エッジング前レンズ及びエッジングレンズの製造方法
【課題】エッジングレンズの内側に、実質的にスペーサ材を含まずに、液晶レンズ構造のセルギャップを一定に保持することが可能なエッジング前レンズ及びエッジングレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】第1透明基板(110)と、第2透明基板(120)と、スペーサ材が混入されない第1シール材(140)と、第1透明基板、第2透明基板及び第1シール材間に封止された液晶層(130)と、第1透明基板及び第2透明基板間の第1シール材の外側であって、エッジング後に削除される位置に配置されたスペーサ材(145)が混入された第2シール材(141)を有することを特徴とするエッジング前レンズ(100´´、100´)及びエッジングレンズの製造方法。
【解決手段】第1透明基板(110)と、第2透明基板(120)と、スペーサ材が混入されない第1シール材(140)と、第1透明基板、第2透明基板及び第1シール材間に封止された液晶層(130)と、第1透明基板及び第2透明基板間の第1シール材の外側であって、エッジング後に削除される位置に配置されたスペーサ材(145)が混入された第2シール材(141)を有することを特徴とするエッジング前レンズ(100´´、100´)及びエッジングレンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジング前レンズ及びエッジングレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の電圧を印加することによって着色された色が消える着消色機構を有するレンズを、眼鏡フレームに組み込み、眼鏡フレーム内に別途配置された電源と接続させる構造を有する眼鏡が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、大型の液晶セルにおいて、セルギャップの不均一に起因する干渉色が現れるのを防止するために、スペーサ材を混入したシール材でシール壁を複数本設けた液晶セルが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3−35523号公報(図1、図3)
【特許文献2】特開昭59−116717号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図13は、ブランクレンズ1の一例の断面図である。
【0006】
ブランクレンズ1は、第1の透明基板2、第2の透明基板3、及び液晶レンズ構造7から構成され、液晶レンズ構造7は、第1及び第2の透明基板2、3とスペーサ材5を含んだシール材4との間に封止された液晶層8を含んでいる。また、実線6は、眼鏡フレームに合わせてエッジングされた後のエッジングレンズの断面形状の一例を示している。
【0007】
ブランクレンズ1は、後に、眼鏡フレームに合わせてエッジングされることから、エッジングの自由度を確保するために、液晶レンズ構造7はできるだけコンパクトに形成することが好ましい。しかしながら、液晶レンズ構造7をコンパクトに形成すると、スペーサ材5を含んだシール材4がエッジングレンズの内側に存在することとなり、スペーサ材5自身や基板への減り込み傷による反射や散乱によって、エッジングレンズの装着者の視界の邪魔になったり、エッジングレンズを通して物を見る場合に違和感が生じたりするという不具合があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決することを目的としたエッジング前レンズ及びエッジングレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、エッジングレンズの内側に、実質的にスペーサ材を含まずに、液晶レンズ構造のセルギャップを一定に保持することが可能なエッジング前レンズ及びエッジングレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るエッジング前レンズは、第1透明基板と、第2透明基板と、スペーサ材が混入されない第1シール材と、第1透明基板、第2透明基板及び第1シール材間に封止された液晶層と、第1透明基板及び第2透明基板間の第1シール材の外側であって、エッジング後に削除される位置に配置されたスペーサ材が混入された第2シール材を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るエッジングレンズの製造方法は、第1透明基板及び第2透明基板間に、スペーサ材が混入されない第1シール材及び第1シール材の外周側にスペーサ材が混入された第2シール材を配置することによって、第1透明基板、第2透明基板及び第1シール材間に封止された液晶層を有するブランクレンズを形成し、ブランクレンズを加工することによってフィニッシュドレンズを形成し、第2シール材を含む部分を削除することによってエッジングレンズを形成するステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るエッジング前レンズ及びエッジングレンズの製造方法では、エッジング前では複数のシール材を形成するが、エッジングレンズには、実質的にスペーサ材が残らない様に構成したため、透明性が上がり、基板への減り込み傷がなくなるため、スペーサ材によって装着者の視野が邪魔されたり、装着者が違和感が生じたりするという不具合を解消することが可能となった。
【0013】
また、本発明に係るエッジング前レンズ及びエッジングレンズの製造方法では、スペーサ材が混入されたシール材と、スペーサ材が混入されていないシール材を場所によって使い分けているので、特に製造装置等を変更することなく既存の装置のままで、液晶レンズ構造のセルギャップを一定に維持しながら、エッジングレンズに実質的にスペーサ材が残らない様に構成することが可能となった。
【0014】
さらに、本発明に係るエッジング前レンズ及びエッジングレンズの製造方法において、ヤゲン部分に着色を施したものでは、液晶レンズ構造のセルギャップを一定に維持しながら、エッジング後のレンズに実質的にスペーサ材が残らない様に構成した上に、更に、デザイン性を向上させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電子眼鏡1の部分概略図である。
【図2】フィニッシュドレンズ100´及びエッジングレンズ100を説明するための図である。
【図3】ブランクレンズ100´´を構成する2枚の透明基板を示す図である。
【図4】ブランクレンズ100´´の断面図である。
【図5】液晶レンズ構造によるフレネルレンズ面の構造を説明するための図である。
【図6】エッジングレンズ100とスプリングコネクタとの接続状態を示す図である。
【図7】エッジングレンズ100の製造工程を示すフロー図である。
【図8】エッジングレンズ100の製造工程を説明するための図である。
【図9】他のブランクレンズ101´´の断面図である。
【図10】図9に示すブランクレンズ101´´を構成する2枚の透明基板を示す図である。
【図11】更に他のブランクレンズ102´´の断面図である。
【図12】更に他のブランクレンズ103´´の断面図である。
【図13】ブランクレンズ1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照して、本発明に係るエッジング前レンズ及びエッジングレンズの製造方法について説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0017】
また、以下において、ブランクレンズ及びフィニッシュドレンズ(又はセミフィニッシュドレンズ)を「エッジング前レンズ」と言い、エッジング前レンズをエッジングしたものをエッジングレンズと言うものとする。なお、液晶レンズ構造を含むブランクレンズ、フィニッシュドレンズ(又はセミフィニッシュドレンズ)、及びエッジングレンズを、総称して「液晶レンズ」と言うものとする。
【0018】
図1は、エッジングレンズを利用する例として電子眼鏡1の部分概略図である。
【0019】
図1(a)に示す様に、電子眼鏡1は、眼鏡フレーム2、ヨロイ部3、蝶番4、テンプル5、ブリッジ6、パッド7を含み、眼鏡フレーム2には、エッジングレンズ100が組み込まれている。ヨロイ部3には、エッジングレンズ100の液晶レンズ構造50と導通するためのスプリングコネクタ10及び20、スプリングコネクタ10及び20と接続された電源部としての電池を含む電圧供給部30、デッィプスイッチ31等が内蔵されている。
【0020】
図1(b)は、眼鏡フレーム2の内側からスプリングコネクタ10及び20の方向を示す図である。図1(b)に示す様に、スプリングコネクタ10及び20が、後述するエッジングレンズ100の第1凹部113及び第2凹部123に挿入可能に配置されている。また、眼鏡フレーム2の内側には、エッジングレンズ100のヤゲンが嵌り込む溝部を設けるようにしても良い。なお、「ヤゲン」とは、眼鏡フレーム2に装着する際に、眼鏡フレーム2の内側の溝部に嵌り込むように形成された凸部であって、通常0.5〜1mm程度の高さを有している。
【0021】
エッジングレンズ100の中心部分には、後述する様に、フレネルレンズ面上に配置された第1透明電極111及び第1透明電極111に対向する第2透明電極121を含む液晶レンズ構造50が形成されている。第1透明電極111及び第2透明電極121間に電圧が印加されない場合には、液晶レンズ構造50は動作せず、電子眼鏡1はエッジングレンズ100が本来有するレンズパワーを得ることができる。第1透明電極111及び第2透明電極121間に電圧供給部20から所定の電圧が印加されると、液晶レンズ構造50は所定のパワーを有するレンズとして動作するので、エッジングレンズ100の液晶レンズ構造50がある部分では、エッジングレンズ100が本来有するレンズの焦点距離を液晶レンズ構造50が可変するように動作する。
