説明

エアバッグ用織物

【課題】軽量でかつ通常の繊維間に塗布するレベルでは得られていない差圧20kPaという高圧下で低通気性能を有するエアバッグに適した樹脂加工織物を提供すること。また、前記のようなエアバッグ用織物の効率的な製造方法を提供すること。
【解決手段】カバーファクターの値が2000〜2500であるエアバッグ用織物であって、織物の表面および裏面に位置する単糸繊維間に樹脂が存在し、織物に付与された樹脂量が5〜25g/mであり、20kPa時の通気度が5×10−4〜5×10−2L/cm/minであるエアバッグ用織物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、必要な機械的特性を保持しつつ、低コストで低通気度を有する自動車安全装置の一つであるエアバッグ用織物とその効率的な製造方法を提供しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車安全部品の一つとして急速に装着率が向上しているエアバッグは、自動車の衝突事故の際、衝撃をセンサーが感知し、インフレーターから高温、高圧のガスを発生させ、このガスによってエアバッグを急激に展開させて、運転者や同乗者の身体、特に頭部がハンドル、フロントガラス、ドアガラス等に衝突することを防止し保護するものである。従来、これらの目的にはコーティングを行わないノンコート布や、コーティングを行ったコート布等、用途に応じて適した布が使用されてきた。
【0003】
しかしながら、ノンコート布では、通気度が高いため、適用される範囲が限られている問題がある。また、コート布は通気度が低くエアバッグとして好適な布ではあるが、基布が重く、柔軟性に劣り、また製造コストも高いため、採用されるのは通気度が低く要求される範囲に限られてきた。
【0004】
織物の目合い部にエラストマー樹脂が偏在しているエアバッグの発明が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、前記の製造方法では溶剤にシリコーン樹脂を希釈しコートすることで20g/m以下の塗布量を達成している。
【特許文献1】特開平6−8779号公報
【0005】
一方、シリコーン樹脂の水系エマルジョンを0.1〜10g/mの範囲に付着させるエアバッグ用織物の製造方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。前記の製造方法によれば軽量、柔軟、等の特徴を有する織物が得られている。
【特許文献2】特開平5−16753号公報
【0006】
カバーファクター、単糸繊度、塗布量、厚み、通気度等が記載された樹脂層を有するエアバッグ用織物も知られている(例えば、特許文献3参照。)。前記エアバッグ用織物は、軽量、薄さ等の特徴を有するが、一般的なコート布と比較すると通気度レベルが非常に高いものしか得られていない。
【特許文献3】特開2001−89949号公報
【0007】
オルガノシロキサンを含有する水性シリコーンエマルジョンによる工業用布やその製造方法も知られている(特許文献4及び5参照。)。前記は、生地を未加工状態で塗布加工することを特徴としている。
【特許文献4】特開2000−225666号公報
【特許文献5】特開2001−288641号公報
【0008】
前記以外にも水性エマルジョン樹脂を用いて布帛に加工する方法が知られている(例えば、特許文献6参照。)。前記方法によれば、工程として、洗浄、乾燥工程と同時に加硫することに関する記載があるが、より低い通気度を得ようとするものではない。
【特許文献6】特開平9−124947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の方法では解決できていない軽量でかつ通常の繊維間に塗布するレベルでは得られていない低通気性能を有するエアバッグに適した樹脂加工織物を提供することを課題とするもので、差圧20kPa以上の高圧下で低通気度を得ようとするものであり、前記のようなエアバッグ用織物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. カバーファクターの値が2000〜2500であるエアバッグ用織物であって、織物の表面および裏面に位置する単糸繊維間に樹脂が存在し、織物に付与された樹脂量が5〜25g/mであり、20 kPa時の通気度が5×10−4〜5×10−2L/cm2/minであり、次式(1)及び(2)で示されるクリンプ率の変動指数α、βの積が−250以下であることを特徴とするエアバッグ用織物。
(但し、樹脂加工直前の基布のクリンプ率をタテ糸方向A0、ヨコ糸方向B0とし、エアバッグ用織物のクリンプ率をタテ糸方向A、ヨコ糸方向Bとした場合、クリンプ率の変動指数α及びβは、次式(1)及び(2)で表される。)
α = {(A-A0)/A0} × 100・・・・・・・・・(1)
β = {(B-B0)/B0} × 100・・・・・・・・・(2)
2. 織物を構成する糸条がポリアミド繊維糸条であり、前記糸条の単糸繊維が6dtex以下であり、織物の厚みが0.32mm以下であることを特徴とする上記第1に記載のエアバッグ用織物。
