説明

エアバッグ装置

【課題】ベントホールを開口可能に閉塞するパッチを、良好な気密性を確保して簡便に配設でき、さらに、エアバッグの排気タイミングを安定させることができるエアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】エアバッグ装置M1のエアバッグ20は、ベントホール31を塞ぐパッチ35を配設させている。エアバッグは、乗員Dの受け止め時、車体側部材7の反力付与側支持部9から、乗員の進入方向と略反対方向の反力を受けて、乗員側に部分的に凹む反力受け側接触部29、を備える。パッチ35は、エアバッグの膨張完了時に、ベントホールの閉塞状態を維持できる配置位置とするとともに、エアバッグの乗員受け止め時における反力付与側支持部に、押圧されない配置位置で、かつ、乗員受け止め時の反力受け側接触部29の凹む際に連動して移動するベントホールの周縁部位33から、離隔可能な配置位置に、配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグにより、乗員を受け止めて保護するエアバッグ装置に関し、特に、エアバッグが、内圧上昇時に内部の膨張用ガスを排気可能なベントホールを有して構成されて、運転席用や助手席用等に好適なエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエアバッグ装置では、エアバッグの外周壁が、乗員を受け止める拘束側壁部と、乗員の受け止め時に車体側部材に支持される車体側壁部と、を備えて構成されるとともに、膨張用ガスを流入させて、拘束側壁部と車体側壁部とを離隔させるように膨張する構成としていた。そして、エアバッグとしては、車体側壁部にベントホールを配置させ、このベントホールの外周側を覆うようにパッチを配置させて、膨張完了後の内圧上昇時に、破損を防止できるように、ベントホールから余剰の膨張用ガスを排気させるものがあった(例えば、特許文献1参照)。このエアバッグでは、パッチが、外形形状を略半月状としており、直線状の縁部を、ステアリングホイールのリング部の中心側(車体側壁部の中央側)に向けて、ベントホールの外周側を覆うように配置されるとともに、円弧状の縁部をベントホールの周縁における車体側壁部に結合させ、直線状の縁部を車体側壁部に対して非結合としていた。そして、このパッチは、内圧上昇時に、車体側壁部から浮き上がらせるように膨張用ガスに押させて、直線状の縁部側と、車体側壁部と、の間の隙間から膨張用ガスを排気させる構成としていた。
【0003】
さらに、パッチには、ベントホールの閉塞時の気密性を確保できるように、膜長(面積)を縮めるようなタック部を設けており、そして、タック部を縫着させている縫合糸を内圧上昇時に破断させて、パッチを車体側壁部から浮き上がらせることにより、ベントホールを開口させていた(特許文献1の図10〜13参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−16228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のエアバッグ装置では、ベントホールの閉塞時における気密状態を確保するため、パッチにタック部を入れて、立体的に膨らむこととなるエアバッグのベントホール周縁に、パッチを結合しており、このような構成では、パッチをエアバッグのベントホールの周縁に、縫合等により結合させ、また、パッチには、予め、タック部を縫合して形成することから、パッチの配設に手間がかかってしまう。
【0006】
さらに、タック部の解消が、縫合糸を破断させて行うことから、縫合糸の破断にバラツキが発生すれば、エアバッグ毎のベントホールからの排気タイミングを安定させることができず、従来のエアバッグ装置では、排気タイミングをより安定させる点にも、課題があった。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、ベントホールを開口可能に閉塞するパッチを、良好な気密性を確保して、簡便に配設でき、さらに、エアバッグの排気タイミングを安定させることができるエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエアバッグ装置は、エアバッグの外周壁が、乗員を受け止める拘束側壁部と、乗員の受け止め時に車体側部材に支持される車体側壁部と、を備えて構成されるとともに、膨張用ガスを流入させて、拘束側壁部と車体側壁部とを離隔させるように膨張する構成として、
エアバッグの内圧上昇時に膨張用ガスを排気可能なベントホールが、開口可能にパッチに閉塞されて、車体側壁部に配設されているエアバッグ装置であって、
エアバッグが、拘束側壁部と車体側壁部との境界部位付近に、膨張完了時に円錐状の先細り状とした突出部を備えるとともに、
突出部が、エアバッグの膨張完了後における乗員受け止め時、車体側部材の反力付与側支持部から、乗員の進入方向と略反対方向の反力を受けて、乗員側に部分的に凹む反力受け側接触部、を備え、
反力受け側接触部の近傍における車体側壁部に、ベントホールとパッチとが配設され、
ベントホールが、エアバッグの乗員受け止め時における反力付与側支持部に、押圧されない配置位置として、突出部の軸心に沿って、反力受け側接触部と並設され、
パッチが、
反力受け側接触部の側の縁を車体側壁部から離隔可能な非結合状態とし、かつ、少なくとも、円錐状に突出する突出部の軸心を中心とした周方向に沿う方向で対向する両縁を、エアバッグの外周壁に結合させるとともに、パッチとベントホールの周縁とを平らに展開させて重ねた状態として、結合させて、
エアバッグの膨張完了後における乗員の受け止め前に、ベントホールの閉塞状態を維持できる配置位置とするとともに、
少なくともベントホールを覆う部位から反力受け側接触部の側の縁までの領域を、
エアバッグの乗員受け止め時における反力付与側支持部に、押圧されない配置位置で、かつ、乗員受け止め時の反力受け側接触部の凹む際に連動して移動するベントホールの周縁から、離隔可能な配置位置に、配置させて、