【0022】
例えば、エッジングレンズ100自体を遠点に焦点が合うようなパワーを得られるレンズ形状とし、液晶レンズ構造50が動作しない場合には、電子眼鏡は遠点用の眼鏡として作用させ、液晶レンズ構造50が動作すると、電子眼鏡は近点用の眼鏡として作用するように設計することが考えられる。液晶レンズ構造50への電圧の印加のON/OFFを電子眼鏡1のディップスイッチ31によって行うようにすれば、ディップスイッチ31によって任意に切り替え可能な遠近両用の電子眼鏡1を提供することが可能となる。なお、エッジングレンズによって提供できる種類の眼鏡は上記のものに限定されず、様々な種類、例えば、遠視用のパワーを複数段で切り替え可能な遠視用電子眼鏡、近視用のパワーを複数段で切り替え可能な近視電子眼鏡等、乱視用又は老眼用等、視力回復トレーニング用等に適用することが可能である。
【0023】
図2及び図3は、エッジングレンズ100を説明するための図である。
【0024】
図2(a)は、図1に示す電子眼鏡1に装着されたエッジングレンズ100の外形を電子眼鏡1の眼鏡フレーム2に合わせ、点線Bにてエッジングする前のフィニッシュドレンズ100´の平面図であり、図2(b)は、エッジングレンズ100の側面図である。
【0025】
図3(a)はブランクレンズを構成する第1透明基板110を示し、図3(b)はブランクレンズを構成する第2透明基板120を示す図である。第1透明基板110及び第2透明基板120は、円柱状の基板である。第1透明基板110及び第2透明基板120は、第1シール材140及び液晶層130等を封止するようにして張り合わせた後に、外形がレンズ形状(例えば、凹レンズ)を有するように研磨加工されて、図2(a)に示すようにエッジング前のフィニッシュドレンズ100´となる。なお、製造方法の詳細については、後述する。
【0026】
図3(a)に示す様に、第1透明基板110には、第2透明基板120と接続される側には、第1凹部113が形成されている。また、第1透明基板110上に配置されたフレネルレンズ構造上には、スパッタリング法によってITO(酸化インジウムスズ)を材料として形成された第1透明電極111、及び第1透明電極111と接続された第1接続ライン112が配置されている。
【0027】
また、図3(a)に示す様に、第1透明基板110上に点線60で記載した箇所に、第1シール材が配置され、点線61〜64で記載した4箇所に第2シール材が配置される。第2シール材は、第1透明基板110の外周付近であれば、図3(a)に示すように、4箇所でなくても、例えば6箇所等であっても良く、また円弧形状でなくても、例えば直線形状であっても良い。ただし、第2シール材の配置場所については、できるだけ中心対称とする方が張り合わせ精度が出やすく好適である。なお、後述するように、第1シール材と第2シール材との間の空間には充填材を注入する必要があるため、第2シール材間には、間隙が形成されている。また、第1シール材及び第2シール材の材質や機能については後述する。
【0028】
図3(b)に示す様に、第2透明基板120には、第1透明基板110と接続される側には、第2凹部123が形成されている。なお、第1凹部113は第2接続ライン122に対向する位置に配置され、第2凹部123は第1接続ライン112に対向する位置に配置されている。また、第2透明基板120上には、スパッタリング法によってITOを材料として形成された第2透明電極121、及び第2透明電極121と接続された第2接続ライン122が配置されている。
【0029】
なお、透明導電膜等を形成する前の段階の、凹部を形成した第1透明基板110及び第2透明基板120の形状は同一であるので、各々の基板上に膜付けをする工程も同一な工程を用いることができ、後述するブランクレンズ100´´の形成は、容易且つ比較的安価に行うことが可能である。
【0030】
図2(b)に示す様に、眼鏡フレーム2に設けられた第1スプリングコネクタ10は、エッジングレンズ100の端部側から第2凹部123に挿入され、第2凹部123の内側に配置される第1接続ライン112と接触する。第1スプリングコネクタ10が内蔵するスプリングバネによって、第1スプリングコネクタ10の先端部11側面が第2凹部123の内側に配置された第1接続ライン112に押し付けられるので、第1スプリングコネクタ10と第1接続ライン112との導通が確保される(図6参照)。
【0031】
図2(b)に示す様に、眼鏡フレーム2に設けられた第2スプリングコネクタ20は、エッジングレンズ100の端部側から第1凹部113に挿入され、第1凹部113の内側に配置される第2接続ライン122と接触する。第2スプリングコネクタ20が内蔵するスプリングバネによって、第2スプリングコネクタ20の先端部21側面が第1凹部113の内側に配置された第2接続ライン122に押し付けられるので、第2スプリングコネクタ20と第2接続ライン122との導通が確保される(図6参照)。
【0032】
なお、第1凹部113及び第2凹部123をそれぞれ長さw1の長方形に形成したが、第1凹部113及び第2凹部123の長さ及び形状は、これらに限定されるものではなく、例えば形状は円形、楕円形、三角形等の他の多角形状であっても良い。また、凹部の幅は、挿入されるスプリングコネクタの直径等に応じて適宜選択することが可能である。さらに、凹部は、開口部、即ち、第1透明基板110及び第2透明基板120の片面側から他方の面側まで貫通するように形成されていても良い。また、開口部の長さ及び形状も、凹部と同様に長さw1の長方形としても良いが、それらに限定されるものではなく、例えば形状は円形、楕円形、三角形等の他の多角形状であっても良い。
【0033】
図4は、ブランクレンズ100´´の断面図である。図4において、点線100´は、図2(a)のAA´断面に対応している。なお、ブランクレンズとは、研磨加工する前の状態を言う。
【0034】
図4に示すように、ブランクレンズ100´´は、第1透明基板110、第2透明基板120、及び第1及び第2透明基板110及び120の間に配置される第1シール材140及び第2シール材141、及び液晶レンズ構造50等から構成される。
【0035】
液晶レンズ構造50は、第1透明基板110、第2透明基板120、フレネルレンズ構造116、及び第1シール材140の間に封止された液晶層130等から構成される。液晶層130としては、ホモジニアス配向型の液晶が用いられるが、垂直配向型の液晶やツイステッドネマティック配向の液晶、ハイブリッド配向の液晶、ポリマー含有型液晶、コレステリック液晶を用いても良い。
【0036】
第1透明基板110上には、フレネルレンズ構造116、透明基板から発生するガスが液晶層130へ侵入しないようにするための第1ガスバリア層114(SiO2、膜厚200nm)、第1透明電極111(ITO、膜厚50nm)、第1透明電極111上に配置された第1配向膜115(膜厚50nm)等が配置されている。なお、フレネルレンズ構造116の下に第1ガスバリア層114を配置するように構成しても良い。
【0037】
第2透明基板120上には、透明基板から発生するガスが液晶層130へ侵入しないようにするための第2ガスバリア層124(SiO2、膜厚200nm)、第1透明電極111と対向した透明平面電極である第2透明電極121(ITO、膜厚50nm)、第2透明電極121上に配置された第2配向膜125(膜厚50nm)等が配置されている。
【0038】
第1透明電極111と第2透明電極121との間隔を一定に保つために、第2シール材141中には、樹脂やシリカで構成されたスペーサ材145(直径10.5μm)が複数混入されている。しかしながら、液晶層130の周囲に配置された第1シール材140中には、スペーサ材は混入されていない。第1シール材140の外側と第2シール材141の間には、透明性樹脂による充填層134が形成されている。また、第1シール材140は、図3(a)の点線60で示された箇所に配置され、第2シール材141は点線61〜64で示された箇所に4箇所に分割して配置されている。
【0039】
第1及び第2透明基板110及び120は、厚さ5mmの円柱状のポリカーボネイトを材料として用いているが、その厚さに限定されないし、その他のプラスチック材であるアクリルやウレタンでも良いし、ガラスを材料として用いても良い。また、図面上は平板基板であるが、張り合わせのギャップが重要であり、平板に限定されず曲面基板同士の張り合わせとしても良い。フレネルレンズ構造116は、アクリルを材料として用いているが、環状オレフィン系の透明樹脂、ラジカル重合型のアクリル系US硬化樹脂、カオチン重合型のエポキシ系US硬化樹脂、熱硬化性樹脂、無機−有機ハイブリッド材料等の光学材料を用いても良い。フレネルレンズ構造116を光硬化性樹脂を用いて形成する場合には、少なくとも紫外線が照射される側の基板は、紫外線を透過する特性を有する必要がある。
【0040】
図4において、w2は液晶レンズ構造50の部分の幅を示し、図4の例では、w2=20mmであり、w3はフィニッシュドレンズ100´の外形寸法を示し、図4の例ではw3=75mmである。しかしながら、上記の値は一例であって、他の値を採用することも可能である。
【0041】
図4においては、説明の便宜上、各基板や層の厚さの縮尺を変更して記載している場合がある点に留意されたい。また、図4において、眼鏡フレームに装着するための、エッジングレンズ100の外形を一点鎖線で示している。
【0042】
