説明

エポキシアクリレート、アクリル系組成物、硬化物及びその製造法

【課題】耐熱性、低熱膨張性に優れ、ハードコート材料、UV硬化塗料、ガラス代替材料、液晶のカラーフィルター、ソルダーレジスト用樹脂又は、無電解メッキレジスト用樹脂等に有用な、特に光学材料として有用なエポキシアクリレート、アクリル系組成物及び硬化物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるエポキシアクリレート、及びこのエポキシアクリレートと重合開始剤を含むアクリル樹脂組成物である。式中、Xは水素原子又はメチル基を表し、ZはC1〜C6のアルキル基を表し、aは0〜5の数を示し、bは0〜4の数を示す。このエポキシアクリレートは、エポキシビフェニル化合物とアクリル酸又はメタクリル酸とを反応させることにより得られる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、流動性、靭性、感光性、耐薬品性、硬度に優れた新規なエポキシアクリレート、アクリル系組成物、硬化物及びその製造法に関するものである。このエポキシアクリレートは、それ自体を重合させるか、又は、各種の不飽和結合を有する化合物と共重合させることにより、耐熱性、靭性、耐薬品性、硬度等に優れた高分子材料を与えることができ、塗料、積層板、接着剤等各種用途に使用できる。また、光硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物とすることにより、ソルダーレジスト用樹脂又は、無電解メッキレジスト用樹脂、ハードコート材料、UV硬化塗料、ガラス代替材料、さらには液晶のカラーフィルター等の保護膜としても好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
主にエポキシ化合物とアクリル酸との反応により得られるエポキシアクリレート樹脂は、感光材料、架橋剤等、各種機能性高分子材料として幅広く使用されている。この樹脂は分子中に水酸基を有するため、溶剤溶解性、耐熱性等に優れる(非特許文献1)。特に、ベンゼンにエポキシ基が直接結合したエポキシエチルベンゼン由来のエポキシアクリレートである2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルアクリレートを硬化した樹脂では、一般的なグリジジルエーテル基を有するエポキシアクリレート樹脂と比較して、柔軟なオキシメチレン部位を持たないため、硬化物の分子運動が抑制されることにより優れた耐熱性、低熱膨張性が期待される。さらに、各種の不飽和結合を有する化合物との共重合(特許文献1)や、イソシアネート等水酸基と反応可能な化合物との架橋(特許文献2)により耐熱性、耐湿性、耐薬品性等に優れた高分子材料を与える。
【0003】
しかしながら、エポキシエチルベンゼン由来のエポキシアクリレートについては、唯一の開示例である2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルアクリレートの役割は、専ら反応希釈剤や架橋剤であり、樹脂の物性向上を目的としたエポキシアクリレート自体の改良については着目されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭52−129735公報
【特許文献2】特開平9−59535公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】高分子化学,1968年,第25巻,第284号,p.850
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明が解決しようとする課題は、耐熱性、低熱膨張性に優れ、ハードコート材料、UV硬化塗料、ガラス代替材料、液晶のカラーフィルター、ソルダーレジスト用樹脂又は、無電解メッキレジスト用樹脂等に有用なエポキシアクリレート、アクリル系組成物及び硬化物を提供することである。特に、ガラス代替材料、液晶のカラーフィルター等の光学材料として有用なエポキシアクリレート、アクリル系組成物及び硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上述した従来技術における実状に鑑みて、耐熱性、低熱膨張性、高屈折率に優れ、ソルダーレジスト用樹脂又は、無電解メッキレジスト用樹脂、ハードコート材料、UV硬化塗料、ガラス代替材料、液晶のカラーフィルター等に有用なアクリル樹脂を得るべく鋭意研究した結果、エポキシアクリレートとして、エポキシビフェニル化合物と不飽和カルボン酸とを反応させて得られるエポキシアクリレートを用いることにより、上記の課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるエポキシアクリレートに関する。
【化1】

(但し、Xは水素原子又はメチル基を表す。ZはC1〜C6のアルキル基を表し、全てが同一でも異なっていてもよい。aは0〜5の数を示し、bは0〜4の数を示す。)
