説明

エネルギーハーベスト装置

【課題】エネルギーを産生する改良型のエネルギーハーベスト装置およびその使用方法を提供し、特にマイクロスケールのエネルギーハーベスト装置を提供する。
【解決手段】質量体と、少なくとも2つのテザーと、を含むエネルギーハーベスト装置であって、テザーの少なくとも1つが、テザーの撓みに対して機械的応力を発生させる圧電材料を含み、テザーが、質量体に連結する端部である第1の端部と、リファレンスに連結する端部である第2の端部と、を有し、質量体が、リファレンスに対して、実質的に直線経路において移動可能なように、テザーが、質量体に対して配置され、質量体の運動によって、テザーにおいて撓みが生じることにより、電荷を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、エネルギーハーベスト装置(エネルギーハーベストシステムおよび電荷の蓄積方法を含む。)に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーハーベスティングとは、環境エネルギー源を利用し、電力を産生する技術である。具体的には、環境エネルギーを利用して、電力を産生することから、自己発電回路とすることができる。さらには、かかる電力を、低電力性のセンシング、モニタリング、情報伝達、電子計算、装置の作動および制御に使用することができる。
そして、環境エネルギー源からのエネルギーハーベスティングは、特に、長期間使用する遠隔タイプの装置であって、複数の電池交換を必要とするものにとって、有用な技術と考えられている。
【0003】
ところで、環境エネルギー源の一つである機械的振動運動は、一つの潜在的なエネルギー源であり、かかるエネルギーは、微小電気機械システム(MEMS)を介して、電気エネルギーに変換されるものである。
例えば、かかる環境エネルギー源としては、自動車のエンジンルーム、自動車計器パネル、ドアを閉めた際のドアフレーム、攪拌装置、車室、衣類乾燥機、小型マイクロオーブン、オフィスビルにおける空調設備のHAVC通気孔(vent)、混雑した道路付近の窓、ノートブック型コンピューターにおけるCD、混雑したオフィスビルの壁面などが挙げられる。
【0004】
また、今日、使用されているエネルギーハーベスト装置の例としては、ソーラーパネル(ディスプレイパネルや温水装置に使用)、ライトパネル(計算機に使用)、靴インサート(軍事的な利用)、電磁場(無線IC装置用タグ(RFID))、および振動運動(モーター振動のモニタリング用あるいはビルのモニタリング用の圧力センサーとして使用)が挙げられる。
【0005】
また、振動運動によるエネルギーハーベスト装置は、電磁気的機構、静電的機構あるいは圧電機構を基礎とされている。
このうち、電磁気的機構は、ワイヤコイルと、磁場との間における相対的な運動によって機能し、かかるワイヤコイルにおいて、電流が流れることとなる。電磁気的機構の利点の一つとしては、処理を進行させるのに、電源を必要としていないことであるが、一方で、出力電圧は、0.1〜0.2ボルト程度に限定されてしまうことが、問題点といえる。
【0006】
また、静電気的機構は、可変コンデンサを使用し、かかる最大電気容量は、出力電圧の最大値によって決定されるものである。
さらに、静電気的機構は、マイクロシステムへの集積化を容易にする利点を有する一方コンデンサ板の間における低電圧破壊が起きやすく、その結果として、産生(ハーベスト)されたエネルギーレベルが一般的に制限されるといった問題点を有している。
また、最大のエネルギーを抽出するためには、電気容量の変化が、それぞれの周期振動サイクルにおいて、最大化される必要があるという問題がある。
一方、かかるコンデンサ板が、非常に近接する場合、あるいは電圧が非常に大きい場合、空気層が絶縁破壊し、一時的に導電することとなり、結果として、コンデンサに貯電した電荷を喪失することとなる。
【0007】
また、圧電材料は、環境エネルギー源としての外部振動源(環境振動や外部振動と称する場合がある。)から電力を産生するのに、理想的な候補材料である。
すなわち、圧電材料によれば、機械的動作を電気信号へと効果的に変換することができ、したがって、機械的な応力変化を利用することにより機能して、所定電圧を産生することができる。
ここで、圧電材料によれば、所定電源が、エネルギー抽出を開始するのに必要とされる一方、通常、約1〜8ボルトの電圧を出力することができる。
しかしながら、従来の圧電材料を用いた産生機構は、マイクロシステムに組み込むことが困難であるという問題が見られた。
【0008】
また、ワイヤレス情報伝達における自己発電センサーの配置は、モニタリングの複雑性およびコストを、有意に最小化するとともに、信頼性および柔軟性をともなって、制御することができる。
また、振動エネルギーは、低周波数かつ高振幅数、例えば、数十マイクロ、あるいはそれ以上において、多く存在することから、新規の圧電エネルギーハーベスト装置にセンサー配置を組み込んで、最適条件下、所定の低周波数において、環境屈曲運動からエネルギーを貯蔵する装置を作成することができる。かかる装置は、一般的に大きな非線形の屈曲運動を必要とするものである。
【0009】
また、MEMS加速度計は、フレームに対して、相対的に弾性テザーを介して懸吊された質量体の屈曲運動を検知することによって、機能する。
かかる質量体の屈曲運動は、電気容量性、圧電性、あるいはトンネル電流性の電流センサーによって、生ずるものである。そして、かかる装置において、入力加速度値における所望レベルの範囲内にて、直線的に作動し、最大限の感度となるように、設計されている。
しかしながら、入力加速度が、設計規格外のものであるとき、例えば、意図せずしてかかる装置を硬質の面上に落下させた場合等においては、試験質量体(proof mass)の加速度は、重力加速度(g)の数百倍になる可能性がある。その結果として、非線形状態下にて、テザーが屈曲する非常に大きな屈曲運動になる。通常、このような状況は、テザーの端部において、大きな応力集中を引き起こし、加速度計において、構造上の故障となる。
【0010】
そこで、本願発明の発明者らは、テザー(撓み部材と称する場合がある。)の所定位置における圧電材料からなる薄膜の存在が、力学的機構を変化させ、テザーの基材に対してかけられる可能性がある最大量の応力を低減させることを見出した。
したがって、本願発明により提案されるシステムは、直線的な設計である一般的構造のように、機械的構造を、屈曲させるばかりではなく、外部振動に応答して、伸縮運動することが可能になる。
すなわち、かかる伸縮運動は、結果として、ビーム体の屈曲運動と、それによって生じるビーム体表面の応力値との間において、非線形的関係となるものである。
