説明

エアバッグ

【課題】乗員への負荷及び違和感を抑制しつつ乗員の拘束性能を確保でき、かつエアバッグ本体部の容積を低減できるエアバッグを提供する。
【解決手段】エアバッグ本体部11の上面部22側を下面部23側へと引き込んで展開状態で乗員拘束面部21に対して反乗員側の上部に上側凹部26を形成する。乗員の頭部が乗員拘束面部21に当接した場合には、乗員拘束面部21の上部側が上側凹部26へと倒れ込み、乗員の頭部をより優しく拘束する。乗員の胴部は乗員拘束面部21で確実に拘束できる。乗員の頭部と胴部とを異なる拘束力で受け止めることができ、乗員への負荷及び違和感を抑制しつつ乗員の拘束性能を確保できる。上側凹部26によってエアバッグ本体部11の容積を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張ガスの導入により膨張展開することで乗員を保護するエアバッグ本体部を備えたエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車のインストルメントパネル部に備えられる助手席乗員用のエアバッグ装置が知られている。このエアバッグ装置は、ガスを供給するインフレータと、所定の形状に折り畳まれた袋状のエアバッグ本体部を有するエアバッグとを備えている。そして、自動車の衝突などの際には、インフレータからガスを供給して、助手席に着いた乗員の前方にエアバッグ本体部を膨張展開させ、乗員に加わる衝撃を緩和するようになっている。
【0003】
このようなエアバッグ装置に用いられるエアバッグのエアバッグ本体部は、乗員の各部位、すなわち頭部と胴部とをそれぞれ好ましい反力で保護することが好ましい。そこで、平面状に広げた状態で両端部に広面積部を備えこれら広面積部が連通部により連結された鉄アレイ形状を有する長尺状で、かつ、その両端部すなわち広面積部が重ね合わせられた状態で膨張展開させる構成が知られている。この構成では、広面積部のうち、インフレータ側に位置する方が胴部保護部となり、他方が頭部保護部となっている。また、連通部は、乗員拘束面部に位置する胴部保護部の後面から上方の頭部保護部へと延びるように配設され、前方移動する乗員との接触時に、乗員の胴部と胴部保護部とで挟持され、胴部保護部から頭部保護部へと流れる膨張ガスの流量を抑制する。そして、エアバッグ本体部の膨張展開時には、前方移動する乗員が乗員拘束面部に当接すると、連通部が乗員の胴部と胴部保護部とで挟持され、連通部が乗員の頭部とフロントガラスで固定された頭部保護部とで挟持され、前方移動する乗員に対して反力が生じる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、全体としては狭隘部により一部が絞られて第1気室と第2気室とが形成された瓢箪形状のエアバッグ本体部を、狭隘部において折り曲げられて第1気室の後方に第2気室が重なる状態で膨張展開させる構成が知られている。この構成では、エアバッグ本体部の展開状態で、第2気室の後面が乗員の頭部に対向し、狭隘部の後面が乗員の胴部に対向する。そして、エアバッグ本体部の膨張展開時には、前方移動する乗員がエアバッグ本体部に第2気室に当接する。この第2気室は、乗員の頭部と第1気室との間で挟持され、前方移動する乗員に対して反力が生じる(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−276537号公報 (第3−6頁、図1−4)
【特許文献2】特開2008−143393号公報 (第3−5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エアバッグは、乗員に負荷及び違和感が生じないように、エアバッグ本体部の膨張展開時に乗員に対して生じる反力を適切に制御することが望まれている。
【0007】
