説明

エアーブロー装置

【課題】エアーホースがロボットアームに巻き付くことがなく、その結果エアーホースがロボットアームに擦れて表面に付着したホコリ、ブツが剥離し、落下することによる塗装面の不良を招くことがないエアーブロー装置を提供する。
【解決手段】自動車ボディの電着塗装における塗料若しくは水洗水の二次タレを防止するために使用されるエアーブロー装置1は、ロボットアーム2の先端にブラケット3によりエアーホース9が接続されたエアーブローノズル4が取り付けられており、エアーブローノズルの先端にノズルヘッド6を有する回転プレート5が回転可能に取り付けられている。エアーブローノズル先端部の回転プレートが回転してもエアーホースが接続されているエアーブローノズルは回転しないので、エアーホースがロボットアームに巻き付くことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ボディの電着塗装における塗料や水洗水の二次タレを防止するためのエアーブロー装置に係り、特にエアーブローノズルの先端に回転プレートが回転可能に取り付けられているエアーブロー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディの電着塗装においては、図6に示すような電着塗装工程から水洗工程、タレ切り工程、エアーブロー工程を経て焼き付け工程に送られていく。即ち、まず電着塗装工程において電着槽61により電着塗装された自動車ボディ62は水洗工程に送られ水洗水63にて洗浄される。洗浄後の水洗水は回収槽64にて回収される。その後水洗水のタレ切り工程を経て移載リフター65により移動させられた後エアーブロー工程で水洗水のさらなる除去が行われる。
【0003】
これは、電着塗装後の水洗工程にて付着した水洗水をタレ切り工程にて除去するようにしているが、例えばドア内板の鋼板合わせ部の隙間に残留している水洗水が塗料の焼き付け時にボディ温度の上昇による流動性の増大によりタレ出し、ドア下端に液溜まり状の電着面欠陥、いわゆる二次タレを発生させる虞があるからである。そこで、自動車ボディを電着焼付炉に搬入する前にロボット66によるエアーブローを実施し、水洗水の二次タレを防止して塗面不良対策を行っていた。エアーブローによる水洗水の除去後は焼き付け工程として電着焼付炉67により塗料の焼き付けが行われる。
【0004】
ここで、エアーブロー工程では、図7に示すように、ロボット71の先端部に装着したエアーブローノズル72を自動車ボディ73の開口部よりボディ室内に入れ込み、予め教示された内容及びエアーブロー条件で目的とする部位のエアーブローが実施される。
【0005】
このように水洗水の除去をエアーブローにより行うことは従来から知られており、純水を噴霧して塗料成分を洗い流した後にエアーブロー装置にて車体に付着する水分を除去することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、エアーブローを用いて二次タレを防止することは水洗水の除去に限らず、塗料の二次タレの防止においても行われている。即ち、電着塗装工程後の電着焼き付け工程において塗料を焼き付ける際に塗料が二次タレを起こすことがしばしばあった。そこで、塗料の二次タレを防止するために所要数のエアーブローノズルをワークの電着塗膜タレが生じ得る部位に向けて配置し、冷風をその部位に吹き付けて電着塗膜タレを飛ばして除去する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
上記したように、水洗水でも塗料でも二次タレを防止するためにエアーブローを実施する場合には、一般的にエアーブローを実施する部位や部位の形状に応じてエアーブローノズルから吐出されるエアーのパターンを選択して使用するようにしている。
【0008】
エアーブローに用いられるエアーブローノズルは、例えば図8に示すように、丸パイプの先端をつぶして形状を扁平にし、エアーの吐出形状が扁平パターンとなるように加工したつぶしノズル81や丸パイプをそのまま使用し、エアーの吐出形状が丸パターンとなるようにしたパイプノズル82等を組み合わせて用いられる。
【0009】
ところで、エアーブローを用いて二次タレを防止する際にはロボットアームの先端にブラケットによりエアーブローノズルを取り付けるが、水洗水や塗料の二次タレを防止する必要のある部位に確実にエアーを吐出することができるようにロボットの各軸を動かして位置決めを行うと同時にエアーブローノズルを回転させてエアーを吐出することが行われている。
【0010】
図9は従来から用いられているロボットアームの先端のエアーブローノズルの動作状況を表したものである。ここで、図9(a)はある位置にエアーブローノズルが取り付けられた状態を表した図であり、2つのエアーブローノズル91a、91bはロボットアーム92の先端にカギ状のブラケット93により取り付けられており、エアーブローノズル91a、91bにはそれぞれ2本のエアーホース94a(実線)及び94b(破線)が接続されている。なお、エアーホース94a、94bはロボットアーム92に複数の固定治具95により長手軸方向に摺動可能に固定されている。