【0011】
それに対して、カンチレバー型ビーム体は、従来のエネルギーハーベスト装置において使用されており、屈曲振幅をビーム体の厚さよりも小さくすることを限定するものである。
例えば、カンチレバー型ビーム体の構造が、大きな規模の屈曲において伸縮運動に曝される場合、得られた大きな応力は、ビーム体の基部に依然として局在している。
したがって、機械的振動子の全表面から効果的に大きな応力規模を得るためには(最大量の圧電材料の範囲)、クランプークランプ構造が必要である。
【0012】
また、エネルギーを産生する方法としては、特に、マイクロスケールで、電気容量的(静電気的)機構あるいは磁気的機構に集約されている。
しかしながら、一般的な装置サイズは、マイクロワット数のエネルギーを得るものであって、センチメートル規模のものであり、かかる装置を小型化すると、それに応じて、産生される電力も小さくなるという問題があった。
【0013】
また、最大限のエネルギーを産生するために、懸吊された質量体の屈曲振幅は、最大化されており、さらに、振動数はできるだけ高いものとするべきである。すなわち、以前報告があったエネルギーハーベスト構造は、一般的に、約数kHz〜数十kHzの共鳴系である。
また、これらのシステムにおいて使用される、懸吊された質量体は、大きく、嵩が張るものであり、さらには、大きい質量体が提供された場合には、電圧産生の物理的プロセスに寄与するものではない。
【0014】
さらに、残念ながら、かかる高周波数が存在する環境振動は、極めて微小であって、共鳴系に基づく産生方法は、エネルギーハーベスト装置に関して、非常に狭い適用範囲においてのみに適した規格に制限されている。
そこで、何ら限定するものではないが、以下に例示する建築物、橋梁、車両、エンジンおよび地面からの低周波かつ可変的な振動周波数下、エネルギーを効果的に産生できるエネルギーハーベスト装置が求められている。
【0015】
・カーエンジン室
・3軸工作機械の基部
・混合装置のケース
・衣類乾燥機
・タッピングする人のかかと部
・自動車計器パネル
・ドアを閉めた際のドアフレーム
・小型マイクロオーブン
・オフィスビルのHVAC通気孔
・混雑した道路脇の窓
・ノートブック型コンピューターに搭載されたCD
・オフィスビルの床面
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
すなわち、本願発明の目的は、エネルギーを効率的に産生する改良型のエネルギーハーベスト装置を提供し、特にマイクロスケール規模のエネルギーハーベスト装置を提供することである。
また、本願発明の別の目的は、圧電材料を基礎にした改良型のエネルギーハーベスト装置を提供することである。
また、本願発明の別の目的は、外部振動に応答して、伸縮するとともに、屈曲することができ、非線形系の屈曲機構(モード)として作用する機械的構造を提供することである。
【0017】
また、本願発明の別の目的は、外部振動(環境的振動)を利用することにより、電荷を発生させることができる改良型のエネルギーハーベスト装置を提供することである。
さらに、本願発明の別の目的は、外部パラメータを感知および外部条件を観察するために少なくとも1つのセンサーあるいはその他の機能化装置を備えた改良型のエネルギーハーベスト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
すなわち、好ましい態様(第1の態様)として、本願発明は、下記構成を含むエネルギーハーベスト装置である。
a)質量体
b)少なくとも2つのテザーであって、
テザーの少なくとも1つが、テザーの撓みに対して機械的応力を発生させる圧電材料を含み、
テザーが、質量体に連結する端部である第1の端部と、リファレンス(フレーム等と称する場合がある。)に連結する端部である第2の端部と、を有し、
質量体が、リファレンスに対して実質的に直線経路において移動可能なように、テザーが、質量体に対して配置されたエネルギーハーベスト装置である。
そして、質量体の運動によって、テザーにおいて撓みが生じることにより、電荷を発生させることを特徴とするエネルギーハーベスト装置である。
【0019】
また、本願発明の別の態様(第2の態様)は、
質量体と、当該質量体およびリファレンスに連結した所定手段と、を含むエネルギーハーベスト装置であって、
所定手段の少なくとも1つが、テザーの撓みに対して機械的応力を発生させる圧電材料を含み、
所定手段が、リファレンスに対して実質的に直線経路において移動可能なように、当該所定手段が、質量体に対して配置され、
質量体の運動によって、圧電材料に応力が生じることにより、電荷を発生させることを特徴とするエネルギーハーベスト装置である。
【0020】
また、本願発明の別の態様(第3の態様)は、質量体と、少なくとも2つのテザーと、を含むエナジーハーベスト装置を用いた電荷の蓄積方法であって、
テザーの少なくとも1つが、テザーの撓みに対して機械的応力を発生させる圧電材料を含み、
テザーが、質量体に連結する端部である第1の端部と、リファレンスに連結する端部である第2の端部と、を有し、
質量体が、リファレンスに対して実質的に直線経路において移動可能なように、テザーが、質量体に対して配置され、
以下の工程を含むことを特徴とする電荷の蓄積方法である。
a)質量体の運動によって、テザーにおいて撓みが生じることにより、電荷を発生させる工程
b)質量体の運動によって発生した電荷を蓄積する工程
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本願発明は、マイクロスケールサイズの圧電型電力ハーベスト装置であるとともに、設計内容において、同様の、MEMS圧電型加速度メーターを含むものである。
そして、質量体は、フレーム等のリファレンスから、薄い屈曲性のビーム体によって、懸吊されている。かかるフレームの基部は、自然振動を有する外部環境(例えば、建設物、エンジンまたはモーターの壁面、自動車用タイヤ内部等)に対して、連結または接触されるか、あるいは、かかる環境下に設置されていてもよい。
したがって、かかるフレームが振動すると、この機械的振動は、懸吊された質量体に伝達される。
【0022】
ここで、好ましい態様としては、ビーム体が、その表面に圧電材料を有していることである。そのため、かかるビーム体が屈曲すると、圧電材料は、振動性の機械的応力を、振動性の電圧に変換する。
したがって、貯蔵コンデンサを使用し、電荷を蓄電する場合、電気エネルギーを、機械的振動から抽出できることとなる。そして、かかるエネルギーを、目的とする適用形態に応じて、複合センサーあるいは送信機等に電力を供給するのに使用することができる。
