説明

エッチング方法

【課題】実施形態によれば、熱燐酸溶液を用いた窒化シリコン膜のエッチング選択性を高めたエッチング方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、エッチング方法は、シリコン窒化膜の表面と、前記シリコン窒化膜と異なる材料の非エッチング膜の表面とを含む処理面に熱燐酸耐性材料を供給し、前記シリコン窒化膜の表面よりも相対的に密に前記熱燐酸耐性材料が前記非エッチング膜の表面に形成された状態で、熱燐酸溶液を用いて前記シリコン窒化膜をエッチングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化シリコンに対する窒化シリコンの選択的なウェットエッチングのエッチング液として、一般に熱燐酸溶液が用いられている。しかし、熱燐酸溶液は、酸化シリコンも、窒化シリコンのエッチングレートの30分の1程度ではあるがエッチングしてしまう特性を持っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−74060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態によれば、熱燐酸溶液を用いた窒化シリコン膜のエッチング選択性を高めたエッチング方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、エッチング方法は、シリコン窒化膜の表面と、前記シリコン窒化膜と異なる材料の非エッチング膜の表面とを含む処理面に熱燐酸耐性材料を供給し、前記シリコン窒化膜の表面よりも相対的に密に前記熱燐酸耐性材料が前記非エッチング膜の表面に形成された状態で、熱燐酸溶液を用いて前記シリコン窒化膜をエッチングする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1実施形態のエッチング方法を示す模式断面図。
【図2】第2実施形態のエッチング方法を示す模式断面図。
【図3】第3実施形態のエッチング方法を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ要素には同じ符号を付している。
【0008】
(第1実施形態)
図1(a)〜(d)は、第1実施形態のエッチング方法を示す模式断面図である。
【0009】
図1(a)は、実施形態による処理対象のウェーハ10の要部の模式断面を表す。ウェーハ10は、基板として例えばシリコン基板11を有する。
【0010】
シリコン基板11上には、熱燐酸溶液を用いたエッチングの対象物としてシリコン窒化膜13が形成されている。なお、シリコン窒化膜13は、シリコン基板11上に直接形成されることに限らず、他の半導体膜、絶縁膜、導電膜などを介してシリコン基板11上に形成されていてもよい。
【0011】
シリコン窒化膜13が形成された領域の隣の領域には、シリコン酸化膜12が形成されている。シリコン酸化膜12は、熱燐酸溶液によるエッチングの対象ではない非エッチング膜である。シリコン酸化膜12は、シリコン基板11上に直接、あるいは他の半導体膜、絶縁膜、導電膜などを介して形成されている。
【0012】
すなわち、同じシリコン基板11上に、熱燐酸溶液によるエッチング対象であるシリコン窒化膜13と、熱燐酸溶液によるエッチングの非対象である非エッチング膜としてのシリコン酸化膜12とが形成されている。
【0013】
シリコン窒化膜13の表面及びシリコン酸化膜12の表面は露出され、それらシリコン窒化膜13の表面及びシリコン酸化膜12の表面を含む面を処理面とする。なお、シリコン窒化膜13の表面とシリコン酸化膜12の表面との間に段差が生じていることに限らず、シリコン窒化膜13の表面とシリコン酸化膜12の表面とが面一であってもよい。
【0014】
第1実施形態によれば、シリコン酸化膜12の表面に予め熱燐酸耐性材料を形成した後、熱燐酸溶液を用いたシリコン窒化膜13のエッチングを行う。
【0015】
例えば、ウェーハ10を熱燐酸耐性材料の溶液に浸漬することで、処理面に熱燐酸耐性材料を供給する。あるいは、処理面に、例えばスピンコート法で熱燐酸耐性材料の溶液を供給、または熱燐酸耐性材料の蒸気を供給する。
あるいは、CVD(chemical vapor deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、MLD(Molecular Layer Deposition)法などで、処理面に熱燐酸耐性材料の膜を形成することもできる。
【0016】
熱燐酸耐性材料は、図1(b)に示すように、例えば、自己組織化単分子膜(SAM:Self-Assembled Monolayer)15として、シリコン酸化膜12の表面に形成される。
【0017】
SAM15は、シリコン窒化膜13の表面よりも相対的に密にシリコン酸化膜12の表面に形成される。逆に言えば、シリコン窒化膜13の表面におけるSAM15は、シリコン酸化膜12の表面よりも相対的に疎である。ここで、「相対的に疎」には、SAM15が形成されないことも含む。
