説明

エネルギ変換装置用のステータおよびその製造方法ならびにエネルギ変換装置および風力タービン

【課題】エネルギ変換装置の効率を向上可能なステータを提供する。
【解決手段】ステータは、軸方向105の周囲に少なくとも1つの環状部分を有している支持構造体103と、支持構造体103に接続され、当該支持構造体103から放射状に延びている第1の突起107と、支持構造体103に接続され、当該支持構造体103から放射状に延びており、第1の突起107から円周方向において離間している第2の突起111と、第1の突起107と第2の突起111との間に異なる放射方向の位置に位置する複数の第1のラジアル層として配置されており、その断面の円周方向の長さが放射方向の外側に向かって増大しているように構成されている第1のワイヤ119と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギ変換装置用のステータ、該ステータを備えたエネルギ変換装置および該エネルギ変換装置を備えた風力タービンならびにエネルギ変換装置用のステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において機械エネルギたとえば回転エネルギを電気エネルギに変換する発電機が公知である。発電機では、導体を取り囲む領域において磁束が変化するとき電圧が導体の2点間に誘導されることを示すファラデイの法則が用いられる。このため、従来の発電機はステータに属するコイルと、機械エネルギ源により回転されるロータに属する可動な磁石とを備えている。コイルに相対的に磁石が回転する際、コイルに電圧が誘導されて電気エネルギとして送出することのできる電流が発生する。発電機のステータ部は、リング状構造を有し、当該構造からは複数の突出コアまたは突起が放射状に突出している。たとえばこれらの突出コアまたは突起のそれぞれにコイルが組み付けられる。突出コアに組み付けられたたとえばこれらすべてのコイルを構成するワイヤは、回路の出力側から電気エネルギを送出すべく、適切な回路に接続されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の発電機および一般的なエネルギ変換器は十分な効率を有するものではなかった。
【0004】
また、エネルギ変換装置の効率を向上するためにエネルギ変換装置に使用可能なステータが求められていた。さらに、向上された効率を有するエネルギ変換装置が必要とされていた。本発明は、上記従来技術における課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態では、エネルギ変換装置用のステータが提供され、該ステータは、軸方向の周囲に少なくとも1つの環状部分を有している支持構造体と、支持構造体に接続され、当該支持構造体から放射状に延びている第1の突起と、支持構造体に接続され、当該支持構造体から放射状に延びており、第1の突起から円周方向において離間している第2の突起と、第1の突起と第2の突起との間に異なる放射方向の位置に位置する複数の第1のラジアル層として配置されており、その断面積の円周方向の長さが放射方向の外側に向かって増大しているように構成されている第1のワイヤと、を備えている。
【0006】
ステータはたとえば電気モータまたは発電機に適している。支持構造体は、ステータが発電機または電気モータにおいて作動しているときに第1のコイルと第2のコイルとにより誘導される電流により発生する熱に耐えることができるかぎり、いかなる材料から構成されていてもよい。たとえば支持構造体はリング状部分からなる少なくとも1つのセグメントを備えており、特に環状の少なくとも1つのセグメントを備えている。複数の、たとえば4個、6個または8個のセグメントが対で接続された環状構造を構成していてもよい。
【0007】
支持構造体に接続されている第1の突起および支持構造体に接続されている第2の突起は支持構造体と一体的に形成されていてもよく、あるいは、接続手段たとえばボルト、ネジおよび/または接着剤などで支持構造体に接続されている個別の要素であってもよい。第1の突起および第2の突起はまた支持構造体に溶接されていてもよい。第1の突起および第2の突起はいずれも支持構造体から放射状に延びており、すなわち、特に支持構造体の対称軸である軸方向に対して垂直に延びている。第1の突起および/または第2の突起はたとえば支持構造体から放射方向の内側にまたは放射方向の外側に向かって延びている。たとえば第1の突起および第2の突起は支持構造体から5cm〜10cm延びており、すなわち5cm〜10cmの放射方向の長さまたはサイズを有している。また、第1の突起および第2の突起の軸方向の長さまたはサイズはたとえば3cm〜10cmである。また、第1の突起および第2の突起の円周方向の長さまたはサイズはたとえば3cm〜15cmである。
【0008】
ステータは3個以上の突起たとえば60個〜140個の突起を有している。また、ステータは各突起に接続されている同数のまたは異なる数のコイルを備えており、いずれの場合もコイルはたとえば1個または複数の突起の周囲に配置されている。
【0009】
第1のワイヤは第1の突起または第2の突起の周囲に少なくとも部分的に巻回されまたは曲げられている。第1のワイヤはたとえば1つまたは複数の突起を囲む第1のコイルから形成されている。第1の突起と第2の突起との間の空間はたとえば複数の第1のラジアル層が挿入されるスロットを形成している。たとえば第1のラジアル層は隣接する突起間に配置されているワイヤが1つのコイルにのみ属する、いわゆる「1つのスロット当たり1つのコイル」構造のスロット内を実質的に完全に満たす。これに対して、いわゆる「1つのスロット当たり2つのコイル」構造では、2つのワイヤが隣接する突起間に配置され2つのワイヤは2つのコイルに属している。この場合、ただ2つのワイヤがともに第1の突起と第2の突起との間のスロット内を(放射方向および/または円周方向において)実質的に完全に満たしている。
【0010】
たとえば第1のワイヤ(および以下で詳述する第2のワイヤ)は銅などの導電材料からなるコアと、コアを被覆する絶縁層とから構成されている。ワイヤの導電性のコア材料を被覆する絶縁層を設けることにより、第1のコイルを形成している第1のワイヤの隣接する巻線を互いに絶縁可能である。また、第2のワイヤ(以下で詳述する)の導電性のコア材料を被覆する絶縁層により、第2のコイルを形成している第2のワイヤの複数の巻線は互いに絶縁可能である。
