説明

エッチング装置及び薄型ガラス基板の製造方法

【課題】 薄膜デバイス転写のためにガラス基板をフッ酸溶液に浸漬させてエッチングする従来技術では、高速且つ面内均一にガラスをエッチングすることができなかった。従来のエッチングレートでは、ガラス基板をエッチングするために2時間以上を要し、量産技術としてはスループットが非常に遅いという課題があった。
【解決手段】 ガラス基板14にシャワー状のフッ酸溶液16を吐出することによりエッチングが可能なエッチング装置100、及びそれを用いたエッチングプロセスを提供する。シャワー15の噴霧角度、シャワーノズル13と基板14との間の間隔、基板14の揺動振幅長などを適切に設計することにより、シャワー15を基板14面内に均一に供給可能とする。基板14表面への微粒子17(フッ酸に対する不溶物)の付着を効果的に抑制でき、非常に高速且つ面内均一なエッチングを実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング装置及び薄型ガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタに代表されるような薄膜デバイスは主に絶縁性基板上に形成され、中でも液晶ディスプレイのようなディスプレイ用途のためには一般に透明なガラス基板が用いられる。
【0003】
近年、このようなディスプレイに対して、軽量・薄型化、更にはフレキシブル性などの要求が強まり、それにともない樹脂基板上に薄膜デバイスを形成する技術開発が活発に進められている。
【0004】
このような、樹脂基板上に薄膜デバイスを実現する技術としては、主に、(1)樹脂基板が耐えられるような低温プロセスで薄膜デバイスを樹脂基板上に直接形成する技術、(2)従来プロセスでガラス基板上に薄膜デバイスを形成し、その後、何らかの方法でその薄膜デバイスを樹脂基板上へ転写する技術、の2種類がある。本発明は、このうち(2)の技術に関する。
【0005】
このような技術(2)に関しては、例えば、非特許文献1の中では、薄膜トランジスタアレイを形成したガラス基板をフッ酸溶液に浸漬させ、その中でフッ酸溶液の噴流を基板に供給しながらガラスをエッチングし、その後、樹脂基板上へ転写する技術が紹介されている。また、特許文献1では、液晶表示素子として構成された2枚の貼り合せガラス基板をフッ酸溶液に浸漬させ、ガラスをエッチングする技術が紹介されている。更には、特許文献2では、ガラス基板上にエッチングストッパ層としてモリブデン膜を成膜し、その後、薄膜トランジスタアレイを形成した後、フッ酸溶液に浸漬させることでガラスをエッチングして転写する技術が紹介されている。
【特許文献1】特開平4−116619号公報
【特許文献2】特開2003−323132号公報
【非特許文献1】K. Takechi, T. Eguchi, H. Kanoh, T. Ito, and S. Otsuki, “High-rate glass etching process for transferring polycrystalline silicon thin-film transistors to flexible substrates”, IEEE Transactions on Semiconductor Manufacturing, Vol. 18, No.3, (2005) pp.384-389
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1、2には、フッ酸溶液を用いたガラスエッチングの詳細が開示されていないが、例えば、特許文献2ではガラスをエッチングするのに3.5時間程度要することが記載されている。これより推定されるエッチングレートは、およそ3μm/分程度である。また、非特許文献1では、フッ酸濃度を高濃度してエッチングレートを速めようとすると(6μm/分以上)、フッ酸溶液に不溶な微粒子がガラス表面に付着しやすくなり、その結果、面内のエッチング均一性が損なわれることが開示されている。
【0007】
このように、ガラス基板をフッ酸溶液に浸漬させてエッチングする従来技術では、高速且つ面内均一にガラスをエッチングすることができなかった。従来技術のエッチングレートでは、ガラス基板をエッチングするために2時間以上を要し、量産技術としてはスループットが非常に遅いという課題があった。
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、基板表面への微粒子の付着を効果的に抑制しつつ非常に高速なエッチングレートを実現することができるエッチング装置及び薄型ガラス基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のエッチング装置は、基板をエッチングする装置において、少なくともフッ酸を含む酸溶液を前記基板の表面上にシャワー状に吐出可能な複数のノズルが平面的に配置されたノズル機構と、前記基板と前記ノズル機構とが対面した状態で、前記ノズル機構と前記基板とのうちの少なくとも何れか一方を他方に対して相対的に所定の方向に揺動可能な揺動機構と、前記基板に吐出された後の前記酸溶液から微粒子を除去するフィルタ機構と、前記フィルタ機構による微粒子除去後の酸溶液を前記ノズル機構に供給する循環機構と、を備えることを特徴としている。
【0010】
本発明のエッチング装置においては、前記揺動機構は、前記基板を前記ノズル機構に対して所定の方向に揺動させることが好ましい。
【0011】
本発明のエッチング装置においては、前記基板の表面とノズル先端との距離をD、ノズル機構における隣合うノズルどうしの間隔の最大値をLmax、前記ノズル先端から吐出される前記酸溶液の広がり角度をθとすると、以下の不等式(1)を満たすことが好ましい。
【0012】
Lmax÷2<D×tan(θ÷2)・・・・・・(1)
