説明

エアバッグ点火回路および集積回路装置

【課題】 スクイブを点火するドライバでの電力損失を低減することができるエアバッグ点火回路および集積回路装置を提供する。
【解決手段】 降圧制御部21は、抵抗素子R1を流れる電流の電流値を検出し、検出した電流値に基づいて、昇圧コンバータ10が昇圧した電圧がドレインに印加されるNチャネルMOSFETであるトランジスタTr2をオンオフして、出力電流が予め定める電流値になるように制御する。降圧制御部21は、点火IC30から第3の入力に入力されるEN信号である点火信号が指示されている期間、出力電流を出力する。点火IC30のハイサイドドライバ31およびローサイドドライバ32は、点火信号が指示されている期間、トランジスタTr3,Tr4をオンとし、スクイブ8を点火する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグを作動させるための点火装置に点火するエアバッグ点火回路および集積回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の技術によるエアバッグ点火回路9の構成を示す図である。エアバッグ点火回路9は、バッテリ7の電圧を、ダイオードD1を介してバッテリ7に接続される昇圧コンバータ10によって昇圧し、昇圧した電圧でバックアップコンデンサであるコンデンサC2に電荷を蓄積する。エアバッグ点火回路9は、コンデンサC2に蓄積した電荷によって点火装置であるスクイブ8を点火するので、車両の衝突などによってバッテリ7の電力が供給されなくなっても、エアバッグを作動させることができる。
【0003】
昇圧コンバータ10は、ダイオードD1に直列に接続されるコイルL1、コイルL1に直列に接続されるダイオードD2、ダイオードD2の出力側に接続されるバックアップコンデンサであるコンデンサC2、コイルL1とダイオードD2の接続点に接続されるNチャネルのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)によって構成されるトランジスタTr1、およびコンデンサC2の電圧が所定の昇圧された電圧になるように、トランジスタTr1の導通および遮断を制御する昇圧制御部11とを含んで構成されている。ダイオードD1とコイルL1との接続点に平滑コンデンサであるコンデンサC1が接続されている。昇圧コンバータ10によってコンデンサC2に蓄積される電荷による電圧を、バッテリ7の電圧よりも高電圧にすることによって、コンデンサC2の静電容量を小さくしている。
【0004】
昇圧コンバータ10の出力は、逆流防止のためのダイオードD4を介して点火集積回路(以下「点火IC」という)90の接続端子392に接続されている。点火IC90は、ハイサイドドライバ91およびローサイドドライバ32を含んで構成されている。点火IC90の接続端子393と接続端子394との間にスクイブ8が接続され、接続端子395は、接地されている。ハイサイドドライバ91は、定電流制御部911およびトランジスタTr3を含み、ローサイドドライバ32は、ドライバ321およびトランジスタTr4を含んで構成されている。トランジスタTr3は、NチャネルのMOSFETであり、ドレインが接続端子392に接続され、ソースが接続端子393に接続され、ゲートが定電流制御部911に接続されている。トランジスタTr4は、NチャネルのMOSFETであり、ドレインが接続端子394に接続され、ソースが接続端子395に接続され、ゲートがドライバ321に接続されている。
【0005】
点火信号が指示されると、定電流制御部911は、トランジスタTr3を導通状態(以下「オン」という)とし、ドライバ321は、トランジスタTr4をオンとし、スクイブ8に点火する。定電流制御部911は、トランジスタTr3に流れる電流を所定の電流値として、必要以上の電流をスクイブ8に流さないようにしている。
【0006】
特許文献1に記載されるエアバッグ点火回路は、図1に示したエアバッグ点火回路9と同様に、定電流制御を行ってハイサイドドライバを駆動するエアバッグ点火回路である。このエアバッグ点火回路は、電源電圧をバックアップコンデンサによって充電し、定電流制御を行うことによって、スクイブに流す電流の電流値を一定にするものである。
【0007】
特許文献2に記載されるエアバッグ装置用点火電流制限回路は、ハイサイドドライバおよびローサイドドライバの2つのドライバではなく、1つのドライバによってスクイブを点火する構成である。このエアバッグ装置用点火電流制限回路は、バッテリからの電荷をコンデンサに蓄え、点火電流制限回路によって、スクイブに流す電流の電流値を一定にするものである。
【0008】
特許文献3に記載されるエアバッグ作動装置は、定電流制御を行わずに、昇圧回路によって昇圧した電圧でバックアップコンデンサに充電し、1つのドライバによってスクイブを点火する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−88748号公報
【特許文献2】特開平11−78771号公報
【特許文献3】特開2006−44307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図2は、エアバッグ点火回路9での電圧損失を説明するための図である。昇圧コンバータ10がバッテリ7の電圧12V(ボルト)を25Vに昇圧し、ダイオードD4の電圧降下V1を1V、スクイブ8の抵抗値を2Ω(オーム)、トランジスタTr3,Tr4のオン抵抗の抵抗値を1Ω、定電流制御部911によってスクイブ8に流す電流値を1.2A(アンペア)とすると、スクイブ8での電圧降下V3は、2Ω×1.2A=2.4Vであり、ローサイドドライバでの電圧降下V4は、1Ω×1.2A=1.2Vであり、ハイサイドドライバ91での電圧降下V2は、(昇圧コンバータの出力電圧)−V1−V3−V4=25V−1V−2.4V−1.2V=20.4Vである。
【0011】
ローサイドドライバ32での電力損失は、V4×1.2A=1.2V×1.2A=1.44W(ワット)であるが、ハイサイドドライバ91での電力損失は、V2×1.2A=20.4V×1.2A=24.48W(ワット)である。すなわち、点火信号が指示されている時間が2ms(ミリ秒)であるとすると、2ミリ秒の間、ハイサイドドライバ91で24.48Wの電力損失が発生する。バッテリ7の電圧12Vでスクイブ8を点火する場合は、ハイサイドドライバ91での電圧降下V2は、12V−4.6V=7.4Vであり、電力損失は、7.4V×1.2A=8.84Wである。したがって、昇圧コンバータで昇圧した電圧でスクイブ8を点火する場合は、バッテリ7の電圧でスクイブ8を点火する場合よりも、3倍近い電力損失がハイサイドドライバ91に発生する。
【0012】
ハイサイドドライバ91での電力損失が大きいので、トランジスタTr3として、過大な電力でも破壊されない大きさのトランジスタを用いる必要があり、また大きな電力が必要であるので、バックアップコンデンサであるコンデンサC2の静電容量を大きくしなければならない。
【0013】