【0011】
ステータは、少なくとも第1の突起と、円周方向において第1の突起から離間されている第2の突起とを備えている。円周方向とはたとえば軸方向に垂直な方向であり、他の全ての放射方向に垂直な方向である。放射方向に延びる要素はたとえば軸方向に垂直である任意の放射方向に延びている要素を特定している。
【0012】
特に第1のワイヤの断面の円周方向の長さは1つの第1のラジアル層から放射方向の外側に位置する他の第1のラジアル層へと放射方向の外側に向かって増大している。したがって、たとえば第1のワイヤの断面の円周方向の長さは連続的に(または単調に)放射方向の外側に向かって増大している。
【0013】
実施形態では、「台形状のスロット、長方形状の突起」のステータ(すなわち放射方向に延びている1つまたは複数の突起を有し、突起の間に台形状のスロットが形成されている長方形状のステータ)に関する「スロット充填率」が増大するという問題を解決することができる。したがって、スロット充填率は、ワイヤを構成する導電材料(たとえば銅)で満たされ、このため空気(自由空間)、および/または、1つまたは複数のコイルに属するワイヤ巻線の周囲の絶縁材料を含んでいないスロットの断面積の割合であってよい。
【0014】
ステータ構成の別のコンセプトはたとえば「長方形状のスロット、台形状の歯」の構成であるが、この構成のスロットは均一な断面形状を有するワイヤで満たされる場合があるので、本発明が主として対象とするものではない場合がある。
【0015】
実施形態はたとえば1層または2層構成の双方に関し、すなわち、1層構成は各スロットが1つのコイルのみからなるワイヤ巻線を収容するものであり、2層構成は各スロットが2つのコイルからなるワイヤ巻線を収容する。
【0016】
実施形態はたとえば並列のコイル構成および直列のコイル構成の双方に関し、すなわち、ワイヤ巻線はたとえば直列に接続されてマルチターンコイルを形成し、または、ワイヤ巻線はたとえば並列に接続されて「並列接続された多重シングルターン巻線」を形成している。
【0017】
実施形態では、互いの上のワイヤ巻線の数(すなわち放射方向のワイヤのラジアル層の数)はたとえば10個〜20個の範囲にある。上述したように、これらの巻線はたとえば並列または直列に接続される。他の実施形態では、より小さいまたはより大きい数のラジアル層が設けられている。
【0018】
一実施形態では、円周方向(放射方向に垂直な方向)のワイヤ巻線層の数はたとえば1個または2個である。他の実施形態では、より小さいまたはより大きい数の円周方向の層が設けられている。
【0019】
一実施形態では、ステータは第1の突起と第2の突起との間の異なる放射方向の位置に位置する複数の第2のラジアル層として配置されている第2のワイヤをさらに備えており、放射方向の外側の第1のワイヤの一部は放射方向の外側の第2のラジアル層の第2のワイヤの一部と隣接しており、第2のワイヤの断面の円周方向の長さは放射方向の外側に向かって増大している。これにより、「1つのスロット当たり2つのコイル」の構成が提供される。この構成では、2つのワイヤが第1の突起と第2の突起との間に配置されており、2つのワイヤは2つの異なるコイルに属している。この場合、第1のコイルおよび第2のコイルはともに実質的に完全に(または突起の放射方向の少なくとも90%にわたって)、第1の突起と第2の突起との間のスロットを(放射方向および円周方向の双方において)満たすことができる。
【0020】
上述したように、たとえば第1のワイヤは第1のコイルを形成し、第2のワイヤは第2のコイルを形成している。ステータの、軸方向に垂直な部分を形成している断面において、第1のコイルと第2のコイルはたとえば放射方向および円周方向に延在している。これにより、第1のコイルはたとえば放射方向の内側の部分と、第1のコイルの放射方向の内側の部分よりも放射方向の外側の部分(特に放射方向の最も外側の部分を表す)とを構成している。同様に、第2のコイルはたとえば放射方向の内側の部分と、放射方向の内側の部分よりも放射方向のより外側に配置されている放射方向の外側部分とを構成している。特に第1のコイルの放射方向の外側の部分はたとえば放射方向の最も外側に配置されている第1のワイヤのセグメントにより形成され、これらのセグメントの放射方向のさらに外側には、第1のワイヤの他のセグメントは存在していない。さらに、第2のコイルの外側の部分はたとえば放射方向の最も外側に位置する第2のワイヤのセグメントにより形成され、これらのセグメントの放射方向のさらに外側には第2のワイヤの他のセグメントは配置されていない。
【0021】
第1のコイルの放射方向の外側にある第1のワイヤの部分は、たとえば第2のコイルの放射方向の外側にある第2のワイヤの部分と隣接しており、第1のワイヤの当該部分と第2のワイヤの当該部分との間には他の構造(そして空き空間も)は存在していない。特に第1のコイルの放射方向の外側の部分にある第1のワイヤの部分と、第2のコイルの放射方向の外側にある第2のワイヤの部分との距離はたとえば、第1のコイルの第1のワイヤの隣接する部分間の平均距離の5倍、3倍、2倍または1.5倍、あるいは、第2のコイルの第2のワイヤの隣接する部分間の平均距離の5倍、3倍、2倍または1.5倍である。
【0022】
したがって、第1のコイルはたとえば第2のコイルの直近に隣接しており、第1のコイルと第2のコイルとの間には空隙は実質的に形成されていない。よって、第1の突起と第2の突起との間の空き(大気)空間または空隙の形成は防がれるが、この空隙は第1のコイルの第1のワイヤおよび第2のコイルの第2のワイヤのセグメントにより満たされていることにより、ステータがたとば発電機に用いられたとき、電流が誘導可能となる。したがって、実施形態に係るステータを用いる発電機の効率が向上する。特にたとえば第1のコイルおよび第2のコイルの放射方向の外側の部分にある第1のワイヤのセグメントおよび第2のワイヤのセグメントをそれぞれ設けることにより、発電機の効率が向上する。これは、第1のワイヤおよび第2のワイヤのこれらの部分がステータの周囲を回転する磁石により近く、コイルの放射方向の外側の端部から放射方向の外側に配置されており、第1のコイルおよび第2のコイルに誘導される電流の量は回転する磁石に対する距離が減少するにつれ増大するからである。
