説明

エステル化脂肪酸組成物

本発明は、様々なタイプの関節炎および他の炎症性関節状態、歯周疾患および乾癬の治療および予防に用いられ、既知の治療に伴う多くの副作用を避ける、レシチン、オリーブ油、エステル化脂肪酸およびトコフェノール類の混合物を含む組成物に関する。本発明の組成物は、安定度の増進、細胞のアラキドン酸の減少、エイコサノイド産生の減少、および細胞調節および伝達の強化といった利点を有する。また、治療および予防のため組成物を使用する方法が、開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、様々なタイプの関節炎および他の炎症性関節状態、歯周疾患および乾癬の治療および予防に用いられ、既知の治療に伴う多くの副作用を避ける、レシチン、オリーブ油、エステル化脂肪酸およびトコフェノール類の混合物を含む組成物に関する。本発明の組成物は、安定度の増進、細胞のアラキドン酸の減少、エイコサノイド産生の減少、および細胞調節および伝達の強化といった利点を有する。また、治療および予防のため組成物を使用する方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
関節疾患、骨粗鬆症、脊椎疾患および筋骨格外傷によって生じる重大な慢性痛に苦しんでいる人が、世界中で4億人以上いる。骨関節炎(関節炎の最も一般の型)は、2100万人以上のアメリカ人に影響を及ぼして、米国における能力障害の主要な原因である。2020年までに、アメリカの約6000万人の人々は、何がしかの関節炎にかかることになるだろう。身体的損失の他に、毎年アメリカは関節炎にほぼ650億ドルを費やしている。関節炎は、就業障害の原因として心疾患の次に挙げられる。MMWR(1999)48:349−353を参照。
【0003】
関節炎によって、通常こり、痛みおよび疲労を生じる。ある人においては、ほんの少数の関節のみが影響を受け、その影響は小さいかもしれない。他の人においては、全身が影響を受けているかもしれない。
【0004】
関節炎と炎症性状態のための既知の療法は、通常一時的で、鎮痛剤または抗炎症薬の使用と身体的な物理療法に基づく。抗炎症薬(例えばNSAID)は、重大なNSAID起因性の胃腸副作用および腎毒性の潜在的リスクが高いため、鎮痛性および抗炎症性があり、安全で、病歴を好ましい状態に改善する療法が必要である。
【0005】
NSAID(例えばVioxxTM、CelebrexTM)の新しい種類には、COX−2の選択的抑制に基づいたものがある。COX−2抑制剤は胃腸合併症を最小限にするが、依然としてうっ血心不全および腎機能異常の禁忌がある。Wilcox et al.,Arch.Intern.Med.(1994) 15:42−45;Perneger et al.,N Eng J Med (1994) 331:1675−1679;and Everts et al.,Clin.Rheumatol(2000) 19:331−43を参照。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、深刻な副作用を生じない、関節炎、その他のリューマチおよび骨格の病気の予防方法および効果的な治療が切に求められている。本発明は、現在の治療に関連する多くの問題を回避しつつ、関節炎および関連した症状の治療および予防をする組成物および方法を提供する。これらの組成物の更なる利点は、有効性および安定性が高く、細胞におけるアラキドン酸とエイコサノイド産生が減少することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、本発明の組成物が関節炎および他の炎症性疾患の治療および予防に効果的であるが、既知の治療に伴う特定の副作用(例えば腎機能不全および心臓機能不全)を避けるという発見に基づいている。これらの組成物の更なる利点は、有効性および安定性が高く、細胞におけるアラキドン酸とエイコサノイド産生が減少し、および細胞の調節と伝達を高めることにある。本発明は、また、乾癬、狼瘡と心臓/心血管疾患に対して効果的である。
【0008】
一態様において、本発明は、レシチン脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、エステル化脂肪酸とトコフェノール類の混合物を含んでいる組成物に関する。
【0009】
レシチン脂肪酸は、組成物の約1%から約10%であってもよい。好ましくは、レシチン脂肪酸は、組成物の約1%から約5%である。より好ましくは、レシチン脂肪酸は、組成物の約5%である。オリーブ油脂肪酸は、組成物の約15%から約25%であってもよい。好ましくは、オリーブ油脂肪酸は、組成物の約15%から約20%である。より好ましくは、オリーブ油脂肪酸は、組成物の約20%である。エステル化脂肪酸は、組成物の約70%から約80%であってもよい。好ましくは、エステル化脂肪酸は、組成物の約70%から約75%である。より好ましくは、エステル化脂肪酸は、組成物の約74%である。トコフェノール類の混合物は、組成物の約1%から約5%であってもよい。好ましくは、トコフェノール類の混合物は、組成物の約1%から約3%である。より好ましくは、トコフェノール類の混合物は、組成物の約1%である。
【0010】
レシチン脂肪酸は、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸とこれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。オリーブ油脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ステアリン酸、アラキジン酸とこれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。エステル化脂肪酸は、デカン酸、ラウリン酸、ミリストレイン酸、ミリスチン酸、パルミトオレイン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸とこれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。
【0011】
更なる態様において、本発明は関節炎または他の炎症性関節状態、乾癬、狼瘡、歯周疾患、または心臓であるか心血管の状態を治療および/または予防するための薬学的組成物に関し、該組成物は約1%から約10%のレシチン脂肪酸、約15%から約25%のオリーブ油脂肪酸、約70%から約80%のエステル化された脂肪酸および約1%から約5%のトコフェノール、そして医薬的に適切な担体類を含む。医薬的組成物は、さらに、保護コロイド類、懸濁または膨張性薬剤類、賦形剤類、結合剤類および担体類として、生体適合性ポリマー類を適宜含む。
【0012】