特許文献1に記載されるエアバッグ点火回路および特許文献2に記載されるエアバッグ装置用点火電流制限回路は、昇圧コンバータを用いて昇圧した電圧でバックアップコンデンサを充電するものではなく、ドライバでの電圧降下は、昇圧コンバータを用いた場合よりも小さく、電力損失も小さい。しかしながら、図1に示したエアバッグ点火回路9は、昇圧コンバータ10を用いてバックアップコンデンサの電圧を高くしているので、ハイサイドドライバ91での電圧降下が大きくなり、電力損失も大きいという問題がある。特許文献3に記載されるエアバッグ作動装置も昇圧回路を用いてバックアップコンデンサの電圧を高くしているので、同じ問題がある。
【0014】
本発明の目的は、スクイブを点火するドライバでの電力損失を低減することができるエアバッグ点火回路および集積回路装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明(1)は、直流電源からの電圧を昇圧する昇圧部と、
昇圧部によって昇圧された電圧が印加され、負荷への出力電流を出力する電流出力部と、
点火信号が指示されたとき、電流出力部によって出力される出力電流をスクイブに流す点火部とを含むエアバッグ点火回路であって、
前記電流出力部は、
出力電流の電流値を検出する電流検出部と、
電流検出部によって検出された電流値に基づいて、出力電流の電流値を予め定める電流値に制御する制御部とを含み、
前記点火部は、スクイブに流す電流を予め定める第2の電流値未満に制限する電流制限部を含むことを特徴とするエアバッグ点火回路。
【0016】
また本発明(7)は、前記エアバッグ点火回路に含まれる電流出力部、制御部、電圧検出部、点火部およびセーフィング信号生成部のうちの制御部、電圧検出部および点火部と、
前記セーフィング信号生成部によって生成されたセーフィング信号に基づいて、前記電流出力部による出力電流および出力電圧の出力を許可する出力許可信号、および前記点火部に点火を許可する許可信号を生成するセーフィング制御部とを含んで集積化したことを特徴とする集積回路装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明(1)によれば、昇圧部によって、直流電源からの電圧が昇圧され、昇圧部によって昇圧された電圧が印加される電流出力部によって、負荷への出力電流が出力され、点火部によって、点火信号が指示されたとき、電流出力部によって出力される出力電流がスクイブに流される。前記電流出力部は、電流検出部および制御部を含み、前記点火部は、電流制限部を含む。電流検出部によって、出力電流の電流値が検出され、制御部によって、電流検出部によって検出された電流値に基づいて、出力電流の電流値が予め定める電流値に制御される。そして、電流制限部によって、スクイブに流す電流が予め定める第2の電流値未満に制限される。
【0018】
したがって、電流出力部によって、スクイブを点火するために必要な出力電流を供給するので、昇圧部によって昇圧された電圧をそのまま点火部に印加することがなく、点火部、具体的にはスクイブを点火するドライバでの電力損失を低減することができる。さらに、スクイブの点火部を並列接続した場合でも、各スクイブに予め定める第2の電流値以上の電流が流れることを防止することができ、電力損失の増加を防止することができる。また、点火するために最低限必要な電流を各スクイブに流すことができる。
【0019】
また本発明(7)によれば、前記エアバッグ点火回路に含まれる電流出力部、制御部、電圧検出部、点火部およびセーフィング信号生成部のうちの制御部、電圧検出部、および点火部と、セーフィング制御部によって、前記セーフィング信号生成部によって生成されたセーフィング信号に基づいて、前記電流出力部による出力電流および出力電圧の出力を許可する出力許可信号、および前記点火部に点火を許可する許可信号が生成される。したがって、前記エアバッグ点火回路の一部を集積化した回路としているので、エアバッグ点火回路の小型化および高信頼性化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の技術によるエアバッグ点火回路9の構成を示す図である。
【図2】エアバッグ点火回路9の電力損失を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の第1の形態であるエアバッグ点火回路1の構成を示す図である。
【図4】エアバッグ点火回路1の電力損失を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の第2の形態であるエアバッグ点火回路1aの構成を示す図である。
【図6】本発明の実施の第3の形態であるエアバッグ点火回路1bの構成を示す図である。
【図7】定電流降圧コンバータ20aの構成を示す図である。
【図8】定電流降圧コンバータ20bおよび点火IC30cの構成を示す図である。
【図9】電流低下信号と電流値切換信号との関係を示すタイムチャートである。
【図10】点火ドライバ駆動信号とコンバータ駆動信号との関係を示すタイムチャートである。
【図11】本発明の実施の第4の形態であるエアバッグ点火回路1cの構成を示す図である。
【図12】本発明の実施の第5の形態であるエアバッグ点火回路1dの構成を示す図である。
【図13】点火IC30eを用いた制御ユニット50の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図3は、本発明の実施の第1の形態であるエアバッグ点火回路1の構成を示す図である。エアバッグ点火回路1は、ダイオードD1,D4、コンデンサC1、昇圧コンバータ10、定電流降圧コンバータ20、点火集積回路(以下「点火IC」という)30を含んで構成されている。
【0022】
ダイオードD1は、アノードが直流電源、たとえば車両に搭載されるバッテリ7に接続され、カソードがコンデンサC1の一端、および昇圧コンバータ10の入力側に接続されている。コンデンサC1は、たとえば電界コンデンサによって構成される平滑コンデンサであり、一端がダイオードD1のカソード、および昇圧コンバータ10の入力側に接続され、他端が接地されている。
【0023】
昇圧部である昇圧コンバータ10は、コイルL1、ダイオードD2、コンデンサC2、トランジスタTr1および昇圧制御部11を含んで構成され、バッテリ7の電圧、たとえば12V(ボルト)からダイオードD1の電圧降下分を減算した電圧を、たとえば25Vまで昇圧する。コイルL1は、一端がダイオードD1のカソード、およびコンデンサC1の一端に接続され、他端がダイオードD2のアノード、およびトランジスタTr1のドレインに接続されている。ダイオードD2は、アノードがコイルL1の他端、およびトランジスタTr1のドレインに接続され、カソードがコンデンサC2の一端、および定電流降圧コンバータ20の入力側に接続されている。コンデンサC2は、たとえば電界コンデンサによって構成されるバックアップコンデンサであり、一端がダイオードD2のカソード、および定電流降圧コンバータ20の入力側に接続され、他端が接地されている。
【0024】
トランジスタTr1は、NチャネルのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor
Field Effect Transistor)であり、ドレインがコイルL1の他端、およびダイオードD2のアノードに接続され、ソースが接地され、ゲートが昇圧制御部11の出力に接続されている。昇圧制御部11は、トランジスタTr1を導通状態(以下「オン」という)および遮断状態(以下「オフ」という)のうちのいずれかの状態に切り換えることによって、コンデンサC2に蓄積する電荷による電圧を、コイルL1に印加される電圧よりも高い電圧に昇圧する。
【0025】
電流出力部である定電流降圧コンバータ20は、トランジスタTr2、ダイオードD3、コイルL2、抵抗素子R1、コンデンサC3および降圧制御部21を含んで構成されている。トランジスタTr2は、NチャネルのMOSFETであり、入力部であるドレインが昇圧コンバータ10の出力側、具体的には、ダイオードD2のカソード、およびコンデンサC2の一端に接続され、出力部であるソースがダイオードD3のカソード、およびコイルL2の一端に接続され、ゲートが降圧制御部21の出力に接続されている。
【0026】
ダイオードD3は、アノードが接地され、カソードがトランジスタTr2のソース、およびコイル2の一端に接続されている。コイルL2は、一端がトランジスタTr2のソース、およびダイオードD3のカソードに接続され、他端が抵抗素子R1の一端、および降圧制御部21の第1の入力に接続されている。抵抗素子R1は、一端がコイルL2の他端、および降圧制御部21の第1の入力に接続され、他端がコンデンサC3の一端、ダイオードD4のアノード、および降圧制御部21の第2の入力に接続されている。コンデンサC3は、たとえば電界コンデンサによって構成される平滑コンデンサであり、一端が抵抗素子R1の他端、ダイオードD4のアノード、および降圧制御部21の第2の入力に接続され、他端が接地されている。
【0027】
電流検出部および制御部である降圧制御部21は、3つの入力、つまり第1〜第3の入力を含み、第1の入力が、コイルL2の他端、および抵抗素子R1の一端に接続され、第2の入力が抵抗素子R1の他端、コンデンサC3の一端、およびダイオードD4のアノードに接続され、第3の入力が、点火IC30に接続され、出力がトランジスタTr2のゲートに接続されている。抵抗素子R1は、抵抗素子R1を流れる電流の電流値を検出するための抵抗素子である。
【0028】
降圧制御部21は、従来の技術によるスイッチング電源に用いられる回路構成と同じ回路構成であり、詳細な説明は省略する。降圧制御部21は、抵抗素子R1の両端の電位差に基づいて、抵抗素子R1を流れる電流の電流値を検出し、検出した電流値に基づいて、出力電流が予め定める電流値、たとえば1.2A(アンペア)になるように、トランジスタTr2のオンオフを制御する。さらに、降圧制御部21は、点火IC30から第3の入力に入力される後述するイネーブル信号(以下、「EN信号」という)が指示されている期間、出力電流を出力する。定電流降圧コンバータ20は、抵抗素子R1とコンデンサC3との接続点から出力電流を出力し、抵抗素子R1とコンデンサC3との接続点の電圧を出力電圧として出力する。
【0029】
ダイオードD4は、逆流を防止するためのダイオードであり、アノードが抵抗素子R1の他端、コンデンサC3の一端、および降圧制御部21の第2の入力に接続され、カソードが点火IC30に接続されている。
【0030】
点火IC30は、ハイサイドドライバ31およびローサイドドライバ32を含んで構成される集積化された回路であり、接続端子391〜395を含む接続端子が形成されている。ハイサイドドライバ31は、ドライバ311およびトランジスタTr3を含んで構成されている。ドライバ311は、入力に点火信号が入力され、出力がトランジスタTr3のゲートに接続されている。トランジスタTr3は、NチャネルのMOSFETであり、ゲートがドライバ311の出力に接続され、ドレインが接続端子392に接続され、ソースが接続端子393に接続されている。
【0031】
ローサイドドライバ32は、ドライバ321およびトランジスタTr4を含んで構成されている。ドライバ321は、入力に点火信号が入力され、出力がトランジスタTr4のゲートに接続されている。トランジスタTr4は、NチャネルのMOSFETであり、ゲートがドライバ321の出力に接続され、ドレインが接続端子394に接続され、ソースが接続端子395に接続されている。ハイサイドドライバ31およびローサイドドライバ32は、点火部である。
【0032】
接続端子392は、ダイオードD4のカソードに接続される。すなわち、トランジスタTr3のドレインには、ダイオードD4から供給される定電流降圧コンバータ20の出力電流がダイオードD4を介して供給され、定電流降圧コンバータ20の出力電圧からダイオードD4の電圧降下分の電圧を減算した電圧がトランジスタTr3のドレインに印加される。接続端子393は、点火装置であるスクイブ8の一端に接続され、接続端子394は、スクイブ8の他端に接続され、接続端子395は、接地されている。したがって、トランジスタTr3およびトランジスタTr4がオンであると、定電流降圧コンバータ20の出力電流がスクイブ8に流れ、スクイブ8を点火することができる。
【0033】
点火信号は、車両が衝突したことを示す信号である。点火信号が指示されると、具体的には、点火信号がハイレベルになると、ドライバ311,321ともにハイレベルを出力するので、トランジスタTr3,Tr4はオンとなる。点火信号が指示されないと、具体的には、点火信号がローレベルになると、ドライバ311,321ともにローレベルを出力するので、トランジスタTr3,Tr4はオフとなる。点火信号は、接続端子391に接続される降圧制御部21の第3の入力にも、EN信号として入力されている。降圧制御部21は、EN信号が指示されていると、出力電流を出力し、EN信号が指示されていないと、出力電流を出力しない。
【0034】
図4は、エアバッグ点火回路1の電力損失を説明するための図である。昇圧コンバータ10が昇圧した電圧を25Vとし、ダイオードD4の電圧降下V1を1V、スクイブ8の抵抗値を2Ω(オーム)、トランジスタTr3,Tr4のオン抵抗の抵抗値を1Ω、定電流降圧コンバータ20の出力電流の電流値を1.2Aとすると、ハイサイドドライバ91での電圧降下V2は、1Ω×1.2A=1.2Vであり、スクイブ8での電圧降下V3は、2Ω×1.2A=2.4Vであり、ローサイドドライバでの電圧降下V4は、1Ω×1.2A=1.2Vである。
【0035】
ローサイドドライバ32およびハイサイドドライバ91での電力損失はともに、1.2V×1.2A=1.44W(ワット)である。図1に示したエアバッグ点火回路9は、図2で説明したように、ハイサイドドライバ91での電力損失が24.48Wであるが、図3に示したエアバッグ点火回路1は、1.44Wとなり、電力損失を大幅に低減することができる。
【0036】
