説明

エッジワイズコイル巻線方法及び装置

【課題】 巻き線部の形状精度を高めるエッジワイズコイル巻線方法及び装置を提供する。
【解決手段】 平角線9を折り曲げてエッジワイズコイル90U,90V,90Wを形成する巻線機構10を備えるエッジワイズコイル巻線装置1は、巻線機構10に対して平角線9を送る送り機構50を備え、巻線機構10に平角線9の折り曲げ内側端部を支持する支点ローラ11と、この支点ローラ11のまわりを回動して支点ローラ11に沿って平角線9を折り曲げるベンダ21と、支点ローラ11に沿って平角線9を圧縮するプレス機構30とを備え、ベンダ21が平角線9を支点ローラ11に押し付けながら旋回する際に支点ローラ11に沿って折り曲げられる平角線9をプレス機構30が圧縮する折り曲げ行程と、送り機構50が支点ローラ11に対して平角線9を送る送り工程とを繰り返してエッジワイズコイルを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジワイズコイル巻線方法及び装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常ボビンなどに巻回されてコイルを形成する被覆銅線は、長手方向に直交する方向の断面が円形であることが多い。断面が円形である被覆銅線をコイル状に巻回した場合、巻回方向に隣接する被覆銅線同士は線接触し合い、銅線同士の間にすき間が生じるので、コイル肉厚の割には、通電できる電流量が少ない。
【0003】
これに対し、近年平角線と呼ばれる線材が巻回されて形成されるエッジワイズコイルが開発されるようになった。エッジワイズコイルの場合には、巻回方向に隣接する線材同士は、幅側の面同士を密着できるため、通常のコイルと肉厚を同じにした場合、より大きな電流を通電でき、より強い磁力を発生することができる。
【0004】
従来、特許文献1には、絶縁被覆が形成された平角線をローラで誘導および矯正しながら幅方向に屈曲させるとともに厚み方向に重ねてコイル状に巻回するエッジワイズコイル用巻線装置において、平角線材がコイルの巻き取り端面に導入される巻取部を軸方向に常時押圧する誘導ローラと、巻き取り軸を挟んで誘導ローラと対称な位置にてコイルの巻き取り端面を押圧矯正する矯正ローラとを備え、線材の絶縁被覆を傷つけることなく平角線を巻回するものが開示されている。
【0005】
特許文献2には、線材の途中を支持する支持ローラと、この支持ローラに対して線材を送る送り機構と、線材を支持ローラの手前で固定支持する固定機構と、支持ローラから延びる線材に当接する曲げローラと、この曲げローラを線材の折り曲げ方向に移動するローラ移動機構とを用い、このローラ移動機構によって曲げローラが線材と共に移動することにより線材を支持ローラに沿って折り曲げる工程を繰り返しながら巻回するものが開示されている。
【特許文献1】特開2003−209023号公報
【特許文献2】特開2003−264965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のエッジワイズコイル巻線方法及び装置にあっては、平角線の剛性が高い場合、平角線を巻き心治具に沿って四角形に巻回することが難しく、巻き線部のコーナ部分の形状に膨らみや曲げしわが生じたり、巻き線部の直線部分が曲がり、巻き線部とコア間の空隙が大きくなるという問題点があった。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、巻き線部の形状精度を高めるエッジワイズコイル巻線方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、平角線を折り曲げてエッジワイズコイルを形成するエッジワイズコイル巻線方法において、平角線の折り曲げ内側端部を支持する支点ローラと、この支点ローラに対して平角線を送る送り機構と、支点ローラのまわりを回動して支点ローラに沿って平角線を折り曲げるベンダと、支点ローラに沿って平角線を圧縮するプレス機構とを用い、ベンダが平角線を支点ローラに押し付けながら旋回する際に支点ローラに沿って折り曲げられる平角線をプレス機構が圧縮する折り曲げ行程と、送り機構が支点ローラに対して平角線を送る送り工程とを繰り返してエッジワイズコイルを形成することを特徴とするものとした。
【0009】