更なる態様において、本発明は、関節炎または他の炎症性関節状態、乾癬、狼瘡、歯周疾患、または心臓であるか心血管の状態を治療および/または予防する方法に関し、該方法は、レシチン脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、エステル化脂肪酸とトコフェノール類の混合物を含む組成物の効果的な量を、それを必要としている被験体に投与することを含む方法である。関節炎または他の炎症性関節状態は、骨関節炎、強直性脊椎炎、くびの関節炎、線維筋痛(firbromyalgia)、骨壊死、パジェット病、滑液包炎、乾癬、痛風、手根管圧迫症候群、若年性関節リウマチ、腰仙関節炎、乾癬性関節炎およびリウマチ様関節炎を含むが、これらに限定されるものではない。被検者は、哺乳類であってもよい。好ましくは、哺乳類はヒト、イヌまたはネコである。
【0013】
好ましくは、組成物は局所的に投与される。局所的に投与されるとき、好ましくは、投与される組成物の量は、被検者の体重に対して1日あたり約1から15mg/kgである。より好ましくは、投与される組成物の量は、被検者の体重に対して1日あたり約3から10mg/kgである。もっとも好ましくは、投与される組成物の量は、被検者の体重に対して1日あたり約5から8mg/kgである。
【0014】
組成物は、また、好ましくは経口投与される。経口投与されるとき、好ましくは、投与される組成物の量は、被検者の体重に対して1日あたり約5から32mg/kgである。より好ましくは、投与される組成物の量は、被検者の体重に対して1日あたり約10から30mg/kgである。もっとも好ましくは、投与される組成物の量は、被検者の体重に対して1日あたり約15から25mg/kgである。好ましくは、組成物は、軟らかいゲル、または代わりにタブレットまたはカプセルによって経口投与される。
【0015】
好ましくは、組成物を1日に1回または2回投与してもよい。
【0016】
更なる態様において、本発明は、関節炎または他の炎症性関節状態、乾癬、歯周疾患、狼瘡または心臓血管疾患と心疾患を治療または予防するために、もう1つの化合物または効果的な療法と併せて、該組成物が被験体に投与される方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の好ましい実施形態の詳細な説明
一般に、本出願の用語は、それらの用語が従来技術において理解されると同様の一貫性をもって使用される。
【0018】
本明細書において使われるように、用語「関節炎と他の炎症性関節状態」とは、関節炎症を意味し、100以上の異なる疾患、例えば、骨関節炎、強直性脊椎炎、くびの関節炎、線維筋痛、骨壊死、パジェット病、滑液嚢炎、乾癬、痛風、手根管圧迫症候群、若年性慢性関節リウマチ、腰仙関節炎、乾癬性関節炎およびリウマチ様関節炎を含むが、これらに限定されない。これらの疾患は、通常、関節またはその周辺領域(例えば筋と腱)に影響を及ぼす。これらの疾患の一部は、また、皮膚と内部臓器を含む身体の他の部分に影響を及ぼすことがある。
【0019】
用語「局所的に」とは、発症領域にわたって塗布すること意味する。
例えば、本発明は、組成物を血流に入れるため、膝関節の上に、または体のいずれの部位にでも塗布してよい。
【0020】
用語「歯周疾患」とは、生歯のサポート構造の破壊に至るあらゆる炎症性状態を意味する。
【0021】
A.組成物とそれを使用している治療および予防の方法
本発明は、特に関節炎と他の炎症性関節状態のほか、乾癬の治療と予防に特に効果的である組成物に関する。
【0022】
関節炎の炎症過程は、炎症誘発性のサイトカイン(例えばIL−1βとTNF−α)の放出を含む。脂肪酸は、リューマチ様関節炎患者のこれらの炎症性サイトカインに影響を及ぼすことが示された。これらの脂肪酸の栄養補助食品が、刺激された好中球からロイコトリエンB4そして単球からのインターロイキン1の放出を減らすことによるリウマチ様関節炎の慢性炎症を緩和している可能性がある。
【0023】
エステル化脂肪酸(EFA)は、セチルアルコールとエステル結合している脂肪酸であり、患者の定期栄養脂肪に少量見られ、EFAを注射されたラットがアジュバント関節炎に対して非常に強い耐性を示すと報告されている。最近、EFAを与えられる骨関節炎患者は、生活の質において有意な改善を示した。このように、EFAは強力な生理作用を持つ。Curtis et al,J.Biol Chem(2000) 275:721−724;and Kremer,Lipids(1996) 31 Supp:5243−47を参照。
【0024】
経口的または局所的に与えられるとき、エステル化脂肪酸(EFA)はかなり吸収される。EFAのほとんどは、新陳代謝し、組織または血漿で無損傷のままになっている比率は小さい。EFAとその代謝産物は、さまざまな組織(例えば肝臓、腎臓、筋と脂肪組織)に分配する。組織の中のEFAとその代謝産物の脂質プロフィールは、経口的投与および局所的投与の間では似ている。無損傷のEFAの大部分は、局所投与の部位で皮膚組織で見つかる。
【0025】
このように、本発明は、エステル化脂肪酸製剤を使用する。本製剤は、レシチン脂肪酸、オリーブ油脂肪酸とエステル化脂肪酸を含む。本製剤は、また、トコフェノール類の混合物を含むでもよい。好ましくは、製剤は5%のレシチン、20%のオリーブ油、74%のエステル化脂肪酸と1%のトコフェノールの混合物を含む。
【0026】
関節炎と他の炎症性状態に対して効果的であることに加えて、組成物の成分は、他の利点を与える。具体的には、トコフェノール類の混合物は、液状の抗酸化剤として、脂肪酸混合に有効性、安定性と保存性を高めるという長所を提供する。脂肪酸炭素は、細胞の中のアラキドン酸の減少、リポキシゲナーゼとシクロオキシゲナーゼを経たエイコサノイド産生の減少、そして細胞の調節と伝達の強化を生じる。下記の表1−3は、本発明において使用する、好ましいレシチン脂肪酸、オリーブ油脂肪酸とエステル化脂肪酸を提供する。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

本発明で最も好ましい処方混合は、表4で示される。
【0030】
【表4】

経口的または局所的に摂取されるかどうかに関係なく、本発明は普通食で限られた供給で見つかる一群の化合物を供給する。その大部分が消費されない一次性の構成要素は、セチルアルコールと炭素14脂肪酸エステル((ミリスチン酸とミリストレート(myristoleate))である
これらの化合物は、さまざまな組織内で分配される。結果として生じるカイロミクロンは、それから循環の範囲内で配布されて、全ての細胞のマトリックスが利用できるようにされる。加えて、経口的かつ局所的な使用で、おそらく肝臓を通して初回通過の前に組織間隙の範囲内で若干の分布がある可能性が高い。1つの考えられる経路は、体内で最近見つかったアディポサイトカイン経路である。この経路の第一級化合物は、レプチンである。レプチンは、イニシエーターとして、そして、綿毛調節器として炎症性過程に関係していると考えられる。
【0031】
脂肪酸の生成物は、細胞性膜において変化を誘発することができる。本発明で見つけたものと同様の一不飽和脂肪酸は、内皮活性化を抑制して、サイトカインへの組織反応性を下げることを示した。脂肪酸は、慢性炎症性疾患を調整する種々の酵素法を調整することが示された。
【0032】
