説明

エストロンおよび/またはエストラジオール誘導体の調製方法

一般式(II):


(式中、RおよびRは独立して水素またはヒドロキシキ基またはヒドロカルビル基であり、またはRおよびRは一緒になって二重結合された酸素であり、Rは水素であり、R’はニトロベンゾフェノン基であり、およびRおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカルビル基である)の化合物を、一般式(I):


(式中、R、R、R、RおよびRは上記に定義されたとおりであり、Rは水素である)の化合物から調製する方法であって、式(I)の化合物をアルカリ性条件下で2−クロロ−5−ニトロベンゾフェノンとアルカノール性溶媒の存在下で反応させ、式(II)の化合物をこのアルカノール性溶媒から直接結晶化させる方法。アルカノールと上記方法から得られる一般式(II)の化合物との錯体および上記方法または錯体が用いられる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−ヒドロキシ−Δ1、3、5(10)エストラトリエン誘導体からΔ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテル誘導体を調製する方法、ならびにこの方法、およびそのような方法または生成した錯体を用いることができる方法において生成することができる錯体を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエストロンおよびエストラジオールなどのA環芳香族ステロイドの治療的価値はよく知られている。ステロイド自体に加えて、そのようなステロイドの誘導体も治療的価値を有することが見出された。この点に関しては特に、例えば2−メトキシ−3、17β−エストラジオールなどのエストロンおよびエストランジオールの2−アルコキシ−誘導体について言及する必要がある。
【0003】
2−メトキシ−3、17β−エストラジオールは、1、3、5(10)−エストラトリエン−2、3、17β−トリオール−2−メチル−エーテルとも称され、エストラジオールの内因性代謝産物である。2−メトキシ−3、17β−エストラジオールはエストロゲン様活性は低いが、本明細書中で以下に述べるように、例えば抗癌活性などの別の重要な生物学的効果を有することが見出された。
【0004】
米国特許第5、504、074号、米国特許第5、66、143号、および米国特許第5、892、069号は、2−メトキシ−3、17β−エストラジオールを用いる異常な細胞の有糸分裂を特徴とする哺乳動物疾患の処置法を記載している。加えて、国際公開番号WO02/42319号は、異常血管形成が特徴である病状の処置のための2−メトキシ−3、17β−エストラジオールを記載している。
【0005】
望ましくない細胞の有糸分裂は、癌、粥状動脈硬化、固形腫瘍の増殖、血管機能不全、子宮内膜症、網膜症、関節症、および異常創傷治癒を含むがそれらに限定されない多くの疾病に特徴的である。加えて、細胞の有糸分裂は、胚の正常な発達、黄体形成、子宮内膜の周期的増殖、創傷治癒、および炎症反応および免疫応答を含むがそれらに限定されない広範囲の多種多様な生物学的機能において重要である。
【0006】
米国特許第5、521、168号は、2−メトキシ−3、17−βエストラジオールの眼内圧の低下への使用を記載している。2−メトキシ−3、17β−エストラジオールはまた、Banerjee,S.K.ら,Proc.Amer.Assoc.Cancer Res.:39、(1998年3月)により報告されているように、エストロゲン誘発の下垂体腫瘍血管形成を抑制し、Fisher 344ラットにおける腫瘍増殖を抑制する。
【0007】
2−メトキシ−3、17β−エストラジオールの調製方法は当分野で公知である。J.Am.Chem.Soc.:5、(1958年3月)に発表されている、J.Fishmanによる題名「2−メトキシエストロゲンの合成」の論文は、エストラジオールを出発物質とする2−メトキシ−エストラジオールの調製を記載している。その記載された方法の第一段階は、2−クロロ−5−ニトロベンゾフェノンを用いるエストラジオールのニトロベンゾフェノンエーテルへのエーテル化を含む。しかしながら、この段階の記載された手順は非常に面倒であり、しかも出発化合物エストラジオールに対するターンオーバー当たりの収率が約45モル/モル%と比較的低い結果である。2−クロロ−5−ニトロベンゾフェノンを用いるエストラジオールのエーテル化反応はエタノール性水酸化カリウム溶液中で行われた。48時間の還流の後、溶液を半分の体積まで濃縮し、それを水酸化ナトリウム溶液中に流し込んだ。その後、懸濁液をクロロホルムで3回抽出し乾燥後黄色の粘稠油を得た。油を1:1の石油エーテル−ベンゼン混合物に溶解しアルミナ上でクロマトグラフィによる分離を行った。ベンゼンで溶出して油を得、油をエーテルで粉砕してエストラジオールニトロベンゾフエノンエーテルとして結晶化した。
【0008】
次の段階において、エストラジオールニトロベンゾフエノンエーテルをアセチル化し、ついで酸化およびメチル化により、2−メトキシ−17β−アセトキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルを生成する。この最終化合物から、2−メトキシ−3、17β−エストラジオールは熱アルカリ加水分解により、またはピペリジン開裂した後のエタノール性水酸化カリウム溶液を用いる加水分解により調製することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この方法の問題点は第一の段階に非常に時間を消費し、60時間もかかるという事実である。このような時間を浪費する方法の段階は、工業的規模で適用する場合には特に魅力が無い。さらに、第一段階はわずか45モル/モル%の比較的低収率の結果となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
有利なことに、この度、第一段階を経済的に魅力的な時間枠内で工業的規模で実施することができる方法が見出された。本発明による方法を用いて、第一段階を約20時間未満内で、望むなら10時間未満内でさえも実施することができる。加えて、より高い収率が得られる。
【0011】
(発明の概要)
従って、本発明は一般式II:
【0012】
【化10】