【0011】
ここで、エアーを吐出すべき部位にエアーブローノズル91a、91bを向ける際に、エアーブローノズル91a、91bを回転させる場合がある。図9(b)はエアーブローノズル91a、91bが図9(a)の位置から矢印の如くある角度だけ回転した状況を表した図であり、エアーブローノズル91a、91bの回転に伴いエアーホース94a、94bはロボットアーム92の先端付近に巻き付くようにロボットアーム92に沿って摺動する。
【0012】
このように従来からロボットアームの各軸を動かすと同時にエアーブローノズルを回転させながら水洗水や塗料の二次タレを防止するためにエアーブローを行っていた。
【0013】
【特許文献1】特開平8―187652号公報(段落0014、0015)
【特許文献2】特開平10−96098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記従来の技術に関し、エアーブローノズルとエアーホースとが直接接続されていると、目的の部位にエアーブローノズルを向ける際にエアーホースの位置取りが煩雑になり、エアーブロー時のロボット姿勢を決定するまでに時間を要し、場合によってはロボット台数や工程数を増やさなければならないという問題があった。
【0015】
また、目的の部位にエアーブローノズルを向ける際にエアーブローノズルを回転する必要のある場合、図9(b)に示すようにエアーホースがロボットアームの先端付近に巻き付く形になるため、エアーホースがロボットアームに擦れ、その擦れによりエアーホース表面に付着したホコリ、ブツが剥離、落下し、塗装面の不良を引き起こすという問題もあった。
【0016】
本発明は、上記難点を解消するためになされたもので、エアーホースがロボットアームに巻き付くことがなく、従って、エアーホースがロボットアームに擦れることによるエアーホース表面に付着したホコリ、ブツの剥離、落下がなく、その結果塗装面の不良を引き起こすことのないエアーブロー装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために本発明によるエアーブロー装置の第1の態様は、自動車ボディの電着塗装における塗料若しくは水洗水の二次タレを防止するために使用されるエアーブロー装置であって、ロボットアームの先端にブラケットによりエアーホースが接続されたエアーブローノズルが取り付けられており、エアーブローノズルの先端にノズルヘッドを有する回転プレートが回転可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明によるエアーブロー装置の第2の態様は、第1の態様において、ノズルヘッドには複数の方向に向けられたエアー吐出口が設けられていることを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明によるエアーブロー装置の第3の態様は、第1の態様または第2の態様において、エアーブローノズルはロボットの第5軸にブラケットにより固定されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明によるエアーブロー装置の第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様において、回転プレートはロボットの第6軸に接続され、ロボットの第6軸の回転に伴い回転可能とされていることを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明によるエアーブロー装置の第5の態様は、第1から第4のいずれかの態様において、回転プレートには回転シャフトが取り付けられ、回転シャフトとロボットの第6軸がカップリングを介して着脱自在に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エアーホースが接続されているエアーブローノズルは固定されており、しかもエアーブローノズルと回転プレートとはそれぞれロボットの異なる軸に取り付けられているので、エアーブローノズルを目的の部位に向け、エアーが吐出されるように回転プレートを回転させたとしても回転プレートはエアーブローノズルとは独立して動くことになることから、エアーホースがロボットアームに巻き付くことがなく、従って、エアーホースがロボットアームに擦れ、その擦れによりエアーホース表面に付着したホコリ、ブツなどの剥離物が落下し、塗装面の不良を引き起こすようなことがないエアーブロー装置を提供することができる。
【0023】