また、供給すべき電力を低減することができるので、バックアップコンデンサであるコンデンサC2の静電容量も小さくすることができる。たとえば、定電流降圧コンバータ20の電力効率を80%とし、定電流降圧コンバータ20への入力電圧が8V以上で動作可能とすると、最低限必要なコンデンサC2の静電容量は、図1に示したエアバッグ点火回路9では、141μF(ファラッド)であるが、図3に示したエアバッグ点火回路1では、52μFでよい。したがって、コンデンサC2の大きさも小さくすることができ、エアバッグ点火回路1を小型化することができる。
【0037】
図5は、本発明の実施の第2の形態であるエアバッグ点火回路1aの構成を示す図である。エアバッグ点火回路1aは、ダイオードD1,D4、コンデンサC1、昇圧コンバータ10、定電流降圧コンバータ20、点火IC30aを含んで構成されている。エアバッグ点火回路1aの構成要素のうち図3に示したエアバッグ点火回路1の構成要素と同じ構成要素については、重複を避けるために、同じ参照符を付して説明を省略する。
【0038】
エアバッグ点火回路1aは、4つのスクイブ8を点火するために、4つの点火回路34を有する点火IC30aを、図3に示した点火IC30の代わりに用いる。点火IC30aは、点火制御部33、および4つの点火回路34を含んで構成されている。以下、4つの点火回路のそれぞれを、点火回路34a〜34dといい、4つのスクイブ8のそれぞれを、スクイブ8a〜8dという。図5に示した点火IC30aは、4つの点火回路34a〜34dを示しているが、4つに限定されるものではなく、スクイブの数と同じ数の点火回路が設けられる。点火制御部33は、点火信号が指示されると、各点火回路34に同じ時間帯に同時に点火を指示する点火ドライバ駆動信号を出力するとともに、EN信号を接続端子391に接続される降圧制御部21の第3の入力に出力する。点火する時間帯は、たとえば2ミリ秒である。
【0039】
点火回路34aは、ハイサイドドライバ31aおよびローサイドドライバ32から構成されている。ハイサイドドライバ31aは、図3に示したハイサイドドライバ31のドライバ311の代わりに電流制限部312を用いる。点火回路34aの接続端子393と接続端子394との間にスクイブ8aが接続されている。電流制限部312は、図1に示した従来の技術である定電流制御部911の回路構成と同じ回路構成であり、説明は省略する。電流制限部312は、トランジスタTr3のゲート電圧を制御することによって、トランジスタTr3を流れる電流の電流値を予め定める第2の電流値未満となるように制御する。予め定める第2の電流値は、たとえば1.3Aである。
【0040】
点火回路34b〜34dは、点火回路34aと同じ回路構成であり、重複を避けるために説明は省略する。ダイオードD4のカソードは、点火回路34b〜34dの各接続端子392に接続され、点火回路34b〜34dには、それぞれスクイブ8b〜8dが接続されている。点火回路34は、点火部である。
【0041】
各点火回路34および各スクイブ8にはインピーダンスのばらつきがあり、電流制限部312を用いないと、点火回路34のインピーダンスとスクイブ8のインピーダンスの合計が最も小さいインピーダンスの点火回路34に電流が集中し、他の点火回路に必要な電流を流すことができない。電流制限部312を用いることによって、各点火回路34に流れる電流の電流値を予め定める第2の電流値未満に制限することができ、いずれの点火回路34にも電流を集中させることなく、スクイブ8を点火するために必要な予め定める第3の電流値以上の電流を流すことができる。予め定める第3の電流値は、たとえば1.2Aである。
【0042】
定電流降圧コンバータ20が出力する出力電流の電流値は、スクイブ8が4つの場合、予め定める第2の電流値を3倍した電流値に、予め定める第3の電流値を加算した電流値とする。したがって、すべての点火回路34に予め定める第3の電流値、たとえば1.2A以上の電流を流すことができる。
【0043】
そして、すべての点火回路34に予め定める第3の電流値以上の電流を流すことができるので、すべてのスクイブ8を点火することができ、点火しないスクイブ8が残らないので、定電流降圧コンバータ20の出力電圧が上昇することもない。したがって、いずれの点火回路34の電力損失も小さく抑えることができる。たとえば点火回路34に流れる電流の電流値を1.3Aとしても、トランジスタTr3,Tr4での電力損失は、いずれも1.3A×1.3A×1Ω=1.69Wであり、従来の技術による電力損失24.48Wよりも大幅に小さい。
【0044】
図5に示したエアバッグ点火回路1aでは、電流制限部312をハイサイドドライバ31aに用いたが、ローサイドドライバ32に用いてもよい。ローサイドドライバ32に用いても、ハイサイドドライバ31aに用いた場合の効果と同様の効果を得ることができる。
【0045】
図6は、本発明の実施の第3の形態であるエアバッグ点火回路1bの構成を示す図である。エアバッグ点火回路1bは、ダイオードD1,D4、コンデンサC1、昇圧コンバータ10、定電流降圧コンバータ20aおよび点火IC30bを含んで構成されている。エアバッグ点火回路1aの構成要素のうち図5に示したエアバッグ点火回路1aの構成要素と同じ構成要素については、重複を避けるために、同じ参照符を付して説明を省略する。
【0046】
エアバッグ点火回路1bは、同じ時間帯に同時に点火するスクイブ8の数に応じて、定電流降圧コンバータ20aの出力電流を変化させるために、図5に示した点火IC30aの代わりに点火IC30bを用い、図5に示した定電流降圧コンバータ20の代わりに定電流降圧コンバータ20aを用い、電流切換信号を点火IC30bから定電流降圧コンバータ20aに送る構成としている。
【0047】
点火IC30bは、図5に示した点火制御部33の代わりに点火制御部33aを用いる。点火数生成部である点火制御部33aは、入力される点火信号に基づいて、コンバータ駆動信号、点火ドライバ駆動信号、および電流切換信号を出力する。コンバータ駆動信号は、接続端子391に接続される定電流降圧コンバータ20aの第3の入力にEN信号として出力される。点火ドライバ駆動信号は、点火回路34a〜34dに、それぞれ個別の信号として送られる。コンバータ駆動信号は、点火制御部33が出力するEN信号と同じ信号であり、点火ドライバ駆動信号は、点火制御部33が出力する点火ドライバ駆動信号と同じ信号である。電流切換信号は、同じ時間帯に同時に点火するスクイブ数を表す信号であり、点火制御部33aから接続端子396に接続される定電流降圧コンバータ20aに送られる。
【0048】
図3および図5に示した点火信号は、点火を指示する期間出力される信号であるが、点火制御部33aに入力される点火信号は、点火開始および点火終了がパルス状の信号として指示され、同じ時間帯に同時に点火するスクイブ識別情報がシリアル信号として指示される。スクイブ識別情報は、各スクイブ8を識別するための情報である。
【0049】
点火制御部33aは、点火信号から、点火開始指示、点火終了指示、および同じ時間帯に同時に点火するスクイブ識別情報を取得する。点火制御部33aは、点火開始指示および点火終了指示に基づいて、コンバータ駆動信号を出力し、点火開始指示、点火終指示了、および同じ時間帯に同時に点火するスクイブ識別情報に基づいて、点火ドライバ駆動信号を出力し、同じ時間帯に同時に点火するスクイブ識別情報に基づいて、同じ時間帯に同時に点火するスクイブ数を算出し、算出したスクイブ数を電流切換信号として出力する。