(式中、RおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカルビル基であり、またはRおよびRは一緒になって二重結合した酸素であり、Rは水素であり、R’はニトロベンゾフェノン基であり、およびRおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカビル基である。)
の化合物を一般式I:
【0013】
【化11】

(式中、R、R、R、RおよびRは上記に規定したとおりであり、Rは水素である。)
の化合物から調製する方法であって、一般式Iの化合物を2−クロロ−5−ニトロベンゾフェノンとアルカリ性条件下、アルカノール性溶媒の存在下で反応させ、式IIの化合物をこのアルカノール性溶媒から直接結晶化させる方法、
を提供する。
【0014】
本発明記載の方法により、プロセス時間の有利な低減結果となり、それにより方法は工業的規模での適用に対して経済的に魅力的なものとなる。
【0015】
加えて、本発明の方法は、アルカノールおよび一般式IIの化合物の錯体を生成し、その錯体は新規なものと考えられる。したがって、本発明の方法は又、
アルカノールと一般式II:
【0016】
【化12】

(式中、RおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカルビル基であり、または、RおよびRは一緒になって二重結合された酸素であり、Rは水素であり、R’はニトロベンゾフェノン基であり、およびRおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカビル基である。)
の化合物との錯体であって、
そのようなアルカノールの溶液からの前記式IIの化合物の結晶化を含む方法により得ることができる、錯体も提供する。
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明による方法において、RおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカルビル基であることができる。ヒドロカルビル基は、1個以上の水素原子並びに1個以上の炭素原子を含むいずれかの基であると解される。そのような基の例として、置換または非置換のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、およびアリールアルキル基が挙げられる。好ましくはヒドロカルビル基は1から20個の炭素原子を含み、さらに好ましくは1から10個の炭素原子を含み、最も好ましくは1から6個の炭素原子を含む。そのような基は、さらに、例えばS,O,F,Br,Cl,I,PまたはNなどのヘテロ原子を1個以上含むことができる。ヒドロカルビル基の具体的な例として、メチル基、エチル基、プロピル基、メチルイソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第3級ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、およびトリル基が挙げられる。さらなる実施形態において、Rがヒドロキシ基であり、一方Rは水素である。
【0018】
およびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドカルビル基であることができる。ヒドロカルビル基の例としては、例えばRおよびRについて上記した基が挙げられる。更なる実施形態においてRおよびRの両方とも水素である。
【0019】
特定の実施形態において、本発明は、一般式Iの化合物および一般式IIの化合物において、Rがヒドロキシ基でありRが水素である、またはRおよびRが一緒になって二重結合された酸素である、およびRおよびRは水素基である、方法を提供する。
【0020】
更なる実施形態において、式Iの化合物は3、17β−エストラジオールであり、式IIの化合物は17β−ヒドロキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルであり、本発明は3、17β−エストラジオールから17β−ヒドロキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルを製造する方法を提供する。その方法は、3、17β−エストラジオールをアルカリ条件下で2−クロロ−5−ニトロベンゾフェノンとアルカノール性溶媒の存在下で反応させて、17β−ヒドロキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルを生成し、それをそのようなアルカノール性溶媒から直接結晶化させる方法である。
【0021】
本発明の方法においてアルカノール性溶媒として用いられるアルカノールは、いずれのアルカノールであり得る。アルカノールはモノアルカノールであっても、例えばアルカンジオールまたはアルカントリオールなどのポリアルカノールであっても良い。1つの実施形態において、アルカノールはモノアルカノールである。更なる実施形態において、アルカノールは1から6個の炭素原子を含む炭素数1から6のモノアルカノールである。アルカノール類の適した例として、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、tert−ペンタノールおよびヘキサノールが挙げられる。更なる実施形態において、アルカノールは2から6個の炭素原子を含む炭素数2から6のモノアルカノールである。なお更なる実施形態において、それはエタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールおよびtert−ブタノールからなる群から好適に選択される炭素数2から4のモノアルカノールである。なお更なる実施形態において、アルカノールはエタノールまたはプロパノールである。特に、イソプロパノールが本発明の方法において非常に適していることが見出された。
【0022】
もう1つの実施形態において、沸点範囲が60から100℃、より好ましくは75℃から100℃であるアルカノールが本発明の方法で用いられる。そのようなアルカノールにより、例えば60から100℃の範囲、またはより好ましくは75から100℃の範囲などの比較的高い反応温度を有利に用いることが可能になる。
【0023】
