説明

エキソ−(t−ブチル2R(+))−2−アミノ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−カルボキシレート、中間体、およびそれらを製造および単離する方法

本発明は、エキソ-(tert-ブチル 2R(+))-2-アミノ-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(式1)の新規な化合物、その製造方法、およびその新規な中間体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエキソ-(t-ブチル 2R(+))-2-アミノ-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(式1)の新規化合物およびその製造方法ならびにその新規な中間体に関する。
【化1】

【背景技術】
【0002】
エキソ-(t-ブチル 2R(+))-2-アミノ-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレートは、それらに限定されるものではないが中枢神経系疾患、哺乳動物がα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7nAChR)の活性化から症候性の緩解を受けると思われる他の疾患を包含する疾患の処置に有用な化合物又は医薬の製造に有益である。ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は中枢神経系(CNS)の活性および体内を通じて様々な組織に大きな役割を果たしている。nAChRには数種類のタイプがあり、それぞれが異なる役割を持っているように思われる。一部のニコチン性受容体はCNS機能(それらは、それらに限定されるものではないが、認知、学習、気分、情緒および神経保護を含む機能に関与する)を調節し;一部は腫瘍壊死因子α(TNF-α)を制御することによって痛み、炎症、癌および糖尿病を調節し;一部は血管新生を調節し(たとえば、ニコチンのα-7-nAChRへの結合はインビトロでDNA合成および血管内皮細胞の増殖を刺激し(Villablanca, A. C., 1998, J. Appl. Physiol., 84(6): 2089-2098)、またインビボにおいて血管新生を誘導する(Heeschen, C.,ら, 2002, J. Clin. Invest., 110: 527-535; Heeschen, C.ら, 2001, Nature Medicine 7(7): 833-839))。ニコチンはこのような受容体すべてに作用し、様々な活性を有する。残念ながら、これらの活性のすべてが望ましいものではない。実際、ニコチンの望ましくない性質にはその耽溺性および効果と安全性の間の低い比率が包含される。
【0003】
細胞表面の受容体は、一般的に優れた、確実な薬物の標的である。nAChRは、神経系の活動および脳機能をコントロールするリガンド−ゲートイオンチャンネルの大きなファミリーからなる。これらの受容体はペンタマー構造を有する。哺乳動物においては、この遺伝子ファミリーは9つのαおよび4つのβサブユニットからなり、これが互いに集合して、明瞭な薬理学的性質を有する多重サブタイプを構成する。アセチルコリンはすべてのサブタイプの内因性の調節因子であり、一方、ニコチンはすべてのnAChRを非選択的に活性化する。
【0004】
α7 nAChRは試験の難しい標的であることが分かっている受容体システムの一つである。ネイティブなα7 nAChRは、大部分の哺乳動物細胞系内においては、安定に発現できないのが定常的である(Cooper & Millar, J. Neurochem., 1997, 68(5): 2140-51)。α7 nAChRの機能的アッセイを困難なものとする他の特徴は受容体が急速に(100ミリ秒)不活性化されることである。この急速な不活性化はチャンネルの活性を測定するために使用できる機能的アッセイを著しく限定する。
【0005】
α7 nAChRのアゴニストが、FLIPRにおける細胞ベースの、カルシウム排出アッセイを用いて分析されている。これらのアッセイには細胞表面における安定な発現を可能にするα7 nAChRの新しい突然変異型を発現するSHEP-1細胞が使用された。α7 nAChRの突然変異型についてはWO 00/73431に、詳細に記載されている。
【0006】
エキソ-(t-ブチル 2R(+))-2-アミノ-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレ
ートは完全なα7 nAChRアゴニストを作成するための前駆体である。本発明は、2-アミノ-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン中間体のアザビシクロ環系のC-2において絶対立体配置を有し鍵となる中間体の製造のための、より安全で効率的なルートを提供する。この環系を合成するアプローチは最近の総説にまとめられている(Chen, Z. & Trudell, M. L., Chem. Rev. 1996, 96, 1179)。これらのアプローチのほとんどすべてにおいて、最終的な標的は天然に存在するアルカロイド、エピバチジンであった。しかしながら、われわれの知る限りでは、エキソ-(t-ブチル 2R(+))-2-アミノ-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレートはまだ製造されていない。
【0007】
米国特許6,255,490には、コリン作動性受容体のリガンドとして、7-アザビシクロ[2.2.1]-ヘプタンおよび -ヘプテン誘導体が開示されている。
【0008】
米国特許6,117,889には、7-アザビシクロ[2.2.1]-ヘプタンおよび -ヘプテン誘導体が鎮痛剤および抗炎症剤として開示されている。
【0009】
米国特許6,060,473には、7-アザビシクロ[2.2.1]-ヘプタンおよび -ヘプテン誘導体がコリン作動性受容体のリガンドとして開示されている。
【0010】
米国特許6,054,464には、精神障害および知的傷害疾患の処置または予防に特に有用なカルバミン酸のアザビシクロエステル、ならびに中間体および合成における中間体の使用が開示されている。
【0011】
米国特許5,817,679には、7-アザビシクロ[2.2.1]-ヘプタンおよび -ヘプテン誘導体がコリン作動性受容体のリガンドとして開示されている。
【0012】
英国特許1,167,688には、環状N-アルキル誘導体の脱アルキル化が開示されている。
【0013】
Chen, Z. & Trudell, M. L., Chem. Rev. 1996, 96, 1179には、7-アザビシクロ[2.2.1]-ヘプタ-2,5-ジエン、7-アザビシクロ[2.2.1]-ヘプタ-2-エンおよび7-アザビシクロ[2.2.1]-ヘプタンの化学が論じられている。
【0014】
Fletcherら, J. Chem. Soc. Commun., 1993, 15, 1216-1218には (+)- および(−)-エピバチジンの合成が論じられている。
【0015】
Grunewald, G. L. ら, J. Med. Chem., 1988, 31, 433には、ベンジルアミンによるフェニルエタノールアミンN-メチルトランスフェラーゼの阻害のコンフォーメーションおよび立体的態様について論じられている。
【0016】
Salvatore, R. N. ら, J. Org. Chem., 2001, 66, 1035 にはCs2CO3およびヨー化テトラブチルアンモニウムの存在下におけるアミン、CO2およびアルキルハライド3成分のカップリングによる効率的なカルバメートの合成が論じられている。
【0017】
Olivo & Hemenway, J. Org. Chem. 1999, 64 (24), 8968-8969 には、生物触媒的アプローチを用いる(+/−)エピバチジンの全合成が論じられている。
【0018】
Zhang, C. & Trudell, M. L., J. Org. Chem. 1996, 61, 7189には、短く効率的な(+/−)エピバチジンの全合成が論じられている。
【0019】
Bai, D.; Xu, R. ら, J. Org. Chem. 1996, 61, 4600には(+/−)エピバチジンおよびその類縁体の合成が論じられている。
【0020】
Fletcherら, J. Org. Chem., 1994, 59(7), 1771-1778にはエピバチジンの全合成およびその絶対配置の決定について論じられている。
【0021】
House, H. O.ら, J. Org. Chem., 1968, 34, 2324にはトリメチルシリルエノールエーテルの製造が論じられている。
【0022】
Cheng, J. & Trudell, M. L., Org. Lett. 2001, 3(9), 1371-1374にはパラジウム-ビスイミダゾール-2-イリデン錯体が触媒するアミノ化反応を経由するN-ヘテロアリール-7-アザビシクロ[2.2.1]-ヘプタン誘導体の合成が論じられている。
【0023】
Ramanaiah, K. V. C. V., ら, Org. Lett. 1999, 1(9), 1439-1441には、エキソ-およびエンド-7-メチル-7-アザビシクロ[2.2.1]-ヘプタン-2-オールの合成および立体化学的帰属が論じられている。
【0024】
Kende, A. S., Org. Reactions, 1960, 11, 261には、ハロケトンのファヴォルスキー転位が論じられている。
【0025】
Cabanal-Duvillard, I.,ら, Tetrahedron, 2000, 56, 3763-3769には、高度にジアステロ選択性のヘテロジールス−アルダー反応を用いる (−)-エピバチジンの形式的な不斉合成が論じられている。
【0026】
Karstens, Willem F. J.ら, Tetrahedron Lett., 1999, 40,8629-8632には、エピバチジンの形式的合成のための (S)-ピログルタミン酸から誘導される有機亜鉛試薬の適用が論じられている。
【0027】
Cabanal-Duvillard, I.ら, Tetrahedron Lett. 1998, 39(29), 5181-5184にはアミノシクロヘキセン誘導体のジアステレオ選択性のブロモヒドロキシル化を使用する(+/−)-エピバチジンの迅速な形式的合成が論じられている。
【0028】
Bajwa, J. S., Tetrahedron Lett., 1992, 33, 2955には、t-ブチルカルバメートへのベンジルカルバメートのワンポット遷移が論じられている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、エキソ-(t-ブチル 2R(+))-2-アミノ-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(式1)、アザビシクロ環系における絶対的な1S, 2R, 4Rまたはエキソ-2R立体化学を有する鍵となる中間体の、安全な効率的ルートによる製造方法を提供する。エキソおよびエンドの語はビシクロ系のブリッジ上(ブリッジヘッドではない)の置換基の相対的なコンフィギュレーションを記述する立体化学的接頭部である。置換基が、他の大きい方のブリッジに向けて配置される場合には、それはエンドである。置換基が小さい方のブリッジに向けて配置される場合には、エキソである。炭素原子上の置換基に依存して、エンドおよびエキソ配置は異なるステレオアイソマーを生じることができる。たとえば式1では、炭素1および4が水素で置換され、炭素2が窒素含有種に結合している場合は、エンド配置はエナンチオーマーの対の可能性:1S, 2S, 4Rアイソマーまたはそのエナンチオーマー、1R, 2R, 4Sアイソマーを生じる。同様に、エキソ配置は他のステレオアイソマーの対、すなわちエンドアイソマーに関しジアステレオーマーおよびC-2エピマーの可能性:1R, 2S, 4Sアイソマーまたはそのエナンチオーマー、1S, 2R, 4Rアイソマーを生じる。本発明の化合物は1S, 2R, 4Rまたはエキソ-2(R)である。
【化2】

【0030】
アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンの骨格を有する化合物は、最近の総説に記載され、この環系への合成的アプローチがまとめられている(Chen, Z. & Trudell, M. L., Chem. Rev. 1996, 96, 1179)。これらのアプローチのほとんどすべてで、最終的な標的は天然に存在するアルカロイド、エピバチジンである。
【化3】

【0031】