3. 20kPa時の通気度が1×10−3〜3×10−2L/cm2/minの範囲であることを特徴とする上記第1又は第2に記載のエアバッグ用織物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エアバッグ用織物として必要な機械的特性を保持しつつ、低コストであり、高圧差圧下で低通気度を有するエアバッグ用織物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ここで本発明のエアバッグ用織物に適した基布の特徴を詳細に説明する。使用する合成繊維としては特に素材を限定するものではないが、特にナイロン66、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン12等の脂肪族ポリアミド繊維、アラミド繊維のような芳香族ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維が使用される。繊維はマルチフィラメント糸条の形で用いられることが高密度織物を製織しやすく、引張強力や引裂強力を大きくする上で好ましい。他の繊維としては全芳香族ポリエステル繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエーテルケトン繊維等が挙げられる。経済性を勘案するとポリエステル繊維、ポリアミド繊維が特に好ましく、さらにエアバッグの展開時の高温ガスによる耐溶融性能から考えるとポリアミド繊維が好ましく、ナイロン66繊維が特に好ましい。これらの繊維はその一部または全部が再利用された原材料より得られるものでもよい。これらの合成繊維には原糸製造工程や後加工工程での工程通過性を向上させるために、各種添加剤を含有していても何ら問題はない。例えば、酸化防止剤、熱安定剤、平滑剤、帯電防止剤、増粘剤、難燃剤等である。また、この合成繊維糸条は、着色糸条であっても何ら問題はない。
【0013】
合成繊維糸条を用いて製織を行う際に、カバーファクターは重要な指標である。カバーファクターが低いと、エアバッグとして必要な物理的特性(引張強力や引裂強力)が低くなり好ましくない。また通気度に関してもカバーファクターが大きな影響を与える。カバーファクターは大きい方が通気度が低くなり好ましいが、製織時、並びに収納性による限界がある。好ましくは、樹脂加工後のカバーファクターが2000〜2500、より好ましくは2150〜2450、さらに好ましくは2300から2450である。なお、本発明に記載されているカバーファクターは次式のようにして求めた。
カバーファクター=(経糸繊度[dtex])1/2×(経糸密度[本/2.54cm])
+(緯糸繊度[dtex])1/2×(緯糸密度[本/2.54cm])・・・・・(3)
【0014】
使用する原糸の総繊度は、100〜600dtexであることが好ましい。更に好ましくは総繊度140〜500dtexであり、より好ましくは300〜470dtexである。総繊度が100dtex未満の場合はエアバッグとして要求される引張強力及び引裂強力が不足する場合があり好ましくない。600dtexを超える場合には強力には問題はないが、織物の柔軟性が損なわれ、収納性が悪くなり良くない。
【0015】
該織物を構成する単糸繊度は6dtex以下であることが好ましい。6dtexを超えると、織物の柔軟性が損なわれるため好ましくない。より好ましくは5dtex以下、更に好ましくは3dtex以下である。単糸繊度を小さくすることにより、単糸繊維間距離を小さくすることができ同じカバーファクターであれば、通気度を低下させることができる。また、単糸鮮度を小さくすると繊維表面積を大きくすることができ高差圧下での樹脂の界面破壊を抑えることができる。
【0016】
本発明に用いられる熱可塑性繊維糸条の沸水収縮率は6〜15%であることが好ましい。沸水収縮率が、6%より小さいと必要な基布の残留収縮率が得にくくなりあまり好ましくない。好ましくは6%以上、より好ましくは8%以上である。但し、沸水収縮率が15%より大きいと収縮後の織物の厚さが厚くなると同時に、経緯方向の糸の間に隙間を生じてしまい、収納性に劣るだけでなく通気度を低減効果も損なわれるので好ましくない。沸水収縮率は、さらに好ましくは、7〜13%である。本発明における樹脂加工に用いる布帛としては、樹脂加工前に精練、セット処理を行っても行わなくても良い。樹脂加工前に精練、セット処理、加熱処理を行う場合は特に規定するものではなく、通常60〜200℃で実施する。好ましくは、160℃以下で処理するのが低通気性を得るのには好ましい。処理は、ヒートセッター、沸水バス等特に限定はしないが、経、緯方向のオーバーフィードが、2〜15%程度可能な加工機を用い、残留収縮率を所定の範囲に保てばよい。また、上記処理を行わず、樹脂加工を行うことは本発明において更に良い効果を生み出す。沸水収縮率は、JIS L−1095 9.24法に準じて測定する。
【0017】
製織方法は特に限定するものではく、織機は、エアージェットルーム、レピアルーム、ウォータージェットルーム等特に限定するものではないが、特にウォータージェットルームが好ましい。ウォータージェットルームを用いることにより繊維に含まれている油剤等が洗浄され、精練工程を施すことなくコーティング布として使用することができるため好ましい。
【0018】