図5は、液晶レンズ構造によるフレネルレンズ面の構造を説明するための図である。
【0043】
図5は、フレネルレンズ面の頂点(すなわち、光軸上のレンズ面の点)を原点に半径方向のフレネルレンズ面の断面を表している。図の横軸は半径方向の位置を示し、縦軸は、光軸方向の位置を示している。
【0044】
図5の点線Cは、液晶レンズ構造50が有するレンズ特性の元となるレンズ面を表している。レンズ面は、一般のレンズと同様に、光軸に対して中心対象の連続局面として設計される。そこで、レンズ面の光軸に沿った位置が頂点と同じ位置となるように、レンズ面に段差を設けることにより、図5に示すフレネル構造の断面形状Bを得る(図面上は、便宜のためフレネル構造116の斜面は直線であるが、実際は点線Cのように曲線である)。これによって、段差で区切られた輪帯を複数有するフレネルレンズ面が形成される。図5では、4つの輪帯を有するフレネルレンズ構造について示しているが、輪帯の数は一例であって、これに限定されるものではない。
【0045】
図6は、エッジングレンズ100とスプリングコネクタとの接続状態を示す図である。
【0046】
図6では、エッジングレンズ100の点線Dで囲われた部分の拡大図を示している。前述したように、第1スプリングコネクタ10が内蔵するスプリングバネによって、第1スプリングコネクタ10の側面が第2凹部123の内側に配置された第1接続ライン112に押し付けられて、第1スプリングコネクタ10と第1接続ライン112との導通が確保される。同様に、第2スプリングコネクタ20が内蔵するスプリングバネによって、第2スプリングコネクタ20の側面が第1凹部113の内側に配置された第2接続ライン122に押し付けられるので、第2スプリングコネクタ20と第2接続ライン122との導通が確保される。なお、エッジングレンズ100とスプリングコネクタとの接続方法は、上記の方法に限定されるものではなく、他の方法を採用しても良い。
【0047】
上述したフィニッシュドレンズ100´では、図2(a)に示す第1凹部113及び第2凹部123の幅w1の間のどこで加工してエッジングレンズ100としても、エッジングレンズ100の端部側から、スプリングコネクタとの接続を得ることが可能となる(図6参照)。したがって、エッジングレンズ100の外形を予め定めることなく、様々な形状の眼鏡フレームに対応することが可能となった。
【0048】
以下、図7及び図8を用いて、エッジングレンズ100の製造工程を説明する。
【0049】
最初に、円柱状(厚さ5mm)の第1透明基板110に第1凹部113を切削加工により形成し、円柱状(厚さ5mm)の第2透明基板120に第2凹部123を切削加工により形成する(S10)。
【0050】
次に、第1透明基板110上に、フレネルレンズ構造116を形成する(S11)。フレネルレンズ構造116は、供給器200から第1透明基板110上に光硬化樹脂210を所定量滴下して(図8(a)参照)、モールド201によって光硬化樹脂210の形状を整えた後(図8(b)及び(c)参照)、第1透明基板110の裏側から紫外線(UV)を照射して(図8(c)参照)、光硬化樹脂210を硬化させることによって形成する(図8(d)参照)。図8(d)では、第1透明基板110の大きさに対して、フレネルレンズ構造116を含めた硬化した光硬化樹脂210の領域が小さい構成での説明となっているが、第1透明基板110全面に形成する構成としても良い。
【0051】
なお、光硬化樹脂210としては、UV硬化性のアクリル樹脂を利用することができる。また、別途フレネルレンズ構造を形成し、完成したフレネルレンズ構造を第1透明基板110上に接着するようにしても良い。さらに、第1凹部113と同様に、第1透明基板を切削加工等することにより形成したり、キャスティングや射出成型で透明基板そのものと一体成型して形成したりしても良い。
【0052】
次に、フレネルレンズ構造116が形成された第1透明基板110及び第2透明基板120上に、それぞれ、膜厚200nmのSiO2皮膜による第1ガスバリア層114及び第2ガスバリア層124を成膜する(S12)。
【0053】
次に、第1透明基板110の第1ガスバリア層114の上から、ITO膜の形成及びパターンニングを行い、第1透明電極111及び第1接続ライン112を形成する。同様に、第2透明基板120の第2ガスバリア層124の上から、ITO膜の形成及びパターンニングを行い、第2透明電極121及び第2接続ライン122を形成する(S13)。
【0054】
次に、第1透明基板110の第1透明電極111の上から、第1配向膜115を成膜し、ラビングを行う。同様に、第2透明基板120の第2透明電極121の上から、第2配向膜125を成膜し、ラビングを行う(S14)。
【0055】
配向膜の形成は、例えば、供給器202から、膜構成材料211を所定量滴下し(図8(e)参照)、所定雰囲気で乾燥(焼成)後、ローラー203を用いてラビングを行う(図8(f)参照)。
【0056】
次に、第1シール材140を形成するために、第1透明基板110上に、供給器204からスペーサ材145が混入されていない光硬化樹脂212を所定箇所(図3(a)の点線60の箇所)に配置する。また、第2シール材141を形成するために、第1透明基板110上に、供給器205からスペーサ材145が混入されている光硬化樹脂213を所定箇所(図3(a)の点線61〜64の箇所)に配置する(S15、図8(g)参照)。なお、第1シール材140は、硬化した際に、第1透明基板110及び第2透明基板120とほぼ同じ屈折率を有するものを使用するのが好ましい。なお、図8(g)〜図8(i)では、便宜上、第1ガスバリア層114、第1透明電極111及び第1配向層115は省略して記載している。
【0057】
次に、光硬化樹脂212の内側に、供給器206から液晶214を所定量滴下する(S16、図8(h)参照)。
【0058】
次に、真空雰囲気下で、第1透明基板110の上から第2透明基板120を重ね合わせて配置し(図8(i)参照)、液晶214部分をマスクして紫外線から保護し、第1透明基板110の裏側から紫外線を照射する。これによって、光硬化樹脂212及び213が硬化して、第1シール材140及び第2シール材141となると共に、第1透明基板110及び第2透明基板120が張り合わされる(S17)。ここで、光硬化性樹脂213に混入されているスペーサ(図示せず)によって、第1透明基板110の上から第2透明基板120のギャップが規定されている。さらに、滴下された液晶214は、第1透明基板110、第2透明基板120及び第1シール材140によって封止されて液晶層130となる。なお、樹脂を硬化させて第1シール材140及び第2シール材141を形成する際には、UVの照射後に、高温雰囲気下で焼成するようにしても良い。
【0059】
次に、第1透明基板110及び第2透明基板120を張り合わせたものを、真空雰囲気化に置き、毛細管現象を利用して、第1シール材140及び第2シール材141との間の隙間に、透明性樹脂を充填させて、充填層134を形成する(S18)。なお、充填層134に用いられる透明性樹脂は、第1透明基板110及び第2透明基板120とほぼ同じ屈折率を有するものを使用する。これによって、ブランクレンズ(レンズ外形形状が形成されていない状態)が完成する。また、充填層134は、レンズの透過率の向上と、レンズ加工時に耐えられる接着力の確保と、研磨剤及び研磨液等が、内部に侵入するのを防止する作用をも有している。ここで、充填層134を形成する透明樹脂は、第1シール材140及び第2シール材141を硬化し、第1透明基板110及び第2透明基板120を張り合わせた後に、第1シール材140及び第2シール材141との間の隙間に配置したが、第2シール材141を配置した後、第1透明基板110及び第2透明基板120を張り合わせる前に、透明樹脂も配置して、第1シール材140、第2シール材141、及び透明樹脂を同時に硬化させて、第1透明基板110及び第2透明基板120を張り合わせてもよい。その場合は、第2シール材141間には、間隙を設ける必要はなく、連続して形成してもよい。
【0060】
次に、ブランクレンズの外形を研磨加工して、レンズ形状とし、フィニッシュドレンズ100´を完成させる(S19)。なお、レンズ形状の形成は、片面ずつ行うが、片面のみ形成されているものをセミフィニッシュドレンズと言う。
【0061】
次に、眼鏡フレーム2の形状に合わせて、例えば、図4に示すフィニッシュドレンズ100´をエッジングし、エッジングレンズ100を完成させ(S20)、液晶レンズ構造50とスプリングコネクタ10及び20との導通を図るように、眼鏡フレーム2へ装着することによって、電子眼鏡1を完成させる(S21)。
【0062】
ブランクレンズ100´´の状態(図4参照)では、その外周にスペーサ材145が混入された第2シール材141が形成され、液晶レンズ構造50の周囲には第1シール材140が形成され、第1シール材140と第2シール材141との隙間にも充填層134が形成されている。したがって、第1シール材140にはスペーサ材145が混入されていなくても、液晶レンズ構造50のセルギャップは所定の厚さに維持される。また、その後の研磨加工が施されて、フィニッシュドレンズ100´(図4の点線部分参照)となる際にも、同様に、液晶レンズ構造50のセルギャップは、所定の厚さに維持される。さらに、その後、エッジングされて、エッジングレンズ100(図4の一点鎖線参照)となった場合には、外周に配置されている第2シール材141が削除されてしまい、エッジングレンズ100内には、スペーサ材145が残存しないので、装着者の視界の邪魔や、違和感が生じることが無い。また、スペーサ材145が存在しないことによって、透明度を向上させる作用もある。
【0063】