【0018】
すなわち、シリコン窒化膜13の表面には、SAM15がほとんど形成されない。あるいは、シリコン窒化膜13の表面にSAM15が形成されても密度が低く、シリコン窒化膜13の表面はSAM15で覆われない。
【0019】
SAM15は、シリコン酸化膜12の表面に化学吸着する有機分子膜である。ある条件下では、化学吸着の過程で、有機分子どうしの相互作用によって吸着分子が自発的に密に集合し、分子の配向性のそろった有機分子膜がシリコン酸化膜12の表面に形成される。シリコン酸化膜12の表面が分子によって覆われ、その表面の反応サイトがなくなってしまうと、それ以上吸着反応が起こらないため、単分子膜が形成されたところで膜の成長が停止する。SAM15とシリコン酸化膜12の表面とは共有結合によって強固に結合しているので、熱燐酸溶液に対して安定である。
【0020】
SAM15は、無機材料と親和性、反応性を有するリンカーとして、例えば、OH基(ヒドロキシ基)とシランカップリング反応するシランカップリング剤を含む。リンカーは、シリコン酸化膜12の表面に化学吸着する官能基を有する。そのような官能基として、シラノール基、ヒドロキシ基、アミン基、アゾ基、ホスホニル基、エポキシ基、ヒドリド基を一例に挙げることができる。
【0021】
SAM15は、シリコン窒化膜13の表面に比べて多くのOH基を有するシリコン酸化膜12の表面に選択的に形成される。シリコン酸化膜12の表面はSAM15で被覆され、SAM15は、熱燐酸溶液のシリコン酸化膜12表面への浸入を許さない。シリコン窒化膜13の表面はSAM15で被覆されず、熱燐酸溶液は、露出されたシリコン窒化膜13の表面に浸入することができる。
【0022】
SAM15がシリコン酸化膜12の表面に形成されると、シリコン酸化膜12に化学吸着した官能基とは反対側にあるもう一つの末端官能基によってシリコン酸化膜12の表面が覆われる。その末端官能基は、熱燐酸耐性のある機能基であり、炭素−水素結合、または炭素−フッ素結合を含み、例えば、フルオロカーボン基、アルキル基、フルオロアルキル基を一例として挙げることができる。
【0023】
シリコン酸化膜12の表面がSAM15で被覆された状態で、水の沸点以上の温度(例えば150℃〜160℃)の熱燐酸溶液を用いて、シリコン窒化膜13をエッチングする。例えば、ウェーハ10が熱燐酸溶液中に浸漬される。あるいは、ウェーハ10の表面に熱燐酸溶液が供給される。
【0024】
このエッチング中、シリコン酸化膜12の表面はSAM15によって保護されている。そのため、図1(c)に示すように、シリコン酸化膜12はエッチングされず、シリコン窒化膜13のみを選択的にエッチングして除去することができる。
【0025】
すなわち、本実施形態によれば、熱燐酸溶液を用いたシリコン窒化膜13のエッチングに際して、シリコン酸化膜12に対するシリコン窒化膜13のエッチング選択性を高めることができる。この結果、シリコン酸化膜12の不所望のエッチングに起因したデバイス特性のばらつきや劣化を防ぐことができる。
【0026】
熱燐酸処理の後、SAM15は、図1(d)に示すように、例えばアッシングプロセスなどの酸化処理によって除去することができる。なお、このときにSAM15を除去しなくても、後のプロセスでSAM15が除去される場合がある。また、SAM15は、デバイス特性や、後のプロセスに影響がなければ残しておいてもよい。
【0027】
(第2実施形態)
図2(a)〜(d)は、第2実施形態のエッチング方法を示す模式断面図である。
【0028】
図2(a)に示すように、エッチング対象膜であるシリコン窒化膜13が、非エッチング膜であるシリコン酸化膜12の一部の表面上に形成されている場合、シリコン窒化膜13がエッチングされて除去された部分にシリコン酸化膜12が露出される。そのシリコン窒化膜13で覆われていたシリコン酸化膜12の表面には、エッチング前に予めSAM15を形成しておくことができない。
【0029】
シリコン窒化膜13で覆われていないシリコン酸化膜12の表面には、図2(b)に示すように、上記第1実施形態と同様にSAM15を形成することができる。
【0030】
第2実施形態では、図2(b)の工程の後、SAM15が添加された熱燐酸溶液を使って、シリコン窒化膜13のエッチングを行う。熱燐酸溶液にSAM15が添加されているため、熱燐酸溶液によるシリコン酸化膜13のエッチング中にシリコン酸化膜12の表面にSAM15を形成することができる。
【0031】
したがって、シリコン窒化膜13が除去された部分の下のシリコン酸化膜12の表面にも、図2(c)に示すように、SAM15を形成することができる。この結果、シリコン酸化膜12の熱燐酸溶液によるエッチングを抑制することができる。
【0032】
熱燐酸処理の後、SAM15は、図2(d)に示すように、例えばアッシングプロセスなどの酸化処理によって除去することができる。
【0033】
