説明

エアバッグ

【課題】円滑に、かつ、予め設定された所定の展開方向へと確実に展開できるとともに、製造性が良好なエアバッグを提供する。
【解決手段】ガス導入部から導入した膨張ガスにより膨張して車室の所定面24に沿って下方へと展開する袋状のエアバッグ本体部31を備える。エアバッグ本体部31は、ガス導入部からの膨張ガスにより展開する展開基部38を有する。エアバッグ本体部31は、展開基部38に連続し展開基部38に次いで膨張ガスにより展開する展開先端部39を有する。エアバッグ本体部31を、上下寸法よりも幅寸法が長くなるように折り畳んだ第1の状態から一部が下方から上方へと押し込まれて湾曲された第2の状態として所定面24の上部に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張ガスにより膨張して車室の所定面に沿って下方へと展開するエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、膨張ガスが導入されて膨張展開するエアバッグを備えたエアバッグ装置について、自動車の車室の側部のドアの窓部などの所定面に沿ってエアバッグを展開するいわゆるカーテンエアバッグ装置が知られている。このようなエアバッグ装置のエアバッグは、通常時は細長く折り畳まれ、窓部の上縁部のルーフサイド部に沿って配置されている。そして、側面衝突や横転(ロールオーバー)などの衝撃を受けた際に、インフレータから膨張ガスが供給され、エアバッグが側部の窓部などに沿って下方に膨張展開して、乗員を拘束して頭部などを保護する。
【0003】
このようなエアバッグとしては、例えば袋状のエアバッグ本体部の上部である展開基部を折り返して折返部を形成するとともに、この折返部に続く下縁側である展開先端部をロール状に折り畳んでロール部を形成した後、折返部とともにロール部の外面の一部を所定の押し込み方向、例えば下方から上方へと押し込んだ押込部を形成することで、断面サイズを縮小させたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、エアバッグの上端を車体上部のサイドルーフ部に固定し、袋状のエアバッグ本体部の上部である展開基部を折り畳んでガス供給路部を形成するとともに、このガス供給路部に続く下端側である展開先端部をロール状に折り畳んでロール部を形成してサイドルーフレール部とヘッドライニングとの間のスペースに収納し、衝撃を受けた際には、インフレータから供給された膨張ガスによってエアバッグ本体部が膨張して、ヘッドライニングの下端部を車室内側に押し開きながら、下方に向けてカーテン状に展開して乗員の頭部を保護する構成が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかしながら、これらの構成では、ロール部の断面形状の幅寸法が上下寸法とほぼ等しいか、幅寸法よりも上下寸法が大きいと考えられ、インフレータから供給された膨張ガスにより展開した折返部あるいはガス供給路部がロール部全体を下方へと押し出す際に、ロール部の上流側の箇所に膨張ガスの流れを止める動きが生じ、ロール部の解けと膨張ガスの流入とに時間差が生じ、エアバッグ本体部の展開挙動の調整が容易でない。
【0006】
また、袋状のエアバッグ本体部の上部を蛇腹状に折り畳んで蛇腹部を形成し、この蛇腹部に続く下縁側を車両の外側に向けてロール状に折り畳んでロール部を蛇腹部よりも車幅方向に幅広に形成するとともに、これら蛇腹部とロール部との両側を上方へと折り返して、蛇腹部を半分に折り曲げるとともに、この蛇腹部を下側からロール部によって包んだものが知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
しかしながら、この構成では、蛇腹部がロール部によって包み込まれているので、蛇腹部を折り畳み時に実際に折り畳んだ方向と予め設定された所定の展開方向との僅かな誤差によってエアバッグ本体部が所定の展開方向に対してずれた方向へと展開しないように、蛇腹部をロール部によって包み込む作業に熟練および手間が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−91177号公報 (第3−4頁、図4−6)
【特許文献2】特開2004−58848号公報 (第4−6頁、図2及び5)