アラキドン酸は、炎症のための一次性の媒介物質のうちの1つである。魚油からの脂肪酸は、シクロオキシゲナーゼとリポキシゲナーゼを通してエイコサノイド産生を減らしている細胞膜でアラキドン酸量を減少させることが示された。それは、アラキドン酸副産物と炎症を制御するロイコトリエンおよびプログランディン(proglandins)との併発との間での統合である。本発明の範囲内の脂肪酸は、エイコサノイド産生を制限するのに作用し、それによって炎症性カスケードを減らしている。
【0033】
脂肪酸が細胞の制御と伝達に深在性の影響を及ぼすことを示す証拠がある。この過程のための一次性の器官は、小胞体とゴルジ体装置である。これらの2つの細胞構造は、身体の範囲内の細胞のシグナルを製造している主要構造である。本発明で見つかる即効性の利点は、そのような急速な細胞性伝達と調節である。
【0034】
大きな潜在性を持つ1つの領域は、本発明の脂肪酸化合物とスフィンゴ脂質との間の相互作用である。スフィンゴ脂質は、細胞機能のために決定的で、独自に小胞体とゴルジ体と統合される。スフィンゴ脂質は、細胞過程の動的な調節器と考えられる。スフィンゴ脂質の可変構造とグリセロ脂質は、膜の範囲内で微小ドメインまたはラフトの形成を起動させる。スフィンゴ脂質(Spingolipids)は元々はC18脂肪酸バックボーン基づく、しかし、飽和とヒドロキシル化において異なっている14から20の炭素数が変化している鎖長を有する60以上の異なる種が知られている。
【0035】
スフィンゴ脂質とグリセロ脂質の食餌操作の影響は、ステアリン酸とEPAが、オレイン酸と比較して、ゴルジ体脂質輸送に小胞体を変えることができることをガラス管内で証明した。1つの結果は、小胞体脂質合成の抑制と管腔の粒子への膜脂質の転移であった。加えて、T細胞抑制の多価不飽和脂肪酸媒介は、膜での信号タンパク質置換に起因している。脂質のラフトの変化は、一次性の座位である。
【0036】
当業者によって理解されるように、製剤含量は必要に応じてpHと等張のために調整してもよい。好ましくは、pH範囲は、4.0〜8.0である。これらの製剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)またはポリエチレングリコール(PEG)等の生体適合性ポリマー類、そして、保護コロイド類、懸濁または膨張性薬剤類、賦形剤類、結合剤類および担体類としてポリマー類を適宜含む。
【0037】
本発明でよく作用する周知の経口の剤形は、制御あるいは即時放出のためにピル、コーティングタブレットを含むタブレット、カプセル、ゲル・カプセル、軟らかいゲル、エリキシル、乳濁質液、ミクロ乳濁質液とプレ乳濁質液濃縮物を含む。軟らかいゲルは、最も好ましい経口の形態である。活性の薬を供給するのに用いられる製剤が、特定の期間にわたって作用点に到達する薬の量および/または濃度に影響を及ぼすので、溶解性は経口投薬製剤の開発において大きな役割を果たす。製剤の組成は、また、胃腸管で薬化合物の可溶化に直接影響を及ぼす、従って、血流への活性の薬化合物の吸収の程度と速度にも影響を及ぼす。さらに、薬の治療の価値は本薬がデリバリー系から放出される速度に影響を受ける。そして、それは吸収の前に胃腸管で活性化合物の可溶化の速度および程度に影響を及ぼす。
【0038】
関節炎または他の炎症性関節状態、歯周疾患、乾癬、狼瘡または心臓血管疾患と心臓病を効果的に治療することに加えて、本発明の組成物は、これらの状態を予防することに効果的である。脂肪酸が炎症を減らすために細胞内で作用するのと同様に、それらは、炎症の再発防止に細胞内で作用する。更に、本発明の組成物は、炎症を減らして、予防することによって、疾患の発症と炎症から生じる状態を予防する。例えば、動脈の炎症を緩和することで、本発明の組成物は、心臓病と心血管疾患の発症を予防する。
【0039】
本発明の組成物の適切な投与量は、例えば、治療される/予防される状態、重症度と状態の経過、組成物が予防的または治療的目的のいずれで投与されるのか、過去の療法、患者の病歴そして組成物への反応、および主治医の裁量による。
【0040】
好ましくは、組成物は局所的に投与される。局所的に投与されるとき、好ましくは、投与される組成物の量は、被検者の体重に対して1日あたり約1から15mg/kgである。より好ましくは、投与される組成物の量は、被検者の体重に対して1日あたり約3から10mg/kgである。もっとも好ましくは、投与される組成物の量は、被検者の体重に対して1日あたり約5から8mg/kgである。経口投与されるとき、好ましくは、投与される組成物の量は、被検者の体重に対して1日あたり約5から32mg/kgである。より好ましくは、投与される組成物の量は、被検者の体重に対して1日約10から30mg/kgである。もっとも好ましくは、投与される組成物の量は、被検者の体重に対して1日約15から25mg/kgである。
【0041】
組成物は、患者に一時にまたは一連の治療にわたって適切に投与され、また、診断が進んでから、いつでも患者に投与してよい。組成物は、唯一の治療として、または問題の状態を治療し、予防することに役立つ他の薬または療法と同時に投与されてもよい。
【0042】
このように、本発明の方法を行う際に、本発明の化合物が、単独でまたは他の治療薬と併用して使われてもよい。本明細書においては、2つの(またはより多くの)薬剤が同時に作用するように、2つの剤が同時に投与されるか、または別々に投与されるとき、それらが組み合わせで投与されているとする。特定の好ましい態様において、本発明の組成物は、一般に認められた医療によってこれらの状態に対して典型的に処方される他の治療とともに同時投与されてもよい。例えば、本発明の組成物は、関節炎または関連した状態の治療および/または予防のために他の治療薬または物療科と併用して投与されることができる。単独でまたは他の既知の療法と併用して、本発明で治療のために意図される状態の一部は、以下に提供される。また、本発明と組み合わせて投与されてもよい、典型的療法が提供される。
【0043】
リウマチ様関節炎は末梢の関節の炎症によって特徴づけられる。そして、潜在的に、全身性発現有無にかかわらず、骨関節と関節周囲構造の進行期の破壊に至る。治療は、NSAID、サリチル酸、金化合物、細胞毒性または免疫抑制薬とコルチコステロイドを含む。
【0044】
強直性脊椎炎(AS)は、一種の血清陰性の脊椎関節症に分類される。神経性で心臓病学的な徴候が、時々起こることがありえる。ASは、ほとんどまたは全く非活動性の炎症の期間と交替している活性の椎骨炎の軽度であるか中等度のフレアによって特徴づけられる。治療は、限定的な治療価値を有する、毎日の運動、NSAIDとコルチコステロイドを含む。
【0045】
骨関節炎は、前縦靱帯の著しい濃厚化と増殖を含む。椎骨動脈の機能上の病変、脊髄の梗塞形成と骨増殖体による食道圧縮が、時々起こる。治療は、アセトアミノフェンまたはNSAIDを含んで、ラミネクトミー、骨切りおよび完全関節置換等の手術を含んでもよい。
【0046】
血管の壊死は、大腿および上腕骨の上部、距骨部、および手根の舟状骨に起こる。血液供給が損なわれ、このように大腿または上腕骨の上部への動脈とそれらとの間の吻合の程度の相対寄与の機能であるとき、外傷後無血管壊死は発症する。そして、それは人により変化する。治療は、鎮痛剤、関節可動域訓練および皮質骨移植を含む。
