説明

エタノールの製造のためのとうもろこし粒の加工方法及びその装置

【課題】選別工程を可能な限り削減して構成を簡略化するとともに、胚乳、果皮、胚芽を容易に取り分けることを可能にする。
【解決手段】とうもろこし粒に一定量の加水を行う調質工程と、調質されたとうもろこし粒が破砕されることなく、その形状を維持しながら脱皮する脱皮工程と、脱皮されたとうもろこし粒を割砕する割砕工程と、割砕された割砕物から胚乳と胚芽とを分離する選別工程と、分離された胚乳をさらに粉砕する粉砕工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタノールの製造のためのとうもろこし粒の加工方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エタノールを製造するためのとうもろこし粒の加工方法は周知であり、例えば、特許文献1に記載されたものや、特許文献2に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載されている発明は、(1).とうもろこし粒をインパクトミルで粉砕する工程と、(2).粉砕されたとうもろこしを、糠からなる第1の流れと、胚芽(germ)、ひき割り粒(grits、以下、とうもろこしの胚乳の意味で用いる)及び残留糠(bran)を含む第2の流れとに分ける工程と、(3).第2の流れの胚芽、胚乳及び残留糠を純化する第1の純化(refining)工程と、(4).第1の純化工程後の胚芽、胚乳及び残留糠をシフターによる選別によって、胚芽及び胚乳を抽出する第1の選別工程と、(5).第1の選別工程で抽出されなかった胚芽、胚乳及び残留糠からなる中間生成物(Intermediate product)を純化する第2の純化工程と、(6).第2の純化工程後の胚芽、胚乳及び残留糠をシフターによる選別によって、胚芽及び胚乳を抽出する第2の選別工程と、から構成されている。
【0004】
これにより、湿ったとうもろこし粒を衝撃粉砕することにより、粉砕物をできるだけ大きな平均粒径にとどめ、その結果生じる粉砕された胚芽は、粒径により選別されて得られ、エタノール抽出プラントへ原料を移送する前段階において、とうもろこし粒から少なくとも7%、好ましくは10%の純粋な胚芽が取り分けられ、とうもろこし粒から少なくとも1%、好ましくは2.5%の純粋な糠が取り分けられる。つまり、とうもろこし粒からの胚乳回収率を向上させ、エタノール抽出プラントにおいて、エタノール製造時に発生する不純物・残渣物(pasty product)を削減し、従来よりもエタノールの精製度を向上させることができるものである。
【0005】
しかしながら、上記方法にあっては、(1).に記載の工程において、1粒のとうもろこし粒が複数の小片(ピース)に小さく破砕されてしまうので、破砕された胚乳に胚芽や残留糠が混入することとなり、純粋な胚乳のみを原料として供給するために、胚乳から胚芽及び残留糠を選り分けるための(2).から(6).に記載の複数の選別工程を必要としていた。このように複数の選別工程を備えると、構成が複雑化し、設備費の製造コスト高や、複数の選別工程において消費される電気代等によりランニングコスト高になる問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載されている発明は、(a).一定量のとうもろこし粒を調質(tempering)する工程と、(b).とうもろこし粒を砕く(cracking)工程と、(c).砕かれたとうもろこし粒を脱ぷ(threshing)する工程と、(d).脱ぷされたとうもろこし粒を、大きな粒径の第1分離物と小さな粒径の第2分離物とに分別する選別工程と、(e).第2分離物を、大きい粒と中間の粒とに分離する工程と、(f).大きい粒を、大きな胚乳と、大きな胚芽、果皮及び微細な胚乳の混合物とに選別する比重選別工程と、(g).中間の粒を、中間の胚乳と、中間の胚芽、果皮及び微細な胚乳の混合物とに選別する比重選別工程と、から構成されている。
【0007】
