説明

エチレン−酢酸ビニル共重合体

【課題】 従来のエチレン−酢酸ビニル共重合体では達成が困難であった、0.5mmという薄膜でV−0という高い難燃性を達成し得るエチレン−酢酸ビニル共重合体、およびそれを含む難燃性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 酢酸ビニル単位含有量が42〜47重量%であり、メルトフローレイトが0.3〜1.0g/10分であるエチレンと酢酸ビニルとの共重合体であって、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、水酸化マグネシウム200重量部と酸化防止剤0.2重量部を配合したときに、UL−94垂直燃焼試験法で0.5mm厚の燃焼性がV−0であるエチレン−酢酸ビニル共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、およびそれを含む難燃性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は薄膜でも高い難燃性を示すエチレン−酢酸ビニル共重合体、およびそれを含む難燃性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系樹脂は、一般に電気的特性、機械的性質、加工性等が優れているところから、電気絶縁材料として広く使用されている。とくに電線、ケーブル等の用途には、引張特性、低温特性、耐擦傷性、硬度等のバランスが良好であるところから、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのエチレン・不飽和エステルランダム共重合体が広く使用されている。
【0003】
このようなエチレン共重合体は、電線や通信線の被覆材、建材などの用途では難燃性が求められるために難燃化する必要がある。また、エチレン系重合体は、フィラーの充填性が良好であるため、従来からこれらの樹脂に難燃剤を添加して、難燃化が求められる用途に使用されてきた。難燃剤としては、古くはハロゲン系難燃剤を配合することにより対処してきた。しかしながらこのような配合物は燃焼時に有害ガスを発生するという問題があり、そのため近年では非ハロゲン系の難燃剤として、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物難燃剤を配合する処方が採用されるようになってきた。
【0004】
エチレン−酢酸ビニル共重合体を用いた難燃化樹脂組成物では、機械物性が不十分であることから、有機過酸化物で架橋してなる微架橋性エチレン−酢酸ビニル共重合体からなる難燃性が良好でかつ機械的特性に優れた難燃性樹脂組成物が提案されている(例えば、特開2003−171421号公報、特開2005−187497号公報)。しかしながら、これら従来公知のエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる難燃性樹脂組成物では、難燃性が依然として不足しているので、更なる改善が求められていた。
【0005】
本発明者らは、前記した従来の問題点を改良し、電線被覆や建材などの難燃性が求められる用途に好適に使用できる難燃性樹脂組成物の開発を鋭意注力した結果本発明に到達したものである。
【0006】
【特許文献1】特開2003−171421号公報
【特許文献2】特開2005−187497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、薄膜でも高い難燃性を示すエチレン−酢酸ビニル共重合体、およびそれを含む難燃性樹脂組成物を提供するものである。
本発明は、従来のエチレン−酢酸ビニル共重合体では達成が困難であった、0.5mmという薄膜でV−0という高い難燃性を達成し得るエチレン−酢酸ビニル共重合体、およびそれを含む難燃性樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、酢酸ビニル単位含有量(JIS K7129:1999法)が42〜47重量%であり、メルトフローレイト(JIS K7210:1999法、190℃、荷重2,160g)が0.3〜1.0g/10分であるエチレンと酢酸ビニルとの共重合体であって、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、水酸化マグネシウム200重量部と酸化防止剤0.2重量部を配合したコンパウンド樹脂としたときに、UL−94垂直燃焼試験法に従って0.5mm厚で測定した燃焼性がV−0であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を提供する。
【0009】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体が、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はその混合物を架橋して得られたものである前記したエチレン−酢酸ビニル共重合体は本発明の好ましい態様である。
【0010】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体が、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、水酸化マグネシウム200重量部と酸化防止剤0.2重量部を配合したコンパウンド樹脂としたときに、引張強さ(JIS K6760法に準拠:但し、K6301の3号ダンベル 試料厚1mmを用い引張速度200mm/minにて測定)が5MPa以上であり、伸びが300%以上である前記したエチレン−酢酸ビニル共重合体は本発明の好ましい態様である。
【0011】
本発明は、前記したエチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部と金属水和物50〜300重量部とを含む難燃性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、従来のエチレン−酢酸ビニル共重合体では達成が困難であった、0.5mmという薄膜でV−0という高い難燃性を達成し得るエチレン−酢酸ビニル共重合体、およびそれを含む難燃性樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、酢酸ビニル単位含有量(JIS K7129:1999法)が42〜47重量%であり、メルトフローレイト(JIS K7210:1999法、190℃、荷重2,160g)が0.3〜1.0g/10分であるエチレンと酢酸ビニルとの共重合体であって、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、水酸化マグネシウム200重量部と酸化防止剤0.2重量部を配合したコンパウンド樹脂としたときに、UL−94垂直燃焼試験法に従って0.5mm厚で測定した燃焼性がV−0であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を提供するものである。