1つの更なる実施形態において、一般式Iの化合物の量に対するアルカノール性溶媒の量の重量比は1:5から1:50の範囲内、より好ましくは1:10から1:20の範囲内にある。
【0024】
1つのなお更なる実施形態において、2−クロロ−5−ニトロベンゾフェノンの量に対する一般式I化合物の量のモル比は1:2から2:1の範囲内、より好ましくは1:0.9から1:1.5の範囲内にある。1つの更なる実施形態において、このモル比は1:1から1:1.4の範囲内、さらには1:1.1から1:1.3の範囲内にある。
【0025】
アルカリ性条件下の反応とは、一般式Iの化合物が塩基の存在下で2−クロロ−5−ニトロベンゾフェノンと反応することと解される。適した塩基として、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムおよびリチウムージイソプロピルジアミドが挙げられる。1つの実施形態において、式Iの化合物を塩基性アルカノール性溶液に溶解し、その後その溶液に2−クロロ−5−ニトロベンゾフェノンを添加し反応させる。反応は大気圧で行うことができる。1つの好ましい実施形態において、反応はアルカノールの還流温度で行われる。1つの更なる実施例において、この温度は60から100℃の範囲内にある。反応終了後、反応混合物をろ過して固形の副産物を除去できる。
【0026】
続いて、一般式IIの化合物をアルカノール性溶液から直接結晶化することができる。
【0027】
1つのなお更なる実施形態において、本発明は、式IIの化合物をアルカノール性溶媒から直接アルカノール性錯体として、すなわち、アルカノールと式IIの化合物との錯体として、結晶化させる上記方法を提供する。アルカノール性錯体は好ましくは少なくとも部分的には結晶性粒子として存在する。結晶性粒子は固体の沈殿物であり、その中に個々の分子が規則的なパターンで配列されている。生成する粒子は結晶または結晶の断片類から成る。結晶の断片類の場合には、幾つかの断片類が非晶質の領域によって隔てられ得る。
【0028】
そのような錯体もまた新規なものであることが見出され、したがって本発明は上記したような錯体もまた提供する。
【0029】
1つの好ましい実施形態において、その錯体はアルカノールと一般式IIの化合物との錯体であり、その中で、Rはヒドロキシ基、Rは水素であり、またはRおよびRは一緒になって二重結合された酸素であり、RおよびRは水素である。1つの更なる実施形態において、上記したように錯体中のアルカノールは炭素数2から6のモノアルカノールである。1つのなお更なる実施形態において、アルカノールはエタノール、n−プロパノールおよびイソプロパノールおよびブタノールからなる群とり選択される。
【0030】
1つの更に好ましい実施形態において、17βヒドロキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルとそのようなアルカノールとの新規な錯体が調製される。アルカノールがエタノールおよびイソプロパノールである場合のそのような錯体の例を図1および図2に例示する。
【0031】
本発明による新規な方法および/または錯体は、次の処理段階、例えば2−メトキシエストロンまたは2−メトキシ−エストラジオールなどのエストロンおよびエストラジオールの2−アルコキシ誘導体を調製する次の処理段階において、有利に用いることができる。
したがって、本発明はさらに、
一般式III:
【0032】
【化13】

[式中、R’は式―O―C(O)―R(式中、Rは水素、または1から3個の炭素原子を有するアルキル基を表す。)のエステル基であり、Rは水素またはヒドロカルビル基であり、R’はヒドロキシ基であり、R’はニトロベンゾフェノン基であり、およびRおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカルビル基である。]
の化合物を一般式II:
【0033】
【化14】

(式中、Rはヒドロキシ基であり、Rは水素またはヒドロカルビル基であり、Rは水素であり、R’はニトロベンゾフェノン基であり、RおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカルビル基である。)
の化合物から1つ以上の段階で調製する方法であって、一般式IIの化合物がアルカノール錯体として供給される方法、
を提供する。
【0034】
1つの更なる実施形態において、一般式IIおよびIIIの化合物中のR、RおよびRは全て水素である。
【0035】
1つの更なる実施形態において、本発明はアルカノール性錯体中のアルカノールが炭素数2から6のモノアルカノールである、方法を提供する。1つのなお更なる実施形態において、アルカノールは、例えばエタノール、n−プロパノールおよびイソプロパノールおよびブタノールなどの炭素数2から4のモノアルカノールである。
【0036】
1つの更なる実施形態において、出発化合物が17βヒドロキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルおよびイソプロパノールまたはエタノールとの錯体として供給され、方法が提供される。
【0037】
一般式IIIの化合物を調製するための、および特に2−ヒドロキシ−17β−アセトキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルを調製するためのそのような方法は、例えば、J.Fishmanにより表題「2−メトキシエストロゲンの合成」の論文に記載されているようなアセチル化および/または酸化反応を含む本分野で公知のいかなる方法でも実施することができる。本方法は、例えば溶媒としてピリジンを用いて、17βエストラジオールの17βヒドロキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルをアセチル化して非結晶性の17βアセトキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルを生成することを含めることができる。後者は、例えば過酸化水素で次いで酸化することができ2−ヒドロキシ−17β−アセトキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルが生成する。
【0038】
1つの更なる実施形態において、そのような方法におけるアセチル化および酸化反応の段階はワンポットに有利に統合される。したがって、本発明は、
一般式III:
【0039】
【化15】

