16と、ドライヤ側ブラケット20と、からなり、これらの締結手段18は、ドライヤ側ブラケット20をフレーム側ブラケット16に対してエアドライヤ11を縦置状態に支持する通常位置とエアドライヤ11を横置状態に載置する仮止め位置との間を回転可能に支持する第1手段と、ドライヤ側ブラケット20をフレーム側ブラケット16に対して通常位置に固定する第2手段18bと、を備える。ドライヤ側ブラケット20の仮止め保持手段(第2手段18aの挿入孔28)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のブレーキ系などに対する圧縮空気の供給源に装備されるエアドライヤの取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアドライヤは、コンプレッサからエアタンクへ供給される圧縮空気中の水分を除去する処理(除湿作用)を行うものであり、肉厚の基部と、乾燥剤を収容する乾燥筒と、を備える。
【0003】
例えば、基部にパージバルブが収装されるほか、インレットポート,アウトレットポート,信号圧ポート,ドレンポート(排出通路)が配設される。乾燥筒下流にパージタンクが画成され、これらの間に逆止弁およびオリフィスが並列に介装される。
【0004】
コンプレッサからの圧縮空気は、基部のインレットポートに入り、空気通路の壁面で冷却され、水分と油分が空気通路の底に溜まる。圧縮空気はさらにフィルタを通して微粒状の水分や油分が濾過され、乾燥筒の中へ送り込まれ、圧縮空気中の水分が乾燥剤によって吸収される。圧縮空気は、乾燥剤の中を進むに従ってより乾燥した空気(ドライエア)となり、逆止弁を通してパージタンクへ導かれ、アウトレットポートからエアタンクへ供給される。
【0005】
エアタンク内の圧力が上限に達すると、プレッシャレギュレータからの信号(空気圧)によってコンプレッサがアンロード状態となる。エアドライヤにおいては、同じくプレッシャレギュレータからの信号(信号圧ポートの空気圧)によって基部のパージバルブが開く。そのため、乾燥筒がドレンポートを介して大気に開放される。この開放は急激なものであるので、乾燥筒内の空気により、フィルタが洗浄されると共に空気通路の底に溜まる油分や凝縮水もドレンポートから大気へ放出される。また、パージタンク内のドライエアがオリフィスを通って乾燥筒内へ逆流し、乾燥剤から水分を奪ってドレンポートから大気へ運び去り、乾燥剤を再生させる。その後、プレッシャレギュレータからの信号(空気圧)により、パージバルブが閉じると、再生作用が停止され、除湿作用へ戻るようになっている。
【0006】
このようなエアドライヤは、トラックなど大型車両において、エアタンクがフレームに搭載されるので、その近傍に配置されることになる。つまり、フレームの前後方向へ延びるサイドレールの側面に対し、乾燥筒が上にあって基部が下となる縦置状態に基部のフランジを介して締結手段によって固定される。なお、エンジンの排気浄化装置において、触媒に添加する還元剤を貯蔵する容器をフレームのサイドレールの側面に取り付ける装置が開示される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−273578号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
エアドライヤは、前記の如くフレームのサイドレールに固定のため、交換や点検などの際にフレームの下方に潜り込み、エアドライヤの荷重を支えながら、締結手段の解除などを行わなければならず、作業者の負担が大きい。
【0009】
この発明は、このような解決すべき課題に着目してなされたものであり、エアドライヤの交換時や点検・整備時の作業負担を軽減しえる手段の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、車両のフレームの前後方向へ延びるサイドレールにエアドライヤを乾燥筒が上にあってパージバルブおよびその下流のドレンポートを備える基部が下となる縦置状態に支持するエアドライヤの取付装置において、前記サイドレールに固定されるフレーム側ブラケットと、前記フレーム側ブラケットに締結手段を介して取り付けられるドライヤ側ブラケットと、からなり、前記締結手段は、ドライヤ側ブラケットをフレーム側ブラケットに対してエアドライヤを縦置状態に支持する通常位置とサイドレールの車幅方向の外側でエアドライヤを横置状態に載置する仮止め位置との間を回転可能に支持する第1手段と、ドライヤ側ブラケットをフレーム側ブラケットに対して通常位置に固定する第2手段と、を備える一方、ドライヤ側ブラケットをフレーム側ブラケットに対して仮止め位置に保持する仮止め手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明においては、締結手段は、第1手段を備えるので、第2手段の締結を解除すると、ドライヤ側ブラケットをフレーム側ブラケットに対して通常位置から仮止め位置へ回動させることが可能となる。