【0014】
エチレン−酢酸ビニル共重合体
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位含有量(JIS K7129:1999法)は42〜47重量%であることが必要である。
さらに本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイト(JIS K7210:1999法、190℃、荷重2,160g)は、0.3〜1.0g/10分、好ましくは0.3〜0.8g/10分であることが必要である。
【0015】
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、水酸化マグネシウム200重量部と酸化防止剤0.2重量部を配合したコンパウンド樹脂としたときに、UL−94垂直燃焼試験法に従って0.5mm厚で測定した燃焼性がV−0であり得るエチレン−酢酸ビニル共重合体である。
【0016】
前記の要件を満たすエチレン−酢酸ビニル共重合体を得るには、酢酸ビニル単位含有量およびメルトフローレイトがいずれも前記の範囲にあることが必要である。
エチレン−酢酸ビニル共重合体として、酢酸ビニル単位含有量が異なる複数のエチレン−酢酸ビニル共重合体の混合物を用いるときは、平均酢酸ビニル単位含有量として前記の範囲にあればいい。また酢酸ビニル単位含有量が異なる複数のエチレン−酢酸ビニル共重合体の混合物を用いる場合、各々のエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位含有量は30重量%以上あることが好ましい。
またエチレン−酢酸ビニル共重合体として、メルトフローレイトの異なる複数のエチレン−酢酸ビニル共重合体の混合物を用いるときは、平均メルトフローレイトとして前記の範囲にあればいい。またメルトフローレイトの異なる複数のエチレン−酢酸ビニル共重合体の混合物を用いる場合、各々のエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイトは0.2〜5.0g/10分の範囲にあることが好ましい。
【0017】
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体を得る方法しては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体を架橋して酢酸ビニル単位含有量が42〜47重量%、メルトフローレイトが0.3〜1.0g/10分であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を得る態様を挙げることができる。
【0018】
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフ[GPC法(ポリスチレン換算) カラム(TSKgel GMHHR-H(S)HTx2本+TSKgel G2000HHR(20)HTx1本) カラム温度(140℃) 溶媒(オルソジクロロベンゼン) 流量:1.0ml/min]法で測定したMw/Mn値は、5〜11、好ましくは6〜10である。
【0019】
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体は、所望により各種添加剤や他の樹脂を含む組成物として用いることができる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体は、公知の各種安定剤を添加することができる。それらの添加剤としては、酸化防止剤(商品名としては、ヨシノックスBHT(エーピーアイコーポレーション社製)、イルガノックス1010(チバスペシャルティケミカルズ社製)、イルガノックス1076(チバスペシャルティケミカルズ社製)等を例示できる)、耐光安定剤(商品名としては、キマソ−ブ944LD(チバスペシャルティケミカルズ社製)、サノ−ルLD−770(三共)等を例示できる)、紫外線吸収剤(商品名としては、ライザ−(シプロ化成社製)、スミソ−ブ130(住友化学社製)等を例示できる)、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料、カ−ボンブラック、樹脂ワックス、加工性改良剤、充填剤、分散剤、発泡剤等が上げられる。所望の性能によって添加量は異なるが、一般的には0〜50,000ppmの範囲にあることが望ましい。
【0020】
エチレン−酢酸ビニル共重合体を有機過酸化物で架橋する方法として、エチレン−酢酸ビニル共重合体を、有機過酸化物、電子線架橋(放射線架橋)、シラン架橋剤などによって架橋する架橋技術を挙げることができる。
【0021】
エチレン−酢酸ビニル共重合体を有機過酸化物で架橋する場合、有機過酸化物としては、第3ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(2−第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ第3ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド;第3ブチルパーオキシイソブチレート、第3ブチルパーオキシマレイン酸、第3ブチルパーオキシイソナノエート、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、第3ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、第3ブチルパーオキシアセテート、第3ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエートなどのアルキルパーオキシエステル;1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(第3アミルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(第3ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(第3ブチルパーオキシ)バレレート、エチル−3,3−ビス(第3ブチルパーオキシ)ブチレートなどのパーオキシケタールなどを例示することができる。
【0022】
有機化酸化物の添加量は、使用するエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイト、有機過酸化物の種類、所望のメルトフローレイトによって異なるが、50〜10,000ppmの範囲にある。また、架橋する際の温度条件は有機化酸化物の種類によって異なるが、50〜230℃の範囲にあることが望ましい。
【0023】