エッジングレンズ100の製造過程において、最も液晶レンズ構造50に圧力が加わるのは、フィニッシュドレンズとするための研磨加工時であるので、その状態において、スペーサ材145が混入した第2シール材141が健在であれば、液晶レンズ構造50のセルギャップは所定の厚さに維持される。その後、エッジングレンズ100にエッジングされてしまうと、第1シール材140及びその外周の充填層134によって、充分に、液晶層130のギャップ間隔は所定の厚さに維持される。
【0064】
このように、液晶レンズでは、液晶レンズ構造50に圧力が加わる加工時には、スペーサ材145が混入された第2シール材141が残存するが、眼鏡フレーム2に装着される際には、スペーサ材145が混入された第2シール材141が削除される点に、大きな特徴を有している。
【0065】
図9は、他のブランクレンズ101´´の断面図である。
【0066】
図9において、図4と同じ構成には同じ番号を付して説明を省略する。図9に示すブランクレンズ101´´を研磨加工してフィニッシュドレンズ101´が形成され、さらにエッジングされて眼鏡フレーム2に装着されるエッジングレンズ101となる。
【0067】
図4に示すブランクレンズ100´´と、図9に示すブランクレンズ101´´との差異は、スペーサ材146が混入された第3シール材142を有しており、エッジングレンズ101のヤゲンEの部分に第3シール材142の一部又は全部が残存するように構成されている点である。なお、スペーサ材146は、前述したスペーサ材145と同じ材料を用いても良い。しかしながら、構成によっては、スペーサ材145の粒径とスペーサ材146の粒径を変更する必要がある場合がある。また、図9において、ヤゲンEを含まないエッジングレンズ101の幅をW4、ヤゲンEの高さをW5としている。
【0068】
図9に示すヤゲンEの部分は、眼鏡フレーム2の内側の溝部に嵌り込んでしまうので、装着者の視界の妨げとはならない。したがって、その箇所にスペーサ材146を含んでいても、前述したような不具合は生じない上に、エッジングの際にも、その一部が残存しているので、より堅固な構造となり、液晶レンズ構造50のセルギャップを一定に維持すること及び面精度を良好に保つことが可能となる。
【0069】
なお、ヤゲンEの部分に、スペーサ材146を含む第3シール材142の一部を含んでいるが、ヤゲンEの部分は、実質的に、装着者の視野に影響を与えないことから、図9に示すエッジング後のエッジングレンズ101においては、実質的にスペーサ材が残らないと言うことができる。
【0070】
図10は、図9に示すブランクレンズ101´´を構成する2枚の透明基板を示す図である。
【0071】
図10(a)に示すように、第1透明基板110上に点線60で記載した箇所に、第1シール材140が配置され、点線61〜64で記載した4箇所に第2シール材141が配置され、点線65〜68で記載した4箇所に第3シール材142は配置される。第2シール材141は、第1透明基板110の外周付近であれば、図10(a)に示すように、4箇所でなくても、例えば6箇所等であっても良く、また円弧形状でなくても、例えば直線形状であっても良い。同様に、第3シール材142は、第2シール材142と第1シール材140の間であって、予め既知のレンズ形状のヤゲンの位置であれば、図10(a)に示すように、4箇所でなくても、例えば6箇所等であっても良い。ただし、第2シール材141と第3シール材142の配置場所については、できるだけ中心対称とする方が張り合わせ精度が出やすく好適である。また、第1シール材140と第2シール材141との間の空間には充填材を注入する必要があるため、第2シール材141及び第3シール材142間には、間隙が形成されている。
【0072】
図11は、更に他のブランクレンズ102´´の断面図である。
【0073】
図11において、図9と同じ構成には同じ番号を付して説明を省略する。図11に示すブランクレンズ102´´を研磨加工してフィニッシュドレンズ102´が形成され、さらにエッジングされて眼鏡フレーム2に装着されるエッジングレンズ102となる。
【0074】
図11に示すブランクレンズ102´´と、図9に示すブランクレンズ101´´との差異は、スペーサ材146を含む第3シール材143が、着色されている点のみである。エッジング後のエッジングレンズ102のヤゲンEの部分は、眼鏡フレーム2の内側の溝部に嵌り込んでしまうので、着色されていても、装着者の視野に影響を与えない。また、着色されていることによって、眼鏡フレーム2の周囲に着色によるデザイン的な影響を与えることができ、全て透明なレンズと異なった印象を与えることができるという更なる利点がある。なお、着色される色は、眼鏡フレームと同じ色にしても良いし、黒、茶、赤等、どのような色でも良い。
【0075】
なお、ヤゲンEの部分(W5)に、スペーサ材146を含む第3シール材143の一部を含んでいるが、ヤゲンEの部分は、実質的に、装着者の視野に影響を与えないことから、図9に示すエッジング後のエッジングレンズ101においては、実質的にスペーサ材が残らないと言うことができる。
【0076】
図12は、更に他のブランクレンズ103´´の断面図である。
【0077】
図12において、図9と同じ構成には同じ番号を付して説明を省略する。図12に示すブランクレンズ103´´を研磨加工してフィニッシュドレンズ103´が形成され、さらにエッジングされて眼鏡フレーム2に装着されるエッジングレンズ103となる。
【0078】
図12に示すブランクレンズ103´´と、図9に示すブランクレンズ101´´との差異は、着色されたスペーサ材146を含む第3シール材143が、ヤゲンEの部分から、幅W6だけ、内側に入っている点のみである。幅W6は、実質的に装着者の視野を妨害しない範囲内で設定して良く、例えば、1〜5mm程度とすることができる。着色された領域を視野に影響を与えない範囲内で増加させることによって、よりデザイン性能を向上させることが可能となる。エッジングレンズ103内の場所によって、幅W6を可変させたり、無くしたりすることで、眼鏡フレーム等を含めたプロダクトデザインをさらに向上させることができる。また、これによって、スペーサ材146が混入した第3シール材143の部分が多く残存することとなり、より、液晶レンズ構造50のセルギャップを一定に維持すること及び面精度を良好に保つことが可能となる。
【0079】
なお、ヤゲンE(W5)及び幅W6の部分に、スペーサ材146を含む第3シール材143の一部を含んでいるが、それらの部分は、実質的に、装着者の視野に影響を与えないことから、図12に示すエッジング後のエッジングレンズ102においては、実質的にスペーサ材が残らないと言うことができる。
【0080】
本実施形態では、電子眼鏡用レンズを例に説明したが、本発明のエッジング前レンズ及びエッジングレンズは、液晶を注入後、レンズの一部(中央部)に液晶を封入し、最後に所望の形に外形カットする液晶レンズであれば、電子顕微鏡や電子カメラ、ピックアップレンズ等、いかなる用途のものでも採用することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 電子眼鏡
2 眼鏡フレーム
10 第1スプリングコネクタ
20 第2スプリングコネクタ
50 液晶レンズ構造
100´´、101´´、102´´、103´´ ブランクレンズ
100´、101´、102´、103´ フィニッシュドレンズ
100、101、102、103 エッジングレンズ
110 第1透明基板
120 第2透明基板
130 液晶層
134 充填材
140 第1シール材
141 第2シール材
142、143 第3シール材
145、146 スペーサ
E ヤゲン
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジング前レンズ及びエッジングレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の電圧を印加することによって着色された色が消える着消色機構を有するレンズを、眼鏡フレームに組み込み、眼鏡フレーム内に別途配置された電源と接続させる構造を有する眼鏡が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、大型の液晶セルにおいて、セルギャップの不均一に起因する干渉色が現れるのを防止するために、スペーサ材を混入したシール材でシール壁を複数本設けた液晶セルが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3−35523号公報(図1、図3)
【特許文献2】特開昭59−116717号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図13は、ブランクレンズ1の一例の断面図である。
【0006】
ブランクレンズ1は、第1の透明基板2、第2の透明基板3、及び液晶レンズ構造7から構成され、液晶レンズ構造7は、第1及び第2の透明基板2、3とスペーサ材5を含んだシール材4との間に封止された液晶層8を含んでいる。また、実線6は、眼鏡フレームに合わせてエッジングされた後のエッジングレンズの断面形状の一例を示している。
【0007】