樹脂加工直前の基布の残留収縮率は、経緯方向の少なくともいずれか1方向が0.5%以上であることが好ましい。本発明でいう樹脂加工直前とは、樹脂加工工程前に精練工程や精練工程後の乾燥工程がある場合は、精練工程や乾燥工程を終えた後、樹脂加工工程前を意味する。本発明では、樹脂の皮膜を形成させる前段階から基布を伸長することで単糸の引きそろえを行い、単糸繊維間の距離を小さくすると同時に、残留収縮による加工時の収縮応力も利用することで、より単繊維間距離を小さくでき、従来達成できなかった高差圧下での低通気度を得ることができたものである。残留収縮率が経または/あるいは緯糸方向で0.5%以上であると、上記通気度低減効果が得やすくなり好ましい。さらに好ましくは経または/あるいは緯糸方向の残留収縮率が1.0%以上、より好ましくは1.5%以上である。この残留収縮率は、加工織物のカバー率を大きくする方法の一つであるとも言える。また、樹脂加工前の織物の残留収縮率は、9%以下であることが好ましい。9%を超えると加工時繊維の収縮による繊維間の移動量が大きく膜の形成を損ねることがあり好ましくない。好ましくは8%以下、より好ましくは7%以下である。なお、残留収縮率の測定は、JIS L 1909を使用し、収縮した側をプラスとして表示した。
【0019】
本発明のエアバッグ用織物の厚みは0.32mm以下であることが好ましい。エアバッグとして厚みは薄い方が収納性に優れ好ましい。好ましくは0.30mm以下、より好ましくは0.29mm以下である。厚みは薄いほうが収納性に優れ好ましいが、薄くするためには使用する繊度も小さくなり、布帛強力を維持できなくなるため、好ましくない。好ましくは0.22mm以上、より好ましくは0.25mm以上である。
【0020】
樹脂を付与する方法としては、従来の公知の付与方法が用いられる。すなわち、ナイフコート、コンマコート、ダイコート、グラビアロールコート、キスロールコート、スプレー法、含浸法(Dip法)、等が挙げられ、樹脂を該織物の表面及び裏面の単糸繊維間に存在させる上で含浸法が好ましい。樹脂の付着量として5〜25g/m付与されていることが好ましく、さらに好ましくは、11〜20g/m2である。5g/mより少ないと、皮膜の形成が十分でなく、低い通気度が得にくくなり好ましくない。好ましくは7g/m2以上、より好ましくは10g/m2以上である。25g/mより多いと通気度は低くなる点は好ましいが、基布の目付が増し収納性が低下するためあまり好ましくない。好ましくは20g/m以下、より好ましくは17g/m以下である。また、これらの樹脂は該織物の表面、及び裏面の単糸繊維間に存在することが好ましい。単糸繊維間に樹脂が存在することで、基布表層の上に樹脂層が存在するよりも少ない樹脂付与量で通気度低減効果が得られる。表面、及び裏面の単糸繊維間に樹脂を存在させる方法としては、上述したコート方法を表側、裏側の2度行うことも可能であるが、片面(表面)1度でコートした方が工程の短縮化が可能となり好ましい。グラビアロールコート、キスロールコート、スプレー法、含浸法(Dip法)で粘度を調整すれば比較的容易に両面の単糸繊維間に樹脂を存在させた実質的な両面コートが可能となる。さらに剤の粘度を調整することで、ナイフコート、コンマコート、ダイコートでも1度のコートで両面の単糸繊維間に樹脂を存在させることができる。これらの剤の粘度としては、200cps〜5000cpsが好ましい範囲となる。塗布時の基布の裏抜けによる工程への悪影響等と通気度低減効果を考慮し、コート方法や剤の粘度を選択すれば良い。
【0021】
低通気性を得るために該基布に対し、樹脂加工を施す方法が一般的に知られている。かかる樹脂加工に用いられる樹脂としては、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、シリコーン系、ポリエチレン系、スチレンブタジエン系、ニトリルブタジエン系等のエラストマー樹脂が知られており、所定の性能が得られるなら、どの樹脂を使用しても構わない。該基布への接着力、剤の伸度等を考慮すると、ポリウレタン系、アクリル系、シリコーン系が好ましく、特に基布の柔軟性の点で好ましくはシリコーン系である。
【0022】
コーティング剤としては、前記のような樹脂の水系エマルジョンを用いるのが好ましい。水系エマルジョンを用いると布帛の両面の単糸繊維間に樹脂を存在させやすくなり好ましい。但し、粘度を調整すれば、溶剤系でも無溶剤系でも構わない。環境への影響も考慮し、無溶剤系、水系エマルジョンが好ましく用いられる。用いる水系エマルジョンとしては、特に制限は無く、従来公知の付加重合型ポリオルガノシロキサンを含有する水性エマルジョンが優れている。剤の粘度としては、200cps〜5000cpsが好ましい。より好ましくは300〜1000cpsである。また、繊維機材との接着性を改善する接着助剤は、適宜配合することができる。
【0023】
織物に付与された樹脂量は、樹脂付与前の織物と樹脂付与後の織物目付けより計算で求めることができる。即ち、樹脂付与後の織物目付けから樹脂付与前の織物目付けを差し引いて、その差を樹脂量(g/m)で表す。但し、樹脂付与後の織物だけがあり、樹脂付与前の織物がない場合は、樹脂付与後の織物から、織物または付与されている樹脂のみを溶解する溶剤で溶解処理し、その残渣付与樹脂の重量または残渣織物の重量より樹脂量を概算で推定することもできる。溶解法による測定では、織物またはコート樹脂のみが溶解することが条件となり、エマルジョン等に加えられている界面活性剤等の重量は考慮するとより正確である。また、今ひとつの方法として、織物を構成する糸の太さ、フィラメント数を織物断面から導き出し、密度勾配管法で求められる糸の密度(比重)、クリンプ率、織物の密度から計算し樹脂付与前の織物の目付けを計算し、樹脂付与後の織物目付けから差し引いて、概算で推定することもできる。