【0009】
また、本発明は、上記一般式(1)で表されるエポキシアクリレートとを主成分として含み、下記一般式(2)で表わされるエポキシアクリレートを副成分として含むエポキシアクリレート組成物に関する。
【0010】
【化2】

ここで、X、Z、a及びbは一般式(1)と同じ意味を有する。
【0011】
また、本発明は、上記エポキシアクリレート又は上記エポキシアクリレート組成物と、重合開始剤を含有することを特徴とするアクリ樹脂組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、このアクリル系組成物を成形硬化させてなることを特徴とするアクリル樹脂硬化物に関する。
【0013】
また、本発明に係るエポキシアクリレートの製造方法は、一般式(3)で表されるエポキシビフェニル化合物とアクリル酸又はメタクリル酸とを反応させることを特徴とする。
【0014】
【化3】

ここで、Z、a及びbは一般式(1)と同じ意味を有する。
【0015】
また、本発明は、上記エポキシアクリレート、エポキシアクリレート組成物、アクリル樹脂組成物又はアクリル樹脂硬化物が、光学材料用であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のエポキシアクリレートは、従来のエポキシアクリレートと比較して、耐熱性、低熱膨張性、高屈折率に優れ、ソルダーレジスト用樹脂又は、無電解メッキレジスト用樹脂、ハードコート材料、UV硬化塗料、ガラス代替材料、液晶のカラーフィルター等に有用なエポキシアクリレート、アクリル系組成物及び硬化物を与えることができる。特に、透明性及び高屈折率に優れることから光学材料用として優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】4−エポキシメタクリレートビフェニルのNMR(HMBC)スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明のエポキシアクリレートについて説明する。
【0019】
本発明のエポキシアクリレートは、上記一般式(1)で表される。ここで、Xは水素原子又はメチル基を表す。ZはC1〜C6のアルキル基を表し、全てが同一でも異なっていてもよい。好ましくはC1〜C3のアルキル基である。aは0〜5の数を示す。bは0〜4の数を示す。
【0020】
上記一般式(1)で表されるエポキシアクリレートはエポキシビフェニル化合物とアクリル酸又はメタクリル酸とを反応させアクリレート化を行うことで製造することができる。従って、Z1及びZ2の種類は、原料として使用されるエポキシビフェニル化合物の構造に由来することになる。エポキシビフェニル類の入手の容易さや得られるエポキシアクリレートの特性の点から、ZはC1〜C6のアルキル基であり、aは0〜5の数であり、bは0〜4の数であることが好ましく、aは0〜3の数であり、bは0であることが特に好ましい。a及びbの合計は、好ましくは0〜4である。
【0021】
本発明のエポキシアクリレートは、エポキシビフェニル化合物と不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸又は両者を意味する)を反応させることで製造することができる。この反応では、エポキシビフェニル化合物のエポキシ基が開環して不飽和カルボン酸とエステル結合を生じて結合する。この開環はα位とβ位のいずれからでも起こるが、α位で開環した上記一般式(1)のエポキシアクリレート(α付加体)が主成分となり、β位で開環した上記一般式(2)のエポキシアクリレート(β付加体)が副成分となる。
【0022】
本発明のエポキシアクリレートは、通常、α付加体とβ付加体の生成割合は、モル比で100/0.01〜100/70であり、好ましくは100/0.1〜100/50である。上記製造方法では、通常は上記一般式(1)のエポキシアクリレートを主成分とし、一般式(2)のエポキシアクリレート副成分とする本発明のエポキシアクリレート組成物が得られるが、一般式(1)のエポキシアクリレートを得る場合は、この組成物を公知の分離方法によって分離することにより得ることができる。本発明のエポキシアクリレート組成物は、上記製造方法で得られる生成物からβ付加体の全部又は一部を残したものであり、α付加体を主成分とする。主成分とするは、60モル%以上を含むことをいい、副成分とするは、40モル%以下を含むことをいう。
【0023】
本発明のエポキシアクリレートは、エポキシビフェニル化合物と不飽和カルボン酸とを必要に応じて加えられる触媒、重合禁止剤の存在下、50〜200℃で1〜50時間反応することで製造することができる。
【0024】
エポキシビフェニル化合物と不飽和カルボン酸の使用割合は、エポキシビフェニル化合物と不飽和カルボン酸のモル比で100/5〜5/100、好ましくは、100/10〜10/100となる割合が好ましい。