【0023】
また、本発明は、より低い振動状態においても、所望の電力を抽出することができる非線形屈曲系機構、すなわち、線形共鳴系機構の反対の関係において、問題なく作動することができる。
かかる機構における重要な点としては、可撓性ビーム体が、自身の厚さの数倍以上に伸縮することにある。これは、強く引張ったギターの弦のようである。
このように、圧電材料上に発生した応力は、共鳴手段を用いることによって誘導される最大応力と比べて、10倍もの大きさにおける差がある。
さらには、共鳴手段とは違って、かかる応力の発生場所は、可撓性ビーム体の端部に制限されないものである。例えば、可撓性ビーム体の厚さの数倍である撓みに対して、かかる可撓性ビーム体の表面の大部分において、伸縮運動により、そのほとんどが、応力エネルギーとして発生するものであり、かかる伸縮運動は、引っ張り性によるものである。
一方、可撓性ビーム体の端部の何れかが固定されている場合、引張あるいは圧縮屈曲の何れかによる、さらなる応力が発生する。このような伸縮運動のために、大きな応力が、ビーム体に沿って全範囲で存在することになる。
すなわち、可撓性ビーム体の全表面部分が、電圧発生に寄与することから、抽出できる電力の値を著しく増加させることができる。
【0024】
また、周辺環境における低い振動数に内在する大きな振動運動を利用することによって、これらの装置は、異なった全ての適用態様において、商業的に使用し得るものである。
かかる装置は、典型的には、MEMS加工技術を用いて、シリコン基材の外部において構築され、懸吊された質量体の上表面は、複合電子部品、メモリー、制御回路、センサーにとって理想的な設置場所であり、各適用品をコンパクトにすることができる。
そして、非線形屈折の動力学的特性として、例えば、屈曲方向とは逆のビーム体の伸縮運動を利用することにより、最大応力の利用が可能になるとともに、同程度の振動において作動する場合、同様の系より、大きいエネルギー規模の電気エネルギーを産生することができる。
【0025】
また、本願発明のエナジーハーベスト装置は、1mm3あるいはそれ以下のサイズの装置であって、周辺に存在する外部振動を用いて、複合センサーノード(ストレスセンサー、マイクロフォン等)に電気供給することを想定している。
但し、所望の適用態様により、これらのエナジーハーベスト装置は、センチメートル規模までスケールアップすることができる。
また、このようなエナジーハーベスト装置であれば、低コスト(例えば、一個あたり数セント)で製造することが可能であり、かかるエナジーハーベスト装置を数千個用意して、建造中の建造物や橋架のセメント材やその他の建築材料に組込むこともできる。
【0026】
したがって、かかるエナジーハーベスト装置によれば、建築構造内において、例えば、50年間、機能し続けることができ、持続的に応力レベルをモニタリングしたり、基底状態からの歪みをネットワーク極へ、シグナルを出したりすることができる。
また、建築構造内におけるこれらのエナジーハーベスト装置の正確な位置は、センサーネットワークとしての装置全てを用いて、三角測量法により算出することができる。
よって、このように、外部から容易に認識できない微小破壊や応力点の正確な位置を特定することができることから、実際の建築構造が破壊される数年以前に、救命予防を講ずることができる。
【0027】
また、本願発明におけるエナジーハーベスト装置は、国境監視あるいは国土防衛のために使用することもできる。
一方、エナジーハーベスト装置は、砂礫あるいは土砂とは区別して、認識できないことから、継続的にモニタリングを要する場所において配置することができる。つまり、かかるエナジーハーベスト装置においては、バッテリー交換あるいは装置点検をする必要なく、いかなる活動(例えば、車輌の通行、人員の動きなど)も検知して、テザーの中央部において信号を発信することができる。
すなわち、かかるエナジーハーベスト装置は、「実施/配備/忘却」型装置として機能するように構成されたものである。
【0028】
その他の商業的利用としては、自動車(その他の車輌を含む)のタイヤ圧変化についての、連続的なワイヤレスモニタリングが挙げられる。
すなわち、エンジンが発動するとすぐに、かかるエナジーハーベスト装置は、十分な振動運動を得て、かかる振動運動から電力を産生し、自動車のタイヤ圧の現状況の報告を開始することになる。
【0029】
また、さらなる商業的利用としては、かかるエナジーハーベスト装置を1個以上用意し、それを壊れ物の包装物に接続しておけば、かかる包装物の流通経路において、かかる包装物の中身が物理的衝撃に曝されていないことを保証することへ適用することができる。
例えば、コンピューター製造会社が、工場からエンドユーザーまでの流通経路において、コンピューターが、大きな振動や物理的に不正な取り扱い(例えば、落下等)に曝されることなく出荷されたことを保証したい場合、あるいは、生鮮品の集荷者が、生鮮品が極端な温度に曝されていないことを保証したい場合等が挙げられる。
すなわち、廉価かつ十分に効果的なエネルギー発生を伴った、振動状況あるいは温度状態を検地するモニター装置を提供することができ、このような作業能力は、いまや現実的なものになっている。
【0030】
さらに、本願発明のエナジーハーベスト装置の他の実施態様としては、蜜蜂のような高移動性昆虫の背部に、1個以上のエネルギーハーベスト装置を装着することにより、かかる昆虫を、ワイヤレス無線あるいはコミュニケーションノードとして適用することが挙げられる。
かかる適用は、以前、バッテリー起動型システムにおいて試みられており、かかる昆虫と様々なモニタリング装置とを配線するものであった。
しかしながら、センサーあるいはその他の装置(カメラ等)を組合せた本願発明のエネルギーハーベスト装置を、昆虫に適用することにより、必要なサイズ、出力密度および集積技術に対する要求が達成されて、かかる適用を容易に実施することができる。
【0031】
また、本願発明のエネルギーハーベスト装置を組み込んだ装置は、無線ICタグ(RFID)に類似したスマートタグとしての機能を発揮することができる。さらには、無線ICタグを、本願発明のエネルギーハーベスト装置に組み込むこともできる。
したがって、毎度、単に認識番号を提示するだけでなく、ラジオ周波数のパルスも要求される従来の方式と異なり、かかる無線ICタグによれば、実際、所定の製品についての全履歴データを保存することができる。さらに、所定の製品についての製造元からの情報や関連情報についての更新をすることもできる。
