説明

エアマット装置

【課題】患者の状態に合わせて高い快適感を得ることができるエアマット装置を提供する。
【解決手段】エアマット装置1は、独立した複数のセルが患者の寝姿勢時の身長方向に並設されてなるエアマット2と、各セルに作用する圧力分布を検出する圧力センサ8と、各セルに空気をそれぞれ所定の基準内圧値となるように供給する空気給排装置4と、圧力センサ8及び空気給排装置4に接続され、各セルの内圧を調整するように空気給排装置4を制御する制御装置5とを備えている。制御装置5は、圧力センサ8の検出信号を基に患者が寝返りできるかできないかを判定する体動可否判定部5bを有し、体動可否判定部5bが、患者が寝返りできないと判定すると、各セル内の内圧が基準内圧値よりも低くなるように空気給排装置4で各セル内圧を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば医療施設や介護施設等で使用されるエアマット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に開示されているエアマット装置は、独立した複数のセルが患者の寝姿勢時の身長方向に並設されてなるエアマットと、横たわる患者によって上記各セルに作用する圧力分布を検出するシート状の圧力センサと、各セルに接続され、各セルに空気をそれぞれ給排する空気給排装置とを備えていて、上記圧力センサ及び空気給排装置には、制御装置が接続されている。該制御装置は、各セル毎に予め設定された圧力設定値が記憶された圧力記憶部を有していて、上記圧力センサの検出値が上記圧力境界値を超えると、当該セルへの空気供給量を減らして当該セルにかかる圧力を低くするように上記空気給排装置を制御するようにしていて、これにより、横たわった患者の特定箇所に圧力が集中するのを回避して床ずれや痛みが生じ難くなるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−125313号公報(段落0049欄〜0051欄、図1、図4及び図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に、病状が比較的軽くてエアマット上で体を動かすことが可能な患者は、エアマットが柔らか過ぎると、寝返りを打つ際に踏ん張りが効かず快適感が損なわれてしまう。一方、病状が重くエアマット上で体を動かすことができない重篤患者は、エアマットが固いと高い圧力がかかる箇所において床ずれや痛みを生じ易くなるおそれがある。このことに対し、特許文献1のエアマット装置では、寝返りを打てる患者と打てない患者とで同じ制御を行っていて、これら2種の患者に対して何ら対策が講じられていない。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、患者の状態に合わせて高い快適感を得ることができるエアマット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、制御装置が、エアマット上で患者が寝返りできるかできないかを判断し、各状況に応じて、各セルへの空気供給量を調整するようにしたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、独立した複数のセルが患者の寝姿勢時の身長方向に並設されてなるエアマットと、上記各セルと患者との間に作用する圧力分布を検出する圧力センサと、上記各セルに接続され、該各セルに空気をそれぞれ所定の基準内圧値となるように給排する空気給排装置と、上記圧力センサ及び空気給排装置に接続され、上記各セルへの空気供給量を調整するように空気給排装置を制御する制御装置とを備えたエアマット装置において、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明では、上記制御装置は、上記圧力センサの検出した圧力分布の値を基に患者が寝返りできるか否かを判定する体動可否判定部を有し、該体動可否判定部が、患者が寝返りできないと判定した場合には、上記各セル内の内圧が基準内圧値よりも低くなるように上記空気給排装置で各セルの内圧を制御することを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、上記制御装置は、上記圧力センサの検出した圧力分布の値を基に患者が寝返りできるか否かを判定する体動可否判定部を有し、該体動可否判定部が、患者が寝返りできないと判定した場合には、上記各セル内の内圧が基準内圧値よりも低くなるように上記空気給排装置から各セルの内圧を制御することを特徴とする。
【0010】
第3の発明では、第2の発明において、上記制御装置は、患者が寝返りしたと判定する際に基準となる患者に加わる圧力の基準体圧低下量が予め設定された変化圧設定部を備え、上記体動有無判定部は、上記判定位置設定部が設定した判定位置において圧力センサで検出した値から体圧低下量を算出し、該体圧低下量と上記変化圧設定部の基準体圧低下量とを比較し、算出した体圧低下量が基準体圧低下量を超えた場合、患者が寝返りしたと判定する一方、算出した体圧低下量が基準体圧低下量に満たない場合、患者が寝返りしていないと判定することを特徴とする。
【0011】
第4の発明では、第2の発明において、上記体動有無判定部は、上記判定位置設定部が所定の時間前に設定した判定位置と、現在設定した判定位置とを比較し、所定の時間前に設定した判定位置から現在設定した判定位置までの距離が所定値を超えて変化している場合、患者が寝返りしたと判定する一方、所定の時間前に設定した判定位置から現在設定した判定位置までの距離が所定値に満たない場合、患者が寝返りしていないと判定することを特徴とする。
【0012】
第5の発明では、第3又は第4の発明のおいて、上記判定位置設定部が、患者の最大体圧位置を判定位置として設定することを特徴とする。
【0013】
第6の発明では、第3又は第4の発明のおいて、上記判定位置設定部が、患者の重心位置を判定位置として設定することを特徴とする。
【0014】
第7の発明では、第2から第6のいずれか1つに記載の発明において、上記体動可否判定部は、上記体動有無判定部が、患者が体動有と判定してから所定時間内にさらに体動有と判定すると、患者は寝返りできると判定する一方、上記体動有無判定部が、患者が体動有と判定してから所定時間内に体動無と判定すると、患者は寝返りできないと判定することを特徴とする。
【0015】
第8の発明では、第1から第7のいずれか1つに記載の発明において、上記エアマットは、複数のセルが表側に一列に並設された第1セル群と、複数のセルが上記第1セル群の下側に該第1セル群に沿って一列に並設された第2セル群とを備え、
上記制御装置は、第1セル群の隣り合う2つのセルが交互に減少・増加を繰り返すように上記空気給排装置を制御することを特徴とする。
【0016】
第9の発明では、第8の発明において、上記制御装置は、上記体動可否判定部で患者が寝返りできないと判定すると、上記第1セルへの空気供給量の減少・増加の繰り返す周期を短くするように上記空気給排装置を制御することを特徴とする。
【0017】
第10の発明では、第8又は第9の発明において、上記エアマットは、上記第2セル群の下側に該第2セル群に沿って一列に並設された第3セル群を備え、上記制御装置は、上記第3セル群の各セル内の圧力が所定値以上で維持されるように上記空気給排装置を制御することを特徴とする。
【0018】
第11の発明では、第8から第10のいずれか1つに記載の発明において、上記制御装置は、上記圧力センサが検出する圧力分布の値に基づいてそれぞれ患者の姿勢及び体型を判定する体位判定部及び体型判定部と、上記体動可否判定部、上記体位判定部及び上記体型判定部の各判定結果の組み合わせにそれぞれ対応する上記各セル内の基準内圧値を格納する基準圧格納部とを備え、上記各セル内の圧力が上記体動可否判定部、上記体位判定部及び上記体型判定部の各判定結果の組み合わせに対応する基準内圧値となるように上記空気給排装置から各セルへ給排する空気供給量を制御することを特徴とする。
【0019】