【0050】
定電流降圧コンバータ20aは、図5に示した降圧制御部21の代わりに降圧制御部21aを用いる。降圧制御部21aは、第1〜第3の入力に加えて、第4の入力を有し、第4の入力は、接続端子396に接続されている。第4の入力には、接続端子396を介して、点火制御部33aからの電流切換信号が入力される。図6では、電流切換信号の信号線として2本の信号線を示しているが、3本以上であってもよいし、1本の信号線でシリアル信号として電流切換信号を送ってもよい。
【0051】
降圧制御部21aは、第4の入力に入力される電流値切換信号が示すスクイブ数に応じた出力電流を出力する。具体的には、電流値切換信号が示すスクイブ数をnとし、予め定める第2の電流値を1.3A、予め定める第3の電流値を1.2Aとするとき、出力電流は、1.3A×(n−1)+1.2Aである。
【0052】
図7は、定電流降圧コンバータ20aの構成を示す図である。定電流降圧コンバータ20aに含まれる降圧制御部21aは、定電流制御部211、電圧検出コンパレータ212および定電圧源213を含んで構成されている。
【0053】
定電流制御部211は、定電流降圧コンバータ20への第1〜第4の入力がそのまま入力され、電圧検出コンパレータ212の出力も入力されている。定電流制御部211の出力は、定電流降圧コンバータ20aの出力として、トランジスタTr2のゲートに接続されている。電圧検出部である電圧検出コンパレータ212は、抵抗素子R1とコンデンサC3との接続点の電圧と、定電圧源213の電圧とを比較し、出力電圧が定電圧源213の電圧以上になると、出力電圧が定電圧源213の電圧以上になったことを示す高電圧検出信号を定電流制御部211に送る。
【0054】
定電流制御部211は、従来の技術によるスイッチング電源に用いられる回路構成と同じ回路構成であり、詳細な説明は省略する。定電流制御部211は、抵抗素子R1の両端の電位差から抵抗素子R1を流れる電流の電流値を算出し、算出した電流値に基づいて、出力電流が予め定める電流値になるように、トランジスタTr2のオンオフを制御し、EN信号が指示されている期間、出力電流を出力する。そして、電圧検出コンパレータ212から高電圧検出信号を受けると、出力電圧を定電圧源213の電圧以上にならないように、トランジスタTr2のオンオフを制御する。定電流降圧コンバータ20aは、出力電圧を予め定める電圧、たとえば5.8Vになるように制御するので、定電圧源213の電圧を、5.8Vよりも少し高い値、たとえば6Vに設定しておけば、出力電圧が5.8V以上に上昇しても、最大でも6Vに抑えることができるので、電力損失を小さく抑えることができる。
【0055】
スクイブ8は、点火後開放状態となり、点火前に流れていた電流が流れなくなる。定電流降圧コンバータ20aが出力しようとしている電流の電流値よりも、点火していないスクイブ8に流れる合計の電流の電流値が小さくなるので、出力電圧が上昇するが、定電流制御部211が出力電圧を定電圧源213の電圧以上にならないように制御するので、定電流降圧コンバータ20aの出力電圧が昇圧コンバータ10の出力電圧まで上昇することはなく、点火回路34での電圧損失の増大を抑えることができる。
【0056】
図8は、定電流降圧コンバータ20bおよび点火IC30cの構成を示す図である。定電流降圧コンバータ20bおよび点火IC30cは、図6に示した定電流降圧コンバータ20aおよび点火IC30bの代わりに用いられる。定電流降圧コンバータ20bの構成要素は、定電流降圧コンバータ20aの構成要素と同じ構成要素であるが、電圧検出コンパレータ212の出力が、点火IC30にも接続されている。
【0057】
点火IC30cは、図6に示した点火IC30bにタイマ部35を追加し、点火制御部33aに代えて点火制御部33cを用いる。点火制御部33cは、点火制御部33aが出力するEN信号および点火ドライバ駆動信号と同じ信号を出力する。さらに、点火制御部33cは、同じ時間帯に同時に点火するスクイブの数を示す電流値切換信号を出力するが、タイマ部35から電流低下信号が指示されるたびに、電流値切換信号で出力するスクイブの数を1ずつ減らす。
【0058】
電流値切換信号生成部であるタイマ部35は、電圧検出コンパレータ212から高電圧検出信号が出力され、高電圧検出信号の出力が継続する間、高電圧検出信号が出力されてから予め定める時間が経過するたびに、パルス状の電流低下信号を出力する。
【0059】
図9は、電流低下信号と電流値切換信号との関係を示すタイムチャートである。点火信号は、シリアル信号の場合を示し、時刻t1に点火開始が指示されると、点火制御部33cは、電流値切換信号で、たとえばスクイブ数「4」を指示する。少なくともいずれか1つのスクイブ8が点火すると、点火したスクイブ8に電流が流れなくなる。定電流降圧コンバータ20bは、予め定める電流値の出力電流を出力しようとするが、実際に流れる電流は少なくなるので、出力電圧が上昇する。
【0060】
出力電圧が上昇し、定電圧源213の電圧以上になると、電圧検出コンパレータ212は、高電圧検出信号を出力する。タイマ部35は、電圧検出コンパレータ212が時刻t2に高電圧検出信号を出力すると、高電圧検出信号が出力されている間、高電圧検出信号が出力されてから予め定める時間T1が経過するたびに、パルス状の電流低下信号を出力する。
【0061】
タイマ部35は、たとえば時刻t2から時間T1が経過した時刻t3にパルス状の電流低下信号を出力する。点火制御部33cは、時刻t3の電流低下信号によって、スクイブ数を「4」から「3」に減算した電流値切換信号を出力する。定電流降圧コンバータ20bは、点火制御部33cからスクイブ数が「3」の電流値切換信号を受けると、スクイブ数「4」の出力電流をスクイブ数「3」の出力電流に減らす。定電流降圧コンバータ20bがスクイブ数「4」の出力電流からスクイブ数「3」の出力電流に減らしても、電圧検出コンパレータ212が高電圧検出信号を出力し続けていると、タイマ部35は、時刻t3から時間T1が経過した時刻t4にパルス状の電流低下信号を出力する。
【0062】
点火制御部33cは、時刻t4の電流低下信号によって、スクイブ数を「3」から「2」に減算した電流値切換信号を出力する。定電流降圧コンバータ20bが時刻t4でのスクイブ数「2」を示す電流値切換信号によって、スクイブ数「3」の出力電流からスクイブ数「2」の出力電流に減らしたことによって、出力電圧が定電圧源213の電圧未満になると、高電圧信号は出力されなくなり、それ以後、電流低下信号も出力されない。
【0063】
このように、定電流降圧コンバータ20bおよび点火IC30cは、スクイブ8に点火することによって、出力電圧が上昇するとき、出力電流を段階的に少なくして、出力電圧の上昇を抑えるので、点火回路34での電力損失を低減することができ、バックアップコンデンサであるコンデンサC2に蓄積されているエネルギを節約することができる。
【0064】