【0047】
急性感染性関節炎は、バクテリアまたはウイルスに起因する。ナイセリアゴノロエエ(Neisseria gonorrhoeae)は、成人において最も頻度が高い細菌性の原因である。それは、感染した粘膜表面(すなわち、くび、直腸、咽頭)から、手の小さい関節、手首、肘、膝と足首まで広がる。慢性感染性関節炎は、低い病原性で放線菌、菌類と若干のバクテリアに起因する。治療は、抗生物質を含む。
【0048】
急性痛風関節炎(痛風)は、軽い外傷、プリンの豊富な食物またはアルコールの過度の摂取、手術、疲労、情動ストレスまたは医学のストレス(例えば感染、血管閉塞)によって誘発される可能性がある。疼痛は、次第により厳しくなって、しばしば耐えがたい。治療は、NSAID(コルヒチン)を含む、そして、細胞外の体液中の尿酸の濃度を下げる。
【0049】
骨軟骨腫症は、ふくれた、痛みを伴う関節で、多数の軟骨遊離体によって特徴づけられる。手術は、関節の滑膜とともに遊離体を除去するために必要である。
【0050】
骨格の機械的な支持に利用できる骨の量が結局骨折閾値以下に落ちるとき、骨粗鬆症は起こる、そして、患者は、ほとんどまたは全く外傷のないが骨折している。骨粗鬆症の大きな臨床症状は骨折である。そして、それは慢性痛を生じる。治療は、医薬、十分な体重の維持、より歩くことおよび他の体重負荷運動を含む。
【0051】
ページェット病は、増加した骨密度、異常な構造、皮質濃厚化、内反と過成長によって特徴づけられる。治療は、サリチル酸、NSAID、歯科矯正学と整形外科を含む可能性がある。
【0052】
ジストニアは、反復性ねじれ運動と異常姿勢に至ってしまう持続性の筋収縮である。斜頸は慢性の限局性の筋失調症であり、首が曲がっている、活動性、疼痛性の、限定された過程を経る頸部のけいれんとは異なる。治療は、加強法の物理療法、抗コリン作用剤とベンゾジアゼピンを含む。
【0053】
ボタン孔変形(ボタン穴変形)は、中節骨伸筋腱のセントラルスリップ付着基礎の破壊に起因する、伸筋腱の側索との間の基節骨のいわゆるボタン穴を形成している。固定化した変形が進行した後の外科的再構成では、しばしば不十分であるとわかっている。
【0054】
デュピュイトラン拘縮(手掌線維腫症)は、手掌筋膜のバンドの進行期の拘縮である。そして、指の屈曲変形を発生する。治療は、小結節へのコルチコステロイド懸濁液の局所注入、手術、ビタミンEの多量投与を含む。
【0055】
手根管圧迫症候群は、指または手で、そして、時々前腕と肘における、特定の一連の症状(刺痛、しびれ感、衰弱または疼痛)を記述するのに用いられる用語である。手首の範囲内で圧力が神経にかかっているとき、これらの徴候は起こる。治療は、しばしば手術を含む。
【0056】
スポーツ損傷は、嗅索の外側根・内側根上顆炎(テニス肘)と膝蓋大腿の疼痛(ランナーズニー)を含む。筋肉または関節損傷の最も頻度が高い原因は、それらの酷使である。ほとんどすべての急性スポーツ外傷のための治療は、氷、圧縮と隆起のほか、局所のコルチコステロイド注射を含む。
【0057】
乾癬は、正常より最高10倍のスピードで増殖する皮膚細胞によって特徴づけられる。下にある細胞が皮膚の表面に到達して、死ぬにつれて、それらの全体積が、白いスケールでおおわれ、盛り上がった、赤いパッチを生じる。治療は、サリチル酸とステロイド含む。
【0058】
狼瘡は、体の全体を通じて炎症、疼痛と組織損傷を生じることがありえる自己免疫疾患である。治療は、抗炎症性の薬物投与を含む。
【0059】
心血管で心臓の疾患は、脈管系全体を通じての炎症性病変によってしばしば特徴づけられる。脈管系の炎症を減らすことは、心臓/心血管疾患のリスクおよび/または重症度を減らすことができる。
【0060】
歯周疾患は、生歯の支持構造の破壊に帰着する一群の炎症性状態から成る。そして、活性化過剰の炎症性状態に起因する。活性状態は、周囲の生歯を分解させる毒性化合物の放出を生じる。これらの毒性化合物の調節は、細胞膜酸化および/または組織ホスホリピド遊離に由来する大部分の炎症性状態で見つかる化合物と類似している。脂肪酸は、ロイコトリエン、プロスタグランジンとトロンボキサン経路を通して炎症性カスケードを調整する。
【0061】
歯周の治療は、テトラサイクリン、クロルヘキシジン、ドキシサイクリンとミノサイクリンを含む経口リンスおよび歯肉ゲルを含む。抗生物質の介入が、一般に口腔で見つかるグラム陰性で嫌気性の菌の生存力を減らすか、除去すると考えられている。細菌性の負荷の除去は、歯周疾患と骨損失の進展を遅延させる。脂肪油の経口投与は、歯肉炎症の減少を誘発する。本発明の組成物および製剤の局所適用は、細菌性負荷で類似的な緩和を達成することができる。
【実施例】
【0062】
実施例1
EFA複合体の生体利用度
胃および腸管の内容物を再現した酸性の酵素系の中で複合体の生体利用度を決定するために、エステル化脂肪酸(EFA)複合体を用いてインビトロの実験を行った。複合体のアリコートを、pH2.0にし、膵リパーゼにさらした。この実験では、pHが低い間またはリパーゼが作用している間、ごくわずかな量の分解が見られた。
【0063】
このインビトロの実験に加えて、精製飼料に適応しているラットに、2%のEFAを含んでいるまたはEFAを含んでいない食餌を与えた。2時間後に、胃および小腸内容物を採取し、腸粘膜を破砕した。脂質が抽出されて、加水分解によって分離され、セチルアルコールの存在下により、評価された。EFAなしの食餌を与えられたラットの場合、セチルアルコールまたはEFAは、どのサンプルでも見つからなかった。EFAを与えられて育ったラットの場合、胃または腸管の内容物にも粘膜にもセチルアルコールはなく、これは加水分解がなかったことを示す。一方、EFAは粘膜の内で見つかり、これは吸収していることを示している。
【0064】
EFA複合体生体利用度について更に解明するために、基本の脂肪酸物質が、標識セチルアルコールでセチル化された。生成物は、精製されて、精製飼料で標準化されたラットに与えられた。胃、腸管のおよび粘膜内容物は、加水分解性の副産物について再び分析された。その結果によると、EFA複合体の約40%がセチルアルコールと脂肪酸とに加水分解(hydroyzed)されたことがわかった。胃および腸管の内容物、その中でも脂肪の含量からEFA複合体の加水分解の量が求められることがわかった。
【0065】
EFA複合体の安全性
経口毒性試験を行った。ラットに約1杯の茶さじ分のエステル化脂肪酸複合体を(経口の胃管栄養法によって)与えた。この実験の結果は、ヒトに与えられる量の1300倍に等しい服用量が、ラットの行動と全般的な健康に全く変化を起こさないことのほかに、主要器官(例えば心臓、腎臓と肝臓)の組織学的に異常だと判断されるものは何もなかったことを示した。
【0066】
試験は、局所用クリームの形態にしたエステル化脂肪酸が、最高140日の間使用された後、皮膚発疹か刺激作用を誘発したかどうかを判断するために行われた。ヌードマウスを利用した。140日の使用の後、局所使用された部分は皮膚発疹または刺激を誘発しなかった、また、下にある表皮のどんな組織学的変化も誘発しなかった。