(式中、R’は式―O―C(O)―R(式中、Rは水素、または1から3個の炭素原子を有するアルキル基を表す。)のエステル基であり、Rは水素またはヒドロカルビル基であり、R’はヒドロキシ基であり、R’はニトロベンゾフェノン基であり、およびRおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカルビル基である。)
の化合物を一般式II:
【0040】
【化16】

(式中、Rはヒドロキシ基であり、Rは水素またはヒドロカルビル基であり、Rは水素であり、R’はニトロベンゾフェノン基であり、RおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカルビル基である。)
の化合物から調製するためのワンポット合成法であって、
a)一般式IIの化合物中のRヒドロキシ基のエステル化であって、そのような化合物を式R―C(O)―O―C(O)―R(式中、Rは水素、または1から3個の炭素原子を有するアルキル基を表す。)の酸無水物の過剰量と、前記酸無水物に可溶な第1の酸の存在下で反応させることにより、前記第1の酸、前記一般式IIの化合物の17βエステル誘導体、式HO―C(O)―R(式中、Rは水素、または1から3個の炭素原子を有するアルキル基を表す。)の酸、および残余の酸無水物を含む反応混合物を生成するエステル化、
b)残余の酸無水物を式HO―C(O)―R(式中、Rは水素、または1から3個の炭素原子を有するアルキル基をあらわす。)の酸に転換するに十分な量の水の添加であって、それにより前記第1の酸、前記一般式IIの化合物の17βエステル誘導体、前記式HO―C(O)―Rの酸、および場合により任意の残余の水を含む反応混合物を生成する、水の添加、
c)第2の酸の添加であって、それによりそのような酸の錯体および前記一般式IIの化合物の17βエステル誘導体の錯体を含む反応混合物を生成する、第2の酸の添加、
d)場合によりその場で調製される有機ペルオキシ酸を30分の時間以内で添加することによる前記17βエステル誘導体中のR水素基の酸化であって、それにより前記一般式IIIの化合物、式HO―C(O)―R(式中、Rは水素、または1から3個の炭素原子を有するアルキル基を表す。)の酸、および場合により任意の残余の水および/または有機ペルオキシ酸を含む混合物を生成する、R水素基の酸化、を含むワンポット合成法、
も提供する。
【0041】
ワンポット中でのアセチル化および酸化反応を行う上記組み合わせには、経済的な利点があるだけではない。その方法にはまた、結晶性の固形生成物を直接生成し、それにより上記に引用されたJ.Smithの論文に記述されているような粘稠性の油またはピリジンの取り扱いを回避できるという利点もある。
【0042】
1つの更なる実施形態において、Rは水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基を表す。1つの更なる実施形態において、Rは1から3個の炭素原子を有するアルキル基である。1つのなお更なる実施形態において、Rがメチル基を表すので、段階a)の酸無水物は無水酢酸であり、17βエステル誘導体は17βアセトキシ誘導体であり、式HO−C(O)−Rの酸は酢酸である。
【0043】
1つの更なる実施形態において、過剰の酸無水物は同時に溶媒として用いることができる。段階a)における酸無水物は一般式IIの化合物の量に対して少なくとも当量を超えた量で存在している。より多い量で用いることができるけれども、実際の目的のためには一般式IIの化合物の量に対して約100モル当量までの酸無水物の量を選択するのが望ましい。1つの更なる実施形態において、一般式IIの化合物に対する酸無水物の量のモル比は5:1から50:1の範囲内にある。
【0044】
1つの更なる実施形態において、段階a)に述べられた第1の酸は、25℃の水溶液について測定したpKa値が4未満、好ましくは3未満、さらに好ましくは2未満の酸である。第1の酸として用いることができる酸の例としては、リン酸、硫酸、ハロゲン化水素酸、スルホン酸および、例えばトリフルオロ酢酸などのハロゲン化カルボン酸が挙げられる。特にスルホン酸、例えばメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、tert−ブタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸および2、4、6−トリメチルベンゼンスルホン酸、が好ましい。
【0045】
段階a)の反応後には、式HO―C(O)―Rの酸が一定量がすでに存在している。1つの更なる実施形態において、段階a)の残存するすべての酸無水物と反応するに十分な量の水を段階b)において添加し、酸無水物が全くまたはほとんど残らないようにする。添加する水の量は、好ましくは添加後、ほとんど全ての水が酸無水物と反応し、1.0容量/容量%以下の、より好ましくは0.1および1.0容量/容量%の間の水が残存するようにする。
【0046】