また、回転プレートは着脱自在に取り付けられるので、エアーブロー装置全体の大掛かりな改造を行う必要がなく、コストメリットの極めて大きいエアーブロー装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明によるエアーブロー装置の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。
【0025】
図1は本発明のエアーブロー装置を示した図である。図1において、本発明のエアーブロー装置1はロボットアーム2の先端にブラケット3によりエアーブローノズル4が装着されている。そして、エアーブローノズル4の先端には回転プレート5が取り付けられ、この回転プレート5が矢印のようにロボットアーム2の長手方向の軸を回転軸として回転できるようになっている。回転プレート5にはノズルヘッド6が取り付けられている。
【0026】
ここで、ブラケット3は6軸ロボットの第5軸7に取り付けられており、エアーブローノズル4はこのブラケット3により固定されている。一方、回転プレート5は6軸ロボットの第6軸8に回転可能に取り付けられている。そして、ロボットアーム2に沿ってエアーホース9が固定治具10により取り付けられている。
【0027】
図2は6軸ロボットを表した図であり、図2(a)はその全体図である。図2(a)に示すように6軸ロボットは第1軸から第6軸まで矢印の如く回転できるようになっており、これらの回転の組み合わせで方向の決定や位置決めが行われている。
【0028】
図2(b)、図2(c)はロボット先端部の第5軸、第6軸部分を拡大して表した図であり、第5軸7にブラケット3が取り付けられ、このブラケット3によりエアーブローノズル4が固定される。図2(c)は図2(b)の状態から第5軸が一点鎖線で示す軸7a(図2(a)に図示)を回転軸として回転した状態を表している。なお、エアーブローノズル4の先端に取り付けられている回転プレート5が図2(a)に示す一点鎖線で示す軸8aを回転軸として回転するようになっている。
【0029】
図3はエアーブローノズル4の取り付け状況の一例を表した図である。図3において、エアーブローノズル4はロボットの第5軸7に取り付けられたブラケット3により取り付けられ、固定されている。エアーブローノズル4の先端にはノズルヘッド6を有する回転プレート5が取り付けられている。エアーブローノズル4にはエアーホース9が接続されており、図3においては一例として3本のエアーホース9a、9b、9cが接続されている。
【0030】
図4はエアーブローノズル4の詳細を表した図である。図4において、エアーブローノズル4は内部にエアー導入管11a、11b、11cが設けられており、エアー取り入れ口12a、12b、12cにおいて図3に示すエアーホース9a、9b、9cと接続されるようになっている。エアーブローノズル4の先端には回転プレート5が取り付けられており、回転プレート5はロボットの第6軸8とカップリング13を介して回転シャフト14に接続され、ロボットの第6軸8の回転により回転できるようになっている。
【0031】
エアーブローノズル4はロボットの第5軸7に取り付けられたブラケット3により固定されており、回転プレート5はロボットの第6軸8にカップリング13を介して回転シャフト14に接続されているので、エアーブローノズル4と回転プレート5とは分離されていることから回転プレート5が回転してもエアーブローノズル4は回転せず、従って各エアーホース9a、9b、9cも回転することがない。よって、従来のようにエアーブローノズルが回転してエアーホースがロボット先端付近に巻き付くような現象は生じない。
【0032】
また、回転プレート5はロボットの第6軸8にカップリング13を介して回転シャフト14に接続されているので、カップリング13を取り外すことによって容易に交換することができる。従って、例えば種々のノズルヘッドを取り付けた回転プレートを複数用意しておき、目的とするエアー吐出の方向などに応じて適宜効率よく交換することが可能である。
【0033】
図5は回転プレート5の詳細を表した図である。図5(a)は分解図、図5(b)は正面図、図5(c)は側面図である。図5(a)において、回転プレート5は回転シャフト14に取り付けられており、回転シャフト14はエアーブローノズル4とは分離した状態でロボットの第6軸に接続されている。従って、回転プレート5が回転してもエアーブローノズル4は回転することがない。
【0034】
回転プレート5にはノズルヘッド6が固定されており、このノズルヘッド6は回転プレート5と共に回転するようになっている。ノズルヘッド6には図5(b)、図5(c)に示すように例えばエアーの吐出方向が回転プレート5の面に対して斜め方向であるエアー吐出口6a、面に対して直角(ロボットの第6軸方向)であるエアー吐出口6b、面に対して平行(図5(a)において下方)であるエアー吐出口6cが設けられている。