これらのアプローチを注意深く検討するとそれらの大部分は式1の大規模製造の適用には不向きであることが分かる。多くのルートは著しく多数の工程を包含するか、または危険な若しくは容易に入手できない原料が使用される。別のルートは危険であるか、または1の合成には不適当な官能基を含む中間体を介して進められる。
【0032】
Baiら(Bai, D; Xu,ら, Org. Chem. 1996, 61, 4600)により報告された最近の合成は式1の合成への適用の可能性を有していた。この文献には、エピバチジンは、ファヴォルスキー転位を使用してトロピノンから得ることことが可能であって、エピバチジンにおける2.2.1.アザビシクロ環系が得られることを報告している。この合成は比較的安価な、危険のない、容易に入手可能な原料を用い、1に対する前駆体とすることができる中間体を介して進行する。
【化4】

【0033】
Baiらにより報告された式1を与える方法の化学を適用する本発明者らの試みには幾つかの問題点があった。たとえば、Baiの合成に使用されるエチルカルバメート基は式1の合成に必要な官能基の存在下には除去できなかった。また、精密な実験では、鍵となるファヴォルスキー転位の工程においてBaiにより用いられる条件では約3/1のジアステレオアイソマー混合物を与えること、ならびに部分的なカルバメート交換を起こすことが見出された。これが、この操作による式1の作成をスケールアップし難いものとしたのである。本発明者らは、驚くべきことに、これらの困難性を克服した、新規な、スケールアップ可能な、安全な、効率的な1の合成法を見出したのである(スキーム1参照)。まず本発明者らは、カルバミン酸フェニルがブロム化条件に安定な中間体を提供し、後で容易に除去されることを見出した。またファヴォルスキー転位に用いられる条件は、反応における塩基としてナトリウムベンジルオキシドを使用することにより、扱いが容易なベンジルカルバメートが容易に産生されるように改良した。カルバメートの交換は、驚くべきことにこれが起こることを可能にした。さらに、ベンジルアルコールの使用によって、反応の立体選択性に劇的な改善が得られる。改良された選択性はアイソマー化および/または精製工程の回避ならびにその下流工程の単純化を可能にする。本発明の他の態様はスキーム1に概略を示す方法による1の製造である。
【0034】
【化5】

【0035】
これらの解決の適用は、ジベンジル 7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,7-ジカルボキシレート(4)の効率的で、安全な、スケールアップ可能な合成法を導いたのである。この新しい化合物は示した反応順序によって1に変換することができた。ファヴォルスキー反応の極めて高い選択性により、7-(tert-ブトキシカルボニル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸(6)は単一のジアステレオアイソマー(示したようにエキソ)として最終的に得られた。これは4から保護基を除去し、ついで要求されるtert-ブチルカルバメート基を導入してカルボン酸6を得ることにより行われた。アミノ基はクルチウス転位が立体化学を保持して進行するという既知の利点を利用して導入される。クルチウス転位の生成物、イソシアナートをベンジルアルコールに捕捉させると、ラセミ体tert-ブチル 2-{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(7)が得られる。この新しい化合物は結晶化によって容易に精製され、そのエナンチオーマーはキラルクロマトグラフィーによって分離される。最終的に加水素分解に付すと高収率ならびに高い化学的および立体化学的純度で1が得られる。
【0036】
トロピノンは、トロピノンを不活性有機反応溶媒に溶解し、弱い不溶性の無機塩基を加え、少なくとも約0℃で反応を実施し、フェニルクロロフォルメートを加え、添加完了後、場合により還流加熱し、2を単離することによってフェニル 3-オキソビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキシレート(2)に変換される。2は、アンチ溶媒を徐々に加え、反応混合物を約−10℃から約20℃に冷却し、ろ過によって2を収集し、薄めた酸溶液ついで水で洗浄し、さらに場合により薄い塩基溶液で洗浄する。
【0037】
工程1は、不活性有機溶媒、それらに限定されるものではないが、たとえば、トルエン、アセトニトリル、ジクロロメタンまたは酢酸エチル中、弱い不溶性の無機塩基、それらに限定されるものではないが、たとえば重炭酸ナトリウムもしくは重炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウムの存在下に、0℃〜110℃で行われる。フェニルクロロフォルメートは反応温度が30℃未満に保持される速度で加えるのが好ましく、クロロフォルメートの添加完了後、加熱還流する。加熱は還流EtOAc中で行うのが好ましい。反応の副生成物であるメチルクロリドは、エチレングリコール中水性KOHもしくはNaOH溶液、または水性エタノール中モルホリン溶液で洗浄除去するのが好ましい。
【0038】
中間体2は、1mLの反応溶媒あたり、アンチ溶媒、たとえばヘキサンまたはヘプタン約1〜約5mL量を徐々に加えて単離する。1mLの反応溶媒あたり、約2mLのアンチ溶媒を用いることが好ましい。反応混合物をついで約−10℃〜約20℃、好ましくは約0℃に冷却すると2が結晶化する。固体をろ過して除き、薄い(約0.5%〜約5%)酸溶液で洗浄する。酸は、それらに限定されるものではないが、硫酸、リン酸または塩酸が使用される。塩酸が好ましい。ついで固体を水で洗浄し、また薄い(約0.5%〜約5%)塩基溶液で洗浄してもよい。塩基は、それらに限定されるものではないが、たとえば炭酸カリウムのような塩基である。中間体2は約85%の収率、約99%の純度で得られることが可能である。
【0039】
2を不活性有機溶媒に溶解し、反応混合物を加熱し、無水CuBr2を加え、3を単離することにより、フェニル 2-ブロモ-3-オキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキシレート(3)が得られる。2のハロゲン化は不活性溶媒たとえばそれらに限定されるものではないが、トルエン、アセトニトリル、クロロフォルム、酢酸エチル/クロロフォルム混合物または酢酸エチル中、1gの2あたり約5mL〜約20mLの溶媒の濃度で、約50℃〜約110℃の温度で行われる。反応は好ましくはEtOAc中還流して実施される。約1.9〜約2.1当量、好ましくは2.0当量の無水CuBr2が使用される。反応混合物を約1時間〜約24時間または確立された分析方法により2が1%未満になるまで攪拌を続ける。
【0040】
中間体3はトルエンまたは他の適当な溶媒中の溶液として(約25〜約75%w/v, 好ましくは約50%w/v)CuBr2をろ過し、生成物の溶液を水および5%NaHCO3水溶液で洗浄し、EtOAcを真空中で除去し、トルエンを加えて所望の濃度とすることにより単離される。
【0041】
4を与えるファヴォルスキー転位は、3を水または有機溶媒に溶解し、場合により適当な溶媒中約50%w/v溶液として3を加え、塩基を加え、場合によりエキソ対エンド比の立体化学的純度が約100:1の4を単離することからなる。3を水または有機溶媒のいずれかに溶解し、この場合、有機溶媒はたとえば、それらに限定されるものではないが、トルエン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、メタノール、エタノール、イソプロパノールまたはベンジルアルコールであり、ベンジルアルコールが好ましい。約1〜約3当量の塩基を加え、この場合の塩基にはそれらに限定されるものではないが、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、または上記アルコール性反応溶媒のナトリウム塩もしくはカリウム塩が包含される。好ましい塩基はナトリウムベンジルオキシドであり、この塩基は2.2当量とするのが好ましい。反応は1gの3あたり約3mL〜約10mLの溶媒濃度で行われる(1gの3あたり約4mLの溶媒が好ましい)。溶媒としてのベンジルアルコールの使用は、ファヴォルスキー反応の立体選択性に劇的な驚くべき改善を生じ、別個のアイソマー化工程またはジアステレオアイソマーのクロマトグラフィーによる分離を不必要にする。下流の結晶化も単純化される。しかしベンジルアルコールの除去は困難であり、次工程で使用される粗生成物中に残る。工程3の反応は、約−10℃から約50℃で行われる。好ましい反応温度は約5℃である。基質はトルエンまたは他の適当な溶媒の溶液(約50%w/v)として、塩基溶液に所望の反応温度が維持される速度で添加される。反応混合物を約1時間〜約24時間または確立された分析方法によりブロモケトン3もしくは相当するベンジルカルバメートの残量が1%未満になるまで攪拌を続ける。好ましい反応時間は、ブロミドの添加完了後約1時間である。
【0042】
中間体4は以下の後処理後に単離する。反応混合物を1:1ヘプタン/トルエンで希釈し、濃塩酸で中和する。生成物は上の有機相に入る。ついでカルバメート交換により産生した残留フェノールを、NaOH水溶液で有機相を抽出して洗浄除去する。食塩水で洗浄後、生成物溶液を乾燥し(たとえば、Na2SO4)、ろ過し、減圧下低温(たとえば、約40℃)で蒸発させる。ついで、浴温90℃まで上げ、約5mmHgで蒸留して大部分のベンジルアルコールを除去する。中間体4はエキソ対エンド比約100:1で得ることができる。
【0043】
中間体6が得られるルートには、5aまたは5bという2つの異なる経路がある。5aを経由する場合には、4を低分子量アルコールまたは水混和性溶媒に溶かし、塩基で処理し、反応混合物を少なくとも室温で5aが形成されるまで攪拌する。5aは、標準的な酸−塩基後処理後に単離されて、低分子量アルコールまたは他の不活性溶媒中において(BOC)2Oとともに溶解され、少なくとも約1気圧の水素気体下Pd/C触媒で処理され、必要に応じて(BOC)2Oを追加して6が単離される。
【0044】
4を溶解するために使用される低分子量アルコールには、それらに限定されるものではないが、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールが包含され、水混和性溶媒には、それらに限定されるものではないが、水の存在下におけるテトラヒドロフランまたはジオキサンが包含される。反応は、基質(4)1gにつき約3〜約10mLの溶媒を用いて実施され、1gの4につき約4mLの溶媒の使用が好ましく、好ましい溶媒はエタノールである。
【0045】
中間体4は約1〜約3当量、好ましくは1.5当量の塩基で処理され、この場合、塩基には、それらに限定されるものではないが、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化リチウムが包含され、水酸化ナトリウムが好ましい。反応はほぼ室温から約80℃の温度で行われ、約60℃の温度が好ましい。反応混合物は、約10分〜約24時間、または確立された分析方法によって反応物5aに対する残存物4の相対量が1%未満になるまで攪拌される。中間体5aは標準的な酸−塩基後処理ののち単離される。
【0046】
中間体6は5aから次のようにして得られる。5aおよびジ-tert-ブチルジカルボネート((BOC)2O)を低分子量アルコールたとえばそれらに限定されるものではないがメタノール、エタノールもしくはイソプロパノールまたは他の不活性有機溶媒、たとえばそれに限定されるものではないが、テトラヒドロフランに溶解する。好ましい溶媒はエタノールである。十分な溶媒を、基質(5a)1gにつき約3mL〜約10mL、好ましくは約6mLの濃度になるように加える。触媒としてはPd-Cが用いられる。5〜10%のPd-C、好ましくは約5%のPd-Cが用いられ、基質1gあたり約0.05〜約0.5gのPd-C、好ましくは基質1gあたり約0.1gのPd-Cが用いられる。水素気体は約1気圧(約15 psi)〜約60 psiが適用され、好ましくは約50 psiの水素気体が適用される。基質に対して、約1〜約2当量のジ炭酸ジ-tert-ブチル((BOC)2O)、好ましくは約1.3当量の(BOC)2Oが使用される。反応は約10℃〜約50℃、好ましくは約25℃で行われる。反応は約1時間〜約72時間または確立された分析方法により生成物6に対して5aが1%未満になるまで進行させる。中間体6は触媒のろ過および溶媒の蒸発、ついで標準的な酸-塩基後処理によって単離される。
【0047】
中間体6はまた、5bを経由しても得られる。すなわち4を低分子量アルコールに溶解し、Pd-Cを用いて水素(場合により、少なくとも約30 psi)を適用し、加水素分解を行い(場合により、少なくとも室温の温度で)、5bを単離し、THFおよびKOH(場合により10%水溶液)に5bを溶解して均一な溶液を得て、場合によりKOH水溶液を2回以上加え、(BOC)2Oを加え、場合により(BOC)2Oを2回以上加えて、6を単離する。