【0024】
織物に樹脂を付与した際、付与された樹脂は、経糸、緯糸の交差部分に偏在して存在することが多い。通気度低減効果を得るためには繊維―繊維間に膜を形成すれば十分であり、偏在する樹脂は少なければ少ない方が好ましい。単糸繊度を細くすることで偏在して存在せずに付着量を低減する効果があり好ましい。これは単糸繊度が細いために繊維−繊維間の空隙が小さくなり、樹脂が毛細管現象により内部まで浸透するため樹脂の偏在が小さくなると考えられる。また、同様の効果が張力をかけて単糸を引きそろえることでも見られる。
【0025】
塗布後のコーティング剤を乾燥、硬化させる方法としては、熱風、赤外光、マイクロウェーブ等など、一般に用いられる加熱方法が使用される。気泡形成を回避するために、第一のチャンバーの設定温度は100℃以下が好ましく、より好ましくは80〜100℃、更に好ましくは90〜100℃での予備乾燥を行うことである。第二のチャンバーでは140〜220℃、好ましくは150〜200℃、さらに好ましくは160〜190℃で樹脂の硬化(安定固着)を行う。付与した樹脂が硬化するに十分な温度に達しておれば2つの領域でなく、さらに細分化しても構わない。硬化のための時間は被覆重量、被覆された材料上への伝導性に依存するため、適宜判断すれば良いが、好ましくは0.5〜30分、より好ましくは0.75〜10分、さらに好ましくは1〜5分である。
【0026】
上記乾燥、硬化が行われているチャンバー通過中に、織物は経緯いずれかの方向に少なくとも固定、好ましくは伸張されていることが必要である。経糸方向の伸張は、送り出し速度と巻き取り速度の少なくとも一方が変更できる装置を用い、速度の差により発現することができ、速度差比(%)が、伸張率となる。緯糸方向の伸張量は、織物の端部を把持後、幅変更のできる装置を用い、把持後必要な量を緯糸方向に移動させることで伸張率を変更することができる。また、織物の糸が有している収縮率も重要な伸張因子となりうる。
【0027】
乾燥、加工時において両方向を同時に伸張する必要はなく、少なくともいずれか一方を所定の範囲に伸張すればよい。これらの伸張処理により、伸張された側のクリンプ率は減少し、直行する側の糸のクリンプ率は増加する傾向となる。このクリンプ率の変動が所定の範囲となるように調整を行った場合、単糸繊維間の空隙が小さくなると同時に単糸繊維間に存在する樹脂が硬化するため、通気度を低減させる樹脂皮膜が効率よく形成し、通気度を低くするができるため好ましい。乾燥、硬化炉内の織物の搬送方法は特に制限されるものではない。一般に知られているテンター方式等公知の技術が応用される。 単糸繊維間距離を小さくするため、加工時の伸張率(テンション)は乾燥/硬化処理の間は維持されることが好ましい。加工時に加えられる経糸および/または緯糸の伸張率は3%未満が好ましく、好ましくは2%未満、より好ましくは1.5%未満である。また、加工前の織物の解反原糸の沸騰水収縮率が5.0%未満の場合は、経あるいは/または緯方向の伸張率は0%を超え、好ましくは0.5以上、より好ましくは1%以上を採用すればよく、加工前織物の解反原糸の沸騰水収縮率が、例えば、5.0%以上ある場合は、機械の伸張率を−2%の伸張(2%の緩和)条件で乾燥、硬化を行っても構わない。加工時の布帛テンションが高すぎると、織物目合いが開き、逆に低通気度を達成出来なくなるので、布帛が有している残留収縮率の値を考慮して、樹脂の乾燥/効果時に布帛テンションが0%を超え3%以下となるように伸張されている条件を採用すればよい。
【0028】
クリンプ率の変動は、−250以下とすることが好ましい。−250以下とすることで、経緯両方向の単糸が伸張により織物として細密充填される位置に移動するため、単糸繊維間距離が小さい構造となる。この構造のまま樹脂が硬化するため、単糸繊維間に樹脂皮膜が容易に形成出来、低通気度を達成することが出来る。クリンプ率の変動は―300以下が好ましく、より好ましくは―500以下である。クリンプ率の変動は大きいほうが最密充填が進み好ましいが、大きすぎる変動は繊維間隔を広くしてしまうので好ましくない。−2000以上が好ましく、より好ましくは−1500以上である。
【0029】
経方向のクリンプ率A0、緯方向のクリンプ率をB0としたときに、加工前の基布の解反糸クリンプ率差(AoとBoの絶対値差)よりも加工後の基布の解反糸クリンプ率差(AとBの絶対値差)を少なくすることが好ましい。加工前基布の経緯方向のクリンプ率差は、WJL(ウォータージェットルーム)あるいはAJL(エアージェットルーム)等一般的な工業用織機を用いて製織する場合、製織時の経糸張力と緯糸張力の差から、A0>B0となることが多い。水系エマルジョン付与後の熱処理を行う際に、タテ糸方向に張力を与えて加工することで、タテ糸方向のクリンプ率は減少する傾向を示し、ヨコ糸方向のクリンプは増大する傾向を示す。この結果加工前後のクリンプ率の変化量の積は、マイナスとなり、加工後の解反糸クリンプ率差(AとBの絶対値差)は小さくなる傾向となる。この傾向は一方向のみにテンションを与えて加工することでも達成できるが、本来の目的である、「織物を構成するフィラメントの細密充填」を行うためには、もう一方向も、少なくとも定長固定により加工を行うことが好ましい。この加工の結果、フィラメント間の隙間低減が達成され、樹脂の皮膜も隙間無く塗布されることにより通気度低減を達成することが出来るために好ましい。