第12の発明では、第9から第11のいずれか1つに記載の発明において、上記制御装置は、上記各第2セル群の各セル毎に予め設定された圧力設定値が記憶された圧力記憶部を有し、上記圧力センサが検出した圧力分布の値が上記圧力設定値を超えると、第2セル群の上記圧力設定値を超えたセルの内圧を時間の経過に伴って繰り返すように上記空気給排装置を制御することを特徴とする。
【0020】
第13の発明では、第12の発明において、上記制御装置は、上記体動可否判定部で患者が寝返りできないと判定すると、上記各セルの内圧が基準内圧値よりも低くなるように上記空気給排装置で各セル内圧を低減制御した後、上記圧力センサが検出した圧力分布の値が上記圧力設定値を超えたか否かを判定する一方、上記体動可否判定部で患者が寝返りできると判定すると、上記各セルの内圧を基準内圧値に維持したままで、上記圧力センサが検出した圧力分布の値が上記圧力設定値を超えたか否かを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明では、エアマット上の患者が寝返りできない場合、エアマットが柔らかくなるので、患者に対して高い圧力が加わる箇所が減って床ずれや痛みの発生を抑制することができる。一方、エアマット上の患者が寝返りできる場合、エアマットのセル内の圧力が基準内圧値のまま維持されているので、患者はエアマット上で踏ん張り易い。したがって、患者はエアマット上で寝返りし易く、高い快適感を得ることができる。
【0022】
第2の発明では、制御装置が圧力センサが検出した圧力分布の値に基づいてエアマット上の患者の寝返りの有無を自動で判断するので、看護師や介護者等が患者の状態を自ら判断してエアマット装置の操作を行うといった作業がなくなる。したがって、看護師や介護者等に対する介護の負担が減り、使い勝手の良いエアマット装置にできる。
【0023】
第3の発明では、寝返りの有無の判定に体圧の変化を利用するので、患者が一瞬動くような場合であっても、寝返りしたか否かを判定できるようになり、確実に患者が寝返りしたのを検出することができる。
【0024】
第4の発明では、寝返りの有無の判定に、所定時間における判定位置の移動距離を利用するので、患者が時間をかけてゆっくり寝返りをした場合であっても、寝返りしたか否かを判定できるようになり、確実に患者が寝返りしたのを検出することができる。
【0025】
第5及び第6の発明では、判定位置を患者の最大体圧位置としたり、或いは、患者の重心位置としたりすることもでき、これらの位置で寝返りの可否を判定すれば、確実に患者の体が動いたか否かを判定できる。
【0026】
第7の発明では、制御装置が圧力センサが検出した圧力分布の値に基づいてエアマット上で患者が寝返りできるか否かを自動で判断するので、看護師や介護者等が患者の状態を自ら判断してエアマット装置の操作を行うといった作業をする必要がなくなる。したがって、看護師や介護者等に対する介護の負担が減り、使い勝手の良いエアマット装置にできる。
【0027】
第8の発明では、第1セル群の隣り合うセルが交互に減少・増加を繰り返すことにより、患者の体に連続して高い圧力がかからないようになり、患者の血管の圧迫を緩和して床ずれや痛みの発生を抑制することができる。
【0028】
第9の発明では、寝返りできない患者に対して連続して高い圧力が加わる時間が短くなるので、床ずれや痛みが発生し易い寝返りできない患者であっても、効果的に血管の圧迫を緩和して床ずれや痛みの発生を抑制することができる。
【0029】
第10の発明では、第1セル群の各セル及び第2セル群の各セルへの空気供給量が減少した時に、患者がベッドフレーム等に接触するのを確実に防止でき、患者に対する安全性の高いエアマット装置にできる。
【0030】
第11の発明では、制御装置が、エアマット上の患者の状態、すなわち、患者の姿勢や体型、さらには、寝返りできるか否かを自動で判定して、エアマットをそれぞれの組み合わせに応じた最適な硬さとなるように空気給排装置が制御される。したがって、看護師や介護者等のエアマット上の患者に対する負担が減り、使い勝手の良いエアマット装置にできる。
【0031】
第12の発明では、圧力センサに所定の高い圧力が加わると、当該箇所に対応する第2セル群のセルに連続して高い圧力がかからなくなるなるので、患者の床ずれや痛みの発生を抑制することができる。
【0032】
第13の発明では、制御装置は、圧力センサに所定の高い圧力が加わると、床ずれや痛みが発生し易い寝返りできない患者に対して、エアマット全体の硬さを柔らかくした後で当該箇所に対応する位置の第2セル群のセルへの空気供給量を周期的に減少・増加を繰り返すので、寝返りできない患者に対して効果的に血管の圧迫を緩和することができ、床ずれや痛みの発生を抑制させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係るエアマット装置を備えたベッドの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るエアマット装置のブロック図である。
【図3】ベッドフレームに載置された状態のエアマットの側面図であり、図3(a)は通常状態を、図3(b)、(c)は、第1セル群のセルが交互に減少・増加を繰り返すとともに、第2セル群の特定のセルが減少・増加を繰り返している状態を示す。
【図4】制御装置のブロック図である。
【図5】本発明の実施形態における制御装置の圧切替モード及び部分圧切替モードの制御を示すグラフであって、第1セル群のセル及び第2セル群の特定のセルの動作タイミングを示す。
【図6】エアマット上に横たわる患者に作用する圧力分布を示した図である。
【図7】体位判定、体動判定及び体型判定の各組み合わせに応じた各セル内の内圧値の組み合わせをそれぞれ示した図である。
【図8】エアマット装置の自動運転における制御動作のフローチャートをである。
【図9】体位判定処理における制御動作のフローチャートである。
【図10】体動判定処理における制御動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に係るエアマット装置1を備えたベッドBの斜視図である。エアマット装置1は、ベッドBのベッドフレームFに載置されて使用されるエアマット2と、エアマット2上の患者Y(図3(a)に示す)の体圧を検出する圧力センサ8(図3に示す)と、上記エアマット2への空気供給量を制御する制御ボックス3とを備えていて、該制御ボックス3は、電源コードWによって電源の供給を受けていて、上記ベッドフレームFに取り付けられたヘッドボードHbに引っ掛けて使用するようになっている。尚、エアマット2及び制御ボックス3は、畳や床の上に直接置いて使用してもよい。
【0036】
上記エアマット2は、図3に示すように、患者の寝姿勢の身長方向に並設された独立した複数のセルが表側に一列に並設された第1セル群12と、複数のセルが上記第1セル群12の下側に該第1セル群12に沿って一列に並設された第2セル群11と、該第2セル群11の下側に該第2セル群11に沿って一列に並設された第3セル群10を備えている。これら第1セル群12、第2セル群11及び第3セル群10の各セルは、柔軟な樹脂シートで気密に構成されていて、その内部には、空気が充填されるようになっている。尚、第1セル群12の各セルを第1セル12A、12B…と呼び、第2セル群11の各セルを第2セル11A、11B、…、11Nと呼び、第3セル群10の各セルを第3セル10、10、…と呼ぶ。
【0037】
上記第1セル12A、12Bは、エアマット2の幅方向に延びる筒状をなしていて、患者Yの頭側から足先に向けて交互に14個づつ並設されている。上記第1セル12A、12A、…は互いに連通していて、上記制御ボックス3から延びる1本の配管22A(図2に示す)が接続され、この配管22Aを介して全ての第1セル12A、12A、…に同時に空気が給排されるようになっている。また、上記第1セル12B、12B、…も互いに連通していて、上記制御ボックス3から延びる1本の配管22Bが接続され、この配管22Bを介して全ての第1セル12B、12B、…に同時に空気が給排されるようになっている。すなわち、それぞれ第1セル12A及び第1セル12Bは、別々の配管系統により空気が給排されていて、各配管系統に対してそれぞれ空気供給量を調整できるようになっている。したがって、図3(b)、(c)に示すように、第1セル12A及び第1セル12Bを交互に減少・増加を繰り返すことでエアマット2上の患者Yの体全体の血管の圧迫を緩和して床ずれや痛みの発生を抑えることができるようになっている。