また、エアバッグ本体部の容積が大きい場合、大型のインフレータ、あるいは高性能のインフレータが必要となり製造コストの低減が容易でないため、エアバッグ本体部の容積を抑制することが望まれている。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、乗員への負荷及び違和感を抑制しつつ乗員の拘束性能を確保でき、かつエアバッグ本体部の容積を低減できるエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のエアバッグは、折り畳まれて収納され、膨張ガスの導入により膨張展開することで乗員を保護するエアバッグ本体部を備えたエアバッグであって、前記エアバッグ本体部は、展開状態で乗員に対向する乗員対向面部と、展開状態で前記乗員対向面部に対して反乗員側の上部に位置する上面部と、展開状態で前記乗員対向面部に対して反乗員側の下部に位置する下面部と、前記上面部側が前記下面部側へと引き込まれることにより展開状態で前記乗員対向面部に対して反乗員側の上部に形成される上側凹部とを有するものである。
【0010】
請求項2記載のエアバッグは、請求項1記載のエアバッグにおいて、上側凹部は、乗員対向面部の幅方向の全体の反乗員側に形成されているものである。
【0011】
請求項3記載のエアバッグは、請求項1記載のエアバッグにおいて、上側凹部は、乗員対向面部の幅方向の一部の反乗員側に形成され、エアバッグ本体部は、前記上側凹部の少なくとも両側でかつ前記乗員対向面部の反乗員側にこの乗員対向面部と交差する方向に沿って位置する枠部を有するものである。
【0012】
請求項4記載のエアバッグは、請求項1ないし3いずれか一記載のエアバッグにおいて、エアバッグ本体部は、下面部側が上面部側へと引き込まれることにより展開状態で乗員対向面部に対して反乗員側の下部に形成される下側凹部を有するものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載のエアバッグによれば、エアバッグ本体部の上面部側をエアバッグ本体部の下面部側へと引き込んで展開状態で乗員対向面部に対して反乗員側の上部に上側凹部を形成することにより、乗員の頭部が乗員対向面部に当接した場合には、乗員対向面部の上部側が上側凹部へと倒れ込み、乗員の頭部をより優しく拘束し、乗員の胴部は乗員対向面部で確実に拘束できるため、乗員の頭部と胴部とを異なる拘束力で受け止めることができ、乗員への負荷及び違和感を抑制しつつ乗員の拘束性能を確保でき、かつ凹部によってエアバッグ本体部の容積を低減できる。
【0014】
請求項2記載のエアバッグによれば、請求項1記載のエアバッグの効果に加え、上側凹部を、乗員対向面部の幅方向の全体の反乗員側に形成することにより、乗員の頭部が乗員対向面部の幅方向のどの位置に当接しても、乗員への負荷や違和感を抑制できる。
【0015】
請求項3記載のエアバッグによれば、請求項1記載のエアバッグの効果に加え、上側凹部を、乗員対向面部の幅方向の一部の反乗員側に形成し、その上側凹部の少なくとも両側でかつ乗員対向面部の反乗員側に、この乗員対向面部と交差する方向に沿って枠部が位置することにより、乗員が乗員対向面部に当接したときに、乗員対向面部を枠部によって適度に支持でき、大柄な乗員であっても確実に拘束できるとともに、乗員への負荷や違和感を抑制できる。
【0016】
請求項4記載のエアバッグによれば、請求項1ないし3いずれか一記載のエアバッグの効果に加え、エアバッグ本体部の下面部側をエアバッグ本体部の上面部側へと引き込んで展開状態で乗員対向面部に対して反乗員側の下部に下側凹部を形成することにより、乗員の頭部及び腹部が乗員対向面部に当接した場合には、乗員対向面部の上部側及び下部側が上側凹部及び下側凹部へと倒れ込み、乗員の頭部及び腹部をより優しく拘束し、乗員の胴部は乗員対向面部で確実に拘束でき、乗員の頭部及び腹部と胴部とを異なる拘束力で受け止めることができ、乗員への負荷及び違和感をより抑制しつつ乗員の拘束性能を確保でき、かつ上側凹部及び下側凹部によってエアバッグ本体部の容積をより低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のエアバッグの第1の実施の形態を示し、(a)はエアバッグの平面図、(b)はエアバッグを備えたエアバッグ装置の側面図である。
【図2】同上エアバッグの相対的に大柄の乗員の使用状態を模式的に示す側面図である。
【図3】同上エアバッグの相対的に小柄の乗員の使用状態を模式的に示す側面図である。
【図4】本発明のエアバッグの第2の実施の形態を示し、(a)はエアバッグの側面図、(b)はエアバッグの斜視図である。
【図5】同上エアバッグの相対的に大柄の乗員の使用状態を模式的に示す側面図である。
【図6】同上エアバッグの相対的に小柄の乗員の使用状態を模式的に示す側面図である。