クリンプ率はカバーファクターや使用する繊度により左右されるが、カバーファクターが2000以上の織物を使用し、100〜600dtexの繊度の糸を使用し、WJLやALJを用いて製織する場合、樹脂加工後のクリンプ率は、タテ方向4〜9%、好ましくは5〜8%、ヨコ方向は1〜5%、好ましくは2〜4%が好適に使用される。
【0030】
また、後述の測定方法によるカバー率は10%以上であることが好ましい。このカバー率は、樹脂加工後の織物を対象とするもので、経糸断面方向または緯糸断面方向の少なくともいずれか1方向のカバー率が10%以上であることを意味している。カバー率が10%以上であると、単糸繊維が最密重点を行っており、樹脂加工による通気度低減効果を効果的に付与される。経糸断面方向と緯糸断面方向とでは、経糸断面方向のカバー率が高いことが、経験的に通気度低減効果を付与しやすいのでより好ましいが、両方向共に10%以上であっても構わない。特に好ましくは経糸断面方向にカバー率が14%以上であることであり、更に好ましくは経糸断面方向にカバー率が25%以上であることである。ただし、あまりにもカバー率が大きい織物を作ろうとすると、製織時に極端な高密度にするため、織機稼働率が低下したり、精練工程で大きな収縮を付与しすぎて皺欠点が多発したりして加工欠点が増えるため、40%以下であることが好ましく、更に好ましくは、37%以下である。

【0031】
エアバックの展開後に圧力保持性を要求されるようなエアバック織物は、高圧負荷が掛かることで膜の破壊、単糸と樹脂との接着面の剥離などで通気度が増大するようなことがあると好ましくない。従って、20kPa以上の大きい差圧での通気度の評価が好ましい。本発明の織物は、20kPaの圧力を織物に与えた時の通気度が、5×10-4〜5×10-2L/cm2/minであることが好ましい。通気度が5.0×10−2 L/cm/minよりも高いと、コーティング布と同等の性能のものとして使用しづらく、ノンコート布との差が小さくなりあまり好ましくない。好ましくは3.0×10−2 L/cm/min以下、より好ましくは1.0×10−2L/cm/min以下である。通気度が、5.0×10−4 L/cm/minより小さくしようとすると付与する樹脂量を多くする必要が生じ、収納性が良くなくなり好ましくない。
【実施例】
【0032】
次に実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。なお、実施例中における各種評価は、下記の方法に従って行なった。
【0033】
[総繊度]:JIS L−1095 9.4.1記載の方法で測定した。
[フィラメント数]:繊維糸条の断面写真よりフィラメント数を数えた。
[沸水収縮率]:JIS L−1095 9.24記載の方法で測定した。
[織物の密度]:JIS L 1096 8.6.1記載の方法で測定した。
[厚さ]:JIS L−1096 8.5.1記載の方法で測定した。
[クリンプ率]:JIS L−1096 8.7.2B法記載の方法で測定した。なお、荷重として、1dtexに対し1/10gの荷重を使用した。
[残留収縮率]:JIS L−1096 8.64.4記載の方法で評線を書き加えた試料を準備し、150℃×30分間、張力を掛けない状態でオーブンに入れ、常温に戻し評線間を測定した。測定値は、JIS L−1909 9記載の方法を用い、収縮した側をプラスとした。
[樹脂付着量]:樹脂加工を行うのと同じ条件に設定した加工機を用い、樹脂を付着させない以外は同条件で織物加工を行った(例えば水系エマルジョン浴を通す加工の場合には、樹脂が浴に懸濁していない以外は同条件)。この基布の目付けをJIS L-1096 8.4.2を用いて測定した(ア)。一方、エアバッグ用織物を得る樹脂加工を行い、エアバッグ用織物の目付けを上記と同様の方法で測定を行った(イ)。 (イ)―(ア)の値を樹脂付着量とした(単位g/m)。
[剤の粘度]:JIS K−7117記載の方法を用いB型粘度計で測定した。
[通気度]:100kPa差圧下での通気度を高圧通気度測定機(OEMシステム(株)製)を用いて測定した。
[クリンプ率の変動指数 α、β]:
加工前の基布のクリンプ率をタテ糸方向A0、ヨコ糸方向B0とし、
樹脂加工を行った基布のクリンプ率をタテ糸方向A、ヨコ糸方向Bとした場合
α = {(A-A0)/A0} × 100
β = {(B-B0)/B0} × 100
としてα、βを求め、その積をクリンプ率の変動指数とした。
クリンプ率の測定は、JIS L 1096 8.7.2B法を用いて測定を行った。
[カバー率]:織物の断面SEM写真を撮影し、写真から、図1のa及びbに当たる長さを測定し、式(4)により計算して求める。
カバー率(%)={(a―b)/a}×100・・・・・・・(4)
表1において、a−bの値が、マイナスとなる場合は、カバー率が、“―”で表記されている。なお、切断面は、図2、図3に示す。切断する位置としては、「織物を構成する糸幅の中心」とする。
【0034】
(実施例1)