本発明のエッチング装置においては、前記ノズル機構における隣合うノズルどうしの間隔の最大値をLmax、前記揺動機構による揺動振幅長の最小値をMminとすると、以下の不等式(2)を満たすことが好ましい。
【0013】
Lmax÷2<Mmin・・・・・・(2)
本発明のエッチング装置においては、前記ノズル1個当たりの酸溶液の吐出量が1分間につき0.1リットルよりも大きいことが好ましい。
【0014】
本発明のエッチング装置においては、前記フィルタ機構は、前記基板に吐出された後の前記酸溶液が再び前記ノズル機構に供給される過程で前記酸溶液を一時的に貯留する容器と、前記容器内において前記酸溶液に渦流を生じさせる回転機構と、前記容器の周縁部において沈降する微粒子を蓄積する微粒子蓄積部と、を有することが好ましい。
【0015】
本発明のエッチング装置においては、前記ノズル機構が、酸溶液と水とを交互に前記基板の表面上にシャワー状に吐出可能であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の薄型ガラス基板の製造方法は、本発明のエッチング装置を用いて、酸化ケイ素を主成分とするガラス基板を2μm/分以上のエッチングレートでエッチングすることにより薄型ガラス基板を製造することを特徴としている。
【0017】
本発明の薄型ガラス基板の製造方法においては、前記ガラス基板のエッチングされない側の表面に電子デバイスが形成されていることが好ましい。
【0018】
本発明の薄型ガラス基板の製造方法においては、前記電子デバイスが薄膜トランジスタであることが好ましい。
【0019】
本発明の薄型ガラス基板の製造方法においては、前記酸溶液は、フッ酸と、塩酸と硝酸のうちの少なくとも何れか一方と、の混合溶液であることが好ましい。
【0020】
本発明の薄型ガラス基板の製造方法においては、前記ノズルからの前記酸溶液の吐出圧力が0.05MPa以上0.7MPa以下であることが好ましい。
【0021】
本発明の薄型ガラス基板の製造方法においては、前記ガラス基板は、一辺の長さが250mm以上であることが好ましい。
【0022】
本発明の薄型ガラス基板の製造方法においては、上記の何れかの製造方法で薄型ガラス基板を製造し、前記ノズルからの前記酸溶液の吐出を停止した後、引き続いて前記ノズルから水をシャワー状に薄型ガラス基板のエッチング表面に吐出して該エッチング表面を洗浄することが好ましい。
【0023】
また、本発明の薄膜トランジスタアレイ基板の製造方法は、薄膜トランジスタアレイが形成されたガラス基板の薄膜トランジスタアレイ形成表面に保護フィルムを貼り付けた後、上記の何れかの製造方法における方法でガラス基板を裏面側からエッチングし、ガラス基板の厚さを0μmより大で200μm以下まで薄くすることを特徴としている。
【0024】
本発明の薄膜トランジスタアレイ基板の製造方法においては、フッ酸に対するガラスのエッチングレートよりも5倍以上遅いエッチングレートを有するエッチングストッパ膜、薄膜トランジスタアレイの順に形成されたガラス基板の薄膜トランジスタアレイ形成表面に保護フィルムを貼り付けた後、請求項8乃至14の何れか一項に記載の方法でガラス基板を裏面側から全てエッチング除去してしまうことが好ましい。
【0025】
本発明の薄膜トランジスタアレイ基板の製造方法においては、前記エッチングストッパ膜が、少なくとも、金、白金、銀、銅、鉛、タングステン、モリブデン、タンタル、クロムの金属、あるいはこれらの金属の酸化物又はフッ化物又は窒化物又は塩化物を含むことが好ましい。
【0026】
本発明のデバイスの製造方法は、薄膜デバイスが形成された一対のガラス基板を相互に貼り合わせることによりデバイスを形成するデバイス形成工程と、前記第一対のガラス基板を上記の何れかの方法でエッチングするエッチング工程と、をこの順に行うことを特徴としている。
【0027】
本発明のデバイスの製造方法においては、前記一対のガラス基板のうちの一方のガラス基板には予め薄膜トランジスタアレイが形成され、他方のガラス基板には予めカラーフィルタが形成されていることが好ましい。
【0028】
或いは、本発明のデバイスの製造方法は、薄膜デバイスが形成されたガラス基板と、薄膜デバイスが形成されたフレキシブル基板と、を相互に貼り合わせることによりデバイスを形成するデバイス形成工程と、前記ガラス基板を上記の何れかの方法でエッチングするエッチング工程と、をこの順に行うことを特徴としている。
【0029】
本発明のデバイスの製造方法においては、前記ガラス基板には予め薄膜トランジスタアレイが形成され、前記フレキシブル基板には予めカラーフィルタが形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ガラス基板をフッ酸溶液に浸漬させるのではなく、ガラス基板にシャワー状のフッ酸溶液を吐出することによりエッチングを行うので、基板表面への微粒子の付着を効果的に抑制しつつ非常に高速なエッチングレートを実現することができる。
【0031】
また、基板とノズル機構とが対面した状態で、ノズル機構と基板とのうちの少なくとも何れか一方を他方に対して相対的に所定の方向に揺動させるので、均一にエッチングを行うことができる。
【0032】
更に、基板に吐出された後の酸溶液が再びノズル機構に供給される過程で、該酸溶液中の微粒子を除去するので、常に正常な酸溶液を基板に供給することができる。よって、均一なエッチングを継続的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態について説明する。
【0034】
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係るエッチング装置100の構成を示す模式図である。
【0035】