配設されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るエアバッグ装置では、膨張を完了させたエアバッグが乗員を受け止めれば、反力受け側接触部が、車体側部材の反力付与側支持部に支持され、乗員の進入方向と略反対方向への反力を受けて凹み、その近傍のパッチに対して、相対的に、乗員側に移動する状態となる。すなわち、この時、反力受け側接触部が、パッチに対して、相対的に、エアバッグに進入してきた乗員側に移動し、それに伴って、ベントホールの周縁も、パッチに対して、相対的に乗員側に移動し、その結果、ベントホールとパッチとの間に隙間が発生してベントホールが開口し、エアバッグ内の膨張用ガスが、ベントホールから排気されることとなる。
【0010】
そしてこの時、パッチ自体は、ベントホールを覆う部位から反力受け側接触部の側の縁までの領域を、車体側部材の反力付与側支持部に押圧させない配置位置に、配置させていることから、安定して、ベントホールとの間に、隙間を発生させることができる。
【0011】
また、パッチは、エアバッグの円錐状に突出する突出部の軸心を中心として、その周方向に沿う方向で対向する両縁を、エアバッグの外周壁に結合させており、エアバッグの膨張完了後では、外膨らみの状態を維持しており、ベントホールの周縁が乗員側に移動しても、ベントホールを塞ぐように、部分的に凹まない。その結果、エアバッグの乗員受け止め時に、ベントホールの周縁が乗員側に移動しても、パッチは、安定して、ベントホールとの間に、隙間を発生させることができる。
【0012】
さらに、パッチは、ベントホールの周縁とともに、平らに展開させて、そのベントホールの周縁に重ねて、少なくとも両縁側を縫合等して、エアバッグの外周壁に結合させればよく、タック部を設けること無く、単に、平面的な縫合等の結合作業で、配設でき、手間をかけずに、簡便に配設することができる。
【0013】
そして勿論、ベントホールを閉塞するパッチは、エアバッグの円錐状に突出する突出部の軸心を中心として、その周方向で対向する両縁を、エアバッグの外周壁に結合させ、さらに、反力受け側接触部から離れた縁側を、適宜、エアバッグの外周壁に結合させる構成であって、エアバッグの膨張完了時に、突出部が膨張すれば、パッチは、突出部の軸心を中心とした周方向に沿って引っ張られて、外膨らみの状態となりつつ、ベントホールの周縁を押圧し易くなる。その結果、エアバッグの膨張完了後における乗員受け止め前では、パッチが、安定して、気密性を確保して、ベントホールを閉塞できる。
【0014】
さらに、パッチを配設させる突出部が、先細り状の円錐状に膨張することから、突出部における先端側より拡径している元部側は、剛性を確保できて、反力受け側接触部が車体側部材の反力付与側支持部から反力を受けても、円錐状の軸心を大きく傾けるような変形をしない。その結果、エアバッグの突出部は、パッチに対して、ベントホールの部位を含めた反力受け側接触部の部位を、部分的かつ相対的に乗員側に移動させることができて、安定して、ベントホールを開口できる。
【0015】
さらにまた、このベントホールの開口は、従来のようなタック部の縫合糸の破断のタイミングではなく、エアバッグの乗員受け止め時において、パッチに対する相対的なベントホールの周縁の乗員側への移動量に対応して、開口するものであり、換言すれば、乗員のエアバッグに対する進入ストロークに対応して、ベントホールが開口することから、エアバッグの排気タイミングが、乗員のエアバッグに対する進入ストロークに対応して、安定することとなる。
【0016】
したがって、本発明に係るエアバッグ装置では、ベントホールを開口可能に閉塞するパッチを、良好な気密性を確保して、簡便に配設でき、かつ、エアバッグの排気タイミングを安定させることができる。
【0017】
そして、本発明に係るエアバッグ装置では、パッチは、エアバッグの外周壁への結合部位で囲まれた領域の寸法として、突出部の軸心に沿う長さ寸法より、突出部の軸心を中心とした周方向に沿う長さ寸法を、長くして、エアバッグの外周壁に結合させることが望ましい。
【0018】
このような構成では、パッチが、長手方向を、突出部の軸心を中心とした周方向に一致させることとなって、突出部の膨張時、突出部の周方向に沿う伸びを発生させて、ベントホールの周縁に対し、より密着でき、エアバッグの膨張完了時におけるベントホールの閉塞時の気密性を、一層、安定して確保できる。
【0019】
この場合、ベントホールは、突出部の軸心を中心とした周方向に沿って、断続的に、複数配設することが望ましい。
【0020】
このような構成では、ベントホールの数を少なくして、ベントホールの開口寸法を大きくする場合に比べて、ベントホールの配置領域における突出部の軸心に沿った長さ寸法を小さくでき、かつ、それぞれのベントホール自体の突出部の軸心に沿う開口幅を、小さくできる。そのため、ベントホールを閉塞するパッチは、突出部の軸心に沿う長さ寸法より、突出部の軸心を中心とした周方向に沿う長さ寸法を、容易に長くでき、その結果、気密性よく、各ベントホールを閉塞することができる。また、エアバッグは、ベントホールを複数備えて、ベントホールの全体の開口面積を低減させず、かつ、パッチがベントホールの周縁から離隔する際、複数のベントホールを同時に開口できることから、膨張用ガスの排気が良好となって、内圧上昇の抑制を円滑に行うことができる。
【0021】
また、本発明に係るエアバッグ装置のエアバッグでは、ベントホールやパッチを設けるような円錐状の突出部を、部分的に、一つ有していてもよいし、複数備えていてもよい。複数の突出部を備えるエアバッグとしては、膨張完了時、頂部側に拘束側壁部を配置し、底壁部に車体側壁部を配置させた略四角錐形状として、構成されて、略四角錐形状の底壁部側の四隅の少なくとも一つを、本発明のエアバッグの突出部として、反力受け側接触部、ベントホール、及び、パッチ、を配設してもよい。
【0022】
ちなみに、このような略四角錐形状のエアバッグでは、底壁部側を車体側壁部とし、先細りの筒状の頂部側を拘束側壁部とする構成となって、車体側壁部の側が、拘束側壁部の側より、膨張完了時、平面度を確保し易くなって、膨張完了姿勢を迅速に安定させることが可能となり、換言すれば、膨張完了後の静止状態を迅速に確保できて(リバウンドを抑制できて)、安定した姿勢で、素早く乗員を受け止め可能となる。
【0023】