また、仮止め手段によりドライヤ側ブラケットを仮止め位置に保持することができる。従って、ドライヤ側ブラケットは、仮止め位置において、エアドライヤを横置状態に載置するテーブル(台)として機能するので、交換や点検などの際に作業者がエアドライヤの荷重を支える必要がなくなり、作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施形態を説明する、エアドライヤの取付状態を表す斜視図である。
【図2】同じく取付装置の正面図である。
【図3】同じく取付装置の側面図である。
【図4】同じく取付装置の仮止め状態を表す斜視図である。
【図5】同じく取付装置の仮止め状態を説明する一部分の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図に基づいて、この発明の実施形態を説明する。
【0014】
図1において、10はトラックなど大型車両のフレームのサイドレールであり、フレームは、車両の前後方向へ延びる左右1対のサイドレール10と、これらの間を連結する複数のクロスメンバと、を備えて構成される。
【0015】
11は車両のブレーキ系などに対する圧縮空気の供給源に装備されるエアドライヤであり、従前と同様に構成される。つまり、エアドライヤ11は、肉厚の基部12と、乾燥剤を収容する乾燥筒と、を備えて構成される。基部11にパージバルブが収装されるほか、インレットポート,アウトレットポート,信号圧ポート,ドレンポート(排出通路)、などが配設される。13は乾燥筒下流にパージタンクを画成するケーシングであり、乾燥筒の下流側の隔壁(パージタンクとの仕切りとなる)に逆止弁およびオリフィスが並列に介装される。
【0016】
コンプレッサからの圧縮空気は、基部12のインレットポートに入り、空気通路の壁面で冷却され、水分と油分が空気通路の底に溜まる。圧縮空気はさらにフィルタを通して微粒状の水分や油分が濾過され、乾燥筒の中へ送り込まれ、圧縮空気中の水分が乾燥剤によって吸収される。圧縮空気は、乾燥剤の中を進むに従ってより乾燥した空気(ドライエア)となり、逆止弁を通してパージタンクへ導かれ、アウトレットポートからエアタンクへ供給される。
【0017】
エアタンク内の圧力が上限に達すると、プレッシャレギュレータからの信号(空気圧)によってコンプレッサがアンロード状態となる。エアドライヤ11においては、同じくプレッシャレギュレータからの信号(信号圧ポートの空気圧)によって基部12のパージバルブが開く。そのため、乾燥筒内の圧力がドレンポートを介して大気に開放される。この開放は急激なものであるので、乾燥筒内の空気により、フィルタが洗浄されると共に空気通路の底に溜まる油分や凝縮水もドレンポートから大気へ放出される。また、パージタンク内のドライエアがオリフィスを通って乾燥筒内へ逆流し、乾燥剤から水分を奪ってドレンポートから大気へ運び去り、乾燥剤を再生させる。その後、プレッシャレギュレータからの信号(空気圧)により、パージバルブが閉じると、再生作用が停止され、除湿作用へ戻るようになっている。
【0018】
図1〜図3において、15はエアドライヤ11の取付装置であり、サイドレール10に締結手段17を介して固定されるフレーム側ブラケット16と、フレーム側ブラケット16に締結手段18を介して取り付けられるドライヤ側ブラケット20と、から構成される。
【0019】
フレーム側ブラケット16は、サイドレール10の側面と平行な基板21と、その両側にそれぞれ基板から直角に立ち上がるように形成されるフランジ22と、を備える。ドライヤ側ブラケット20は、エアドライヤを横置状態に載置可能な基板23と、その両側にそれぞれ基板から直角に立ち上がるように形成されるフランジ24と、を備える。エアドライヤ11は、基部12の一側にフランジ25(図4、参照)が形成され、ドライヤ側ブラケット20の基板23上にフランジ25を介して締結手段(図示せず)により固定される。