【0038】
上記第2セル11A、11B、…、11Nは、エアマット2の幅方向に延びる筒状をなしていて、患者Yの頭側から足先に向けて14個並設されている。上記第2セル11A、11B、…、11Nの径は、上記第1セル12A、12Bの径よりも大きく設定されていて、各第2セル11A、11B、…、11Nは、上記隣り合う第1セル12A、12Bに跨るように対応配置されている。上記第2セル11A、11B、…、11Nには、制御ボックス3から延びる14本の配管21A〜21N(図2に一部を示す)がそれぞれ接続され、これら配管21A〜21Nを介してそれぞれ独立に空気が給排されるようになっている。したがって、各第2セル11A、11B、…、11Nへの空気供給量を独立して調整して内圧を制御できるようになっていて、各第2セル11A、11B…、11Nの特定のセルへの空気供給量を減少・増加させてセルの内圧を調圧したり、周期的に減少・増加を繰り返すことができるようになっている(図3(b)、(c)に一部を示す)。
【0039】
上記各第3セル10は、エアマット2の幅方向に延びる筒状をなしていて、上記第2セル11A、11B、…、11Nの下側において患者Yの頭側から足先に向けて13個並設され、それぞれが上記各第2セル11A、11B、…、11Nの間に位置するようになっている。上記各第3セル10には、制御ボックス3から延びる1本の配管20(図2に示す)が接続され、この配管20を介して全ての第3セル10に同時に空気が給排されるようになっていて、上記第1セル12A、12B及び第2セル11A、11B、…、11Nへ給排する空気量が減少してしまうような非常時であっても患者YがベッドフレームFに接触して、該ベッドフレームFの硬さを直接感じる状態となるのを確実に防止できるようになっている。
【0040】
尚、第1セル12A、12B、第2セル11A、11B、…、11N及び第3セル10の各個数は上記に記載した個数に限らず、複数設けられていればよい。
【0041】
また、上記各第2セル11A、11B、…、11Nは、2つの第1セル12A、12Bに跨るように対応配置されているが、第1セル12A、12Bのうちの1つに対応配置されていてもよいし、3つ以上の12A、12Bに跨るように対応配置されていてもよい。
【0042】
上記圧力センサ8は、図6に示すように、エアマット2上に横たわる患者Yの体の各部分に作用する圧力の分布を検出するものであり、後述する制御装置5に接続され、検出した圧力分布に係る信号を制御装置5に送信するようになっている。上記圧力センサ8は、図3に示すように、第1セル12A、12Bの長手方向に延びるシート状の形態をしていて、複数の感圧点が上記第1セル12A、12Bの長手方向に所定の間隔をあけて設けられている。そして、上記圧力センサ8は、上記第1セル12A、12B毎に設けられ、且つ、第1セル12A、12B上に配置されていて、これにより、エアマット2上で患者Yに作用する圧力が圧力センサ8に直接伝えられるようになり、精密な圧力測定が可能となっている。また、上記第1セル12A、12Bは、2つ配管22A、22Bにそれぞれ接続されているが、2つの配管に限るものではなく、3つ以上の配管に接続されるようにして各配管に接続されているセル毎に細かい調圧を行うようにしても良い。
【0043】
尚、上記圧力センサ8は、第1セル12A、12Bと第2セル11A、11B、…、11Nとの間に設けるようにしてもよい。また、本実施形態では、図3に示すように、全ての第1セル12A、12B上に圧力センサ8を配置しているが、圧力検出を省略しても問題とならなければ全ての第1セル12A、12B上に配置する必要はなく、例えば、患者Yの頭側端や足側端に位置する第1セル12A、12B上に圧力センサ8を配置しなくてもよい。
【0044】
上記制御ボックス3は、図2に示すように、上記エアマット2に接続され、該エアマット2の第1セル12A、12B、第2セル11A、11B、…、11N及び第3セル10に空気をそれぞれ給排する空気給排装置4と、上記圧力センサ8の検出値に基づいて上記空気給排装置4を制御する制御装置5と、設定等を入力し、且つ、表示する操作パネル6とを備えている。
【0045】
上記空気給排装置4は、空気を継続して吐出可能な電動モータを備えた従来周知の第1空気ポンプ41及び第2空気ポンプ48と、上記第1空気ポンプ41に吐出管46を介して接続され、第1空気ポンプ41から吐出された空気を第1セル12A、12Bに分配する分配弁42と、上記吐出管46内の圧力を検出する第1空気圧センサ43と、上記第2空気ポンプ48から吐出された空気を第2セル11A、11B、…、11N及び各第3セル10、10…に分配する電磁弁44と、上記第2セル11A、11B、…、11N及び第3セル10、10…内の圧力をそれぞれ検出する第2空気圧センサ45A〜45N及び第3空気圧センサ49とを備えている。
【0046】
上記分配弁42は、第1セル12A、12Bに連通する配管22A、22Bが接続される独立した接続口を有している。
【0047】
上記分配弁42には、図示しない制御モータにより位置が変更可能な弁体が内蔵されていて、上記制御装置5からの信号に基づいて弁体の位置を変更することにより、上記接続口のうち1つの接続口を開放するとともに他の接続口を閉塞するようになっている。すなわち、弁体の位置を変更して、例えば、第1セル12Aに接続される配管22Aの接続口を開放すると、他の接続口が閉塞されて、第1セル12Aに接続される配管22Aのみが吐出管46に連通するようになっている。また、第1セル12A内の空気を排出する際には、弁体を移動させて図示しない排気口から排出させるようにしている。
【0048】
さらに、分配弁42には、弁体の位置を検出する弁体位置検出センサ47が設けられている。この弁体位置検出センサ47は、上記制御装置5に接続されていて、図示しないが、弁体に一体化されたスリット付きの円盤と、円盤の表側から光を照射する発光素子と、発光素子から照射された光のうち、スリットを通過して円盤の裏側に達した光を検出する受光素子とを備えている。スリットを通過した光を受光素子で検出することで、弁体の位置を得ることができるようになっている。
【0049】
上記第1空気圧センサ43は、第1空気ポンプ41の吐出管46に設けられている。上記第1空気圧センサ43は、吐出管46内の圧力を随時検出して電気信号に変換し、上記制御装置5に信号を送るように構成されている。例えば、第1セル12A内の圧力を検出する場合、分配弁42の弁体を移動させ、第1セル12Aに接続される配管22Aと吐出管46とを連通させて上記第1セル12A内の圧力を検出するようになっている。尚、第1空気圧センサ43は、上記第1空気ポンプ41に空気が加わっていない状態でキャリブレーション(ゼロ点補正)が行われるようになっていて、これにより、第1セル12A、12B内の圧力を精度良く測定できるようになっている。尚、上記第1空気圧センサ43を配管22A及び22Bに設けて、第1セル12A及び12B内の圧力を直接検出するようにしてもよい。
【0050】
電磁弁44は、上記第2セル11A、11B、…、11N及び第3セル10にそれぞれ接続される配管22A〜22N、23毎に配設された各電磁弁の集合を示していて、上記制御装置5からの信号に基づいて弁体の位置を変更することにより、第2セル11A、11B、…、11N及び第3セル10にそれぞれ接続される配管22A〜22N、23の接続口を独立して開閉することができるようになっている。停電時のように電力供給がなされない場合には、電磁弁44を閉状態にして、第3セル10から空気が抜けてしまうのを防止して、当該第3セル10を膨張状態で維持できるようになっている。また、第2セル11A、11B、…、11N及び各第3セル10の空気を排出する際には、弁体を移動させて図示しない排気口から排出させるようにしている。