【図7】本発明のエアバッグの第3の実施の形態を示し、(a)はエアバッグの平面図、(b)はエアバッグを備えたエアバッグ装置の側面図である。
【図8】本発明のエアバッグの第4の実施の形態を示し、(a)はエアバッグの平面図、(b)はエアバッグの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のエアバッグの第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1ないし図3において、10はエアバッグ装置で、このエアバッグ装置10は、移動体である車両としての自動車の助手席、すなわち被保護物としての助手席の乗員A,Bの前方に位置する被設置部としてのインストルメントパネル部の内側に配置され、助手席乗員用のエアバッグ装置10を構成している。なお、以下、前後方向、両側方向、及び上下方向は、それぞれエアバッグ装置10を自動車に取り付けた状態における自動車の直進方向を基準として説明する。また、図2及び図3において、乗員A,Bはダミーにより示されており、乗員Aは比較的(相対的に)大柄な男性の乗員を模したダミー(AM50)により示され、乗員Bは比較的(相対的に)小柄な女性の乗員を模したダミー(AF05)により示されている。
【0020】
そして、このエアバッグ装置10は、エアバッグモジュールとも呼び得るもので、基布にて構成された袋状の外殻部であるエアバッグ本体部11などを有するエアバッグ12、エアバッグ本体部11にガスを供給するインフレータ13、これらエアバッグ12とインフレータ13となどが取り付けられる図示しないケース体、図示しないリテーナ、展開前のエアバッグ12を覆う図示しないカバー体、及びインフレータ13の動作を制御する図示しない制御手段などを備えている。さらに、このエアバッグ装置10は、自動車のインストルメントパネル部に取り付けられ、センサなどを備えた制御装置に電気的に接続して構成される。
【0021】
ケース体は、略箱状に形成され、正面側あるいはフロントガラスに向かう上側を開口部である矩形状の突出口とし、内側が、折り畳んだエアバッグ本体部11(エアバッグ12)を収納するエアバッグ収納部とされている。また、このケース体の底部には、インフレータ13の取り付け用の取付孔が形成されている。そして、この突出口は、通常時は、カバー体により覆われている。
【0022】
また、インフレータ13は、円盤状をなす本体部13aを備え、この本体部13aの高さ方向の下側寄りの位置から、四角板状のフランジ部13bが突設され、このフランジ部13bの四隅には通孔が形成されている。そして、この本体部13aの上側部、すなわちフランジ部13bの上方に位置して、本体部13aの外周面に、複数の図示しないガス噴射口が形成されている。そして、本体部13aの内側には、点火器及び薬剤が収納され、底部に接続されたコネクタを介して伝えられる制御手段からの電気信号により、点火器が薬剤を燃焼させ、ガス噴射口から膨張用のガスを急速に供給するようになっている。そして、このインフレータ13は、ガス噴射口を設けた本体部13aをエアバッグ本体部11の内側に挿入した状態で、ケース体の底部に取り付けられている。なお、インフレータ13は、種々の形状があり、例えば、円柱状の本体部をエアバッグ本体部11の内側に配置する構成を採ることもできる。
【0023】
また、リテーナは、枠状に形成されており、エアバッグ本体部11(エアバッグ12)とともにインフレータ13を取り付けるための図示しない取付ボルトが突設されている。
【0024】
また、カバー体は、樹脂にてインストルメントパネル部と一体あるいは別体をなして形成され、他の部分より薄肉で容易に破断するテアラインが平面略H字状などに形成されている。
【0025】