上記(b).に記載の工程においては、特許文献1記載の粒よりも大きい、例えば、1粒のとうもろこし粒を3〜10個の複数の小片(ピース)に破砕するものである。つまり、この3〜10個に破砕された破砕物が風選されて、まず、大きな果皮が除去され、次いで、上記(c).に記載の工程において、残った果皮、胚芽、糠が分離されるため、デンプンを高濃度に含む胚乳の回収率を大きく向上させることができる。これにより、エタノール生産又は乾式製粉における製品の歩留まりが向上するといった利点がある。
【0008】
しかしながら、1粒のとうもろこし粒を3〜10個の複数の小片に破砕するだけでは、複数の小片に未だ果皮が残留している状態であり、後工程の(c).に記載の工程を連続して設けて、果皮、胚芽、糠を分離する必要があった。さらに、胚乳から果皮、胚芽及び残留糠を選り分けるための(d).から(g).に記載の複数の選別工程を必要とするものである。
【0009】
また、上記(b).記載のように、皮を除去せずに割砕する場合、胚乳、胚芽に剥がれかかった果皮が付着していることが多く、この果皮が比重選別機の振動や風に悪影響を及ぼして胚乳と胚芽との分離が困難となっていた。従って、胚乳と胚芽との分離を精度よく行うためには複数台の比重選別機が必要であった。
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0035354号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/081673号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記問題点にかんがみ、選別工程を可能な限り削減して構成を簡略化するとともに、胚乳、果皮、胚芽を容易に取り分けることを可能にした、エタノールを製造するためのとうもろこし粒の加工方法及びその装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明は、エタノールの製造のためのとうもろこし粒の加工方法であって、とうもろこし粒の果皮のみが湿らされるように所定量の加水を行ってとうもろこし粒を調質する調質工程と、とうもろこし粒がその形状を維持して破砕されないように、湿らされた果皮を除去して脱皮する脱皮工程と、脱皮されたとうもろこし粒を破砕粒に割砕する割砕工程と、とうもろこし粒の破砕粒から胚乳と胚芽とを分離する分離工程と、分離された胚乳を粉砕してとうもろこし粒の粉を得る粉砕工程とを備える、という技術的手段を講じた。
【0012】
前記脱皮工程には、ビータ方式の衝撃式脱皮機又は摩擦式脱皮機を用いるのがよく、前記割砕工程には、衝撃式粉砕機を用いるのがよい。
【0013】
また、前記分離工程には、比重選別機又は光学式選別機を用いるのがよい。
【0014】
そして、前記脱皮工程と前記割砕工程との間には、アスピレータ及びシフターを用いた一次純化工程を設けるのがよく、前記割砕工程と前記比重選別工程との間には、アスピレータ及びシフターを用いた二次純化工程を設けるのがよい。
【0015】
さらに、前記一次純化工程と前記割砕工程との間に、脱皮されたとうもろこし粒を加水してテンパリングする加水工程を設けるのがよい。
【0016】
また、前記一次純化工程と前記割砕工程との間に、脱皮されたとうもろこし粒を加圧タンク内に投入して二酸化炭素を浸透させ、その後、加圧タンクから取り出したとうもろこし粒を短時間加熱処理する二酸化炭素処理工程を設けてもよい。
【0017】
本発明のとうもろこし粒の加工装置は、とうもろこし粒の果皮のみが湿らされるように所定量の加水を行ってとうもろこし粒を調質する調質装置と、とうもろこし粒がその形状を維持して破砕されないように、湿らされた果皮を除去して脱皮する脱皮装置と、脱皮されたとうもろこし粒を割砕する割砕装置と、割砕された割砕物から胚乳と胚芽とを分離する比重選別装置と、分離された胚乳を粉砕する粉砕装置とを備える。脱皮装置は、横設された多孔壁筒と、該多孔壁筒の一端に設けた穀粒供給筒と、多孔壁筒の他端に設けた穀粒排出筒と、多孔壁筒内に回転可能に配置した回転軸と、該回転軸に固着した剥離転子とを含む。脱皮装置は、多孔壁筒の一端の穀粒供給筒の近傍で回転軸に固定された穀粒移送用のスクリューを更に含んでよい。
【0018】