図8に示した定電流降圧コンバータ20bおよび点火IC30cは、高電圧検出信号が出力されたとき、スクイブ数の減算を点火IC30cの点火制御部33cで行って定電流降圧コンバータ20bに指示しているが、タイマ部35を降圧制御部21bに設けて、タイマ部35の出力に応答して定電流制御部211がスクイブ数の減算を行う構成としてもよい。
【0065】
図10は、点火ドライバ駆動信号とコンバータ駆動信号との関係を示すタイムチャートである。点火信号は、時刻t5に点火開始を指示するパルスを出力し、時刻t7に点火終了を指示するパルスを出力している。点火制御部33aまたは点火制御部33cは、時刻t5の点火開始指示から時刻t8までの期間、点火ドライバ駆動信号を出力し、時刻t6から点火終了指示の時刻t7までの期間、コンバータ駆動信号、つまりEN信号を出力する。時刻t6は、時刻t5から予め定める第1の遅延時間T2が経過した時刻であり、時刻t8は、時刻t7から予め定める第2の遅延時間T3が経過した時刻である。
【0066】
定電流降圧コンバータ20aおよび定電流降圧コンバータ20bは、時刻t6にコンバータ駆動信号が出力されると、出力電流(図では「コンバータ出力電流」と記す)および出力電圧(図では「コンバータ出力電圧」と記す)を出力する。
【0067】
このように、点火を開始するときは、点火ドライバ駆動信号の出力を開始して、ハイサイドドライバ31aおよびローサイドドライバの駆動を開始した後、つまりトランジスタTr3,Tr4をオンにした後、コンバータ駆動信号の出力を開始して、出力電流および出力電圧の出力を開始する。そして、点火を終了するときは、コンバータ駆動信号の出力を停止して、出力電流および出力電圧の出力を停止した後、点火ドライバ駆動信号の出力を停止して、ハイサイドドライバ31aおよびローサイドドライバの駆動を停止、つまりトランジスタTr3,Tr4をオフにする。したがって、トランジスタTr3,Tr4がオンにされていないことによって電流が流れず、出力電圧が上昇することを抑えることができる。たとえば、電圧検出コンパレータ212が設けられない場合、図10に示すタイミングチャートの順序ではなく、ドライバを駆動するよりも前に出力電流を出力すると、出力電圧が、昇圧コンバータ10が昇圧する電圧まで上昇し、電圧損失が大きくなる。
【0068】
図11は、本発明の実施の第4の形態であるエアバッグ点火回路1cの構成を示す図である。エアバッグ点火回路1cは、ダイオードD1,D4、コンデンサC1、昇圧コンバータ10、定電流降圧コンバータ20a、点火IC30d、セーフィング判定部40および衝突判定部41を含んで構成されている。エアバッグ点火回路1cの構成要素のうち図6に示したエアバッグ点火回路1bの構成要素と同じ構成要素については、重複を避けるために、同じ参照符を付して説明を省略する。
【0069】
エアバッグ点火回路1cは、図6に示したエアバッグ点火回路1bにセーフィング信号を生成するセーフィング判定部40、および点火信号を生成する衝突判定部41を追加し、点火IC30cの代わりに点火IC30dを用いる。
【0070】
セーフィング信号生成部であるセーフィング判定部40は、加速度センサ401およびマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)402を含んで構成されている。加速度センサ401は、車両の衝突によって車両に生じる加速度を検出する検出器であり、マイコン402は、加速度センサ401で検出された加速度が、衝突によって生じる加速度であると判定したとき、セーフィング信号およびEN信号を出力する。EN信号は、降圧制御部21aの第3の入力に入力され、セーフィング信号は、点火IC30dの接続端子397に入力されている。
【0071】
点火信号生成部である衝突判定部41は、加速度センサ411およびマイコン412を含んで構成されている。加速度センサ411は、車両の衝突によって車両に生じる加速度を検出する検出器であり、マイコン412は、加速度センサ411で検出された加速度が、衝突によって生じる加速度であると判定したとき、点火信号を出力する。点火信号は、点火IC30dの接続端子398に入力されている。
【0072】
点火IC30dは、図6に示した点火制御部33aの代わりに点火制御部33dを用い、セーフィング信号を接続するために接続端子397、および点火信号を接続するための接続端子398が形成されている。点火制御部33dは、セーフィング信号および点火信号がともに点火開始を指示したとき、点火ドライバ駆動信号を出力し、セーフィング信号および点火信号のいずれもが点火開始を指示しないとき、またはセーフィング信号もしくは点火信号が点火終了を指示したとき、点火ドライバ駆動信号を出力しない。同じ時間帯に同時に点火するスクイブ数は、衝突判定部41から点火信号によって指示される同じ時間帯に同時に点火するスクイブ識別情報に基づいて算出され、点火制御部33dは、算出したスクイブ数を示す電流値切換信号を降圧制御部21aの第4の入力に入力する。
【0073】
点火制御部33dは、セーフィング信号および点火信号がともに点火開始を指示したときのみ、点火ドライバ駆動信号を出力して、スクイブ8を点火するので、セーフィング判定部40および衝突判定部41のうちのいずれかが故障して、セーフィング信号または点火信号が誤って出力されても、スクイブ8が点火されることはない。
【0074】
図12は、本発明の実施の第5の形態であるエアバッグ点火回路1dの構成を示す図である。エアバッグ点火回路1dは、ダイオードD1,D3,D4、コンデンサC1,C3、昇圧コンバータ10、トランジスタTr2、コイルL2、抵抗素子r1および点火IC30eを含んで構成されている。エアバッグ点火回路1dの構成要素のうち図11に示したエアバッグ点火回路1cの構成要素と同じ構成要素については、重複を避けるために、同じ参照符を付して説明を省略する。
【0075】
点火IC30eは、定電流降圧コンバータ20aを構成する降圧制御部21aを含んで構成され、セーフィング制御部36が追加され、図11に示した点火制御部33dの代わりに点火制御部33eを用い、定電流制御部211の出力を接続するための接続端子399、定電流制御部211の第1の入力を接続するための接続端子390、および定電流制御部211の第2の入力を接続するための接続端子389が形成されている。
【0076】
セーフィング制御部36は、セーフィング信号によって点火開始が指示されると、定電流制御部211の第3の入力へのEN信号の出力を開始するとともに、点火制御部33eへの許可信号の出力を開始する。そして、セーフィング信号によって点火終了が指示されると、定電流制御部211の第3の入力へのEN信号の出力を停止するとともに、点火制御部33eへの許可信号の出力を停止する。
【0077】
点火制御部33eは、点火信号によって点火開始が指示され、かつ許可信号が出力されていると、点火ドライバ駆動信号の出力を開始し、点火信号によって点火終了が指示されるか、または許可信号が出力されなくなると、点火ドライバ駆動信号の出力を停止する。点火制御部33eは、点火信号によって指示される同じ時間帯に同時に点火するスクイブ識別情報に基づいて、同じ時間帯に同時に点火するスクイブ数を算出し、算出したスクイブ数を表す電流値切換信号を、定電流制御部211の第4の入力に出力する。