【0023】
一実施形態では、第1のワイヤおよび/または第2のワイヤは、第1の突起と第2の突起との間の空間を、第1の突起の放射方向のサイズの少なくとも70%、および、第2の突起の放射方向のサイズの少なくとも70%にわたって、特に第1の突起および第2の突起との間の円周方向の長さ部分の実質的に全体にわたって満たしているように構成されている。
【0024】
同様に、第1のコイルおよび第2のコイルはたとえば、第1の突起と第2の突起との間の空間が第1の突起の放射方向のサイズ(h)の少なくとも70%にわたって、第2の突起の放射方向のサイズ(h)の少なくとも70%にわたって、特に第1の突起および第2の突起との間の円周方向の長さ部分の実質的に全体にわたって満たしているように構成されている。
【0025】
第1の突起および第2の突起の放射方向のサイズは、第1の突起および第2の突起が支持構造体から放射状に伸びている、放射方向における第1の突起および第2の突起の長さとして求めることができる。特に第1の突起および第2の突起はたとえば支持構造体から離れている、放射方向の内側の末端(特に第1の突起および第2の突起が支持構造体に接続されている部分)および放射方向の外側の末端(特に放射方向の内側の末端よりも支持構造体からより離れている(または最も離れている)部分)を構成しており、これらの末端の間で各突起の長さを求めることができる。
【0026】
第1の突起および第2の突起はたとえば異なる断面形状たとえば長方形状または正方形状を有する異なる形状たとえば円筒形状、立方形状を有している。さらに、第1の突起および第2の突起は少なくとも部分的にコイルを組み付け可能である限り、台形状を有していてもよい。特にたとえば第1の突起の放射方向のサイズの少なくとも90%にわたりかつ第2の突起の放射方向のサイズの少なくとも90%にわたる第1の突起と第2の突起との間の円周方向の空間は、第1のワイヤおよび/または第2のワイヤのセグメントにより満たされている。
【0027】
一実施形態では、第1のコイルおよび/または第2のコイルは円周方向および放射方向に拡がっており、第1のコイルおよび/または第2のコイルの円周方向のサイズは放射方向の外側に向かって増大している。有利なことに、これにより第1の突起と第2の突起との間の空隙はたとえば、特に第1のコイルと第2のコイルとが互いに隣接する(たとえばコイルを構成するワイヤ部分が互いに隣接しまたは互いに接触しさえする)ように、特に放射方向の外側の部分における第1のコイルおよび第2のコイルの円周方向のサイズを最大化することによって満たされる。これにより、ステータが発電機に用いられるとき、第1のコイルおよび第2のコイルに誘導される電流の量が増大し、発電機の効率を向上させる。
【0028】
一実施形態において、第1の突起および第2の突起は放射方向の外側に向かって突出している。所定直径のステータに関して、第1の突起および第2の突起が放射方向の外側に向かって突起している場合、第1の突起および第2の突起が放射方向の内側に向かって突出している場合と比較して発電機の効率は強められる。さらに、第1のコイルおよび第2のコイルをそれぞれ第1の突起および第2の突起により容易に組み付けることができるため、この構成によりステータの組み立ては容易となる。
【0029】
一実施形態では、第1のワイヤおよび/または第2のワイヤの断面積のサイズは、ワイヤの長手方向の長さ部分にわたって一定である。第1のワイヤおよび第2のワイヤの製造プロセスにおける変動および不正確性のため、第1のワイヤおよび/または第2のワイヤの断面積は完全に一定ではないものの、たとえば10%、5%、2%または1%を超えないわずかな割合で変化する。第1のワイヤおよび第2のワイヤの断面積のサイズは、第1のコイルおよび第2のコイルに組み立てられていない、第1のコイルおよび第2のコイルが第1の突起および第2の突起にそれぞれ組み付けられる前の第1のワイヤおよび第2のワイヤについて求めることができる。したがって、第1のワイヤおよび第2のワイヤの断面積は第1のワイヤおよび第2のワイヤの製造直後、ステータの組み立て前に求めることができる。第1のワイヤおよび第2のワイヤの断面積は長手方向の長さ部分に対して垂直な方向のワイヤの断面積のサイズを測定することにより求めることができる。
【0030】
第1のワイヤおよび第2のワイヤの断面積のサイズを一定とすることにより、第1のワイヤおよび第2のワイヤの長さ当たりの電気抵抗を少なくともほぼ一定とすることができる。したがって、第1のコイルおよび第2のコイルに電流が誘導されたときの、第1のワイヤおよび第2のワイヤの異なるセグメントの不均一な加熱は防止される。これにより、最大作動電流は、第1のワイヤまたは第2のワイヤの最小サイズの断面積を有する(そしてすなわち最大の抵抗値を有して最大の熱放散をもたらす)特定のセグメントにより制限されない。
【0031】
一実施形態では、所定の断面方向における第1のワイヤおよび/または前記第2のワイヤの断面積のサイズは、ワイヤの長手方向の長さにわたって(各ワイヤの平均断面積に比して)10%超、特に20%超、特に40%超、特に60%超、特に100%、特に150%超変化している。所定の断面方向とはたとえば各ワイヤの長手方向の長さ部分に垂直な断面により定められる平面内の方向である。所定の断面方向とはたとえば第1のワイヤおよび第2のワイヤの高さを表し、または、第1のワイヤおよび第2のワイヤの幅を表す。特に所定の断面方向とは第1のワイヤおよび第2のワイヤの長手方向の長さ部分にそれぞれ垂直である。
【0032】
したがってたとえば第1のワイヤおよび/または第2のワイヤの断面形状は異なっている。また一実施形態では断面積のサイズは一定に維持される。それぞれの長手方向の長さ部分にわたって断面形状が変化する第1のワイヤおよび/または第2のワイヤを用いることにより、有利なことに第1の突起と第2の突起との間の空間または空隙を満たすことが容易となる。
【0033】
一実施形態では、第1のワイヤの少なくとも1つのセグメントおよび/または第2のワイヤの少なくとも1つのセグメントは長方形状の断面形状を有している。特に長方形状の断面形状は少なくともほぼ長方形状の形状を表す。特にほぼ長方形の断面形状は鋭い角または面取りされた角を有していてもよい。断面形状の少なくとも部分的に、(少なくともほぼ)直線的な部分が設けられ、当該直線的な部分が特に曲線的な部分に接続されていてもよい。
