説明

エチレンアミン混合物の製造方法

本発明は、少なくとも2つのα−アミノニトリルをそれぞれ少なくとも5質量%含むアミノニトリル混合物を触媒の存在下、および場合により溶媒中で水素化するエチレンジアミン混合物の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒を用いたアミノニトリル混合物の水素化による、エチレンアミン混合物の製造方法に関する。生成するエチレンアミン混合物から、場合によりそれぞれのエチレンアミンを単離することができる。
【0002】
ニトリルを触媒の存在下で相応するアミンに水素化できることは、一般的に公知である。選択される反応パラメータ次第で、公知の方法は所望の生成物、例えば主生成物として第一級アミンと、副生成物として第二級アミン、および第三級アミンをもたらす。
【0003】
ニトリルの水素化によるアミンの製造方法についてはさらに、一定量のアンモニアが第一級アミンへの水素化の選択性を向上させ、かつ第二級、および第三級アミンの形成を抑制することが公知である。ただし、アンモニア存在下での水素化は、生成物流からの分離、後処理、および場合によりアンモニアの返送と結びついている、付加的な技術的コストの原因となる。これに加えて、水素化の際には比較的高い圧力が必要となることがある。と言うのも、アンモニアの分圧を考慮しなければならないからである。
【0004】
そこで、アミノアセトニトリル(AAN)の水素化により主生成物として、とりわけ洗剤、または洗浄添加剤として使用される錯形成剤、または漂白活性剤の合成のための出発物質である、エチレンジアミン(EDA)を製造することができる。同じようにイミノジアセトニトリル(IDAN)の水素化により、主生成物としてジエチレントリアミン(DETA)が得られる。しかしながら、AANもしくはIDANの水素化の際には、常にDETAもしくはEDAが副生成物として生じる。
【0005】
従来技術には、α−アミノニトリルであるアミノアセトニトリル(AAN)、およびイミノジアセトニトリル(IDAN)、またはβ−アミノニトリルを水素化するための方法が多数記載されている。これにより、β−アミノニトリルの水素化が一般的に問題なく進行することは公知だが、その一方でα−アミノニトリルの水素化は多数の欠点、例えばC−CN結合の、またはR2N−C結合の水素添加による分解と結びついている。Handbook of Heterogeneous Catalytic Hydrogenation for Organic Synthesis,213〜215p"は、β−アミノニトリルと比較して、α−アルキルアミノニトリルまたは環状のα−アミノニトリルを用いたα−アミノニトリルの水素化の問題点を指摘している。α−アミノニトリルの公知の安定性の問題はおそらく、なぜ今日までα−アミノニトリルのAANまたはIDANをEDA(エチレンジアミン)もしくはDETA(ジエチレントリアミン)に水素化することのみが、より正確に記載されているのかという主な理由である。しかしながらEDAまたはDETAは工業的には、以下に記載するEDC法、またはMEA法により製造される。しかしながら、より高級のα−アミノニトリルに対しては、相応する水素化が知られていない。
【0006】
DE−A3003729には、脂肪族のニトリル、アルキレンオキシニトリル、およびアルキレンアミノニトリルを、溶媒系の存在下でコバルト触媒またはルテニウム触媒を用いて第一級アミンへと水素化するための方法が記載されている。使用される溶媒系は、水とアンモニアの他にエーテルまたはポリエーテルを含む。原料として使用可能なアルキレンアミノニトリルまたはアルキレンオキシニトリルはそれぞれ、複雑な一般式により定義されている。とりわけ、相応するジアミンに水素化可能な具体的な化合物または例としては、エチレンジアミンジプロピオニトリル、(EDDPN、またN−N’−ビス(シアノエチル)−エチレンジアミンとも呼ばれる)、または3,3’−(エチレンジオキシ)−ジプロピオンニトリルが記載されている。しかしながらDE−A3003729は、個々の化合物、例えばAANの使用、またはシアノメチル置換基を有するEDA誘導体、例えばエチレンジアミンジアセトニトリル(EDDN)、またはエチレンジアミンモノアセトニトリル(EDMN)の使用については、示唆を開示していない。さらに最後に挙げたものは、この文献に記載のアルキレンアミノニトリルの一般的な定義には含まれない。
【0007】
EP−A0382508は、非環式脂肪族のポリニトリルを液相中でラネーコバルト触媒を用いて、好適には無水アンモニアの存在下で水素化することによる、非環式脂肪族ポリアミンのバッチ式の製造方法を記載している。この際、基本的に酸素不含の雰囲気中にラネーコバルト触媒を含む反応帯域に、ポリニトリル溶液を供給する。全反応時間の間に、ポリニトリルが反応帯域で水素と反応する最大速度以下の速度で、ポリニトリル溶液を供給する。さらに、体積量供給速度の測定に適した、反応パラメータKは公知である。記載されたこの方法は、ポリニトリル、例えばイミノジアセトニトリル(IDAN)、ニトリロトリアセトニトリル(NTAN)、または2もしくはそれ以上のシアノ基を有するさらなる化合物からの、ポリアミンの製造に限られている。しかしながら、シアノ基を1つ有する化合物の反応、例えばAANからEDAへの反応は、記載されていない。
【0008】
EP−A212986は、脂肪族ポリニトリルを原料流に含まれる液体状の第一級もしくは第二級アミンの存在下で、顆粒状のラネーコバルト触媒を用いて相応するポリアミンに水素化することができる、さらなる方法に関する。多数のさらなる第一級もしくは第二級アミンの他にとりわけ、不可避的に存在するアミノ成分EDAが記載されている。さらにこの文献は、IDANをDETAに水素化できることを具体的に開示している。
【0009】
DE−A1154121は、原料である青酸、ホルムアルデヒド、アンモニア、および水素を、触媒の存在下でいわゆるワンポット法(Eintopf−Verfahren)で反応させるエチレンジアミンの製造方法を記載している。アンモニアも水素も、等モル量で存在するさらなる原料である青酸とホルムアルデヒドに対してモル過剰量で使用する。従ってこの方法では、その場で形成されるAANを単離せず、直接水素とさらに反応させる。この方法の欠点は、所望の生成物(EDA)が非選択的に、相対的に少量で生じることである。
【0010】
US−A3,255,248は、好適にはニトロ基、N−ニトロソ基、イソニトロソ基、シアノ基、または芳香族で置換されたアミノ基を有する窒素−炭素の有機化合物を、コバルトまたはニッケルからなる焼結された触媒を用いて液相で相応するアミンへと水素化する方法を記載している。この際、原料を単独でまたは溶媒、例えば水、テトラヒドロフラン、メタノール、アンモニア、または形成される反応生成物の存在下、水素とともに触媒上を下方に細流させる。窒素原子に対して不飽和の化合物、例えばシアノ基を水素化する場合、反応の際にアンモニアが存在することが推奨される。このことはこの特許の実施例1で説明されており、水溶液の形態でのアミノアセトニトリルを液体状のアンモニアとともに、ただしその他の溶媒なしで焼結された触媒上を細流させるものである。
【0011】
EP−A1209146は、その都度ニトリルを、懸濁させ、活性化させた、アルミニウムからなる合金ベースのラネー触媒を用いて液相中で使用し、そしてアンモニア、および塩基性のアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の不存在下で反応させる、ニトリルから第一級アミンへの連続水素化のためのさらなる方法に関する。ニトリルとしては、他の多くのものに加えてAAN、IDAN、EDTN、EDDPN、またはエチレンジアミンモノプロピオニトリル(EDMPN)も相応するエチルアミンに反応させることができる。
【0012】