すなわち、本願発明のエネルギーハーベスト装置において、複合化メモリー(ハイブリッドメモリー)を数個備えており、かつ、集荷時においての振動運動から発生するエネルギーが、数分に1度の新規情報の保存に十分なエネルギー(電荷量)であることから、全履歴データ等の保存も可能となる。
【0032】
また、エネルギーハーベスト装置において、その構成部品(構成部材)は、バルク微細加工処理等の基本的なMEMS加工プロセスに使用されるシリコンから形成されることが好ましい。
そして、シリコンの慣性質量体は、必要である質量が規定され、また、動力抽出、センサー感知・ワイヤレス送信、貯蔵コンデンサ(例えば、数ナノファラッド)を担う1以上の相補型金属酸化膜半導体(CMOS)回路上に支持されていて、かかる慣性質量体の大部分の表面が被覆されていることが好ましい。
【0033】
また、本願発明のエネルギーハーベスト装置は、異なる種類のセンシング、モニタリングおよび制御アプリケーションの必要に応じて、カスタマイズすることが可能である。
さらには、外部貯蔵コンデンサおよびアンテナ、あるいはいずれか一方が、規模が大きく、広範囲の情報伝達に必要である場合、例えば、かかる貯蔵コンデンサあるいはアンテナについては、本願発明の外装部位に容易に装着することができる。
【0034】
また、図1に、エナジーハーベスト装置の好ましい態様を示すように、広い意味では、本願発明は、a)およびb)を含むエネルギーハーベスト装置である。
a)質量体2
b)少なくとも2つのテザー4、6であって、テザー4、6の少なくとも1つが、テザー4、6の撓みに対して機械的応力を発生させる圧電材料を含み、
テザー4、6が、質量体2に連結する端部である第1の端部12と、リファレンス16に連結する端部である第2の端部14と、を有し、
質量体2が、リファレンス16に対して実質的に直線経路において移動可能なように、テザー4、6が、質量体2に対して配置されている。
そして、質量体2の運動によって、テザーにおいて撓みが生じることにより、電荷を発生させることを特徴とするエネルギーハーベスト装置である。
【0035】
また、本願発明の別の態様としては、エネルギーハーベスト装置が、質量体と、当該質量体およびリファレンスを連結する所定手段(介在手段または連結手段等と称する場合がある。)とを備え、かかる所定手段が、撓みにより機械的応力を発生することができる圧電材料を含んでいる構成である。
そして、質量体が、リファレンスに対して、実質的に直線経路内で運動できるように、かかる所定手段が、質量体に対して、その周囲に沿って、配置してあることが好ましい。
したがって、かかる質量体の運動により、圧電材料による応力を引き起こし、よって、所定の電荷を発生させることになる。
【0036】
また、本願発明のエネルギーハーベスト装置において、少なくとも2つのテザー4、6が、少なくとも部分的に、あるいは全体的に、圧電材料によって被覆されていることが好ましい。
なお、かかる圧電材料の種類は、本願発明の実施において必ずしも重要な要素ではなく、したがって、当業者において公知の様々な圧電材料が、本願発明において使用され得る。
【0037】
必ずしも必要なものではないものの、一般的に好ましくは、少なくとも2つのテザー4、6の両方が、機械的応力を発生できる圧電材料を含み、質量対2の運動によって、かかる圧電材料の機械的応力が引き起こされて、電荷を発生させることである。
さらに、一般的に、少なくと2つのテザー4、6が、質量体2を中心として、対称的になるように配置してあることが好ましい。
【0038】
質量体の第1の辺において、質量体が、CMOS回路に支持されるように構築されていてもよく、かかる質量体とテザーの両方が、少なくとも部分的に、圧電材料を含む薄膜によって被覆されていてもよい。
また、特に限定するわけではないが、質量体の第1の辺の反対側であって、対向する質量体の第2の辺において、質量体に対して、例えば、追加的に環境エネルギーを産生するための太陽電池といった追加回路を備えることも好ましい。
【0039】
また、大きな非線形の撓みにとっては、伸縮応力は、固定末端を除いた、テザー表面の大部分における屈曲応力によるものである。
図2は、圧電材料の薄膜が5μm厚のテザー表面における長尺方向に沿った応力分布を示すものである。3mm長のテザーにおいて、中央部である厚さ2.5mmのところに、応力が均一で、かつほとんどが伸縮運動による応力が発生している箇所がある。
このように、圧電材料の薄膜は、与えられた質量体の撓みにより発生する機械的応力が均一である箇所に、全体的に配置することが好ましい。
そして、好ましい態様としては、テザー表面の全面を100%としたときに、少なくとも80%の面積に相当するように、圧電材料を、配置することが好ましい。
【0040】
また、少なくとも2つのテザーの広い中央部を被覆する圧電材料も、単極性の電圧(電荷)のみを発生させるものが好ましい。
この理由としては、かかる領域において伸縮応力は、常に引っ張り性のものであり、慣性質量体の撓み方向によらないものだからである。
かかる事実は、図3において説明されている。図3に説明するように、5μm厚、6mm長のシリコンビーム体が、2μmの圧電材料によって被覆され、かかるシリコンビーム体の中央部が屈曲されることによって、正あるいは負の方向への変位が生ずる。かかる両方の変位は、中央部において、応力の極性を方向付けて、電圧を産生することになる。
【0041】
このように、圧電材料の機械的応力のほとんどは、かかる圧電材料の伸縮運動によるものであり、貯蔵ポテンシャルエネルギーの大部分も、かかる伸縮運動に依存して発生している。
したがって、圧電材料の薄膜が、軸に沿って表面応力が一定である領域に設置されている場合、高い正の電圧を産生することになる。
すなわち、従来技術における線形型エナジーハーベスト装置と比較すると、本願発明の方法における圧電材料の表面領域は、少なくとも10倍以上あるものである。
【0042】
また、本願発明のエナジーハーベスト装置の他の顕著な利点としては、共振現象を使用しないで実施できるために、波長の特別な調整を必要としないことである。
例えば、かかる構成について、最低の線形共振波長が50ヘルツよりも全て低いように設計することができる。
また、かかる共振波長に次ぐ共振波長としては、通常、3kHz未満であり、本願発明にかかる装置の帯域幅(約50Hz〜約3kHz)における動作は、非常に近接した共振波長を必要とする線形型エナジーハーベスト装置よりも、数オーダーも大きいものである。
【0043】
また、本願発明のエナジーハーベスト装置は、実施波長よりもかなり低い、第1の共振波長群に適合させ、さらに、質量体の撓み振幅が、ビーム体の撓み振幅になるように設計することができる。
また、第2の共振波長群は、一般的には、大きい周波数(kHz)を有する範囲内のものである。