【0067】
EFA複合体の有効性
経口の軟らかいゲルを試験した。被検者は、合計68日間、毎日軟らかいゲル(1日につき6回)を与えられた。2つの主な結果因子は、膝可動域とLequesne Algofunctional Indexの反応であった。活性のエステル化脂肪酸油の被検者では、膝可動域が約10度増えた。これはプラセボ群から統計学的に有意だった。加えて、Lequesne Indexからの確率推定値によると、活性のエステル化脂肪酸油の被検者が機能的自立度の点で、統計学的に有意な能力を得たことがわかった。
【0068】
実施例2
局所用クリームを試験した。乾癬を患っている14の被検者は、クリームを与えられ、そのうち3人がプラシーボを受けた。7日目と14日目の評価は、そう痒症(pruritis)(痒み)の改善および乾癬の緩和を示した。クリームも、スケーリング、発赤、皮膚クラッキングと炎症を改善した。
【0069】
実施例3
経口または局所投与後のラットの中のエステル化脂肪酸の分布
エステル化脂肪酸(EFA)の腸管および局所での吸収、その組織内分布、吸収の後その代謝の形態を決定することが、この試験の目的であった。雄ウィスターラット(10)は、2つの群に分けられた。両群は、標準の齧歯目の精製飼料(AIN−93G)を与えられた。5匹のラットからなる1つの群は、220,000DPMの14C標識が付いたエステル化脂肪酸を1日2回胃管飼養された。5匹のラットからなる他の群には、220,000DPMの14C標識が付いたエステル化脂肪酸を肩部の間の剃った皮膚の領域に1日2回局所的に適用した。合成で使用される脂肪酸混合物は、さまざまな脂肪酸を含むが、ミリストレイン酸(25%)で濃縮された。7日の処置の後、動物をエチルエーテルで麻酔にかけ、血液は心臓穿刺によって取り出し、そして、肝臓、腎臓と後肢からの筋肉組織のサンプルを集め、重さを量り、凍結した。加えて、2日の糞便の収集は、実験の最後の2日間で行った。
【0070】
脂質は、血漿、組織標本と大便から抽出され、薄層クロマトグラフィー板にスポットされ、脂質種類別に分離された。脂質種類は、ヨウ素蒸気に曝露することで、視覚化され、マークをつけられ、液体シンチレーションバイアル中にて破砕され、計測された。顕性腸管吸収は、糞便排せつ物を測定して、それを摂取量から減ずることによって推定され、摂取量のパーセントとして表された。腸管吸収は、実質的に完全だった。このように、経口摂取されるとき、EFAは食餌性トリグリセリドと同じ高い程度に吸収される。
【0071】
組織内の放射標識の分布は、放射標識が口でまたは局所的に投与されるかどうかに関係なく類似していた。検査される各々の組織で、大多数の放射標識は、ホスホリピドまたはトリグリセライドで見つかった。この知見に対する1つの例外は、局所的に適用された放射標識から脂肪組織にあった。この場合、放射標識の有意な量は、未知の脂質の分画で見つけられた。無損傷のEFAとして存在している放射標識の量は、検査される各々の組織では比較的少なかった。その量は、肝臓で最大で、約6−7%の放射標識として生成し、また、腎臓と脂肪で最小で、その量は<1%から2%であった。
【0072】
経口で放射標識を与えられるラットの小腸の粘膜の放射標識の分布において、大部分の放射標識は、ホスホリピド分画に存在し、無損傷のEFA(約1%)としてはほとんど存在してなかった。
【0073】
経口的および局所的、いずれの形態で投与された動物でも、脂質分画の間での血漿放射標識分布は類似していた。また、大部分の放射標識は、トリグリセライドとホスホリピド分画で見つかった。比較的少ない量の無損傷のEFAは、存在した。腎周脂肪体と腎臓において、存在している放射標識の量は、経口的および局所的、いずれの形態で投与されたラットに対しても同程度だった。しかしながら、肝臓では、局所的に放射標識を投与された動物より経口的に投与された動物において、非常に多くの放射標識が存在していた。食餌から吸収された脂質は、他の器官に再分布の前、肝臓に集中するので、これは経口摂取と整合している。
【0074】
血漿の放射性標識のついた脂質のプロフィールは、経口的または局所的に処置されるラットの間では類似していた。組織における知見と整合して、大部分の放射標識はトリグリセライドとホスホリピド分画で見つかった。放射標識の比較的少ない量が、EFA分画で見つけられた。このように、投与の形態に関係なく、EFAが主に脂肪酸エステル(例えばトリグリセライド、ホスホリピド、コレステロールエステル)として血漿に分泌されているようである。
【0075】
局所投与の部位で、EFAの形で有意な割合の放射標識が残った。しかしながら、相当な量の放射標識は、トリグリセライド分画に現れ、ホスホリピドとコレステロールエステルにはより少ない量であった。大量の放射標識が、また、未知の脂質分画にあった。
【0076】
この検査は、放射標識のエステル化脂肪酸(EFA)を使って、経口的または局所的に投与されるとき、EFAが吸収されることを示すものである。腸管吸収は、基本的に完全に見える。脂肪と腎臓で同量の放射能に基づいて、局所的吸収は、また、ほぼ完全な吸収となりそうである。
【0077】
さまざまな脂質分画の間の放射標識の分布から、大部分のEFAが代謝され、少量のEFAのみが組織と血漿の中で無損傷のままになっていることは、明らかである。放射標識EFAの合成において、放射標識セチルアルコールが使われたので、セチルアルコールは放射性の炭素を含んでいた。
【0078】
セチルアルコールと一致しているTLC分画で放射標識の出現に基づいて、EFAがセチルアルコールと脂肪酸に加水分解されていることは、明らかである。更に、ホスホリピド、トリグリセライド、コレステロールエステルと一致している分画の放射標識の知見は、セチルアルコールがパルミチン酸に酸化したことを示す(そしておそらくその後、他の脂肪酸に)。パルミチン酸は、それからホスホリピド、トリグリセライドとコレステロールエステルにエステル化された。
【0079】
最も大きな割合の無損傷のEFAを有する組織は、肝臓であった。この割合は、経口的および局所的処置の間で類似していた。これは肝臓がEFA物質代謝(すなわち加水分解)の主要部位である可能性があることを示唆する、そして、以降のセチルアルコールの脂肪酸への酸化が主に肝臓でおこり、続いてトリグリセライドとして脂肪酸を搬出していることを示唆している。
【0080】
局所適用では、相当な量のEFAは、皮膚の内に無損傷の形態で残る。しかしながら、ここでさえ、EFAの著しい脂肪酸への代謝があり、トリグリセライド、ホスホリピドとコレステロールエステルへ取りこまれる。従って、肝臓は代謝の唯一の部位でないかもしれない。
このように、エステル化脂肪酸が経口的または局所的に与えられるとき、エステル化脂肪酸はよく吸収される。少量のエステル化脂肪酸が無損傷のままであるにもかかわらず、膨大な大部分は加水分解され、そして、セチルアルコールは脂肪酸に酸化して、そして、脂質(例えばホスホリピド、トリグリセライドとコレステロールエステル)のさまざまな型にエステル化される。