1つの更なる実施形態において、段階c)の第2の酸は25℃の水溶液におけるpKaが2未満であり、1つのなお更なる実施形態においては1未満である。用いることができる酸の例として、硝酸、硫酸、および過塩素酸が挙げられる。1つの特別な実施形態において、第2の酸は硫酸である。
【0047】
1つの更なる実施形態において、段階d)の有機ペルオキシ酸は、例えばメタンペルオキシ酸、エタンペルオキシ酸、プロパンペルオキシ酸、ブタンペルオキシ酸、ペンタンペルオキシ酸、およびヘキサンペルオキシ酸などの1から6個の炭素原子を有する有機ペルオキシ酸である。1つの好ましい実施形態において、有機ペルオキシ酸はエタンペルオキシ酸(過酢酸と称される場合もある)である。
【0048】
有機ペルオキシ酸はそのものを添加することができるか、または過酸化水素と適した第2の酸との反応によって反応混合物中現場調製することができる。例えば有機ペルオキシ酸は、過酸化水素を式HO―C(O)―R(式中、Rが水素または1から3個の炭素原子を有するアルキル基を表す。)の酸をすでに含む反応混合物に添加することにより、式R―COHの有機ペルオキシ酸を生成することによりその場で調製することができる。例えば、過酸化水素を酢酸を含む混合物中に添加して、過酢酸をその場で調製することができ、このペルオキシ酸は続いて17β−エステル−誘導体中のR水素基を酸化することができる。
【0049】
1つの更なる実施形態において、有機ペルオキシ酸は、段階d)で一般式IIの出発化合物に対するモル比で1:1から1:5の範囲内で添加される。1つの更なる実施形態において、それは1:1から1:2の範囲内のモル比で添加される。
【0050】
1つの更なる実施形態において、有機ペルオキシ酸は25分の時間内で添加され、1つの更なる実施形態において、20分の時間内である。1つの特別な実施態様において、有機ペルオキシ酸は15分の時間内で添加される。有機ペルオキシ酸が現場で調製される場合に、そのような添加は例えばこの時間内で過酸化水素を添加することにより行うことができる。
【0051】
反応は広い範囲の温度で行うことができる。例えば、0℃から100℃の範囲の温度を段階a)および/または段階b)、c)および/またはd)で独立して適用することができる。好ましくは20℃から80℃の範囲内の温度を段階a)および/または段階b)、c)および/またはd)で独立して適用する。段階d)における有機ペルオキシ酸の添加は好ましくは25℃から45℃の間の範囲内の温度で行われ、さらに好ましくは30℃から40℃の間の範囲内の温度で行われる。
【0052】
加えて、広い範囲の圧力を適用することができる。しかしながら、好ましくは段階a)および/または段階b)、c)および/またはd)における反応は大気圧で行われる。
【0053】
1つの更なる実施形態において、反応混合物中の17β−エステル−誘導体のキログラム量に対する段階b)中の水と一緒にした段階a)中の酸HO―C(O)―Rのリッター量の段階b)の終点における比率は、4:1から6:1の範囲にある。
【0054】
1つのなお更なる実施形態において、上記方法の段階a)、b)、c)およびd)の後に、場合により、すべての残存する有機ペルオキシ酸および/または過酸化水素をも中和することを含む段階e)、および場合により生成物の洗浄および精製を含む段階f)をさらに行う。
【0055】
1つの更なる実施形態において、本発明は2−ヒドロキシ−17β−アセトキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルが17β−ヒドロキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルから調製されるような方法を提供する。
【0056】
もうひとつの実施形態においては、そのような方法は以下の段階を含む。
【0057】
17β−ヒドロキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルをp−トルエンスルホン酸の存在下で無水酢酸と反応する段階。例えば、この段階は前記エーテルに対して24モル当量の量の酢酸を用い、例えば70℃で、例えば1モル%のp−トルエンスルホン酸を用いながら行うことができる。
【0058】
水を添加する段階。例えば、この段階は前記エーテルに対して22モル当量の量の水を用い、例えば60℃で行うことができる。
【0059】
硫酸を添加する段階。例えば、この段階は前記エーテルに対して15モル当量の量の硫酸用い、例えば33℃で行うことができる。
【0060】
および、エタンペルオキシ酸を30分の時間内に添加して2−ヒドロキシ−17β−アセトキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルを生成する段階。例えば、この段階は当該エーテルに対して2モル当量量のエタンパーオキシ酸の使用により、例えば33℃で行うことができる。
【0061】
その後、硫酸ナトリウム水溶液を添加し、生成物を結晶化し、酢酸ナトリウムで中性に洗浄することができる。トルエン/活性炭処理を実施してもよく、最終の生成物をメタノールから結晶化してもよい。
【0062】
一般式IIIの化合物は続いて一般式IV:
【0063】
【化17】