EP−B0913388は、ニトリル基を第一級アミンに反応させるための条件下、ニトリルと水素との接触をコバルトスポンジ触媒の存在下で反応させる、ニトリルの接触水素化のための方法に関する。コバルトスポンジ触媒は、事前に水酸化リチウムの触媒量で処理されており、かつこの方法は水の存在下で行う。ニトリルとして適しているのは、1〜30の炭化水素原子を有する脂肪族ニトリル、とりわけまたβ−アミノニトリル、例えばジメチルアミノプロピオニトリルである。相応するポリニトリルからのポリアミンの製造方法は、DE−A−2755687に開示されている。この方法では、タブレット状の水素化触媒を用いて、触媒の分解を防止する安定化剤の存在下で水素化を行う。ポリニトリルとしてはとりわけ、エチレンジアミンジプロピオニトリル(EDDPN)を使用することができる。安定化剤としてはとりわけ、EDAが適している。
【0013】
US−A2006/0041170は、TETA、とりわけTETA塩の製造方法、およびそれらの医薬品としての使用に関する。これらの多段階方法では、まずEDDNを製造する。引き続きEDDNをベンズアルデヒドと反応させて、(環状)イミダゾリジン誘導体を形成する。2つのシアノ基を有するこの環状化合物を、例えば水素との反応により還元し、この際相応する環状ジアミノ化合物が得られる。このジアミノ化合物を再び酸の存在下で加水分解し、相応するTETA塩が得られる。代替的な実施例においては、環状ジアミン化合物を同様にベンズアルデヒドと反応させて相応するジイミン化合物を形成し、この化合物を引き続き再び酸の存在下で加水分解し、相応するTETA塩が得られる。さらなる代替的な方法としてこの文献には、EDDNと、Boc保護基(第三級ブトキシカルボニル基)との反応が記載されている。この際得られる、Boc保護基で二度保護されたEDDN誘導体を引き続き水素化し、相応する保護されたTETA誘導体を得る。Boc保護基の除去は酸性の加水分解により行い、相応するTETA塩が得られる。US−A2006/0041170に記載されている方法の欠点はとりわけ、水素化を行うためには使用する原料EDDNをまず化学的に誘導しなければならないという、多段階の水素化方法であることである。さらに不利なのは、まずTETAが塩として生じ、かつ遊離塩基形態では生じないことである。
【0014】
しかしながら、より高級のエチレンアミン、例えばトリエチレンテトラアミン(TETA)、またはテトラエチレンペンタアミン(TEPA)を、相応するα−アミノニトリルの直接の水素化により製造することは、これまで記載されていない。より高級のエチレンアミン、例えばTETAまたはTEPAは、(工業的には)他の方法で製造される。
【0015】
EP−A222934は、強塩基を添加して隣接するジハロアルカンを過剰量のアンモニアと水相で反応させ、この際、イミンの中間生成物が形成され、この生成物を引き続きアルキレンポリアミンと反応させてより高級のアルキレンポリアミンを形成させることによる、より高級のアルキレンポリアミンの製造方法に関する。隣接するジハロアルカンとして適しているのはとりわけ、エチレンジクロリド(EDC、または1,2−ジクロロエタン)である。アルキレンポリアミンとしてはとりわけ、エチレンジアミン、またはより高級のエチレンアミン、例えばDETA、またTETAとTEPAを使用する。この方法(EDC法)では、様々なエチレンアミンの混合物(線状のエチレンアミン、例えばEDA、DETA、TETA、TEPA、またはより高級のエチレンアミン、ならびに環状の誘導体、例えばピペラジン(Pip)またはアミノエチルピペラジン(AEPip))が生じる。どのエチレンアミンを原料であるEDCとNH3に添加するかによって、反応混合物はより高級のエチレンアミンの相応する含分を含む。例えばTEPAを適切に製造すべき場合、原料であるEDCとNH3にエチレンアミンTETAを添加する。しかしながらこの方法で生成物(エチレンアミン混合物)は、TEPAの比較的高い含分を含むが、また前述のさらなる線状の、ならびに環状エチレンアミンも含む。この方法の欠点はとりわけ、低い選択性で進行すること(エチレンアミン混合物が得られる)、およびまず特別なエチレンアミン(例えばDETA)を製造しなければならない(このエチレンアミンを引き続き方法に導入して、一段階高級のエチレンアミン(例えばTETA)を適切に製造するか、もしくはその収率を高める)ことである。しかしながらこの方法は、使用する原料(ハロゲンアルカン)と生成する塩酸が原因で腐蝕の問題、ならびに生成する塩が原因で環境問題をもたらす。
【0016】
US−A3,462,493は、少なくとも5倍のモル過剰量のEDAを、エチレンジクロリド、またはエチレンジブロミドと反応させる、TETAの製造方法に関する。この際に副生成物として生じるのはとりわけ、Pip、またはピペラジノエチルエチレンジアミンである。
【0017】
DE−T68911508は、線状に延長されたポリアルキレンポリアミン、例えばTETAの代替的な製造方法に関する。この方法では、二官能性の脂肪族アルコールを、タングステン含有触媒の存在下でアミン反応体と反応させる。二官能性脂肪族アルコールとして適しているのはとりわけ、モノエタノールアミン(MEA)であり、アミン反応体としては例えばEDA、またはDETAを使用することができる。この方法により基本的、線状に延長されたポリアルキレンポリアミンから成る混合物(エチレンアミン混合物も)が得られる。このエチレンアミン混合物中には、エチレンアミンのDETA、TETA、TEPA、Pip、AEPip、またはより高級のエチレンアミンのピペラジン誘導体が含まれており、この際それぞれの成分の含分は、使用するアミン反応体により変わる。アミン反応体としてDETAを使用する場合、TETAとTEPAの含分が高いエチレンアミン混合物が得られる。この方法を用いる欠点は、この方法が低い選択性で進行する(得られるエチレンアミン混合物の成分に関して)ことであり、かつまず付加的なエチレンアミンを合成しなければならならず、これを二官能性の脂肪族アルコール(例えばMEA)と反応させることである。この際大量に副生成物、例えばアミノエチルエタノールアミン(AEEA)、またはより高級のヒドロキシ基含有エチレンアミンが生じるが、これらは商業的に重要ではない。副生成物が比較的大量に生じるのは、MEAもしくはより高級のエタノールアミン(例えばAEEA)が、使用されるアミンとではなく、自身と反応し得るからである。(統計学的な)多数の反応混合物の可能性により、線状のTETAに対する選択性は、併産物が原因で非常に低く、かつ制御不能である。この合成は、部分的な反応でのみ可能である。
【0018】
エチレンアミンの製造方法の概観をもたらすのは、SRI−Report"CEH Product Review Ethyleneamines"; SRI International, 2003; 53−54pであり、ここでは上記記載の方法に相応して(原料EDCまたはMEAを用いて)、とりわけEDAまたはDETAを製造する。この際、より高級のエチレンアミン、例えばTETAまたはTEPAが副生成物として生じるか、もしくは原料とEDAまたはDETAとの新たな反応によりより高い収率が得られる。
【0019】
従って従来技術には、例えばAAN、IDAN、EDDN、またはその他のより高級のα−アミノニトリルを含むα−アミノニトリルの混合物も水素化できることはどこにも記載されていない。従来技術による方法はむしろ、個々の物質の水素化に限られている。
【0020】
従って本発明の課題は、エチレンアミン、例えばEDA、DETA、TETA、TEPA、またはPipを製造するための、簡便かつ低コストな方法を提供することである。この際、エチレンアミンの比を変えることができ、その都度高い選択性で高い反応率が得られるのが望ましい。
【0021】
この課題は、少なくとも2つのα−アミノニトリルをその都度少なくとも5質量%含むアミノニトリル混合物を触媒の存在下、および場合により溶媒の存在下で水素化する、エチレンアミン混合物の製造方法により解決される。本発明の範囲において水素化とは、アミノニトリル混合物と水素との反応を意味する。
【0022】
本発明の範囲において"α−アミノニトリル"という言葉は、少なくとも1のシアノメチルアミノ基(−NH−CH2−CN)を含むあらゆる炭化水素含有化合物と理解されるべきである。好適にはα−アミノニトリルは、付加的に少なくとも1のエチレン基、さらなるシアノ基、および/または少なくとも1のさらなる第一級、第二級、または第三級アミノ基を含む。AANは同様に、好ましいアミノニトリルである。
【0023】