【0048】
4を溶解するために使用する低分子量アルコールにはそれらに限定されるものではないが、エタノールまたはイソプロパノールが包含される。触媒としてはPd/Cが用いられる。約5〜10%のPd-C、好ましくは約5%のPd-Cが用いられ、基質(4)1gあたり約0.05〜約0.5gのPd-C、好ましくは基質1gあたり約0.1gのPd-Cが用いられる。水素気体は、約30〜約60 psi、好ましくは約50 psiが適用される。反応時間の長さは、基質4と共に存在する(残留ベンジルアルコールの量である)純度に依存し、約4〜5時間から数日とすることができる。反応はほぼ室温から約50℃で進行する。触媒はセライトを通したろ過、ついで溶媒の蒸発によって除去される。得られた物質を水と酢酸エチルの間に分配すると、アミンは水層に集まる。生成物の回収には溶媒を水からイソプロパノールにスイッチする。イソプロパノールと水の共沸混合物をイソプロパノール中アミノ酸の無水溶液が得られるまで蒸留する。この溶液に酢酸エチルを添加すると生成物の結晶化が誘発され、これをろ過して集め、酢酸エチルで洗浄して乾燥する。この操作では自由に流動するほぼ白色の固体として極めて純粋な生成物を与えることができる。結晶化に先立ってすべての水の除去が、素晴らしい固体の取得に必須であると想定される。
【0049】
アミノ酸5bは、同アミノ酸をTHFおよび約10%のKOH水溶液(少なくとも1当量)に、均一な溶液を与えるような比率で溶解し、約1〜約2当量、好ましくは約1.2当量の(BOC)2O、ニートで、又はTHF溶液として加えることによりBOC酸6に変換する。混合物を、ほぼ室温から約40℃で、すべてのアミノ酸が消費され、反応を完結させるためには付加的なKOHおよび(BOC)2Oが必要になるまで攪拌する。THFは以後の相分離に妨害とならないように留去する。残留物を酢酸エチルと水の間に分配する。ついで、生成物のカリウム塩を含有する水相を2M HClでpH3の酸性にすると遊離酸が沈殿する。この間、水相はほぼ室温から約5℃に保持される。固体をろ過して集め、水で洗浄し、乾燥すると、極めて高純度の白色固体が得られる。中間体6は約67%〜約75%の範囲の収率で得られる。
【0050】
工程6はクルチウス転位である。6および非求核性の有機溶媒可溶性塩基を高沸点、不活性有機溶媒に溶解し、この溶液を加熱する。DPPAを、好ましくは反応温度および窒素ガスの飛散速度がコントロールされる速度で添加する。温度および窒素ガスの飛散が低下し始めたならば、反応混合物を約30℃〜約110℃に加熱してベンジルアルコールを加え、残留物6が(ラセミ)エキソ-tert-ブチル 2-[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(7)に対して1%未満になるまで反応混合物を約30℃〜約110℃に加熱し、さらに穏和な塩基水溶液で後処理し、さらに溶媒を蒸発させ、さらにシリカゲルのパッドを通して反応混合物をろ過し、ヘキサン中40〜50%酢酸エチルで溶出する。
【0051】
さらに特定すれば、6および非求核性の有機溶媒可溶性塩基(基質(6)に対して約1〜約1.5当量)たとえばそれらに限定されるものではないが、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミン(好ましくは、トリエチルアミンの1.05当量を使用)を高沸点の不活性有機溶媒、たとえばそれらに限定されるものではないが、トルエンまたはキシレンに溶解し、得られた基質対溶媒の濃度を基質1gあたり溶媒約3mL〜約10mL、好ましくは基質1gあたり溶媒約7mLとする。この溶液を約30℃〜約80℃に加熱し、DPPA(約0.95〜約1.2当量、好ましくは約1.05当量)を徐々に、反応温度および窒素ガス飛散速度がコントロールされる速度で添加する。温度および窒素ガスの飛散速度が低下し始めたならば、混合物を約30℃〜約110℃、好ましくは約80℃に加熱し、ベンジルアルコール(約0.95〜約1.5当量、好ましくは約1.0当量)で処理し、約30℃〜約110℃、好ましくは約80℃で約1時間〜約24時間、または確立された分析方法により、残留物6がtert-ブチル 2{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(7)に対して1%未満になるまで攪拌する。穏和な塩基(たとえばNaHCO3)の水溶液で後処理したのち、溶媒を蒸発させ、シリカゲルのパッドを通して生成物をろ過し、ヘキサン中40〜50%酢酸エチルで溶出する。残留ベンジルアルコールが多い場合は、それはメシチレンと共沸蒸留することにより除去する。ついで生成物をヘキサン/酢酸エチルから結晶化する。
【0052】
工程7は中間体7の各エナンチオーマーのキラル分離である。キラル分離を単純化するために、副生成物ウロニルアジド(10)、ならびにリン化合物11および試薬ベンジルアルコールを最初に逆相HPLCにより分離する。別法としてキラル分離は、最初に、ラセミ体7をヘキサン/EtOAcから結晶化することによって単純化することもできる。その結果、キラル分離は簡単であることが証明される。各エナンチオーマーはChiracel ODカラム(たとえばDiacelから)から、ヘプタン/iProOH/THFにより溶離されて高純度および高回収率で得られる。8のキラル純度は約>99.5%と評価され、化学的純度も極めて高い。
【化6】

【0053】
本発明の他の態様は、連続クロマトグラフィー、セミ-連続クロマトグラフィーまたは単一カラムクロマトグラフィーを用いる7のエナンチオーマーの分離である。セミ-連続クロマトグラフィーの一部の例には、シクロジェット、SteadyCycleまたはSteady State Recyclingの名で知られる液体クロマトグラフィー技術がある(米国特許第6,063,284号および米国特許第5,630,943号)。連続クロマトグラフィーの例には、シミュレート移動床クロマトグラフィー(SMB)として知られる液体クロマトグラフィー技術がある。SMBのコンセプトは米国特許第2,957,927号および米国特許第2,985,589号に報告されていて、ずっと以前から石油化学および製糖工業で使用されている。Nicould, R. M., LC-GC Intl, 5(5) 43(1992)参照。
【0054】
SMBは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の高い分解能力と古典的分離方法たとえば結晶化および蒸留の低コストを併せ持っている。SMB法のコストは、不活性なエナンチオーマーをラセミ型に変換するラセミ化工程と結合させれば、さらにコストを低下させることができる。これはついでSMB法に戻して再循環できるからである。SMB法のコストはまた、SMB分離を結晶化とカップリングさせて光学的純度を上昇させることによっても低下させることができる。
【0055】
クロマトグラフィーは液体の移動相と固体のキラル固定相からなる。固定相は以下に挙げる相から選択される。すなわち、1)アミロシック、セルロシック、キシラン、クルドラン、デキストランまたはイヌランのクラスのポリサッカライド、2)シリカゲル、ジルコニウム、アルミナ、セラミックスおよび他のシリカで被覆またはそれに吸着させたアミロシック、セルロシック、キシラン、クルドラン、デキストランまたはイヌランのクラスのポリサッカライド、3)シリカゲル、ジルコニウム、アルミナ、セラミックスおよび他のシリカに化学的に結合させたアミロシック、セルロシック、キシラン、クルドラン、デキストランまたはイヌランのクラスのポリサッカライド、4)誘導シリカソルベント(Pirkleタイプ)、5)酒石酸誘導体または6)キラル分子を含有する他の固定相である。移動相はC1-5アルコールおよびC1-10炭化水素を含有する。また、アセトニトリル、酢酸メチル、酢酸エチル、メチレンクロリド、トルエン、メチルtert−ブチルエーテルおよび/またはそれらの混合物を含有する。さらに、移動相には臨界値未満または臨界値以上のCO2とC1-10アルコール、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸メチル、メチレンクロリド、トルエン、メチルtert-ブチルエーテルおよび/またはそれらの混合物との組み合わせを含有してもよい。温度範囲は約5〜約45℃、好ましくは約20〜40℃である。
【0056】
ついで1は8から得られる。8を低分子量アルコールまたは不活性溶媒に溶解し、場合により5〜10%のPd/C、さらに場合により1gの8あたり約0.05〜約0.5gのPd/Cを加え、場合により1気圧(約15 psi)〜約60 psiの水素気体を適用し、反応を好ましくは8が消費されるまで進行させ、ついで場合により、少なくとも95%の化学的純度および少なくとも約95%のキラル(エナンチオーマー)純度を有する1を単離する。
【0057】
8を溶解する低分子量アルコールには、それらに限定されるものではないが、メタノール、エタノールもしくはイソプロパノールまたは一部の他の不活性溶媒たとえば、それらに限定されるものではないが、テトラヒドロフランが包含され、好ましい溶媒はエタノールである。溶媒は、基質(8)1gあたり溶媒約3mL〜約10mLになるように、好ましくは6mL/gを用いる。Pd/Cは好ましくは5〜10%、さらに好ましくは5%のPd/Cを用い、基質1gあたり約0.05〜約0.5gのPd/C、好ましくは基質1gあたり約0.1gのPd/Cを使用する。水素ガスは約1気圧(約15 psi)〜約60 psi、好ましくは50 psiを適用し、混合物は出発原料8が消費されるまで攪拌する。生成物はろ過(触媒の除去)、ついで溶媒を蒸発させることにより単離する。さらに精製する必要はない。化合物1は場合により、少なくとも95%の化学的純度および少なくとも約95%のエナンチオーマー純度を有するものが得られる。1は少なくとも約97%の化学的純度および少なくとも99.5%のキラル(エナンチオーマー)純度を有することが好ましい。
【0058】
本発明の他の一態様には、様々な程度の化学的純度およびキラル純度を有するジベンジル 7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,7-ジカルボキシレート(4)である化合物が包含される。本発明の他の態様には、エキソ-tert-ブチル 2(R(+)-アミノ-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(1);エキソ-(t-ブチル 2R(+)){[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(8);エキソ-tert-ブチル2- [(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(7);(2R)-7-(tert-ブトキシカルボニル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸(15);または7-(tert-ブトキシカルボニル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸(6)である化合物を包含し、それぞれ様々な程度の化学的純度およびキラル純度を有し、場合により、少なくとも90%、たとえば90%またはそれ以上のキラル純度例えば98%または99%、さらに任意に少なくとも95%たとえば95%以上、たとえば99%またはそれ以上たとえば99.5%の化学的純度を有する。さらに、これらの化合物は酸のアルカリ金属もしくはアミン(キラルまたは非キラル)塩、またはアミンの酸(キラルまたは非キラル)塩とすることもできる。
【0059】
本発明の他の態様には、7-アザ-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,7-ジカルボン酸ジベンジルエステル(4)から様々な程度の化学的純度およびキラル純度の4を得るエナンチオーマー分割を包含する。これはそれらに限定されるものではないが、たとえば60%純度の7-アザ-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,7-ジカルボン酸ジベンジルエステル約20gを、反応容器中約25mLのDMSO中に溶解し、約500mLの1Mリン酸ナトリウム(pH 7.1)を添加し、さらに約240gのAmano AYを加え、ほぼ室温で、2.5 cmのマリーンプロープを使用して335 rpmで攪拌することにより行われる。約9日後に攪拌を止めて、水層を沈殿から傾瀉する。水層を遠心分離し、遠心分離液からのペレットを反応器中の沈殿と合わせる。合わせたペレットおよび沈殿を最初に酢酸エチル、ついでエタノールで抽出する。抽出液を合わせ、完全に乾燥すると、4 (+)-ステレオアイソマーのエキソアイソマー5.25gが得られる。アッセイにより、エナンチオーマーは面積%で約64%の純度を示す。キラルアッセイでは、94%(89% ee)のキラル純度を有することが指示される。