第2の発明は、平角線を折り曲げてエッジワイズコイルを形成する巻線機構を備えるエッジワイズコイル巻線装置において、巻線機構に対して平角線を送る送り機構を備え、巻線機構に平角線の折り曲げ内側端部を支持する支点ローラと、この支点ローラのまわりを回動して支点ローラに沿って平角線を折り曲げるベンダと、支点ローラに沿って平角線を圧縮するプレス機構とを備え、ベンダが平角線を支点ローラに押し付けながら旋回する際に支点ローラに沿って折り曲げられる平角線をプレス機構が圧縮する折り曲げ行程と、送り機構が支点ローラに対して平角線を送る送り工程とを繰り返してエッジワイズコイルを形成することを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0010】
第1、第2の発明によると、平角線が巻回されて形成されるエッジワイズコイルは、支持ローラに沿って湾曲するコーナ部分と、各コーナ部分を直線状に延びる部位とを有し、従来の巻き心治具を用いて巻回する方法に比べて、巻き線部の形状精度を高めてコアとの間に作られる空隙を少なくし、コイルの小型化はかれるとともに、コイルの抵抗を小さくして電動機等の性能向上がはかられる。
【0011】
送り機構による平角線の送り量や支持ローラの曲率半径等を変えることにより、巻き線部の大きさや形状を容易に変更することができる。
【0012】
ベンダが平角線を支点ローラに押し付けながら旋回する際に支点ローラに沿って折り曲げられる平角線をプレス機構が圧縮することにより、平角線が支点ローラに沿って折り曲げられる過程で平角線の断面が厚さ方向に拡張したり曲げしわが生じることが抑えられ、平角線は隙間無く整列して巻回され、エッジワイズコイルに対する線材の占積率を高められ、電動機等の性能向上がはかられる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図5において、コア8はインナーロータ型3相電動機のステータを構成するものであり、放射状に並んで内径方向に突出する12個のティース(磁極)8a及びその間に開口する12個のスロット8bを有し、各ティース8aに線材9が予め巻回された各エッジワイズコイル90U,90V,90Wが各スロット8bに収められてステータが形成される。このステータにはU,V,Wの各相を構成するエッジワイズコイル90U,90V,90Wが4個ずつ周方向に並んで形成されている。
【0015】
図1において、1は平角線9を折り曲げてエッジワイズコイル90U,90V,90Wを自動的に製造するエッジワイズコイル巻線装置である。ここで、互いに直交するX、Y、Zの3軸を設定し、X軸が水平前後方向、Y軸が水平横方向、Z軸が垂直方向に延びるものとしてエッジワイズコイル巻線装置1について説明する。
【0016】
線材9は断面矩形の平角線が用いられる。線材9を断面円形の丸線から平角線とすることにより、エッジワイズコイル90U,90V,90Wはコイルに対する線材9の占積率を高められる。
【0017】
平角線9は平角線供給源となるリール3から供給される。平角線9の表面には絶縁皮膜が形成されている。
【0018】
エッジワイズコイル巻線装置1は、リール3から供給される平角線9を案内するローラ65,66,67と、平角線9をY軸方向に送る供給機構70と、平角線9を折り曲げる巻線機構10と、この巻線機構10に対して平角線9を送る送り機構50とを備える。
【0019】
供給機構70は、平角線9を挟持する2組の駆動ローラ71と従動ローラ72を備える。各駆動ローラ71は支持台79に対してX軸まわりに回転可能に支持され、モータ73によって回転駆動される。各従動ローラ72は各スライド台74に対してX軸まわりに回転可能に支持される。各スライド台74はレール75を介して支持台79に対してZ軸方向に摺動可能に支持され、各エアシリンダ76によって昇降する。各エアシリンダ76は各従動ローラ72を平角線9を介して各駆動ローラ71に押し付ける。各駆動ローラ71が互いに同期して回転駆動されることにより、各従動ローラ72との間に挟持される平角線9がY軸方向に送られる。平角線9はその扁平な断面が水平方向に延びるようにして送られる。
【0020】
巻線機構10は、平角線9の折り曲げ内側端部を支持する支点ローラ11と、支点ローラ11のまわりを回動して支点ローラ11に沿って平角線9を折り曲げるベンダ21と、このベンダ21を旋回させる旋回駆動機構20とを備え、ベンダ21が平角線9を支点ローラ11に押し付けながら旋回することにより、平角線9が支点ローラ11に沿って折り曲げられる。
【0021】
巻線機構10は、支点ローラ11に沿って折り曲げられる平角線9を圧縮するプレス機構30を備え、平角線9が支点ローラ11に沿って折り曲げられる過程で平角線9の断面が厚さ方向に拡張しないようにする。
【0022】
巻線機構10は、平角線9を支点ローラ11に沿って折り曲げる過程で支点ローラ11を回転駆動する回転駆動機構40を備え、平角線9の絶縁皮膜が摩耗したり剥離することを防止する。
【0023】