【0034】
一実施形態では、第1のワイヤの少なくとも1つのセグメントおよび/または第2のワイヤの少なくとも1つのセグメントは台形状の断面形状を有している。特に台形状の断面形状は少なくともほぼ台形状の断面形状を表す。特に台形状の断面形状は鋭い角または面取りされた角を有してもよい。特にかかる断面形状を有する第1のワイヤおよび第2のワイヤは容易に製造可能であり、第1の突起と第2の突起との間の空間を満たすことが容易となる。
【0035】
一実施形態では、第1のコイルおよび/または第2のコイルはそれぞれ第1のワイヤおよび第2のワイヤの複数の巻線(特に円周方向に離間している)により形成される。複数の巻線は放射方向の異なる位置に位置している。第1の放射方向の位置に位置する巻線の第1の数は、第1の放射方向の位置とは異なる第2の放射方向の位置に位置する巻線の第2の数と同じである。
【0036】
特定の放射方向の位置にある巻線(すなわち円周方向の巻線)の数は一実施例ではたとえば1個〜6個である。特定の放射方向の位置にある第1のワイヤおよび/または第2のワイヤのセグメントは同じ断面形状を有する。第1のワイヤまたは第2のワイヤの巻線を同数、異なる位置に設けることにより、ステータを発電機に用いたとき、誘導結合および電流の誘導が向上される。
【0037】
一実施形態では、隣接する突起間の自由空間を満たすのは、円周方向に別の巻線を追加するだけでは不可能である。というのは、ワイヤ巻線の断面の円周方向のサイズ(または断面の幅)が、突起間の満たされるべき残りの(すなわちワイヤ巻線により占められていない)自由空間の円周方向のサイズよりも大きい場合があるからである。したがって、断面形状が変化しているワイヤを用いる必要がある。
【0038】
一実施形態では、第1のワイヤ(および/または以下に示す第2のワイヤ)の断面の円周方向の最小の長さ(または断面の幅)は、各突起の放射方向の内側の端部において得られる、第1の突起の面と第2の突起の対向面との間の円周方向の距離の、たとえば0.4倍超、0.45倍超、0.8倍超、0.9倍超または0.95倍超である。
【0039】
一実施形態では、第1のワイヤ(および/または以下に示す第2のワイヤ)の断面の円周方向の最大の長さ(または断面の幅)は、突起の放射方向の外側の端部において得られる、第1の突起の面と第2の突起の対向面との間の円周方向の距離の、たとえば0.4倍超、0.45倍超、0.8倍超、0.9倍超または0.95倍超である。
【0040】
一実施形態では、エネルギ変換装置が提供され、該エネルギ変換装置は、上記の実施形態に係るステータと、磁石として作用する磁石要素を有しており、前記ステータに相対的に回転可能なロータとを備えている。これにより、実施形態に係る電気モータまたは特に発電機が提供される。隣接する突起間の空隙が満たされている、互いに隣接しているコイルを有する向上された構成により、コイルに誘導される電流は発電機の効率をより向上させる。
【0041】
一実施形態では、風力タービンが提供され、該風力タービンは、発電機としての上述の実施形態にかかるエネルギ変換装置と、ロータに機械的に接続されているプロペラを備えている。効率が向上された発電機の使用により、風力タービンの発電効率も向上可能である。
【0042】
装置タイプの請求項に関して記載された実施形態に係る上記特徴は、以下に記載する方法タイプの請求項に関する他の実施形態にも適用可能である。
【0043】
一実施形態では、エネルギ変換装置用のステータの製造方法が提供され、該方法は、軸方向の周囲に少なくとも1つの環状部分を有している支持構造体を形成するステップと、支持構造体に接続され、当該支持構造体から放射状に延びている第1の突起を形成するステップと、支持構造体に接続され、当該支持構造体から放射状に延びている第2の突起を、第1の突起から円周方向において離間して形成するステップと、第1のワイヤの複数の第1の層を形成するステップと、第1の突起と第2の突起との間に複数の第1のラジアル層を配置するステップと、を備えており、第1のワイヤの複数の第1の層を形成し、配置するステップは、第1のワイヤの断面の円周方向の長さが放射方向の外側に向かって増大するように行う。
【0044】
一実施形態では、上記方法はさらに、第2のワイヤの複数の第2の層を形成するステップと、放射方向の外側の第1のラジアル層における第1のワイヤの部分が放射方向の外側の第2のラジアル層の外側における第2のワイヤの部分と隣接するように、第1の突起と第2の突起との間に複数の第2の層を配置するステップと、を備えている。
【0045】
一実施形態では、上記方法はさらに複数の他の突起を形成するステップと、複数の他のコイルを形成するステップと、他のコイルを他の突起に組み付けるステップとを含んでおり、隣接する各コイル対に関して、コイル対のうちの第1のコイルの放射方向の外側の部分にある第1のワイヤの部分が、コイル対のうちの第2のコイルの放射方向の外側の部分にある第2のワイヤの部分と隣接している。これにより、従来のステータにおいて隣接する突起間に形成される空隙は隣接するコイルに属するワイヤセグメントにより満たされ、本実施形態に係るステータがかかる機械の動作に用いられたとき、エネルギ変換装置たとえば発電機の効率を向上させることができる。
【0046】
一実施形態では、複数の第1の層および/または第2の層を形成するステップは、第1のワイヤおよび/または第2のワイヤの断面を、所定の断面方向における断面積のサイズがワイヤの長手方向の長さ部分にわたって10%超変化しているように形成するステップを含んでいる。
【0047】
また、第1のコイルおよび/または第2のコイルを形成するステップは、第1のワイヤおよび/または第2のワイヤの断面を、所定の断面方向における断面積のサイズがワイヤの長手方向にわたって10%超変化するように形成するステップを含んでいる。これにより、特に異なる方向に配向された対向するバレルまたはローラの1つまたは複数の対を用いるロールプロセスまたは圧延プロセスを用いることができ、これらのプロセスは、圧力をかける際に第1のワイヤおよび/または第2のワイヤを変形し、および/または、第1のワイヤおよび/または第2のワイヤの断面を適切に形成するよう引っ張るよう構成されている。特に第1のワイヤおよび/または第2のワイヤの断面積のサイズは、たとえばワイヤの長手方向の長さ部分にわたって少なくともほぼ一定に維持されている。