【0060】
本発明の他の態様には、7-アザ-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン2,7-ジカルボン酸ジベンジルエステルの、キラルカラムクロマトグラフィーを使用するエナンチオーマー分離が包含される。たとえば、それに限定されるものではないが、所望のエキソエナンチオーマー化合物はChiralpak ADを用い、移動相には100/0.1エタノール/トリフルオロ酢酸を用いて単離することができる。
【0061】
本発明の他の態様には、様々な化学的純度およびキラル純度、場合により少なくとも90%の化学的純度および少なくとも90%のキラル純度またはそれ以上、たとえば95%、またはさらに99%の純度を有する7-[(ベンジルオキシ)カルボニル]-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸(5a)のエナンチオーマーの古典的な分割が包含される。たとえば、粗製の5a(10.0g, 36.4ミリモル)を丸底フラスコ中60mLのEtOAcと合わせる。混合物を約65℃に加熱して固体を溶解させる。R(+)-a-メチルベンジルアミン(2.2g, 18.2ミリモル)を、加熱した混合物に約1分を要してシリンジから加える。得られた溶液を約65℃で約10分間攪拌し、ついで室温まで徐々に冷却して、一夜攪拌する。得られた固体を吸引ろ過によって単離し、真空オーブン中で乾燥すると白色の結晶3.2gを与える(50%の最大収率に基づき22.2%の回収)。Chiralcel ODカラム上キラルHPLCにより、ジアステレオアイソマー比が96.4/3.9とアッセイされた固体を、0.1%TFA含有95/5ヘプタン/イソプロパノールで溶出した。塩(0.50g)をEtOAc(8mL)に溶解し、溶液を3mLのヘキサンで希釈し、約65℃に加熱し、混合物を室温まで徐々に冷却させ、一夜攪拌して再結晶させる。得られた混合物を吸引ろ過し、ケーキを真空オーブン中で乾燥すると0.40gの白色の結晶が調製される(回収率80%)。再結晶された物質を上述のようにアッセイするとジアステレオアイソマー比は114/1と定量される。分割された遊離カルボン酸はEtOAcと薄い(たとえば約1%〜約10%)HCl水溶液の間に分配することによって定量的収率で単離することができた。遊離酸はEtOAc層から回収される。
【0062】
本発明の他の態様には、最終化合物、中間体、および本明細書に記載の方法を用いる様々な立体化学的純度を有する最終化合物または中間体の分割を包含する。
【0063】
本発明の他の態様には、Chiralpak ASまたはChiracel OJカラムを使用し、移動相には5/95/0.1のIPA/ヘプタン/THFを用いる7-(tert-ブトキシカルボニル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸(6)のエナンチオーマー分離が包含される。
【0064】
本発明の他の態様には、スキーム1およびここに論じるような中間体3以後の任意の中間体のエナンチオーマーの分離が包含される。より早く分割が行われるほど1の製造は効率的である。ただ1種のエナンチオーマー分離のみが必要であるからである。
【0065】
スキーム1のルートのみでなく、驚くべきことに他のルートも改良されることが確認された。第二の戦略には、早期にt−ブチルカルバメート(BOC)基を使用することが包含される。しかしながら、BOC基はブロム化条件に安定ではないので、新たなハロゲン化方法を開発せねばならなかった。これにはシリルエノールエーテルの形成およびそのクロル化が包含される。この操作はブロム化操作に伴うスケールアップの問題も回避することができる。
【0066】
本発明の他の態様には、スキーム2に概略を示す方法による1の製造が包含される。それらに限定されるものではないがスキーム2内の任意の単一工程または2以上の工程にはここに論じる他の単一工程との組み合わせが包含される。所望の化合物1はスキーム2に従って得られる。
【化7】

【0067】
このルートでは、英国特許1,167,688に記載された操作を改良して最初にBOC基を使用する。得られるtert-ブチル 3-オキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキシレート(12)はCuBr2-仲介ブロム化条件(加熱HBrを産生する)に安定ではなく、それに代わるハロゲン化操作が開発された。これはケトン12の、トリメチルシリルクロリドとアミン塩基(ジアザビシクロウンデセン、DBU)による相当するシリルエノールエーテルへの変換、ついでシリルエノールエーテル中間体のクロル化剤(トリクロロトリアジントリオン、TCCA)による処理を包含する。最後に、Bu4NFで混合物を処理して残ったシリル基を除去すると、tert-ブチル 2-クロロ-3-オキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキシレート(13)が得られる。クロロケトン13を前述のファヴォルスキー転位条件に付すと、この場合も転位した2-ベンジル 7-tert-ブチル 7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,7-ジカルボキシレート(14)が、好収率で、またエキソアイソマーを優先的に選択する極めて高い立体選択性でエキソアイソマーが得られる。ベンジルエステルを加水分解すると、中間体6が得られ、これを上記スキーム1の記載と同じ方法で1に変換する。
【0068】
本発明の他の態様には、トロピノンから1を製造する方法において以下の任意の単一工程または以下の順序での工程の組み合わせが包含される。すなわち、
さらにtert-ブチル3-オキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキシレート(12)を、トロポニンからトリホスゲンを用いて製造し、ついで水の添加、NaOH水溶液による中和、さらに (BOC)2Oの添加からなる工程、
さらにtert-ブチル2-クロロ-3-オキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキシレート(13)を、12からTMS-Cl、DBUついでTCCAおよびBu4NFを用いて製造することからなる工程、
さらに2-ベンジル 7-tert-ブチル7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,7-ジカルボキシレート(14)を、13からPhCH2OH/トルエン中PhCH2ONaを用いて製造することからなる工程、
さらに7-(tert-ブトキシカルボニル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸(6)を、14からイソプロパノール中KOHを用いて製造することからなる工程、
さらに、tert-ブチル 2-{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(7)を6から、トルエンおよびPhCH2OH中DPPAおよびEt3Nを用いて製造することからなる工程、
さらに、エキソ-tert-ブチル 2-(R(+)-{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(8)を7から、たとえばここに論じた方法を用いて分割することからなる工程、ならびに
さらに1を8から、エタノールを含むアルコール性溶媒中でPd/Cの存在下に加水素分解することからなる製造工程を包含する。たとえばそれに限定されるものではないが、本発明は上掲の各工程、または上掲のすべてより少ない工程を包含する。
【0069】
本発明の他の態様には、スキーム3に略述した方法による1の製造、それらに限定されるものではないが、スキーム3内の任意の単一工程または2以上の工程を個々に、またはここに論じられた他の任意の工程との組み合わせが包含される。所望の化合物1はスキーム3によって得られる。
【化8】

【0070】
このルートでは、12から調製された保護アミノケトン13(たとえばスキーム2参照)をアルコール性溶媒たとえばイソプロパノールまたはエタノール中KOH水溶液で処理し、ファヴォルスキー転位を誘導する。これらの新条件下に、カルボン酸6は直接産生され、多分、少なくとも一部は中間体イソプロピルエステルを経由して産生される。別報として好ましくは、6は12から、クロル化シリルエノールエーテル中間体(13に対する中間体前駆体)を経てテトラブチルアンモニウムフルオライドを用いないで、エノール中間体を精製することなく有機相から標準的後処理操作を用いて単離するだけで得ることができる。これは予期されない発見であり(水酸化物は通常、ファヴォルスキー転位には弱い塩基であることから)、合成の工程を1つ減らすことができる。化合物6はついで前述のような順序で1に変換される。別法として好ましくは、6は1に変換される前にその分離されたエナンチオーマーに分割することができる。これは、前述のように、クロマトグラフィーで達成される。別法としてエナンチオーマーは6と立体化学的に純粋なアミン、たとえばα−メチルベンジルアミンからジアステレオーマー塩を形成させることにより古典的方法で分割することもできる。所望のジアステレオーマーを選択的に結晶化させ、ついで酸により処理して所望のエナンチオーマー6を遊離させると分割が完了する。最後に、ラセミ体の6を、酵素たとえばリパーゼの存在下に、アルコールで処理してもよい。これは、6の望ましくないエナンチオーマーのエステル化を促進し、残った所望のエナンチオーマーは単純な酸-塩基抽出により分離される。これらと同じエナンチオーマー分割戦略は上述の他のルートにも同様に適用することができる。さらに、ファヴォルスキー転位で製造されるエステル4および14(それぞれスキーム1および2)は、これらのエステルの望ましいエナンチオーマーをエナンチオーマー選択性酵素的加水分解することによって分割することができる。
【0071】
本発明の他の態様には、任意の単一工程もしく以下の順序での工程(複数)またはここに論じた任意の他の工程(単数または複数)の組み合わせからなる、トロピノンから6を製造する方法が包含される。すなわち、
tert-ブチル3-オキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキシレート(12)を、不活性溶媒たとえばトルエン中でトロピノンにトリホスゲンを加えてトロピノンから製造して、トロピノンから7-(tert-ブトキシカルボニル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸(6)を製造する方法、
さらに水を加える方法、
さらに塩基水溶液、場合によりNaOHを添加して反応液のpHをたとえば10以上に上げる方法、
さらに、場合によりさらにトルエンを加える方法、
さらに(BOC)2Oの添加からなり、場合により残った(BOC)2Oの分解を触媒するDMAPを加え、12を単離する方法、
さらに12をアミン塩基(この場合、塩基は場合によりジアザビシクロウンデセンまたはDBUであり、DBUが好ましい)およびTMS-Clで処理してシリルエノールエーテル中間体を得る方法、
さらに、エノール中間体をEtOAc中TCCAで処理してクロル化中間体を得る方法、
さらに場合によりクロル化中間体を単離し、任意にEtOAcおよびトルエンを除去することからなる方法、
さらに、クロル化中間体を、塩基たとえばKOHで、アルコール性溶媒、場合によりイソプロパノール、またはアルコール性溶媒中NaOHで処理(場合によりエタノールおよびNaOHが好ましい)することからなる方法が包含される。
【0072】
本発明の他の態様には、任意の単一工程もしくは以下の順序での工程(複数)またはここに論じた任意の他の工程(単数または複数)の組み合わせからなる、6から1を製造する方法が包含される。すなわち、
本明細書に記載の方法を用いて6から (2R)-7-(tert-ブトキシカルボニル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸(15)を分割するか、または6から7を製造することによりtert-ブチル2-{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(7)を分割することからなる、エキソ-tert-ブチル2(R(+)-{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-8-カルボキシレート(8)を製造する方法、