【0078】
図12に示したエアバッグ点火回路1dでは、定電流降圧コンバータ20aの一部、具体的には、降圧制御部21aを点火IC30eに組み込んだが、昇圧コンバータ10の一部、たとえば昇圧制御部11を点火IC30eに取り込むことも可能である。
【0079】
エアバッグ点火回路1dは、定電流降圧コンバータ20aの一部、具体的には、降圧制御部21aを点火ICに含めて集積化しているので、エアバッグ点火回路1dの小型化および高信頼性化が可能である。
【0080】
図13は、点火IC30eを用いた制御ユニット50の構成を示す図である。制御装置である制御ユニット50は、ダイオードD1,D3,D4、コンデンサC1,C3、昇圧コンバータ10、トランジスタTr2、コイルL2、抵抗素子r1、点火IC30e、セーフィング判定部40aおよび衝突判定部41を含んで構成され、電源端子51および接続端子群52が形成されている。
【0081】
制御ユニット50の構成要素のうち図11に示したエアバッグ点火回路1cの構成要素と同じ構成要素、および図12に示したエアバッグ点火回路1dの構成要素と同じ構成要素については、重複を避けるために、同じ参照符を付して説明を省略する。制御ユニット50に含まれるダイオードD1,D3,D4、コンデンサC1,C3、昇圧コンバータ10、トランジスタTr2、コイルL2、抵抗素子r1および点火IC30eは、エアバッグ点火回路1dを構成している。
【0082】
バッテリ7は、電源端子51に接続され、電源端子51は、ダイオードD1のアノードに接続されている。接続端子群52は、各点火回路34に形成される接続端子393,394に接続されている接続端子であり、各点火回路34の接続端子393,394に対応する接続端子に、スクイブ8a〜8dがそれぞれ接続される。セーフィング判定部40aは、図11に示したセーフィング判定部40と同様にセーフィング信号を出力するが、EN信号は出力しない。EN信号は、セーフィング制御部36から出力される。制御ユニット50は、集積化された点火IC30eを含んで構成しているので、制御ユニット50を小型化し、かつ高信頼性化することが可能である。
【0083】
このように、昇圧コンバータ10によって、直流電源からの電圧が昇圧され、昇圧コンバータ10によって昇圧された電圧が印加される定電流降圧コンバータ20によって、負荷への出力電流が出力され、ハイサイドドライバ31およびローサイドドライバ32によって、点火信号が指示されたとき、定電流降圧コンバータ20によって出力される出力電流がスクイブ8に流される。さらに、定電流降圧コンバータ20は、降圧制御部21を含む。降圧制御部21によって、出力電流の電流値が検出され、検出された電流値に基づいて、出力電流の電流値が予め定める電流値に制御される。
【0084】
したがって、定電流降圧コンバータ20によって、スクイブ8を点火するために必要な出力電流を供給するので、昇圧コンバータ10によって昇圧された電圧をそのままハイサイドドライバ31に印加することがなく、ハイサイドドライバ31での電力損失を低減することができる。
【0085】
さらに、点火回路34は、スクイブ8に流す電流を予め定める第2の電流値未満に制限する電流制限部312を含み、電流制限部312によって、スクイブ8に流す電流が予め定める第2の電流値未満に制限される。したがって、スクイブ8の点火回路34を並列接続した場合でも、各スクイブ8に予め定める第2の電流値以上の電流が流れることを防止することができ、電力損失の増加を防止することができる。また、点火するために最低限必要な電流を各スクイブ8に流すことができる。
【0086】
さらに、点火制御部33aによって、同じ時間帯に同時に点火するスクイブの数が生成され、定電流降圧コンバータ20によって、予め定める第2の電流値に、点火制御部33aによって生成された数から1を減算した数を乗算した電流値と、予め定める第2の電流値未満の電流値である予め定める第3の電流値とを加算した値が、前記予め定める電流値とされる。したがって、車両の衝突形態に応じて、点火させるスクイブ8の数が変化しても、たとえば、車両が側方から衝突された場合、サイドエアバッグおよびカーテンエアバッグを作動させ、フロントエアバッグおよびシートベルトプリテンショナーを作動させなくても、スクイブ8の数に応じて出力電流を変化させるので、点火するために必要な最低限の電流値以上の電流を各スクイブ8に流すことができる。
【0087】
さらに、定電流降圧コンバータ20は、電圧検出コンパレータ212を含む。電圧検出コンパレータ212によって出力電圧が検出され、降圧制御部21によって、電圧検出コンパレータ212によって検出された出力電圧に基づいて、出力電圧が予め定める電圧未満となるように制御される。したがって、スクイブ8が点火した後、点火したスクイブ8に電流が流れなくなり、出力電圧が上昇しても、出力電圧が予め定める電圧未満となるように制御されるので、点火回路34での電力損失の増大を防止することができる。
【0088】
さらに、タイマ部35によって、電圧検出コンパレータ212によって出力電圧が予め定める電圧以上になったことが検出されると、予め定める時間が経過するたびに、電流値を切り換えるための電流値切換信号が生成され、点火制御部33cによって、タイマ部35によって電流値切換信号が生成されるたびに、点火制御部33cによって生成された数から1が減算される。したがって、点火していないスクイブ8に必要以上の電流が多量に流れることを防止し、電力損失の増加を減らし、バックアップコンデンサであるコンデンサC2の蓄積エネルギを節約することができる。
【0089】
さらに、定電流降圧コンバータ20によって、点火信号が指示された時点から予め定める第1の遅延時間が経過した時点から、点火信号が指示されなくなった時点まで出力電流および出力電圧が出力され、点火回路34によって、点火信号が指示された時点から、点火信号が指示されなくなった時点から予め定める第2の遅延時間が経過した時点まで、定電流降圧コンバータ20によって出力される出力電流がスクイブに出力可能とされる。したがって、定電流降圧コンバータ20bは、点火を開始するとき、および点火を終了するときのいずれにおいても、ドライバが駆動されている状態で、スクイブに電流を供給するので、スクイブに電流が流れないことによる出力電圧の上昇を抑えることができる。たとえば、電圧検出コンパレータ212がない場合、点火を開始するときに、ドライバを駆動するよりも先に定電流降圧コンバータ20bの出力を開始すると、スクイブに電流が流れず、出力電圧が、昇圧コンバータ10によって昇圧された電圧まで上昇してしまう。
【0090】