本発明のエチレン・酢酸ビニル共重合体には、本発明の目的を損なわない範囲で、エチレン・酢酸ビニル共重合体と他の樹脂および/またはゴムとの混合物として使用することもできる。エチレン・酢酸ビニル共重合体に混合使用することができる他の樹脂としては、エチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン類、あるいはスチレンーイソプレンースチレンブロック共重合体、スチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体、およびこれらの水添物であるSEBSやSEPSなどのスチレン系熱可塑性エラストマー類、植物由来プラスチック(セルロ−ス系、でんぷん系、乳酸系、コハク酸系、酪酸系、グリコ−ル酸系等)などを例示することができる。これらの他の樹脂はカルボキシル変性物など各種の変性体であってもよい。ポリプロピレンとしては、プロピレンの単独重合体、エチレンとのランダム共重合体またはブロック共重合体、多元PP樹脂アロイなどから選択して使用することが可能である。ゴム成分としては、例えばEPDM、エチレンアクリルゴム等を例示できる。
【0024】
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体のMw/Mnは7〜12、好ましくは8〜11であることが望ましい。
また本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレイト(JIS K7210:1999法、190℃、荷重2,160g)は0.01〜2g/10分が好ましく 0.05〜1g/10分であることが特に好ましい。
【0025】
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、水酸化マグネシウム200重量部と酸化防止剤0.2重量部を配合したコンパウンド樹脂としたときに、引張強さ(JIS K6760法に準拠)が5MPa以上であり、伸びが300%以上であるようなエチレン−酢酸ビニル共重合体であることが好ましい。
【0026】
無機難燃剤
本発明で使用される無機難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイトのような金属水和物、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、クレイ、ゼオライト、臭素系難燃剤、三酸化アンチモン、ポリリン酸系難燃剤などを例示することができる。中でも、金属水和物が好ましく、水酸化マグネシウムとしては、具体的には協和化学工業社製キスマ5Aあるいはキスマ5Lが挙げられる。
【0027】
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いると従来の難燃性組成物よりも少ない無機難燃剤で難燃効果を発揮するので、金属水和物を使用する場合、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して50〜300重量部、好ましくは70〜250重量部程度配合することが望ましい。他の難燃剤の場合もこれに準じて配合量を選択することができる。
【0028】
本発明の無機難燃剤の分散性、混和性を向上させる目的で、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、脂肪族アルコール、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコンオイル、シリコンポリマー、リン酸エステル等で表面処理された無機難燃剤ものを使用するのができる。この場合、異なる表面処理剤で処理した、種類の異なる複数種の無機難燃剤を使用することもできる。
【0029】
本発明で使用できるポリリン酸系難燃剤として、ポリリン酸アンモニウム(B)を挙げることができる。ポリリン酸アンモニウムは、式(NH)n+23n+1(n≧2)で示されるものであって、ベースポリマーに対する相溶性を考慮すると、nが20〜1000程度のものが好ましい。このようなポリリン酸アンモニウムとして、エキソリット(Exolit)422、エキソリット700、スミセーフP(住友化学工業社製)、フォスチェック(Phos−check)P/30、フォスチェックP/40などの商品名の市販品を使用することができる。またポリリン酸アンモニウムは、加水分解を受け易いためその改良のために、あるいは難燃性や分散性を向上させるために、これを熱硬化性樹脂で被覆したもの、マイクロカプセル化したものあるいはメラミンモノマーや他の窒素化合物で被覆したもの、窒素含有化合物を共重合したものなどが知られており、例えばエキソリット462(ヘキスト社製)、スミセーフPM(住友化学工業社製)、テラージュ(TERRAJU)C60(チッソ社製)、テラージュC80(チッソ社製)、エキソリットAP750(クラリアント社製)などの商品名の市販品を使用することができる。
【0030】
本発明の難燃性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、カーボンブラック、滑剤、架橋助剤、難燃助剤、樹脂ワックス、発泡剤、オイルなどの添加剤を使用してもよい。また、難燃性樹脂組成物は、押出し成形や射出成形等、各種成形方法によって成形された後、有機過酸化物、電子線、シラン等の架橋技術によってさらに架橋することも可能である。
【0031】
本発明の難燃性樹脂組成物を製造する方法にはとくに制限はなく、それを構成する成分、および所望により配合される他の樹脂や添加剤を従来公知の方法で混練することにより製造することができる。混合順序にも特に制限はない。例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、無機難燃剤、必要に応じて配合される他の添加剤を、1軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、ロールなどの通常の混練機を使用し、エチレン系樹脂の融点以上の温度で混練する方法を挙げることができる。また有機過酸化物を配合する場合には、その融点以下の温度で混練すればよい。このようなブレンドは一括して行ってもよく、また段階的に行ってもよい。
【0032】
本発明により提供される難燃性樹脂組成物は、本来的特徴である好ましい物性を維持しながら、難燃性、機械物性および加工性が付与された組成物であるため、良好な難燃性とともに、すぐれた機械物性、流動性を示すので、電線や通信線の被覆材、自動車内装材、建材その他の難燃性が求められる用途に好適に使用することができる難燃性樹脂組成物である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら制限されるものではない。
実施例及び比較例において使用した原料は、以下のとおりである。
【0034】
(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA−1):酢酸ビニル含有量=46質量%、MFR=0.5g/10分。
(2)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA−2):酢酸ビニル含有量=46質量%、MFR=0.7g/10分
(3)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA−3):酢酸ビニル含有量=46質量%、MFR=2.5g/10分