脱皮装置の剥離転子は、回転軸に軸着された基部と、該基部から多孔壁筒へ放射状に延びる複数のアーム部とを有し、回転軸の軸方向に複数設けられた支持部材と、該複数の支持部材の各アーム部先端に取り付けられる、前記回転軸と平行な長尺状のビータ板とを備えてよい。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、あらかじめ精選されたとうもろこし粒が調質工程において調質された後、脱皮工程に供給され、脱皮工程において、とうもろこし粒が破砕されることなく、その形状を維持しながら脱皮される。このとき、約98%の果皮が剥離されて除去されることになり、従来の調質工程後にとうもろこし粒を破砕する場合と比べると、胚乳に果皮が混入するおそれがほとんどない。脱皮後のとうもろこし粒は胚乳に胚芽が付着した状態であり、この粒が次の割砕工程に供給されることになる。割砕工程においては、胚乳が複数個、例えば4〜8個の小片に割砕されるとともに、付着していた胚芽が分離される。このとき、胚芽は、弾性状であるために、胚芽自身が小さく割砕されることはなく、胚乳から容易に分離されることになる。胚芽を破壊しないでとうもろこし粒を割砕することは、胚芽の原形をとどめたまま回収することが出来る点で有利であり、後工程の精選効率を向上し、胚芽に含まれる酵素の死滅防止や、胚芽の酸化及び腐敗を防止し、有用成分を破壊せずに付加価値の高い胚芽を提供することができる。
【0020】
次いで、割砕された胚乳と胚芽との混合物は、比重選別工程に供給され、比重差により胚乳と胚芽とに分離され、分離された胚乳はさらに粉砕工程にて粉砕されて回収されることになる。つまり、本発明によれば、胚乳に果皮が混入するおそれはほとんどないので、比重選別工程が1工程で済み、選別工程を可能な限り削減して構成を簡略化するとともに、胚乳、果皮、胚芽を容易に取り分けることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明に係るエタノールを製造するためのとうもろこし粒の加工方法のフローチャートである。
【0022】
図1において、原料となるとうもろこし粒は、まず、精選工程に供給されて夾雑物・異物の分離・除去が行われる。符号1のミリングセパレータと称される選別機は、例えば、径15mm程度の有孔鉄板からなる上段篩と、径4mm程度の有孔鉄板からなる下段篩とを備えた2段篩が用いられる。この2段篩は、上段篩においてとうもろこし粒が篩の網目を通過するが、大きな夾雑物は篩をオーバーして原料から分離され、下段篩においてとうもろこし粒よりも小さな夾雑物が篩の網目を通過するが、とうもろこし粒はオーバーするので小さな夾雑物及び大きな夾雑物の分離・除去が可能となる。次に、とうもろこし粒は、符号2の石抜機に供給されて、石及び埃等の分離・除去が行われる。この石抜機は比重差を利用してとうもろこし粒から石等を分離するドライデストーナ等を用いることができる。以上のように精選されたとうもろこし粒は、次に、符号3の加水・テンパリング工程に供給される。加水・テンパリング工程3は、製品粉の品質を向上させるために設けた水分調整用の加水・テンパリング工程であり、原料水分12%程度のとうもろこし粒を、水分15〜16%となるように加水し、加水後4〜12時間程度の調質が行われる。
【0023】
符号4は、とうもろこし粒の果皮を剥がれ易くするための短時間の調質工程であって、符号3の加水・テンパリング工程で調質されたとうもろこし粒に対し、重量で1〜6%の水分を加水するとともに、5〜30分間の調質が行われる。これにより、とうもろこし粒の胚乳組織にまで水が浸透せず、果皮にのみ加水され、果皮と胚乳とが分離され易くなるのである。
【0024】
符号5は、本発明の要部となる脱皮工程であって、符号4の調質工程にて調質されたとうもろこし粒が、破砕されることなく、その形状を維持しながら果皮のみ脱皮されるものである。このとき、約98%の果皮が剥離されて除去されることになり、果皮が除去されたとうもろこし粒は胚乳に胚芽が付着した状態で脱皮工程から排出される。
【0025】
脱皮工程5において、脱皮機の網目を通過する果皮及び小さなとうもろこし砕粒はスルーして、次工程のブランフィニッシャ6に供給され、脱皮機の網目を通過しない胚乳に胚芽が付着した状態のとうもろこし粒はオーバーして、次工程のアスピレータ7に供給されることになる。