【特許文献3】特開2009−262690号公報 (第3−8頁、図2−4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したエアバッグ装置において、エアバッグを円滑に、かつ、予め設定された所定の展開方向へと確実に展開させるとともに、エアバッグの製造性を確保することが望まれている。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、円滑に、かつ、予め設定された所定の展開方向へと確実に展開できるとともに、製造性が良好なエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載のエアバッグは、膨張ガスが導入されるガス導入部と、このガス導入部に連続し、このガス導入部から導入された膨張ガスにより膨張して車室の所定面に沿って所定方向へと展開する袋状のエアバッグ本体部とを具備し、前記エアバッグ本体部は、ガス導入部から膨張ガスが供給されて展開する展開基部、及びこの展開基部に連続しこの展開基部に次いで膨張ガスが供給されて展開する展開先端部を備え、所定方向に沿う方向の寸法よりも所定方向と交差する方向の寸法が長くなるように折り畳まれた第1の状態から一部が反所定方向へと押し込まれて湾曲された第2の状態とされて前記所定面の反所定方向側に配置されるものである。
【0012】
請求項2記載のエアバッグは、請求項1記載のエアバッグにおいて、エアバッグ本体部は、車室の所定面の一部をなし前記車室側に突出する柱状体の上方に位置し、第1の状態での幅寸法が前記エアバッグ本体部の配置位置から車室側への突出寸法よりも大きく設定され、所定面に沿って所定方向である下方へと展開するものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載のエアバッグによれば、ガス導入部から膨張ガスが供給されて展開する展開基部と、この展開基部に連続しこの展開基部に次いで膨張ガスが供給されて展開する展開先端部とを備えるエアバッグ本体部を、このエアバッグ本体部が展開する所定方向に沿う方向の寸法よりも所定方向と交差する方向の寸法が長くなるように折り畳んだ第1の状態から一部を反所定方向へと押し込んで湾曲させた第2の状態として所定面の反所定方向側に配置することにより、展開基部の膨張展開によって展開先端部が所定方向へと押し出される際に、この展開先端部で膨張ガスの流れが止められることがなく、展開先端部が所定方向へと解けると同時に膨張ガスが流入して展開先端部が円滑に膨張するので、エアバッグを円滑に展開させることができる。また、展開基部によって展開先端部が包み込まれるので、エアバッグ本体部が熟練技術により折り畳まれていなくても展開基部の膨張によって展開先端部が予め設定された所定の展開方向へと確実に押し出され、所定の展開方向へと確実に展開できるとともに、エアバッグ本体部の折り畳みが容易で製造性が良好になる。
【0014】
請求項2記載のエアバッグによれば、請求項1記載のエアバッグの効果に加え、車室の所定面の一部をなす柱状体の上方に位置するエアバッグ本体部の第1の状態での幅寸法を、車室の所定面の一部をなす柱状体のエアバッグ本体部の配置位置から車室側への突出寸法よりも大きく設定することで、展開基部の膨張によって展開先端部が柱状体よりも車室の内側に配置された状態となるので、エアバッグを所定の展開方向へとより円滑に展開させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のエアバッグの第1の実施の形態の展開挙動を(a)ないし(d)の順に示す説明図である。
【図2】同上エアバッグの折畳工程を(a)ないし(e)の順に示す説明図である。
【図3】同上エアバッグを車両に配置した状態及び展開した状態を示す説明図である。
【図4】本発明のエアバッグの第2の実施の形態の折畳工程を(a)ないし(f)の順に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のエアバッグの第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図3において、10はエアバッグで、このエアバッグ10を備えたエアバッグ装置は、カーテンエアバッグ装置とも呼ばれるもので、車両である自動車の車体の車室14の収納位置としてのルーフサイド部15に配置されている。そして、このエアバッグ10は、カーテンエアバッグ、側突用エアバッグ、インフレータブルカーテン、あるいは頭部保護用エアバッグなどとも呼ばれるもので、側面衝突の衝撃を受けた際や横転(ロールオーバー)の際などに、被保護物としての乗員の側方にほぼ面状に所定方向である下方へと展開し、乗員の頭部などを保護するようになっている。