図1に示すように、エッチング装置100は、内部において基板14に対するエッチングが行われるエッチングバス10と、基板14を保持する基板ホルダ11と、基板ホルダ11に保持された基板14に対して酸溶液16を吐出するノズル機構12と、基板ホルダ11を揺動させる揺動機構(図示略)と、基板14に吐出された後の酸溶液が再びノズル機構12に供給される過程で該酸溶液中の不純物を除去するフィルタ機構20と、基板14に対する吐出後にエッチングバス10内に貯留された酸溶液をフィルタ機構20を介して再びノズル機構12に供給する循環機構40と、ノズル機構12に洗浄水を供給する水供給機構50と、を備えて構成されている。
【0036】
エッチング装置100によるエッチング対象となる基板14は、例えば、平板状に形成されたものであることが挙げられる。
【0037】
また、酸溶液16には、少なくともフッ酸が含まれているものとする。
【0038】
基板ホルダ11は、エッチング対象の基板14を保持した状態で、図示しない揺動機構により、上下運動、左右運動、回転運動或いはこれらの組み合わせの方向の運動のうち、何れか所定の方向への揺動(反復運動)が可能とされている。
【0039】
すなわち、揺動機構は、基板14とノズル機構12とが対面した状態で、エッチング中の基板14をノズル機構12に対して所定の方向に揺動させることが可能である。
【0040】
ノズル機構12は、平面的に配列された複数個のノズル13を備えている。
【0041】
これらノズル13は、基板ホルダ11に保持された基板14側を向くように配設され、基板ホルダ11に保持された基板14の表面に対して酸溶液16或いは後述するように水をシャワー状に(酸溶液のシャワー15を)吐出可能に構成されている。
【0042】
なお、各ノズル13は、酸溶液16或いは水を、例えば霧状に吐出する(噴霧する)ことも好ましい。
【0043】
なお、基板ホルダ11は、ノズル機構12の各ノズル13と基板14との間を遮らないように、基板14を保持する。
【0044】
ノズル機構12の各ノズル13から基板14の表面に吐出された酸溶液16は、該基板14の表面から流れ落ちてエッチングバス10の底部に溜まる。
【0045】
ここで、基板14をエッチングした酸溶液16には、該酸溶液16に不溶な物質が微粒子17として含まれることになる。
【0046】
循環機構40は、例えば、エッチングバス10より酸溶液16を導出させてフィルタ機構20の容器61内に導入させる導出配管19と、フィルタ機構20の容器61より酸溶液16を導出させて再びノズル機構12に供給する供給配管62と、導出配管19に設けられた循環ポンプ18と、供給配管62に設けられた循環ポンプ24と、を備えている。
【0047】
また、供給配管62には、該供給配管62内の酸溶液16の圧力を計測する液圧計25が設けられている。
【0048】
エッチングバス10の底部に溜まった酸溶液16は循環ポンプ18により汲み出され、導出配管19を通ってフィルタ機構20の容器61内へ導入される。
【0049】
フィルタ機構20は、導出配管19を介して導入される酸溶液16を一時的に貯留する容器61と、この容器61内において酸溶液16に渦流21を生じさせる回転機構22と、容器61内の周縁部において沈降する微粒子17を蓄積する微粒子蓄積部23と、を備えている。
【0050】
回転機構22は、例えば、複数枚(図1では、例えば、4枚)の羽根からなる回転部63と、この回転部63を水平面内において回転させるモータなどの回転駆動手段(図示略)と、を備え、回転部63を回転させることにより、容器61内の酸溶液16に渦流21を生じさせる。
【0051】
微粒子蓄積部23は、平面的な配置が回転部63の外側に設定されている。
【0052】
この、微粒子蓄積部23は、例えば、上端が開口した筒型形状をなしている。容器61内の周縁部の底部には、例えば、複数の微粒子蓄積部23が配置されている。
【0053】
なお、微粒子蓄積部23は、例えば、図1に示す構造に限らず、容器61内の周縁部において沈降する微粒子17を蓄積可能な構造であれば、如何なる構造であっても良い。
【0054】
例えば、微粒子蓄積部23は、容器61の内周に沿って配置される外周壁(図示略)と、この外周壁よりも一回り小さい(例えば、外周壁と同心円の)内周壁と、これら外周壁の下端部どうしに亘って形成された底板部と、を備える構造であっても良い。
【0055】
このような構造のフィルタ機構20においては、回転機構22により容器61内の酸溶液16には渦流21が生じているため、該酸溶液16に含まれる微粒子17は遠心分離作用により容器61の周縁部に移動しながら、すなわち回転機構22の回転半径外側に移動しながら、沈降する。
【0056】
従って、容器61内において沈降する微粒子17は、該容器61の周縁部の底部に配置された微粒子蓄積部23により捕捉される。
【0057】
よって、容器61の中心部においては、微粒子17をほとんど含まない清浄な酸溶液16が貯留された状態となる。
【0058】
このように清浄化された酸溶液16は、容器61の底部の中心部に接続された供給配管62を介して、循環ポンプ24により汲み出され、ノズル機構12へ再供給される。
【0059】
このようにノズル機構12へ再供給された酸溶液16は、再び、ノズル13から基板14への吐出に供される。
【0060】
酸溶液16のこのような一連の循環により、基板14の表面には常に清浄な酸溶液16がノズル機構12より供給されることになる。
【0061】
なお、回転機構22を用いる代わりに、微粒子蓄積部23が設けられた容器61を水平面内において回転させることにより、該容器61内の酸溶液16に渦流12を発生させても、同様に、フィルタ機構20により酸溶液16を清浄化することができる。
【0062】
ここで、高濃度の酸溶液16を用いて基板14を高速でエッチングすることは、スループットの向上のために非常に有効である。
【0063】
しかしながらこの場合、酸溶液16に不溶な微粒子17が基板14の表面に高速に堆積してしまい、この堆積物がエッチングを部分的に阻害する原因となり、エッチングの面内均一性を著しく損ねてしまう虞がある。