【0035】
なお、エアー吐出口の数や方向等は本実施の形態に限定されるものではなく、エアーを吐出すべき部位に応じて数や方向、圧力条件等に適した種類のノズルヘッドを選択することができる。
【0036】
以上説明したように、本発明のエアーブロー装置は先端部の回転プレートが回転してもエアーホースが接続されているエアーブローノズルは回転しないので、エアーホースがロボットアームに巻き付くことがなく、エアーホースがロボットアームに擦れて表面に付着したホコリ、ブツが剥離し、落下することによる塗装面の不良を招くことがない。従って、エアーホースの擦れを懸念することなくロボット教示ができるのでロボットの動作効率が向上する。
【0037】
また、ノズルヘッドを有している回転プレートを容易に交換することができるので、エアーブロー装置全体の大掛かりな改造を行う必要がなく、コストメリットの極めて大きいエアーブロー装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のエアーブロー装置は、電着塗装における塗料の二次タレや水洗水による洗浄後の水洗水の二次タレの防止に有効であるとともに、例えば微物の除去等エアーブローを用いることにより行うことができる種々の方法に広汎に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のエアーブロー装置を示した図である。
【図2】6軸ロボットを表した図である。
【図3】本発明のエアーブロー装置におけるエアーブローノズルの取り付け状況の一例を表した図である。
【図4】本発明のエアーブロー装置におけるエアーブローノズルの詳細を表した図である。
【図5】本発明のエアーブロー装置におけるエアーブローノズルに取り付けられる回転プレートの詳細を表した図である。
【図6】自動車ボディの電着塗装工程を説明する図である。
【図7】エアーブローの方法を説明する図である。
【図8】従来のエアーブローノズルの例を示す図である。
【図9】従来のエアーブローノズルの動作状況を表した図である。
【符号の説明】
【0040】
1・・・・・・・・・・・・・・・エアーブロー装置
2・・・・・・・・・・・・・・・ロボットアーム
3・・・・・・・・・・・・・・・ブラケット
4・・・・・・・・・・・・・・・エアーブローノズル
5・・・・・・・・・・・・・・・回転プレート
6・・・・・・・・・・・・・・・ノズルヘッド
6a、6b、6c・・・・・・・・エアー吐出口
7・・・・・・・・・・・・・・・ロボットの第5軸
8・・・・・・・・・・・・・・・ロボットの第6軸
9・・・・・・・・・・・・・・・エアーホース
10・・・・・・・・・・・・・・固定治具
11a、11b、11c・・・・・エアー導入管
12a、12b、12c・・・・・エアー取り入れ口
13・・・・・・・・・・・・・・カップリング
14・・・・・・・・・・・・・・回転シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車ボディの電着塗装における塗料若しくは水洗水の二次タレを防止するために使用されるエアーブロー装置であって、ロボットアームの先端にブラケットによりエアーホースが接続されたエアーブローノズルが取り付けられており、前記エアーブローノズルの先端にノズルヘッドを有する回転プレートが回転可能に取り付けられていることを特徴とするエアーブロー装置。
【請求項2】
前記ノズルヘッドには複数の方向に向けられたエアー吐出口が設けられていることを特徴とする請求項1記載のエアーブロー装置。
【請求項3】
前記エアーブローノズルはロボットの第5軸に前記ブラケットにより固定されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のエアーブロー装置。
【請求項4】
前記回転プレートはロボットの第6軸に接続され、前記ロボットの第6軸の回転に伴い回転可能とされていることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れかの請求項に記載のエアーブロー装置。
【請求項5】
前記回転プレートには回転シャフトが取り付けられ、前記回転シャフトと前記ロボットの第6軸がカップリングを介して着脱自在に接続されていることを特徴とする請求項4記載のエアーブロー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−126760(P2010−126760A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302046(P2008−302046)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000107767)スプレーイングシステムスジャパン株式会社 (17)
【Fターム(参考)】