【0018】
なお、以下、前後方向、車幅方向である両側方向、上下方向などの方向は、車両の直進方向を基準とし、前側方向(図3に示す矢印F方向)、上方(矢印U方向)、下方(矢印D方向)、車室14の外方(図1に示す矢印W方向)、車室14の内方(図1に示す矢印C方向)などを説明する。
【0019】
そして、この自動車の車体は、車室14内に乗員が着座可能な前席及び後席を備え、これら前席及び後席に対応して、それぞれ上部に開口可能な開口部としての窓部(サイドウィンドウ)18を備えた図示しないドアが設けられている。また、車室14の両側には、前側から順に、Aピラーとも呼ばれる(第1の)柱状体としてのフロントピラー21、Bピラーとも呼ばれる(第2の)柱状体としてのセンターピラー22、Cピラーとも呼ばれる(第3の)柱状体としてのリアピラー23が設けられている。そして、これら窓部18、ドア及び各ピラー21,22,23により、車室14の両側部に所定面24が構成されている。また、これらピラー21,22,23の上側、すなわち窓部18の一縁部である上縁部に、ルーフサイドレールなどとも呼ばれる被取付部材を構成する車体パネル25が設けられ、この車体パネル25を介して天井部としての天井パネルが支持されている。また、両側のフロントピラー21の前側にはフロントガラス(フロントウインドシールド)が設けられ、両側のリアピラー23の後側にはリアガラスが設けられている。そして、収納位置としてのルーフサイド部15は、天井パネルの両側の縁部の部分から、この縁部の部分といわば交差する方向に伸びるフロントピラー21及びリアピラー23のほぼ全長にかかる部分にまで設定され、これら天井パネルの縁部の部分とフロントピラー21及びリアピラー23とで仮想的に構成される弧の内側に、エアバッグ10が展開する所定面24が設定される。
【0020】
なお、ここで、センターピラー22とは、前後の端部のピラーではなく、展開したエアバッグ10に覆われるピラーを示す。また、車両の種類によっては、片側に例えば4本以上のピラーを備える場合があるが、前から3本目以後のピラーは、リアピラー23として説明する。
【0021】
そして、エアバッグ装置は、前後の座席の乗員を保護可能な、いわゆる前後席用エアバッグであり、図1に示すように、車体パネル25と各ピラー21,22,23の上端から天井へと連続する天井被覆部材であるヘッドライニング26となどに囲まれたルーフサイド部15すなわち車体のドア開口部の上縁に沿って細長く折り畳んで収納されたエアバッグ10と、後席の後方あるいは上方に収納されこのエアバッグ10にガスを供給するガス発生器である図示しないインフレータとなどを備えている。また、このエアバッグ装置は、必要に応じて、エアバッグ10を車体パネルに取り付ける金属板をプレス加工などして形成された取付ブラケット、折り畳んだエアバッグ10に沿って取り付けられて展開時にエアバッグ10を保護する樹脂製のプロテクタ、及び折り畳んだエアバッグ10の形状を保持する破断可能な筒状あるいは紐状の形状保持部材としてのスリーブ、エアバッグ10の前端部に連結された図示しないテザーベルトなどが備えられている。
【0022】
そして、図3に示すように、エアバッグ10は、単数あるいは複数の基布を組み合わせ、例えば1枚の基布を下端で折り返し、あるいは2枚の基布を重ねて接合して、インフレータと接続され膨張ガスが導入されるガス導入部30と、扁平な袋状に形成されたエアバッグ本体部31とを備え、複数の取付部32を介して上縁部の複数箇所が車体側に取り付けられて、細長く折り畳んだ状態でセンターピラー22の上方であるルーフサイド部15(図1)に収納される。
【0023】
ガス導入部30は、例えばエアバッグ本体部31の上部の前後方向の中央部に突設されている。なお、このガス導入部30は、エアバッグ本体部31の上部の任意の位置に設けることができ、例えばエアバッグ本体部31の上部の後部などに突設してもよい。
【0024】