【0026】
ブランフィニシャ6では、果皮の内側に付着している胚乳を剥離し、果皮と分離して製品粉が取り出される。アスピレータ7では、吸引式の気流によって脱皮後のとうもろこし粒から果皮及び微粉が選別・除去され、純化が行われる。純化されたとうもろこし粒は、次工程のシフター8に供給され、該シフター8において、脱皮されたとうもろこし粒が整粒、中砕粒及び小砕粒の3種類の粒度に分離される。
【0027】
シフター8により分離された整粒は、胚乳に胚芽が付着した状態であるので、とうもろこし粒を4〜8個の小片に割砕した後、胚乳と胚芽とを分離すべく割砕工程10に供給される。また、シフター8により分離された中砕粒は、胚乳と胚芽とに選別すべく選別工程13に供給される。
【0028】
選別工程13では、多孔打抜鉄板を傾斜させて振動させるとともに、下から風を噴出し、比重の軽いものを浮き上がらせる比重選別機を用いることができる。また、粒状物の連続的な流れから光学的な方法により対象物の色や形状を識別し、分離すべき対象物を噴風等のエジェクタによって前記連続的な流れから吹き飛ばして胚乳と胚芽を選別する光学式選別機を用いることができる。
【0029】
さらに、シフター8により分離された小砕粒は、製品粉を得るべく粉砕工程14に供給される。
【0030】
前記割砕工程10の前工程には、胚乳に付着した胚芽に弾力性を持たせるために、加水・テンパリング工程9を設けるのが好ましく、この加水・テンパリング工程9においては、とうもろこし粒に対し、2%以下の水分を加水するとともに、30分以内の調質を行うとよい。これにより、胚芽には弾力性が増し、割砕工程10において胚芽自身が細かく粉砕され難くなり、胚乳と胚芽との分離が容易に行うことができる。なお、加水・テンパリング工程9の代替手段として、脱皮されたとうもろこし粒を加圧タンク内に投入して二酸化炭素を浸透させ、その後、加圧タンクから取り出したとうもろこし粒を短時間加熱処理する二酸化炭素処理工程を設けてもよい。
【0031】
前記二酸化炭素処理工程について言及すると、二酸化炭素は吸着性のガスであり、これを利用すると、胚乳及び胚芽に多く含まれる脂質やタンパク質に収着しやすくなるものと考えられる。そこで、とうもろこし粒を加圧タンク等に投入して二酸化炭素を加圧下で供給すると、胚乳及び胚芽の細胞結合を弛緩又は破壊すると考えられ、その結果、とうもろこし粒を大気圧下に戻したとき、細胞結合が弱くなったとうもろこし粒の脱芽を極めて容易に行うことができるのである。
【0032】
前記割砕工程10において使用する割砕機としては、回転するピンと固定ピンとの間で衝撃・摩擦作用を受けて粉砕されるピンミルやインパクトミルを使用することができ、これにより、胚乳に付着した胚芽が離脱するとともに、胚乳が複数個、例えば、4〜8個の小片に割砕されることになる。
【0033】
次に、胚芽と4〜8個の小片に割砕された胚乳との混合物からなるとうもろこし粒は、アスピレータ11に供給され、吸引式の気流によって果皮及び微粉が選別・除去されて純化が行われ、さらに、純化されたとうもろこし粒は、シフター12に供給されて、小砕粒、大中砕粒及び製品粉の3種類に分離される。シフター12をオーバーした大中砕粒は、前記シフター8から排出された中砕粒とともに比重選別工程13に供給されて、胚乳と胚芽とが比重選別され、シフター12をスルーした小砕粒は、比重選別工程13を経由せずに、前記シフター8から排出された小砕粒とともに粉砕工程14に供給されて、製品粉を得るべく粉砕されることになる。
【0034】
粉砕工程14において使用する粉砕機としてはローラーミルが好ましく、該粉砕工程14において粉砕された粉砕物は、次工程のシフター15に供給され、小区分、大区分及び製品粉(小区分)の3種類に分離される。シフター15をオーバーした大区分は、アスピレータ16に供給され、吸引式の気流によって果皮及び胚芽に選別され、シフター15をスルーした中区分は、アスピレータ17に供給され、吸引式の気流によって果皮及び小砕粒に分離・選別される。そして、アスピレータ17により分離された小砕粒は再度粉砕工程14に返還され、粉砕・選別の操作が繰り返し行われることになる。シフター15をスルーした小区分、すなわち、胚乳粉は製品粉として取り出される。