【0048】
一実施形態では、第1の層および/または第2の層を形成するステップは、第1のワイヤおよび/または第2のワイヤを補助構造体の周囲に複数回、第1のワイヤおよび/または第2のワイヤの1つのセグメントが互いの上に積層されるように曲げるステップと、次いで、第1のワイヤおよび/または第2のワイヤを補助構造体の周囲の異なる位置に複数回、第1のワイヤおよび/または第2のワイヤの複数のセグメントが互いの上に積層されるように曲げるステップと、を含んでいる。
【0049】
また、第1のコイルおよび/または第2のコイルを形成するステップは、第1のワイヤおよび/または第2のワイヤを補助構造体の周囲に複数回、第1のワイヤおよび/または第2のワイヤのセグメントが互いの上に積層されるように曲げるステップと、次いで、第1のワイヤおよび/または第2のワイヤを補助構造体の周囲の異なる位置に複数回、第1のワイヤおよび/または第2のワイヤの複数のセグメントが互いの上に積層されるように曲げるステップと、を含んでいる。
【0050】
これにより、第1のワイヤおよび第2のワイヤはたとえば、互いの上に積層されている特定の位置において補助構造体の周囲に曲げられている第1のワイヤおよび/または第2のワイヤの部分の長さの合計に相応する長手方向の長さ部分にわたる一定の断面形状を有する。これにより、所定の断面方向における長さが長手方向の長さ部分にわたって段階的に増減するワイヤを用いることが可能となる。よって、特定の断面形状を有する第1のワイヤおよび/または第2のワイヤのセグメントはたとえば他の巻線プロセスと比較してより大きい長手方向の長さを有している。したがって、第1のワイヤおよび第2のワイヤの製造を簡略化できる。
【0051】
本発明の複数の実施形態を種々の対象を参照して説明したことに留意されたい。とりわけこれらの実施形態では、方法カテゴリーの請求項に関連して説明しているものと、装置カテゴリーの請求項に関連して説明しているものとがある。しかし当業者であれば、上記および下記の記載から、それ以上特記しなくても、別のカテゴリーの対象に属する特徴のすべての任意の組み合わせの他に、異なる対象に関する特徴のすべての任意の組み合わせも本願の開示内容と見なされ、とりわけ方法カテゴリーの請求項の特徴と装置カテゴリーの請求項の特徴との組み合わせも本願の開示内容と見なされることを理解することができる。
【0052】
本発明の上述の態様またさらなる態様は、実施例を参照して説明する以下の記載より明らかになる。本発明を以下では実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】一実施形態に係るステータの断面図を概略図である。
【図2A】一実施形態に係るワイヤの長手方向の断面図を示す。
【図2B】図2Aに示されるワイヤの横方向の断面図である。
【図2C】図2に示されるワイヤの他の長手方向における横方向の断面図である。
【図3】一実施形態に係るステータの部分の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図面中の記載は概略的なものである。異なる図面中、同様または同一の要素には同一の参照符号あるいは対応する参照符号と最初の桁のみが異なる参照符号が用いられる。
【0055】
図1は一実施形態にかかるステータの断面図を示す。ステータ100はリング形状を有する支持構造体103を有している。当該リング形状は環状に構成され、図1の紙面に垂直な軸方向105に延びる対称軸(図1中、図示せず)を有している。図1中、ステータ100の部分断面透視図は、軸方向に垂直な方向の断面に相応する。
【0056】
ステータ100は支持構造体103に接続されており、支持構造体103から放射状に延びている。「放射状(方向)に延びている」とは、第1の突起107が軸方向105に垂直な放射方向109に延びていることを意味する。ここで、放射方向109とは、環状の支持構造体103の対称軸(図示せず)から生じ、対称軸に垂直でありしたがって同様に軸方向に垂直な方向に延びている方向である。ステータ100は支持構造体103に同様に接続されており、支持構造体103から放射方向109の外側に延びる第2の突起111を備えている。特に、第2の突起111は放射方向とは異なる放射方向123に沿って延びている。
【0057】
図1の断面図に示されるように、第1の突起107および第2の突起111は幅w(円周方向における長さ)と高さh(それぞれの放射方向109、123における長さ)とを有する長方形状を有している。実施例では、高さhと幅wと比は約2であるが、たとえばこの比は5〜0.5の範囲にある。第1の突起107および第2の突起111はいずれも(図示しない)深さd(図平面に垂直な軸方向に延びている)を有し、たとえば幅wと同様の範囲の値を有する。特に実施例では、第1の突起107および第2の突起111の高さhはたとえば5cm〜15cmであり、幅wおよび深さdはたとえばいずれも3cm〜8cmの値である。他のサイズも可能であり、意図されるケースによる。
【0058】
第1の突起107には第1のコイル115が組み付けられており、第2の突起111には第2のコイル117が組み付けられている。第1のコイル115および第2のコイル117はしたがってそれぞれ第1の突起107および第2の突起111によりその放射方向の長さ部分全体にわたって少なくとも部分的に包囲されている。第1のコイル115は第1の突起107と第2の突起111との間に配置されている第1のワイヤ119を構成し、第2のコイル117は第1の突起107と第2の突起111との間に配置されている第2のワイヤ120を構成しており、これによって複数のラジアル層121_1、121_2、…、121_nが形成されている(図1中では、別のコイル116の例で示している)。なお、nは整数であり、たとえば2以上15以下である。したがって、ラジアル層121_1は第1のコイル115および第2のコイル117の放射方向での内側部分として配置されており、最後のラジアル層121_nは第1のコイル115および第2のコイル117の放射方向での外側部分としてそれぞれ配置されている。第1のコイル115および第2のコイル117も同様にそれぞれ1つまたは複数の突起を包囲するものであってよい。