ブランクレンズ1は、後に、眼鏡フレームに合わせてエッジングされることから、エッジングの自由度を確保するために、液晶レンズ構造7はできるだけコンパクトに形成することが好ましい。しかしながら、液晶レンズ構造7をコンパクトに形成すると、スペーサ材5を含んだシール材4がエッジングレンズの内側に存在することとなり、スペーサ材5自身や基板への減り込み傷による反射や散乱によって、エッジングレンズの装着者の視界の邪魔になったり、エッジングレンズを通して物を見る場合に違和感が生じたりするという不具合があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決することを目的としたエッジング前レンズ及びエッジングレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、エッジングレンズの内側に、実質的にスペーサ材を含まずに、液晶レンズ構造のセルギャップを一定に保持することが可能なエッジング前レンズ及びエッジングレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るエッジング前レンズは、第1透明基板と、第2透明基板と、スペーサ材が混入されない第1シール材と、第1透明基板、第2透明基板及び第1シール材間に封止された液晶層と、第1透明基板及び第2透明基板間の第1シール材の外側であって、エッジング後に削除される位置に配置されたスペーサ材が混入された第2シール材を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るエッジングレンズの製造方法は、第1透明基板及び第2透明基板間に、スペーサ材が混入されない第1シール材及び第1シール材の外周側にスペーサ材が混入された第2シール材を配置することによって、第1透明基板、第2透明基板及び第1シール材間に封止された液晶層を有するブランクレンズを形成し、ブランクレンズを加工することによってフィニッシュドレンズを形成し、第2シール材を含む部分を削除することによってエッジングレンズを形成するステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るエッジング前レンズ及びエッジングレンズの製造方法では、エッジング前では複数のシール材を形成するが、エッジングレンズには、実質的にスペーサ材が残らない様に構成したため、透明性が上がり、基板への減り込み傷がなくなるため、スペーサ材によって装着者の視野が邪魔されたり、装着者が違和感が生じたりするという不具合を解消することが可能となった。
【0013】
また、本発明に係るエッジング前レンズ及びエッジングレンズの製造方法では、スペーサ材が混入されたシール材と、スペーサ材が混入されていないシール材を場所によって使い分けているので、特に製造装置等を変更することなく既存の装置のままで、液晶レンズ構造のセルギャップを一定に維持しながら、エッジングレンズに実質的にスペーサ材が残らない様に構成することが可能となった。
【0014】
さらに、本発明に係るエッジング前レンズ及びエッジングレンズの製造方法において、ヤゲン部分に着色を施したものでは、液晶レンズ構造のセルギャップを一定に維持しながら、エッジング後のレンズに実質的にスペーサ材が残らない様に構成した上に、更に、デザイン性を向上させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電子眼鏡1の部分概略図である。
【図2】フィニッシュドレンズ100´及びエッジングレンズ100を説明するための図である。
【図3】ブランクレンズ100´´を構成する2枚の透明基板を示す図である。
【図4】ブランクレンズ100´´の断面図である。
【図5】液晶レンズ構造によるフレネルレンズ面の構造を説明するための図である。
【図6】エッジングレンズ100とスプリングコネクタとの接続状態を示す図である。
【図7】エッジングレンズ100の製造工程を示すフロー図である。
【図8】エッジングレンズ100の製造工程を説明するための図である。
【図9】他のブランクレンズ101´´の断面図である。
【図10】図9に示すブランクレンズ101´´を構成する2枚の透明基板を示す図である。
【図11】更に他のブランクレンズ102´´の断面図である。
【図12】更に他のブランクレンズ103´´の断面図である。
【図13】ブランクレンズ1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照して、本発明に係るエッジング前レンズ及びエッジングレンズの製造方法について説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0017】
また、以下において、ブランクレンズ及びフィニッシュドレンズ(又はセミフィニッシュドレンズ)を「エッジング前レンズ」と言い、エッジング前レンズをエッジングしたものをエッジングレンズと言うものとする。なお、液晶レンズ構造を含むブランクレンズ、フィニッシュドレンズ(又はセミフィニッシュドレンズ)、及びエッジングレンズを、総称して「液晶レンズ」と言うものとする。
【0018】
図1は、エッジングレンズを利用する例として電子眼鏡1の部分概略図である。
【0019】
図1(a)に示す様に、電子眼鏡1は、眼鏡フレーム2、ヨロイ部3、蝶番4、テンプル5、ブリッジ6、パッド7を含み、眼鏡フレーム2には、エッジングレンズ100が組み込まれている。ヨロイ部3には、エッジングレンズ100の液晶レンズ構造50と導通するためのスプリングコネクタ10及び20、スプリングコネクタ10及び20と接続された電源部としての電池を含む電圧供給部30、デッィプスイッチ31等が内蔵されている。
【0020】
図1(b)は、眼鏡フレーム2の内側からスプリングコネクタ10及び20の方向を示す図である。図1(b)に示す様に、スプリングコネクタ10及び20が、後述するエッジングレンズ100の第1凹部113及び第2凹部123に挿入可能に配置されている。また、眼鏡フレーム2の内側には、エッジングレンズ100のヤゲンが嵌り込む溝部を設けるようにしても良い。なお、「ヤゲン」とは、眼鏡フレーム2に装着する際に、眼鏡フレーム2の内側の溝部に嵌り込むように形成された凸部であって、通常0.5〜1mm程度の高さを有している。
【0021】
エッジングレンズ100の中心部分には、後述する様に、フレネルレンズ面上に配置された第1透明電極111及び第1透明電極111に対向する第2透明電極121を含む液晶レンズ構造50が形成されている。第1透明電極111及び第2透明電極121間に電圧が印加されない場合には、液晶レンズ構造50は動作せず、電子眼鏡1はエッジングレンズ100が本来有するレンズパワーを得ることができる。第1透明電極111及び第2透明電極121間に電圧供給部20から所定の電圧が印加されると、液晶レンズ構造50は所定のパワーを有するレンズとして動作するので、エッジングレンズ100の液晶レンズ構造50がある部分では、エッジングレンズ100が本来有するレンズの焦点距離を液晶レンズ構造50が可変するように動作する。
【0022】
例えば、エッジングレンズ100自体を遠点に焦点が合うようなパワーを得られるレンズ形状とし、液晶レンズ構造50が動作しない場合には、電子眼鏡は遠点用の眼鏡として作用させ、液晶レンズ構造50が動作すると、電子眼鏡は近点用の眼鏡として作用するように設計することが考えられる。液晶レンズ構造50への電圧の印加のON/OFFを電子眼鏡1のディップスイッチ31によって行うようにすれば、ディップスイッチ31によって任意に切り替え可能な遠近両用の電子眼鏡1を提供することが可能となる。なお、エッジングレンズによって提供できる種類の眼鏡は上記のものに限定されず、様々な種類、例えば、遠視用のパワーを複数段で切り替え可能な遠視用電子眼鏡、近視用のパワーを複数段で切り替え可能な近視電子眼鏡等、乱視用又は老眼用等、視力回復トレーニング用等に適用することが可能である。
【0023】
図2及び図3は、エッジングレンズ100を説明するための図である。
【0024】
図2(a)は、図1に示す電子眼鏡1に装着されたエッジングレンズ100の外形を電子眼鏡1の眼鏡フレーム2に合わせ、点線Bにてエッジングする前のフィニッシュドレンズ100´の平面図であり、図2(b)は、エッジングレンズ100の側面図である。
【0025】
図3(a)はブランクレンズを構成する第1透明基板110を示し、図3(b)はブランクレンズを構成する第2透明基板120を示す図である。第1透明基板110及び第2透明基板120は、円柱状の基板である。第1透明基板110及び第2透明基板120は、第1シール材140及び液晶層130等を封止するようにして張り合わせた後に、外形がレンズ形状(例えば、凹レンズ)を有するように研磨加工されて、図2(a)に示すようにエッジング前のフィニッシュドレンズ100´となる。なお、製造方法の詳細については、後述する。
【0026】
図3(a)に示す様に、第1透明基板110には、第2透明基板120と接続される側には、第1凹部113が形成されている。また、第1透明基板110上に配置されたフレネルレンズ構造上には、スパッタリング法によってITO(酸化インジウムスズ)を材料として形成された第1透明電極111、及び第1透明電極111と接続された第1接続ライン112が配置されている。
【0027】
また、図3(a)に示す様に、第1透明基板110上に点線60で記載した箇所に、第1シール材が配置され、点線61〜64で記載した4箇所に第2シール材が配置される。第2シール材は、第1透明基板110の外周付近であれば、図3(a)に示すように、4箇所でなくても、例えば6箇所等であっても良く、また円弧形状でなくても、例えば直線形状であっても良い。ただし、第2シール材の配置場所については、できるだけ中心対称とする方が張り合わせ精度が出やすく好適である。なお、後述するように、第1シール材と第2シール材との間の空間には充填材を注入する必要があるため、第2シール材間には、間隙が形成されている。また、第1シール材及び第2シール材の材質や機能については後述する。
【0028】