【0051】
また、電磁弁44には、上記分配弁42と同様に、制御装置5に接続された弁体位置検出センサ47が設けられていて、該弁体位置検出センサ47により電磁弁44の弁体の位置が検出できるようになっている。
【0052】
上記各第2空気圧センサ45A〜45N及び第3空気圧センサ49は、配管21A〜21N及び配管20にそれぞれ設けられていて、各管内の圧力を検出して電気信号に変換し、上記制御装置5に当該電気信号を送るように構成されている。
【0053】
操作パネル6は、介護者や看護師等の操作者が各種設定値等を所定のスイッチで入力したり、エアマット上の患者Yの状態を表示或いは報知するためのものである。すなわち、操作パネル6には、図示しないが、第1セル12A、12B、第2セル11A、11B、…、11N及び第3セル10内の内圧値P等を設定するための各種スイッチや、図4に示すように、圧力センサ8により検出した圧力分布の表示モニタ等が設けられている。
【0054】
上記制御装置5は、図示しないが、中央演算処理装置(CPU)や、制御プログラムが格納されたメモリ等を備えている。上記制御装置5には、圧力センサ8、上記空気給排装置4の第1空気ポンプ41、第2空気ポンプ48、分配弁42、第1空気圧センサ43、第2空気圧センサ45A〜45N、第3空気圧センサ49、電磁弁44及び弁体位置検出センサ47、47が接続され、さらに、上記操作パネル6の各スイッチが接続されていて、これらから信号が入力されるようになっている。そして、上記制御装置5は、上記操作パネル6の各スイッチ、圧力センサ8、第1空気圧センサ43、第2空気圧センサ45A〜45N及び弁体位置検出センサ47、47から入力された信号を処理して、第1空気ポンプ41、第2空気ポンプ48、分配弁42及び電磁弁44を制御するようになっている。
【0055】
上記制御装置5には、図4に示すように、上記圧力センサ8の圧力分布に基づいて患者の姿勢を判定する体位判定部5aが設けられている。
【0056】
該体位判定部5aは、予め設定された所定の基準値(基準体重、基準荷重範囲及び基準荷重比率)と、上記圧力センサ8で検出された検出値とに基づいて、患者Yが離床、端座位、背上げ及び仰臥位のうちのどの体位となっているかを判定するようになっている。例えば、圧力センサ8で検出した検出値に所定の係数を掛けて算出した値を推定体重とし、該体重が、上記基準体重W未満であれば患者Yは離床していると判定し、圧力センサ8で検出した検出値から算出した荷重範囲が基準荷重範囲内、すなわち、エアマット2の左右端から距離L以内か若しくは頭側端及び足側端から距離L以内であれば患者Yは端座位であると判定するようになっている。尚、本実施形態では、頭側端及び足側端から同じ距離L以内であれば患者Yは端座位であると判定するようになっているが、頭側端からの距離と足側端からの距離を異なる値に設定してもよい。また、エアマット2を頭側、中間、足側に略3等分し、上記圧力センサ8で検出した圧力分布から算出した荷重の全体に対する中間部分の比率が基準荷重比率X%を超えれば患者Yは背上げ状態であると判定し、X%を超えなければ患者Yは仰臥位であると判定するようになっている。
【0057】
尚、上記荷重比率は、頭側、中間及び足側と3つに分けて算出する場合に限らず、例えば4つの区分に分けてもよいし、区分数にはこだわらない。また、各区分を等しい範囲で区分する必要はない。さらには、上述の如きエアマット2の長手方向に複数区切って荷重比率を算出する方法に限らず、エアマット2全体に対する所定の位置(例えば、臀部付近の最大体圧位置や患者Yの重心位置)の荷重比率を算出するようにしてもよい。
【0058】
また、上記制御装置5には、上記圧力センサ8の検出信号に基づいて、患者Yが寝返りできるかできないかを判定する体動可否判定部5b及び患者Yが寝返りをしたか否かを判定する体動有無判定部5cと、寝返りしたか否かを判定する位置を上記エアマット2上で設定する判定位置設定部5dと、寝返りしたと判定する際に基準となる患者Yに作用する圧力の基準体圧低下量が予め設定された変化圧設定部5eとが設けられている。さらに、上記制御装置5には、上記体動有無判定部5cで患者Yが寝返りしたと判定した時間を記憶する体動時間記憶部5fと、患者Yが寝返りできないと判定する際に基準となる所定の経過時間を設定する判定時間設定部5gとが設けられている。本発明の体動とは、寝返りのことを示していて、体動できる及び体動できないとは、寝返りできる及び寝返りできないというこをと示している。
【0059】
上記判定位置設定部5dは、寝返りするか否かの判定を行う患者Yの所定位置を、判定位置として予め設定しておくものであって、上記圧力センサ8で検出する圧力分布に基づいて、当該判定位置がエアマット2上でどの位置となるかを特定するようになっている。本実施例では、上記判定位置は、患者Yの重心位置か、若しくは最大体圧位置を選択して、予め設定できるようになっている。尚、当該判定位置は、患者Yの重心位置や最大体圧位置でなく、別の位置を設定するようにしてもよい。また、上記判定位置として設定する最大体圧位置は、特定の領域に限定した最大体圧位置であってもよく、例えば、臀部付近の最大体圧位置として、他の頭や背中付近の最大体圧位置と区別するようにしてもよい。
【0060】
上記体動有無判定部5cは、現在の判定位置と時間t前の判定位置とを比較し、時間t前の判定位置から現在の判定位置までの距離が所定の基準距離Lを超えて変化していれば患者Yが寝返りをしたものと判定するようになっている。また、制御装置5は、上記時間t前の判定位置から現在の判定位置までの距離が所定の基準距離Lを超えて変化していなくても、上記判定位置の圧力センサ8で検出した体圧低下量が上記変化圧設定部5eで設定された基準体圧低下量X%を超えれば、患者Yが寝返りしたと判定するようになっている。一方、上記体動有無判定部5cは、時間t前の判定位置から現在の判定位置までの距離が所定の基準距離Lを満たさず、且つ、上記判定位置の圧力センサ8で検出した体圧低下量が上記変化圧設定部5eでの基準体圧低下量X%を満たさなければ、患者Yが寝返りしていないと判定するようになっている。
【0061】
上記体動可否判定部5bは、上記体動時間記憶部5fで記憶された患者Yが寝返りしたと判定した時間から、上記判定時間設定部5gで設定された所定の経過時間tを超え、且つ、経過時間tを満たないときに上記体動有無判定部5cで寝返りをしたと判定すると、患者Yは自力で寝返りできると判定する一方、上記体動有無判定部5cによって患者Yが寝返りしたと判定してから所定の経過時間tを超えた後に上記体動有無判定部5cで寝返りしたと判定すると、患者Yは自力で寝返りできないと判定するようになっている。上記経過時間は経験則から設定されるようになっている。即ち、寝返りできる患者Yは、経過時間t〜tの間に寝返りをすることが経験上知られている一方、寝返りできない患者Yは、看護師や介護者によって定期的に寝返りがなされるが、寝返りしてから次の寝返りをするまで経過時間tを超えることが経験上知られていて、これらの経験則に基づく判定ロジックによって自力で寝返りできるか否かを判定するようになっている。
【0062】
また、上記制御装置5には、上記圧力センサ8で検出したの圧力分布に基づいて患者の体型を判定する体型判定部5hが設けられている。
【0063】
上記体型判定部5hは、圧力センサ8で検出した圧力分布から身長を算出し、且つ、圧力センサ8で検出した検出値に所定の係数を掛けて算出した算出値から体重を推定し、これら算出した身長・体重に基づいて患者Yの体型を判定するようになっている。本実施形態では、かなり細い、細い、普通、太い、かなり太い、の5段階の範囲が予め設定されていて、患者Yがどの範囲に当てはまるかを判定するようになっている。尚、患者Yの体型は上記の如き5段階でなくてもよく、任意の段階を設定すればよい。