【0064】
このような事情に対し、本実施形態に係るエッチング装置100では、循環ポンプ24の吐出圧力を変化させてシャワー15の強さを制御することにより、この微粒子の堆積物をシャワー15による力学的な作用で除去することができる。循環ポンプ24の吐出圧力は、液圧計25によりモニタリングすることができる。従って、液圧計25によりモニタリングされる吐出圧力が所望の値となるように、循環ポンプ24の出力(回転数)を制御することにより、基板14の表面に対するシャワー15による力学的な作用を適当な強さに調節することができる。
【0065】
すなわち、エッチング装置100は、液圧計25による計測結果が入力され、該計測結果に応じて循環ポンプ24の出力を制御する制御部70を備えている。この制御部70は、循環ポンプ18の出力も併せて制御しても良い。
【0066】
なお、フィルタ機構20は、上記のように酸溶液16に渦流21を生じさせる遠心分離型のものに限らず、一般的に用いられるメッシュフィルタにより酸溶液16をフィルタリングする方式のものであっても良い。
【0067】
メッシュフィルタにより酸溶液16をフィルタリングする方式では、酸溶液16をメッシュフィルタに通し、このメッシュフィルタにより微粒子17を捕捉することによって、酸溶液16を清浄化する。
【0068】
しかしながらこの場合は、微粒子17によりメッシュフィルタが目詰まりすると酸溶液16の流れが悪くなるという課題がある。
【0069】
これに対し、図1のような遠心分離型のフィルタ機構20の場合には、酸溶液16の流れが悪くなることは無いというメリットがあり、微粒子蓄積部23内に、ある程度の微粒子17が蓄積した場合に、該微粒子蓄積部23を交換するか、或いは、洗浄すると良い。
【0070】
更に、高濃度の酸溶液16を用いて高速エッチングを行う場合、エッチング終了後に酸溶液16のシャワー15を停止しても、基板14の表面に表面張力により付着した高濃度の酸溶液16により若干のエッチングが進行し続ける。
【0071】
表面張力により付着した高濃度の酸溶液16の量は基板14表面の面内における位置に応じてランダムに異なるので、このように進行するエッチングは基板14厚さの均一性を劣化させる原因となる。
【0072】
本実施形態に係るエッチング装置100では、酸溶液16のシャワー15を停止した直後に、水配管26を通して循環ポンプ27により、水をノズル機構12へ送り込むことができ、水のシャワー15により即座に基板14表面の水洗を行うことができる。
【0073】
すなわち、上記の制御部70は、酸溶液16のシャワー15を停止させるために循環ポンプ24、18を停止させると、その直後に、循環ポンプ27を始動させることにより水配管26を通して水をノズル機構12に送り込み、水のシャワー15により基板14の表面を洗浄させる。
【0074】
これにより、上述のような不要なエッチングが進行することは無い。
【0075】
また図1では、基板14を鉛直方向に沿って配置しシャワー15を水平方向へ吐出する構成を示したが、基板14を水平方向に配置しシャワーを鉛直方向へ吐出する構成(上向き吐出でも下向き吐出でも良い)でも可能である。
【0076】
また、本実施形態では、揺動機構は、エッチング中の基板14をノズル機構12に対して揺動させる例を説明したが、これとは逆に、ノズル機構12を、エッチング中の基板14に対して揺動させるのであっても良い。この場合、供給配管62及び水配管26において、少なくともノズル機構12の近傍の部分は、ノズル機構12の揺動の妨げとならないようなフレキシブル構造とする。
【0077】
以上のような第1の実施形態によれば、少なくともフッ酸を含む酸溶液を基板14の表面上にシャワー状に吐出可能な複数のノズル13が平面的に配置されたノズル機構12を備えるので、基板14の表面への微粒子17の付着を効果的に抑制しつつ非常に高速なエッチングレートを実現することができる。
【0078】
具体的には、例えば、10〜20μm/分程度のエッチングレートを実現でき、従来よりも2〜4倍程度の高スループット化を実現できる。
【0079】
また、このような非常に高速なエッチングレートでも大型基板(例えば、一辺の長さが250mm以上の基板)をエッチングした場合の面内のエッチングレートのバラツキは5%前後であり、実用上の問題は無い。
【0080】
このように、ガラスエッチングプロセスのスループットが飛躍的に改善されることにより、例えば、超薄型液晶ディスプレイの生産効率を著しく向上することができる。
【0081】
また、基板14とノズル機構12とが対面した状態で、ノズル機構12と基板14とのうちの少なくとも何れか一方を他方に対して相対的に所定の方向に揺動可能な揺動機構を備えるので、酸溶液16を基板14の面内において均一に供給できるので、エッチングを均一に行うことができる。
【0082】
また、基板14に吐出された後の酸溶液16が再びノズル機構12に供給される過程で、該酸溶液16中の微粒子17を除去するフィルタ機構20を備えるので、フッ酸溶液を循環させる際に、フィルタ機構20を用いて微粒子17を除去でき、常に清浄なシャワー状フッ酸溶液を基板14表面へ供給することにより、均一なエッチングを継続的に行うことができる。
【0083】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態では、基板14の表面とノズル13の先端との距離Dと、ノズル機構12における隣合うノズル13どうしの間隔の最大値Lmaxと、ノズル13の先端から吐出される酸溶液16の広がり角度θと、の関係を規定することにより、エッチングの面内均一性を向上させる例について説明する。
【0084】
図2は、第2の実施形態に係るエッチング装置の構成の一部を示す拡大図である。
【0085】