好ましいα−アミノニトリルは、アミノアセトニトリル(AAN)、イミノジアセトニトリル(IDAN)、エチレンジアミンジアセトニトリル(EDDN)、エチレンジアミンモノアセトニトリル(EDMN)、ジエチレントリアミンジアセトニトリル(DETDN)、ジエチレントリアミンモノアセトニトリル(DETMN)、ピペラジニルエチルアミノアセトニトリル(PEAN)、アミノエチルピペラジニルアセトニトリル(AEPAN)、およびシアノメチルピペラジニルエチルアミノアセトニトリル(CMPEAN)から選択されている。アミノニトリル混合物中に含まれていてもよいさらなるα−アミノニトリルは例えば、ニトリロトリスアセトニトリル(NTAN)、およびジエチレントリアミントリアセトニトリルである(DETTN)。
【0024】
説明のために、上記のアミノニトリルに対して、以下にそれらの化学構造式が記載されている:
【化1】

【0025】
特に好ましいα−アミノニトリルは、AAN、IDAN、EDDN、EDMN、DETDN、またはDETMNから選択されている。
【0026】
本発明の範囲において"エチレンアミン"という言葉は、少なくとも1のエチレンジアミンフラグメント(−NH−CH2−CH2−NH−)を含むあらゆる炭化水素含有化合物と理解されるべきである。好適にはこれらのエチレンアミンは、付加的に少なくとも1のさらなるエチレン単位と、さらなる第一級、第二級、または第三級のアミノ基とを含む。EDAは同様に、好ましいエチレンアミンである。本発明の範囲においてエチレンアミンとは、環状化合物、例えばピペラジン(Pip)、ならびにピペラジンの誘導体でもあると理解されるべきである。
【0027】
本発明による方法において、主生成物または副生成物としてエチレンアミン混合物に含まれていてよいエチレンアミンは、
【化2−1】

【化2−2】

【化2−3】

から選択されている。
【0028】
好ましいエチレンアミンは、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサアミン(PEHA)、ピペラジン(Pip)、またはアミノエチルピペラジン(AEPip)から選択されている。
【0029】
特に好ましいエチレンアミンは、EDA、DETA、TEPA、またはTETAである。
【0030】
念のために述べておくが、先に図で示したエチレンアミンのうち、化合物(VI)はピペラジンエチルエチレンジアミン(PEEDA)と、化合物(VII)はジアミノエチルピペラジン(DAEPip)と、化合物(X)はアミノエチルピペラジンエチルエチレンジアミン(AEPEEDA)と、および化合物(XIII)はイソ−ペンタエチレンヘキサアミン(IPEHA)と呼ばれる。
【0031】
本発明による方法は、線状のエチレンアミン、とりわけEDA、DETA、TETA、またはTEPAを高い反応率、および/または高い選択性で製造することができるという利点を有する。高められた選択性はとりわけ、例えば使用するAANを主にEDAに、または使用するEDDNを主にTETAに水素化することにおいて示される。従って公知のTETA、またはTEPAの製造方法と比較して、所望の主生成物(TETAまたはTEPA)を高い収率、および高い選択性に加えて適切に製造することができる。この際形成される副生成物は、さらなる線状の、または環状のエチレンアミンであってよい。環状エチレンアミンの含分は、本発明による方法では比較的少ない。しかしながらこれらの副生成物は、一部同様に重要な有用生成物であり、これらの単離は例えば大規模工業的な方法において価値がある。アミン成分とホルムアルデヒドシアンヒドリン、もしくはホルムアルデヒドと青酸の適切な組成により、ならびに幾つかのアミン成分の返送により、本発明による方法では生成物混合体を市場の要求に適合させることができる。
【0032】
有利な方法では、使用するα−アミノニトリル、例えばAAN、IDAN、またはEDDNを完全に、またはほぼ完全に反応させる。これはとりわけ、大規模工業的な方法において重要である。と言うのも、未反応の原料は通常、製造循環に返送するか、もしくは処理しなければならないからである。比較的大量のα−アミノニトリルが反応しない方法は、α−アミノニトリルの非安定性が高いため非常に不利である。これに対して一方ではAAN、IDAN、またはEDDNも比較的高い温度で分解する傾向があり、その結果分解生成物はそれぞれの循環に返送することができず、他方この分解は爆発的な激しさをも伴って進行しうる。また、分解の際に放出される青酸は、触媒消費量を明らかに増加させ得る。本発明による方法では、アミノニトリルを完全に反応させることができるため、製造サイクルへの返送に関して苦労する必要が無い。
【0033】
本発明による方法のさらなる利点は、EDC法とは異なり、塩化炭化水素を原料として使用しなくてよいことにある。その上、塩酸もしくはこれらの塩がさらなる反応生成物として生じない。前記物質の処理は、とりわけ大規模工業的な方法では(環境)問題である。MEA法と比べて有利には、様々な原料のお陰でAEEAの形成、ならびにヒドロキシ官能基を有するさらなる化合物の形成が問題ではなくなる。同様に有利には、本発明による方法は連続的に行うことができる。
【0034】
個々の成分を別々の運転稼働で、もしくは別々の方法で製造することに代えて、エチレンアミン混合物の利点は、水素化においてアンモニアの計量供給を行なわずにすむことである。従来技術に従ったエチレンアミンの適切な製造の場合は通常、アンモニアまたは他の添加剤を第二級アミンの抑制のために添加する。本発明によるエチレンアミン混合物の合成においては、ダイマー化の抑制は必要とならない。と言うのも、生成物混合体のダイマーは、有用生成物だからである。従って例えば、ダイマー化はEDAからDETAへと、またはEDAとTETAからTEPAへと進む。
【0035】
本発明による方法では基本的にエチレンアミン混合物が生じるという事実にもかかわらず、連続的な単離により主成分、例えばEDA、DETA、TETA、またはTEPA、および場合により、副生成物として生じるさらなるエチレンアミンが得られる。アミノニトリルのAANまたはIDANをその都度別々に水素化する従来の方法では、基本的に常にDETA、EDAもしくはさらなるエチレンアミン(その都度使用する原料次第で)が副生成物として生じる。従って、その都度適切なエチレンアミン合成に引き続いて一般的には、相応する主生成物から副生成物を分離するための本発明による方法と同一の精製工程が必要となる。従って、個々の方法でその都度生じる副生成物(例えばDETAもしくはEDA)の分離方法は、基本的に本発明による方法で生じる主生成物(例えばEDAとDETA)の単離方法と異なることなく、分離すべきEDAもしくはDETAの量のみが様々である。運転稼働方法(Kampagnenfahrweise)においてはさらにまた、非連続的な運転方法のみが考慮され、これは所望の量が原因で現実的ではない。連続的な方法では、装置の除去、および配置換えを受け入れなければならない(装置利用可能性の減少、精製コスト、生成物損失、人的なコストなど)。また市場の要請のために、相応する貯蔵性がなければならない。
【0036】
同様に、市場の要請に従いより高い、または低いEDA、DETA、TETA、またはTEPAの、もしくはさらなるエチレンアミンの割合をエチレンアミン混合物中に製造できることは、有利と評価することができる。有利な方法では、本発明による方法を連続的に実施する。このことは例えば、生成物中の原料IDAN対AANの比、またはEDDN対AANの比が、DETA対EDA、またはTETA対EDAに関して生成物中に反映されることに基づく。従って本発明による方法では、市場で所望の量比を提供するために、特定のアミノニトリル混合組成物を適切に使用することができる。
【0037】
最適な運転条件は、水素化の際の、それぞれのアミノニトリルにより明らかに異なり得る。しかしながら本発明によるアミノニトリル混合物の水素化の場合、調整すべき運転条件は組成に従ってわずかに異なるのみであり、このことにより容易に最適化できる。従って使用する機械と装置の順応性は、僅かな程度で、例えば通常市販の装置に備わっている標準的な程度でしか必要とならない(例えばポンプの輸送能力、熱交換器の稼働温度、装置の圧力設定など)。
【0038】