【0025】
この際に使用できる触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の第三級アミン、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、イミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスホニウム塩等が挙げられる。これらの触媒は単独でも2種以上の併用でもよい。触媒使用量としては、用いる触媒により異なるが、エポキシビフェニル化合物100モルに対して、0.01〜100モルであることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜80モルである。
【0026】
反応を行うに際に使用できる重合禁止剤としては、ビニル化合物の重合禁止剤として公知の重合禁止剤で良く、例えばフェノチアジン、メトキシフェノチアジン、ヒンダードアミン等のアミン類、フェノール、メトキシフェノール、ヒドロキノン、t−ブチルカテコール、ブチルヒドロキシトルエン、クレゾール等のフェノール類等が挙げられるが、好ましくはフェノール類である。これらの重合禁止剤は単独でも2種以上の併用でもよい。重合禁止剤使用量としては、用いる触媒により異なるが、エポキシビフェニル化合物100モルに対して、0.001〜10モルであることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜1モルである。
【0027】
反応を行うに際しては、必要に応じて有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、MIBK、MEK等のケトン系溶媒等が挙げられる。溶媒の使用量としては、エポキシビフェニル化合物及び不飽和カルボン酸の合計重量100重量部に対して通常50〜5000重量部、好ましくは100〜2000重量部である。
【0028】
反応を行うに際しては、必要に応じて空気又は酸素を導入してもよい。反応の制御の点から、好ましくは空気を導入するとよい。
【0029】
エポキシビフェニル化合物は、ビニルビフェニル化合物を過酸化物によりエポキシ化したものを使用できる。エピクロロヒドリンを用いないため、得られる化合物は、塩素含有量が少ない。過酸化物としては、通常の方法により得られる過酸、過酸化水素、又は有機過酸化物を使用することができる。
【0030】
本発明のアクリル樹脂組成物で用いる重合開始剤としては、ビニル化合物の重合開始剤として公知の重合開始剤で良く、紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射又はラジカル重合開始剤を適用することにより硬化する。
【0031】
紫外線照射による硬化に際しては、光重合開始剤を予め硬化性組成物中に添加する。
【0032】
光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、紫外線の照射により励起されてラジカルを発生するタイプの通常の光重合開始剤が挙げられ、具体的には、適当な開始剤として、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−iso−プロピルエーテル、α−メチルベンゾイン等のベンゾイン類、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、ベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、p−ジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アセトフェノン、9,10−アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン等のアントラキノン類、ジフェニルジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の含イオウ化合物類等が例示される。
【0033】
これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上混合して使用され、その配合量としては、重合性化合物の合計量に対して0.1〜10重量%程度が推奨される。
【0034】
また、光重合開始剤による光重合反応を促進するために、光増感剤を添加してもよい。この光増感剤は、特に限定されるものではなく、具体的には、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のアルキルホスフィン類、チオジクリコール等のチオエーテル類等が例示され、その配合量としては、重合性化合物の合計量に対して0.01〜5重量%程度が推奨される。
【0035】
紫外線の光源としては、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が用いられる。