すなわち、図2には、図1に示す構成のうち、ノズル機構12と、基板ホルダ11(図示略)により保持された状態の基板14と、が示されている。
【0086】
本実施形態では、基板14の表面とノズル13の先端との距離をD、ノズル機構12における隣合うノズル13どうしの間隔の最大値をLmax、シャワー15の吐出角度(ノズル13の先端から吐出される液体(酸溶液又は水)の広がり角度)をθとすると、図2に示すように、以下の不等式(1)を満たすように、距離D、間隔の最大値Lmax及び吐出角度θの値を設定する。
【0087】
Lmax÷2<D×tan(θ÷2)・・・・・・(1)
これにより、隣どうしのシャワー15による基板14表面内における酸溶液16の照射範囲がオーバーラップ(重複)することになる。すなわち、基板14全面に均一にシャワー状の酸溶液16が供給されるので、エッチングの更なる均一性が実現できる。
【0088】
実際にノズル13の配置を設計する際には、隣どうしのノズル13の間隔は一定にする方が容易であり、その場合、Lmaxは一定値Lとして計算すれば良い。
【0089】
但し、隣どうしのノズル13の間隔は、必ずしも一定の間隔に設定する必要は無い。例えば、基板14の周縁部に対応する部分のノズル13の配置密度を、基板14の中心部分の配置密度より低くする、などの任意のノズル13の配置密度に設定することができる。この場合、上の不等式(1)を満たすような配置にする。
【0090】
なお、本実施形態に係るエッチング装置は、距離D、間隔の最大値Lmax及び吐出角度θの値を上記の不等式(1)により規定する点の他は、上記の第1の実施形態に係るエッチング装置100と同様である。
【0091】
以上のような第2の実施形態によれば、基板14の表面とノズル13の先端との距離をD、ノズル機構12における隣合うノズル13どうしの間隔の最大値をLmax、シャワー15の吐出角度をθとすると、上記の不等式(1)を満たすように、距離D、間隔の最大値Lmax及び吐出角度θの値を設定するので、エッチングの面内均一性を一層高めることができる。
【0092】
〔第3の実施形態〕
第3の実施形態では、ノズル機構12における隣合うノズル13どうしの間隔の最大値Lmaxと、揺動機構による揺動振幅長の最小値Mminと、の関係を規定することにより、エッチングの面内均一性を向上させる例について説明する。
【0093】
図3は、第3の実施形態に係るエッチング装置の構成の一部を示す拡大図である。
【0094】
すなわち、図3には、図1に示す構成のうち、ノズル機構12と、基板ホルダ11(図示略)により保持された状態の基板14と、が示されている。
【0095】
本実施形態では、ノズル機構12における隣合うノズル13どうしの間隔の最大値をLmax、揺動機構による基板14の揺動振幅長の最小値をMminとすると、図3に示すように、以下の不等式(2)を満たすように、間隔の最大値Lmax及び揺動振幅長の最小値Mminの値を設定する。
【0096】
Lmax÷2<Mmin・・・・・・(2)
これにより、図3に示すように上記の(1)式(第2の実施形態)を満たさない場合であっても、やはり基板14の全面に均一にシャワー状の酸溶液16が供給されるので、エッチングの更なる均一性が実現できる。
【0097】
実際にノズル13の配置を設計する際には、隣どうしのノズル13の間隔は一定にする方が容易であり、その場合、Lmaxは一定値Lとして計算すれば良い。但し、隣どうしのノズル13の間隔は、必ずしも一定の間隔に設定する必要は無い。例えば、基板14の周縁部に対応する部分のノズル13の配置密度を、基板14の中心部分の配置密度より低くする、など任意のノズル13の配置密度に設定することができる。この場合、上の不等式(2)を満たすような揺動振幅長にする。
【0098】
以上のような第3の実施形態によれば、ノズル機構12における隣合うノズル13どうしの間隔の最大値をLmax、揺動機構による基板14の揺動振幅長の最小値をMminとすると、上記の不等式(2)を満たすように、間隔の最大値Lmax及び揺動振幅長の最小値Mminの値を設定するので、エッチングの面内均一性を一層高めることができる。
【0099】
なお、上記の第3の実施形態の場合に、上記の第2の実施形態で説明した不等式(1)も満たすようにしても良いのは勿論である。
【0100】
また、上記の第1乃至第3の実施形態においては、エッチング中に基板14表面に付着する微粒子17を効率よく除去するために、ノズル13からの酸溶液16の吐出量を適切に制御すると良い。微粒子17を効率よく除去するためには、1個のノズル13につき、1分間につき0.1リットル以上の酸溶液吐出量とすることが好ましい。吐出量がこれより少ないと、力学的な除去作用が弱すぎて微粒子17の付着を抑制できない可能性がある。
【実施例】
【0101】
以下、本発明の実施例を述べる。
【0102】
図1を参照して実施例1を説明する。
【0103】
基板14としては、ポリシリコン薄膜トランジスタ(薄膜トランジスタアレイ)が片面に形成された370mm×470mmサイズ、0.7mm厚のガラス基板を用いた。
【0104】
このガラス基板のポリシリコン薄膜トランジスタ形成表面に、保護フィルムとしてPETフィルムを接着剤を介して貼り合せた。
【0105】
この貼り合せ基板を基板ホルダ11にセットした。
【0106】
酸溶液16としては、フッ酸と塩酸と水の混合酸溶液を用いた。
【0107】
500mm×600mmサイズのノズル機構12に、ノズル13を縦方向及び横方向の隣どうしの距離を40mmの等間隔に配置した。
【0108】
また、ノズル13の先端と基板14の表面との間の距離は40mmとした。
【0109】
混合酸溶液のシャワー15の吐出圧力を0.1MPaから0.3MPaの範囲で変化させてガラス基板を裏面側(ポリシリコン薄膜トランジスタが形成されていない方の面)からエッチングした。
【0110】
これらの圧力範囲でのシャワー15の噴霧角度は約60°であった。
【0111】