そして、エアバッグ本体部11は、図1(a)、図1(b)、図2及び図3に示すように、単数、あるいは複数の基布を縫製、接着あるいは溶着などにより組み合わせて接合することで全体としては袋状に形成され、展開状態で乗員A,Bに対向して上下方向及び左右方向(幅方向)に延びる乗員対向面部である被保護物対向面としての乗員拘束面部21を後端部に有し、この乗員拘束面部21の上部の反乗員A,B側すなわち乗員A,B側と反対側、換言すれば前側に前後方向に沿って延びる第1の面部としての上面部22が連続し、乗員拘束面部21の下部の反乗員A,B側すなわち前側に前後方向に沿って延びる第2の面部としての下面部23が連続し、乗員拘束面部21の左右両側、及び、上面部22及び下面部23間に前後方向に沿って延びる側面部24,24が連続し、かつ、これら上面部22、下面部23及び側面部24,24の前端に、上下方向及び左右方向(幅方向)に延びる前面部25が連続している。また、このエアバッグ本体部11の上面部22が下面部23側へと引き込まれて、乗員拘束面部21の前方に下方に窪んだ抉り部、すなわちエアバッグ本体部11の外部に連通する空間である上側凹部26が形成されている。そして、このエアバッグ本体部11は、主として乗員A,Bの首部A1,B1を含む頭部A2,B2に対向する第1の保護部としての(第1の)弱保護部である頭部保護部27が後部の上側に位置し、主として乗員A,Bの胸部A3,B3及び腹部(腰部)A4,B4を含む胴部A5,B5に対向する第2の保護部としての一般保護部である胴部保護部28が頭部保護部27の下側及び上側凹部26の下側に亘って位置する、側面視L字状に形成されており、平面視で前後方向に長手状となっている。
【0026】
乗員拘束面部21は、頭部保護部27及び胴部保護部28のそれぞれの後部に亘って形成されており、エアバッグ本体部11の最後端に位置している。また、この乗員拘束面部21は、頭部保護部27の後部を構成する頭部対向部である頭部拘束部21aと、胴部保護部28の後部を構成する胴部対向部である胴部拘束部21bとを一体、あるいは一体的に備えている。
【0027】
上面部22は、展開状態でフロントガラス側に対向する部分であり、頭部保護部27に対応する位置よりも前側(反乗員A,B側)の部分が、展開状態においてエアバッグ本体部11の内部で引き込み部材としての単数あるいは複数のストラップ29によって下面部23側である後方下側へと引き込まれている。このため、上面部22は、ストラップ29の一端との連結部22aから前端に亘る部分が前後方向に沿い下面部23に対向して上側凹部26の底部となる凹部底面部22bとなっており、連結部22aから後端に亘る部分が上下方向に沿い上側凹部26の後端部でかつ頭部保護部27の前部となる一方の凹部側面部としての凹部側面部22cとなっている。すなわち、上面部22は、凹部底面部22bと凹部側面部22cとにより、側面視でL字状に屈曲しており、上側凹部26が乗員拘束面部21の反乗員A,B側、すなわち乗員拘束面部21の前側に、この乗員拘束面部21に沿う方向である左右方向(幅方向)の全体に亘って位置している。
【0028】
ストラップ29は、テザーベルトなどとも呼ばれるもので、例えばエアバッグ本体部11と同様の基布にて所定の長さ寸法の細長い帯状に形成されている。また、このストラップ29の他端は、エアバッグ本体部11の内部で、乗員拘束面部21の下端側に連結されている。
【0029】
また、下面部23は、展開状態でインストルメントパネル部側に対向し、このインストルメントパネル部に沿って位置する部分である。さらに、この下面部23の上側凹部26に対向する位置には、インフレータ13が取り付けられ膨張ガスが導入されるガス導入口である取付孔部33が前側寄りの位置に形成されており、この取付孔部33の周囲に、リテーナの取付ボルトが挿通される図示しない挿通孔が形成されている。
【0030】
また、側面部24,24は、エアバッグ本体部11の展開状態で上下方向及び前後方向に沿って展開するように形成されている。
【0031】
また、頭部保護部27は、上部可動領域とも呼び得るもので、乗員A,Bに対向する後部が乗員拘束面部21の頭部拘束部21aにより構成され、反乗員A,B側である前部が上面部22の凹部側面部22cにより構成されている。したがって、この頭部保護部27は、エアバッグ本体部11の展開状態で胴部保護部28に対して上方に突出しており、前後方向に可動的となっている。
【0032】
また、胴部保護部28は、容積無変化領域とも呼び得るもので、乗員A,Bに対向する後部が乗員拘束面部21の胴部拘束部21bにより構成され、上部が上面部22の凹部底面部22bにより構成され、下部が下面部23により構成され、両側部が側面部24により構成され、前部が前面部25により構成されて、前後方向に長手状に延びている。
【0033】