【0035】
以上のように、調質後のとうもろこし粒は、脱皮工程5において、とうもろこし粒が破砕されることなく、その形状を維持しながら脱皮されるため、約98%の果皮が剥離されて除去されることになり、従来の調質工程後にとうもろこし粒を破砕する場合と比べると、胚乳に果皮が混入するおそれはほとんどない。そして、脱皮後のとうもろこし粒は胚乳に胚芽が付着した状態にあり、この粒が次の割砕工程10に供給されることになる。割砕工程10においては、胚乳が4〜8個の小片に割砕されるとともに、付着していた胚芽が分離される。このとき、胚芽は、弾性状であるために、胚芽自身が小さく割砕されることなく胚乳から分離されることになる。次いで、4〜8個の小片に割砕された胚乳と胚芽との混合物は、比重選別工程13に供給され、比重差により胚乳と胚芽とに分離され、分離された胚乳は粉砕工程14にて粉砕されて回収されることになる。つまり、本発明によれば、胚乳に果皮が混入するおそれはほとんどないので、比重選別工程13が1工程で済み、選別工程を可能な限り削減して構成を簡略化するとともに、胚乳、果皮、胚芽を容易に取り分けることが可能になる。
【0036】
以下、本発明の脱皮工程において使用する脱皮機について説明する。図2はビータ方式の衝撃式脱皮機の概略縦断面図であり、図3は図2のa−a’線に沿って破断した断面図である。
【0037】
図2及び図3において、衝撃式脱皮機20は、機台21上に設けた機枠22内に横設した多孔壁筒23と、該多孔壁筒23の一端側に設けた穀粒供給筒24と、多孔壁筒23の他端側に設けた穀粒排出筒25と、多孔壁筒23内に回転可能に配置した回転軸26と、該回転軸26の穀粒供給筒25の近傍に固定した穀粒移送用のスクリュー27と、多孔壁筒23内に設けられた剥離転子28と、により主要部が構成される。
【0038】
図2に示す衝撃式脱皮機20では、回転軸26に穀粒移送用のスクリュー27が設けられているが、図4に示す長尺状の剥離転子28を使用する場合は、穀粒移送用のスクリュー27を省略することもできる。
【0039】
符号29は多孔壁筒23の下方に備えた果皮回収ホッパーであり、該果皮回収ホッパー29の下端に果皮排出口30を有している。符号31,32は機枠22の外方に設けた軸受であって、前記回転軸26を回転可能に支持している。回転軸26の一端には、Vプーリ33が固定されており、Vベルト34及びモータプーリ35を介して、機台21下部に備えたモータ36によって回転駆動されるようになっている。そして、回転軸26は800〜1000rpmの回転数で回転されるように設定されている。
【0040】
剥離転子28は、回転軸26に固着された基部37a、及び該基部37aから多孔壁筒23へ放射状に延びる複数のアーム部37b…を備えた支持部材37…(図3では4本のアーム部37bを備えている)を、回転軸26の軸方向へ複数設け(図2では3個の支持部材37を備えている)、該複数の支持部材37に対応する各アーム部37b…先端に、回転軸26と平行な長尺状のビータ板38…を取り付けた構成となっている。
【0041】
該長尺状のビータ板38…は、図2,図3に示す実施例では4枚のビータ板38…を、図4に示す実施例では8枚のビータ板38…を取り付けた構成となっている。
【0042】
本実施形態の衝撃式脱皮機20において、調質後のとうもろこし粒が穀粒供給筒24から供給されると、スクリュー27により多孔壁筒23内へ移送され、多孔壁筒23内においては、とうもろこし粒の充満度が20〜40%程度となっており、この状態で回転されるビータ板38…による打ち付け衝撃、とうもろこし粒同士の衝突による衝撃、及び多孔壁筒23内壁に押し付けられる摩擦により、とうもろこし粒表面の果皮が剥離されることになる。このとき、長尺状のビータ板38…の回転によって脱皮されるから、とうもろこし粒は破砕されることなく、その形状を維持しながら脱皮されため、約98%の果皮が剥離されて除去されることになる。そして、とうもろこし粒は徐々に穀粒排出筒25側に移送され、最終的に穀粒排出筒25から機外に排出されることになる。
【0043】
この際に生じた果皮や粉砕された微粉は多孔壁筒23の外に排出され、果皮回収ホッパー29及び果皮排出口30を経て機外に排出されることになる。