(4)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA−4):酢酸ビニル含有量=41質量%、MFR=0.4g/10分
(5)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA−5):酢酸ビニル含有量=33質量%、MFR=0.2g/10分。
(6)難燃剤−1:水酸化マグネシウム(協和化学工業株式会社製、銘柄名:キスマ5L)
(7)酸化防止剤:イルガノックス1010(チバスペシャルティケミカルズ社製)
【0035】
なお本発明において以下の諸物性は、下記の測定方法によって測定した。
(i)酢酸ビニル含有量
JIS K 7129(1999年)法に従って測定した。
(ii)メルトフローレイト(MFR)
JIS K 7210(1999年)法に従い、190℃、2,160g荷重で測定した。
【0036】
(iii)引張強さおよび伸び
JIS K 6760法に従い、JIS K 6301の3号ダンベルを用いて、1.0mm厚、引張速度200mm/minの条件で測定した。なお、引張強さおよび伸びは下記の式によって算出した(JIS K7161:1994参考)。
・引張強さ:次の式によって単位面積当りに換算する。
σ=F÷A
σ:引張強さ(MPa)
F:最大引張荷重(N)
A:試験片の断面積(mm)
・伸び:切断時における標線間の長さを測定し次の式で算出する。
ε=(L1−L0)÷L0×100
ε:伸び(%)
L1:切断時の標線間の長さ(mm)
L0:標線距離(mm)
【0037】
(iv)燃焼性
UL94垂直燃焼試験法に従った(スガ試験機社製)。尚、試料片の厚みは0.5mmとした。
【0038】
(実施例1)
エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA−1)を100重量部、難燃剤−1を200重量部および酸化防止剤0.2重量部を混練して、難燃性組成物を得た。得られた組成物の物性を測定して表1に示した。
【0039】
(実施例2)
実施例1において、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA−1)をエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA−2)に変えるほかは同様にして難燃性組成物を得た。得られた組成物の物性を測定して表1に示した。
【0040】
(実施例3)
実施例1において、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA−1)100重量部をエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA−1)70重量部とエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA−5)30重量部に変えるほかは同様にして組成物を得た。得られた組成物の物性を測定して表1に示した。
【0041】
(比較例1)
実施例1において、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA−1)をエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA−3)に変えるほかは同様にして組成物を得た。得られた組成物の物性を測定して表1に示した。
【0042】
(比較例2)
実施例1において、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA−1)をエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA−4)に変えるほかは同様にして組成物を得た。得られた組成物の物性を測定して表1に示した。
【0043】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明により、従来のエチレン−酢酸ビニル共重合体では達成が困難であった、0.5mmという薄膜でV−0という高い難燃性を達成し得るエチレン−酢酸ビニル共重合体、およびそれを含む難燃性樹脂組成物が提供される。
本発明は、薄膜でも高い難燃性を示すエチレン−酢酸ビニル共重合体、およびそれを含む難燃性樹脂組成物を提供するものである。
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いことにより、従来の難燃性組成物よりも少ない無機難燃剤で難燃効果を発揮する難燃性組成物が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸ビニル単位含有量(JIS K7129:1999法)が42〜47重量%であり、メルトフローレイト(JIS K7210:1999法、190℃、荷重2,160g)が0.3〜1.0g/10分であるエチレンと酢酸ビニルとの共重合体であって、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、水酸化マグネシウム200重量部と酸化防止剤0.2重量部を配合したコンパウンド樹脂としたときに、UL−94垂直燃焼試験法に従って0.5mm厚で測定した燃焼性がV−0であるエチレン−酢酸ビニル共重合体。
【請求項2】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体が、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはその混合物を架橋して得られたものであることを特徴とする請求項1に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体。
【請求項3】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体が、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、水酸化マグネシウム200重量部と酸化防止剤0.2重量部を配合したコンパウンド樹脂としたときに、引張強さ(JIS K6760法に準拠:但し、K6301の3号ダンベル 試料厚1mmを用い引張速度200mm/minにて測定)が5MPa以上であり、伸びが300%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部と金属水和物50〜300重量部とを含む難燃性樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−138125(P2008−138125A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327419(P2006−327419)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】