例えばDETAの、または場合によりさらなるエチレンアミンの別々の製造と比較して、本発明によるアミノニトリル混合物(とりわけAANを含むもの)の水素化のさらなる利点は、それらの触媒の錯化率が高いことである。このことから生じる製造阻害は、より遅い水素化速度という結果をもたらす。EDAの製造の際に製造阻害は明らかに少なくなり、その結果、AANのより高い水素化速度が可能になる。IDANの、または場合によりさらなるアミノニトリル中のIDANの水素化を、本発明による方法のように少なくとも5質量%のAANの存在下で行う場合、相応するエチレンアミンの製造阻害が低減されている。従って、得られるアミノニトリル混合物に対して、その都度の成分の空時収率が、各成分の相応する水素化の場合よりも大きくなるか、あるいは混合物の水素化を明らかにより低い圧力で行うことができる。
【0039】
本発明による方法は、原料としてアミノニトリル混合物から出発する。アミノニトリル混合物は少なくとも2つのα−アミノニトリルを含み、この際少なくとも2のこれらのα−アミノニトリルは、アミノニトリル混合物中に少なくとも5質量%含まれている。すなわち本発明による方法の範囲においては、例えば5つの異なるα−アミノニトリルを含むアミノニトリル混合物とも理解されるが、しかしながらこの際、これらのアミノニトリルの2つだけが、アミノニトリル混合物中に少なくとも5質量%含まれており、その一方で残り3つのα−アミノニトリルは5質量%未満含まれていてよい。場合により、付加的にまたさらなるアミノニトリル、例えばβ−アミノニトリルがアミノニトリル混合物中に含まれていてよい。アミノニトリル混合物中に含まれる個々のアミノニトリルに関する前述の、ならびに後述の質量パーセント表示は、混合物中に含まれる個々のα−アミノニトリルの全質量に対するものである。場合により存在する溶媒(水もしくは有機溶媒)、またはさらなる添加剤は、この量の表示においては考慮されていない。全量的な量の表示とは、アミノニトリル混合物中に含まれるα−アミノニトリルの合計が100質量%を越えないことと理解されるべきである。
【0040】
本発明の好ましい実施態様においてアミノニトリル混合物は、その都度アミノニトリル混合物中に少なくとも10質量%含まれている少なくとも2つのα−アミノニトリルを含む。さらなる好ましい実施態様においては、アミノニトリル混合物中に少なくとも2つのアミノニトリルが少なくとも10質量%、かつ少なくとも1のさらなる、好適には2つのさらなるアミノニトリルが(その都度)少なくとも5質量%含まれている。さらに好ましくは、AANが少なくとも5質量%、好適には少なくとも10質量%、アミノニトリル混合物中に含まれている。
【0041】
本発明の実施態様においては、成分a)〜d)までの少なくとも2つを、
a)AAN 10〜75質量%、
b)IDAN、EDMN、またはこれらの混合物 10〜50質量%、
c)EDDN、DETMN、またはこれらの混合物 10〜70質量%、
d)DETDN 5〜50質量%、および
e)PEAN、AEPAN、CMPEANまたはこれらの混合物 0〜10質量%
で含むアミノニトリル混合物を水素化する。
【0042】
本発明のさらなる実施態様においては、AANを少なくとも5質量%、好適には少なくとも30質量%、およびIDANを少なくとも5質量%、好適には5〜50質量%含むアミノニトリル混合物を水素化する。
【0043】
本発明のさらなる実施態様においては、EDDNを少なくとも5質量%、好適には少なくとも30質量%、およびEDMNを少なくとも5質量%、好適には5〜50質量%含むアミノニトリル混合物を水素化する。
【0044】
本発明のさらなる実施態様においては、DETDNを少なくとも5質量%、好適には少なくとも30質量%、およびDETMNを少なくとも5質量%、好適には5〜50質量%含むアミノニトリル混合物を水素化する。
【0045】
一般的には、先に述べたあらゆる種類/品質のα−アミノニトリル、例えばAAN、IDAN、EDMN、EDDN、DETMN、またはDETDNを使用することができる。場合により、相応するアミノニトリルを水溶液、またはアンモニア水溶液の形で使用することもできる。例えばAAN、またはIDANの製造方法は、当業者に公知である。好適にはAANおよび/またはIDANを、NH3とホルムアルデヒドシアンヒドリン(FACH)との反応により製造する。
【0046】
同様に当業者には、EDDNまたはEDMNの製造方法は公知である。これについては、K.Masuzawa et al.,Bull.Chem.Soc.Japan, 41巻(1968),702−707ページ;H.Brown et al.,Helvetica Chimica Acta,43巻(1960),659−666ページ、およびH.Baganz et al.,Chem.Ber.,90(1957),2944−2949ページを参照。好適にはEDA対FACHのモル比は1:1.5〜1:2(mol/mol)である。EDDNの、またはEDDNとEDMNとを含む混合物の新規の製造方法は、本発明の出願人により同時に出願される。
【0047】
DETDNとDETMNは、今日まで未だ文献に記載されていない、新規の化合物である。DETDNの、もしくはDETDNとDETMNとを含む混合物の製造方法は、本発明の出願人により同時に出願される。
【0048】
DETDNは、好適にはDETAとFACHとの反応により製造する。好適には、DETA対FACHのモル比は1:1.5〜1:2(mol/mol)である。より好ましくは、DETA対FACHのモル比は1:1.8〜1:2(mol/mol)である。DETAおよびFACHの製造法は、当業者に公知である。好適には本発明による方法においてDETAを遊離塩基の形で使用するが、しかしながら場合により塩、例えばDETAのジヒドロクロリドを原料として使用することもできる。好適にはDETDNの製造は溶媒中で、とりわけ水の存在下で行う。DETMNは、DETDN製造と比較して、DETAに対してFACHのモル含分を相応に低下させることにより製造することができる。
【0049】
PEAN、AEPANおよびCMPEANは同様に、今日まで未だ文献に記載されていない、新規の化合物である。これら3つの環状アミノニトリルは、個別に、または混合物としてAEPipとFACHとの反応の際に生じる。AEPipとFACHとの反応条件は基本的に、先に記載したDETAとFACHに対する反応条件に相応する。好適にはAEPip対FACHのモル比は、1:1.5〜1:2(mol/mol)である。
【0050】
基本的には、アミノニトリル混合物中に含まれる個々のα−アミノニトリルを相互に別々に合成し、かつ本発明による方法における使用前に相応する量で一つにまとめてアミノニトリル混合物にする。場合により、個々の、もしくはすべてのα−アミノニトリル、例えばAANとIDAN、EDDNとEDMN、またはDETDNとDETMNを一緒に合成することもできる。アミノニトリル混合物中に必要となる、アミン成分の適切な使用による濃度量は、場合により相応するα−アミノニトリルの添加により、相応する濃度上昇、および/または濃度低下により製造することができる。
【0051】
本発明の実施態様において、水素化生成物DETA、EDA、および/またはAEPipを完全に、または部分的に返送する。返送する水素化生成物DETA、EDA、および/またはAEPipを、一緒に、または個別にFACHと反応させ、この際に好適にはα−アミノニトリルであるDETDN、および/またはDETMN(DETAの返送)、EDDN、および/またはEDMN(EDAの返送)、またはPEAN、AEPAN、および/またはCMPEAN(AEPipの返送)が得られる。この方法で製造するα−アミノニトリルは、再度水素化に供給する。どの水素化生成物DETA、EDA、および/またはAEPipをどの程度循環に供給するかにより、エチレンアミン混合物の個々の成分の、その都度の含分を制御することができる。
【0052】
本発明のさらなる実施態様においては、水素化の前に低沸点成分をアミノニトリル混合物から分離する。α−アミノニトリルの製造のためにFACHを使用する場合、低沸点成分の分離をFACHとNH3、EDA、DETAまたはAEPipとの反応の前に既に行っておくことができる。
【0053】