さらに、15から8を、または6から7を、15または6をDDPAおよび非求核性の有機溶媒可溶性塩基、場合によりEt3Nを高沸点不活性有機溶媒、場合によりトルエンおよびPhCH2OH中で処理することから製造する方法、
さらに、8をアルコール性溶媒たとえばエタノール中Pd/Cの存在下に加水素分解することによる1の製造方法が包含される。
【0073】
本発明の他の態様には、任意の単一工程、もしく以下の順序での工程(複数)またはここに論じられた任意の他の工程(単数または複数)の組み合わせからなる、トロピノンから1を製造する方法が包含される。すなわち、
tert-ブチル 3-オキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキシレートを、まず、純粋なDBU、場合によりカルボキシレートに対して任意に1.4当量で処理し、ついで純粋なTMS-Cl、場合により1.3当量で処理することからなるトロピノンから6を製造する方法、
さらに、粗製のエノール中間体を有機相中に単離し、たとえば、それをさらに精製することなく処理するエノール中間体の単離方法、
さらに、場合によりEtOAc中約0〜5℃に冷却したエノール中間体に、固体TCCAを添加し、さらに、場合により0℃においてエノール中間体が消費されるまで攪拌することからなる方法、
および
さらにクロル化された中間体を単離し、EtOAcおよびトルエンを除去することからなる方法が包含される。
【0074】
本発明の他の態様には、任意の単一工程もしくは以下の順序での工程(複数)または本明細書に記載した任意の他の工程(単数または複数)の組み合わせからなる、トロピノンから1を製造する方法が包含される。すなわち、
6から (2R)-7-(tert-ブトキシカルボニル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸(15)を分割するか、または6から7を製造したのちtert-ブチル-{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(7)を製造して8を分割することからなる6からエキソ-tert-ブチル 2(R(+)-{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(8)を製造する方法、
さらに、15または6をDDPAおよび非求核性の有機溶媒可溶性塩基たとえばEt3Nを高沸点不活性有機溶媒たとえばトルエンおよびPhCH2OH中で処理することからなる15から8または6から7の製造方法、および
8から、アルコール性溶媒たとえばエタノール中Pd/Cの存在下における加水素分解によって1を製造する方法が包含される。
【0075】
本発明の他の態様には、任意の単一工程もしくは以下の順序での工程(複数)または本明細書に記載した任意の他の工程(単数または複数)の組み合わせからなる6から8を製造する方法が包含される。すなわち、
6から15を分割することからなる方法、
さらに、6または15および約1当量〜約1.5当量のEt3NをトルエンおよびPhCH2OH中に溶解することからなる方法、
さらに、その溶液を任意に約30℃〜約80℃に加熱することからなる方法、
さらに、場合によりDPPA約0.95〜約1.2当量を加え、さらに場合により反応温度および窒素ガスの飛散速度がコントロールされる速度で添加することからなる方法、
さらに、温度および窒素ガスの飛散が低下し始めたならば、反応混合物を場合により約30℃〜約110℃に加熱することからなる方法、
さらに、ベンジルアルコール約0.95〜約1.5当量を任意に加えることからなる方法、
さらに、反応混合物を、残留する6または15がそれぞれ7または8に対して1%未満以下になるまで、場合により約30℃〜約110℃の温度で攪拌することからなる方法、
さらに、弱い塩基水溶液で後処理し、場合によりシリカゲルクロマトグラフィーを使用し、EtOAcで、場合によりヘキサン中EtOAc40〜50%で溶出して、場合により精製することからなる方法、および
さらに7または8を単離し、7から8を分割することからなる方法を包含する。
【0076】
本発明の更なる態様および実施態様は、以下の詳細な説明を精査し、実施例および添付された特許請求の範囲と併せて考慮すれば、本技術分野の熟練者には自明の通りである。本発明は様々な形式での実施態様が可能であるが、以下には本発明の特定の実施態様が記載される。この開示は例示的なものであって、本明細書に記載される特定の実施態様に、本発明を限定するものと解すべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
本発明は2-アミノ-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン中間体1のアザビシクロ環システムに絶対配置、1S, 3R, 4Rもしくはエキソ-2R立体化学を有する鍵となる中間体の製造のための、現在のルートに比べて、安全で、スケールアップ可能な、さらに効率的なルートを提供する。本発明の一態様には本明細書に記載のように2-アミノ-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン中間体1の合成が包含される。
【0078】
このルートの鍵となる新規な特徴は、トロピノンのアミノ基に対するフェニルカルバメート保護基の使用および以後のファヴォルスキー縮合工程における反応条件の注意深い選択である。フェニルカルバメート基は導入が容易で、この方法に使用されるブロム化条件に安定であること証明されている。しかも、この基はファヴォルスキー工程の間に、ベンジルカルバメート基に効率的に変換され(分子内カルバメート交換反応は珍しい例である)、これはその後、接触加水素分解により除去することができる。重要なファヴォルスキー転位工程は溶媒としてベンジルアルコール、塩基としてナトリウムベンジルオキシドを用いて実施される。これらの条件は所望のカルバメート交換を誘導するのみでなく、予期し得ない高い立体選択性を有する転位生成物が得られる。それとともに、これらの発見は独特な安全で効率的、しかもスケールアップできる方法の開発を可能にした。
【0079】
このルートには驚くべき改善がもたらされたのみでなく、これは他のルートにも同定される。第二の戦略には、早い時期にt−ブチルカルバメート(BOC)基を使用することを包含される。しかしながら、BOC基はブロム化条件に不安定で、新しいハロゲン化方法を開発しなければならなかった。これには、シリルエノールエーテルの形成およびそのクロル化が包含される。この操作はまた、ブロム化操作に伴うスケールアップの問題を回避することができる。
【0080】
最後に、第三のルート(スキーム3)では、早期のt−ブチルカルバメート(BOC)基の導入およびスキーム2の新しいハロゲン化操作、ならびにファヴォルスキー転位のための改良された条件の採用が開発された。12から誘導されるクロル化シリルエノールエーテルのファヴォルスキー転位は水性アルコール性水酸化ナトリウムまたはカリウムにより予想外に効率的に促進されることが見出された。これらの新しい条件の利点は除去が困難なベンジルアルコールをも早必要とせず、生成物はさらに進んだ中間体カルボン酸6であることである。すなわち、別個の加水分解工程は回避される。さらにこの新しい操作では、トロピノンから中間体を単離することなくカルボン酸6が得られ、また、ファヴォルスキー転位は所望のエキソアイソマーを好んで同様に高い立体選択性で進行する。
【0081】
本技術分野の通常の熟練者には周知の略号が使用される(たとえば、フェニルは「Ph」、メチルは「Me」、エチルは「Et」、時間(単数または複数)は「h」または「hr」、分は「min」、室温は「rt」または「RT」である)。
【0082】
すべての温度は摂氏で表示される。
室温は摂氏15〜25度の範囲内である。
【0083】
FLIPRは、高いスループットを示す全細胞アッセイで細胞性蛍光を正確に測定するように設計され、Molecular Devices, Inc. から市販される装置(Schroederら, J. Biomolecular Screening, 1(2), p 75-80, 1996)を意味する。
【0084】
1および式1は同義であり、いずれもエキソ-(t-ブチル 2R(+))-2-アミノ-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレートを意味する。
【0085】
TLCは、薄層クロマトグラフィーである。
HPLCは高速液体クロマトグラフィーである。
MeOHはメタノールである。
EtOHはエタノールである。
IPAはイソプロピルアルコールである。
THFはテトラヒドロフランである。
DMSOはジメチルスルフォキシドである。
DMFはN,N-ジメチルホルムアミドである。
EtOAcは酢酸エチルである。
TMSはテトラメチルシランである。
TEAはトリエチルアミンである。
DIEAはN,N-ジイソプロピルエチルアミンである。
MLAはメチルリカコニチンである。
エーテルはジエチルエーテルである。
CDIはカルボニルジイミダゾールである。
NMOはN-メチルモルホリン-N-オキシドである。
TPAPはテトラプロピルアンモニウムペルルテネートである。
ハロゲンはF、Cl、BrまたはIである。
Na2SO4は硫酸ナトリウムである。
K2CO3は炭酸カリウムである。
MgO4は硫酸マグネシウムである。
Na2SO4、K2CO3またはMgO4が乾燥剤として用いられる場合は、それは無水である。
DBUは1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンである。
TMS-Clはトリメチルクロロシランである。
TCCAはトリクロロイソシアヌル酸である。
DMAPは4-ジメチルアミノピリジンである。
DPPAはジフェニルホスホリルアジドである。
【0086】
様々な炭化水素含有部分の炭素原子含量はその最小数および最大数を表す接尾部によって指示する。すなわち接尾部Ci-jは整数「i」から「j」までの炭素原子を含有する部分を指示する。したがって、たとえばC1-6アルキルは1〜6個の炭素原子のアルキルを意味する。
【0087】
哺乳動物は、ヒトおよび他の哺乳動物を意味する。
食塩水は、水性飽和食塩溶液を意味する。
Equはモル当量を示す。
IRは赤外スペクトルを意味する。
Lvは分子内の離脱基たとえばCl、OHまたは混合無水物を意味する。
NMRは核(プロトン)磁気共鳴スペクトルを意味し、化学シフトはTMSから下方へのppm(δ)で記録する。
MSは、m/eまたはマス/チャージ単位として表すマススペクトルを意味する。HRMSは、m/eまたはマス/チャージ単位として表す高分解マススペクトルを意味する。[M+H]+は母体+プロトンから構成されるイオンを意味する。[M-H]-は母体−プロトンから構成されるイオンを意味する。[M+Na]+は母体+ナトリウムイオンから構成されるイオンを意味する。[M+K]+は母体+カリウムイオンから構成されるイオンを意味する。EIは電子インパクトを意味する。ESIは電子スプレーイオン化を意味する。CIは化学的なイオン化を意味する。FABは高速原子ボンバートメントを意味する。
【0088】
GC-MSは、ガスクロマトグラフ-マススペクトロメトリーを意味する。Hewlitt-Packardの5980型クロマトグラフに5970型マススペクトルメーターをカップリングした装置を使用した。カラムはAlltechからの30m DB-5カラムを100〜290℃で操作した。
【0089】
本発明の他の態様には、最終化合物、中間体、および本明細書に記載の方法を使用する最終化合物または中間体の分割を包含する。この場合の化合物は様々な程度の立体化学的純度を示す。
【0090】
1の製造
8-(フェノキシカルボニル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-オン:
固体のトロピノン(75g, 0.54モル)を、1Lの外套付き反応器中EtOAc(225mL)に溶解し、固体のK2CO3(0.75g)で処理する。反応器に機械的攪拌機、窒素導入口、サーモカプル、および水冷還流冷却機を付す。冷却機の頂部からのラインは、窒素/CH3Cl気流をモルホリン、エタノールおよび水を含有する洗浄器を通して誘導する。外套を20℃、反応混合物を17℃に保持し、滴下ろ斗を介して純粋なフェニルクロロフォルメート(68mL, 0.54モル)の添加を開始する。クロロフォルメートは反応温度が25℃未満に維持されるように15分を要して加える。穏やかな発熱反応が鎮まったならば、混合物を徐々に50℃に加温し、約1時間またはほぼすべてのトロピノンおよび中間体が消費されるまで(TLC, 約2:1ヘキサン/EtOAc)50℃に保持する。混合物をヘプタン(450mL, 徐々に添加)で希釈する。ついで外套を25℃にセットし、混合物を徐々に室温まで冷却する。ついで混合物を、1.25時間を要して0℃まで冷却し、その温度に10分間保持し、ついで50mLの水で処理する。全混合物をブフナーろ斗上(Whatman #1ろ紙)に吸引ろ過し、ろ過されたケーキを2:1ヘプタン/EtOAcで洗浄し、数分間吸引して乾燥する。真空を中断し、ケーキを0.5%HClで1回および水で1回洗浄し、吸引の前に各回約5分間、水を通して接触させる。