【0036】
電子線により硬化する場合には、光重合開始剤や光増感剤を用いる必要はなく、汎用の電子線発生装置により、通常、1〜20メガラッド程度の線量の電子線を照射すればよい。
【0037】
本発明に係るアクリル樹脂組成物をラジカル重合するに際して用いられるラジカル重合開始剤は、特に限定されるものではなく、具体的には、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、過酸化ラウロイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が例示され、これらの重合開始剤は単独でも2種以上の併用でもよい。重合開始剤は、熱硬化用のものと光硬化用のものを用途に応じて使い分けることが好ましい。
【0038】
これら重合開始剤の使用量は、用いる重合禁止剤により異なるが、重合性化合物の合計量100重量部に対して0.001〜5重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜1重量部である。但し、この混合比は使用する硬化剤の種類により大きく変化するので最適条件を適宜決定することが必要である。
【0039】
本発明のアクリル樹脂組成物には、必要に応じて熱又は光による重合性モノマーを添加することができる。これらの熱又は光による重合性モノマーとしては、公知の熱又は光による重合性モノマーで良く、以下に例示する各種のアクリレート系化合物を単独で又は2種以上混合し、硬化性成分として併用することができる。
【0040】
単官能性(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロムプロピル(メタ)アクリレート等が例示される。
【0041】
二官能性(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.2.02,5 ]デカンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビス[(メタ)アクリロキシメチル]シクロヘキサン、トリメチロールプロパンとピバルアルデヒドとのアセタールのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ビスフェノールA−ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0042】
三乃至四官能性(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0043】
アクリル系重合性オリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリブタジエンオリゴマーの(メタ)アクリレート、ポリアミド型(メタ)アクリルオリゴマー、メラミン(メタ)アクリレート、シクロペンタジエンオリゴマーの(メタ)アクリレート、シリコーンオリゴマーの(メタ)アクリレート等が例示される。
【0044】
また、上記のアクリレート系硬化性成分に加えて、他の重合性モノマー、例えば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルエーテル、アクロレイン等のビニル系化合物、エチレン、ブタジエン等のα−オレフィン等を適宜併用することができる。これらの熱又は光による重合性モノマーは単独でも2種以上の併用でもよい。熱又は光による重合性モノマーは、熱重合性モノマーと光重合性モノマーを用途に応じて使い分けることが好ましい。
【0045】
本発明のアクリル樹脂組成物には、必要に応じて充填剤、繊維、カップリング剤、難燃剤、離型剤、発泡剤等のその他の成分を添加することができる。この際の充填剤としては、例えばポリエチレン粉末、ポリプロピレン粉末、石英、シリカ、珪酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、石膏、ベントナイト、蛍石、二酸化チタン、カーボンブラック、黒鉛、酸化鉄、アルミニウム粉末、鉄粉、タルク、マイカ、カオリンクレー等が挙げられる。繊維としては、例えばセルロース繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられる。カップリング剤としては、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。難燃剤としては、例えば臭素化ビスフェノールA、三酸化アンチモン、燐系化合物等が挙げられる。離型剤としては、例えばステアリン酸塩、シリコーン、ワックス等が挙げられる。発泡剤としては、例えばフロン、ジクロロエタン、ブタン、ペンタン、ジニトロペンタメチレンテトラミン、パラトルエンスルホニルヒドラジッド、あるいは、フロン、ジクロロエタン、ブタン、ペンタン等が塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体やスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の殻内に充填されている膨張性熱可塑性樹脂粒子等が挙げられる。