好適には低沸点成分として青酸(HCN)を分離する。好適にはこの分離を蒸留により、例えばサンベイ蒸留(Sambay Destillation)("Chemie Ingenieur Technik,27巻,257−261p")のような、例えば薄膜式蒸留の形で行う。場合により反応混合物を、窒素でストリッピングすることもできる。さらには、アミノニトリル混合物の水素化の前にまた、好適には蒸留により水の除去を行う。同様に吸着剤、例えば活性炭またはイオン交換体を用いた不純物の吸着も可能である。
【0054】
アミノニトリル混合物がAANを5質量%未満含む本発明による方法の実施態様においては、水素化を溶媒の存在下、例えば有機溶媒、および/または水の存在下で行う。しかしながら、有機溶媒(不活性の有機化合物)の、および/または水の(付加的な)使用は有利であると実証されている。と言うのも、とりわけ有機溶媒の使用により、アミノニトリル混合物の各成分の安定化を、とりわけ生成するアミンの存在下で達成することができるからである。さらには溶媒の使用により、使用する触媒の洗浄効果が得られ、このことによりその耐用期間を向上させ、もしくはその消費を低下させ(より長い触媒寿命)、かつ触媒負荷量を改善することができる。
【0055】
1つ以上の成分を含むことができる適切な溶媒は、好ましくは以下の特性を有するのが望ましい:
(a)溶媒は、アミノニトリル混合物の成分に対して安定的に作用するのが望ましく、とりわけ存在する温度においてAANまたはIDANの分解を減少させるのが望ましい。
【0056】
(b)溶媒は、良好な水素溶解性を示すのが望ましい。
【0057】
(c)溶媒は、反応条件において不活性であるのが望ましい。
【0058】
(d)反応混合物(アミノニトリル混合物ならびに溶媒)は、反応条件下で一相であるのが望ましい。
【0059】
(e)溶媒選択は好ましくは、水素化に引き続いた生成物流からの生成物の蒸留分離の観点から行うのが望ましく、この際、エネルギー的に、または装置的にコストのかかる分離(例えば高沸点性(engsiedend)の混合物、または分離するのが難しい共沸混合物)を避けることができる。
【0060】
(f)溶媒は、生成物と良好に分離可能であるのが望ましい、すなわち溶媒の沸点は生成物の沸点と充分に異なるのが望ましい。この際、生成物の沸点より低い沸点であるのが好ましい。
【0061】
可能な溶媒は、有機溶媒、例えばアミド、例えばN−メチルピロリドン(NMP)、およびジメチルホルムアミド(DMF)、芳香族の、および脂肪族の炭化水素、例えばベンゼンおよびキシレン、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二級ブタノール、および第三級ブタノール、アミン、例えばエチレンアミン、アルキルアミン、アンモニア、エステル、例えば酢酸メチルエステル、または酢酸エチルエステル、およびエーテル、例えばジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、グリコールジメチルエーテル、ジグリコールジメチルエーテル、ジオキサン、およびテトラヒドロフラン(THF)である。好ましくは本発明による方法ではエーテルを使用し、より好ましくは環状エーテルを、そして特に好ましくはテトラヒドロフランを使用する。さらに好ましい実施態様においては、アルコール、とりわけメタノールを有機溶媒として使用する。
【0062】
溶媒は、使用するアミノニトリル混合物に対して質量比で0.1:1〜15:1で使用する。水素化を行う溶液中のアミノニトリル混合物の濃度は、適切な供給速度もしくは滞留時間を調整できるように選択するのが望ましい。好ましくは、アミノニトリル混合物10〜50質量%を溶媒と混合する。特に好ましい溶媒であるメタノールもしくはテトラヒドロフランについては例えば、溶媒に対して20〜40質量%のアミノニトリル混合物を使用することが有利である。
【0063】
水が存在する場合、溶液中の水含分は0〜70質量%の範囲、好適には10〜50質量%の範囲である。この際、水の量の記載はアミノニトリル−水混合物に対する。
【0064】
水素化を行う溶液には場合により、付加的な添加剤が含まれていてよい。添加剤としては基本的に、水酸化物、例えばアルカリ金属水酸化物、アルコラート、アミド、アミン、ならびに場合によりアンモニアが考慮される。好適には添加剤としてはアミン、例えばEDAとアンモニア、とりわけEDAが適している。さらにまた、酸性の添加剤、例えばケイ酸塩が、溶液中に付加的に含まれていてよい。これらの物質は、純物質として、または溶媒中に溶解させて添加することができる。EDDN、EDMN、DETDN、またはDETMNがアミノニトリル混合物中に少なくとも5質量%含まれている場合、本発明による方法は好適には、添加剤を加えて行う。
【0065】
本発明の好ましい実施態様においては、アミノニトリル混合物の水素化を、EDAの存在下で行う。より高級の、とりわけ線状のエチレンアミン(例えばTETA、および/またはTEPA)について高選択性、および/または高反応率を達成するためには、相応するアミノニトリルの水素化をEDAの存在下で行う。さらなる添加剤の添加は必要ではないが、これらを同様に添加してもよい。相応するアミノニトリル混合物がAANを含む場合、水素化の際に生じるEDAのお陰で、EDAのさらなる添加または返送は必要ではない。
【0066】
さらなる実施態様においては、AANを含むアミノニトリル混合物の水素化の際に、AAN合成に由来する、水に溶解したアンモニアが存在する。アンモニアのこの過剰量を水素化に移送し、そして場合により縮合反応により生じるアンモニアと一緒に水素化に引き続いて除去することができる。これらの少量のアンモニアは、系内の原圧に対して目立った影響を与えない。
【0067】
アンモニアがなお原料中に、もしくは場合により用いる水溶液に溶解されている、もしくは副生成物として水素化の際に放出される場合、これは妨げとはならない。場合により存在するアンモニアは、当業者に公知の方法、例えば蒸留により除去することができる。
【0068】
ニトリル官能基のアミンへの水素化のための触媒として、活性種として周期表の第8副族(Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)の1つ以上の元素、好ましくはFe、Co、Ni、RuまたはRh、特に好ましくはCoまたはNiを含む触媒を使用することができる。その中に含まれているのは、いわゆる骨格触媒(Raney(登録商標)型とも呼ばれる:以降ラネー触媒)であり、これらは水素化活性金属およびさらなる成分(好ましくはAl)から成る合金の溶出(活性化)によって得られる。該触媒は、付加的に1つ以上の助触媒を含んでいてよい。好ましい実施態様においては、本発明による方法でラネー触媒を使用し、好ましいのはラネーコバルト触媒またはラネーニッケル触媒、および特に好ましくは少なくとも1のCr、Ni、またはFe元素でドープしたラネーコバルト触媒、またはMo、Cr、またはFe元素でドープしたラネーニッケル触媒である。
【0069】
該触媒は、完全触媒または担持触媒として使用することができる。担体として、好ましくは金属酸化物、例えばAl23、SiO2、ZrO2、TiO2、金属酸化物の混合物または炭素(活性炭、カーボンブラック、グラファイト)が用いられる。
【0070】
該酸化物触媒は、使用前に反応器の外または反応器中で、水素を含むガス流中での活性金属酸化物の還元によって、高められた温度で活性化させる。触媒が反応器の外で還元される場合、その後、酸素を含有するガス流による不動態化または不活性材料中への埋め込みを行ってよく、そうして空気中での未制御の酸化が回避され、かつ安全な操作が可能となる。不活性材料としては、有機溶媒、例えばアルコール、およびまた水、または1つのアミン、好ましくは反応生成物を使用することができる。活性化の際の例外は骨格触媒であり、該触媒は例えばEP−A1209146に記載されているような水性塩基による溶出によって活性化することができる。
【0071】
実施方法(懸濁水素化、流動床法、固定床水素化)に従って、該触媒を粉末、破片状または成形体(好ましくは押出成形体、またはタブレット)として使用する。
【0072】