【0020】
締結手段18は、フレーム側ブラケット16のフランジ22とドライヤ側ブラケット20のフランジ24との重なり合う領域に配置される。また、締結手段18は、ドライヤ側ブラケット20をフレーム側ブラケット16に対してエアドライヤ11を縦置状態に支持する通常位置とサイドレール10の車幅方向の外側でエアドライヤ11を横置状態に載置する仮止め位置との間を回転可能に支持する第1手段18aと、ドライヤ側ブラケット20をフレーム側ブラケット16に対して通常位置に固定する第2手段18bと、を備える。図示の場合、フレーム側ブラケット16にドライヤ側ブラケット20を取り付ける締結手段18としてボルトおよびナットが用いられる。
【0021】
サイドレール10にフレーム側ブラケット16を固定する締結手段17としてボルトおよびナットが用いられる(図2、参照)。ドライヤ側ブラケット20の基板23上にエアドライヤ11のフランジ25を固定する締結手段(図示せず)としてボルトおよびナットが用いられる。図2において、26はドライヤ側ブラケット20の基板23に形成されるネジ止め孔であり、基板23上にエアドライヤ11のフランジ25を固定するボルトが挿入される。図4において、27はエアドライヤ11のフランジ25に形成されるネジ止め孔であり、ドライヤ側ブラケット20の基板23に形成されるネジ止め孔26aに対応する。図示しないが、エアドライヤ11のフランジ25においては、ドライヤ側ブラケット20の基板23に形成されるネジ止め孔26b,26cに対応するネジ止め孔が配設される。
【0022】
図2において、30はフレーム側ブラケット16の補強板であり、板30は基板21上を斜めに延びて両側のフランジ22の互いに上下が反対側の端部同士を連結する。
【0023】
エアドライヤ11の取付装置15は、ドライヤ側ブラケット20をフレーム側ブラケット16に対して仮止め位置に保持する仮止め手段を備える。仮止め手段として、この例においては、第2手段18bのボルトが用いられ、ドライヤ側ブラケット20の片側のフランジ24にボルトを差し込むための挿入孔28(貫通孔)が配設される。
【0024】
図2,図3,図5において、29はエアドライヤ11のケーシング13を支持する受部であり、仮止め状態において、ドライヤ側ブラケット20の基板23上にエアドライヤ11のフランジ25を締結するボルトおよびナットを緩めても、エアドライヤ11をガタつかせることなく、横置状態に支承しえるようになっている。
【0025】
このような構成により、エアドライヤ11の交換時や点検・整備時においては、第1手段18aのボルトおよびナットを除く第2手段18bのボルトおよびナットを外すと、第1手段18aのボルトが回転軸となり、ドライヤ側ブラケット20をフレーム側ブラケット16に対し、通常位置から仮止め位置へ回動させることが可能となる。実際には、第1手段18aのボルトおよびナットによる締結を若干緩め、ドライヤ側ブラケット20をサイドレール10の車幅方向の外側へ略水平状態に持ち上げ、ドライヤ側ブラケット20が仮止め位置を超えたところで、第2手段18bのボルトを挿入孔28に差し込むと、ドライヤ側ブラケット20は、ボルト18bの軸部がフレーム側ブラケット16のフランジ22に突き当たり、通常位置への回動を規制するため、仮止め位置に保持されるのである(図4,図5、参照)。従って、ドライヤ側ブラケット20は、仮止め状態において、エアドライヤ11を横置状態に載置するテーブル(台)として機能するので、交換や点検などの際に作業者がエアドライヤ11の荷重を支える必要がなくなり、作業者の負担を大幅に軽減することができる。また、仮止め手段として第2手段18bのボルトを用いるので、部品数の増加を来すこともない。
【0026】
なお、図4,図5においては、ドライヤ側ブラケット20がフレーム側ブラケットに対し、略直角となる位置(ドライヤ側ブラケット20の基板23が略水平状態)に仮止めしているが、これに限らず、作業者がエアドライヤの交換や点検などの作業を行いやすい位置(角度)にドライヤ側ブラケット20を仮止めする構成であってもよい。
【0027】
図4において、35はサイドレール10に取り付けられるサスペンションスプリングであり、36はサイドレール10の側面に締結されるスプリングブラケットであり、サスペンションスプリング35の一端(目玉部37)がピン38を介してスプリングブラケット36に支持される。図示しないが、サスペンションスプリング35の他端(目玉部)は、シャックルの一端にピンを介して連結され、シャックルの他端がピンを介してスプリングブラケットに支持される。