図2に示すように、支点ローラ11は平角線9の側面を当接させるローラシャフト12と、このローラシャフト12の上端面に拡がる円盤状のフランジ17と、ローラシャフト12をスプライン13を介して軸方向に摺動可能に支持するローラスリーブ14とを備える。このローラスリーブ14は軸受15を介して支持台16にZ軸まわりに回転可能に支持される。
【0024】
ローラシャフト12の外周面に沿って折り曲げられる平角線9の折り曲げ内周端部は、フランジ17とローラスリーブ14の上端面の間に挟持される。
【0025】
プレス機構30はローラシャフト12を軸方向に駆動するアクチュエータ31を備える。アクチュエータ31はZ軸方向に伸縮作動する本体32とロッド33を備え、本体32が支持台34を介して支持され、ロッド33の先端部に軸受35、継ぎ手36を介してローラシャフト12の下端部が回転可能に連結される。
【0026】
アクチュエータ31が伸縮作動することにより、図2に矢印で示すように、ローラシャフト12が昇降する。図示しないコントローラは、平角線9を支点ローラ11に沿って折り曲げる過程でアクチュエータ31を収縮作動させ、平角線9をフランジ17とローラスリーブ14の間に挟持し、平角線9の折り曲げ内周部が拡がる変形を抑える。
【0027】
アクチュエータ31は油圧シリンダ、エアシリンダ、電磁アクチュエータ等のいずれかが用いられる。アクチュエータ31が付与する平角線9を圧縮する荷重は、平角線9の寸法、材質等に応じて適宜設定される。
【0028】
回転駆動機構40はモータ41に回転駆動されるプーリ42と、ローラスリーブ14に連結されるプーリ43と、このプーリ42,43に渡って掛け回されるタイミングベルト44とを備える。
【0029】
コントローラは、平角線9を支点ローラ11に沿って折り曲げる過程でモータ41に回転作動させローラスリーブ14を回転駆動する。ローラスリーブ14が回転すると、ローラシャフト12とフランジ17が一体となって回転し、平角線9をフランジ17とローラスリーブ14の間に挟持しながら前方に送る。
【0030】
図3に示すように、旋回駆動機構20は、ローラスリーブ14に軸受23を介して回転可能に支持される旋回ギア22と、この旋回ギア22に噛み合う駆動ギア24と、この駆動ギア24を回転駆動するモータ25とを備え、旋回ギア22上にベンダ21が連結される。モータ25が駆動ギア24を回転させると、これに噛み合う旋回ギア22が回転し、ベンダ21を支点ローラ11を中心とする円弧状の軌跡を持って旋回させ、ベンダ12が平角線9を支点ローラ11に沿って折り曲げる。
【0031】
ベンダ21は平角線9に係合するガイド溝26を有する。ガイド溝26は支点ローラ11に沿って折り曲げられる平角線9の外周端部に係合する。
【0032】
ベンダ21は旋回ギア22上に固定されるが、これに限らず、ベンダ21を環状のガイド溝を有する円盤状に形成し旋回ギア22に対してZ軸まわりに回転可能に連結しても良い。
【0033】
送り機構50は、巻線機構10を搭載する支持台16と、この支持台16をY軸方向に移動可能に支持するレール51と、支持台16を移動させる電磁アクチュエータ52とを備え、支持台16を図1に矢印で示すようにY軸方向について往復動させる。
【0034】
コントローラは巻線機構10が平角線9を支点ローラ11に沿って折り曲げた後、送り機構50の電磁アクチュエータ52を駆動して支持台16をY軸方向について所定のストロークで前進させ、支点ローラ11に引っ掛かった平角線9を前方に送る。続いて、コントローラは電磁アクチュエータ52を逆方向に駆動して支持台16を介して巻線機構10をY軸方向について所定のストロークで後退させ、その後に巻線機構10が平角線9を支点ローラ11に沿って折り曲げる。
【0035】
支持台16には平角線9の折り曲げられた部位に摺接するピッチ送りガイド55が取り付けられる。このピッチ送りガイド55は楔状の断面を有し、その表面が水平面に対して傾斜するように取り付けられ、この表面に折り曲げられた平角線9が摺接することにより平角線9が水平面に対して傾斜し、平角線9はその折り曲げられた部位が支点ローラ11とベンダ21の間へと延びる部位に干渉することなく巻回される。
【0036】
エッジワイズコイル巻線装置1は、ベンダ21が平角線9を支点ローラ11に押し付けながら旋回する際に支点ローラ11に沿って折り曲げられる平角線9をプレス機構30が圧縮する折り曲げ行程と、送り機構50が支点ローラ11に対して平角線9を送る送り工程とを繰り返してエッジワイズコイルを形成する。
【0037】
次にエッジワイズコイル巻線装置1がエッジワイズコイル90Uを巻回する手順について説明する。
【0038】
1.リール3から繰り出される平角線9を直線状に延ばして各ローラ65,66,67の間に通し、供給機構70の駆動ローラ71と従動ローラ72の間に平角線9を挟持し、各駆動ローラ71を回転駆動し、平角線9を巻線機構10へと送る。