(式中、R’は、式―O―C(O)―R(式中、Rは水素、または1から3個の炭素原子を有するアルキル基を表わす。)
のエステル基であり、Rは水素またはヒドロカルビル基であり、R’’はアルコキシ基であり、R’はニトロベンゾフェノン基であり、およびRおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカルビル基である。)
の化合物にアルキル化することができる。
【0064】
1つの更なる実施形態において、一般式IVの化合物中のR、RおよびRはすべて水素である。更に、1つの更なる実施形態において、Rは1から3個の炭素原子を有するアルキル基を表す。
【0065】
2−アルコキシ基R’’は当分野に公知のいずれのアルコキシ基であってもよい。1つの実施形態において、そのアルコキシ基は炭素数1から6のアルコキシ基であり、1つの更なる実施形態において、そのアルコキシ基は炭素数1から4のアルコキシ基である。適切なアルコキシ基の例として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基を挙げることができる。特別な実施形態において、アルコキシ基R’’はメトキシ基である。
【0066】
1つの更なる実施形態において、そのような方法は2−ヒドロキシ−17β−アセトキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルの2−アルコキシ−17β−アセトキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルへのアルキル化を含み、特別な実施形態においては、2−メトキシ−17β−アセトキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルへのメチル化を含む。
【0067】
一般式IVの化合物を調製するそのような方法、および特に2−ヒドロキシ−17β−アセトキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルの2−アルコキシ−17β−アセトキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルへのアルキル化は、例えばJ.Fishmanがその表題「2−エトキシエストロゲンの合成」の論文に記載したようなジアゾメタンの手助けによるメチル化を含む、当分野で知られているすべての方法で実施できる。
【0068】
しかしながら、1つの好ましい実施形態において、アルキル化はいわゆるミツノブ試薬を用い、例えば、一般式IIIの化合物をジアルキルアゾジカルボキシレート、トリフェニルホスフィンおよび適したアルカノールと適した溶剤中で化合させることにより行われる。1つの特別な実施形態において、アルカノールはメタノールであり、アルキル化はメチル化である。さらに、広い範囲の溶媒用いることができる。しかしながら、1つの特別な実施形態において、用いられる溶媒はトルエンである。反応は種々の温度と圧力で行うことができる。しかしながら、1つの特別な実施形態において、反応は大気圧下で20℃から60℃の範囲内の温度を用いて行うことができる。
【0069】
一般式IVの化合物は続いて一般式V:
【0070】
【化18】

(式中、Rはヒドロキシ基であり、Rは水素またはヒドロカルビル基であり、R’’はアルコキシ基であり、Rは水素であり、およびRおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカルビノール基である。)
に加水分解することができる。
【0071】
1つの更なる実施形態において、一般式Vの化合物中のR、RおよびRは全て水素である。
【0072】
加水分解は、例えば熱アルカリ性加水分解またはピペリジン開裂に続きエタノール性水酸化カリウムにより加水分解を行うなど、本分野で公知のいずれの方法でも行なうことができる。そのような熱アルカリ性加水分解は、例えばメタノールのようなアルカノールの中でKCOを用いて還流温度で行なうことができる。
【0073】
1つの更なる実施形態において、そのような方法は2−メトキシ−17β−アセトキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルのような2−アルコキシ−17β−アセトキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルの2−メトキシ−3、17β−エストラジオールのような2−アルコキシ−3、17β−エストラジオールへの加水分解を含む。
【0074】
したがって本発明は、一般式V:
【0075】
【化19】

(式中、Rはヒドロキシ基であり、Rは水素またはヒドロカルビル基であり、R’’はアルコキシ基であり、Rは水素であり、およびRおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカルビル基である。)
の2−アルコキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン誘導体を、一般式I:
【0076】
【化20】