また、制御手段は、CPUやメモリを備えた制御装置を備え、この制御装置が、インフレータ13に信号線を介して接続され、このインフレータ13を作動させるようになっている。
【0034】
そして、このように構成されたエアバッグ本体部11は、リテーナを内側に配置し、リテーナの取付ボルトを挿通孔から引き出した状態で、所定の形状に折り畳まれ、破断可能なラッピング部材であるシートで包むなどして形状を保持する。そして、折り畳んだエアバッグ本体部11をケース体に収納するとともに、取付孔部33にインフレータ13のガス噴射口を設けた本体部13aを挿入し、リテーナの取付ボルトをインフレータ13のフランジ部13b及びケース体の底部の取付孔に挿入し、さらに取付ボルトの先端からナットを螺合して締め付ける。この状態で、リテーナとナットとの間に、エアバッグ本体部11の取付孔部33の周囲の部分とケース体、及びインフレータ13が共締めして固定される。
【0035】
次に、エアバッグ装置10の展開動作を説明する。
【0036】
このエアバッグ装置1の動作の概略としては、自動車の衝突などの際に、制御装置がインフレータ13を作動させ、このインフレータ13から膨張ガスを噴射させると、エアバッグ本体部11は、膨張ガスの流入に伴い膨張展開し、カバー体のテアラインを破断して突出口から突出し、直接に、あるいはフロントガラスに沿って、正面側に向かい膨張展開して、助手席に着いた乗員A,Bの上半身の前方に乗員拘束面部21を対向させて展開し、乗員A,Bを拘束して衝突の衝撃から保護する。
【0037】
ここで、質量の大きい大柄な乗員Aについては、図2に示すように、頭部A2については、乗員拘束面部21の頭部拘束部21aに当接すると、頭部保護部27が上側凹部26により区画される空間を埋めるように上側凹部26側へと大きく倒れ込む、すなわち頭部A2が頭部保護部27を前方へと大きく押し込むことにより、比較的小さい反力P1で頭部A2がより優しく(ソフトに)拘束される。また、乗員Aの胴部A5については、乗員拘束面部21の胴部拘束部21bに当接すると、上側凹部26によって容積が低減されていない胴部保護部28により、従来のエアバッグと同等の乗員拘束性能、すなわち比較的大きい反力P2(P2>P1)でしっかりと受け止めて保護できる。
【0038】
同様に、質量の小さい小柄な乗員Bについても、図3に示すように、頭部B2については、乗員拘束面部21の頭部拘束部21aに当接すると、頭部保護部27が上側凹部26により区画される空間を埋めるように上側凹部26側へと倒れ込む、すなわち頭部B2が頭部保護部27を前方へと押し込むことにより、比較的小さい反力P3で、頭部B2がより優しく(ソフトに)拘束される。また、乗員Bの胴部B5については、乗員拘束面部21の胴部拘束部21bに当接すると、上側凹部26によって容積が低減されていない胴部保護部28により、従来のエアバッグと同等の乗員拘束性能、すなわち比較的大きい反力P4(P4>P3)でしっかりと受け止めて保護できる。
【0039】
このように、本実施の形態によれば、上面部22側を下面部23側へと引き込んで展開状態で乗員拘束面部21に対して反乗員A,B側の上部に上側凹部26を形成することにより、乗員A,Bの頭部A2,B2が乗員拘束面部21に当接した場合には、乗員拘束面部21の上部側である頭部保護部27が上側凹部26へと倒れ込み、乗員A,Bの頭部A2,B2をより優しく(より小さい反力で)拘束する一方で、乗員A,Bの胴部A5,B5は乗員拘束面部21の下部側である胴部保護部28で(より大きい反力で)確実に拘束できるため、乗員A,Bの頭部A2,B2と胴部A5,B5とを異なる拘束力で受け止めることができる。したがって、乗員A,Bへの負荷及び違和感を抑制しつつ乗員A,Bの拘束性能を確保できる。
【0040】
また、上側凹部26によってエアバッグ本体部11の容積を低減できるため、高価な大型のインフレータや高性能のインフレータが必要なく、製造コストを抑制できる。
【0041】
さらに、上側凹部26を、乗員拘束面部21の左右方向(幅方向)の全体の反乗員A,B側に形成することにより、乗員A,Bの頭部A2,B2が乗員拘束面部21のどの位置に当接しても、乗員A,Bへの負荷や違和感を抑制できる。
【0042】
次に、第2の実施の形態を図4ないし図6を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0043】