【0039】
2.図4の(a)に示すように、平角線9を支点ローラ11とベンダ21の間に挿通させる。
【0040】
3.図4の(b)に示すように、旋回駆動機構20がベンダ21を90°前方(矢印方向)に回動させるとともに、回転駆動機構40が支点ローラ11を90°矢印方向に回転させ、平角線9を支持ローラ22に沿って90°折り曲げる。このとき、プレス機構30が支点ローラ11に沿って折り曲げられる平角線9を圧縮する。
【0041】
4.図4の(c)に示すように、旋回駆動機構20がベンダ21を90°後方(矢印方向)に回動させ、平角線9の直線状に延びる部位を支点ローラ11とベンダ21の間に挿通させる。
【0042】
5.図4の(d)に矢印で示すように、送り機構50が支持台16を所定のストロークで往復動させ、平角線9をこのストローク分だけ送る。このとき、プレス機構30が平角線9の圧縮を解除している。
【0043】
6.図4の(e)に示すように、旋回駆動機構20がベンダ21を90°前方(矢印方向)に回動させるとともに、回転駆動機構40が支点ローラ11を90°矢印方向に回転させ、平角線9を支持ローラ22に沿って90°折り曲げる。
【0044】
7.図4の(f)に示すように、旋回駆動機構20がベンダ21を90°後方(矢印方向)に回動させ、平角線9の直線状に延びる部位を支点ローラ11とベンダ21の間に挿通させる。
【0045】
8.図4の(g)に示すように、送り機構50が支持台16を所定のストロークで往復動させ、平角線9をこのストローク分だけ送る。
【0046】
9.図4の(h)に示すように、旋回駆動機構20がベンダ21を90°前方(矢印方向)に回動させるとともに、回転駆動機構40が支点ローラ11を90°矢印方向に回転させ、平角線9を支持ローラ22に沿って90°折り曲げる。このとき、平角線9の先に折り曲げられたコーナ部分9aがピッチ送りガイド55に摺接することにより傾斜し、巻回された平角線9の先端部やコーナ部9aが支点ローラ11とベンダ21の間へと延びる部位に干渉することなくその上方に延びる。
【0047】
10.図4の(i)に示すように、旋回駆動機構20がベンダ21を90°後方(矢印方向)に回動させ、平角線9の直線状に延びる部位を支点ローラ11とベンダ21の間に挿通させる。
【0048】
上記2〜10の動作を行うことによりエッジワイズコイル90Uの1巻き分を形成する。2〜10の動作を繰り返すことにより、平角線9を整列して巻回し、所定幅、所定層の巻線を行い、エッジワイズコイル90Uが形成される。
【0049】
こうして1つのティース8aに対するエッジワイズコイル90Uを形成した後、平角線9をティース8a間の渡り線部92Uに相当する所定量だけ送り、再び上記2〜10の動作を行うことによりエッジワイズコイル90Uの1巻き分を形成する。この工程を繰り返し4個のエッジワイズコイル90Uを形成した後、図示しないカッタ装置を介して平角線9を切断する。
【0050】
以上のように、エッジワイズコイル巻線装置1は4個のエッジワイズコイル90Uと各エッジワイズコイル90Uを結ぶ3個の渡り線部92Uを連続して形成し、これをコア8に組み付けることにより、従来装置のように渡り線部を配設する作業が不要となり、ステータの生産性を高めて、製品のコストダウンがはかれる。
【0051】
エッジワイズコイル90Uは支持ローラ22に沿って湾曲するコーナ部分と、各コーナ部分を直線状に延びる部位とを有し、コア8のティース8aとの間に作られる空隙を少なくし、従来の巻き心治具を用いて巻回する方法に比べて、巻き線部の形状精度を高めるとともに、エッジワイズコイル90Uを構成する平角線9の長さを短くし、コイルの小型化はかれ、コイルの抵抗を小さくして電動機等の性能向上がはかられる。
【0052】
さらに、送り機構50が支持台16を往復動させるストローク量や支点ローラ11の曲率半径等を変えることにより、エッジワイズコイル90Uの大きさや形状を容易に変更することができる。
【0053】
送り機構50は、ベンダ21が平角線9を支点ローラ11に沿って折り曲げた後、支持台16を往復動させることにより、支点ローラ11に引っ掛かった平角線9を前方に送る。これにより、支持台16を往復動させるストローク分だけ平角線9が送られ、エッジワイズコイル90U,90V,90Wを精度よく巻回することができる。
【0054】
エッジワイズコイル巻線装置1は、折り曲げられた部位に摺接することにより平角線9を支点ローラ11の回転面に対して傾斜させるピッチ送りガイド55を備えたことにより、平角線9はその折り曲げられた部位が支点ローラ11とベンダ21の間へと延びる部位に干渉することなく円滑に巻回される。