熱燐酸溶液中でSAM15が分解することなく分散して含まれるように、水に対して親和性のある溶媒も合わせて熱燐酸溶液に添加することが望ましい。そのような溶媒の一例として、例えばイソプロプルアルコールを挙げることができる。
【0034】
(第3実施形態)
図3(a)〜(c)は、第3実施形態のエッチング方法を示す模式断面図である。
【0035】
第2実施形態と同様にシリコン窒化膜13がシリコン酸化膜12上に形成されている場合において、図3(a)に示すように、シリコン窒化膜13に覆われていないシリコン酸化膜12の表面に予めSAM15を形成せずに、SAM15が添加された熱燐酸溶液を使って、シリコン窒化膜13のエッチングを行ってもよい。
【0036】
すなわち、第3実施形態によれば、熱燐酸溶液を使ったシリコン窒化膜13のエッチング中に、シリコン窒化膜13で覆われていなかったシリコン酸化膜12の表面、およびシリコン窒化膜13が除去された部分の下のシリコン酸化膜12の表面に、図3(b)に示すように、SAM15が形成される。この結果、シリコン酸化膜12の熱燐酸溶液によるエッチングを抑制することができる。
【0037】
熱燐酸処理の後、SAM15は、図3(c)に示すように、例えばアッシングプロセスなどの酸化処理によって除去することができる。
【0038】
熱燐酸耐性材料の被覆によって熱燐酸溶液から保護する非エッチング膜としては、シリコン酸化膜に限らず、例えば金属膜などであってもよい。金属膜に対して形成される熱燐酸耐性材料は、例えばチオール、ホスホニルを含むものを用いることができる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
10…ウェーハ、11…シリコン基板、12…シリコン酸化膜、13…シリコン窒化膜、15…SAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン窒化膜の表面と、シリコン酸化膜の表面とを含む処理面に熱燐酸耐性材料を供給し、前記シリコン窒化膜の表面よりも相対的に密に、予め前記熱燐酸耐性材料をSAM(Self-Assembled Monolayer)として前記シリコン酸化膜の表面に形成し、
前記SAMを形成した後に、前記シリコン窒化膜の表面に前記熱燐酸耐性材料が添加された熱燐酸溶液を供給し、前記シリコン窒化膜をエッチングするエッチング方法であって、
前記熱燐酸耐性材料は、前記シリコン酸化膜に化学吸着した官能基の反対側にある末端官能基として、炭素−水素結合、または炭素−フッ素結合を含み、
前記熱燐酸耐性材料は、前記シリコン酸化膜と化学吸着するリンカーとしてシランカップリング剤を含み、
前記熱燐酸溶液による前記シリコン窒化膜のエッチング中に、前記シリコン酸化膜の表面に前記熱燐酸耐性材料を形成することを特徴とするエッチング方法。
【請求項2】
シリコン窒化膜の表面と、前記シリコン窒化膜と異なる材料の非エッチング膜の表面とを含む処理面に熱燐酸耐性材料を供給し、
前記シリコン窒化膜の表面よりも相対的に密に前記熱燐酸耐性材料が前記非エッチング膜の表面に形成された状態で、熱燐酸溶液を用いて前記シリコン窒化膜をエッチングすることを特徴とするエッチング方法。
【請求項3】
前記非エッチング膜の表面に予め前記熱燐酸耐性材料を形成した後に、前記シリコン窒化膜の表面に前記熱燐酸溶液を供給することを特徴とする請求項2記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記熱燐酸耐性材料が添加された前記熱燐酸溶液を前記処理面に供給し、前記熱燐酸溶液による前記シリコン窒化膜のエッチング中に、前記非エッチング膜の表面に前記熱燐酸耐性材料を形成することを特徴とする請求項2または3に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記熱燐酸耐性材料は、前記非エッチング膜の表面にSAM(Self-Assembled Monolayer)として形成されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記熱燐酸耐性材料は、前記非エッチング膜に化学吸着した官能基の反対側にある末端官能基として、炭素−水素結合、または炭素−フッ素結合を含むことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記非エッチング膜は、シリコン酸化膜であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1つに記載のエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−62278(P2013−62278A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197977(P2011−197977)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】