【0059】
図1の断面図において、第1のコイル115および第2のコイル117はくさび形状を有し、その円周方向113における長さまたはサイズは放射方向の外側に向かうにつれ増大している。図1に示す実施例は、第1のコイル115の放射方向の内側のラジアル層121_1の円周方向の長さc_1および第1のコイル115の放射方向の外側のラジアル層121_nの円周方向の長さc_nを示す。放射方向の最も内側のラジアル層の円周方向の長さは、放射方向の最も外側のラジアル層の円周方向の長さよりも小さいことは明らかである。ラジアル層121_2、…、121_(n−1)の円周方向の長さはたとえばc_1とc_nの間にある。
【0060】
図1の例に示すステータ100において、第1のコイル115および第2のコイル117の、放射方向の外側方向における円周方向の長さの変化は、第1のコイル115を形成している第1のワイヤ119と、第2のコイル117を形成している第2のワイヤ120とにより実現される。第1のワイヤ119および第2のワイヤ120は、第1のワイヤ119および第2のワイヤ120のそれぞれ長手方向にわたって変化する断面形状を有している。第1のワイヤ119の断面の円周方向の長さ(円周方向113における長さまたはサイズ)は、放射方向内側のラジアル層121_1における値w2から、放射方向外側のラジアル層121_nにおける値w1まで増大する(ここで、w1はw2よりも大きい)ことは明らかである。特にこの第1のワイヤ119の断面の円周方向の長さは放射方向の位置に応じて連続してまたは比例して増大する。
【0061】
図2Aに、第1のワイヤ119の長手方向の断面図の例を概略的に示す。第2のワイヤ120は第1のワイヤ119と同じかまたは異なる幾何学的特徴を有する。図2A中、ワイヤの長手方向がz方向である。第1のワイヤ119は長手方向の一部にわたってセグメント124を有し、さらに長手方向の別の部分にわたってセグメント125を有している。図2Aに示されているように、セグメント124における第1のワイヤ119の高さh1は他のセグメント125における第1のワイヤ119の高さh2より小さい。特に、高さh2は高さh1よりも約25%大きい。他の実施形態では高さh1と高さh2との比は、たとえば5から1の間にある。
【0062】
図2Bはセグメント124における第1のワイヤ119の、第1のワイヤ119の長手方向の長さ部分のz方向に垂直な横断面図を示す。図2Cはセグメント125における第1のワイヤ119の横断面図を示す。図2Bおよび2Cから明らかなように、セグメント124における第1のワイヤ119の幅はセグメント125における幅とは異なっている(図2Cの断面図に示されている)。セグメント124における第1のワイヤ119の幅はw1であり、セグメント125における第1のワイヤ119の幅はw2であり、w2はw1より小さい。また、セグメント124において、第1のワイヤ119の高さはセグメント125におけるものよりも小さいが、セグメント124における幅はセグメント125におけるものより大きい。
【0063】
特に、幅w1と高さh1との積は幅w2とh2との積に等しい。したがって、第1のワイヤ119の断面積(すなわちw1*h1)のサイズはセグメント125の断面積(すなわちw2*h2)と等しい。第1のワイヤ119はたとえばその長手方向の長さ部分にわたって一定の断面積を有する。有利には、特に図1に示されるステータ100においてコイルを形成しているためにかかるワイヤ119を用いるとき、放射方向の最も外側のラジアル層121_nから放射方向の外側を回転する磁石の回転により電流が誘導される場合、第1のワイヤ119は長手方向の単位長さ当たり一定の抵抗値を示す。したがって、第1のコイル115および第2のコイル117に含まれている第1のワイヤ119の不均一な加熱は防止される。
【0064】
図1および図2A〜2Cに少なくとも概略的に示す第1のワイヤ119(および/または第2のワイヤ120)は、その長手方向の長さ部分にわたって高さおよび幅が変化している長方形状を有する。特に断面において長方形状は面取りされた端部または角を有してもよく、面取りは異なる面取り半径で行われてもよい。さらに、第1のワイヤ119は金属たとえば銅製の導電性内部コアを備えており、第1のコイル115および第2のコイル117において第1のワイヤ119および第2のワイヤ120の個別の巻線がそれぞれ互いに電気的に絶縁されるように、金属が絶縁層で被覆されていてもよい。
【0065】
再び図1を参照して、第1の突起107と第2の突起111との間の空間は、第1のコイル115を形成している第1のワイヤ119と第2のコイル117を形成している第2のワイヤ120とにより実質的に完全に満たされていることは明らかである。特にラジアル層121_1、121_2、…、121_nは、第1のコイル115の放射方向の長さh_115と第2のコイル117の放射方向の長さh_117まで設けられており、これらの長さは第1の突起107および第2の突起111の高さhに等しい。
【0066】
特に、第1のコイル115は、第1の突起107と第2の突起111との間の半ばに位置し、放射方向を含んでいる境界127で第2のコイル117と隣接する。特に第1のコイル115はその放射方向の長さh_115の全体にわたって第2のコイル117と隣接しているため、第1のコイル115と第2のコイル117との間には実質的に空隙は形成されない。したがって、第1のコイル115を形成している第1のワイヤ119の円周方向の最も外側の(境界127に近い)セグメントは、第2のコイル117を形成している第2のワイヤ120の円周方向の最も外側のセグメントの直近で隣接する。ここで、第1のコイル115を形成している第1のワイヤ119の円周方向の最も外側のセグメントは参照符号128により示し、第2のコイル117を形成している第2のワイヤ120の円周方向の最も外側のセグメントは参照符号129により示す。図1よりさらに明らかなように、特定のラジアル層121_1、121_2、…、121_nとして互いの上に積層されている第1のワイヤ119の円周方向のセグメントの数(実施例では4個)は、1つのラジアル層と他のラジアル層とで変わらない。1つのラジアル層における第1のワイヤ119のセグメントの数は放射方向の異なる位置では変わらないものの、ラジアル層の円周方向の長さは第1のワイヤ119の断面形状の変化により放射方向の外側に向かって増大している。特に、放射方向の最も内側のラジアル層121_1におけるワイヤの高さは、放射方向の最も外側のラジアル層121_nにおけるワイヤの高さよりも大きく、一方で幅は全体として他のように変化する。