したがって、本願発明にかかるエナジーハーベスト装置の一つの利点としては、機械的振動を与える全ての実際的振動源における幅広い範囲の波長範囲に適合し、動作することができることである。
【0044】
また、本願発明のエナジーハーベスト装置の一態様として、図1の上面図に示すように、質量体2は、上面方向から見た場合に、4辺を有していることが好ましい。
そして、かかる上面図において示される構成において、第1のテザー4の第1の端部12は、質量体の4辺のうちの一辺に連結してあり、第2のテザー6の第1の端部は、一辺に対して対向するように反対側の辺に連結されていることが好ましい。
【0045】
また、本願発明のエナジーハーベスト装置は、さらに、第3のテザー8および第4のテザー10を有しており、それぞれのテザーが、質量体2に連結した端部である第1の端部、およびリファレンス16に連結した端部である第2の端部を備えていることが好ましい。
そして、リファレンス16に対して直線経路に移動し、かかるテザーの屈曲を起こさせるように、それぞれのテザーが、質量体2の周囲に位置しており、結果として、電荷が発生するように構成されている。
【0046】
なお、第3のテザー8および第4のテザー10を設けた場合、かかる第3のテザー8および第4のテザー10が、第1のテザー4および第2のテザー6が連結した残りの辺において、対称位置となるように、連結してあることが好ましい。
【0047】
本願発明のエナジーハーベスト装置の別の態様として、質量体2は、図1の上面図に示すように配置される場合、少なくとも3辺を有する多角形であり、また、かかる多角形の辺数と、テザーの数とが同一であることが好ましい。
また、図1に示すように、エナジーハーベスト装置の好ましい態様として、質量体の各辺において、第1のエッジ(第1の頂点)および第2エッジ(第2の頂点)を備え、それぞれのテザーが、第1のエッジと直接的に、あるいはその周囲において連結し、質量体に対して平行に沿って伸びるとともに、連結された質量体の面から所定距離だけ離れて設けられていることが好ましい。
【0048】
また、各テザーの第2の端部は、質量体の近接辺に相当するフレームの側辺の一点においてフレームに連結され、図4の矢印xおよびyで示すように、質量体が、フレームに対して、実質的に直線経路内にて運動できるように構成されている。
また、かかるフレームの数は、一般的には、質量体の辺数と同じである。
なお、かかる内容は、図1において、4辺を有する多角形として示されているが、本発明は、4辺を有する多角形に限定されることなく、本願発明の特徴を有する限り、質量体が、何辺の形状であっても使用可能である。
【0049】
また、圧電材料の正確な配置によっても、運動等からの電気エネルギーを効率的に回収するものであるが、そのほかに、質量体は、運動中において、リファレンスに対して、いかなるねじれ運動や回転運動を生じないことが一般的に好ましい。
【0050】
また、リファレンス16に対して、少なくとも2つのテザー4、6が連結されており、かかるリファレンス16は、図4に示すように、質量体の上表面から下表面を実質的に連結して、覆うフレームとして、構成されることが好ましい。
【0051】
また、別の態様としては、図4に示すように、エネルギーハーベスト装置が、フレーム16に対して着脱可能であって、質量体2の上表面を被覆する第1のキャップ20、および/またはフレーム16に対して着脱可能であって、質量体2の下表面を被覆する第2のキャップ22を備えることが好ましい。
この理由は、第1のキャップ20および第2のキャップ22によれば、本願発明のエネルギーハーベスト装置を機械的保護することができ、あるいは、質量体2が、xおよびyへの直線方向に運動している場合、フレーム16に対して、質量体2の過剰運動を抑制することができるためである。
そして、第2のキャップ22は、通常、質量体2から、所定距離を介して設けてあり、質量体2が、フレーム16に対して、直線経路内で運動可能に構成してあることが好ましい。
【0052】
また、第1のキャップおよび第2のキャップは、弾性部材を含んで構成されていることが好ましい。
このようなキャップを構成する弾性部材は、典型的には、十分に柔軟なポリマーである。そして、特に制限されるものではないが、弾性部材としては、ポリジメチルシロキサン(PMDS)、弾性ポリマー、シリコーン(シリコンの場合がある)、シリコーン被覆ポリマー(シリコンを含む樹脂層を備えた弾性部材の場合がある)、およびこれらの組合せなどが挙げられる。
【0053】
また、本発明のエネルギーハーベスト装置は、通常のMEMS加工技術を用いて、シリコン・オン・インシュレーター(SOI)基材から形成されることが好ましい。
例えば、第1のシリコン層と、かかる第1のシリコン層上の二酸化ケイ素層と、かかる二酸化ケイ素層上の第2のシリコン層とを含むことが好ましい。
また、加工形成中においては、テザーは、SOI基材の第2のシリコン層から微細加工して形成してもよく、かかる第2のシリコン層は、最も一般的な圧電材料の材料となるものである。
さらに、質量体、およびリファレンス、例えば、フレームは、一般的には、SOI基材の全ての層を用いて、加工形成される。
【0054】
また、一例として、第1のシリコン層は、約300〜500μmの厚さであり、二酸化シリコン層は、約2μm、さらには、第2のシリコン層は、約5μmである。
また、各テザーの幅は、一般的には、約10〜200μmであり、より好ましくは、約100μmである。
さらには、各テザーは、質量体に対して、適切な間隔になるように離れて配置し、特に限定しないものの、かかる間隔を約20〜500μmの範囲内の値とすることが好ましい。
なお、種々の層厚および層自体は、当業者において公知の範囲で、変更することができる。
【0055】
また、静的撓み実験を行い、図1に示すエネルギーハーベスト装置は、200μm以上の範囲で、繰り返して動作しても、機械的損傷を生じないことが確認された。
したがって、第2のキャップ22は、質量体下面から、少なくとも約100μm離した位置に配置することが好ましい。
また、かかる撓みの大きさは、必要量以上のものであって、圧電薄膜上にて最大の応力レベルに達している。
【0056】
また、別の態様としては、エネルギーハーベスト装置は、本装置から産生した電荷を貯蔵するための蓄積手段を備えることが好ましい。
このような蓄積手段としては、典型例としては、コンデンサおよび電池、あるいは何れか一方である。
しかしながら、当業者において公知のものであれば、かかる蓄積手段として含めることができる。
したがって、一例ではあるが、本願発明のエネルギーハーベスト装置は、質量体2の上面において、コンデンサ30を備えることが好ましい。