【0046】
本発明のアクリル樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にアクリル樹脂硬化物とすることができる。例えば本発明のエポキシアクリレート又はエポキシアクリレート組成物に重合開始剤、必要により熱又は光による重合性モノマー及びその他の添加剤とを、押出機,ニーダ,ロール等を用いて均一になるまで充分に混合してアクリル樹脂組成物を得、そのアクリル樹脂組成物を溶融後注型あるいはトランスファー成形機などを用いて成形し、さらに80〜200℃に加熱することによりアクリル樹脂硬化物を得ることができる。なお、場合によっては、重合開始剤を配合しない本発明のエポキシアクリレート又はエポキシアクリレート組成物に、必要により重合開始剤を除く添加剤を配合して、重合して硬化物とすることも可能である。
【0047】
また、本発明のアクリル樹脂組成物を溶剤に溶解させ、ガラス繊維,カーボン繊維,ポリエステル繊維,ポリアミド繊維,アルミナ繊維,紙などの基材に含浸させ加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形して硬化物を得ることなどもできる。例えば本発明のアクリル樹脂組成物及びその他の添加剤などを均一になるまで加熱、撹拌し、これをガラスクロスに含浸させ加熱半乾燥して溶剤分を飛ばしたプリプレグを、必要枚数重ねて80〜200℃で1時間以上加熱プレスすることによりガラスクロス積層板を作製することができる。
【0048】
この際、用いうる希釈用溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ等が好ましく、その使用量は、アクリル樹脂組成物と該希釈用溶剤の合計重量に対し、10〜70重量%、好ましくは、15〜65重量%である。
【0049】
こうして得られるアクリル樹脂硬化物は高い耐熱性、靭性、耐薬品性及び硬度を有しているため、本発明のアクリル樹脂硬化物は、光学樹脂等広範な分野で用いることができる。具体的にはソルダーレジスト用樹脂又は、無電解メッキレジスト用樹脂、ハードコート材料、UV硬化塗料、ガラス代替材料、さらには液晶のカラーフィルター等の保護膜としても好適に使用される。
【実施例】
【0050】
次に本発明の特徴を更に明確にするため実施例を挙げて具体的に説明する。なお、文中の「部」、「%」は全て重量基準を示すものである。
【0051】
実施例1
冷却管、温度計、空気吹き込み管を取り付けた300mlのガラス製三口フラスコに、4−エポキシビフェニル 9.81g(50mmol)、メタクリル酸 8.61g(100mmol)、トリエチルアミン 2.28g(22.5mmol)、ブチルヒドロキシトルエン0.077g(0.35mmol)、トルエン100mlを入れ、空気を挿入しながら、95℃で加熱攪拌し、24時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、蒸留水100mlで3回洗浄した。トルエン層を分離し、トルエン留去後、酢酸エチル+ヘキサン(4:6)を展開液としたシリカゲルカラムにより精製した。淡黄色固体の4−エポキシメタクリレートビフェニル9.63g(収率68%)を得た。NMR(HMBC)測定の結果、α付加体:β付加体=1:0.3であった。4−エポキシメタクリレートビフェニルのNMR(HMBC)スペクトルを図1に示す。
【0052】
実施例2
冷却管、温度計、空気吹き込み管を取り付けた300mlのガラス製三口フラスコに、4−エポキシビフェニル 9.81g(50mmol)、メタクリル酸 8.61g(100mmol)、テトラエチルアンモニウムクロリド 0.114g(0.5mmol)、ブチルヒドロキシトルエン0.011g(0.05mmol)、トルエン100mlを入れ、空気を挿入しながら、95℃で加熱攪拌し、24時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、蒸留水100mlで3回洗浄した。トルエン層を分離し、トルエン留去後、酢酸エチル+ヘキサン(4:6)を展開液としたシリカゲルカラムにより精製した。淡黄色固体の4−エポキシメタクリレートビフェニル 9.88g(収率70%)を得た。NMR(HMBC)測定の結果、α付加体:β付加体=1:0.3であった。
【0053】
比較例1
冷却管、温度計、空気吹き込み管を取り付けた500mlのガラス製三口フラスコに、スチレンオキサイド 50.00g(416mmol)、メタクリル酸 35.82g(416mmol)、トリフェニルフォスフィン1.09g(4.16mmol)、4-ターシャリー・ブチルカテコール0.346g(2.08mmol)、トルエン100mlを入れ、空気を挿入しながら、60℃で加熱攪拌し、24時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、蒸留水100mlで3回洗浄した。トルエン層を分離し、トルエン留去後、酢酸エチル+クロロホルム(2:8)を展開液としたシリカゲルカラムにより精製した。無色透明な液体のエポキシアクリレートベンゼン54.05g(収率63%)を得た