特に好ましい固定床触媒は、EP−A1742045に開示されている、Mn、Pおよびアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)でドープされたコバルト完全触媒である。これらの触媒の触媒活性組成物は、水素による還元前に、それぞれ酸化物として計算して、コバルト55〜98質量%、とりわけ75〜95質量%、リン0.2〜15質量%、マンガン0.2〜15質量%およびアルカリ金属、とりわけナトリウム0.05〜5質量%から成る。
【0073】
さらなる適切な触媒は、EP−A963975に開示されている触媒であり、該触媒の触媒活性組成物は水素による処理前に、ZrO222〜40質量%、CuOとして計算された銅の酸素含有化合物1〜30質量%、NiOとして計算されたニッケルの酸素含有化合物15〜50質量%(この際、Ni:Cuのモル比は1より大きい)、CoOとして計算されたコバルトの酸素含有化合物15〜50質量%、Al23もしくはMnO2として計算されたアルミニウムおよび/またはマンガンの酸素含有化合物0〜10質量%を含み、かつモリブデンの酸素含有化合物を含まない触媒、例えば、この文献中で開示される、ZrO2として計算されたZr33質量%、NiOとして計算されたNi28質量%、CuOとして計算されたCu11質量%およびCoOとして計算されたCo28質量%の組成を有する触媒Aである。
【0074】
さらに適しているのは、EP−A696572の中で開示されている触媒であり、該触媒の触媒活性組成物は水素による還元前に、ZrO220〜85質量%、CuOとして計算された銅の酸素含有化合物1〜30質量%、NiOとして計算されたニッケルの酸素含有化合物30〜70質量%、MoO3として計算されたモリブデンの酸素含有化合物0.1〜5質量%、およびAl23もしくはMnO2として計算されたアルミニウムおよび/またはマンガンの酸素含有化合物0〜10質量%を含む。それは例えば、この文献中で具体的に開示される、ZrO231.5質量%、NiO50質量%、CuO17質量%およびMoO31.5質量%の組成を有する触媒である。同様に適しているのは、WO−A99/44984で記載されている、(a)鉄、または鉄をベースとする化合物またはこれらの混合物、(b)(a)に対して0.001〜0.3質量%の、Al、Si、Zr、Ti、Vの群から選択された2、3、4または5つの元素をベースとする助触媒、(c)(a)に対して0〜0.3質量%のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属をベースとする化合物、ならびに(d)(a)に対して0.001〜1質量%のマンガンを含む触媒である。懸濁法に対しては、好ましくはラネー触媒を使用する。ラネー触媒の場合、活性触媒は二成分の合金(アルミニウムまたはケイ素を有するニッケル、鉄、コバルト)から酸またはアルカリを用いて一方のパートナーを溶出することにより「金属スポンジ」として製造される。当初の合金パートナーの残りがしばしば相乗作用する。
【0075】
本発明による方法において使用するラネーニッケル触媒は、好ましくはコバルトまたはニッケルから成る、特に好ましくはコバルトと、アルカリに溶解性のさらなる合金成分とからなる合金から出発して製造される。この溶解性の合金成分において、好ましくはアルミニウムを使用するが、他の成分、たとえば亜鉛およびケイ素、またはこれらの成分から成る混合物を使用することもできる。
【0076】
ラネー触媒の活性化のために、溶解性の合金成分を完全にまたは部分的にアルカリで抽出し、このために例えば水酸化ナトリウム水溶液を使用することができる。この触媒は、その後で例えば水または有機溶媒で洗浄することができる。
【0077】
触媒中には、1つの、またはそれ以上の他の元素が助触媒として存在していてもよい。助触媒の例は、周期表の副族IB、VIBおよび/またはVIIIの金属、例えばクロム、鉄、モリブデン、ニッケル、銅などである。
【0078】
溶解性の成分(一般にアルミニウム)の溶出による触媒の活性化は、反応器自体の中で行うか、または反応器中に充填する前に行うことができる。予め活性化された触媒は、空気敏感性および発火性であり、従って一般に媒体、例えば水、有機溶媒または本発明による反応の際に添加される材料(溶剤、出発材料、生成物)中で貯蔵および取り扱われるか、または室温で固体の有機化合物中に埋め込まれる。
【0079】
本発明の場合により好ましくは、Co/Al合金からアルカリ金属水溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液を用いて溶出し、かつ次に水を用いて洗浄することにより得られ、かつ有利に助触媒として少なくとも元素Fe、Ni、Crの一つを含有するコバルト−骨格−触媒を使用する。
【0080】
このような触媒は一般に、コバルトの他になお、
Al 1〜30質量%、特にAl 2〜12質量%、殊にAl 3〜6質量%、
Cr 0〜10質量%、特にCr 0.1〜7質量%、殊にCr、0.5〜5質量%、とりわけCr 1.5〜3.5質量%、
Fe 0〜10質量%、特にFe 0.1〜3質量%、特に好ましくはFe 0.2〜1質量%、および/または
Ni 0〜10質量%、特にNi 0.1〜7質量%、特に好ましくはNi 0.5〜5質量%、とりわけNi 1〜4質量%を含み、
この際、この質量表示はそれぞれ触媒総質量に対する。
【0081】
本発明による方法における触媒として、例えば有利にはコバルト−骨格−触媒「Raney 2724」(W.R.Grace&Co.社)を使用することができる。この触媒は、次の組成を有する:
Al:2〜6質量%、Co:≧86質量%、Fe:0〜1質量%、Ni:1〜4質量%、Cr:1.5〜3.5質量%。
【0082】
同様に本発明に従って、Ni/Al合金からアルカリ金属水酸化物水溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液を用いて溶出し、かつ次に水を用いて洗浄することにより得られ、かつ好ましくは助触媒として元素Fe、Ni、Crの少なくとも一つを含むニッケル−骨格−触媒を使用する。
【0083】
このような触媒は通常ニッケルの他になお、
Al 1〜30質量%、特にAl 2〜20質量%、殊にAl 5〜14質量%、
Cr 0〜10質量%、特にCr 0.1〜7質量%、殊にCr 1〜4質量%、および/または
Fe 0〜10質量%、特にFe 0.1〜7質量%、殊にFe 1〜4質量%を含み、
この際に質量表示は、それぞれの触媒の総質量に対する。
【0084】
本発明による方法における触媒として、例えば有利には、Johnson Matthey社のニッケル−骨格−触媒A4000を使用することができる。
【0085】
該触媒は、以下の組成を有する:
Al≦14質量%、Ni≧80質量%、Fe1〜4質量%、Cr1〜4質量%。
【0086】
該触媒は、場合により低下させた活性および/または選択性で、例えばWO99/33561に、およびその中で引用されている文献に開示されている、当業者に公知の方法により再生することができる。
【0087】
触媒の再生は、もともとの反応器内で(その場で)、または触媒を除去して(その場所以外で)行うことができる。固定床法の場合、好ましくはその場で再生させ、懸濁法の場合には好ましくは触媒の一部を連続的に、または非連続的に取り除き、その場以外で再生させて、返送する。
【0088】
本発明による方法を実施する温度は、40〜150℃の範囲、好ましくは80〜140℃の範囲である。
【0089】
水素化の際に存在する圧力は一般的に、5〜300bar、好ましくは30〜250bar、特に好ましくは70〜160barである。
【0090】
好ましい実施態様においてはアミノニトリル混合物を、アミノニトリル混合物が水素化の際に水素と反応する速度以下の速度で水素化に供給する。
【0091】
この供給速度は好ましくは、ほぼ完全な反応率が達成されるように調整する。これは温度、圧力、混合物の種類、および触媒の量と種類、反応媒体の量と種類、反応内容物の混合レベル、滞留時間などに影響を受ける。
【0092】
本発明による方法において溶媒を使用する場合、溶媒をまずアミノニトリル混合物と完全に混合することができる。場合により添加剤も含むことができる生成溶液を、引き続き触媒を含む反応槽に供給する。連続的な方法の場合、溶媒の部分量を、アミノニトリル混合物と溶媒とを含む溶液とは別に、反応槽に加えることもできる。AANと少なくとも1のより高級のアミノニトリルから成る混合物を使用する、本発明による実施態様では、溶媒を完全に別に計量供給することも可能である。好ましい実施態様においては、水溶液としてのアミノニトリル混合物と、有機溶媒を別々に計量供給する。