【0064】
また、上記制御装置5には、上記体動可否判定部5b、上記体位判定部5a及び上記体型判定部5hの各判定結果の組み合わせにそれぞれ対応する第1セル12A、12B、第2セル11A、11B、…、11N及び第3セル10の内圧値Pを格納する基準圧格納部5iが設けられている。上記内圧値Pは、各第1セル12A、12Bの内圧値Pn1、第2セル11A、11B、…、11Nの内圧値Pn2及び第3セル10の内圧値Pn3で構成されていて、本実施形態ではこれら3つの組み合わせが10通りに設定されて上記基準圧格納部5iに格納されている。当該10通りの組み合わせは、図7に示すように、基準圧Nを境に、該基準圧Nより低い圧力を設定圧S1〜S4の4段階に、基準圧Nより高い圧力を設定圧H1〜H5の5段階に分けて設定されていて、設定圧S1から設定圧S4になるにつれて圧力が低くなり、設定圧H1から設定圧H5になるにつれて圧力が高くなるように設定されている。尚、内圧値Pn1、Pn2及びPn3の組み合わせは、上述の如く10通りでなくてもよく、任意の数を設定すればよい。
【0065】
また、上記制御装置5には、圧力センサ8において所定の高圧力値が検出されたか否かを判定する基準とするために、上記第2セル11A、11B、…、11Nの位置毎に予め設定された圧力設定値Nmaxが記憶された圧力記憶部5jが設けられている。
【0066】
そして、上記制御装置5は、上記第1セル12A、12B、第2セル11A、11B、…、11N及び第3セル10内の圧力が上記体位判定部5a、上記体動可否判定部5b及び上記体型判定部5hの各判定結果の組み合わせに対応する内圧値Pとなるように上記空気給排装置4から第1セル12A、12B、第2セル11A、11B、…、11N及び第3セル10への空気供給量を調整して内圧を制御するようになっている。上記エアマット2において、第3セル10内の圧力は、第1セル12A、12B及び第2セル11A、11B、…、11Nから空気が抜けた際に、患者YがベッドフレームFに当たらないようにすることができる程度の圧力か、或いは、患者YがベッドフレームFに当たって硬いと感じることを防止する軽いクッション性を有する程度の圧力となっている。したがって、第1セル12A、12B及び第2セル11A、11B、…、11Nのセル内圧が減少した時に、患者YがベッドフレームF等に接触してしまい、該ベッドフレームFの硬さを直感するのを確実に防止でき、患者Yに対する安全性の高いエアマット装置1にできる。
【0067】
また、制御装置5は、第2セル11A、11B、…、11Nへの空気供給量を調整して内圧を制御することにより、患者Yの寝姿勢をコントロールできるようになっている。当該技術内容は、特開2009−183490号公報に開示された技術内容を利用していて、上記制御装置5は、圧力センサ8により検出された圧力分布からエアマット2にかかる荷重を算出し、該算出した荷重に所定の係数を掛けたものを上記内圧値Pn2に加えて目標圧力とするようにしていて、上記第2セル11A、11B、…、11N内の圧力が上記目標圧力となるように、空気給排装置4を制御して、患者Yの寝姿勢をコントロールするようになっている。
【0068】
尚、本実施形態では、制御装置5により、エアマット2上の患者Yの寝姿勢をコントロールしているが、本発明は、患者Yの寝姿勢をコントロールしないエアマット2においても適用することができる。
【0069】
また、上記制御装置5は、第1セル12A、12Bへの空気供給量を調整して内圧を静止モードと圧切替モードとに変更できるようになっている。静止モードにおける制御装置5は、第1セル12A、12Bを上記内圧値Pn1となるまで空気を供給し、その状態を維持するようになっている。一方、圧切替モードの制御装置5は、第1セル12A、12Bを上記内圧値Pn1となるまで空気を供給し、その後、図3(b)に示すように、第1セル12B内の圧力を内圧値Pn1で維持したまま、第1セル12Aから空気を抜いて該第1セル12Aを収縮させ、その状態を所定時間維持した後、図3(c)に示すように、第1セル12Aに内圧値Pn1となるまで空気を供給し、第1セル12Bから空気を抜いて該第1セル12Bを収縮させる動作を繰り返すように、空気給排装置4を調整して内圧を制御するようになっている。すなわち、上記制御装置5は、隣り合う2つの第1セル12A、12Bの内圧が交互に減少・増加を繰り返して一方が減少状態の際に他方が増加状態となるように空気給排装置4を調整して内圧を制御するようになっている。尚、上記静止モード及び圧切替モードは、初期設定後に自動で圧切替モードとなるように制御されているが、患者Yの個々の状況に応じて静止モードに切り替えることができるように上記操作パネル6において手動で切替可能となっている。
【0070】
さらに、上記制御装置5は、上記圧切替モードにおいて、第1セル12A、12Bが膨張又は収縮している所定時間を短くする圧変動重視モードと、当該所定時間を長くする安定重視モードとに切り替えられるようになっている。尚、上記第1セル12A、12Bの膨張又は収縮のモードは、上記圧変動重視モード及び安定重視モードだけでなく、例えば、第1セル12A、12Bが膨張又は収縮している所定時間を数回短くし、その後、第1セル12A、12Bが膨張又は収縮している所定時間を数回長くするようなモードであってもよい。さらに、膨張又は収縮するたびに、膨張又は収縮している所定時間が変更されたり、第1セル12A、12B内の内圧値Pn1が変更されたり、第1セル12A、12Bの収縮したときの内圧値が変更されたりするようなモードであってもよい。
【0071】
また、上記制御装置5は、上記圧力センサ8の検出値が上記圧力記憶部5jに記憶された圧力設定値Nmaxを超えると、隣り合う2つの第1セル12A、12Bの一方が増加状態若しくは減少状態を維持した安定状態、すなわち、上記第1セル12A、12Bが変化している途中の状態を除いて、上記圧力設定値Nmaxを超えた位置にある第2セル11A、11B、…、11Nの内圧の減少・増加を時間の経過に伴って繰り返すように上記空気給排装置4を制御するようになっている。尚、第2セル11A〜11Nが第1セル群12の3つ以上のセルに跨っている場合、制御装置5は、上記圧力設定値Nmaxを超えた位置にある第2セル11A、11B、…、11Nに対応する第1セル群12の複数のセルの少なくとも1つが増加状態を維持している間に、上記圧力設定値Nmaxを超えた位置にある第2セル11A、11B、…、11Nの内圧の減少・増加を時間の経過に伴って繰り返すように上記空気給排装置4を制御するようになっている。
【0072】
図5は、横軸を時間、縦軸を第1セル12A、12B及び第2セル11A、11B、…、11Nへの空気供給量を増減させたときの第1セル12A、12B及び第2セル11A、11B、…、11N内の圧力値を示したグラフであり、上記圧力センサ8の検出値が圧力設定値Nmaxを超えたときの第1セル12A、12Bの動作に対する第2セル11A、11B、…、11Nの動作タイミングを示している。D1は、第1セル12Aのデータを、D2は、第1セル12Bのデータを、D3は、第2セル11A、11C、11E、…、11Mのデータを、D4は、第2セル11B、11D、11F、…、11Nのデータを示していて、圧力センサ8の検出値が第2セル群11の隣り合う2つのセル(例えば、図6に示す第2セル11C、11D)の位置で圧力設定値Nmaxを超えた場合の動作を示している。また、図中のパターンAは、第1セル12A及び第1セル12Bの減少・増加の切替が1回行われる毎に、隣り合う2つの第2セル11A、11B、…、11Nが交互に1回づつ収縮するパターンを示し、図中のパターンBは、第1セル12A及び第1セル12Bの減少・増加の切替が3回行われる毎に、隣り合う2つの第2セル11A、11B、…、11Nが交互に1回づつ収縮するパターンを示している。
【0073】
尚、介護者や看護師等の操作者は、操作パネル6を操作することによって、患者Yの状態に合わせてパターンA及びパターンBを変更することができる。
【0074】