この第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態において、図4(a)及び図4(b)に示すように、下面部23に下側凹部34が形成され、エアバッグ本体部11に、頭部保護部27と、胴部保護部28と、第3の保護部としての第2の弱保護部である腹部保護部35とが上下方向に並んで形成されているものである。換言すれば、頭部保護部27と腹部保護部35との間に胴部保護部28が位置している。このため、乗員拘束面部21は、頭部拘束部21aと、胴部拘束部21bと、腹部保護部35の後部を構成する腹部対向部である腹部拘束部21cとを一体、あるいは一体的に備えている。
【0044】
下面部23に位置する下側凹部34は、下面部23の腹部保護部35に対応する位置よりも前側(反乗員A,B側)の部分が、展開状態においてエアバッグ本体部11の内部で引き込み部材としての単数あるいは複数のストラップ37によって上面部22側である後方上側へと引き込まれて形成されている。このため、下面部23は、ストラップ37の一端との連結部23aから前端に亘る部分が前後方向に沿い上面部22に対向して下側凹部34の天面部となる凹部天面部23bとなっており、連結部23aから後端に亘る部分が上下方向に沿い下側凹部34の後端部でかつ腹部保護部35の前部となる他方の凹部側面部としての凹部側面部23cとなっている。すなわち、下面部23は、凹部天面部23bと凹部側面部23cとにより、側面視でL字状に屈曲しており、下側凹部34が乗員拘束面部21の反乗員A,B側、すなわち乗員拘束面部21の前側に、この乗員拘束面部21に沿う方向である左右方向(幅方向)の全体に亘って位置している。
【0045】
ストラップ37は、テザーベルトなどとも呼ばれるもので、ストラップ29と同様に、例えばエアバッグ本体部11と同様の基布にて所定の長さ寸法の細長い帯状に形成されている。また、このストラップ37の他端は、エアバッグ本体部11の内部で、乗員拘束面部21に連結されている。
【0046】
また、腹部保護部35は、下部可動領域とも呼び得るもので、乗員A,Bに対向する後側が乗員拘束面部21の腹部拘束部21cにより構成され、反乗員A,B側である前側が下面部23の凹部側面部23cにより構成されている。したがって、この腹部保護部35は、エアバッグ本体部11の展開状態で胴部保護部28に対して下方に突出しており、前後方向に可動的となっている。
【0047】
そして、エアバッグ本体部11の展開状態において、質量の大きい大柄な乗員Aについては、図5に示すように、首部A1を含む頭部A2については、乗員拘束面部21の頭部拘束部21aに当接すると、頭部保護部27が上側凹部26により区画される空間を埋めるように上側凹部26側へと大きく倒れ込む、すなわち頭部A2が頭部保護部27を前方へと大きく押し込むことにより、比較的小さい反力P1で頭部A2がより優しく(ソフトに)拘束される。また、乗員Aの胸部A3を含む胴部A5については、乗員拘束面部21の胴部拘束部21bに当接すると、各凹部26,34によって容積が低減されていない胴部保護部28により、従来のエアバッグと同等の乗員拘束性能、すなわち比較的大きい反力P2でしっかりと受け止めて保護できる。さらに、乗員Aの手部を含む腹部A4については、乗員拘束面部21の腹部拘束部21cに当接すると、腹部保護部35が下側凹部34により区画される空間を埋めるように下側凹部34側へと大きく倒れ込む、すなわち腹部A4が腹部保護部35を前方へと大きく押し込むことにより、比較的小さい反力P5(P5<P2)で腹部A4がより優しく(ソフトに)拘束される。
【0048】
同様に、質量の小さい小柄な乗員Bについても、図6に示すように、首部B1を含む頭部B2については、乗員拘束面部21の頭部拘束部21aに当接すると、頭部保護部27が上側凹部26により区画される空間を埋めるように上側凹部26側へと倒れ込む、すなわち頭部B2が頭部保護部27を前方へと押し込むことにより、比較的小さい反力P3で、頭部B2がより優しく(ソフトに)拘束される。また、乗員Bの胸部B3を含む胴部B5については、乗員拘束面部21の胴部拘束部21bに当接すると、各凹部26,34によって容積が低減されていない胴部保護部28により、従来のエアバッグと同等の乗員拘束性能、すなわち比較的大きい反力P4でしっかりと受け止めて保護できる。さらに、乗員Bの手部を含む腹部B4については、乗員拘束面部21の腹部拘束部21cに当接すると、腹部保護部35が下側凹部34により区画される空間を埋めるように下側凹部34側へと倒れ込む、すなわち腹部B4が腹部保護部35を前方へと押し込むことにより、比較的小さい反力P6(P6<P4)で腹部B4がより優しく(ソフトに)拘束される。