エッチング中は、基板14を鉛直方向及び水平方向ともに振幅長40mmで0.3〜2Hz程度の周波数で繰り返し揺動させた。
【0112】
なお、これらの設計値は、上記の不等式(1)、(2)を満たしている。
【0113】
ガラス基板のエッチング終了後、酸溶液16のシャワー15を停止して5秒以内で水のシャワー15に切り替えて、基板15の表面を洗浄した。
【0114】
ポリシリコンやアモルファスシリコン薄膜トランジスタ形成用に一般的に用いられているガラス基板の主な構成要素は酸化ケイ素であるが、それに加えて、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウムなどの金属酸化物も合計で5〜25%程度の割合で含まれている。
【0115】
ガラス基板のエッチング時にはこれらの金属のフッ化物が生成されるが、これらのフッ化物の水や酸に対する溶解度はきわめて小さい。
【0116】
従って、これらの金属フッ化物が微粒子17として酸溶液16中や基板14のエッチングされる表面(エッチング表面)に存在することになる。
【0117】
特に、この微粒子がエッチング表面に付着すると、これがエッチングの進行を部分的に阻害し、その結果、基板14の面内でのエッチング均一性が劣化するという課題が従来よりあった。
【0118】
図1のエッチング装置100を用いて、混合酸溶液16のシャワー15の圧力でこの微粒子17を基板14の表面から力学的に除去することにより、非常に良好な均一性を実現した。
【0119】
また、フィルタ機構20の容器61の側壁付近に設置された微粒子蓄積部23内には、遠心分離及び沈降された上述の金属フッ化物微粒子が効率良く捕捉された。
【0120】
図4は、ガラス基板の平均エッチングレートのシャワー圧力依存性のデータ(黒丸)を示している。フッ酸の濃度は、8.2モル/kgとした。
【0121】
図4に示す平均エッチングレートは、ガラス基板内の16点のエッチングレートを測定することにより算出した。
【0122】
比較のために、従来技術である噴流エッチングのデータ(白丸)も示してある。
【0123】
ここで、噴流エッチングとは、ガラス基板全体を酸溶液中に浸漬し、その状態で基板表面に噴流を供給することによりエッチングを行う従来技術である。
【0124】
図4から分かるように、本実施例のシャワーエッチングを用いた場合には、同じフッ酸濃度であるにも関わらず、従来の噴流エッチングよりも高速にエッチングすることができた。
【0125】
このような高速エッチングは、生産性の向上に有効である。
【0126】
また、シャワーエッチングでは、広い圧力範囲でエッチングレートがほぼ一定である。
【0127】
これは、圧力に対するプロセスウインドウが広いことを示している。即ち、多少の圧力変動が生じてもエッチングレートの変動はほとんど無いということであり、これも生産時の歩留まり向上に貢献する。
【0128】
図5は、面内エッチングレート均一性のシャワー圧力依存性のデータを示している。
【0129】
ここで、エッチングレートの均一性は、上記の16点のエッチングレートの最大値ERmaxから最小値ERminを引いた値を16点の平均値ERaveで除したものとした。
【0130】
図5から分かるように、本実施例のシャワーエッチングにより、面内で5%前後の非常に均一性の良いエッチングを実現した。
【0131】
従来の噴流エッチングでは、噴流圧力の増加により均一性は改善されるが、0.3MPaという高圧力時でも10%以上となってしまう。
【0132】
図4より、この時の平均エッチングレートは10μm/分であるので、最大レートは10.5μm/分、最小レートは9.5μm/分程度と見積もられる。
【0133】
このようにばらついたエッチングレートで0.7mmガラスを60分エッチングするとすれば、最も薄いところで70μm厚、最も厚いところで130μm厚となり、かなり大きなの厚さ分布となってしまう。
【0134】
従って、ガラスを100μm程度まで面内で均一にエッチングするためには5%程度のレート均一性を確保する必要があり、その意味でも本実施例の効果は非常に大きい。
【0135】
図6は、本発明のシャワーエッチングに関して、平均エッチングレートや均一性がフッ酸の濃度に対してどのように変化するかを示したデータである。
【0136】
図6から分かるように、エッチングレートはフッ酸の濃度に対してほぼ比例して増加しており、均一性はフッ酸の濃度によらず5%前後でほぼ一定である。
【0137】
以上のように、図4〜図6から、本実施例のエッチング装置を用いてシャワーエッチングを行うことにより、従来技術では実現できないような高速且つ高均一エッチングを広いプロセスウインドウで実現することができた。
【0138】
本実施例のシャワーエッチングによりガラス基板の厚さを80μmまで薄型化し、その後、エッチング面に100μm厚の樹脂フィルムを貼り付け、最後にPET保護フィルムを剥離することにより薄膜トランジスタアレイを樹脂基板上に転写した。
【0139】
このような樹脂基板薄膜トランジスタの総厚は200μm程度であり、可撓性を有した。
【0140】
図7に転写前後の薄膜トランジスタ特性(ゲート電圧対ドレイン電流特性)を比較した。
【0141】
転写前とは、元々の0.7mmガラス基板上の特性である。実線が転写前で破線が転写後である。
【0142】
図7から分かるように、転写前後での特性の差異がほとんど見られず、本発明のシャワーエッチングが薄膜トランジスタにダメージを与えないことが確認された。
【0143】
図8を参照して実施例2を説明する。
【0144】
図8には、図1のエッチングバス10及びその内部に配置された構成要素のみを示している。
【0145】
基板14としては、ポリシリコン薄膜トランジスタが形成された300mm×350mmサイズ、0.7mm厚のガラス基板を用いた。
【0146】