また、エアバッグ本体部31は、車室14の内側に配置される内側の基布部と車体側である外側に配置される外側の基布部とが重ねられてエアバッグ接合部で接合されて構成され、流入した膨張ガスにより膨張展開するように形成されている。このエアバッグ本体部31は、中空部である気室であり、ガス導入部30と連通するガス案内部35と、このガス案内部35に対して連通する膨張部36とを備えている。そして、このエアバッグ本体部31は、仮想的に設定される水平な線Aにより膨張部36が上下に区画され、この線Aより上側の膨張部36及びガス案内部35が上流側である導管部としての展開基部38となっており、この線Aより下側の膨張部36が下流側である繰り返し折り部としての展開先端部39となっている。
【0025】
ガス案内部35は、エアバッグ本体部31の上縁部に沿って前後方向を長手方向として直線状に設けられ、すなわち前後方向を長手方向である軸方向として略水平な柱状に展開する。このガス案内部35は、エアバッグ本体部31の前端部から後端部に亘って形成されている。
【0026】
また、膨張部36は、内部に形成された図示しない複数の内側接合部により接合され、ガス案内部35とそれぞれ連通する複数の気室に区画されているとともに、ガス案内部35の前側に連通し展開時に前席の乗員の側方に対向して展開する前席保護部、及びガス案内部35の後側に連通し展開時に後席の乗員の側方に対向して展開する後席保護部などが形成されている。
【0027】
また、エアバッグ接合部は、例えば縫製、接着、あるいは縫製とシール手段との併用などにより略気密あるいは高度な気密に構成され、膨張部36の外周を接合する図示しない外側接合部、及び上記内側接合部などを備えている。
【0028】
また、取付部32は、例えば車体取付用の取付片であり、エアバッグ本体部31の上縁部の所定位置に複数形成されている。そして、取付部32は、エアバッグ本体部31を構成する基布部と一体に形成され、例えば、内側の基布部と外側の基布部とを重ね縫着して形成されている。
【0029】
次に、エアバッグ10の折畳工程及び折畳形状を説明する。
【0030】
本実施の形態において、エアバッグ10は、まず、内側の基布部と外側の基布部とを重ねて平面状に広げた状態から、図2(a)ないし図2(d)に示すように、展開先端部39を下端部39aから車体側すなわち所定面24(図3)側に巻き上げるように展開基部38まで繰り返し折り返して折り畳み、集積部41を形成した第1の状態とする。この第1の状態において、集積部41は、上下寸法L1よりも長手寸法である幅寸法(車幅方向の寸法)L2が大きく設定された楕円形状(長円形状)に形成されており、展開基部38が取付部32に連続する上側に位置し、展開先端部39が展開基部38の下方に連続して位置している。また、この集積部41(展開基部38及び展開先端部39)の幅寸法L2は、図1に示すエアバッグ本体部31の配置位置である車体パネル25からのセンターピラー22の車室14の内側への突出寸法L3よりも大きく設定されている。
【0031】
さらに、図2(e)に示すように、この第1の状態の集積部41の下部の幅方向の中央部41aを下方から上方へと押し込んでこの中央部41aを内側に包み込むようにして、集積部41を半分に折り返す、すなわち幅方向に二つ折りとすることで、集積部41を、中央部41aに押込部42を有する逆U字状(への字状)に折り畳んだ第2の状態とすることにより、エアバッグ本体部31が所定の細長い形状に折り畳まれる。この第2の状態で、展開基部38は集積部41の上部にアーチ状に位置し、展開先端部39は、展開基部38により上側が包み込まれた逆U字状に繰り返し巻き込まれて巻き上げられている。この後、エアバッグ10の長手方向の外周に沿ってテープなどの図示しない固着手段を用いてエアバッグ10の展開時の圧力で結合解除すなわち破断可能となるように巻き付けて折り畳み形状を保持する。
【0032】
このようにして、エアバッグ10が細長く折り畳まれ、かつ、折畳形状が保持された状態となる。
【0033】
そして、上記のように折り畳まれたエアバッグ10について、リベットなどを用いてプロテクタ及び取付ブラケットを取り付けるとともに、エアバッグ10のガス導入部30にインフレータの円柱状の本体部分から延びる接続管を接続し、カーテンエアバッグモジュールとなるエアバッグ装置を構成する。
【0034】