図3(b)に示す様に、第2透明基板120には、第1透明基板110と接続される側には、第2凹部123が形成されている。なお、第1凹部113は第2接続ライン122に対向する位置に配置され、第2凹部123は第1接続ライン112に対向する位置に配置されている。また、第2透明基板120上には、スパッタリング法によってITOを材料として形成された第2透明電極121、及び第2透明電極121と接続された第2接続ライン122が配置されている。
【0029】
なお、透明導電膜等を形成する前の段階の、凹部を形成した第1透明基板110及び第2透明基板120の形状は同一であるので、各々の基板上に膜付けをする工程も同一な工程を用いることができ、後述するブランクレンズ100´´の形成は、容易且つ比較的安価に行うことが可能である。
【0030】
図2(b)に示す様に、眼鏡フレーム2に設けられた第1スプリングコネクタ10は、エッジングレンズ100の端部側から第2凹部123に挿入され、第2凹部123の内側に配置される第1接続ライン112と接触する。第1スプリングコネクタ10が内蔵するスプリングバネによって、第1スプリングコネクタ10の先端部11側面が第2凹部123の内側に配置された第1接続ライン112に押し付けられるので、第1スプリングコネクタ10と第1接続ライン112との導通が確保される(図6参照)。
【0031】
図2(b)に示す様に、眼鏡フレーム2に設けられた第2スプリングコネクタ20は、エッジングレンズ100の端部側から第1凹部113に挿入され、第1凹部113の内側に配置される第2接続ライン122と接触する。第2スプリングコネクタ20が内蔵するスプリングバネによって、第2スプリングコネクタ20の先端部21側面が第1凹部113の内側に配置された第2接続ライン122に押し付けられるので、第2スプリングコネクタ20と第2接続ライン122との導通が確保される(図6参照)。
【0032】
なお、第1凹部113及び第2凹部123をそれぞれ長さw1の長方形に形成したが、第1凹部113及び第2凹部123の長さ及び形状は、これらに限定されるものではなく、例えば形状は円形、楕円形、三角形等の他の多角形状であっても良い。また、凹部の幅は、挿入されるスプリングコネクタの直径等に応じて適宜選択することが可能である。さらに、凹部は、開口部、即ち、第1透明基板110及び第2透明基板120の片面側から他方の面側まで貫通するように形成されていても良い。また、開口部の長さ及び形状も、凹部と同様に長さw1の長方形としても良いが、それらに限定されるものではなく、例えば形状は円形、楕円形、三角形等の他の多角形状であっても良い。
【0033】
図4は、ブランクレンズ100´´の断面図である。図4において、点線100´は、図2(a)のAA´断面に対応している。なお、ブランクレンズとは、研磨加工する前の状態を言う。
【0034】
図4に示すように、ブランクレンズ100´´は、第1透明基板110、第2透明基板120、及び第1及び第2透明基板110及び120の間に配置される第1シール材140及び第2シール材141、及び液晶レンズ構造50等から構成される。
【0035】
液晶レンズ構造50は、第1透明基板110、第2透明基板120、フレネルレンズ構造116、及び第1シール材140の間に封止された液晶層130等から構成される。液晶層130としては、ホモジニアス配向型の液晶が用いられるが、垂直配向型の液晶やツイステッドネマティック配向の液晶、ハイブリッド配向の液晶、ポリマー含有型液晶、コレステリック液晶を用いても良い。
【0036】
第1透明基板110上には、フレネルレンズ構造116、透明基板から発生するガスが液晶層130へ侵入しないようにするための第1ガスバリア層114(SiO2、膜厚200nm)、第1透明電極111(ITO、膜厚50nm)、第1透明電極111上に配置された第1配向膜115(膜厚50nm)等が配置されている。なお、フレネルレンズ構造116の下に第1ガスバリア層114を配置するように構成しても良い。
【0037】
第2透明基板120上には、透明基板から発生するガスが液晶層130へ侵入しないようにするための第2ガスバリア層124(SiO2、膜厚200nm)、第1透明電極111と対向した透明平面電極である第2透明電極121(ITO、膜厚50nm)、第2透明電極121上に配置された第2配向膜125(膜厚50nm)等が配置されている。
【0038】
第1透明電極111と第2透明電極121との間隔を一定に保つために、第2シール材141中には、樹脂やシリカで構成されたスペーサ材145(直径10.5μm)が複数混入されている。しかしながら、液晶層130の周囲に配置された第1シール材140中には、スペーサ材は混入されていない。第1シール材140の外側と第2シール材141の間には、透明性樹脂による充填層134が形成されている。また、第1シール材140は、図3(a)の点線60で示された箇所に配置され、第2シール材141は点線61〜64で示された箇所に4箇所に分割して配置されている。
【0039】
第1及び第2透明基板110及び120は、厚さ5mmの円柱状のポリカーボネイトを材料として用いているが、その厚さに限定されないし、その他のプラスチック材であるアクリルやウレタンでも良いし、ガラスを材料として用いても良い。また、図面上は平板基板であるが、張り合わせのギャップが重要であり、平板に限定されず曲面基板同士の張り合わせとしても良い。フレネルレンズ構造116は、アクリルを材料として用いているが、環状オレフィン系の透明樹脂、ラジカル重合型のアクリル系US硬化樹脂、カオチン重合型のエポキシ系US硬化樹脂、熱硬化性樹脂、無機−有機ハイブリッド材料等の光学材料を用いても良い。フレネルレンズ構造116を光硬化性樹脂を用いて形成する場合には、少なくとも紫外線が照射される側の基板は、紫外線を透過する特性を有する必要がある。
【0040】
図4において、w2は液晶レンズ構造50の部分の幅を示し、図4の例では、w2=20mmであり、w3はフィニッシュドレンズ100´の外形寸法を示し、図4の例ではw3=75mmである。しかしながら、上記の値は一例であって、他の値を採用することも可能である。
【0041】
図4においては、説明の便宜上、各基板や層の厚さの縮尺を変更して記載している場合がある点に留意されたい。また、図4において、眼鏡フレームに装着するための、エッジングレンズ100の外形を一点鎖線で示している。
【0042】
図5は、液晶レンズ構造によるフレネルレンズ面の構造を説明するための図である。
【0043】
図5は、フレネルレンズ面の頂点(すなわち、光軸上のレンズ面の点)を原点に半径方向のフレネルレンズ面の断面を表している。図の横軸は半径方向の位置を示し、縦軸は、光軸方向の位置を示している。
【0044】
図5の点線Cは、液晶レンズ構造50が有するレンズ特性の元となるレンズ面を表している。レンズ面は、一般のレンズと同様に、光軸に対して中心対象の連続局面として設計される。そこで、レンズ面の光軸に沿った位置が頂点と同じ位置となるように、レンズ面に段差を設けることにより、図5に示すフレネル構造の断面形状Bを得る(図面上は、便宜のためフレネル構造116の斜面は直線であるが、実際は点線Cのように曲線である)。これによって、段差で区切られた輪帯を複数有するフレネルレンズ面が形成される。図5では、4つの輪帯を有するフレネルレンズ構造について示しているが、輪帯の数は一例であって、これに限定されるものではない。
【0045】
図6は、エッジングレンズ100とスプリングコネクタとの接続状態を示す図である。
【0046】
図6では、エッジングレンズ100の点線Dで囲われた部分の拡大図を示している。前述したように、第1スプリングコネクタ10が内蔵するスプリングバネによって、第1スプリングコネクタ10の側面が第2凹部123の内側に配置された第1接続ライン112に押し付けられて、第1スプリングコネクタ10と第1接続ライン112との導通が確保される。同様に、第2スプリングコネクタ20が内蔵するスプリングバネによって、第2スプリングコネクタ20の側面が第1凹部113の内側に配置された第2接続ライン122に押し付けられるので、第2スプリングコネクタ20と第2接続ライン122との導通が確保される。なお、エッジングレンズ100とスプリングコネクタとの接続方法は、上記の方法に限定されるものではなく、他の方法を採用しても良い。
【0047】
上述したフィニッシュドレンズ100´では、図2(a)に示す第1凹部113及び第2凹部123の幅w1の間のどこで加工してエッジングレンズ100としても、エッジングレンズ100の端部側から、スプリングコネクタとの接続を得ることが可能となる(図6参照)。したがって、エッジングレンズ100の外形を予め定めることなく、様々な形状の眼鏡フレームに対応することが可能となった。
【0048】
以下、図7及び図8を用いて、エッジングレンズ100の製造工程を説明する。
【0049】
最初に、円柱状(厚さ5mm)の第1透明基板110に第1凹部113を切削加工により形成し、円柱状(厚さ5mm)の第2透明基板120に第2凹部123を切削加工により形成する(S10)。
【0050】
次に、第1透明基板110上に、フレネルレンズ構造116を形成する(S11)。フレネルレンズ構造116は、供給器200から第1透明基板110上に光硬化樹脂210を所定量滴下して(図8(a)参照)、モールド201によって光硬化樹脂210の形状を整えた後(図8(b)及び(c)参照)、第1透明基板110の裏側から紫外線(UV)を照射して(図8(c)参照)、光硬化樹脂210を硬化させることによって形成する(図8(d)参照)。図8(d)では、第1透明基板110の大きさに対して、フレネルレンズ構造116を含めた硬化した光硬化樹脂210の領域が小さい構成での説明となっているが、第1透明基板110全面に形成する構成としても良い。