さらに、衝突判定部41によって、車両の加速度が検出され、検出された加速度に基づいて、車両が衝突したか否かが判定され、車両が衝突したと判定されたとき、点火信号が生成され、セーフィング判定部40によって、車両の加速度が検出され、検出された加速度に基づいて、車両が衝突したか否かが判定され、車両が衝突したと判定されたとき、セーフィング信号が生成される。そして、点火回路34によって、衝突判定部41によって点火信号が生成され、かつセーフィング判定部40によってセーフィング信号が生成されたとき、定電流降圧コンバータ20によって出力される出力電流がスクイブに流され、定電流降圧コンバータ20によって、セーフィング判定部40によってセーフィング信号が生成されたとき、出力電流および出力電圧が出力される。したがって、衝突判定部41およびセーフィング判定部40で二重に衝突判定を行っているので、片方の回路が故障して誤って衝突判定しても、エアバッグが誤って作動することを防止することができる。
【0091】
さらに、エアバッグ点火回路1cに含まれる定電流降圧コンバータ20、降圧制御部21、電圧検出コンパレータ212、点火回路34およびセーフィング判定部40のうちの降圧制御部21、電圧検出コンパレータ212、および点火回路34と、セーフィング制御部36とを含んで集積化され、セーフィング制御部36によって、セーフィング判定部40によって生成されたセーフィング信号に基づいて、定電流降圧コンバータ20による出力電流および出力電圧の出力を許可するイネーブル信号、および点火回路34に点火を許可する許可信号が生成される。したがって、エアバッグ点火回路1cの一部を集積化した回路としているので、エアバッグ点火回路1dの小型化および高信頼性化が可能である。
【0092】
さらに、エアバッグ点火回路1dに含まれる昇圧コンバータ10、トランジスタTr2、衝突判定部41、およびセーフィング判定部40、ならびに点火IC30eを含む。したがって、点火IC30eを含んで構成されているエアバッグ点火回路1dを用いているので、制御ユニット50を小型化し、かつ高信頼性化することが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1,1a〜1d,9 エアバッグ点火回路
7 バッテリ
8,8a〜8d スクイブ
10 昇圧コンバータ
11 昇圧制御部
20,20a,20b 定電流降圧コンバータ
21,21a,21b 降圧制御部
30,30a〜30e,90 点火IC
31,31a,91 ハイサイドドライバ
32 ローサイドドライバ
33,33a,33c〜33e 点火制御部
34a〜34d 点火回路部
35 タイマ部
36 セーフィング制御部
40,40a セーフィング判定部
41 衝突判定部
50 制御ユニット
51 電源端子
52 接続端子群
91,211 定電流制御部
212 電圧検出コンパレータ
213 定電圧源
311,321 ドライバ
312 電流制限部
389〜399 接続端子
401,411 加速度センサ
402,412 マイコン
C1〜C3 コンデンサ
D1〜D4 ダイオード
L1,L2 コイル
R1 抵抗素子
Tr1〜Tr4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの電圧を昇圧する昇圧部と、
昇圧部によって昇圧された電圧が印加され、負荷への出力電流を出力する電流出力部と、
点火信号が指示されたとき、電流出力部によって出力される出力電流をスクイブに流す点火部とを含むエアバッグ点火回路であって、
前記電流出力部は、
出力電流の電流値を検出する電流検出部と、
電流検出部によって検出された電流値に基づいて、出力電流の電流値を予め定める電流値に制御する制御部とを含み、
前記点火部は、スクイブに流す電流を予め定める第2の電流値未満に制限する電流制限部を含むことを特徴とするエアバッグ点火回路。
【請求項2】
同じ時間帯に同時に点火するスクイブの数を生成する点火数生成部をさらに含み、
前記電流出力部は、予め定める第2の電流値に、点火数生成部によって生成された数から1を減算した数を乗算した電流値と、予め定める第2の電流値未満の電流値である予め定める第3の電流値とを加算した値を、前記予め定める電流値とすることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ点火回路。
【請求項3】
前記電流出力部は、出力電圧を検出する電圧検出部をさらに含み、
前記制御部は、電圧検出部によって検出された出力電圧に基づいて、出力電圧が予め定める電圧未満となるように制御することを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ点火回路。
【請求項4】
前記電圧検出部によって出力電圧が予め定める電圧以上になったことが検出されると、予め定める時間が経過するたびに、電流値を切り換えるための電流値切換信号を生成する電流値切換信号生成部をさらに含み、
前記点火数生成部は、電流値切換信号生成部によって電流値切換信号が生成されるたびに、前記点火数生成部によって生成された数から1を減算することを特徴とする請求項3に記載のエアバッグ点火回路。
【請求項5】
前記電流出力部は、点火信号が指示された時点から予め定める第1の遅延時間が経過した時点から、点火信号が指示されなくなった時点まで出力電流および出力電圧を出力し、
前記点火部は、点火信号が指示された時点から、点火信号が指示されなくなった時点から予め定める第2の遅延時間が経過した時点まで、前記電流出力部によって出力される出力電流をスクイブに出力可能とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のエアバッグ点火回路。
【請求項6】
車両の加速度を検出し、検出した加速度に基づいて、車両が衝突したか否かを判定し、車両が衝突したと判定したとき、点火信号を生成する点火信号生成部と、
車両の加速度を検出し、検出した加速度に基づいて、車両が衝突したか否かを判定し、車両が衝突したと判定したとき、セーフィング信号を生成するセーフィング信号生成部とをさらに含み、
前記点火部は、点火信号生成回路によって点火信号が生成され、かつセーフィング信号生成回路によってセーフィング信号が生成されたとき、前記電流出力部によって出力される出力電流をスクイブに流し、
前記電流出力部は、セーフィング信号生成回路によってセーフィング信号が生成されたとき、出力電流および出力電圧を出力することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のエアバッグ点火回路。
【請求項7】
請求項6に記載のエアバッグ点火回路に含まれる電流出力部、制御部、電圧検出部、点火部およびセーフィング信号生成部のうちの制御部、電圧検出部および点火部と、
前記セーフィング信号生成部によって生成されたセーフィング信号に基づいて、前記電流出力部による出力電流および出力電圧の出力を許可する出力許可信号、および前記点火部に点火を許可する許可信号を生成するセーフィング制御部とを含んで集積化したことを特徴とする集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−241184(P2010−241184A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89609(P2009−89609)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】