(式中、R、R、R、RおよびRは上記に定義したとおりであり、Rは水素である。)
の化合物から調製するための有利な方法であって、上記方法および/または上記錯体のいずれかを用いる方法を提供する。
【0077】
本発明による方法および/または錯体は、例えば2−メトキシ−3、17β−エストラジオールなどの2−アルコキシ−3、17β−エストラジオールを調製する方法に有利に用いることができ、したがって本発明は上記方法および/または上記錯体が使用されるそのような2−アルコキシ−3、17β−エストラジオールを3、17β−エストラジオールから調製する方法も提供する。
【0078】
1つの更なる実施形態において、本発明は、3、17β−エストラジオールの2−アルコキシ誘導体を調製する方法であって、
a)上記方法によって3、17β−エストラジオールを反応させて、その17β−ヒドロキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルを生成する段階、
b)3、17β−エストラジオールの17β−ヒドロキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルを1つ以上の段階で反応させて、3、17βエストラジオールの2−アルコキシ誘導体を生成する段階、
を含む方法を提供する。
【発明の効果】
【0079】
3、17βエストラジオールの2−メトキシ誘導体の調製は、この化合物の広い適用性およびこの化合物の工業的規模での調製に対する要望のために、特に有利である。
【0080】
本発明を、以下の本発明を限定しない実施例により更に例示する。
【0081】
比較例A
KOH(15.3g、273ミリモル)、3、17β−エストラジオール(75g、275ミリモル)および2−クロロ−5−ニトロベンゾフェノン(69.4g、262ミリモル)をイソプロパノール(1.6L、約1.3Kg相当)中に含有する溶液を還流させながら20時間加熱した。室温まで冷却後、反応混合物をろ過し、真空中で容積480mLまで濃縮し、それをNaOH水溶液(1.0モル濃度、4.0L)の中に注入した。生成物をろ別し、それをジクロロメタン(750mL)中に溶解させた。有機層をブライン(10%NaCl水溶液、75mL×2回)で洗浄し、ろ過し、溶媒をジエチルエーテルで置換した。生成物をろ別し、真空中50℃で乾燥させた。生成物は、3、17β−エストラジオール出発使用量に対する収率68モル/モル%の褐色結晶(93.5g、188ミリモル)から成っていた。
【実施例1】
【0082】
KOH(20.3Kg、362モル)、3、17β−エストラジオール(75Kg、275モル)および2−クロロ−5−ニトロベンゾフェノン(88.5Kg、338モル)のイソプロパノール(1350L、約1060Kg相当)溶液を還流しながら3時間加熱した。室温まで冷却後、反応混合物をろ過し、真空中で容積870Lまで濃縮した。生成物をろ別し、真空中50℃で乾燥した。生成物は、3、17β−エストラジオール出発使用量に対する収率85モル/モル%の黄色結晶(115.8Kg、233モル)から成っていた。
【0083】
生成した17β−ヒドロキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテル―イソプロパノール錯体結晶の結晶構造を図1に示す。
【実施例2】
【0084】
(メタノール中の反応)
KOH(8.0g、143ミリモル)、3、17β−エストラジオール(30.0g、110ミリモル)および2−クロロ−5−ニトロベンゾフェノン(34.5g、132ミリモル)のメタノール(550mL、約435g相当)溶液を還流させながら22時間加熱した。反応混合物をろ過し、真空中で容積350mLまで濃縮した。−10℃までの冷却により、生成物は結晶化した。生成物をろ別し、真空中50℃で乾燥した。生成物は、3、17β−エストラジオール出発使用量に対する収率70モル/モル%の黄色結晶(38.1g、76.6ミリモル)で、から成っていた。メタノール含量はガスクロマトグラフィーで測定して、0.2重量/重量%(であった。
【実施例3】
【0085】
(エタノール中の反応)
KOH(2.7g、48ミリモル)、3、17β−エストラジオール(10.0g、37.7ミリモル)および2−クロロ−5−ニトロベンゾフェノン(11.5g、43.9ミリモル)のエタノール(280mL)溶液を還流させながら3時間加熱した。反応混合物をろ過し、真空中で容積160mLまで濃縮した。6℃までの冷却により、生成物は結晶化した。生成物をろ別し真空中50℃で乾燥した。生成物は3、17β−エストラジオール出発用量に対する収率77モル/モル%の黄色結晶(14.0g、28.1ミリモル)で、から成っていた。エタノール含量はガスクロマトグラフィーで測定して3.5重量/重量%であった。
【0086】
生成した17β−ヒドロキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテル―エタノール錯体結晶の結晶構造を図2に示す。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】17β−ヒドロキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテル−イソプロパノール錯体の結晶構造。
【図2】17β−ヒドロキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテル−エタノール錯体の結晶構造。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式II:
【化1】

(式中、RおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカルビル基であり、またはRおよびRは一緒になって二重結合された酸素であり、Rは水素であり、R’はニトロベンゾフェノン基であり、およびRおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカビル基である。)
の化合物を一般式I:
【化2】

(式中、R、R、R、RおよびRは上記に規定したとおりであり、ならびにRは水素である。)
の化合物から調製する方法であって、
式Iの化合物を2−クロロ−5−ニトロベンゾフェノンとアルカリ性条件下、アルカノール性溶媒の存在下で反応させ、および式IIの化合物をこのアルカノール性溶媒から直接結晶化させる方法。
【請求項2】
一般式Iの化合物および一般式IIの化合物において、Rがヒドロキシ基でありかつRが水素であるか、またはRおよびRが一緒になって二重結合された酸素であり、およびRおよびRが水素基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルカノールがC2からC6のモノアルカノールである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
式IIの化合物がアルカノール性錯体としてアルカノールから結晶化される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アルカノールと一般式II:
【化3】