【0054】
実施例3
実施例1で得た4−エポキシメタクリレートビフェニル100重量部と、重合開始剤であるイルガキュア184(チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)5重量部とを、混練して、樹脂組成物を調製した。それをガラス板およびアルミ皿上に塗布し、離型PETフィルムを被せ、高圧水銀灯を用いエネルギー線量が600mJ/cm2となるように紫外線照射することにより、硬化させ、膜状の硬化物を得た。
【0055】
比較例2
4−エポキシメタクリレートビフェニルの代わりに、比較例1で得たエポキシアクリレートベンゼン100重量部を使用した他は、実施例2と同様にして樹脂組成物を調製し、膜状の硬化物を得た。
【0056】
次に、得られた硬化物から、長さ20mm、幅5mm、厚さ0.1mmの試料を調製して、その屈折率、ガラス点移転、および熱膨張係数(α1)の分析を行った。
屈折率は、 ATAGO社製 屈折率計 DR-M2により、25℃でnDにより測定した。
ガラス転移点、熱膨張係数(α1)は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 熱機械的分析装置(TMA/SS)により、窒素雰囲気下、昇温速度7℃/分の条件で求めた。その結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
上記のように本発明の新規エポキシアクリレート化合物は耐熱性、低熱膨張性に優れ、高屈折率であり、ソルダーレジスト用樹脂又は、無電解メッキレジスト用樹脂、ハードコート材料、UV硬化塗料、ガラス代替材料、液晶のカラーフィルター等に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるエポキシアクリレート。
【化1】

ここで、Xは水素原子又はメチル基を表す。ZはC1〜C6のアルキル基を表し、全てが同一でも異なっていてもよい。aは0〜5の数を示し、bは0〜4の数を示す。
【請求項2】
請求項1に記載のエポキシアクリレートを主成分として含み、下記一般式(2)で表わされるエポキシアクリレートを副成分として含むエポキシアクリレート組成物。
【化2】

ここで、Xは水素原子又はメチル基を表す。ZはC1〜C6のアルキル基を表し、全てが同一でも異なっていてもよい。aは0〜5の数を示し、bは0〜4の数を示す。
【請求項3】
請求項1に記載のエポキシアクリレートと、重合開始剤を含有することを特徴とするアクリル樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2に記載のエポキシアクリレート組成物と、重合開始剤を含有することを特徴とするアクリル樹脂組成物。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のアクリル組成物を成形硬化させてなることを特徴とするアクリル樹脂硬化物。
【請求項6】
下記一般式(3)で表されるエポキシビフェニル化合物とアクリル酸又はメタクリル酸とを反応させることを特徴とする請求項1に記載のエポキシアクリレートの製造方法。
【化3】

ここで、ZはC1〜C6のアルキル基を表し、全てが同一でも異なっていてもよい。aは0〜5の数を示し、bは0〜4の数を示す。
【請求項7】
下記一般式(3)で表されるエポキシビフェニル化合物とアクリル酸又はメタクリル酸とを反応させることを特徴とする請求項2に記載のエポキシアクリレート組成物の製造方法。
【化4】

ここで、ZはC1〜C6のアルキル基を表し、全てが同一でも異なっていてもよい。aは0〜5の数を示し、bは0〜4の数を示す。
【請求項8】
光学材料用であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシアクリレート。
【請求項9】
光学材料用であることを特徴とする請求項2に記載のエポキシアクリレート組成物。
【請求項10】
光学材料用であることを特徴とする請求項3又は4に記載のアクリル樹脂組成物。
【請求項11】
光学材料用であることを特徴とする請求項5に記載のアクリル樹脂硬化物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−213996(P2011−213996A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48984(P2011−48984)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】