総繊度が350dtex、72フィラメント、強度=8.4cN/dtex、沸水収縮率=9.4%のナイロン66の糸を平織りにてウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥しコート前物性が、表1のような平織物を得た。この織物に次の配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、含浸処理後ゴムロールで構成されたマングルで絞り、表1の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。加工後の織物の密度、通気度及びカバー率は、表1の通りである。付与されている樹脂量は、加工後の織物の重さから加工前の基布の重さを引き計算により求めた。測定用試料は、20cm×20cmを切り出しその重量を測定し、その重量の差を25倍することで樹脂量(g/m2)を求めた。本加工には、織物の送り出し速度と巻き取り速度が変更でき、且つ、両緯端部が把持固定することができ、温度変更のできる第1チャンバーと第2チャンバーのある装置を使用した。経糸方向の伸張率は、送り出し速度と巻き取り速度の比率により設定した。カバー率を測定したSEM断面より樹脂が、織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在することが確認できた。
配合A
(1)Dehesive 457 83部
(2)Closslinker V72 12部
(3)Silane HF86 5部
配合薬剤は、Wacker Silicone社製(ドイツ)である。配合剤Aの(1)はそれ自体、固形分50重量%の水系エマルジョン状態品で、(2)と合わされることで付加重合型のシリコンゴムの水系エマルジョンとなる。(3)は、接着性改善のためのシランカップリング剤である。配合Aの粘度は、B型粘度計で測定したとき、380cpsであった。
【0035】
(実施例2)
総繊度が350dtex、108フィラメント、強度=8.3cN/dtex、沸水収縮率=9.0%のナイロン66の糸を用い平織りをウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥しコート前物性が、表1のような平織物を得た。この織物に実施例1配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、含浸処理後ゴムロールで構成されたマングルで絞り、表1の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。加工後の密度、カバーファクター、通気度及びカバー率は、表1の通りである。付与されている樹脂量は、実施例1と同様に求めた。本加工には、織物の送り出し速度と巻き取り速度が変更でき、且つ、両緯端部が把持固定することができ、温度変更のできる第1チャンバーと第2チャンバーのある装置を使用した。経糸方向の伸張率は、送り出し速度と巻き取り速度の比率により設定した。緯糸方向の伸張率=0%は、把持して加工したことを示す。カバー率を測定したSEM断面より樹脂が、織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在することが確認できた。
【0036】
(実施例3、4)
実施例2と同じ糸を用い平織りをウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥しコート前物性が、表1のような平織物を得た。この織物に実施例1配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、含浸処理後ゴムロールで構成されたマングルで絞り、表1の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。加工後の密度、カバーファクター、通気度及びカバー率は、表1の通りである。付与されている樹脂量は、実施例1と同様に求めた。本加工には、織物の送り出し速度と巻き取り速度が変更でき、且つ、両緯端部が把持固定することができ、温度変更のできる第1チャンバーと第2チャンバーのある装置を使用した。経糸方向の伸張率は、送り出し速度と巻き取り速度の比率により設定した。緯糸方向の伸張率=0%は、把持して加工したことを示す。カバー率を測定したSEM断面より樹脂が、織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在することが確認できた。
【0037】
(実施例5)
総繊度が350dtex、144フィラメント、強度=8.4cN/dtex、沸水収縮率=9.5%のナイロン66の糸を用い平織りをウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥しコート前物性が、表1のような平織物を得た。この織物に実施例1の配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、50cm×50cmの織物に含浸処理後ゴムロールで構成されたマングルで絞り、経緯が固定できる枠に経緯を表1記載の長さ(%)伸張して、50cm×50cmの織物を固定し、第1チャンバー及び第2チャンバーを有する加工炉の温度を調整し、表1の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。フリーは緯糸方向の固定せずに加工を行ったことを示す。加工後の密度、カバーファクター、通気度及びカバー率は、表1の通りである。付与されている樹脂量は、実施例1と同様に求めた。カバー率を測定したSEM断面より樹脂が、織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在することが確認できた。