そして、本発明に係るエアバッグ装置では、エアバッグの反力受け側接触部を支持する車体側部材を、ステアリングホイールの操舵時に把持するリング部とし、エアバッグを、ステアリングホイールの中央のボス部に収納させて、運転席用エアバッグ装置として構成してもよい。
【0024】
本発明に係るエアバッグ装置が運転席用エアバッグ装置であれば、エアバッグの突出部を部分的に支持する車体側部材としての反力付与側支持部を、ステアリングホイールの円環状のリング部とすることができて、円滑に、リング部が、エアバッグの突出部における反力受け側接触部に対して、部分的に接触できて、その反力受け側接触部に隣接するリング部の中心側に、若しくは、外周側に、容易に、パッチやベントホールを配設できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態のエアバッグ装置が搭載されるステアリングホイールの平面図である。
【図2】第1実施形態のエアバッグ装置の縦断面図であり、図1のII-II部位に対応する。
【図3】第1実施形態のエアバッグ装置のエアバッグを単体で膨張させた状態を示す概略斜視図であり、拘束側壁部の側から見た斜視図である。
【図4】第1実施形態のエアバッグ装置のエアバッグを単体で膨張させた状態を示す概略斜視図であり、車体側壁部の側から見た斜視図である。
【図5】第1実施形態のエアバッグを構成するエアバッグ用基布の展開図である。
【図6】第1実施形態のエアバッグ装置の作動時を説明する図であり、エアバッグの膨張完了後における乗員の受け止め前の状態を示す。
【図7】第1実施形態のエアバッグ装置の作動時を説明する図であり、エアバッグの膨張完了後における乗員の受け止め時の状態を示す。
【図8】第2実施形態のエアバッグ装置のエアバッグを単体で膨張させた状態を示す概略斜視図であり、車体側壁部の側から見た斜視図である。
【図9】第2実施形態のエアバッグ装置の作動時を順に説明する図である。
【図10】第3実施形態のエアバッグ装置の作動時を順に説明する図である。
【図11】さらに他の変形例のエアバッグを単体で膨張させた状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態のエアバッグ装置M1は、図1,2に示すように、ステアリングホイールWに搭載される運転席用のものであり、ステアリングホイールWは、ステアリングホイール本体1と、ステアリングホイール本体1の中央のボス部Bの上部に配置されるエアバッグ装置M1と、を備えて構成されている。ステアリングホイール本体1は、操舵時に把持する円環状のリング部Rと、リング部Rの中央に配置されてステアリングシャフトSSに締結されるボス部Bと、ボス部Bとリング部Rとを連結する4本のスポーク部Sと、を備えて構成されている。
【0027】
なお、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、特に断らない限り、上下方向は、ステアリングシャフトSSの軸方向に沿った上下方向が対応し、前後方向は、車両の直進操舵時のステアリングシャフトSSの軸方向と直交した前後方向が対応し、左右方向は、車両の直進操舵時のステアリングシャフトSSの軸方向と直交した左右方向が対応するものである。
【0028】
ステアリングホイール本体1は、図2に示すように、リング部R、ボス部B、スポーク部Sの各部を連結するように配置されて、アルミニウム合金等の金属製の芯金2を備えて構成されている。芯金2のリング部Rの部位と各スポーク部Sのリング部R側の部位とには、合成樹脂製の被覆層4が被覆されている。芯金2のボス部Bの部位には、ステアリングシャフトSSを挿入させてナットN止めするための鋼製のボス3が配設されている。また、ステアリングホイール本体1の下部には、ボス部Bの下方を覆う合成樹脂製のロアカバー5が配設されている。
【0029】
エアバッグ装置M1は、図2に示すように、折り畳まれて収納されるエアバッグ20、エアバッグ20に膨張用ガスを供給するインフレーター13、折り畳んだエアバッグ20の上方を覆うエアバッグカバー17、エアバッグ20とインフレーター13とを収納保持するとともにエアバッグカバー17を保持するケース15、及び、インフレーター13とともにエアバッグ20をケース15に取り付けるためのリテーナ11、を備えて構成されている。
【0030】
リテーナ11は、エアバッグ20の流入用開口25の周縁の取付座26を押えて、ケース15に取り付けられる略四角環状としている。また、エアバッグカバー17は、合成樹脂製として、収納したエアバッグ20の上方から側方を覆うように構成され、膨張するエアバッグ20に押されて前後両側に開く2枚の扉部17aを備えている。
【0031】
エアバッグ20は、図3,4に示すように、単体での膨張完了形状を略四角錐形状として、外周壁21と、その内周面に配置される補強布50と、を備えて構成されている。そして、外周壁21が、長方形状(詳しくは、略正方形状)の底壁部44と、底壁部44の外周縁から上方の頂部47側にかけて狭まるように延びる周壁部46と、を備えて構成されている。周壁部46は、頂部47から底壁部44側にかけて、略三角板形状の四つの側面壁48を備えて構成されることととなる。底壁部44の中央には、エアバッグ20内に膨張用ガスGを流入させるために、インフレーター13を挿入させる円形の開口の流入用開口25が、形成されている。流入用開口25の周縁は、既述したように、ケース15に取り付けられる取付座26としている。
【0032】
また、このエアバッグ20は、周壁部46側を、乗員(運転者)Dを受け止める拘束側壁部22とし、底壁部44側を、運転者Dの受け止め時に車体側部材7に支持される車体側壁部24として構成されて、膨張用ガスGの流入時、拘束側壁部22と車体側壁部24とが離隔するように膨張することとなる(図6参照)。そして、第1実施形態の場合、エアバッグ装置M1がステアリングホイールWに搭載されていることから、車体側部材7は、ステアリングホイール本体1となり、さらに、エアバッグ20を支持する車体側部材7の支持部8は、扉部17aの開いた状態でのステアリングホイール本体1におけるボス部B、スポーク部S、及び、リング部R、の上面側の部位となる。
【0033】
なお、エアバッグ20は、拘束側壁部22の中央の頂部47付近を、運転者Dをソフトに受け止め可能に、丸い球面状としている。
【0034】