【0044】
なお、本実施形態の衝撃式脱皮機20においては、多孔壁筒23の排出側又は穀粒排出筒25の開口縁に堰き止め板や、開閉蓋等を設けていないが、充満度が20〜40%に満たない場合には適宜設置してもよい。また、回転軸26の回転数の調節やとうもろこし粒の供給量等の調節によって、多孔壁筒23内の充満度の調節を行ってもよい。
【0045】
ビータ方式の衝撃式脱皮機の代わりに図5に示すような摩擦式脱皮機を脱皮工程において使用してもよい。摩擦式脱皮機は、多孔壁精白筒内に通風摩擦精白転子を回転自在に設けた摩擦式精米機を利用して脱皮を行う。
【0046】
図5において、摩擦式脱皮機40は、機台41に設けた機枠42内に横設した多孔壁筒43と、該多孔壁筒43の一端側に設けた供給口44a及びシャッタ44bを有する穀粒供給タンク44と、多孔壁筒43の他端側に設けた穀粒排出口42aと、多孔壁筒43内に回転可能に配置した中空回転軸45と、該中空回転軸45の穀粒供給タンク44の供給口44aの下方に固定した穀粒移送用のスクリュー46と、多孔壁筒43内に設けられた摩擦転子47とを備える。
【0047】
果皮回収ホッパー51は多孔壁筒43の下方に備えられている。果皮回収ホッパー51の下端には果皮排出筒52が設けられている。中空回転軸45の一端には、プーリ53が固定されており、機台41下部に備えたモータ(図示せず)によって回転駆動されるようになっている。多孔壁筒43内のとうもろこし粒の充満度の調節のために、穀粒排出口42aには抵抗蓋49が設けられている。中空回転軸45の他端は空気供給源50に接続され、中空回転軸45に形成された空気孔45a及び摩擦転子47に設けた噴風口47aを介してエアーが摩擦転子47と多孔壁筒43の間の剥離室48に供給される。
【0048】
摩擦式脱皮機40において、調質後のとうもろこし粒が原料供給タンク44の供給口44aから供給されると、スクリュー47により多孔壁筒43内へ移送され、この状態で回転される摩擦転子47による、とうもろこし粒同士の摩擦、及び多孔壁筒43内壁に押し付けられる摩擦により、とうもろこし粒表面の果皮が剥離されることとなる。このとき、とうもろこし粒は破砕されることなく、その形状を維持しながら脱皮される。そして、とうもろこし粒は徐々に穀粒排出口42a側に移送され、最終的に穀粒排出口42aから機外に排出されることになる。
【0049】
この際に生じた果皮や粉砕された微粉は多孔壁筒43の外に排出され、ファン54の吸引により果皮回収ホッパー51及び果皮排出筒52を経て機外に排出されることになる。噴風口47aから剥離室48内に供給されたエアーは、果皮や粉砕された微粉の多孔壁筒43の外部への排出を促進する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係るエタノールを製造するためのとうもろこし粒の加工方法のフローチャートである。
【図2】ビータ方式の衝撃式脱皮機の概略縦断面図である。
【図3】図2のa−a’線に沿って破断した断面図である。
【図4】長尺状の剥離転子を示す斜視図である。
【図5】摩擦式脱皮機の概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 ミリングセパレータ
2 石抜機
3 加水・テンパリング工程
4 調質工程
5 脱皮工程
6 ブランフィニッシャ
7 アスピレータ
8 シフター
9 加水・テンパリング工程
10 割砕工程
11 アスピレータ
12 シフター
13 比重選別工程
14 粉砕工程
15 シフター
16 アスピレータ
17 アスピレータ
20 衝撃式脱皮機
21 機台
22 機枠
23 多孔壁筒
24 穀粒供給筒
25 穀粒排出筒
26 回転軸
27 スクリュー
28 剥離転子
29 果皮回収ホッパー
30 果皮排出口
31 軸受
32 軸受
33 Vプーリ
34 Vベルト
35 モータプーリ
36 モータ
37 支持部材
37a 基部
37b アーム部
38 ビータ板
40 摩擦式脱皮機
41 機台
42 機枠
43 多孔壁筒
44 穀粒供給タンク
45 中空回転軸
46 スクリュー
47 摩擦転子
48 剥離室
49 抵抗蓋
50 空気供給源