【0091】
得られた固体を30分間風乾し、ついで50℃の真空オーブン中に重量が一定になるまで置く。2 (PNU-144240) の収量は110g(83%)である。この物質は、GC面積%による純度は99.4%で、主要な不純物はトロピノン(0.4%)である。
【0092】
ノルトロピノンフェニルカルバメートのブロム化
外套付き20 Lの反応器に、頭上攪拌機、サーモカプル、一つの頚に窒素導入管、および水冷式冷却機を装着する。出口のラインは他の頚および冷却機の頂部に連結する。各出口のラインは空のトラップ(逆流を防止するため)を通して、鉱油バブラーに導き、最後に約8%のNaOH溶液中のガス散布機に浸漬させる。それぞれEtOAc(250mL)で濯いだ基質2(750g, 3.054モル)およびCuBr2(1.362kg, 6.107モル)を反応器に充填する。残ったEtOAc(7L)を添加し、混合物を170 rpmで攪拌する。この間、温度は約1時間にわたり約75℃に上昇した。この時点で、色が変化し、洗浄機の頂部空間にHBrの蒸気が現れ、反応が始まったことを指示する。混合物をさらに約75℃で1時間攪拌すると暗色の固体CuBr2が消費され、褐色の固体(CuBr)に置き換えられる。サンプルを採取すると、これはGC面積%により出発原料/生成物/ジブロミドの比10.8/85.6/3.6を示す。30分後に採取した第二のサンプルでは9.2/85.3/4.7を示す。反応混合物を、4時間を要して室温まで冷却し、室温で一夜攪拌する。反応混合物を反応器から4Lのろ過フラスコに吸引排出させる。反応器中の残留物をトルエンで2回洗浄し、各回、洗浄液は吸引排出させる。CuBrを焼結ガラスフィルターろ斗を通してろ過することにより除去し、トルエンで完全に濯ぐ。ろ液を少量のトルエン(計4Lのトルエンを使用)で濯いで、後処理のために35 L反応器に移す。粗製の反応混合物を3kgの水と20分間激しく攪拌し、ついで相を分離させて、10分間静置する。緑色の水相(pH1, 3.031g)を排出し、有機相を同様に3kgの5%NaHCO3水溶液で洗浄する。この洗浄液を(pH7, 3.194kg)を排出したのち、有機相を4Lのエルレンマイヤーフラスコに空け、Na2SO4上で乾燥する。生成物溶液を、セライトを通して吸引ろ過し、ケーキをトルエンで濯ぐ。溶液を減圧下≦40℃においてロータリーエバポレーターによって総容量約2Lに濃縮する。GC分析の結果は、まだEtOAcが残っていることを指示する。混合物を1Lのトルエンで希釈し、ついで、上述の総容量を約1Lまで蒸発させると、GCによるEtOAcは検出されなくなる。次に暗褐色の生成物溶液をトルエンで総重量2kgに希釈し、そのまま次工程に使用する。MS(GC-MS)m/z(相対強度)325 (M+, 2), 323 (M+, 2), 244 (100), 232 (32), 230 (32), 188 (45), 110 (11), 94 (34), 79 (28)。
【0093】
ファヴォルスキー転位
外套付き35 Lの反応器に、頭上攪拌機、サーモカプル、窒素導入管、および滴下ろ斗を装着する。反応器にNaOCH2Ph(ベンジルアルコール中26.7%の溶液、6.21kg, 12.76モル)およびベンジルアルコール(1.33kg)を充填し、粘稠な混合物を150 rpmで攪拌し、約5℃に冷却する。この間、混合物を冷却しながら、粗製ブロミド3(約1.5kg, 5.102モルを含有)のトルエン溶液を滴下ろ斗に充填する。ブロミド溶液を、最大反応温度8℃で50分を要して反応混合物中に加える。滴下ろ斗を少量のトルエンで濯ぎ、これも反応混合物に加える。反応混合物を約0℃で15分間攪拌したのち、サンプルを採取する。これは4への完全な変換を示した(GC面積%)。ついで、トルエン(4L)およびヘプタン(4L)を順次添加し、滴下ろ斗に750gの濃塩酸を3.25kgの水で希釈してなる溶液を充填する。酸の水溶液を、約20分を要して滴下し、発熱反応が鎮まるので最後の約1Lは極めて速やかに添加する。反応が鎮まった時点での最大温度は13℃である。得られた混合物を20分間激しく攪拌し、ついで攪拌機を止め、相を分離させ、約1時間放置する。水相を排出し有機相を6kgの5% KOHで洗浄する。洗浄時には冷却して温度を約15℃に保持する。混合物を約20分間激しく攪拌し、ついで攪拌機を止めて、相を分離させ、沈積させる。分離は極めて遅く、約2.5時間を要す。水相を排出させ(6.591kg)、有機相を再び3.275kgの2.5% KOHで洗浄する。この時点では水相(3.627kg)は静置時間わずか15分で排出することができる。最後に、有機相を水(4kg)および食塩水(3.22kg)で順次洗浄する。いずれの分離も明瞭かつ迅速に起こる。生成物溶液を、タールを塗った5-ガロンのドラムに排出させる。溶液重量は15.736kgであり、重量で5.95%の生成物としてアッセイされる。これは、含有する生成物936gまたは2からの総収率50%に相当する。トルエンおよびヘプタンを減圧下、≦40℃でロータリーエバポレーターによって留去する。大部分の揮発性物質が除去されたならば、真空度を上げ(約5mmHg)、浴温を85℃まで徐々に上昇させてベンジルアルコールを留去する。生成物溶液が総重量1.322kgに濃縮されたらば蒸留を止める。ついで、生成した混合物を2/1 のヘキサン/EtOAc(粗製物質1gあたり約1.5mL)に溶解し、200〜400メッシュのシリカゲルのカラム4.5kgに適用し、同じ溶媒で重力溶出させる。3Lの前流後の分画を集める。最初の4つの分画は1.6 Lであり、他は約0.9 Lである。分画6〜20を合わせて、減圧下約45℃で蒸発させると、粗製の生成物4 1.195kgが黄褐色の油状物として得られ、そのまま次工程に使用する。1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ7.33 (m, 10H), 5.01 (br s, 2H), 4.57 (s, 1H), 4.34 (s, 1H), 2.62 (dd, J=8.8, 4.8 Hz, 1H), 2.31 (m, 1H), 1.79 (br s, 2H), 1.65 (dd, J=12.4, 8.8 Hz, 1H), 1.46 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ 173.4, 155.3, 136.9, 136.1, 128.8, 128.7, 128.5, 128.4, 128.2, 128.1, 67.1, 67.0, 59.6, 56.2, 47.8, 33.7, 29.7, 29.1; MS (GC-MS) m/z (相対強度) 365 (M+, 2), 258 (1), 230 (13), 186 (7), 168 (25), 91(100)。
【0094】
5aを経由する6の合成
還流冷却機を装着した500mLの丸底フラスコにエステル4(25.0g, 68.4ミリモル)を充填する。イソプロパノール(250mL)を添加して、混合物を30℃に加温して溶解させる。NaOHの水溶液(30%, 13.5g, 102.6ミリモル)を加え、得られた混合物を80℃に加熱し、この温度に1時間保持する。アリコートの分析により生成物への完全な変換が指示される。混合物を冷却して、溶媒を減圧下に蒸発させる。残留物をEtOAcと水の間に分配する。有機層は捨てる。カルボン酸5aのナトリウム塩を含有する水相を3M HClの添加によってpH2の酸性にする。ついで生成物をEtOAc中に抽出する。溶媒を蒸発させると油状物(16.3g, 収率87%)が残り、静置させると徐々に固化する。
【0095】
粗製のベンジルカルバメート5a(16.3g)をEtOH(250mL)に溶解し、フィッシャー-ポーター瓶中に取る。(BOC)2O(16.8g, 76.97ミリモル)およびPd/C(Degussa, 約50%水w/w, 1.7g)、好ましくは5%Pd/Cを加え、混合物を数回、N2、ついでH2ガスで潅流する。ついで、瓶を約30 psiのH2で加圧し、混合物を室温において電磁攪拌機で攪拌する。反応中に生成したCO2を周期的に排気し、システムに新鮮なH2を再充填する。反応が終了したら(48時間)、混合物を、セライトを通してろ過し、ケーキをEtOHで洗浄する。ろ液および洗浄液を合せて蒸発させる。残留物を薄いNaOH水溶液とEtOAcの間に分配し、有機層は捨てる。ついで塩基性の水相を2M HClでpH3の酸性にすると生成物6が沈殿する。これを吸引ろ過によって集め、水で洗浄して、約50℃の真空オーブン中で乾燥する。生成物は灰白色の固体10.0g(ベンジルエステル4からの 収率61%)として得られる。
【0096】
5bを経由する6の合成
基質4(1.14kg, 2.31モル)を2LのEtOHに溶解し、内部を少量のEtOHで濯いだ1−ガロンのステンレス鋼オートクレーブに移す。Pd触媒(5%Pd/C、60重量%の水、115g)をEtOH中のスラリーとして添加し、システムを数回、N2およびH2で潅流する。最後に、システムをH2で約50 psiに加圧する。混合物を1000 rpmで攪拌し、コンピューター制御によって一夜25℃および50 psi H2に維持する。翌日、サンプルは反応がまだ完了していないことを示している。新鮮な32gの触媒部分を反応混合物中に、EtOH中のスラリーとして、サンプルポートから添加する。攪拌を25℃および50 psi H2下に一夜続ける。翌日、サンプルは反応がほぼ完了したことを示す。通常の潅流洗浄サイクルののち、反応混合物をオートクレーブから4Lのエルレンマイヤーフラスコに吸引排出する。オートクレーブをさらにEtOHで濯ぎこれも吸引排出して生成物混合物に加える。混合物をセライトの床を通して吸引ろ過し、ケーキをEtOHで十分に洗浄する。澄明な緑色のろ液が得られる。EtOHを60℃においてエバポレーター上、減圧下に蒸発させると、粘稠な褐色のゴム状物質が得られる。これを4Lの分液ろ斗中で、EtOAc(1.5 L)および水(1.5 L)に分配する。EtOAc層を再び、水(1L)で洗浄する。水相を合せてEtOAc(1L)で洗浄する。アミノ酸を含む水相を、ついで、蒸留フラスコに移し、周期的にiPrOHを加えながら(水を共沸させる)水を留去する。溶液が約0.5 Lに濃縮され、無水またはほとんど無水と評価されたならば、溶液を750mLのEtOAcで希釈する。これにより、固体生成物は沈殿よりもむしろ2層(油化)を形成する。したがって大部分の溶媒を再び蒸発させ、残留物に1LのEtOAcを加える。混合すると湿潤した塊状の固体が形成される。これは攪拌を続けると、さらに粉末化する。懸濁液を一夜放置する。灰褐色の塊状の固体を2Lの焼結ガラスフィルター上に集め、EtOAcで完全に洗浄しする。この間に、塊を大きなスパーテルで破砕する。固体を風乾し、ついで45℃の真空オーブン中で、わずかに風を送りながら乾燥させる。乾燥した物質5bの重量は278gである。1H NMR (400 MHz, D2O)δ4.17 (d, J=2.7 Hz, 1H), 4.11 (d, J=3.0 Hz, 1H), 2.56 (dd, J=9.5, 4.8 Hz, 1H), 1.98 (dd, J=13.3, 9.8 Hz, 1H), 1.92-1.75 (m, 3H), 1.68-1.55 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, D2O)δ 181.0, 62.0, 58.3, 46.9, 33.1, 28.7, 26.2, 25.5 。
【0097】