また、エアバッグ20を形成するエアバッグ用基布52は、図5に示すように、ポリアミドやポリエステル等の合成繊維の布帛からなるとともに、適宜、エアバッグ20の内周面側にガス漏れ防止用のコーティング層が形成されている。このエアバッグ用基布52は、底壁部44を形成する略正方形の底壁構成部53と、底壁構成部53から放射状に延びて、周壁部46の各側面壁48を形成する側面壁構成部54と、から構成されている。エアバッグ20は、エアバッグ用基布52を左右方向の中央における前後方向の中心線CVに沿う折目を付けて、二つ折りし、重ねた前縁側の左右の縁55,55相互と、重ねた後縁側の左右の縁56,56相互と、をそれぞれ縫合し、ついで、折り重ねた部位を広げつつ、前後方向の中央における左右方向の中心線CLに沿う折目を付けて、二つ折りし、重ねた左縁側の前後の縁57,57相互と、右縁側の前後の縁58,58相互と、をそれぞれ縫合し、縫代が外表面側に表れないように、流入用開口25を利用して、表裏を反転させるように裏返せば、製造することができる。
【0035】
ちなみに、エアバッグ用基布52には、縫合前に、予め、流入用開口25、ベントホール31、パッチ35、及び、補強布50を設けておく。そして、縫合前の折目を付けて折り重ねる際には、エアバッグ20の外表面側となる面相互を接触させつつ、折り重ねることとなる。なお、パッチ35や補強布50は、エアバッグ用基布52と同様に、可撓性を有したポリアミドやポリエステル等の合成繊維の布帛から形成されている。
【0036】
このエアバッグ20では、膨張完了形状を略四角錐形状としており、車体側壁部24側の底壁部44と拘束側壁部22側の周壁部46との境界部位には、車体側壁部24の四隅に、円錐状の突出部42,43,43,43が配設されることとなる。そして、前方側に突出する突出部42の車体側壁部24の側の部位に、ベントホール31とパッチ35とが配設されている。
【0037】
第1実施形態の場合、ベントホール31の配置エリアは、車体側壁部24におけるリング部Rの上面PRと接触する円環状の接触部28より、車体側壁部24の中心O1側(流入用開口25側)となる後方側に、配設されている(図1,4参照)。特に、接触部28のうち、リング部Rの前端部RFTの上面PRF(実施形態では、反力付与側支持部9となる)と接触する部位は、エアバッグ20の膨張完了後の運転者(乗員)Dの受け止め時、運転者Dの進入方向(実施形態では下方向であり、車両を基準とすれば車両の直進方向に沿った前下方)と略反対方向(実施形態では上方、車両を基準とすれば後上方)の反力を受けて、運転者D側に部分的に凹んで、反力受け側接触部29となる。
【0038】
なお、このエアバッグ20では、膨張完了時、車体側壁部24が、リング部Rの上面PR側の略全域の上方を覆い、かつ、四隅をリング部Rから突出させるように、構成されている。
【0039】
そして、第1実施形態の場合、反力受け側接触部29は、エアバッグ20の膨張完了後の運転者Dの受け止め前の状態では、図2,6に示すように、リング部Rの前端部RFTの上面PRFである反力付与側支持部9に対し、殆ど、接触せず、図7に示すように、エアバッグ20の拘束側壁部22が下向きで進入してくる運転者Dを受け止めた際、強く接触して、相対的に、運転者D側に接近するように凹む部位としている。すなわち、エアバッグ20の拘束側壁部22が下向きで進入してくる運転者Dを受け止めた際、反力受け側接触部29の周囲が、運転者Dの下方側への押圧に伴って、下方側に押し出され、反力受け側接触部29が、リング部Rの反力付与側支持部9により下方移動を規制されることから、突出部42の車体側壁部24の領域において、相対的に、反力受け側接触部29が、進入する運転者D側、すなわち、運転者Dのエアバッグ20への進入方向と略反対方向(上方)に、移動することとなる。
【0040】
なお、第1実施形態では、図1に示すように、ステアリングホイールWにおけるリング部Rの前端部RFTの内側での、メータ類の良好な視認性を確保できるように、平面視の状態で、エアバッグ装置M1を取り付けるボス部Bの中心(すなわち、流入用開口25の中心O1)が、ステアリングホイール本体1の中心(すなわち、リング部Rの中心O2)より、後方側に、配置されている。そのため、反力受け側接触部29は、接触部28における後端側のリング部Rとの接触する部位28bに比べて、エアバッグ20の膨張完了後の運転者Dの受け止め前の状態では、反力付与側支持部9を含めたリング部Rの上面PRに対し、接近せず、上方に浮き上がった状態としている。そして、エアバッグ20の拘束側壁部22が下向きで進入してくる運転者Dを受け止めた際、図7に示すように、反力受け側接触部29は、円滑に、反力付与側支持部9と接触し、さらに、運転者D側に接近するように凹むこととなる。
【0041】
そして、第1実施形態では、反力受け側接触部29の近傍における車体側壁部24に、ベントホール31とパッチ35とが配設されている。
【0042】
ベントホール31は、エアバッグ20の乗員受け止め時における反力付与側支持部9に、押圧されない配置位置として、突出部42の軸心XPに沿って、反力受け側接触部29と並設されている。第1実施形態では、突出部42の軸心XPは、前後方向(詳しくは、図6に示すように、頂部47と流入用開口25との間の中央XO付近から突出部42の先端42aを結ぶ前後方向)に沿って配置されており、ベントホール31は、反力受け側接触部29の後方側に配置されている。
【0043】
換言すれば、第1実施形態では、反力付与側支持部9が、突出部42の先端42aと、ベントホール31やパッチ35の配置位置と、の間に配置され、突出部42の先端42aから元部42b側に向かう方向に沿って、先端42a、反力付与側支持部9(反力受け側接触部29)、そして、ベントホール31やパッチ35の配置位置、が、順に配設されている。
【0044】
また、実施形態の場合、ベントホール31は、円形状の開口として、突出部42の軸心XPを中心とした周方向に沿って、断続的に、2個配設されている。換言すれば、ベントホール31,31は、底壁部44の前端側の隅44aと流入用開口25の中心O1とを結ぶ前後方向の中心線CVを間にして、左右に線対称的に配置されている(図5参照)。
【0045】