【0057】
また、エネルギーハーベスト装置は、例えば、外部パラメータの感知あるいは外部状況の観察のために、シリコン製の質量体2の上に、直接的に搭載あるいは形成された少なくとも1つのセンサーあるいは機能化装置(図示せず)を設けることも好ましい。
【0058】
このようなセンサーあるいは機能化装置(パワー化装置等と称する場合がある。)としては、必須要件ではなく、かつ特に限定されるものではないが、本発明の実用時において使用されるものである。
より具体的には、圧力センサー、温度センサー、湿度センサー、加速度計、光レベルセンサー、ガスセンサー、パソゲン(pathogen)センサー、カメラ、マイクロフォン、モーションセンサーおよびこれらの組合せが挙げられる。
その他のものとしては、当業者において公知のものであり、かつ本発明の実用時において使用できるものを意味する。
したがって、センサーあるいは他の機能化装置によれば、遠隔的にプログラムに接続することが可能であって、あるいは、検知情報を活性化したり、あるいは検索したりできることが好ましい。
【0059】
また、好ましい態様としては、センサーあるいはその他の機能化装置は、エネルギーハーベスト装置に対して、単に電気的に、直接的あるいは間接的に、距離をおいて連結してあってもよいが、質量体上において集積化(例えば、COMOS回路)してあることがより好ましい。
そして、かかる集積化は、最もコンパクト化および、対費用効果の著しい向上に寄与するものである。
【0060】
また、別の好ましい態様としては、センサーまたはその他の機能化装置の少なくとも1つは、エネルギーハーベスト装置から、物理的に離間していることが好ましい。
例えば、エネルギーハーベスト装置は、これらと統合化したアンテナおよびワイヤレス(例えば、ギガヘルツ帯)の無線あるいは、RFIDタグとの組合せで利用することが好ましく、ユーザーに情報を伝達するのに十分なエネルギーを、装置に供給するトランスポーターによって読み取り可能である。
【0061】
また、センサーあるいはその他の機能化装置のコミュニケーションレンジとしては、特に限定されるものではないが、数メーター(単純なトランジスタ貯蔵会とおよび複合アンテナの使用)から、数百メーター(電池貯蔵およびRFIDタグとの共用あるいは何れか一方)まで及ぶものである。
【0062】
また、本願発明の発明者らは、鋭意検討の結果、少なくとも一つの対象のパラメータまたは外部状況を、感知または観察された情報として、検索するためのエネルギーハーベストシステム(装置)を着想するに至った。
かかるエネルギーハーベストシステムは、好ましくは、上述の1以上のエネルギーハーベスト装置と、質量体上において、あるいは、かかる1以上のエネルギーハーベスト装置の近傍において搭載された、外部パラメータの感知および外部状況の観察のための手段と、所望の外部パラメータおよび外部観察された情報について、少なくとも1つの機能化装置からの情報を検索するための手段と、含むことが好ましい。
【0063】
また、本願発明は、質量体と、撓みによって機械的応力を発生する圧電材料を含む少なくとも2つのテザーと、を備えたエネルギーハーベスト装置を用いた電荷の蓄積方法である。
そして、すくなくとも2つのテザーのそれぞれが、質量体に連結される第1の端部と、リファレンスに連結される第2の端部とを有し、かつ質量体が、リファレンスに対して実質的に直線経路にて運動可能なように、質量体の周囲に位置するエネルギーハーベスト装置を用いるとともに、以下の工程を有している。
(a)少なくとも2つのテザーの撓み運動を生じさせるために、質量体を運動させて、電荷を発生させる工程
(b)質量体の運動によって生じた電荷を貯蔵する工程
一例として、質量体の運動工程は、エネルギーハーベスト装置を外部振動(環境振動)にさらすことにより、達成することができる。
【0064】
そして、本発明の蓄積方法によれば、質量体上あるいは連結状態(例えば、物理的には離れているが、近接状態)に備え付けられ、かつ、所望のパラメータを検知またはモニタリング可能であるセンサーまたはその他の機能化装置と連動することにより、少なくとも1つの外部パラメータを検知あるいは外部状況を観察する工程を含むことも好ましい。
【0065】
また、検知あるいはモニタリングの工程は、上述のエネルギーハーベスト装置における所望のパラメータを感知できるセンサーで、かかるセンサーが質量体上に備わっていることにより、実施されることが好ましい。
しかしながら、エネルギーハーベスト装置が、センサー等に対して、物理的に近接するように配置されることも考えられる。
つまり、エネルギーハーベスト装置は、遠隔的に活性化させて、それにより、検知あるいはモニタリングした情報を検索することが好ましい。
【0066】
本願発明は、圧電材料の伸縮運動および屈曲運動に反応して、機械的振動運動を電気エネルギーに変換するエネルギーハーベスト装置を構成することにより、従来技術に対して著しく進歩したものである。
また、本願発明は、低振動数であっても、多くの電力を産生できる改良型のミクロスケール(マイクロサイズ)のエネルギーハーベスト装置を構成することにより、従来技術に対して進歩したものである。
【0067】
また、特許請求の範囲は、記載した発明の特徴の全てを含み、文言上、かかる範囲に包含される発明の範囲における明細書中の記載のすべてが含まれることを意図したものであることが理解できる。
また、本願発明のより深い理解のために、図面の簡単な説明は、対応する図面に関連するものとして参照される。
なお、各図面における各構成の全てについて、参照番号を付けて説明されている訳ではないものの、図面上の同一番号は、同一構成を示すために使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本願発明のエネルギーハーベスト装置の上面図(上側平面図)である。
【図2】テザーの長さ方向に沿った表面に分布する応力を示す図である。
【図3】カンチレバー型ビーム体の長さに沿った、応力および電圧値を示す図である。
【図4】本願発明のエネルギーハーベスト装置の別方向からの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量体と、少なくとも2つのテザーと、を含むエネルギーハーベスト装置であって、
前記テザーの少なくとも1つが、テザーの撓みに対して機械的応力を発生させる圧電材料を含み、
前記テザーが、前記質量体に連結する端部である第1の端部と、リファレンスに連結する端部である第2の端部と、を有し、
前記質量体が、前記リファレンスに対して、実質的に直線経路において移動可能なように、前記テザーが、前記質量体に対して配置され、