そして、このエアバッグ装置を車室14内に持ち込み、ヘッドライニング26及びピラーガーニッシュなどの内装部材が取り付けられる前に車体への取付作業を行う。この取付作業は、エアバッグ10の複数の取付部32、テザーベルト、インフレータに設けたインフレータ取付部、及び、エアバッグ10及びプロテクタを取り付けた取付ブラケットをそれぞれボルトなどの固定具45で車体に固定することにより行われる。また、インフレータから導出されたハーネスを車体に備えた制御装置に接続する。次いで、車体の天井パネルにヘッドライニング26を取り付け、各ピラー21,22,23にピラーガーニッシュを取り付けてエアバッグ装置を覆うことにより、エアバッグ装置の車体への取付作業が完了する。また、この取付状態で、軟質のヘッドライニング26の縁部は、ピラー21,22,23の上端部との間で、折畳状態のエアバッグ10を開放可能に覆うカバーとなる。
【0035】
次に、エアバッグ10の展開動作を説明する。
【0036】
車両の側面衝突あるいは横転などの際には、制御装置によりインフレータが作動し、このインフレータから噴射される膨張ガスが接続管を介しガス導入部30からエアバッグ本体部31内の膨張部36に導入される。すると、膨張部36は、展開基部38へと膨張ガスが供給され、この展開基部38に続いてこの展開基部38から展開先端部39へと膨張ガスが供給されて展開基部38及び展開先端部39が順次展開し、エアバッグ10が車室14の側部の所定面24に沿って下方へと面状に膨張展開して乗員を保護する。
【0037】
より詳細には、断面視では、まず、図1(a)に示す収納状態から、エアバッグ10にガス導入部30(図3)から膨張ガスが供給されると、この膨張ガスは、ガス案内部35に沿って膨張部36の前後方向の略全長に供給され、すなわち、エアバッグ10の略全長で同様に展開が開始される。そして、まず、集積部41の上部にアーチ状に位置する展開基部38の膨張(図1(b))によりエアバッグ10の外周に巻き付けた固着手段が破断するとともに、この展開基部38が展開先端部39を重力方向すなわち下方へと押し出す。このとき、集積部41の押込部42が解けて展開先端部39が巻き上げられた状態のまま楕円形状(長円形状)に復帰変形するとともに、展開基部38と展開先端部39との連続部Bが折り返されていることによって、展開先端部39側が車室14の室内側へと移動してヘッドライニング26を押しのける。また、この状態で、展開先端部39の幅寸法(車幅方向寸法)L2が車体パネル25からのセンターピラー22の車室14の内側への突出寸法L3よりも大きいため、展開基部38と展開先端部39との連続部Bがセンターピラー22よりも室内側に移動する。さらに、図1(c)に示すように、連続部Bから膨張ガスが展開先端部39へと入ることで、集積部41の下側がセンターピラー22を車室14の室内側へと避けつつ、センターピラー22から遠のくように解けながら、同時に膨張ガスが流入して、展開先端部39が車室14の側部内面である所定面24に摺接しつつ巻き戻され、図1(d)に示すようにヘッドライニング26とセンターピラー22の上端部との間の開口部46から所定面24に沿って略下方にカーテン状に膨張展開して、エアバッグ10が窓部18及びセンターピラー22などを覆う。
【0038】
また、この展開過程で、側面視では、ガス案内部35が後端部から前端部まで迅速に膨張展開するとともに、このガス案内部35から、膨張部36の各気室に膨張ガスが供給されてこれら気室が前席及び後席の乗員の着座位置の側方に対向する領域に迅速に膨張展開し、乗員の頭部などを保護する。
【0039】
このように、本実施の形態によれば、ガス導入部30から膨張ガスが供給されて展開する展開基部38と、この展開基部38に連続しこの展開基部38に次いで膨張ガスが供給されて展開する展開先端部39とを備えるエアバッグ本体部31を、上下寸法L1よりも幅寸法L2が長くなるように折り畳んだ第1の状態から一部を下方から上方へと押し込んで湾曲させた第2の状態として所定面24の上部に配置することにより、展開基部38の膨張展開によって展開先端部39が下方へと押し出される際に、この展開先端部39の展開基部38との連続部Bなどで膨張ガスの流れが止められることがなく、展開先端部39が下方へと解けると同時に膨張ガスが流入して展開先端部39が円滑に膨張するので、エアバッグ10を円滑に展開させることができる。
【0040】
また、展開基部38によって展開先端部39が包み込まれるので、エアバッグ本体部31が折り畳み作業者の熟練技術により折り畳まれていなくても展開基部38の膨張によって展開先端部39が予め設定された所定の展開方向へと確実に押し出され、所定の展開方向へと確実に、かつ安定的に展開できるとともに、エアバッグ本体部31の折り畳みが容易で、例えば機械による自動折りとしても折り畳みの精密さが不要であり、製造性が良好になる。特に、エアバッグ本体部31を折り畳む際には、展開基部38と展開先端部39とを巻き込んで折り畳むだけでよいので、製造性が良好になる。