【0081】
実施例4
この検査の目的は、一方または両方の膝の骨関節炎(OA)と診断される患者で、エステル化脂肪酸からなる局所用クリームを使用することの疼痛への効果、および機能上のパフォーマンスを検査することであった。膝OAで診断された42人の患者(35人の女性と7つの男性)は、つりあいをとった上で、2つの局所投与群のうちの1つに割り当てられた。1)エステル化脂肪酸群(CMC)(N=21、年齢=61.9±11.9歳)2)プラシーボ(P)群(N=21、年齢=64.9±10.5歳)。患者は、3つの時点で検査された。1)クレーム治療前のベースライン(T1)期間、2)そして、3日間治療なしの後、参加者は患部に初期治療を受け、30mmの適用の後、結果指標が得られた(T2)、そして、続く1日2回クレームを適用する30日の治療期間(T3)。
【0082】
評価は、膝可動域(ROM)、姿勢のぶれを測定するためフォース・プレート上で圧力を中心(COP)において40秒立位を維持する、時限で椅子から立ち上がって前進する、時限で階段を上る能力(上りと下り)、そして片足前方リーチ(片側の力およびバランスを計測)を含んだ。全ての検査について試験・再試験信頼度は、0.95から0.99まで変動した。階段上り下りおよび椅子から立ち上がって前進する検査では、CMC群のみにおいて、T1と比較して、有意な時間の減少が、T2の時点で(それぞれ−1.39および−0.66秒)、T3の時点で(それぞれ−1.78と−1.03秒)観察された。これらの相違は、群(P<0.001)の間で有意だった。CMCのみで40秒間のCPOの動きおよび立位検査では、有意な減少(−0.07m)が観察された。膝の仰臥位ROMは、CMC群では、T2およびT3で増加した。一方、P群では差異が見られなかった。片足前方リーチでは、CMCでは両足そしてP群では左足のみに、有意な改善が観察された。CMCで観察される改善は、両足についていえばP群よりかなり大きかった(右足左足それぞれ5.1と4.4cm対0.8と1.8cm)。これらの結果は、エステル化脂肪酸を含んでいる局所のクリームの使用が疼痛を和らげて、OA患者の身体的な機能を向上させるための効果的処置であることを示す。具体的には、OA患者は、膝を伸ばしたり曲げたりした仰臥の状態での膝のROMをかなり大きくでき、立位でのぶれを少なくでき、階段上り下りの能力を改善でき、座った状態から立ち上がる、歩く、そして座る能力も改善でき、よりより片側バランスを持っていた。
【0083】
実施例5
イヌの生活の質を改良するためのエステル化脂肪酸の効果を検査した。本検査は、エステル化脂肪酸(EFA)が関節炎イヌにおける生活の質(QOL)を改良することができるかどうか調査した。大小の品種のイヌが、現在の関節炎薬物投与に関係なく、本検査の対象となった。
【0084】
動物は、カリフォルニア州サンディエゴ郊外の獣医から採用した。その獣医のクリニックでは、関節の疾患治療を現在受けているかなりの数のイヌを有していた。飼い主は、インフォームドコンセントに読んで、署名した。この検査は、獣医のための動物飼育ガイドラインを使用して実施された。
【0085】
飼い主は、獣医によって評価のためにイヌを持ち込むように指示された。検査への登録に際し、飼い主は、病歴と一般的な生活の質(QOL)調査を完了した。この間に、獣医はペットに主要な体部分と関節構造の身体的な検査を行った。これは、筋骨格系疾患評価では標準的なものである。血液と尿は、各訪問時に採取された。イヌには、EFA生成物を30日間供給した。飼い主は、10か20分継続する散歩に毎日連れて行くよう指示された。それらの動物は、現行の薬物療法を維持した状態とした。飼い主は、それから30日後、最終的な身体的評価のためにペットを連れて獣医を訪れ、そして再度QOL調査票に記入する。
【0086】
エステル化脂肪酸生成物
動物には、EFA、dextrate、乾燥肝末とヒッコリー風味を含むイヌ用餌を与えた。20ポンドあたり1日2回の餌を標準とした。
【0087】
生活の質調査と分析
調査票は、最初の訪問で、そして、30日の補給の後再度、記入された。飼い主は、質問の次に彼らの答えを書くよう依頼された。
【0088】
臨床的な測定
これらの処置は、最初の訪問で、そして、30日の補給の後再度、行われた。各々のイヌは、6ccの注射器に取り付けられた22―ゲージ針で頸静脈から採血された。これは、採血の際、動物が経験するであろう痛みや不安を最小限にするための標準的なやり方である。経験豊かな、公認の登録された獣医技術者が採血した。血液は、上部がラベンダー色の管と血清分離器管に入れられた。血清分離器管の血液は、凝固させ(10分)、それから遠心機にかけた。両方の管は、臨床用検査バッグ(IDEXX Veterinary Services,Inc.Atlanta,GA)に入れた。適切なフォームを記入した後、バッグは、臨床参考検査室への運搬用冷蔵庫に入れた。標準化学用27パネルと総合的なCBCを得た。
【0089】
超音波プローブを用いて膀胱の位置を確認し、超音波誘導の膀胱穿刺による、あるいはイヌを歩かせ、消毒した採取容器に「フリーキャッチ」でサンプルを採取することによる、いずれかで尿を採取した。いずれかの方法で採取された尿は、上部が赤の管(血清分離器ゲルが、使われなかった)にいれ、採取用IDEXXバックに入れた。実験室用の適切なフォームを記入した後、フォームは尿および血液とともにバック内に置かれた。標準の尿生物マーカーが、各収集のために得られた。
【0090】
臨床分析
臨床化学検査は、ウエット試薬を使用している日立747−200.RTM.化学自動分析器で行われた。較正の後、各検査系列の前に正常および異常コントロールで運転した。較正安定性を確実にするため、これは50サンプルが終わる毎に再度行われた。使用された商業的な試薬の質は、設備に対して標準的なものとした。
【0091】
血液検査は、レーザー・フローサイトメトリー方法を使用しているAbbott Cell−Dyne(登録商標)3500自動分析計で行った。血液検査結果は、商業的コントロール、患者のコントロール、プレ検定された標準の較正サンプル、機器対機器比較と研究室間比較を含むいくつかの異なる手段によって検証され、コントロールは、各シフト毎に利用した。
【0092】
合計27匹の動物は本検査に登録され、24匹の動物が完了した。不履行のために2匹の動物が本検査から外れた。1匹の動物は、検査プロトコルに無関係な合併症のために安楽死させられた。イヌの平均的実態的人口統計は、以下の通りだった。年齢=10.5±2.0歳、体重=70.4±25.0ポンド、そして、性別(雄/雌)=13/11
検査の平均延べ時間は、32.8±5.7日であった。
【0093】
30日の補足期間の後、血清または尿の生物マーカーに変化はなかった。歩行に若干の改善があった2、3の動物がいた、しかし、臨床評価では、注目するような改善は見られなかった。
【0094】
質問表に対する飼い主の回答は、啓蒙的な情報を提示した。生活の質調査のための飼い主コメントは、非常に好ましいものであった。各々の飼い主は、食餌について介入されたことで何が成し遂げられたと思うか、自分の言葉で書くよう依頼された。改善された生命力と機能について、参加者の間で、一貫したパターンがあった。