【0067】
第1のコイル115の円周方向および放射方向の最も外側の部分である第1のワイヤ119のセグメントと、第2のコイル117の円周方向および放射方向の最も外側の部分である第2のワイヤ120のセグメントとの間の距離d_xは、第1のコイル115または第2のコイル117の隣接するワイヤセグメントの平均距離d_iの3倍、特に2倍、特に1.5倍より小さい。
【0068】
図3は、別の実施形態に係るステータ300の軸方向に垂直な方向の断面図を概略的に示す。ステータ300は支持構造体303と、支持構造体303から突出している複数の突起(図中、1つの突起307のみ示している)を備えている。突起307は支持構造体303に取り付けられ、放射方向の外側に延びている。コイル315は突起307に組み付けられている。コイル315はその長手方向にわたって変化している断面形状を有するワイヤ319により形成されている。特に、ワイヤ319はその放射方向の内側の層において高さh3、幅w3、放射方向の外側の層で高さh4、幅w4を有する台形形状を有している。明らかなように、高さh3は高さh4より大きく、幅w3は幅w4よりも小さい。特に断面積のサイズはたとえばワイヤ319の長手方向にわたって一定である。図3では放射方向に離間したワイヤ319の放射方向の7個のセグメントを構成する円周方向の層を1つだけ示しているが、他の実施形態では図1に示すのと同様にワイヤ319の円周方向に複数の層を有していてもよい。
【0069】
ワイヤ319の高さおよび幅が変化している断面の台形形状により、コイル315の円周方向の端部は境界327に隣接している。図3中に図示しない別のコイル315はこの境界327と他の側で隣接し、隣接する突起307の間の空間は隣接するコイル315の隣接するワイヤ319セグメントにより実質的に完全に満たされている。
【0070】
図1は「1スロット当たり2つのコイル」の構成を示しているが、以下のように修正することも可能である。
【0071】
一実施形態では、隣接する突起の間に配置されているワイヤが1つのコイルのみに属している、「1スロット当たり1つのコイル」の構成が提供される。この場合、図1中の第1のワイヤ119および第2のワイヤ120は単一のコイルに属する単一のワイヤをともに形成している。特に、単一のコイルは図1に示されるように8つの円周方向の層の代わりに、たとえば単一の円周方向の層により形成されている。これにより、ただ1つのワイヤが第1の突起107と第2の突起111との間に配置されている。ここで、この単一のワイヤの断面の円周方向の長さは放射方向の外側に向かって増大し、隣接する突起間の空間を実質的に完全に満たしている。たとえば図1の図平面の背後の領域においてワイヤは他のコイル(図示せず)に属している他のワイヤと交差している。「1スロット当たり2つのコイル」の構成を参照して記載されるすべての特徴は「1スロット当たり1つのコイル」の構成にも適用可能である。
【0072】
図1および図3に示すステータは電気エネルギを発生する発電機のステータとして有利に用いることができる。この場合たとえば、突起から放射方向に配置され、支持構造体の対称軸の周囲を回転する永久磁石などの磁石は、磁束の変化によりコイルに電流を誘導できる。隣接している突起の間の空隙が満たされていることにより、コイルの領域は隣接しているコイルの間に空隙が残存する場合に比べて増大(特に最大化)するので、発電機のより高い効率が得られる。
【0073】
このような発電機は特に、磁石を備えたロータが複数の風力ブレードを有しているプロペラに機械的に接続される風力タービンに用いることができる。
【0074】
本発明の実施形態は、図1または3に示されるようなステータを製造する方法を提供する。したがって、ステータに用いられるコイルは補助構造体を用いて形成可能である。よって、ワイヤは補助構造体の周囲で曲げられてワイヤのセグメントは互いの上に積層される。このようなワイヤセグメントの積層はたとえば図1に示されるような放射方向の最も内側(または、代わりに最も外側)のラジアル層121_1に対応する。有利なことに、このラジアル層121_1は同じ高さおよび同じ幅を有する少なくともほぼ同じ断面形状を有するセグメントを備えていてもよい。次のステップにおいて、ワイヤセグメントの他の積層体を、異なる位置において補助構造体の回りでワイヤを複数回曲げることにより形成してもよい。よって、図1に示されるようなラジアル層121_2は、実質的に同じ断面形状、同じ高さおよび同じ幅を有するワイヤセグメントを備えて形成されていてもよい。さらに、ワイヤセグメントのさらに複数の積層を形成するプロセスを、ワイヤセグメントの最後の積層が図1に示される放射方向の最も外側のラジアル層121_nに対応して形成されるまで続けてもよい。最後に、このように形成されたコイルをステータの突起の1つに組み付けることができる。
【0075】
「備える」、「有する」との語は他の要素を除外するものではなく、「1つの」との語は複数を除外するものではないことに留意されたい。異なる実施形態に関連して説明された要素も、組み合わせることができる。特許請求の範囲における参照符号は請求項に係る発明の範囲を限定するものと理解すべきではないことにも留意されたい。
【符号の説明】
【0076】
103 支持構造体、 107 第1の突起、 111 第2の突起、 119 第1のワイヤ、 120 第2のワイヤ、 100 ステータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギ変換装置用のステータであって、
軸方向(105)の周囲に少なくとも1つの環状部分を有している支持構造体(103)と、
前記支持構造体(103)に接続され、当該支持構造体(103)から放射状に延びている第1の突起(107)と、
前記支持構造体(103)に接続され、当該支持構造体(103)から放射状に延びており、前記第1の突起(107)から円周方向において離間している第2の突起(111)と、