【0028】
スプリングブラケット36は、サイドレール10の長手方向(車両の前後方向)において、エアドライヤ11のフレーム側ブラケット16と略同じ位置に取り付けられ、エアドライヤ11が通常の支持状態にあるときは、ドライヤ側ブラケット20によって車両の側方から遮蔽される(図1、参照)が、サスペンションスプリング35の交換や点検・整備に際しては、前記の如くドライヤ側ブラケット20が通常位置から仮止め位置へ回動させて仮止め位置に保持することが可能のため、目玉部37の点検・整備およびピン38を抜き取る交換作業をエアドライヤ11およびその取付装置15に邪魔されることがなく、かつ、ドライヤ側ブラケット20をフレーム側ブラケット16から外す必要もなく、容易に行えるようになる。つまり、この発明に係るエアドライヤ11の取付装置15によれば、サイドレール10において、サスペンションスプリング35のスプリングブラケット36との関係からエアドライヤ11の取付位置(レイアウト)が制限されるようなこともなく自由に設定することが可能となる。図4において、39はスプリングブラケット36に形成される点検・整備用の窓部である。
【0029】
締結手段18の第1手段18aについては、ネジを緩めることなく、ドライヤ側ブラケット20をフレーム側ブラケット16に対し、回動可能に支持しえるものを用いることも考えられる。
【符号の説明】
【0030】
10 サイドレール
11 エアドライヤ
12 基部
13 ケーシング
15 取付装置
16 フレーム側ブラケット
18 締結手段
18a 締結手段の第1手段
18b 締結手段の第2手段
20 ドライヤ側ブラケット
22 フレーム側ブラケットのフランジ
24 ドライヤ側ブラケットのフランジ
25 基部のフランジ
28 仮止め手段の挿入孔
29 受部
35 サスペンションスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフレームの前後方向へ延びるサイドレールにエアドライヤを乾燥部が上にあってパージバルブおよびその下流の排気通路を備える基部が下となる縦置状態に支持するエアドライヤの取付装置において、
前記サイドレールに固定されるフレーム側ブラケットと、前記フレーム側ブラケットに締結手段を介して取り付けられるドライヤ側ブラケットと、からなり、
前記締結手段は、ドライヤ側ブラケットをフレーム側ブラケットに対してエアドライヤを縦置状態に支持する通常位置とサイドレールの車幅方向の外側でエアドライヤを横置状態に載置する仮止め位置との間を回転可能に支持する第1手段と、ドライヤ側ブラケットをフレーム側ブラケットに対して通常位置に固定する第2手段と、を備える一方、
ドライヤ側ブラケットをフレーム側ブラケットに対して仮止め位置に保持する仮止め手段を備えることを特徴とするエアドライヤの取付装置。
【請求項2】
前記フレーム側ブラケットは、サイドレールの側面と平行な基板と、その両側にそれぞれ基板から立ち上がるように形成されるフランジと、を備え、前記ドライヤ側ブラケットは、エアドライヤを横置状態に載置する基板と、その両側にそれぞれ基板から立ち上がるように形成されるフランジと、を備え、前記締結手段は、フレーム側ブラケットのフランジとドライヤ側ブラケットのフランジとの重なり合う領域に配置されることを特徴とする請求項1に記載のエアドライヤの取付装置。
【請求項3】
前記締結手段は、ボルトであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエアドライヤの取付装置。
【請求項4】
前記仮止め手段は、前記第2手段のボルトと、このボルトをドライヤ側ブラケットまたはフレーム側ブラケットに差し込むための挿入孔と、を備えることを特徴とする請求項3に記載のエアドライヤの取付装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−254009(P2010−254009A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103739(P2009−103739)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】