また、上記第1セル12A及び第1セル12Bを交互に減少・増加させるパターンは、上述のパターンに限らず、別のパターンであってもよい。例えば、第1セル12A及び第1セル12Bの減少・増加の切替が1回行われる毎に、第2セル11A、11B、…、11Nのうちの1つが1回収縮するようにしてもよいし、第2セル11A、11B、…、11Nのうち隣り合う3つが交互に1回ずつ収縮するようにしてもよい。
【0075】
また、パターンAを数回繰り返した後、パターンBを数回繰り返すようであってもよい。
【0076】
さらには、患者Yの状態(体動の可否、体型の違い等)に応じてパターンを変更するようにしてもよい。
【0077】
次に、エアマット装置1の自動運転における具体的な制御動作を図8に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0078】
まず制御ボックス3の電源をONにし、操作者が操作パネル6を操作して、例えば、第1セル12A、12B、第2セル11A、11B、…、11N及び第3セル10内の内圧値Pn1、Pn2、Pn3等を設定する。
【0079】
その後、図8のフローチャートのステップSA1に進む。このステップSA1では、制御装置5が、電磁弁44を作動させて弁体の位置を変更させ、第3セル10、10…に接続される配管20と、第2空気ポンプ48とを連通させて第2空気ポンプ48を作動させる。これにより、第3セル10に空気が供給される。この間、第3セル10内の圧力は、上記第3空気圧センサ49により検出されていて、基準圧Nの内圧値Pn3となったときに弁体の位置を変更して、第3セル10に接続される配管20を閉状態にする。
【0080】
次いで、制御装置5は、分配弁42の弁体の位置を変更させ、第1セル12Aに接続される配管22Aと、第1空気ポンプ41の吐出管46とを連通させて第1空気ポンプ41を作動させることにより、第1セル12Aに空気が供給される。第1セル12Bにも同様にして空気を供給する。そして、上記第1セル12A、12Bは基準圧Nの内圧値Pn1に設定された状態で維持される。
【0081】
しかる後、制御装置5は、電磁弁44の弁体の位置を変更させ、第2セル11Aに接続される配管21Aと第2空気ポンプ48とを連通させて、基準圧Nの内圧値Pn2となるまで上記第2セル11Aに空気を供給するように空気給排装置4を制御する。このようにして、各第2セル11A、11B、…、11Nに対して順に空気を供給した後、ステップSA2に進む。
【0082】
ステップSA2では、操作パネル6に圧力センサ8の検出値に基づいて図6に示すような圧力分布を表示する。そして、その後、ステップSA3に進んで体位判定処理が開始される。
【0083】
ここでステップSA2における体位判定処理の具体的な制御動作を図9に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0084】
まずステップSB1では、上記圧力センサ8で検出した検出値に所定の係数を掛けて体重を算出する。
【0085】
次に、ステップSB2では、ステップSB1で算出した体重が上記操作パネル6の各スイッチにより入力された所定の基準体重Wを超えたかどうかを判定する。このステップSB2の判定がNOであるとき、すなわち、算出した体重が基準体重Wを超えていないと判定したときはステップSB3に進み、患者Yが離床しているとして終了する。
【0086】
一方、ステップSB2の判定がYESであるときには、ステップSB4に進み、圧力センサ8で検出した圧力分布が基準荷重範囲内であるか否か、すなわち、エアマット2の左右端から距離L以内か若しくは頭側端及び足側端から距離L以内であるかどうかを判定する。
【0087】
このステップSB4の判定がYESであるとき、すなわち、圧力センサ8で検出した圧力分布がエアマット2の左右端から距離L以内か若しくは頭側端及び足側端から距離L以内であるときには、ステップSB5に進み、患者Yが端座位であるとして終了する。
【0088】
一方、ステップSB4の判定がNOであるときには、ステップSB6に進み、中間比率が基準荷重比率X%を超えているかどうかを判定する。
【0089】
このステップSB6の判定がYESであるとき、すなわち、中間比率が基準荷重比率X%を超えているときには、ステップSB7に進み、患者Yが背上げ状態であるとして終了する。
【0090】
一方、ステップSB6の判定がNOであるときには、ステップSB8に進み、患者Yが仰臥位であるとして終了する。
【0091】
体位判定処理が終了し、ステップSA3の判定がNOであるとき、すなわち、患者Yが離床している、端座位である及び背上げ状態であると判定すると、ステップSA6に進み、後述する体動判定処理を行う。
【0092】
一方、ステップSA3の判定がYESであるとき、すなわち、患者Yが仰臥位であると判定すると、ステップSA4に進み、圧力センサ8の圧力分布から患者Yの身長を算出し、さらに、圧力センサ8で検出した検出値に所定の係数を掛けて算出した値を患者Yの体重と推定してステップSA5に進む。
【0093】
上記ステップSA5では、上記ステップSA4で算出された身長・体重に基づいて患者Yの体型を設定する。本実施例では、かなり細い、細い、普通、太い、かなり太い、の5段階の範囲が予め設定されていて、患者Yがどの体型であるかを体型判定部5hで判定する。
【0094】
そして、次のステップSA6に進んで体動判定処理が開始される。ここでステップSA6における体動判定処理の具体的な制御動作を図10に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0095】
まずステップSC1では、体動判定の判定位置が患者Yの重心位置か最大体圧位置のどちらかに選択される。
【0096】
次に、ステップSC2では、圧力センサ8で検出された圧力分布に基づいてエアマット2上で判定位置を特定してステップSC3に進む。
【0097】
ステップSC3では、現在の判定位置と時間t前の判定位置とを比較し、時間t前の判定位置から現在の判定位置までの距離が所定の基準距離Lを超えて変化したかどうかを判定する。このステップSC3の判定がYESであるとき、すなわち、時間t前の判定位置から現在の判定位置までの距離が基準距離Lを超えて変化したと判定したときにはステップSC5に進み、患者Yが寝返りしたとしてステップSC7に進む。
【0098】
一方、ステップSC3の判定がNOであるとき、すなわち、時間t前の判定位置から現在の判定位置までの距離が基準距離Lを超えて変化していないと判定したときには、ステップSC4に進み、上記判定位置で検出した圧力センサ8の体圧低下量と上記変化圧設定部5eで設定した基準体圧低下量X%とを比較判定する。
【0099】
このステップSC4の判定がYESであるとき、すなわち、圧力センサ8で検出した体圧低下量が基準体圧低下量X%を超えたと判定したときにはステップSC5に進み、患者Yが寝返りしたとしてステップSC7に進む。
【0100】
一方、ステップSC4の判定がNOであるときには、ステップSC6に進み、患者Yが寝返りをしていないとしてステップSC8に進む。
【0101】
上記ステップSC7では、上記体動時間記憶部5fで記憶された患者Yが寝返りしたと前回判定した時間から、所定時間内の寝返りであるかどうかを判定する。このステップSC7の判定がNOであるとき、すなわち、今回寝返りした時間が前回の寝返りから所定の経過時間tを超え、且つ、経過時間t未満でない場合には、ステップSC1に戻る。
【0102】
一方、ステップSC7の判定がYESであるときには、ステップSC9に進んで患者Yが寝返りできるとし、ステップSC11に進んで圧切替モードを安定重視モードに設定して終了する。
【0103】
上記ステップSC8では、寝返りしていない経過時間がtを超えたかどうかを判定する。このステップSC8の判定がNOであるとき、すなわち、寝返りしていない経過時間がtを超えた場合には、ステップSC1に戻る。
【0104】
一方、ステップSC8の判定がYESであるときには、ステップSC10に進んで患者Yが寝返りできないとし、そして、ステップSC12に進んで圧切替モードを圧変動重視モードに設定して終了する。