そして、パッチ35が、図3〜5に示すように、ベントホール31,31を外表面側から覆うように、配設されている。詳しく述べれば、反力受け側接触部29の側の縁(前縁)36を車体側壁部24から離隔可能な非結合状態とし、かつ、少なくとも、円錐状に突出する突出部42の軸心XPを中心とした周方向に沿う方向で対向する両縁(左縁38と右縁39)を、車体側壁部24に結合させるとともに、パッチ35とベントホール31,31の周縁部位33とを平らに展開させて重ねた状態として、結合させている。
【0046】
さらに、第1実施形態では、パッチ35は、反力受け側接触部29から離れた縁(後縁)37も、車体側壁部24に結合させている。そして、これらの後縁37や左右の縁38,39の結合部34は、縫合により、車体側壁部24に結合させている。
【0047】
また、パッチ35は、車体側壁部24への結合部位で囲まれた領域をカバー部40として、カバー部40を、エアバッグ20の膨張完了後における運転者Dの受け止め前に、ベントホール31,31の閉塞状態を維持できる配置位置として、配設されている。なお、このカバー部40は、第1実施形態の場合、前縁36が車体側壁部24に結合されていないことから、ベントホール31,31を覆う部位から反力受け側接触部29の側の前縁36までの領域、と同義となる。
【0048】
さらに、このカバー部40は、エアバッグ20の運転者Dの受け止め時において、反力付与側支持部9に押圧されない配置位置で、かつ、運転者Dの受け止め時の反力受け側接触部29の凹む際に連動して移動するベントホール31の周縁部位33から、離隔可能な配置位置に、配置されている。
【0049】
具体的には、カバー部40は、図1の二点鎖線に示すように、上方から見て、リング部Rの前端部RFTの後方側に配設されて、前縁36や左右の縁38,39が、リング部Rの内周側より後方に配置され、さらに、ベントホール31,31が、カバー部40により、覆われるようにして、これらのパッチ35やベントホール31,31が、突出部42の車体側壁部24に配設されている。
【0050】
さらに、パッチ35は、車体側壁部24への結合部位で囲まれた領域(カバー部40)の寸法として、突出部42の軸心XPに沿う長さ寸法LVより、突出部42の軸心XPを中心とした周方向に沿う長さ寸法LHを、長くして、車体側壁部24に結合されている(図5参照)。すなわち、パッチ35のカバー部40は、その長手方向を、突出部42の軸心XPを中心とした周方向に沿うように、配設されている。
【0051】
さらにまた、反力付与側支持部9について述べれば、実施形態では、リング部Rの前端部RFTが反力付与側支持部9を構成しており、この前端部RFTは、車体側壁部24の反力受け側接触部29に対し、突出部42の軸心XPと略直交する方向に沿って(車体側壁部24自体から見れば前後方向の軸心XPと略直交する左右方向に沿って)、当接している。その結果、実施形態では、円環状のリング部Rの一部としての前端部RFTからなる反力付与側支持部9が、車体側壁部24に対し、ベントホール31やパッチ35の配置エリアを除いた部分的な領域だけに、すなわち、車体側壁部24の一部である反力受け側接触部29だけに、当接することを可能にしている。
【0052】
第1実施形態の運転席用のエアバッグ装置M1では、作動時、図2,6に示すように、インフレーター13から膨張用ガスGが吐出されて、膨張用ガスGを流入させたエアバッグ20が膨張すれば、エアバッグカバー17の扉部17a,17aを前後両側に押し開いて、エアバッグ20が、収納部位としてのケース15から突出して、リング部Rの上面PR側を覆うように、膨張を完了させる。
【0053】
その後、図7に示すように、膨張を完了させたエアバッグ20が下方移動する運転者Dを受け止めれば、反力受け側接触部29が、車体側部材7の反力付与側支持部9に支持され、運転者Dの進入方向と略反対方向の上方への反力を受けて凹み、その近傍のパッチ35に対して、相対的に、運転者D側に移動する状態となる。すなわち、この時、反力受け側接触部29が、パッチ35に対して、相対的に、エアバッグ20に進入してきた運転者D側に移動し、それに伴って、ベントホール31,31の周縁部位33も、パッチ35に対して、相対的に運転者D側に移動し、その結果、ベントホール31,31とパッチ35との間に隙間Hが発生してベントホール31,31が開口し、エアバッグ20内の膨張用ガスGが、ベントホール31,31から排気されることとなる。
【0054】
そしてこの時、パッチ35自体は、ベントホール31,31を覆う部位から反力受け側接触部29の側の前縁36までの領域であるカバー部40を、車体側部材7の反力付与側支持部9に押圧させない配置位置に、配置させていることから、安定して、ベントホール31,31との間に、隙間Hを発生させることができる。
【0055】
また、パッチ35は、エアバッグ20の円錐状に突出する突出部42の軸心XPを中心として、その周方向に沿う方向で対向する両縁38,39を、エアバッグ20の車体側壁部24に結合させており、エアバッグ20の膨張完了後では、外膨らみの状態を維持しており、ベントホール31,31の周縁部位33が運転者D側に移動しても、ベントホール31,31を塞ぐように、部分的に凹まない。その結果、エアバッグ20の運転者Dの受け止め時に、ベントホール31,31の周縁部位33が運転者D側に移動しても、パッチ35は、安定して、ベントホール31,31との間に、隙間Hを発生させることができる。
【0056】
さらに、パッチ35は、ベントホール31,31の周縁部位33とともに、平らに展開させて、そのベントホール31,31の周縁部位33に重ねて、左右の縁38,39側と後縁37側とを縫合して、車体側壁部24に結合させればよく、タック部を設けること無く、単に、平らに重ねて縫合する平面的な結合作業により、配設でき、手間をかけずに、工業用ミシン等を利用して、簡便に配設することができる。
【0057】
そして勿論、ベントホール31,31を閉塞するパッチ35は、エアバッグ20の円錐状に突出する突出部42の軸心XPを中心として、その周方向で対向する左右の縁38,39を、エアバッグ20の車体側壁部24に結合させ、さらに、反力受け側接触部29から離れた後縁37側を、適宜、車体側壁部24に結合させる構成であって、エアバッグ20の膨張完了時に、突出部42が膨張すれば、パッチ35は、突出部42の軸心XPを中心とした周方向に沿って引っ張られて、外膨らみの状態となりつつ、ベントホール31,31の周縁部位33を押圧し易くなる。その結果、エアバッグ20の膨張完了後における運転者Dの受け止め前では、パッチ35が、安定して、気密性を確保して、ベントホール31,31を閉塞できる。