【0095】
本検査は、筋骨格状態のイヌの治療で介入としてEFA補助剤を使用する利点を示した。動物は、典型的徴候と変性骨関節症または骨関節炎の症状を示した。それは、多くの動物がそれらの疾患を処置するために現在標準の処方を維持していたが、まだ改善を経験することが可能だったという点で注目に値する。本検査は、さまざまな品種のイヌで生活の質を改良するために、エステル化脂肪酸の使用を調査した。ペットの飼い主は、それらの動物の介入の前における診察と比べて、可動性とエネルギーを向上させたのを感じた。臨床検査では、注目すべき差異は見られなかったが、評価される際にイヌが「硬化する」のもまれではない。不慣れな環境に直面するとき、これは防御機構として用いられる。
【0096】
要約すると、エステル化脂肪酸は、関節炎を患っているイヌにおいて一般素因と機能的能力を改善した。これらの脂肪酸は、イヌの関節炎を処置するために、従来の療法に選択肢を提供する。
【0097】
【表5】

【0098】
【表6】

【0099】
【表7】

実施例6
歯周病は、特定の微生物に対して宿主反応の結果として起こり、最終的に組織の破壊と合併症に至る局所の炎症である。この感染症の原因は、特定のグラム陰性微生物、例えばPorphyromonas gingivalisとBacteriodes forsythusである。歯周病の病因が細菌性である一方で、病因が宿主反応によって媒介されることは明らかである。
【0100】
単飽和脂肪酸が内皮活性化を阻害して、サイトカインへの組織反応を減じていると報告されている。脂肪酸は、慢性炎症性疾患を調整する種々の酵素法を調整することが示された。加えて、また、脂肪酸が細胞膜におけるアラキドン酸量を減少することができ、シクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼを経てエイコサノイド産生を減じていることが示された。それは、アラキドン酸副産物と炎症を制御するロイコトリエンおよびプログランディン(proglandins)との併発との間での統合である。これらのメカニズムは、歯根膜の炎症の進行において重要な役割を果たしている。さらに、歯肉上皮を通しての脂肪酸の高い上皮浸透能力は、局所投与が歯根膜の炎症の処置で有利である可能性があることを示唆する。
【0101】
ウサギは役立つモデルであり、炎症誘発性で抗炎症性のメカニズムに関して、生理学的および病理学的にウサギの歯周組織が、ヒトのそれに似ている。予測可能で再現性のある歯周病は、歯周病に特異的な微生物P. gingivalisの局所適用を伴う絹結紮糸を用いて、ウサギに発生させることができる。
【0102】
本検査の目的は、ウサギにおける結紮−起因性歯周病モデルで単飽和脂肪酸複合体(GeneprilTM)の局所適用を調査することである。このために、ウサギの顎の歯周病のすでに安定したモデルが用いられる。そして、歯周病に特異的な病原体Porphyromonas gingivalisの局所適用で第二小臼歯周辺に絹結紮糸を配置する。動物の第1の群(検査群)が局所的に脂肪酸複合体処方された薬物投与を受ける間、第2の群(対照群)は単独で媒介体を受ける。動物を6週目に屠殺した後、組織標本の組織学的にかつX線撮影による評価を行う。本検査の結果は、歯肉組織と歯周疾患進行に関する、セチル化された脂肪酸の局所効果を理解するために利用される。
【0103】
実験計画
合計10匹の雄のニュージーランドホワイト・ウサギを平衡化し、収容する。実験の日に、ウサギはキシラジン(皮下 0.25mL)とケタミン(40mg/kg、IM)を使用して麻酔されて、必要に応じて挿管されて、イソフルラン(1−2.5 MAC)を与えられる。結紮(3−0の編み絹糸)は、下顎骨の両側の第二小臼歯周辺に配置される。1日おきに(月曜日、水曜日および金曜日)、動物は結紮周辺で局所の薬物投与を行うために、イソフルランを使用して麻酔される。
【0104】
厚いスラリーを形成するためにカルボキシ・メチルセルロースを混合した109CFUで標準法を使用して生育させたP. gingivalis(A7436株)を、歯肉炎を誘発するために結合された歯に、局所的に塗布する。P. gingivalis塗布の後で、検査剤またはプラシーボは、6週の間局所的に同じ領域に適用される。これらの時間に、縫合を確認し、無くなっていたり、緩んでいた場合は、取り替える。エタノールが、脂肪酸複合体の溶媒として使われる
6週の末に、動物はペントバルビタール過量(100+mg/kg、IV)によって安楽死させられる。安楽死の後、各々のウサギの下顎骨は、筋と軟組織から切り離され、付着歯肉を歯槽骨で無損傷に保つ。下顎骨は、中切歯の間で正中から二等分に分割される。左半分は骨の形態計測の分析に用い、そして、右半分が歯周病の検査薬剤とプラシーボ薬剤の使用しての、組織学的評価のために使われる。ウサギにおける結紮−起因性歯周病モデルへの単飽和脂肪酸複合体の局所適用が、歯周病を緩和し、治療するという好ましい効果を有していると予測される。
【0105】
歯周病に特異的な微生物P.gingivalisに起因する歯根膜の炎症の予防における、単飽和脂肪酸複合体(セチル化された脂肪酸)の効果を調べた。実験は、6週の期間の間10匹のウサギを用いて行った。ほとんどの組織学的研究のために、1つの群につき5−6匹の動物で、p<0.05の統計的有意差の点で群の間で差異を示すのに十分であった。2つの群が本実験で用いられた。1)検査物質群と2)プラセボ群であり、各群につき5匹の動物が、本実験(1つの検査群と1人のプラセボ群×4匹の動物/群=10動物)に適当である。
【0106】
単飽和脂肪酸複合体(セチル化された脂肪酸)がP. gingivalisによる歯根膜の炎症の予防で効果を持つと予測される。
【0107】
本発明は、特にその好ましい実施例を参照して記載されているが、形式および詳細な点におけるさまざまな変更が、添付の請求の範囲に定義される本発明の精神と範囲から逸脱することなく、その中で行われることができることは当業者によって理解される。
【0108】
上記に記載のすべての文献は、その全部を本明細書において引用したものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシチン脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、エステル化された脂肪酸およびトコフェノール類の混合物を含む、組成物。
【請求項2】