この基板上にエッチングストッパ膜28として酸化タンタル膜を成膜し、その後、薄膜デバイス29として薄膜トランジスタアレイを形成し、その上に保護フィルム30を貼り付けた。
【0147】
実施例1と同様な方法でガラス基板をエッチングしたが、ガラス基板の残厚が50μm程度まで薄くなった時に、エッチング液として酸濃度の低い酸溶液16に切り替えて、残りの50μmを全てエッチングした。
【0148】
即ち、最初は高濃度の酸溶液16で高速にエッチングし、最後の一部分は低濃度の酸溶液16を用いて低速でエッチングすることにより、全てのガラスをエッチングした。
【0149】
このような2段階のエッチングを行った理由は、エッチングストッパ膜28へのダメージを低く抑えるためである。エッチングストッパ膜28とはいえ、酸溶液16に対して完全に安定であるわけではなく、ある程度のエッチングが進行してしまう。
【0150】
酸濃度が高すぎると、このエッチングストッパ膜28もエッチングされてしまい機能しないことになるので、このような状態を防ぐために2段階のエッチングを行った。
【0151】
また、エッチングストッパ膜としては、少なくとも、金、白金、銀、銅、鉛、タングステン、モリブデン、タンタル、クロムの金属、あるいはこれらの金属の酸化物又はフッ化物又は窒化物又は塩化物を含むものや、これらの積層膜を用いることができる。
【0152】
このようにガラス基板を全てエッチング除去した後、エッチング面に100μm厚の樹脂フィルムを貼り付け、最後に保護フィルムを剥離することにより、薄膜トランジスタアレイを樹脂基板上に転写した。
【0153】
図7の場合と同様に、転写前後での電気特性の差はほとんどなく良好な特性を有するフレキシブル基板薄膜トランジスタアレイを実現した。
【0154】
図9を参照して実施例3を説明する。
【0155】
ガラス基板31上に薄膜デバイス32として薄膜トランジスタアレイを形成し、ガラス基板33上に薄膜デバイス34としてカラーフィルタを形成し、これら2つのガラス基板31,33をそれぞれの薄膜デバイス32,34が相対するように貼り合せ、これらの間隙に液晶を注入した。
【0156】
このような貼り合せデバイスに対し、図9に示すような構造のエッチング装置を用いて、双方のガラス基板を31,33をエッチングした。
【0157】
すなわち、図9に示すのは、エッチングバス10内に相互に対向する一対のノズル機構12を配置し、一方のノズル機構12によりガラス基板31をエッチングし、他方のノズル機構12によりガラス基板33をエッチングするタイプのエッチング装置の主要部である。
【0158】
実施例3では、実施例1と同様な方法で双方のガラス基板31,33を200μm厚になるまでエッチングした。
【0159】
その後、双方のガラス基板31,33のエッチング面に偏光フィルムを貼り付けることにより、非常に薄い液晶ディスプレイを実現した。
【0160】
また、この実施例3において、一方の薄膜デバイス付きガラス基板33を薄膜付き樹脂基板(フレキシブル基板)に置き換えても良い。例えば、薄膜トランジスタアレイ付きガラス基板とカラーフィルタ付き樹脂基板とを貼り合せ、その後、ガラス基板のみをエッチングしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明の産業上の利用可能性としては、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの軽量・薄型化やフレキシブル化が挙げられる。あるいは、より一般に、平板ガラスの高速薄型加工にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】第1の実施形態に係るエッチング装置の構成を示す図である。
【図2】第2の実施形態に係るエッチング装置の一部の構成を示す図である。
【図3】第3の実施形態に係るエッチング装置の一部の構成を示す図である。
【図4】実施例の効果を示す図である。
【図5】実施例の効果を示す図である。
【図6】実施例の効果を示す図である。
【図7】実施例により作成したフレキシブル薄膜トランジスタ基板の電気特性を示す図である。
【図8】実施例に係る第1の態様のエッチング装置の構成の一部を示す図である。
【図9】実施例に係る第2の態様のエッチング装置の構成の一部を示す図である。
【符号の説明】
【0163】
10 エッチングバス
11 基板ホルダ
12 ノズル機構
13 ノズル
14 基板
15 シャワー
16 酸溶液
17 微粒子
18 循環ポンプ
19 酸配管
20 フィルタ機構
21 渦流
22 回転機構
23 微粒子蓄積部
24 循環ポンプ
25 水圧計
26 水配管
27 循環ポンプ
28 エッチングストッパ膜
29 薄膜デバイス
30 保護フィルム
31 ガラス基板
32 薄膜デバイス
33 ガラス基板
34 薄膜デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をエッチングする装置において、
少なくともフッ酸を含む酸溶液を前記基板の表面上にシャワー状に吐出可能な複数のノズルが平面的に配置されたノズル機構と、
前記基板と前記ノズル機構とが対面した状態で、前記ノズル機構と前記基板とのうちの少なくとも何れか一方を他方に対して相対的に所定の方向に揺動可能な揺動機構と、
前記基板に吐出された後の前記酸溶液から微粒子を除去するフィルタ機構と、
前記フィルタ機構による微粒子除去後の酸溶液を前記ノズル機構に供給する循環機構と、
を備えることを特徴とするエッチング装置。
【請求項2】
前記揺動機構は、前記基板を前記ノズル機構に対して所定の方向に揺動させることを特徴とする請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項3】