【0049】
このように、本実施の形態によれば、上側凹部26に加えて、エアバッグ本体部11の下面部23側を上面部22側へと引き込んで展開状態で乗員拘束面部21に対して反乗員A,B側の下部に下側凹部34を形成することにより、乗員A,Bの頭部A2,B2及び手部を含む腹部A4,B4が乗員拘束面部21に当接した場合には、乗員拘束面部21の上部側である頭部保護部27及び下部側である腹部保護部35が各凹部26,34へとそれぞれ倒れ込み、乗員A,Bの頭部A2,B2及び腹部A4,B4をより優しく(より小さい反力で)拘束する一方で、乗員A,Bの胴部A5,B5は乗員拘束面部21の中間部である胴部保護部28で(より大きい反力で)確実に拘束できるため、乗員A,Bの頭部A2,B2及び腹部A4,B4と胴部A5,B5とをそれぞれ異なる拘束力で受け止めることができる。したがって、乗員A,Bへの負荷及び違和感をより抑制しつつ乗員A,Bの拘束性能を確保できる。
【0050】
また、上下2つの凹部26,34によってエアバッグ本体部11の容積をより低減できるため、高価な大型のインフレータや高性能のインフレータが必要なく、より小型のインフレータ13を用いることができ、製造コストをより抑制できる。
【0051】
さらに、下側凹部34を、乗員拘束面部21の左右方向(幅方向)の全体の反乗員A,B側にそれぞれ形成することにより、乗員A,Bの腹部A4,B4が乗員拘束面部21のどの位置に当接しても、乗員A,Bへの負荷や違和感を抑制できる。
【0052】
次に、第3の実施の形態を図7を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0053】
この第3の実施の形態は、上記第1の実施の形態において、上側凹部26が、上面部22の一部に形成されているものである。
【0054】
すなわち、本実施の形態では、図7(a)及び図7(b)に示すように、上面部22の左右方向(幅方向)の一部である略中央部に上側凹部26が形成されており、上面部22の凹部底面部22bの周囲には、この凹部底面部22bを囲む枠部22dが形成されている。
【0055】
枠部22dは、上側凹部26の両側部に位置する側枠部22da,22daと、上側凹部26の前部に位置する前枠部22dbとを備えており、上側凹部26の両側部及び前部を囲んで形成されている。各側枠部22daは、乗員拘束面部21と交差(直交)する方向である前後方向に沿って長手状に形成されており、乗員拘束面部21の反乗員A,B側、すなわち前側に位置している。また、前枠部22dbは、側枠部22da,22da間に連続して形成されている。
【0056】
この枠部22dは、例えば、ストラップ29の幅を所定の幅寸法とすることにより、上面部22の一部に上側凹部26を形成することで、凹部底面部22bを囲むように形成できる。
【0057】
そして、乗員A,Bの頭部A2,B2が乗員拘束面部21の頭部拘束部21aに当接すると、想像線Lに示すように、乗員拘束面部21の乗員A,Bの頭部A2,B2との当接する部分が相対的に前方へと(上側凹部26へと)変形し、枠部22d(側枠部22da,22da)に対応する位置は、この枠部22d(側枠部22da,22da)によって乗員拘束面部21が支持されて変形が抑制されるため、乗員拘束面部21が略M字状(略W字状)となる。すなわち、乗員拘束面部21を枠部22d(側枠部22da,22da)によって適度に支持できるので、特に大柄な乗員Aであっても確実に拘束できるとともに、乗員A,Bへの負荷や違和感を抑制できる。
【0058】
次に、第4の実施の形態を図8を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0059】
この第4の実施の形態は、上記第2の実施の形態において、各凹部26,34が、上面部22及び下面部23の一部に形成されているものである。
【0060】