前記レシチン脂肪酸が前記組成物の約1%〜約10%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記レシチン脂肪酸が前記組成物の約1%〜約5%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記レシチン脂肪酸が前記組成物の約5%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記オリーブ油脂肪酸が前記組成物の約15%〜約25%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記オリーブ油脂肪酸が前記組成物の約15%〜約20%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記オリーブ油脂肪酸が前記組成物の約20%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記エステル化された脂肪酸が前記組成物の約70%〜約80%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記エステル化された脂肪酸が前記組成物の約70%〜約75%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記エステル化された脂肪酸が前記組成物の約74%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記トコフェノール類の混合物が前記組成物の約1〜約5%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記トコフェノール類の混合物が前記組成物の約1%〜約3%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記トコフェノール類の混合物が前記組成物の約1%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記レシチン脂肪酸が、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記オリーブ油脂肪酸が、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ステアリン酸およびアラキジン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記エステル化された脂肪酸が、デカン酸、ラウリン酸、ミリストレイン酸、ミリスチン酸、パルミトオレイン酸、パルミチン酸、オレイン酸およびステアリン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
関節炎または他の炎症性関節状態、乾癬、狼瘡、歯周疾患、あるいは心臓または心血管の状態を処置および予防するための医薬組成物であって、該組成物は約1%〜約10%のレシチン脂肪酸、約15%〜約25%のオリーブ油脂肪酸、約70%〜約80%のエステル化された脂肪酸および約1%〜約5%のトコフェノール、および医薬的に許容される担体類を含む、薬学的組成物。
【請求項18】
薬学的組成物が、さらに保護コロイド類、懸濁または膨張性薬剤類、賦形剤類、結合剤類および担体類として、生体適合性ポリマー類を含む、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
関節炎または他の炎症性関節状態、乾癬、狼瘡、歯周疾患、あるいは心臓または心血管の状態を処置および予防する方法であって、該方法は、そのような処置を必要とする被験体に請求項1に記載の組成物の効果的な量を投与することを含む、方法。
【請求項20】
関節炎または他の炎症性関節状態が、骨関節炎、強直性脊椎炎、くびの関節炎、線維筋痛(firbromyalgia)、骨壊死、パジェット病、滑液包炎、乾癬、痛風、手根管圧迫症候群、若年性関節リウマチ、腰仙関節炎、乾癬性関節炎およびリウマチ様関節炎からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記被験体が哺乳類である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記哺乳類がヒトである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記哺乳類がイヌまたはネコである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が局所適用を経て投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
投与される組成物の量が被験体の体重に対し1日あたり約1〜15mg/kgである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
投与される組成物の量が被験体の体重に対し1日あたり約3〜10mg/kgである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
投与される組成物の量が被験体の体重に対し1日あたり約5〜8mg/kgである、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が経口的に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
投与される組成物の量が被験体の体重に対し1日あたり約5〜32mg/kgである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
投与される組成物の量が被験体の体重に対し1日あたり約10〜30mg/kgである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
投与される組成物の量が被験体の体重に対し1日あたり約15〜25mg/kgである、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
組成物が軟らかいゲルを介し投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が1日1回投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が1日2回投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が、関節炎または他の炎症性関節状態、乾癬、狼瘡、歯周疾患、あるいは心臓または心血管の状態を処置または予防するのに効果的な他の組成物または療法と組み合わせて、被験体に投与される、請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2006−520803(P2006−520803A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507432(P2006−507432)
【出願日】平成16年3月22日(2004.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/008650
【国際公開番号】WO2004/084829
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(505350156)イマジェネティックス, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】