【0093】
好ましい実施態様においては、溶液中に含まれるアミノニトリル混合物の供給を、水素化の際にアミノニトリル混合物が水素と反応する速度以下の速度で行う。
【0094】
場合により、例えばセミバッチ法の場合には、溶媒の一部を触媒と一緒に反応槽に装入することができ、これに溶液を計量供給する。
【0095】
アミノニトリル混合物の水素化による、本発明によるエチレンアミンの製造方法は、触媒反応に適した通常の反応槽内で、固定床法、流動床法、懸濁法で連続的に、半連続的に、または非連続的に行うことができる。水素化の実施に適しているのは、アミノニトリル混合物および触媒と、気体状の水素とを圧力下で接触させることが可能な反応槽である。
【0096】
懸濁法での水素化は、撹拌反応器、ジェットループ型反応器、ジェットノズル型反応器、泡鐘塔型反応器で、もしくは同一の、または異なる反応器のカスケードで行うことができる。固定床触媒を用いた水素化のためには、管型反応器も、管束型反応器も可能である。
【0097】
固定床触媒の場合、塔底法、または細流法でアミノニトリル混合物を衝突させる。ただし好ましくは、半連続的な運転方法、および好ましくは連続的な運転方法で懸濁法を使用する。
【0098】
ニトリル基の水素化は、熱を放出しながら起こり、通常この熱は排出しなければならない。この排熱は、組み込まれた伝熱面、冷却ジャケット、または外部にある熱交換器により、反応器周囲の循環内で行うことができる。水素化反応器、もしくは水素化反応器カスケードは、直線的な通路で延びていてよい。また反応器排出物の一部を、好ましくは循環流の予備的な後処理なしに反応器入口に返送する循環運転方式も可能である。こうして、反応溶液の最適な希釈を達成することができる。とりわけ、循環流は外部の熱交換器を用いて単純かつ低コストで冷却することができ、これにより反応熱を排出することができる。反応器は断熱式に運転されてもよく、この際、反応溶液の温度上昇を、冷却された循環流により制限することができる。反応器自体は冷却する必要がないため、単純かつ低コストな構造様式が可能である。別の選択肢は、冷却された管束型反応器(固定床の場合のみ)である。また、両方の稼働方法の組み合わせも可能である。この際に好ましくは、固定床反応器を、懸濁反応器に後接続させる。
【0099】
本発明による方法により、主成分として少なくとも2つのエチレンアミン、好適には少なくとも2つの線状エチレンアミンを含むエチレンアミン混合物が得られる。その都度のエチレンアミン混合物の組成は、使用する原料(α−アミノニトリル)に大きく依存する。例えば主成分としてAANとIDANを含むアミノニトリル混合物を水素化する際には、基本的に原料の比が、水素化後の相応する生成物EDAとDETAに反映される。しかしながら水素化条件に従って、AANからさらなるDETAを形成することができる。これにより、生成するアミン混合物のDETA含分を1〜10質量%高めることができる。また、2つ以上のα−アミノニトリルもしくはさらなるα−アミノニトリルを含む混合物に対しても、同様のことが当てはまる。
【0100】
好適には、水素化後エチレンアミン混合物中に、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサアミン(PEHA)、ピペラジン(Pip)、アミノエチルピペラジン(AEPip)、ピペラジンエチルエチレンジアミン(PEEDA)、またはジアミノエチルピペラジン(DAEPip)から選択された、少なくとも1つの、とりわけ少なくとも2つのエチレンアミンが含まれている。
【0101】
水素化に引き続き、得られる生成物(エチレンアミン混合物)を、例えば場合により使用する溶媒、および/または触媒を当業者に公知の方法で分離することによって、場合によりさらに精製することができる。とりわけ、主生成物(例えばEDA、DETA、TETA、またはTEPA)は、一緒に、またはそれぞれ当業者に公知の方法に従ってエチレンアミン混合物から単離することができる。主生成物を、例えば蒸留により一緒に単離する場合、これらを引き続き両方の個々の生成物に単離することができる。こうして最後に、純粋なEDA、純粋なDETA、純粋なTETA、ならびに純粋なTEPAが得られる。その他の不純物または副生成物、例えば環状エチレンアミン(例えばPip)は、同様に当業者に公知の方法でエチレンアミン混合物から分離することができる。場合により、TETAもまたピペラジン誘導体DAEPip、および/またはPEEDAと一緒に"工業用TETA"として単離することができる。
【0102】
既に先に記載したように、本発明の実施態様では、成分a)〜e)の少なくとも2つを相応する濃度表示で含むアミノニトリル混合物を水素化することができる。
【0103】
好ましい実施態様においては、成分a)〜e)を、
a)30〜70質量%、b)15〜50質量%、c)5〜25質量%、およびd)5〜25質量%、e)0〜5質量%で含むアミノニトリル混合物を水素化する。
【0104】
成分a)〜e)の正確な組成は、市場の要請により形成される。この際、より高級のエチレンアミンの他に、主成分としてEDAが得られる。
【0105】
さらなる好ましい実施態様においては、TETAとTEPAがその都度主成分として得られる。EDAとDETAは並行的に、場合により再導入に必要な構成成分としてのみ製造する。従ってこの際、
a)5〜25質量%、b)10〜30質量%、c)25〜70質量%、およびd)5〜70質量%、e)0〜5質量%という範囲が得られる。
【0106】
しかしながら市場次第で、またさらなる範囲も可能である。
【0107】
好ましい実施態様においては本発明による方法を、溶媒としてテトラヒドロフラン、またはメタノールを使用して行う。水素化の際の温度は、好適には80〜140℃、圧力は好適には30〜250barである。好適には、水素化には付加的なアンモニア量を供給しない。
【0108】
以下の実施例により、本発明による方法を説明する。割合は、特に記載のない限り質量%で記載されている。導入される内部標準、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME)により、場合により形成される揮発性の分解成分の測定によって、生成物の定量化ができる。この定量化はガスクロマトグラフ(GC)を用いて行い、この際その都度取り出した試料に対して、均質化のためにメタノールを加える。
【0109】
実施例
ホルムアルデヒドシアンヒドリン
プロペラ撹拌機を有する6lの反応槽に、ホルムアルデヒド(30%)7000g(70mol)を装入し、そして水酸化ナトリウム溶液(1mol/l)でpH値を5.5に調整する。3時間以内に青酸1938g(71.4mol)を、撹拌機下部にある50℃に加熱したU字管を介して気体で供給し、この際反応温度は30℃に、そしてpH値は5.5に保つ。10分の後撹拌時間後、pH値を硫酸(50%)で2.5に調整する。低沸点成分、とりわけ青酸を分離するために、反応排出物をサンベイ蒸留(例えば"Chemie Ingenieur Technik,27巻,257−261pに記載)(1mbar、30℃)に供する。リービッヒ滴定により相応する含分を測定し、そして水の添加によりFACH含分を43.6%に調整する。
【0110】
実施例1:
前接続された混合機を有する管型反応器と、オートクレーブ内での引き続いた水素化から成る一体型の実験室用装置で、FACH、アンモニア、およびEDAから出発して20bar、かつ70℃でアミノニトリル混合物を製造し、これを引き続き、50bar、かつ120℃で水素化して相応するエチレンアミンにする。連続的にFACH137.3g/h(1.05mol/h)、アンモニア47.4g/h(2.8mol/h)、およびEDA20.9g/h(0.35mol/h)を管型反応器に送り、これはFACH:NH3:EDAが3:5:1の比に相応する。この反応排出物はAANを9.5質量%、およびEDDNを21質量%含み、これは使用するFACHに対してAAN33%の収率、およびEDDN60%の収率に相応する。アミノニトリルの総収率は、97%の総アミノニトリル選択性で93%である。