5Lの4頚丸底フラスコにサーモカプル、頭上攪拌機、滴下ろ斗およびN2導入管を装着する。固体の基質5b(249g, 1.77モル)をフラスコに移し、それを50mLの水で濯ぐ。THF(2L)を加え、装置を氷/水浴に浸す。KOH水溶液(25%、400g, 1.78モル)を内温が<18℃に保持されるような速度で添加する。THF中75%の(BOC)2O溶液(620g, 2.13モル)を滴下ろ斗に充填する。基質溶液を7.2℃に冷却し、この時点で(BOC)2Oの添加を開始する。添加には45分を要し、反応混合物を<7℃に保持する。混合物を約5℃で2時間攪拌すると、最後には少量の白色の沈殿が沈積する。ついで、混合物を室温まで徐々に加温し、一夜攪拌する。サンプルのHPLC分析では約50%の変換を示すのみである。この混合物に最初はさらに40gの25% KOHを、ついでさらにTHF中75%(BOC)2Oの65g部分を室温で15分を要して加える。反応混合物を約30℃に4時間加温すると、この間に気体(CO2)が鉱油バブラーから排出するのが見られる。最後に混合物を室温まで冷却し、週末を越えて攪拌すると、サンプルのHPLC分析は6への>99%の変換を示す。混合物を少量ずつ3Lの蒸留フラスコに移して、大部分のTHFをロータリーエバポレーター上35〜40℃で蒸発させる。これにより、白色の固体と黄色の上清(大部分は水)が得られる。さらに水を加えてすべての塩を溶解させる。この塩基性水溶液に1LのEtOAcを加える。混合し、相を分離させたのち、水層を集め、有機層を再び約0.5%のKOH水溶液により抽出する。水層を合せてEtOAcで洗浄し、残った中性の不純物を除去する。ついで、カルボン酸塩の水溶液をエバポレーター上に置き、残った有機溶媒を蒸発させる。溶液をついで5Lのフラスコに移し、約5℃に冷却する。生成物を3時間にわたる2M HCl(900mL)の添加によって沈殿させ、内温が7℃未満に維持されるように激しく攪拌する。最終的なpHは3〜4である。生成物を真空ろ過により2L焼結ガラスろ斗上に集め、500mLの水を用いてフラスコを濯ぎ出す。真空を外し、さらに500mLの水をフィルターケーキに添加する。スラリーを5分間手動で混合し、ついで水(pH5)を吸引する。固体(融点174℃, DSC)をろ斗上で一夜吸引して乾燥させると一定の重量322.6gに達する(収率76%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ4.54 (d, J=4.0 Hz, 1H), 4.29 (d, J=4.4 Hz, 1H), 2.57 (dd, J=8.8, 4.8 Hz, 1H), 2.22 (m, 1H), 1.79 (m, 2H), 1.61 (dd, J=12.4, 8.8 Hz, 1H), 1.47 (m, 1H), 1.4 (s, 9H); 13C NMR (100 MHz, 45℃, CDCl3)δ 178.4, 155.1, 80.2, 59.5, 56.1, 47.5, 33.5, 29.7, 29.0, 28.4; 元素分析; C12H19NO4として計算値C, 59.73: H, 7.94; N, 5.81: 分析値:C, 59.67: H, 8.08; N, 5.75。
【0098】
クルチウスの転位
5Lの4頚丸底フラスコにN2下、還流冷却機、滴下ろ斗、サーモカプルおよび頭上攪拌機を装着し、加熱外套中に配置する。固体6(335g, 1.39モル)をフラスコに加え、ついで2Lのトルエンを加える。得られた懸濁液を室温で攪拌しながらトリエチルアミン(207mL, 1.46モル)を添加する。固体は急速に溶解し、褐色の溶液を与える。ジフェニルホスホリルアジド(DPPA, 394g, 1.39モル)を400mLのトルエンに溶かし、滴下ろ斗に移して100mLのトルエンで濯ぐ。基質/EtN3溶液を5Lのフラスコ中で約1時間にわたり50℃に加熱し、ついでDPPAの溶液の緩徐な添加を開始する。試薬を反応温度が60〜70℃に維持される速度で加える。窒素の放出は常に容易に制御することができる。総添加時間は2時間20分である。添加完了後、残留試薬を少量のトルエンで濯ぎ込み、ついで混合物を、2時間を要して徐々に75℃に加熱する。この時点までに、N2の発生は実質的に終わる。純粋なベンジルアルコール(152mL, 1.46モル)を滴下ろ斗に取り、反応温度が75〜80℃保持される速度で加える。35分で添加は完了し、ついで、外套を80℃にセットした温度コントローラーに接続し、混合物を80℃で計20時間加熱する。加熱期間の終了後、外套を外し、混合物を、2.5時間を要して30℃に冷却する。ついで、混合物を滴下ろ斗に移し、計2kgのNaHCO3水溶液を2つに分けて洗浄する。洗液を合わせ、500mLのトルエンで逆抽出する。有機層を合せてNa2SO4上で乾燥する。生成物溶液のバルクを、蒸留フラスコに傾瀉し、エバポレーターにより45℃で濃縮する。最後の生成物溶液およびNa2SO4上のトルエン洗浄液を蒸留フラスコ中にろ過して、同様に濃縮する。大きな焼結ガラスフィルターろ斗に2kgのシリカゲル(230〜400メッシュ)を充填する。ヘキサン中40%のEtOAc溶液を調製し、真空下にシリカを通して吸引してシリカを装填する。粗製のクルチウス転位生成物を60/40のヘキサン/EtOAcに溶解し、シリカに適用する。生成物は重力で溶出させ、1.5 Lの分画を集める。分画3〜9をプールして蒸発させる。蒸発時に白色結晶の形成が見られる。結晶の小サンプルをろ過して集め、ヘキサン中5%EtOAcで洗浄すると、NMRによりほぼ純粋な所望の生成物であることが示される。バルク懸濁液を蒸発乾固し、高真空のラインに一夜置く。7のベージュ色の固体(444g)が得られ、まだ少量のベンジルアルコールが残っている。1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ7.34 (m, 5H), 5.08 (s, 2H), 4.22 (t, J=4.8 Hz, 1H), 4.12 (m, 1H), 4.11 (m, 1H), 3.77 (ddd, J=16.0, 8.0, 3.3 Hz, 1H), 1.92 (dd, J=12.8, 8.0 Hz, 1H), 1.77-1.63 (m, 3H), 1.51-1.30 (m, 12H); 13C NMR (100 MHz, CD3OD)δ 157.0, 156.3, 137.1, 128.2,, 127.8, 127.6, 80.0, 66.2, 61.4, 55.3, 55.0, 37.8, 28.1, 27.4, 25.4。
【0099】
トロピノンから6の合成
BOCノルトロピノンの調製
トリホスゲン(64.0g, 0.216モル、0.6当量)を1Lの外套付き反応機中、N2下、室温でトルエン(200mL)に溶解する。この装置に還流冷却機、頭上攪拌機、サーモカプルおよび滴下ろ斗を装着する。反応時に産生された気体が、NaOHおよびエチレングリコールを含有する洗浄瓶に向かうように排気ラインを設ける。トロピノン(50.0g, 0.36モル、1当量)を別個にトルエン(100mL)に溶解し、トリホスゲン溶液に15分を要して加える。ついで混合物を35〜40℃に加温し、この温度に、アリコートの分析が、も早これ以上の変換が起こらないことを示すまで保持する(16時間)。混合物を室温に冷却し、水(200mL)で処理し、相が混合するように激しく攪拌する。カルバモイルクロリドの自動的な加水分解が、激しい気体の発生を伴って起こり、わずかに発熱も見られる。穏やかに1時間、40℃に加温して反応を完了させる。ついで、混合物を室温に冷却し、相を分離させ、沈積させる。12の塩酸塩を含有する水相を別の容器に移し、NaOH水溶液を加えてpHを12とし、新鮮なトルエン層で覆う。BOC無水物(78.4g, 0.36モル、11当量)を、滴下ろ斗から30分を要して加え、混合物を室温で激しく攪拌する。CO2の形成により、反応の進行とともに水相のpHは低下する。NaOHの水溶液を周期的に添加して、混合物のpHを11〜12に戻す。反応が完了したならば、少量の4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を加えて、残った (BOC)2Oの分解を触媒させる。これが終わったのち、攪拌を止め、相を分離させ、沈積させる。水相を排出し、12を含有する有機相を、薄いHOAc水溶液、NaHCO3水溶液および食塩水で順次洗浄する。生成物溶液を乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、蒸留すると灰白色の固体として生成物が残る(69.5g, トロピノンから86%)。
【0100】
シリル化/クロル化/ファヴォルスキー転位
12(17.0g, 75.56ミリモル)を1Lの外套付き反応機中、N2下、170mLのトルエンに溶解する。この溶液を20℃に維持し、純粋なDBU(15.8mL, 105.8ミリモル, 1.4当量)を、シリンジを介して加える。ついで直ちに、純粋なTMS-Cl(12.4mL, 98.22ミリモル, 1.3当量)をシリンジから5分間を要して添加する。直ちにDBU塩酸塩の沈殿が形成する。混合物を30℃で6時間攪拌し、ついで、室温に冷却して一夜攪拌する。約99%のシリルエノールエーテルへの変換が得られる。混合物を150mLの氷冷水で処理し、激しく攪拌して相を混合させる。相を分離させ沈積させたのち、水層を排出させ、有機相を食塩水で同様に洗浄する。生成物溶液を乾燥し(Na2SO4)、蒸留フラスコ中にろ過する。生成物溶液をさらに乾燥させるため、減圧下に一部のトルエンを蒸発させる。ついで溶液を50mLのEtOAcで希釈し、氷浴中で約0〜5℃に冷却し、固体のTCCA(5.85g, 25.16ミリモル, 0.33当量)を一度に加える。混合物を0℃で1時間攪拌すると、出発原料のシリルエノールエーテルは完全に消費される。混合物を室温まで加温し、さらにEtOAc(100mL)で希釈し、水中に注ぎ、攪拌する。相を分離、沈着させたのち、水相を排出させる。有機相を減圧下35℃で濃縮して大部分のEtOAcおよびトルエンを除去する。残留物を100mLのEtOHで希釈し、再び濃縮すると、計約75mL容量のtert-ブチル2-クロロ-3-[(トリメチルシリル)オキシ]-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-2-エン-8-カルボキシレートが得られる。
【0101】
上述の粗製クロル化混合物をEtOH(100mL)で希釈し氷水浴中のフラスコ内に置く。混
合物を25% NaOH水溶液(36g, 226.7ミリモル)で処理し、2時間攪拌すると、出発原料は完全に消費される。混合物を水中に注ぎ、MTBEで2回抽出する。有機相を合せて、のちに分析が必要になる可能性のために留保する。ファヴォルスキー生成物のナトリウム塩を含有する塩基性の水相を10℃未満に冷却して、2M HClで注意深くpH3にする。得られた沈殿を真空ろ過によって集め、洗液がほぼ中性になるまで洗浄する。風乾すると、固体(融点174℃、DSC)は8.1gの一定重量に達した。酸性化後のろ液をMTBEで抽出した。有機相を水および食塩水で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、蒸留するとさらに生成物が得られた。総収量は8.9g(49%)であった。1H NMR (CDCl3)δ4.54 (d, J=4.0 Hz, 1H), 4.29 (d, J=4.4 Hz, 1H), 2.57 (dd, J=8.8, 4.8 Hz, 1H), 2.22 (m, 1H), 1.79 (m, 2H), 1.61 (dd, J=12.4, 8.8 Hz, 1H), 1.47 (m, 1H), 1.4 (s, 9H); 13C NMR (45℃, CDCl3)δ 178.4, 155.1, 80.2, 59.5, 56.1, 47.5, 33.5, 29.7, 29.0, 28.4; 元素分析; C12H19NO4として計算値C, 59.73: H, 7.94; N, 5.81: 分析値:C, 59.67: H, 8.08; N, 5.75。
【0102】
エナンチオーマーのクロマトグラフィーによる分割
実施例1
操作パラメーター
カラム(CSP): Diacel Chiracel OD, 20ミクロン
移動相: 20/80(v/v)イソプロパノール/ヘプタン
カラムの長さ: 21cm
カラム I.D.: 8cm
供給注入: 50mg/mL溶液約40mL(ラセメート2g)
溶出液流速: 300mL/分
温度: 室温
分離の実行
8純度(%) 100.0%
8収率: 79%
他のエナンチオーマー純度(%): 97.2%
生産性(kg ラセメート/kg CSP/日): 0.67
溶媒消費量(L/gラセメート): 0.84
【0103】
実施例2
操作パラメーター
カラム(CSP): Diacel Chiracel OD, 20ミクロン
移動相: 20/80(v/v)イソプロパノール/ヘプタン
カラムの長さ: 9.0cm
カラムI.D.: 4.80cm
カラム数: 8カラム
領域: 2-2-2-2
供給濃度: 45g ラセメート/L移動相
溶出液流速: 129.89mL/分
供給流速: 32.43mL/分
抽出液流速: 110.73mL/分
ラフィネート流速: 25.59mL/分
期間: 0.89分
温度: 常温
SMBの実行
8純度(%) 100.0%
8回収率: 98.3%
生産性(kg エナンチオーマー/kg CSP/日): 2.50
溶媒消費量(L/gラセメート): 0.084
【0104】
8の加水素分解