【0105】
上記ステップSA6の判定がYESであるとき、すなわち、患者Yが寝返りできると判定すると、ステップSA7に進み、第1セル12A、12B、第2セル11A、11B、…、11N及び第3セル10が基準圧Nの内圧値Pとなるように空気給排装置4が制御された後、ステップSA8へと進む。
【0106】
一方ステップSA6の判定がNOであるとき、すなわち、患者Yが寝返りできないと判定すると、ステップSA8へと進む。
【0107】
上記ステップSA8では、体位判定部5a、体動可否判定部5b及び体型判定部5hの各判定結果に対応する設定圧に第1セル12A、12B、第2セル11A、11B、…、11N及び第3セル10の内圧を設定する。本実施例では、図7に示すテーブルに基づいて、第1セル12A、12B、第2セル11A、11B、…、11N及び第3セル10の内圧を設定圧S1〜S4、H1〜H5、基準圧Nのいずれかの値に基づいて内圧値Pn1、Pn2及びPn3に設定する。
【0108】
しかる後、ステップSA9へと進み、エアマット2上の患者Yに対して、寝姿勢をコントロールする。上記制御装置5は、圧力センサ8により検出された圧力分布からエアマット2にかかる荷重を算出し、該算出した荷重に所定の係数を掛けたものを上記内圧値Pn2に加えて目標圧力とする。そして、上記制御装置5は、上記第2セル11A、11B、…、11Nが上記目標圧力となるように、空気給排装置4を制御する。
【0109】
その後、ステップSA10へと進み、エアマット2上の患者Yに対して、制御装置5が圧切替モードの制御を行う。まず、図3(b)、(c)に示すように、制御装置5が、第1セル12B内の圧力を所定値で維持したまま、第1セル12A内への空気供給量を減少させて圧力を低下させる。この状態で所定時間経過した後に、第1セル12A内への空気供給量を増加させて圧力を上記第1セル12Bの所定値と同じ圧まで高め、第1セル12Bへの空気供給量を減少させて圧力を低下させる。これが繰り返されることにより、患者Yの体の各部位に長時間同じ圧力が作用したままになるのが防止され、床ずれが抑制される。
【0110】
しかる後、ステップSA11へと進み、圧力センサ8の検出値から患者Yに高い圧力が加わっているかどうかを判定する。このステップSA11の判定がNOであるとき、すなわち、圧力センサ8の検出値が、圧力設定値Nmaxを超えていない場合には、ステップSA2に戻る。
【0111】
一方、ステップSA11で判定がYESであるとき、すなわち、圧力センサ8の検出値が、圧力設定値Nmaxを超えていると、ステップSA12へ進み、患者Yが寝返りできるかできないかを判定する。このステップSA12の判定は、ステップSA6で行った判定結果を流用し、判定がYESであるとき、すなわち、患者Yが寝返りできる場合には、ステップSA14へと進み部分圧切替制御を行って、ステップSA2に戻る。
【0112】
一方、ステップSA12で判定がNOであるとき、すなわち、患者Yが寝返りできない場合には、ステップSA13へと進み、第1セル12A、12B、第2セル11A、11B、…、11N及び第3セル10内の設定圧がステップSA8で設定した設定圧に対して1段階下げた設定圧かどうかを判定する。このステップSA13の判定がNOであるとき、すなわち、第1セル12A、12B、第2セル11A、11B、…、11N及び第3セル10の設定圧がステップSA8で設定した設定圧である場合には、設定圧を1段階下げてステップSA2へと戻る。本実施例では、例えば、ステップSA8での設定圧がH5の場合、H4に変更されていなければステップSA2に戻る。
【0113】
一方、ステップSA13の判定がYESであるとき、すなわち、第1セル12A、12B、第2セル11A、11B、…、11N及び第3セル10の設定圧がステップSA8で設定した設定圧より1段階下げた設定圧である場合、ステップSA14へと進み部分圧切替制御を行って、ステップSA2に戻る。
【0114】
このステップSA14では、部分圧切替制御が行われるようになっている。具体的には、圧力センサ8の検出値により、患者Yに高い圧力が加わっている箇所に対応する第2セル群11の各セルへの空気供給量を周期的に減少・増加を繰り返す。例えば、図6のDe部分が第2セル11Dに予め設定された圧力設定値Nmaxを超えると、第2セル11Dへの空気供給量を減少させて圧力を低下させ、この状態で所定時間経過した後に、第2セル11Dへの空気供給量を増加させて圧力を高くする。尚、本実施例では、第1セル12A、12Bが圧切替モードである場合において、第2セル11D内の空気供給量が減少しているときに、当該第2セル11Dに跨る2つの第1セル12A、12Bのうち、1つは空気供給量が減少しないようになっている。したがって、当該箇所の患者Yの体の一部が深く沈み込むことを回避することができ、床ずれや痛みの発生を効果的に抑制しながら、患者Yの寝姿勢を崩さないようにできる。
【0115】
以上より、本発明の実施形態によれば、エアマット2上の患者Yが寝返りできない場合、エアマット2が柔らかくなるので、患者Yに対して高い圧力が加わる箇所が減って床ずれや痛みの発生を抑制することができる。一方、エアマット2上の患者Yが寝返りできる場合、エアマット2のセル内の圧力が基準内圧値Pのまま維持されるので、患者Yはエアマット2上で踏ん張り易い。したがって、患者Yはエアマット2上で寝返りし易く、高い快適感を得ることができる。
【0116】
また、制御装置5が圧力センサ8が検出した圧力分布の値に基づいてエアマット2上の患者Yの寝返りの有無を自動で判断するので、看護師や介護者等が患者Yの状態を自ら判断してエアマット装置1の操作を行うといった作業がなくなる。したがって、看護師や介護者等に対する介護の負担が減り、使い勝手の良いエアマット装置1にできる。
【0117】
また、寝返りの有無の判定に体圧の変化を利用するので、患者Yが一瞬動くような場合であっても、寝返りしたか否かを判定できるようになり、確実に患者Yが寝返りしたのを検出することができる。
【0118】
また、寝返りの有無の判定に、所定時間における判定位置の移動距離を利用するので、患者Yがゆっくり寝返りをした場合であっても、寝返りしたか否かを判定できるようになり、確実に患者Yが寝返りしたのを検出することができる。
【0119】
また、制御装置5が圧力センサ8が検出した圧力分布の値に基づいてエアマット2上で患者Yが寝返りできるか否かを自動で判断するので、看護師や介護者等が患者Yの状態を自ら判断してエアマット装置1の操作を行うといった作業をする必要がなくなる。したがって、看護師や介護者等に対する介護の負担が減り、使い勝手の良いエアマット装置1にできる。
【0120】
また、第1セル群12の隣り合う第1セル12A、12Bが交互に減少・増加を繰り返すことにより、患者Yの体に連続して高い圧力がかからないようになり、患者Yの血管の圧迫を緩和して床ずれや痛みの発生を抑制することができる。
【0121】
また、寝返りできない患者Yに対して連続して高い圧力が加わる時間が短くなるので、床ずれや痛みが発生し易い寝返りできない患者Yであっても、効果的に血管の圧迫を緩和して床ずれや痛みの発生を抑制することができる。
【0122】
また、制御装置5が、エアマット2上の患者Yの状態、すなわち、患者Yの姿勢や体型、さらには、寝返りできるかできないかを自動で判定して、エアマット2をそれぞれの組み合わせに応じた最適な硬さとなるように空気給排装置4が制御される。したがって、看護師や介護者等のエアマット2上の患者Yに対する負担が減り、使い勝手の良いエアマット装置1にできる。
【0123】
また、圧力センサ8に所定の高い圧力が加わると、当該箇所に対応する位置の第2セル11A、11B、…、11Nに連続して高い圧力がかからなくなるので、患者Yの床ずれや痛みの発生を抑制することができる。
【0124】