51 果皮回収ホッパー
52 果皮排出筒
53 プーリ
54 ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールの製造のためのとうもろこし粒の加工方法であって、
とうもろこし粒の果皮のみが湿らされるように所定量の加水を行ってとうもろこし粒を調質する調質工程と、
とうもろこし粒がその形状を維持して破砕されないように、湿らされた果皮を除去して脱皮する脱皮工程と、
脱皮されたとうもろこし粒を破砕粒に割砕する割砕工程と、
とうもろこし粒の破砕粒から胚乳と胚芽とを分離する分離工程と、
分離された胚乳を粉砕してとうもろこし粒の粉を得る粉砕工程と、を備えたことを特徴とするエタノール製造のためのとうもろこし粒の加工方法。
【請求項2】
前記脱皮工程には、ビータ方式の衝撃式脱皮機が用いられる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記脱皮工程には、摩擦式脱皮機が用いられる請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記割砕工程には、衝撃式粉砕機が用いられる請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
前記分離工程には、比重選別機が用いられる請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記分離工程には、光学選別機が用いられる請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記脱皮工程と前記割砕工程との間に、アスピレータ及びシフターを用いた一次純化工程を更に備えてなる請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記割砕工程と前記比重選別工程との間に、アスピレータ及びシフターを用いた二次純化工程を更に備えてなる請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記一次純化工程と前記割砕工程との間に、脱皮されたとうもろこし粒を加水してテンパリングする加水工程を更に設けてなる請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記一次純化工程と前記割砕工程との間に、脱皮されたとうもろこし粒を加圧タンク内に投入して二酸化炭素を浸透させ、その後、加圧タンクから取り出したとうもろこし粒を短時間加熱処理する二酸化炭素処理工程を更に設けてなる請求項7記載の方法。
【請求項11】
エタノールを製造するためのとうもろこし粒の加工装置であって、
とうもろこし粒の果皮のみが湿らされるように所定量の加水を行ってとうもろこし粒を調質する調質装置と、
とうもろこし粒がその形状を維持して破砕されないように、湿らされた果皮を除去して脱皮する脱皮装置と、
脱皮されたとうもろこし粒を割砕する割砕装置と、
割砕された割砕物から胚乳と胚芽とを分離する選別装置と、
分離された胚乳を粉砕する粉砕装置とを備え、
前記脱皮装置は、横設された多孔壁筒と、前記多孔壁筒の一端に設けた穀粒供給筒と、前記多孔壁筒の他端に設けた穀粒排出筒と、前記多孔壁筒内に回転可能に配置した回転軸と、該回転軸に固着した剥離転子とを含むことを特徴とするエタノールを製造するためのとうもろこし粒の加工装置。
【請求項12】
前記脱皮装置の剥離転子は、前記回転軸に軸着された基部と、該基部から前記多孔壁筒へ放射状に延びる複数のアーム部とを有し、前記回転軸の軸方向に複数設けられた支持部材と、該複数の支持部材の各アーム部先端に取り付けられた前記回転軸と並行な長尺状のビータ板とを備えてなる請求項11記載の加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−113655(P2008−113655A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265254(P2007−265254)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】