(式中、RおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカルビル基であり、または、RおよびRは一緒になって二重結合された酸素であり、Rは水素であり、R’はニトロベンゾフェノン基であり、およびRおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカビル基である。)
の化合物との錯体であって、
該アルカノール中の溶液から式IIの化合物の結晶化を含む方法により得ることができる、錯体。
【請求項6】
一般式IIの化合物において、Rがヒドロキシ基でありかつRが水素であるか、
またはRおよびRが一緒になって二重結合された酸素であり、およびRおよびRが水素基である、請求項5に記載の錯体。
【請求項7】
アルカノールがC2からC6のモノアルカノールである、請求項5または6に記載の錯体。
【請求項8】
17β−ヒドロキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルとC2からC6のモノアルカノールとの錯体。
【請求項9】
一般式III:
【化4】

[式中、R’は式―O―C(O)―R(式中、Rは水素、または1から3個の炭素原子を有するアルキル基を表す。)のエステル基であり、Rは水素またはヒドロカルビル基であり、R’はヒドロキシ基であり、R’はニトロベンゾフェノン基であり、およびRおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカルビル基である。]
の化合物を一般式II:
【化5】

(式中、Rはヒドロキシ基であり、Rは水素またはヒドロカルビル基であり、Rは水素であり、R’はニトロベンゾフェノン基であり、およびRおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカルビル基である。)
の化合物から1つ以上の段階で調製する方法であって、
一般式IIの化合物がアルカノール錯体として供給される方法。
【請求項10】
一般式III:
【化6】

[式中、R’は式―O―C(O)―R(式中、Rは水素、または1から3個の炭素原子を有するアルキル基を表す。)のエステル基であり、Rは水素またはヒドロカルビル基であり、R’はヒドロキシ基であり、R’はニトロベンゾフェノン基であり、およびRおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカルビル基である。]
の化合物を一般式II:
【化7】

(式中、Rはヒドロキシ基であり、Rは水素またはヒドロカルビル基であり、Rは水素であり、R’はニトロベンゾフェノン基であり、およびRおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカルビル基である。)
の化合物から調製するためのワンポット合成法であって、
a)一般式IIの化合物中のRヒドロキシ基のエステル化であって、その化合物を式R―C(O)―O―C(O)―R(式中、Rは水素、または1から3個の炭素原子を有するアルキル基を表す。)の酸無水物の過剰量とともに、酸無水物に可溶な第1の酸の存在下で反応させることにより、第1の酸、一般式IIの化合物の17β−エステル誘導体、式HO―C(O)―R(式中、Rは水素、または1から3個の炭素原子を有するアルキル基を表す。)の酸、および残余の酸無水物を含む反応混合物を生成するエステル化、
b)前記残余の酸無水物を式HO―C(O)―R(式中、Rは水素、または1から3個の炭素原子を有するアルキル基をあらわす。)の酸に転換するに十分な量の水の添加であって、前記第1の酸、前記一般式IIの化合物の17β−エステル誘導体、前記式HO―C(O)―Rの酸、および場合により残余の水を含む反応混合物を生成する、水の添加、
c)第2の酸の添加であって、該酸および前記一般式IIの化合物の17β−エステル誘導体の錯体を含む反応混合物を生成する、第2の酸の添加、
d)場合によりその場で調製される有機ペルオキシ酸を30分の時間以内で添加することによる前記17β−エステル誘導体中のR水素基の酸化であって、前記一般式IIIの化合物、式HO―C(O)―R(式中、Rは水素、または1から3個の炭素原子を有するアルキル基を表す。)の酸、および場合により残余の水および/または有機ペルオキシ酸を含む混合物を生成する、R水素基の酸化、
を含む方法。
【請求項11】
一般式V:
【化8】

(式中、Rはヒドロキシ基であり、Rは水素またはヒドロカルビル基であり、R’’はアルコキシ基であり、Rは水素であり、およびRおよびRは独立して水素またはヒドロキシ基またはヒドロカルビル基である。)
の2−アルコキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン誘導体を、一般式I:
【化9】

(式中、R、R、R、RおよびRは上記に定義したとおりであり、Rは水素である。)
の化合物から調製するための方法であって、請求項1から4のいずれか一項の方法、請求項5から8のいずれか一項の錯体および/または請求項9から10のいずれか一項の方法を用いる方法。
【請求項12】
a)請求項1から4のいずれか1項に記載の方法により、3、17β−エストラジオールを反応させて、その17β−ヒドロキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルを生成する段階、
b)3、17β−エストラジオールの17β−ヒドロキシ−Δ1、3、5(10)−エストラトリエン3−(2−ベンゾイル−4−ニトロ)−フェニルエーテルを1つ以上の段階で反応させて、3、17β−エストラジオールの2−アルコキシ誘導体を生成する段階、
を含む、3、17β−エストラジオールの2−アルコキシ誘導体を調製するための請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−510772(P2008−510772A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528839(P2007−528839)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/054116
【国際公開番号】WO2006/021554
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(398057282)ナームローゼ・フエンノートチヤツプ・オルガノン (93)
【Fターム(参考)】