【0038】
(実施例6、7)
総繊度が470dtex、144フィラメント、強度=8.4cN/dtex、沸水収縮率=9.3%のナイロン66の糸を用い平織りにてウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥しコート前物性が、表1のような平織物を得た。この織物に実施例1の配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、50cm×50cmの織物に含浸処理後ゴムロールで構成されたマングルで絞り、経緯が固定できる枠に経緯を表1記載の長さ(%)伸張して、50cm×50cmの織物を固定し、第1チャンバー及び第2チャンバー有する加工機の温度を調整し、表1の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。加工後の密度、カバーファクター、通気度及びカバー率は、表1の通りである。コート剤量は、実施例1と同様に求めた。カバー率を測定したSEM断面より樹脂が織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在することが確認できた。
【0039】
【表1】

【0040】
表1より本発明の各実施例の加工布が、20kPa差圧下、ならびに100kPa差圧下での低通気度性能に優れていることが分かる。
【0041】
(比較例1)
実施例2と同じ糸を用い平織りをウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥しコート前物性が、表2のような平織物を得た。この織物に実施例1の配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、含浸処理後ゴムロールで構成されたマングルで絞り、表2の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。加工後の密度、カバーファクター、通気度及びカバー率は、表2の通りである。コート剤量は、実施例1と同様に求めた。本加工には、織物の送り出し速度と巻き取り速度を同速とし、且つ、両緯端部が把持固定することができ、温度変更のできる第1チャンバーと第2チャンバーのある装置を使用したが、両緯端部については把持せずに装置を使用した。カバー率を測定したSEM断面より樹脂が織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在することが確認できた。
【0042】
(比較例2)
実施例1と同じ糸を用い平織りをウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥しコート前物性が、表2のような平織物を得た。この織物に実施例1の配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、含浸処理後ゴムロールで構成されたマングルで絞り、表2の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。加工後の密度、カバーファクター、通気度及びカバー率は、表2の通りである。コート剤量は、実施例1と同様に求めた。本加工には、織物の送り出し速度と巻き取り速度を変更でき、且つ、両緯端部が把持固定することができ、温度変更のできる第1チャンバーと第2チャンバーのある装置を使用した。経糸方向の伸張率は、送り出し速度と巻き取り速度の比率により設定した。緯糸方向の伸張率=0%は、把持して加工したことを示す。カバー率を測定したSEM断面より樹脂が、織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在することが確認できた。
【0043】
(比較例3)
実施例1と同じ糸を用い平織りをウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥しコート前物性が、表2のような平織物を得た。この織物に実施例1の配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、含浸処理後エンボスロールとゴムロールで構成されたマングルで絞り、表2の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。加工後の密度、カバーファクター、通気度及びカバー率は、表2の通りである。コート剤量は、実施例1と同様に求めた。本加工には、織物の送り出し速度と巻き取り速度を変更でき、且つ、両緯端部が把持固定することができ、温度変更のできる第1チャンバーと第2チャンバーのある装置を使用した。経糸方向の伸張率は、織物の送り出し速度と巻き取り速度の比率により設定した。緯糸方向の伸張率=0%は、把持して加工したことを示す。カバー率を測定したSEM断面より樹脂が、織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在するが、全体に均一には存在していなかった。
【0044】
(比較例4)