【0058】
さらに、パッチ35を配設させる突出部42が、先細り状の円錐状に膨張することから、突出部42における先端42a側より拡径している元部42b側は、剛性を確保できて、反力受け側接触部29が車体側部材7の反力付与側支持部9から反力を受けても、円錐状の軸心XPを大きく傾けるような変形をしない。その結果、エアバッグ20の突出部42は、パッチ35に対して、ベントホール31,31の部位を含めた反力受け側接触部29の部位28aを、部分的かつ相対的に運転者D側に移動させることができて、安定して、ベントホール31,31を開口できる。
【0059】
さらにまた、このベントホール31,31の開口は、従来のようなタック部の縫合糸の破断のタイミングではなく、エアバッグ20の運転者Dの受け止め時において、パッチ35に対する相対的なベントホール31,31の周縁部位33の運転者D側への移動量に対応して、開口するものであり、換言すれば、運転者Dのエアバッグ20に対する進入ストロークに対応して、ベントホール31,31が開口することから、エアバッグ20の排気タイミングが、運転者Dのエアバッグ20に対する進入ストロークに対応して、安定することとなる。
【0060】
したがって、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、ベントホール31,31を開口可能に閉塞するパッチ35を、良好な気密性を確保して、簡便に配設でき、かつ、エアバッグ20の排気タイミングを安定させることができる。
【0061】
そして、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、パッチ35は、車体側壁部24への結合部位で囲まれた領域であるカバー部40の寸法として、突出部42の軸心XPに沿う長さ寸法LVより、突出部42の軸心XPを中心とした周方向に沿う長さ寸法LHを、長くして、車体側壁部24に結合させている。
【0062】
このような構成では、パッチ35が、長手方向を、突出部42の軸心XPを中心とした周方向に一致させることとなって、突出部42の膨張時、突出部42の周方向に沿う伸びを発生させて、ベントホール31,31の周縁部位33に対し、より密着でき、エアバッグ20の膨張完了時におけるベントホール31,31の閉塞時の気密性を、一層、安定して確保できる。
【0063】
さらに、第1実施形態では、ベントホール31が、突出部42の軸心XPを中心とした周方向に沿って、断続的に、複数(実施形態では2個)配設されている。
【0064】
このような構成では、ベントホール31の数を少なくして、ベントホール31の開口寸法を大きくする場合に比べて、ベントホール31の配置領域における突出部42の軸心XPに沿った長さ寸法、換言すれば、ベントホール31を閉塞するカバー部40の長さ寸法LV、を小さくでき、かつ、それぞれのベントホール31自体の突出部42の軸心XPに沿う開口幅OWを、小さくできる(図5参照)。そのため、ベントホール31,31を閉塞するパッチ35は、突出部42の軸心XPに沿う長さ寸法LVより、突出部42の軸心XPを中心とした周方向に沿う長さ寸法LHを、容易に長くでき、その結果、気密性よく、各ベントホール31,31を閉塞することができる。また、エアバッグ20は、ベントホール31を複数(実施形態では2個)備えて、ベントホール31,31の全体の開口面積を低減させない。また、複数のベントホール31,31がそれぞれ反力受け側接触部29からの軸心XPに沿う前後方向の距離を略等しく配設され、かつ、パッチ35が、軸心XPの周方向、換言すれば、軸心XPと略直交する方向、に沿って、反力受け側接触部29の側の縁36を配置させていることから、パッチ35のカバー部40がベントホール31の周縁部位33から離隔する際、複数のベントホール31,31が同時に開口される。その結果、実施形態では、膨張用ガスGの排気が良好となって、内圧上昇の抑制を円滑に行うことができる。
【0065】
また、本発明に係るエアバッグ装置のエアバッグでは、ベントホールやパッチを設けるような円錐状の突出部を、部分的に、一つ有していてもよいし、複数備えていてもよい。第1実施形態のエアバッグ20では、膨張完了時、頂部47側に拘束側壁部22を配置し、底壁部44に車体側壁部24を配置させた略四角錐形状とし、構成されて、略四角錐形状の底壁部44側の四隅に円錐状の突出部42,43,43,43を設けている。そして、それらの内の一つの前側の突出部42に、反力受け側接触部29、ベントホール31、及び、パッチ35、を配設させている。
【0066】
この第1実施形態の略四角錐形状のエアバッグ20では、底壁部44側を車体側壁部24とし、先細りの筒状の頂部47側を拘束側壁部22とする構成となって、車体側壁部24の側が、拘束側壁部22の側より、膨張完了時、平面度を確保し易くしている。そのため、エアバッグ20は、膨張完了直前から膨張完了直後の状態では、底壁部44側の接触部28が、リング部Rからなる支持部8に対し、上方に大きく離れて、その後、その反動で接近して強く当り、さらに、その接触時の反動で、離れるようなリバンウンドの挙動を行おうとしても、平面状の底壁部44側の車体側壁部24が、その平面状態を維持しようとし、かつ、お椀状に上方へ膨らんだ周壁部46側の拘束側壁部22が、車体側壁部24の外周縁を下方に押し下げる挙動をなして(特に、突出部42が円錐状に膨張することを阻害しない範囲で、隣接する側面壁48相互の稜線部位が底壁部44の四隅を押し下げる挙動をなして)、車体側壁部24の平面状態の維持を補助でき、結局、リバンウンドを迅速に抑制できる。
【0067】
そのため、第1実施形態のエアバッグ20では、膨張完了時、膨張完了姿勢を迅速に安定させることが可能となり、換言すれば、膨張完了後の静止状態を迅速に確保できて(リバウンドを抑制できて)、安定した姿勢で、素早く運転者Dを受け止め可能となる。
【0068】