前記第1の突起(107)と前記第2の突起(111)との間に異なる放射方向の位置に位置する複数の第1のラジアル層として配置されており、その断面の円周方向の長さが放射方向の外側に向かって増大しているように構成されている第1のワイヤ(119)と、
を備えていることを特徴とするステータ。
【請求項2】
前記第1の突起(107)と前記第2の突起(111)との間の異なる放射方向の位置に位置する複数の第2のラジアル層として配置されている第2のワイヤ(120)をさらに備えており、
放射方向の外側の第1のワイヤ(119)の一部は放射方向の外側の第2のラジアル層の前記第2のワイヤ(120)の一部と隣接しており、
前記第2のワイヤ(120)の断面の円周方向の長さは放射方向の外側に向かって増大している、
請求項1記載のステータ。
【請求項3】
前記第1のワイヤ(119)および/または前記第2のワイヤ(120)は、前記第1の突起(107)と前記第2の突起(111)との間の空間を、前記第1の突起(107)の放射方向のサイズ(h)の少なくとも70%、および、前記第2の突起(111)の放射方向のサイズ(h)の少なくとも70%にわたって満たしている、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記第1の突起(107)および前記第2の突起(111)は放射方向の外側に向かって突出している、請求項1乃至3のいずれか1項記載のステータ。
【請求項5】
前記第1のワイヤ(119)および/または前記第2のワイヤ(120)の断面積のサイズ(h1*w1、h2*w2)は、ワイヤの長手方向の長さ部分にわたって一定である、請求項1乃至4のいずれか1項記載のステータ。
【請求項6】
前記第1のワイヤ(119)および/または前記第2のワイヤ(120)の断面の幅のサイズ(w1、w2)はワイヤの長手方向の長さ部分にわたって変化している、請求項1乃至5のいずれか1項記載のステータ。
【請求項7】
前記第1のワイヤ(119)の少なくとも1つのセグメントおよび/または前記第2のワイヤ(120)少なくとも1つのセグメントは長方形状の断面形状を有している、請求項1乃至6のいずれか1項記載のステータ。
【請求項8】
前記第1のワイヤ(119)の少なくとも1つのセグメントおよび/または前記第2のワイヤ(120)は少なくとも1つのセグメントは台形状の断面形状を有している、請求項1乃至7のいずれか1項記載のステータ。
【請求項9】
前記第1の突起(107)と前記第2の突起(111)との間の前記第1のワイヤ(119)および前記第2のワイヤ(120)の円周方向の層の数は、放射方向の位置によらず一定である、請求項1乃至8のいずれか1項記載のステータ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項記載のステータ(100、300)と、
磁石として作用する磁石要素を有しており、前記ステータに相対的に回転可能なロータと、
を備えている、エネルギ変換装置。
【請求項11】
発電機としての請求項10に記載のエネルギ変換装置と、
前記ロータに機械的に接続されているプロペラと、
を備えている、風力タービン。
【請求項12】
エネルギ変換装置用のステータの製造方法であって、
軸方向(105)の周囲に少なくとも1つの環状部分を有している支持構造体(103)を形成するステップと、
前記支持構造体(103)に接続され、当該支持構造体(103)から放射状に延びている第1の突起(107)を形成するステップと、
前記支持構造体(103)に接続され、当該支持構造体(103)から放射状に延びている第2の突起(111)を、前記第1の突起(107)から円周方向において離間して形成するステップと、
前記第1のワイヤ(119)の複数の第1の層を形成するステップと、
前記第1の突起(107)と前記第2の突起(111)との間に複数の第1のラジアル層を配置するステップと、を備えており、
前記第1のワイヤ(119)の前記複数の第1の層を形成し、配置するステップは、前記第1のワイヤ(119)の断面の円周方向の長さが放射方向の外側に向かって増大するように行う、
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
第2のワイヤ(120)の複数の第2の層を形成するステップと、
前記第1の突起(107)と前記第2の突起(111)との間に複数の第2の層を配置するステップと、を備えており、
前記第1のワイヤ(119)の複数の第1の層および前記第2のワイヤ(120)の複数の第2の層を形成し、配置するステップは、放射方向の外側の第1のワイヤ(119)の一部が放射方向の外側の前記第2のワイヤ(120)の一部と隣接するように行う、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の第1の層および/または前記複数の第2の層を形成するステップは、所定の断面方向における断面積のサイズがワイヤの長手方向の長さ部分にわたって10%超変化しているように、前記第1のワイヤ(119)および前記第2のワイヤ(120)の断面を形成するステップを含んでいる、
請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
前記第1の層および/または前記第2の層を形成するステップは、
前記第1のワイヤ(119)および/または前記第2のワイヤ(120)を補助構造体の周囲に複数回、前記第1のワイヤ(119)および/または前記第2のワイヤ(120)のセグメントが互いの上に積層されるように曲げるステップと、
次いで、前記第1のワイヤ(119)および/または前記第2のワイヤ(120)を前記補助構造体の周囲の異なる位置に複数回、前記第1のワイヤ(119)および/または前記第2のワイヤ(120)のセグメントが互いの上に積層されるように曲げるステップと、を含んでいる、
請求項12乃至14のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−182637(P2011−182637A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40146(P2011−40146)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】