前記質量体の運動によって、前記テザーにおいて撓みが生じることにより、電荷を発生させることを特徴とするエネルギーハーベスト装置。
【請求項2】
前記2つのテザーのそれぞれが、機械的応力を発生させる圧電材料を含み、前記質量体の運動により生じた圧電材料の機械的応力により、電荷を発生させることを特徴とする請求項1に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項3】
前記2つのテザーが、前記質量体に対して、対称位置になるように設けてあることを特徴とする請求項1または2に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項4】
前記質量体が、上面方向から見た場合に、少なくとも4辺を有しており、
少なくとも2つのテザーにおいて、その一つである第1のテザーの第1の端部が、前記4辺の一つに連結するとともに、
少なくとも2つのテザーのもう一つである第2のテザーの第1の端部が、前記4辺の一つの対向側の辺に連結していることを特徴とする請求項3に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項5】
第3のテザーおよび第4のテザーを含み、それぞれが、関連したテザーの撓みに対して機械的応力を発生させる圧電材料を含み、
前記第3のテザーおよび第4のテザーが、前記質量体に連結する端部である第1の端部と、前記リファレンスに連結する端部である第2の端部と、を有し、
前記質量体が、前記リファレンスに対して実質的に直線経路において移動可能なように、前記第3のテザーおよび第4のテザーが、前記質量体に対して配置され、
前記質量体の運動によって、前記第3のテザーおよび第4のテザーに撓みが生じることにより、電荷を発生させることを特徴とする請求項4に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項6】
前記質量体が、上面方向から見た場合に、4辺を有しており、前記第3のテザーおよび第4のテザーが、前記第1のテザーおよび第2のテザーが連結していない残りの辺に対して、連結していることを特徴とする請求項3に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項7】
前記圧電材料において発生した機械的応力が、主として、前記圧電材料の伸縮運動によるものであることを特徴とする請求項2または6に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項8】
前記圧電材料の伸縮運動が引っ張り性によるものであって、伸縮された圧電材料によって発生した電荷が、単一極性であることを特徴とする請求項7に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項9】
前記質量体が、前記リファレンスに対して直線運動をしている際には、ねじれ運動や回転運動を生じないことを特徴とする請求項6に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項10】
前記質量体が、上面方向から見た場合に、少なくとも3辺を有する多角形であって、
テザーの数と、多角形の辺の数と、が等しいことを特徴とする請求項1に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項11】
前記質量体の各辺が、第1のエッジおよび第の2エッジを有するとともに、前記質量体の各辺に対応したテザーが、それぞれ、第1のエッジあるいはその近傍において、前記質量体と連結された第1の端部を備え、かつ、前記テザーが、連結された質量体の側に対して、実質的に平行に、そして所定空間を形成するように離れて延設されることを特徴とする請求項10に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項12】
前記テザーが連結されたフレームを含み、当該フレームが、前記質量体の上面から下面にかけて、実質的に延設されており、かつ、前記フレームの数が、前記質量体の辺の数と等しいことを特徴とする請求項10に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項13】
前記質量体の上面を被覆するとともに、着脱可能な第1のキャップと、前記質量体の下面を被覆するとともに、着脱可能な第2のキャップと、を備えていることを特徴とする請求項12に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項14】
前記質量体が、前記フレームに対して、直線経路において移動可能なように、前記第2のキャップが、前記質量体との間に、所定空間を有することを特徴とする請求項13に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項15】
前記質量体の上面に、キャパシタが設けてあることを特徴とする請求項1に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項16】
前記第1のキャップおよび第2のキャップが、弾性材料を含んで構成されていることを特徴とする請求項13に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項17】
前記弾性材料が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、弾性ポリマー、シリコーン、シリコーン被覆ポリマー、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項16に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項18】
前記エネルギーハーベスト装置が、シリコン・オン・インシュレーター基材(SOI)を微細加工することによって形成してあり、第1のシリコン層と、当該第1のシリコン層上に形成された二酸化ケイ素層と、当該酸化ケイ素層上に形成された第2のシリコン層とを含むことを特徴とする請求項1または11に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項19】
前記第1のシリコン層の厚さが、約300〜500μmの範囲であって、前記酸化ケイ素層の厚さが、約2μmであって、前記第2のシリコン層の厚さが、約5μmであることを特徴とする請求項18に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項20】