前記基板の表面とノズル先端との距離をD、ノズル機構における隣合うノズルどうしの間隔の最大値をLmax、前記ノズル先端から吐出される前記酸溶液の広がり角度をθとすると、以下の不等式(1)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のエッチング装置。
Lmax÷2<D×tan(θ÷2)・・・・・・(1)
【請求項4】
前記ノズル機構における隣合うノズルどうしの間隔の最大値をLmax、前記揺動機構による揺動振幅長の最小値をMminとすると、以下の不等式(2)を満たすことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のエッチング装置。
Lmax÷2<Mmin・・・・・・(2)
【請求項5】
前記ノズル1個当たりの酸溶液の吐出量が1分間につき0.1リットルよりも大きいことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のエッチング装置。
【請求項6】
前記フィルタ機構は、前記基板に吐出された後の前記酸溶液が再び前記ノズル機構に供給される過程で前記酸溶液を一時的に貯留する容器と、前記容器内において前記酸溶液に渦流を生じさせる回転機構と、前記容器の周縁部において沈降する微粒子を蓄積する微粒子蓄積部と、を有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のエッチング装置。
【請求項7】
前記ノズル機構が、酸溶液と水とを交互に前記基板の表面上にシャワー状に吐出可能であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のエッチング装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のエッチング装置を用いて、酸化ケイ素を主成分とするガラス基板を2μm/分以上のエッチングレートでエッチングすることにより薄型ガラス基板を製造することを特徴とする薄型ガラス基板の製造方法。
【請求項9】
前記ガラス基板のエッチングされない側の表面に電子デバイスが形成されていることを特徴とする請求項8に記載の薄型ガラス基板の製造方法。
【請求項10】
前記電子デバイスが薄膜トランジスタであることを特徴とする請求項8又は9に記載の薄型ガラス基板の製造方法。
【請求項11】
前記酸溶液は、フッ酸と、塩酸と硝酸のうちの少なくとも何れか一方と、の混合溶液であることを特徴とする請求項8乃至10の何れか一項に記載の薄型ガラス基板の製造方法。
【請求項12】
前記ノズルからの前記酸溶液の吐出圧力が0.05MPa以上0.7MPa以下であることを特徴とする請求項8乃至11の何れか一項に記載の薄型ガラス基板の製造方法。
【請求項13】
前記ガラス基板は、一辺の長さが250mm以上であることを特徴とする請求項8乃至12の何れか一項に記載の薄型ガラス基板の製造方法。
【請求項14】
請求項8乃至13の何れか一項に記載の製造方法で薄型ガラス基板を製造し、前記ノズルからの前記酸溶液の吐出を停止した後、引き続いて前記ノズルから水をシャワー状に薄型ガラス基板のエッチング表面に吐出して該エッチング表面を洗浄することを特徴とする薄型ガラス基板の製造方法。
【請求項15】
薄膜トランジスタアレイが形成されたガラス基板の薄膜トランジスタアレイ形成表面に保護フィルムを貼り付けた後、請求項8乃至14の何れか一項に記載の方法でガラス基板を裏面側からエッチングし、ガラス基板の厚さを0μmより大で200μm以下まで薄くすることを特徴とする薄膜トランジスタアレイ基板の製造方法。
【請求項16】
フッ酸に対するガラスのエッチングレートよりも5倍以上遅いエッチングレートを有するエッチングストッパ膜、薄膜トランジスタアレイの順に形成されたガラス基板の薄膜トランジスタアレイ形成表面に保護フィルムを貼り付けた後、請求項8乃至14の何れか一項に記載の方法でガラス基板を裏面側から全てエッチング除去してしまうことを特徴とする薄膜トランジスタアレイ基板の製造方法。
【請求項17】
前記エッチングストッパ膜が、少なくとも、金、白金、銀、銅、鉛、タングステン、モリブデン、タンタル、クロムの金属、あるいはこれらの金属の酸化物又はフッ化物又は窒化物又は塩化物を含むことを特徴とする請求項16に記載の薄膜トランジスタアレイ基板の製造方法。
【請求項18】
薄膜デバイスが形成された一対のガラス基板を相互に貼り合わせることによりデバイスを形成するデバイス形成工程と、前記第一対のガラス基板を請求項8乃至14の何れか一項に記載の方法でエッチングするエッチング工程と、をこの順に行うことを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項19】
前記一対のガラス基板のうちの一方のガラス基板には予め薄膜トランジスタアレイが形成され、他方のガラス基板には予めカラーフィルタが形成されていることを特徴とする請求項18に記載のデバイスの製造方法。
【請求項20】
薄膜デバイスが形成されたガラス基板と、薄膜デバイスが形成されたフレキシブル基板と、を相互に貼り合わせることによりデバイスを形成するデバイス形成工程と、前記ガラス基板を請求項8乃至14の何れか一項に記載の方法でエッチングするエッチング工程と、をこの順に行うことを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項21】
前記ガラス基板には予め薄膜トランジスタアレイが形成され、前記フレキシブル基板には予めカラーフィルタが形成されていることを特徴とする請求項20に記載のデバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−13389(P2008−13389A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184351(P2006−184351)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】