そして、第1実施形態のエアバッグ装置M1では、エアバッグ20の反力受け側接触部29を支持する車体側部材7を、ステアリングホイールWの操舵時に把持するリング部Rとし、エアバッグ20を、ステアリングホイールWの中央のボス部Bに収納させて、運転席用のエアバッグ装置M1として構成している。
【0069】
このように、エアバッグ装置M1が運転席用としていれば、エアバッグ20の突出部42を部分的に支持する車体側部材7の側の反力付与側支持部9を、ステアリングホイールWの円環状のリング部Rの一部(前端部RFT)とすることができて、円滑に、リング部Rの反力付与側支持部9が、パッチ35のカバー部40やベントホール31,31を押圧せずに、エアバッグ20の突出部42における反力受け側接触部29に対し、突出部42の軸心XPと略直交方向として、部分的に接触でき、逆に、その反力受け側接触部29に隣接するリング部Rの中心O2側に、容易に、パッチ35やベントホール31,31を配設できる。
【0070】
なお、第1実施形態では、パッチ35やベントホール31,31を、リング部Rの反力付与側支持部9に支持される反力受け側接触部29から、リング部Rの後方側となるリング部Rの中心O2側に、配置させた場合を示したが、図8,9に示す第2実施形態のエアバッグ装置M2のエアバッグ20Aのように、構成してもよい。
【0071】
このエアバッグ20Aでは、パッチ35Aやベントホール31A,31Aを、リング部Rの反力付与側支持部9に支持される反力受け側接触部29から、リング部Rの前方側となるリング部Rの外周側に、配置させている。
【0072】
このエアバッグ20Aは、第1実施形態のエアバッグ20と略相似形とし、エアバッグ20より大容積としているだけである。そのため、このエアバッグ20Aでも、第1実施形態と同様に、拘束側壁部22と車体側壁部24との境界部位付近の前側に、膨張完了時に円錐状の先細り状とした突出部42を備え、突出部42が、エアバッグ20Aの膨張完了後における運転者Dの受け止め時、車体側部材7の反力付与側支持部9から、すなわち、リング部Rの前端部RFTの上面PRFから、運転者Dの進入方向と略反対方向の反力を受けて、運転者D側に部分的に凹む反力受け側接触部29、を備えている。
【0073】
そして、反力受け側接触部29の近傍における前方側の車体側壁部24に、ベントホール31A,31Aとパッチ35Aとが配設されている。勿論、これらのベントホール31A,31Aも、第1実施形態と同様に、エアバッグ20Aの運転者Dの受け止め時における反力付与側支持部9に、押圧されない配置位置として、突出部42の軸心XPに沿って、反力受け側接触部29と並設されて、反力受け側接触部29の前方側に、配設されている。
【0074】
換言すれば、第2実施形態では、ベントホール31Aやパッチ35Aが、突出部42の先端42aと反力付与側支持部9との間に、配設され、突出部42の先端42aから元部42b側に向かう方向に沿って、先端42a、ベントホール31Aやパッチ35Aの配置位置、そして、反力付与側支持部9(反力受け側接触部29)が、順に配設されている。
【0075】
そして、パッチ35Aは、第1実施形態と同様に、反力受け側接触部29の側の縁、すなわち、後縁37を車体側壁部24から離隔可能な非結合状態とし、かつ、円錐状に突出する突出部42の軸心XPを中心として、その周方向で対向する左右の縁38,39を、車体側壁部24から拘束側壁部22にかけて縫合して結合させるとともに、パッチ35Aとベントホール31A,31Aの周縁部位33とを平らに展開させて重ねた状態として、縫合により結合させている。なお、パッチ35Aは、前縁36側を、エアバッグ20Aの外周壁21における車体側壁部24側から拘束側壁部22側にかけて、縫合により結合させている。
【0076】
このエアバッグ装置M2でも、エアバッグ20Aの膨張完了時、図9のAに示すように、パッチ35Aがベントホール31A,31Aを円滑に閉塞し、また、運転者Dの受け止め時には、図9のBに示すように、突出部42の軸心XPと略直交方向に配設される反力付与側支持部9により押圧されて凹む反力受け側接触部29に連動して、ベントホール31A,31Aの周縁部位33が、パッチ35Aに対して相対的に運転者D側に移動することから、パッチ35Aと周縁部位33とに間に隙間Hが発生して、ベントホール31A,31Aが開口され、円滑に、膨張用ガスGが排気されて、第1実施形態と同様な作用・効果を得ることができる。
【0077】
また、第1,2実施形態では、運転席用のエアバッグ装置M1,M2について説明したが、図10に示す助手席用のエアバッグ装置M3のように構成してもよい。
【0078】
このエアバッグ装置M3では、膨張するエアバッグ20Bが、第1,2実施形態のエアバッグ20,20Aと同様な略四角錐形状として、前方の突出部42の車体側壁部24側に、ベントホール31B,31Bとパッチ35Bとを配設させ、反力付与側支持部9をウインドシールドWSとして、反力受け側接触部29を突出部42の先端42aとするように、構成されている。
【0079】
なお、ウインドシールドWSからなる反力付与側支持部9も、第1,2実施形態と同様に、乗員(助手席搭乗者)Pのエアバッグ20Bへの押圧に伴い、パッチ35Bやベントホール31Bの配置エリアを除いて、車体側壁部24の一部だけ、すなわち、突出部42の先端42a(反力受け側接触部29)付近だけを、部分的に相対的に押圧することとなる。
【0080】
このエアバッグ装置M3でも、エアバッグ20Bの膨張完了時、図10のAに示すように、パッチ35Bがベントホール31B,31Bを円滑に閉塞し、また、乗員Pの受け止め時には、図10のBに示すように、反力付与側支持部9に押圧されて凹む反力受け側接触部29に連動して、ベントホール31B,31Bの周縁部位33が、パッチ35Bに対して相対的に乗員P側の後方側に移動することから、パッチ35Bと周縁部位33との間に隙間Hが発生して、ベントホール31B,31Bが開口され、円滑に、膨張用ガスGが排気されて、第1,2実施形態と同様な作用・効果を得ることができる。
【0081】
また、各実施形態では、エアバッグ20,20A,20Bの膨張完了形状を略四角錐形状とした場合を示したが、図11のA,Bに示すエアバッグ20Cのように、円錐状に突出する突出部42を一つ配設させる構成として、その突出部42の車体側壁部24の部位に、ベントホール31Cやパッチ35Cを配設させてもよい。