【0051】
なお、光硬化樹脂210としては、UV硬化性のアクリル樹脂を利用することができる。また、別途フレネルレンズ構造を形成し、完成したフレネルレンズ構造を第1透明基板110上に接着するようにしても良い。さらに、第1凹部113と同様に、第1透明基板を切削加工等することにより形成したり、キャスティングや射出成型で透明基板そのものと一体成型して形成したりしても良い。
【0052】
次に、フレネルレンズ構造116が形成された第1透明基板110及び第2透明基板120上に、それぞれ、膜厚200nmのSiO2皮膜による第1ガスバリア層114及び第2ガスバリア層124を成膜する(S12)。
【0053】
次に、第1透明基板110の第1ガスバリア層114の上から、ITO膜の形成及びパターンニングを行い、第1透明電極111及び第1接続ライン112を形成する。同様に、第2透明基板120の第2ガスバリア層124の上から、ITO膜の形成及びパターンニングを行い、第2透明電極121及び第2接続ライン122を形成する(S13)。
【0054】
次に、第1透明基板110の第1透明電極111の上から、第1配向膜115を成膜し、ラビングを行う。同様に、第2透明基板120の第2透明電極121の上から、第2配向膜125を成膜し、ラビングを行う(S14)。
【0055】
配向膜の形成は、例えば、供給器202から、膜構成材料211を所定量滴下し(図8(e)参照)、所定雰囲気で乾燥(焼成)後、ローラー203を用いてラビングを行う(図8(f)参照)。
【0056】
次に、第1シール材140を形成するために、第1透明基板110上に、供給器204からスペーサ材145が混入されていない光硬化樹脂212を所定箇所(図3(a)の点線60の箇所)に配置する。また、第2シール材141を形成するために、第1透明基板110上に、供給器205からスペーサ材145が混入されている光硬化樹脂213を所定箇所(図3(a)の点線61〜64の箇所)に配置する(S15、図8(g)参照)。なお、第1シール材140は、硬化した際に、第1透明基板110及び第2透明基板120とほぼ同じ屈折率を有するものを使用するのが好ましい。なお、図8(g)〜図8(i)では、便宜上、第1ガスバリア層114、第1透明電極111及び第1配向層115は省略して記載している。
【0057】
次に、光硬化樹脂212の内側に、供給器206から液晶214を所定量滴下する(S16、図8(h)参照)。
【0058】
次に、真空雰囲気下で、第1透明基板110の上から第2透明基板120を重ね合わせて配置し(図8(i)参照)、液晶214部分をマスクして紫外線から保護し、第1透明基板110の裏側から紫外線を照射する。これによって、光硬化樹脂212及び213が硬化して、第1シール材140及び第2シール材141となると共に、第1透明基板110及び第2透明基板120が張り合わされる(S17)。ここで、光硬化性樹脂213に混入されているスペーサ(図示せず)によって、第1透明基板110の上から第2透明基板120のギャップが規定されている。さらに、滴下された液晶214は、第1透明基板110、第2透明基板120及び第1シール材140によって封止されて液晶層130となる。なお、樹脂を硬化させて第1シール材140及び第2シール材141を形成する際には、UVの照射後に、高温雰囲気下で焼成するようにしても良い。
【0059】
次に、第1透明基板110及び第2透明基板120を張り合わせたものを、真空雰囲気化に置き、毛細管現象を利用して、第1シール材140及び第2シール材141との間の隙間に、透明性樹脂を充填させて、充填層134を形成する(S18)。なお、充填層134に用いられる透明性樹脂は、第1透明基板110及び第2透明基板120とほぼ同じ屈折率を有するものを使用する。これによって、ブランクレンズ(レンズ外形形状が形成されていない状態)が完成する。また、充填層134は、レンズの透過率の向上と、レンズ加工時に耐えられる接着力の確保と、研磨剤及び研磨液等が、内部に侵入するのを防止する作用をも有している。ここで、充填層134を形成する透明樹脂は、第1シール材140及び第2シール材141を硬化し、第1透明基板110及び第2透明基板120を張り合わせた後に、第1シール材140及び第2シール材141との間の隙間に配置したが、第2シール材141を配置した後、第1透明基板110及び第2透明基板120を張り合わせる前に、透明樹脂も配置して、第1シール材140、第2シール材141、及び透明樹脂を同時に硬化させて、第1透明基板110及び第2透明基板120を張り合わせてもよい。その場合は、第2シール材141間には、間隙を設ける必要はなく、連続して形成してもよい。
【0060】
次に、ブランクレンズの外形を研磨加工して、レンズ形状とし、フィニッシュドレンズ100´を完成させる(S19)。なお、レンズ形状の形成は、片面ずつ行うが、片面のみ形成されているものをセミフィニッシュドレンズと言う。
【0061】
次に、眼鏡フレーム2の形状に合わせて、例えば、図4に示すフィニッシュドレンズ100´をエッジングし、エッジングレンズ100を完成させ(S20)、液晶レンズ構造50とスプリングコネクタ10及び20との導通を図るように、眼鏡フレーム2へ装着することによって、電子眼鏡1を完成させる(S21)。
【0062】
ブランクレンズ100´´の状態(図4参照)では、その外周にスペーサ材145が混入された第2シール材141が形成され、液晶レンズ構造50の周囲には第1シール材140が形成され、第1シール材140と第2シール材141との隙間にも充填層134が形成されている。したがって、第1シール材140にはスペーサ材145が混入されていなくても、液晶レンズ構造50のセルギャップは所定の厚さに維持される。また、その後の研磨加工が施されて、フィニッシュドレンズ100´(図4の点線部分参照)となる際にも、同様に、液晶レンズ構造50のセルギャップは、所定の厚さに維持される。さらに、その後、エッジングされて、エッジングレンズ100(図4の一点鎖線参照)となった場合には、外周に配置されている第2シール材141が削除されてしまい、エッジングレンズ100内には、スペーサ材145が残存しないので、装着者の視界の邪魔や、違和感が生じることが無い。また、スペーサ材145が存在しないことによって、透明度を向上させる作用もある。
【0063】
エッジングレンズ100の製造過程において、最も液晶レンズ構造50に圧力が加わるのは、フィニッシュドレンズとするための研磨加工時であるので、その状態において、スペーサ材145が混入した第2シール材141が健在であれば、液晶レンズ構造50のセルギャップは所定の厚さに維持される。その後、エッジングレンズ100にエッジングされてしまうと、第1シール材140及びその外周の充填層134によって、充分に、液晶層130のギャップ間隔は所定の厚さに維持される。
【0064】
このように、液晶レンズでは、液晶レンズ構造50に圧力が加わる加工時には、スペーサ材145が混入された第2シール材141が残存するが、眼鏡フレーム2に装着される際には、スペーサ材145が混入された第2シール材141が削除される点に、大きな特徴を有している。
【0065】
図9は、他のブランクレンズ101´´の断面図である。
【0066】
図9において、図4と同じ構成には同じ番号を付して説明を省略する。図9に示すブランクレンズ101´´を研磨加工してフィニッシュドレンズ101´が形成され、さらにエッジングされて眼鏡フレーム2に装着されるエッジングレンズ101となる。
【0067】
図4に示すブランクレンズ100´´と、図9に示すブランクレンズ101´´との差異は、スペーサ材146が混入された第3シール材142を有しており、エッジングレンズ101のヤゲンEの部分に第3シール材142の一部又は全部が残存するように構成されている点である。なお、スペーサ材146は、前述したスペーサ材145と同じ材料を用いても良い。しかしながら、構成によっては、スペーサ材145の粒径とスペーサ材146の粒径を変更する必要がある場合がある。また、図9において、ヤゲンEを含まないエッジングレンズ101の幅をW4、ヤゲンEの高さをW5としている。
【0068】
図9に示すヤゲンEの部分は、眼鏡フレーム2の内側の溝部に嵌り込んでしまうので、装着者の視界の妨げとはならない。したがって、その箇所にスペーサ材146を含んでいても、前述したような不具合は生じない上に、エッジングの際にも、その一部が残存しているので、より堅固な構造となり、液晶レンズ構造50のセルギャップを一定に維持すること及び面精度を良好に保つことが可能となる。
【0069】
なお、ヤゲンEの部分に、スペーサ材146を含む第3シール材142の一部を含んでいるが、ヤゲンEの部分は、実質的に、装着者の視野に影響を与えないことから、図9に示すエッジング後のエッジングレンズ101においては、実質的にスペーサ材が残らないと言うことができる。
【0070】
図10は、図9に示すブランクレンズ101´´を構成する2枚の透明基板を示す図である。
【0071】
図10(a)に示すように、第1透明基板110上に点線60で記載した箇所に、第1シール材140が配置され、点線61〜64で記載した4箇所に第2シール材141が配置され、点線65〜68で記載した4箇所に第3シール材142は配置される。第2シール材141は、第1透明基板110の外周付近であれば、図10(a)に示すように、4箇所でなくても、例えば6箇所等であっても良く、また円弧形状でなくても、例えば直線形状であっても良い。同様に、第3シール材142は、第2シール材142と第1シール材140の間であって、予め既知のレンズ形状のヤゲンの位置であれば、図10(a)に示すように、4箇所でなくても、例えば6箇所等であっても良い。ただし、第2シール材141と第3シール材142の配置場所については、できるだけ中心対称とする方が張り合わせ精度が出やすく好適である。また、第1シール材140と第2シール材141との間の空間には充填材を注入する必要があるため、第2シール材141及び第3シール材142間には、間隙が形成されている。