下側凹部34は、図8(a)及び図8(b)に示すように、下面部23の左右方向(幅方向)の一部である略中央部に形成されており、下面部23の凹部天面部23bの周囲が枠部22dにより囲まれている。すなわち、枠部22dは、側枠部22da,22daが、それぞれ上側凹部26及び下側凹部34の両側部に位置し、前枠部22dbが、上側凹部26及び下側凹部34の前部に位置して、上側凹部26及び下側凹部34のそれぞれの両側部及び前部を囲んで形成されている。
【0061】
そして、乗員A,Bの頭部A2,B2が乗員拘束面部21の頭部拘束部21aに当接すると、乗員拘束面部21の乗員A,Bの頭部A2,B2との当接する部分が相対的に前方へと(上側凹部26へと)変形し、枠部22d(側枠部22da,22da)に対応する位置は、この枠部22d(側枠部22da,22da)によって乗員拘束面部21が支持されて変形が抑制されるため、乗員拘束面部21が略M字状(略W字状)となる。また、乗員A,Bの手部を含む腹部A4,B4が乗員拘束面部21の腹部拘束部21cに当接すると、乗員拘束面部21の乗員A,Bの腹部A4,B4との当接する部分が相対的に前方へと(下側凹部34へと)変形し、枠部22d(側枠部22da,22da)に対応する位置は、この枠部22d(側枠部22da,22da)によって乗員拘束面部21が支持されて変形が抑制されるため、乗員拘束面部21が略M字状(略W字状)となる。すなわち、乗員拘束面部21を枠部22d(側枠部22da,22da)によって適度に支持できるので、特に大柄な乗員Aであっても確実に拘束できるとともに、乗員A,Bへの負荷や違和感を抑制できる。
【0062】
なお、上記の各実施の形態において、各凹部26,34を形成する際には、ストラップ29,37に代えて、例えばエアバッグ本体部11の上面部22及び下面部23の外側にベルトなどの拘束部材を設けて縛り付けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、例えば、車両の助手席乗員用のエアバッグ装置の他、前席の座席の後部から、後席の座席の乗員の上体に向かって展開するエアバッグを備えたエアバッグ装置に適用できる。
【符号の説明】
【0064】
11 エアバッグ本体部
12 エアバッグ
21 乗員対向面部である乗員拘束面部
22 上面部
22d 枠部
23 下面部
26 上側凹部
34 下側凹部
A,B 乗員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれて収納され、膨張ガスの導入により膨張展開することで乗員を保護するエアバッグ本体部を備えたエアバッグであって、
前記エアバッグ本体部は、
展開状態で乗員に対向する乗員対向面部と、
展開状態で前記乗員対向面部に対して反乗員側の上部に位置する上面部と、
展開状態で前記乗員対向面部に対して反乗員側の下部に位置する下面部と、
前記上面部側が前記下面部側へと引き込まれることにより展開状態で前記乗員対向面部に対して反乗員側の上部に形成される上側凹部とを有する
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
上側凹部は、乗員対向面部の幅方向の全体の反乗員側に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。
【請求項3】
上側凹部は、乗員対向面部の幅方向の一部の反乗員側に形成され、
エアバッグ本体部は、前記上側凹部の少なくとも両側でかつ前記乗員対向面部の反乗員側にこの乗員対向面部と交差する方向に沿って位置する枠部を有する
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。
【請求項4】
エアバッグ本体部は、下面部側が上面部側へと引き込まれることにより展開状態で乗員対向面部に対して反乗員側の下部に形成される下側凹部を有する
ことを特徴とした請求項1ないし3いずれか一記載のエアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−153304(P2012−153304A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15547(P2011−15547)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】