【0082】
さらに、各実施形態では、エアバッグ20,20A,20Bの膨張完了後における乗員の受け止め前、反力受け側接触部29が、反力付与側支持部9と接触しない場合を示したが、膨張完了後における乗員の受け止め前において、ベントホール31,31A,31Bから膨張用ガスGを排気しない範囲であれば、反力受け側接触部29が反力付与側支持部9と接触するように、エアバッグ20や車体側部材7を構成してもよい。
【0083】
さらにまた、各実施形態では、パッチ35,35A,35B,35Cを、突出部42の軸心XPを中心とした周方向に沿う方向で対向する両縁38,39を、エアバッグ20,20A,20B,20Cの外周壁21に結合させる他、反力受け側接触部29から離れた側の縁も、外周壁21に結合させた場合を示したが、ベントホール31,31A,31B,31Cを円滑に閉塞できれば、パッチ35,35A,35B,35Cの反力受け側接触部29から離れた側の縁(パッチ35,35Bでは後縁37、パッチ35A,35Cでは前縁36)は、外周壁21に結合させなくともよい。
【0084】
さらに、各実施形態では、パッチ35,35A,35B,35Cが、突出部42の軸心XPを中心とした周方向に沿って長尺状の帯状のものを例示したが、楕円状や半円形状に形成してもよく、そして、円錐状の突出部42の軸心XPを中心とした周方向に沿って長ければ、円錐状の突出部42の軸心XPを中心とした周方向に沿って並設される複数のベントホールを閉塞できることから、好ましい。
【符号の説明】
【0085】
7…車体側部材、
9…反力付与側支持部、
20,20A,20B,20C…エアバッグ、
21…外周壁、
22…拘束側壁部、
24…車体側壁部、
29…反力受け側接触部、
31,31A,31B,31C…ベントホール、
33…(ベントホールの)周縁部位、
35,35A,35B,35C…パッチ、
40…カバー部、
42…突出部、
44…底壁部、
46…周壁部、
47…頂部、
XP…(突出部の)軸心、
G…膨張用ガス、
M1,M2,M3…エアバッグ装置、
W…ステアリングホイール、
R…リング部、
B…ボス部、
D…(乗員)運転者、
P…(乗員)助手席搭乗者。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグの外周壁が、乗員を受け止める拘束側壁部と、乗員の受け止め時に車体側部材に支持される車体側壁部と、を備えて構成されるとともに、膨張用ガスを流入させて、前記拘束側壁部と前記車体側壁部とを離隔させるように膨張する構成として、
前記エアバッグの内圧上昇時に膨張用ガスを排気可能なベントホールが、開口可能にパッチに閉塞されて、前記車体側壁部に配設されているエアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、前記拘束側壁部と前記車体側壁部との境界部位付近に、膨張完了時に円錐状の先細り状とした突出部を備えるとともに、
該突出部が、前記エアバッグの膨張完了後における乗員受け止め時、前記車体側部材の反力付与側支持部から、前記乗員の進入方向と略反対方向の反力を受けて、乗員側に部分的に凹む反力受け側接触部、を備え、
該反力受け側接触部の近傍における前記車体側壁部に、前記ベントホールと前記パッチとが配設され、
前記ベントホールが、前記エアバッグの乗員受け止め時における前記反力付与側支持部に、押圧されない配置位置として、前記突出部の軸心に沿って、前記反力受け側接触部と並設され、
前記パッチが、
前記反力受け側接触部の側の縁を前記車体側壁部から離隔可能な非結合状態とし、かつ、少なくとも、円錐状に突出する前記突出部の軸心を中心とした周方向に沿う方向で対向する両縁を、前記エアバッグの外周壁に結合させるとともに、前記パッチと前記ベントホールの周縁とを平らに展開させて重ねた状態として、結合させて、
前記エアバッグの膨張完了後における乗員の受け止め前に、前記ベントホールの閉塞状態を維持できる配置位置とするとともに、
少なくとも前記ベントホールを覆う部位から前記反力受け側接触部の側の縁までの領域を、
前記エアバッグの乗員受け止め時における前記反力付与側支持部に、押圧されない配置位置で、かつ、乗員受け止め時の前記反力受け側接触部の凹む際に連動して移動する前記ベントホールの周縁から、離隔可能な配置位置に、配置させて、
配設されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記パッチが、
前記エアバッグの外周壁への結合部位で囲まれた領域の寸法として、前記突出部の軸心に沿う長さ寸法より、前記突出部の軸心を中心とした周方向に沿う長さ寸法を、長くして、
前記エアバッグの外周壁に結合されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記ベントホールが、前記突出部の軸心を中心とした周方向に沿って、断続的に、複数配設されていることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記エアバッグが、
膨張完了時、頂部側に前記拘束側壁部を配置し、底壁部に前記車体側壁部を配置させた略四角錐形状として、構成され、
前記略四角錐形状の底壁部側の四隅の少なくとも一つを、前記突出部として、前記反力受け側接触部、前記ベントホール、及び、前記パッチ、を配設していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記反力受け側接触部を支持する前記車体側部材が、ステアリングホイールの操舵時に把持するリング部とし、
前記エアバッグが、前記ステアリングホイールの中央のボス部に収納されて、
運転席用エアバッグ装置として構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−153340(P2012−153340A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16635(P2011−16635)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】