【0055】
ベンダ21が平角線9を支点ローラ11に押し付けながら旋回する際に、支点ローラ11に沿って折り曲げられる平角線9をプレス機構30が圧縮する。これにより、平角線9が支点ローラ11に沿って折り曲げられる過程で平角線9の断面が厚さ方向に拡張したり曲げしわが生じることを抑えられ、平角線9は隙間無く整列して巻回され、エッジワイズコイル90U,90V,90Wに対する平角線9の占積率を高められ、電動機等の性能向上がはかられる。
【0056】
巻線機構10は、平角線9を支点ローラ11に沿って折り曲げる過程で支点ローラ11を回転駆動する回転駆動機構40を備えたため、支点ローラ11の回転によって平角線9の絶縁皮膜が擦れることを抑えられ、絶縁皮膜が摩耗したり剥離することを防止できる。
【0057】
なお、これに限らず、巻線機構10は、回転駆動機構40を廃止し、支点ローラ11を回転不能に固定したり、支点ローラ11を回転自由に支持しても良い。この場合、平角線9の絶縁皮膜の接合強度を高めることにより、絶縁皮膜が摩耗したり剥離することを防止できる。
【0058】
本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のエッジワイズコイル巻線方法及び装置は、ステータを構成するものに限らず、例えばコイル単体を構成するものや、他の電機子を構成するものにも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態を示すエッジワイズコイル巻線装置の斜視図。
【図2】同じく巻線機構の断面図。
【図3】同じく巻線機構の平面図。
【図4】同じく巻線動作を示す説明図。
【図5】同じくステータの断面図。
【符号の説明】
【0061】
1 エッジワイズコイル巻線装置
9 平角線
10 巻線機構
11 支点ローラ
16 支持台
20 旋回駆動機構
21 ベンダ
30 プレス機構
40 回転駆動機構
50 送り機構
55 ピッチ送りガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平角線を折り曲げてエッジワイズコイルを形成するエッジワイズコイル巻線方法において、平角線の折り曲げ内側端部を支持する支点ローラと、この支点ローラに対して平角線を送る送り機構と、前記支点ローラのまわりを回動して前記支点ローラに沿って平角線を折り曲げるベンダと、前記支点ローラに沿って平角線を圧縮するプレス機構とを用い、前記ベンダが平角線を前記支点ローラに押し付けながら旋回する際に前記支点ローラに沿って折り曲げられる平角線を前記プレス機構が圧縮する折り曲げ行程と、前記送り機構が前記支点ローラに対して平角線を送る送り工程とを繰り返してエッジワイズコイルを形成することを特徴とするエッジワイズコイル巻線方法。
【請求項2】
平角線を折り曲げてエッジワイズコイルを形成する巻線機構を備えるエッジワイズコイル巻線装置において、前記巻線機構に対して平角線を送る送り機構を備え、前記巻線機構に平角線の折り曲げ内側端部を支持する支点ローラと、この支点ローラのまわりを回動して前記支点ローラに沿って平角線を折り曲げるベンダと、前記支点ローラに沿って平角線を圧縮するプレス機構とを備え、前記ベンダが平角線を前記支点ローラに押し付けながら旋回する際に前記支点ローラに沿って折り曲げられる平角線を前記プレス機構が圧縮する折り曲げ行程と、前記送り機構が前記支点ローラに対して平角線を送る送り工程とを繰り返してエッジワイズコイルを形成することを特徴とするエッジワイズコイル巻線装置。
【請求項3】
前記巻線機構は、平角線を前記支点ローラに沿って折り曲げる過程で前記支点ローラを回転駆動する回転駆動機構を備えたことを特徴とする請求項2に記載のエッジワイズコイル巻線装置。
【請求項4】
前記送り機構は、前記巻線機構を搭載する支持台を送り方向に往復動させ、前記支点ローラに引っ掛かった平角線を前方に送ることを特徴とする請求項2または3に記載のエッジワイズコイル巻線装置。
【請求項5】
平角線の折り曲げられた部位に摺接することにより平角線を前記支点ローラの回転面に対して傾斜させるピッチ送りガイドを備えたことを特徴とする請求項2から4のいずれか一つに記載のエッジワイズコイル巻線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−74881(P2007−74881A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262391(P2005−262391)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】