前記少なくとも2つのテザーが、シリコン・オン・インシュレーター基材(SOI)の第2のシリコン層を微細加工することによって形成してあることを特徴とする請求項19に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項21】
前記質量体およびリファレンスが、シリコン・オン・インシュレーター基材(SOI)の全層を微細加工することによって形成してあることを特徴とする請求項19に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項22】
前記少なくとも2つのテザーのそれぞれが、約10〜200μmの幅を有することを特徴とする請求項19に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項23】
前記少なくとも2つのテザーのそれぞれが、約100μmの幅を有することを特徴とする請求項22に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項24】
前記少なくとも2つのテザーのそれぞれが、前記質量体から約20〜500μmの距離をおいて配置してあることを特徴とする請求項23に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項25】
エネルギーハーベスト装置によって産生した電荷を蓄えるための蓄積手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項26】
前記電荷を蓄えるための手段が、キャパシタまたはバッテリーであることを特徴とする請求項25に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項27】
外部パラメータを検知し、あるいは、外部条件を観察するために、前記質量体上、あるいはエネルギーハーベスト装置の近傍に、少なくとも1つのセンサーあるいは機能化装置を、さらに設けることを特徴とする請求項1に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項28】
前記少なくとも一つのセンサーあるいは機能化装置が、圧力センサー、温度センサー、湿度センサー、加速度計、カメラ、マイクロフォン、モーションセンサーおよびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項27に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項29】
前記少なくとも一つのセンサーが、プログラムに対して、遠隔的に反応し、それにより、検知された情報を活性化し、または検索することを特徴とする請求項27に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項30】
前記質量体の運動が、外部の機械的刺激に曝すことによって開始することを特徴とする請求項1に記載のエネルギーハーベスト装置。
【請求項31】
少なくとも1つのパラメータまたは所望の外部条件に関する、センサー検知あるいは観察された情報を検索するためのエネルギーハーベストシステムであって、
a)請求項1に記載の1つ以上のハーベスト装置と、
b)外部パラメータを検知または外部条件を観察するため、1つ以上のエネルギーハーベスト装置に、電気的に連結された1つ以上のセンサーあるいは機能化装置と、
c)センサーまたは機能化装置から、検知された所望の外部パラメータまたは観察された外部条件に関する情報を検索するための手段と、
を備えたエネルギーハーベストシステム。
【請求項32】
質量体と、当該質量体およびリファレンスに連結した所定手段と、を含むエネルギーハーベスト装置であって、
前記所定手段の少なくとも1つが、テザーの撓みに対して機械的応力を発生させる圧電材料を含み、
前記所定手段が、前記リファレンスに対して、実質的に直線経路において移動可能なように、前記質量体に対して配置され、
前記質量体の運動によって、前記圧電材料に機械的応力が生じることにより、電荷を発生させることを特徴とするエネルギーハーベスト装置。
【請求項33】
質量体と、少なくとも2つのテザーと、を含むエナジーハーベスト装置を用いた電荷の蓄積方法であって、
前記テザーの少なくとも1つが、テザーの撓みに対して機械的応力を発生させる圧電材料を含み、
前記テザーが、前記質量体に連結する端部である第1の端部と、リファレンスに連結する端部である第2の端部と、を有し、
前記質量体が、前記リファレンスに対して実質的に直線経路において移動可能なように、前記テザーが、前記質量体に対して配置されたエナジーハーベスト装置を用いるとともに、
以下の工程を含むことを特徴とする電荷の蓄積方法。
a)前記質量体の運動によって、前記テザーにおいて撓みが生じることにより、電荷を発生させる工程
b)前記質量体の運動によって発生した電荷を蓄積する工程
【請求項34】
前記質量体の運動が、エナジーハーベスト装置を、外部振動に曝すことによって実施されることを特徴とする請求項33に記載の電荷の蓄積方法。
【請求項35】
所望のパラメータまたは外部情報を検知またはモニタリングし、エナジーハーベスト装置に対して電気的に接続されたセンサーまたはあるいは機能化装置により、少なくとも1つのパラメータまたは所望の外部条件を検知または観察する工程を含むことを特徴とする請求項33に記載の電荷の蓄積方法。
【請求項36】
少なくとも1つのパラメータまたは所望の外部条件が、圧力、温度、湿度、加速度、運動、音、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項35に記載の電荷の蓄積方法。
【請求項37】
検知またはモニターした情報を、検索し、プログラミングし、および/または活性化させる工程を含むことを特徴とする請求項35に記載の電荷の蓄積方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−537847(P2008−537847A)
【公表日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503141(P2008−503141)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/010447
【国際公開番号】WO2006/102437
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(505042664)エール大学 (3)
【Fターム(参考)】