【0111】
反応排出物を放圧せずに20barで、内部標準のジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME)と混合する。一時間あたりこの混合物45gを、THF80gと水素20NLの存在下、流動障害物およびディスク型撹拌機を有する270mlのオートクレーブにおいて50barで、Crをドープしたラネーコバルト触媒10gの存在下、120℃で連続的に水素化する。水素化の排出物を、GCにより分析する。アミノニトリルは、もはや検出できない。EDA22質量%の他に、Pip0.7質量%、DETA2.8質量%、ならびにAEPip16質量%、およびTETA41%が得られる。
【0112】
実施例2:
前接続された混合機を有する管型反応器と、オートクレーブ内での引き続いた水素化から成る一体型の実験室用装置で、FACH、アンモニア、およびEDAから出発して20bar、かつ70℃でアミノニトリル混合物を製造し、これを引き続き、50bar、120℃で水素化して相応するエチレンアミンにする。連続的にFACH104.4g/h(0.8mol/h)、アンモニア22.6g(1.3mol/h)、およびEDA15.9g/h(0.26mol/h)を直列接続された2つの管型反応器に送り、これはFACH:NH3:EDAが3:5:1の比に相応する。反応排出物はAANを9.3質量%、IDANを0.3質量%、およびEDDNを21.5質量%含み、これは使用するFACHに対してAAN30%、EDDN56%、およびIDAN1.2%という収率に相応する。アミノニトリルの総収率は、87%の総アミノニトリル選択性で87%である。
【0113】
反応排出物を放圧せずに20barで、内部標準のジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME)と混合する。一時間あたりこの混合物45gを、THF80gと水素20NLの存在下、流動障害物およびディスク型撹拌機を有する270mlのオートクレーブにおいて50barで、Crをドープしたラネーコバルト触媒10gの存在下、120℃で連続的に水素化する。水素化の排出物を、GCにより分析する。アミノニトリルは、もはや検出できない。EDA24質量%の他に、Pip2質量%、DETA7質量%、ならびにAEPip15質量%、およびTETA34%が得られる。
【0114】
実施例3(連続的な水素化/水30質量%)
流動障害物とディスク型撹拌機とを有する270mlのオートクレーブにCrをドープしたラネーコバルト10gを装入し、そして連続的に50Nl(標準リットル)/hの水素を供給する。一時間につき、AAN30g、THF255g中の水9gから成る混合物を50barで連続的にポンプで送り込む。浸漬フリット(Tauchfritte)を介して、連続的に反応混合物を排出する。反応温度は、120℃に保つ。排出物は、制御弁を介して放圧する。標準的な試料を、GCを用いて分析する。どの時間に対しても、排出物中にAANは検出できない。これらの試料は、安定的にEDA>98%、ならびにDETA1%という選択性を示す。
【0115】
引き続き7時間にわたって、1時間あたりAAN24g、IDAN10g、水10g、ならびにTHF255gをポンプで送り込む。GC分析では、もはやニトリルを検出することはできない。この際、EDA66%、DETA30%、ならびにピペラジン1%という選択性が達成される。
【0116】
さらに7時間にわたって、1時間あたりAAN18g(0.32mol)の他に、水24gを含むTHF255g中のIDAN22.5gを付加的に計量供給する。この場合にもまた、AANとIDANの完全反応が存在する。混合物の選択性は、EDA41%、DETA51%、ならびにピペラジン3%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのα−アミノニトリルをそれぞれ少なくとも5質量%含むアミノニトリル混合物を触媒の存在下、および選択的に溶媒中で水素化する、エチレンアミン混合物の製造方法。
【請求項2】
ラネー触媒、とりわけラネーニッケル触媒またはラネーコバルト触媒を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水素化を、水の存在下、および/または有機溶媒、とりわけテトラヒドロフランまたはメタノール中で行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記α−アミノニトリルが、アミノアセトニトリル(AAN)、イミノジアセトニトリル(IDAN)、エチレンジアミンジアセトニトリル(EDDN)、エチレンジアミンモノアセトニトリル(EDMN)、ジエチレントリアミンジアセトニトリル(DETDN)、ジエチレントリアミンモノアセトニトリル(DETMN)、ピペラジニルエチルアミノアセトニトリル(PEAN)、アミノエチルピペラジニルアセトニトリル(AEPAN)、およびシアノメチルピペラジニルエチルアミノアセトニトリル(CMPEAN)から選択されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
圧力が30〜250bar、および/または温度が80℃〜140℃であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記エチレンアミン混合物中に、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサアミン(PEHA)、ピペラジン(Pip)、またはアミノエチルピペラジン(AEPip)から選択されている少なくとも1のエチレンアミンが含まれていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
形成されたエチレンアミンのうち1つまたはそれ以上を、エチレンアミン混合物から単離することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アミノニトリル混合物を、アミノニトリル混合物が水素化の際に水素と反応する速度以下の速度で水素化に供給することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
アミノニトリル混合物中に含まれるα−アミノニトリルを、ホルムアルデヒドシアンヒドリン(FACH)とNH3、EDA、DETA、またはAEPipとの反応により製造することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
アミノニトリル混合物中に含まれるα−アミノニトリルを製造するために、水素化の際に製造されるDETA、EDA、および/またはAEPipを完全に、または部分的に返送することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
水素化の前にアミノニトリル混合物から低沸点成分を分離するか、または選択的にα−アミノニトリルの製造のために、低沸点成分が分離されているFACHを使用することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
成分a)〜e)のうち少なくとも2つを、
a)AAN10〜75質量%、
b)IDAN、EDMN、またはこれらの混合物10〜50質量%、
c)EDDN、DETMN、またはこれらの混合物10〜70質量%、および
d)DETDN5〜50質量%、および
e)PEAN、AEPAN、CMPEAN、またはこれらの混合物0〜10質量%
で含むアミノニトリル混合物を水素化することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−520164(P2010−520164A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551192(P2009−551192)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052337
【国際公開番号】WO2008/104552
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】