総繊度が470dtex、72フィラメント、強度=8.4cN/dtex、沸水収縮率=5.8%のナイロン66の糸を用い平織りにてウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥、180℃で定長セットを行い、コート前物性が、表2のような平織物を得た。この織物に実施例1の配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、50cm×50cmの織物に含浸処理後3kg/cm2下のゴムロールで構成されたマングルで絞り、付着量が2g/m2(基布に対し0.1重量%)となるように調整を行った後、経緯が固定できる枠に経緯を表2記載の長さ(%)伸張して、50cm×50cmの織物を固定し、第1チャンバー及び第2チャンバー有する加工機の温度を調整し、表2の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。加工後の密度、カバーファクター、通気度及びカバー率は、表2の通りである。コート剤量は、実施例1と同様に求めた。なお、両緯糸方向については把持せずに装置を使用した。カバー率を測定したSEM断面より樹脂が、織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在するが、全体に均一には存在していなかった。また、通気度測定に際し通気度が高すぎるため、100kPaでは測定が行えなかった。
【0045】
(比較例5)
総繊度が470dtex、72フィラメント、強度=8.4cN/dtex、沸水収縮率=5.8%のナイロン66の糸を用い平織りにてウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥、180℃で定長セットを行い、コート前物性が、表2のような平織物を得た。この織物に実施例1の配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、50cm×50cmの織物に含浸処理後3kg/cm2下のゴムロールで構成されたマングルで絞り、付着量が7g/m2(基布に対し4重量%)となるように調整を行った後、経緯が固定できる枠に経緯を表2記載の長さ(%)伸張して、50cm×50cmの織物を固定し、第1チャンバー及び第2チャンバー有する加工機の温度を調整し、表2の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。加工後の密度、カバーファクター、通気度及びカバー率は、表2の通りである。コート剤量は、実施例1と同様に求めた。なお、経糸方向は張力を与えず固定のみを行い、両緯糸方向については把持せずに装置を使用した。カバー率を測定したSEM断面より樹脂が、織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在するが、織物のフィラメントが細密充填していないため、フィラメント間での隙間が観測された。このため、通気度は高く測定された。
【0046】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のエアバッグ用織物は、自動車安全部品の一つとして急速に着装率が向上しているエアバッグに好適に使用できるものである。100kPaの高い差圧化においても低い通気度が得られ、薄く収納性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】カバー率を算出するためのエアバッグ用織物の断面SEM写真の模式図である。
【図2】カバー率算出するための、たて糸の切断面の模式図である。
【図3】カバー率算出するための、よこ糸の切断面の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーファクターの値が2000〜2500であるエアバッグ用織物であって、織物の表面および裏面に位置する単糸繊維間に樹脂が存在し、織物に付与された樹脂量が5〜25g/mであり、20 kPa時の通気度が5×10−4〜5×10−2L/cm2/minであり、次式(1)及び(2)で示されるクリンプ率の変動指数α、βの積が−250以下であることを特徴とするエアバッグ用織物。
(但し、樹脂加工直前の基布のクリンプ率をタテ糸方向A0、ヨコ糸方向B0とし、エアバッグ用織物のクリンプ率をタテ糸方向A、ヨコ糸方向Bとした場合、クリンプ率の変動指数α及びβは、次式(1)及び(2)で表される。)
α = {(A-A0)/A0} × 100・・・・・・・・・(1)
β = {(B-B0)/B0} × 100・・・・・・・・・(2)
【請求項2】
織物を構成する糸条がポリアミド繊維糸条であり、前記糸条の単糸繊維が6dtex以下であり、織物の厚みが0.32mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ用織物。
【請求項3】
20kPa時の通気度が1×10−3〜3×10−2L/cm2/minの範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアバッグ用織物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−163512(P2008−163512A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354159(P2006−354159)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】