【0041】
さらに、エアバッグ本体部31の第1の状態での集積部41の幅寸法L2を、車室14の所定面24の一部をなすセンターピラー22のエアバッグ本体部31の配置位置である車体パネル25から車室14側への突出寸法L3よりも大きく設定することで、展開基部38の膨張によって展開先端部39がセンターピラー22よりも車室14の内側に配置された状態となるので、エアバッグ10を所定の展開方向へとより円滑に展開させることができる。
【0042】
したがって、例えばセンターピラーを避けるための小袋などのガイド機能などをエアバッグ本体部31に別途設定する必要がなく、エアバッグ10を軽量化できるとともに、コストダウンを図ることができる。
【0043】
なお、上記第1の実施の形態のエアバッグ本体部31を、図4に示す第2の実施の形態のように折り畳んでもよい。具体的に、図4(a)ないし図4(d)に示すように、まず、内側の基布部と外側の基布部とを重ねて平面状に広げた状態から、展開先端部39を下端部39aから車体側すなわち所定面24側に巻き上げるように繰り返し折り返した後、図4(e)に示すように、展開基部38を、この展開先端部39の上部を包むように幅方向に交互に折り返して蛇腹状に折り畳んで、上下寸法よりも長手寸法である幅寸法(車幅方向の寸法)が大きく設定された楕円形状(長円形状)の集積部47を形成した第1の状態とする。さらに、図4(f)に示すように、この第1の状態の集積部47の下部の幅方向の中央部47aを下方から上方へと押し込んでこの中央部47aを内側に包み込むようにして、集積部47を半分に折り返す、すなわち幅方向に二つ折りとすることで、集積部47を、中央部に押込部48を有する逆U字状(への字状)に折り畳んだ第2の状態とする。このようにエアバッグ本体部31を折り畳むことにより、展開基部38が、集積部47の上部に幅方向に交互にアーチ状に折り返されて位置し、展開先端部39が、展開基部38により上側が包み込まれた逆U字状に繰り返し巻き込まれて巻き上げられた状態となり、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0044】
なお、上記の各実施の形態において、エアバッグ10は、自動車の側方の窓部18を覆う構成に限られず、所定面24に沿って所定方向に面状に膨張展開する適宜のエアバッグ装置に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば自動車の側部の窓部に沿って取り付けられ展開することで乗員を保護するエアバッグに適用できる。
【符号の説明】
【0046】
10 エアバッグ
14 車室
22 柱状体としてのセンターピラー
24 所定面
30 ガス導入部
31 エアバッグ本体部
38 展開基部
39 展開先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張ガスが導入されるガス導入部と、
このガス導入部に連続し、このガス導入部から導入された膨張ガスにより膨張して車室の所定面に沿って所定方向へと展開する袋状のエアバッグ本体部とを具備し、
前記エアバッグ本体部は、ガス導入部から膨張ガスが供給されて展開する展開基部、及びこの展開基部に連続しこの展開基部に次いで膨張ガスが供給されて展開する展開先端部を備え、所定方向に沿う方向の寸法よりも所定方向と交差する方向の寸法が長くなるように折り畳まれた第1の状態から一部が反所定方向へと押し込まれて湾曲された第2の状態とされて前記所定面の反所定方向側に配置される
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
エアバッグ本体部は、車室の所定面の一部をなし前記車室側に突出する柱状体の上方に位置し、第1の状態での幅寸法が前記エアバッグ本体部の配置位置から車室側への突出寸法よりも大きく設定され、所定面に沿って所定方向である下方へと展開する
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−224284(P2012−224284A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95416(P2011−95416)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】