また、制御装置5は、圧力センサ8に所定の高い圧力が加わると、床ずれや痛みが発生し易い寝返りできない患者Yに対して、エアマット2全体の硬さを柔らかくした後で当該箇所に対応する位置の第2セル11A、11B、…、11Nへの空気供給量を周期的に減少・増加を繰り返すので、寝返りできない患者Yに対して効果的に血管の圧迫を緩和することができ、床ずれや痛みの発生を抑制させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
以上説明したように、本発明に係るマット装置は、例えば、医療施設や介護施設等で使用できるものである。
【符号の説明】
【0126】
1 エアマット装置
2 エアマット
3 制御ボックス
4 空気給排装置
5 制御装置
5a 体位判定部
5b 体動可否判定部
5c 体動有無判定部
5d 判定位置設定部
5e 変化圧設定部
5h 体型判定部
5i 基準圧格納部
5j 圧力記憶部
8 圧力センサ
10 第3セル群
11 第2セル群
12 第1セル群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立した複数のセルが患者の寝姿勢時の身長方向に並設されてなるエアマットと、
上記各セルと患者との間に作用する圧力分布を検出する圧力センサと、
上記各セルに接続され、該各セルに空気をそれぞれ所定の基準内圧値となるように給排する空気給排装置と、
上記圧力センサ及び空気給排装置に接続され、上記各セルへの空気供給量を調整するように空気給排装置を制御する制御装置とを備えたエアマット装置であって、
上記制御装置は、上記圧力センサの検出した圧力分布の値を基に患者が寝返りできるか否かを判定する体動可否判定部を有し、該体動可否判定部が、患者が寝返りできないと判定した場合には、上記各セル内の内圧が基準内圧値よりも低くなるように上記空気給排装置で各セルの内圧を制御することを特徴とするエアマット装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアマット装置において、
上記制御装置は、患者が寝返りしたか否かを判定する判定位置を圧力センサの検出した圧力分布の値から上記エアマット上に設定する判定位置設定部と、
該判定位置設定部が設定した判定位置において上記圧力センサで検出した圧力分布の値の変化を基に患者が寝返りしたか否かを判定する体動有無判定部とを有することを特徴とするエアマット装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエアマット装置において、
上記制御装置は、患者が寝返りしたと判定する際に基準となる患者に加わる圧力の基準体圧低下量が予め設定された変化圧設定部を備え、
上記体動有無判定部は、上記判定位置設定部が設定した判定位置において圧力センサで検出した値から体圧低下量を算出し、該体圧低下量と上記変化圧設定部の基準体圧低下量とを比較し、算出した体圧低下量が基準体圧低下量を超えた場合、患者が寝返りしたと判定する一方、算出した体圧低下量が基準体圧低下量に満たない場合、患者が寝返りしていないと判定することを特徴とするエアマット装置。
【請求項4】
請求項2に記載のエアマット装置において、
上記体動有無判定部は、上記判定位置設定部が所定の時間前に設定した判定位置と、現在設定した判定位置とを比較し、所定の時間前に設定した判定位置から現在設定した判定位置までの距離が所定値を超えて変化している場合、患者が寝返りしたと判定する一方、所定の時間前に設定した判定位置から現在設定した判定位置までの距離が所定値に満たない場合、患者が寝返りしていないと判定することを特徴とするエアマット装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のエアマット装置において、
上記判定位置設定部が、患者の最大体圧位置を判定位置として設定することを特徴とするエアマット装置。
【請求項6】
請求項3又は4に記載のエアマット装置において、
上記判定位置設定部が、患者の重心位置を判定位置として設定することを特徴とするエアマット装置。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1つに記載のエアマット装置において、
上記体動可否判定部は、上記体動有無判定部が、患者が体動有と判定してから所定時間内にさらに体動有と判定すると、患者は寝返りできると判定する一方、上記体動有無判定部が、患者が体動有と判定してから所定時間内に体動無と判定すると、患者は寝返りできないと判定することを特徴とするエアマット装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載のエアマット装置において、
上記エアマットは、複数のセルが表側に一列に並設された第1セル群と、複数のセルが上記第1セル群の下側に該第1セル群に沿って一列に並設された第2セル群とを備え、
上記制御装置は、第1セル群の隣り合う2つのセルが交互に減少・増加を繰り返すように上記空気給排装置を制御することを特徴とするエアマット装置。
【請求項9】
請求項8に記載のエアマット装置において、
上記制御装置は、上記体動可否判定部で患者が寝返りできないと判定すると、上記第1セルへの空気供給量の減少・増加の繰り返す周期を短くするように上記空気給排装置を制御することを特徴とするエアマット装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のエアマット装置において、
上記エアマットは、上記第2セル群の下側に該第2セル群に沿って一列に並設された第3セル群を備え、
上記制御装置は、上記第3セル群の各セル内の圧力が所定値以上で維持されるように上記空気給排装置を制御することを特徴とするエアマット装置。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか1つに記載のエアマット装置において、
上記制御装置は、上記圧力センサが検出する圧力分布の値に基づいてそれぞれ患者の姿勢及び体型を判定する体位判定部及び体型判定部と、上記体動可否判定部、上記体位判定部及び上記体型判定部の各判定結果の組み合わせにそれぞれ対応する上記各セル内の基準内圧値を格納する基準圧格納部とを備え、上記各セル内の圧力が上記体動可否判定部、上記体位判定部及び上記体型判定部の各判定結果の組み合わせに対応する基準内圧値となるように上記空気給排装置から各セルへ給排する空気供給量を制御することを特徴とするエアマット装置。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1つに記載のエアマット装置において、
上記制御装置は、上記各第2セル群の各セル毎に予め設定された圧力設定値が記憶された圧力記憶部を有し、上記圧力センサが検出した圧力分布の値が上記圧力設定値を超えると、第2セル群の上記圧力設定値を超えたセルの内圧を時間の経過に伴って繰り返すように上記空気給排装置を制御することを特徴とするエアマット装置。
【請求項13】
請求項12に記載のエアマット装置において、
上記制御装置は、上記体動可否判定部で患者が寝返りできないと判定すると、上記各セルの内圧が基準内圧値よりも低くなるように上記空気給排装置で各セル内圧を低減制御した後、上記圧力センサが検出した圧力分布の値が上記圧力設定値を超えたか否かを判定する一方、上記体動可否判定部で患者が寝返りできると判定すると、上記各セルの内圧を基準内圧値に維持したままで、上記圧力センサが検出した圧力分布の値が上記圧力設定値を超えたか否かを判定することを特徴とするエアマット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−29870(P2012−29870A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172013(P2010−172013)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000138244)株式会社モルテン (105)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】