基質8(189g, 0.546モル)およびPd触媒(5%Pd/C, 60重量%の水, 18.8g)を2LのParr瓶に取り、1Lの無水EtOHを加える。さらに0.2 LのEtOHを、基質を濯ぎ込むのに使用する。混合物を攪拌して大部分の基質を溶解させてからParrのシェーカーに入れる。システムをN2で3回潅流し、各潅流ごとに短時間振盪する。システムを、H2でも同様に3回潅流し、ついで、H2により60 psiに加圧する。反応混合物の振盪は24℃(内温)で開始する。水素の取り込みは極めて早く、反応の過程で反応温度は24℃から32.7℃に上昇する。ほぼ5分毎に、圧力が約20 psiに低下した場合、システムをH2で潅流し、60 psiに再充填する。これは水素の取り込みおよび発熱が突然停止する前に3回実施する。この時点での総振盪時間は22分である。振盪を15分間続け、H2がもう取り込まれなくなったら、サンプルを採取し、システムに50 psiのH2を再充填して振盪し、この間にサンプルを分析する。1H NMRによるサンプルの分析は8の1への完全な変換を示す。シェーカーからParr瓶を外し、残ったH2ガスを数時間、排気させる。ついで、反応混合物を中等度の焼結ガラスフィルターを通し、セライトまたは他のろ過補材を用いないでろ過する。少量の微細な触媒粒子がこのフィルターを通過する。ろ液および以後のケーキ洗液を合せて、容量約800mLまで蒸発させる。ついでこれを、細かい焼結ガラスフィルターを通してろ過し、この場合もろ過補材は使用しない。澄明な、極めて淡い黄色の溶液が得られる。減圧下に蒸発させると、淡黄色のスラッシュが残る。これをさらに、高真空のラインでNMR分析が、残留EtOH含量約0.2重量%を示すまで乾燥させる。この物質は他の更なる精製を必要としない。生成物は8から定量的な収量(115g)で得られる。1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ4.15 (br s, 1H), 3.85 (br s, 1H), 2.91 (dd, J=7.7, 3.0 Hz, 1H), 1.76 (dd, J=12.8, 7.8 Hz, 1H), 1.68 (br s, 2H), 1.65-1.54 (m, 2H), 1.41 (s, 9H), 1.34-1.20 (m, 3H); 13C NMR (100 MHz, 45℃, CDCl3)δ 155.3, 79.4, 64.3, 55.6, 55.4, 41.9, 28.20, 28.16, 25.8。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェニル2-ブロモ-3-オキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキシレート(3)からジベンジル 7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,7-ジカルボキシレート(4)を製造する方法であって、
3を水または有機溶媒に溶解し、場合により3を適当な溶媒中に約50%w/vの溶液として加え;
さらに塩基を添加し;そして、
さらに4を場合によりエキソ対エンド比約100:1の立体化学的純度を有する物質として単離する
ことからなる上記方法。
【請求項2】
3をベンジルアルコールに溶解し;
これに約1〜約3当量のベンジルオキシドナトリウムを加え、そして、
この方法は3の1gあたり約3mL〜約10mLの溶媒を用いる濃度で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
4を低分子量アルコールに溶解し;
さらに、Pd/Cを使用し;
さらに、場合により、少なくとも約30 psiで、さらに、場合により少なくとも室温で水素を適用し、
さらに、7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸(5b)を単離し;
さらに、5bをTHFおよびKOH水溶液、場合により10%KOH水溶液に溶解して均一な溶液を得、場合によりKOH水溶液を1回より多く加え;
さらに、 (BOC)2Oを加え、場合により(BOC)2Oを1回より多く加え;
さらに6を単離する
ことからなる、4から7-(tert-ブトキシカルボニル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸(6)を製造することをさらに含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
トロピノンを不活性有機反応溶媒に溶解し;
さらに、弱い不溶性の無機塩基を添加し;
さらに、反応を少なくとも約0℃の温度で行い;
さらに、フェニルクロロホルメートを添加し、添加完了後、場合により還流加熱し;
さらに、フェニル3-オキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキシレート(2)を単離し;
さらに、2を不活性有機溶媒に溶解し;
さらに、反応混合物を加熱し;
さらに、無水CuBr2を添加し;そして
さらに、3を単離する
ことからなる、トロピノンからフェニル2-ブロモ-3-オキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキシレート(3)を製造する方法をさらに含む請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
tert-ブチル3-オキソ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキシレート(12)から7-(tert-ブトキシカルボニル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸(6)を製造する方法であって、
アミン塩基で12を処理しシリルエノールエーテル中間体を得、この場合、塩基は場合によりジアザビシクロウンデセンまたはDBUおよびTMS-Clであり;
さらに、エノール中間体をEtOAc中TCCAで処理してクロル化中間体を得;
さらに、場合によりクロル化された中間体を単離し、場合によりEtOAcおよびトルエンを除去し;
さらに、クロル化された中間体を、塩基たとえばアルコール性溶媒中KOH、場合によりイソプロパノール、またはアルコール性溶媒中もしくは場合によりエタノール中NaOHで処理する;
ことからなる上記方法。
【請求項6】
トルエン中の12に純粋なDBU、場合により1.4当量を加え、ついで純粋なTMS-Cl、場合により1.31当量を、この順序に加え;
さらに、エノール中間体を単離し、
さらに、EtOAc中、場合により約0〜5℃に冷却したエノール中間体に固体のTCCAを添加し、さらに場合により0℃でエノール中間体が消費されるまで攪拌し;そして、
さらに、クロル化中間体を単離し、EtOAcおよびトルエンを除去する
ことを更に含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
不活性溶媒中、場合によりトルエン中でトロピノンにトリホスゲンを添加し;
さらに、水を添加し;
さらに、塩基、場合によりNaOHの水溶液を加えて反応混合物のpHを上昇させ、場合により10より高くし;
さらに、場合によりさらにトルエンを添加し;そして
さらに、(BOC)2Oを添加し、場合により残った(BOC)2Oの分解を触媒するためDMAPを添加し、ついで12を単離する
ことからなる、トロピノンから12を製造する方法を更に含む請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
6からエキソ-tert-ブチル 2(R(+)-{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(8)を製造する方法であって、6から(2R)-7-(tert-ブトキシカルボニル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸(15)を分割するか;または6から7を製造した後、tert-ブチル-2-{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(7)を製造して8を分割することからなる製造方法において、
さらに、15または6をDPPAおよび非求核性の有機溶媒可溶性塩基、場合によりEt3Nで、高沸点、不活性有機溶媒、場合によりトルエン、およびPhCH2OHで処理して15から8または6から7を製造し;そして
さらに、アルコール性溶媒たとえばエタノール中、Pd/Cの存在下における加水素分解により8から1を製造する
ことからなる請求項5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
6から8を製造し、6から15を分割し;
さらに、6または15、及び約1当量〜約1.5当量のEt3NをトルエンおよびPhCH2OHに溶解し;
さらに、溶液を、場合により約30℃〜約80℃に加熱し;
さらに、DPPAを、場合により約0.95当量〜約1.2当量、さらに場合により、反応温度および窒素ガスの飛散速度がコントロールされる速度で添加し;
さらに、温度および窒素ガスの飛散速度が低下し始めたならば、反応混合物を、場合により約30℃〜110℃に加熱し;
さらに、ベンジルアルコール、場合により約0.95当量〜約1.5当量を添加し;
さらに、反応混合物を、残った6または15がそれぞれ7または8に対して1%未満になるまで、場合により約30℃〜110℃の温度で攪拌し;
さらに、穏やかな塩基性の水溶液で後処理し、場合によりシリカゲルクロマトグラフィーを用いて精製し、ヘキサン中場合により40〜50%のEtOAcで溶出し;そして、
さらに7または8を単離し、7から8を分割する
ことをさらに含む請求項8記載の方法。
【請求項10】
エキソ-(tert-ブチル 2(R(+))-2-アミノ-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(1)を8から、8の加水素分解により製造することをさらに含む請求項9記載の方法。
【請求項11】
化合物は、
エキソ-(tert-ブチル 2(R(+))-2-アミノ-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(1);
エキソ-tert-ブチル 2R(+)){[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(8);
エキソ-tert-ブチル 2-[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(7);
(2R)-7-(tert-ブトキシカルボニル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸(15);または
7-(tert-ブトキシカルボニル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸(6)
であり、その化合物が酸である場合には、そのアルカリ金属またはアミンの塩であることができ、さらにその化合物がアミンである場合には、その酸の塩であることができ、そして、さらにその化合物は様々な程度の化学的純度およびキラル純度を有することができる化合物。
【請求項12】
化合物は、エキソ-(tert-ブチル 2R(+))-2-アミノ-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-カルボキシレート(1)であり、その化合物はその酸の塩であることができ、さらに、その化合物は様々な程度の化学的純度およびキラル純度を有することができる請求項11記載の化合物。
【請求項13】
化合物は、7-(tert-ブトキシカルボニル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸(6)であり、その化合物はそのアルカリ金属またはアミンの塩であることができ、さらにその化合物は様々な程度の化学的純度およびキラル純度を有することができる請求項11記載の化合物。
【請求項14】
化合物は少なくとも95%の化学的純度および少なくとも95%のキラル純度を有する請求項11〜13のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
化合物は少なくとも97%の化学的純度および少なくとも99.5%のキラル純度を有する請求項13記載の化合物。

【公表番号】特表2006−518367(P2006−518367A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502452(P2006−502452)
【出願日】平成16年2月9日(2004.2.9)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000430
【国際公開番号】WO2004/074292
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】