【0072】
図11は、更に他のブランクレンズ102´´の断面図である。
【0073】
図11において、図9と同じ構成には同じ番号を付して説明を省略する。図11に示すブランクレンズ102´´を研磨加工してフィニッシュドレンズ102´が形成され、さらにエッジングされて眼鏡フレーム2に装着されるエッジングレンズ102となる。
【0074】
図11に示すブランクレンズ102´´と、図9に示すブランクレンズ101´´との差異は、スペーサ材146を含む第3シール材143が、着色されている点のみである。エッジング後のエッジングレンズ102のヤゲンEの部分は、眼鏡フレーム2の内側の溝部に嵌り込んでしまうので、着色されていても、装着者の視野に影響を与えない。また、着色されていることによって、眼鏡フレーム2の周囲に着色によるデザイン的な影響を与えることができ、全て透明なレンズと異なった印象を与えることができるという更なる利点がある。なお、着色される色は、眼鏡フレームと同じ色にしても良いし、黒、茶、赤等、どのような色でも良い。
【0075】
なお、ヤゲンEの部分(W5)に、スペーサ材146を含む第3シール材143の一部を含んでいるが、ヤゲンEの部分は、実質的に、装着者の視野に影響を与えないことから、図9に示すエッジング後のエッジングレンズ101においては、実質的にスペーサ材が残らないと言うことができる。
【0076】
図12は、更に他のブランクレンズ103´´の断面図である。
【0077】
図12において、図9と同じ構成には同じ番号を付して説明を省略する。図12に示すブランクレンズ103´´を研磨加工してフィニッシュドレンズ103´が形成され、さらにエッジングされて眼鏡フレーム2に装着されるエッジングレンズ103となる。
【0078】
図12に示すブランクレンズ103´´と、図9に示すブランクレンズ101´´との差異は、着色されたスペーサ材146を含む第3シール材143が、ヤゲンEの部分から、幅W6だけ、内側に入っている点のみである。幅W6は、実質的に装着者の視野を妨害しない範囲内で設定して良く、例えば、1〜5mm程度とすることができる。着色された領域を視野に影響を与えない範囲内で増加させることによって、よりデザイン性能を向上させることが可能となる。エッジングレンズ103内の場所によって、幅W6を可変させたり、無くしたりすることで、眼鏡フレーム等を含めたプロダクトデザインをさらに向上させることができる。また、これによって、スペーサ材146が混入した第3シール材143の部分が多く残存することとなり、より、液晶レンズ構造50のセルギャップを一定に維持すること及び面精度を良好に保つことが可能となる。
【0079】
なお、ヤゲンE(W5)及び幅W6の部分に、スペーサ材146を含む第3シール材143の一部を含んでいるが、それらの部分は、実質的に、装着者の視野に影響を与えないことから、図12に示すエッジング後のエッジングレンズ102においては、実質的にスペーサ材が残らないと言うことができる。
【0080】
本実施形態では、電子眼鏡用レンズを例に説明したが、本発明のエッジング前レンズ及びエッジングレンズは、液晶を注入後、レンズの一部(中央部)に液晶を封入し、最後に所望の形に外形カットする液晶レンズであれば、電子顕微鏡や電子カメラ、ピックアップレンズ等、いかなる用途のものでも採用することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 電子眼鏡
2 眼鏡フレーム
10 第1スプリングコネクタ
20 第2スプリングコネクタ
50 液晶レンズ構造
100´´、101´´、102´´、103´´ ブランクレンズ
100´、101´、102´、103´ フィニッシュドレンズ
100、101、102、103 エッジングレンズ
110 第1透明基板
120 第2透明基板
130 液晶層
134 充填材
140 第1シール材
141 第2シール材
142、143 第3シール材
145、146 スペーサ
E ヤゲン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1透明基板と、
第2透明基板と、
スペーサ材が混入されない第1シール材と、
前記第1透明基板、第2透明基板及び第1シール材間に封止された液晶層と、
前記第1透明基板及び第2透明基板間の前記第1シール材の外側であって、エッジング後に削除される位置に配置されたスペーサ材が混入された第2シール材と、
を有することを特徴とするエッジング前レンズ。
【請求項2】
前記第1シール材と前記第2シール材間に配置された充填層を更に有する、請求項1に記載のエッジング前レンズ。
【請求項3】
前記第1透明基板及び第2透明基板間であって、前記第1シール材と前記第2シール材間に配置され且つスペーサ材が混入された第3シール材を更に有する、請求項1又は2に記載のエッジング前レンズ。
【請求項4】
前記第3シール材は、着色されている、請求項3に記載のエッジング前レンズ。
【請求項5】
前記第3シール材は、エッジングレンズのヤゲン部に残存するように配置されている、請求項3又は4に記載のエッジング前レンズ。
【請求項6】
エッジングレンズの製造方法であって、
第1透明基板及び第2透明基板間に、スペーサ材が混入されない第1シール材及び前記第1シール材の外周側にスペーサ材が混入された第2シール材を配置することによって、前記第1透明基板、第2透明基板及び第1シール材間に封止された液晶層を有するブランクレンズを形成し、
前記ブランクレンズを加工することによってフィニッシュドレンズを形成し、
前記第2シール材を含む部分を削除することによってエッジングレンズを形成する、
ステップを有することを特徴とするエッジングレンズの製造方法。
【請求項7】
前記第1シール材と前記第2シール材間に充填層を形成するステップを更に有する、請求項6に記載のエッジングレンズの製造方法。
【請求項8】
前記ブランクレンズは、前記第1透明基板及び第2透明基板間であって、前記第1シール材と前記第2シール材間に配置され且つスペーサ材が混入された第3シール材を更に有する、請求項6又は7に記載のエッジングレンズの製造方法。
【請求項9】
前記第3シール材は、着色されている、請求項8に記載のエッジングレンズの製造方法。
【請求項10】
前記第3シール材が、エッジングレンズのヤゲン部に残存するようにエッジングが行われる、請求項8又は9に記載のエッジングレンズの製造方法。
【請求項1】
第1透明基板と、
第2透明基板と、
スペーサ材が混入されない第1シール材と、
前記第1透明基板、第2透明基板及び第1シール材間に封止された液晶層と、
前記第1透明基板及び第2透明基板間の前記第1シール材の外側であって、エッジング後に削除される位置に配置されたスペーサ材が混入された第2シール材と、
を有することを特徴とするエッジング前レンズ。
【請求項2】
前記第1シール材と前記第2シール材間に配置された充填層を更に有する、請求項1に記載のエッジング前レンズ。
【請求項3】
前記第1透明基板及び第2透明基板間であって、前記第1シール材と前記第2シール材間に配置され且つスペーサ材が混入された第3シール材を更に有する、請求項1又は2に記載のエッジング前レンズ。
【請求項4】
前記第3シール材は、着色されている、請求項3に記載のエッジング前レンズ。
【請求項5】
前記第3シール材は、エッジングレンズのヤゲン部に残存するように配置されている、請求項3又は4に記載のエッジング前レンズ。
【請求項6】
エッジングレンズの製造方法であって、
第1透明基板及び第2透明基板間に、スペーサ材が混入されない第1シール材及び前記第1シール材の外周側にスペーサ材が混入された第2シール材を配置することによって、前記第1透明基板、第2透明基板及び第1シール材間に封止された液晶層を有するブランクレンズを形成し、
前記ブランクレンズを加工することによってフィニッシュドレンズを形成し、
前記第2シール材を含む部分を削除することによってエッジングレンズを形成する、
ステップを有することを特徴とするエッジングレンズの製造方法。
【請求項7】
前記第1シール材と前記第2シール材間に充填層を形成するステップを更に有する、請求項6に記載のエッジングレンズの製造方法。
【請求項8】
前記ブランクレンズは、前記第1透明基板及び第2透明基板間であって、前記第1シール材と前記第2シール材間に配置され且つスペーサ材が混入された第3シール材を更に有する、請求項6又は7に記載のエッジングレンズの製造方法。
【請求項9】
前記第3シール材は、着色されている、請求項8に記載のエッジングレンズの製造方法。
【請求項10】
前記第3シール材が、エッジングレンズのヤゲン部に残存するようにエッジングが行われる、請求項8又は9に記載のエッジングレンズの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−227258(P2011−227258A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96274(P2010−96274)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】
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