説明

エポキシエチルエーテル類又はグリシジルエーテル類の製造

エポキシエチルエーテル又はグリシジルエーテルを形成させるための方法が提供される。一実施形態では、水性反応媒体中で水溶性マンガン錯体(ここで、該水溶性マンガン錯体は、酸化触媒を含む)の存在下にビニルエーテル又はアリルエーテルを酸化剤と反応させることを含む、エポキシエチルエーテル又はグリシジルエーテルを製造する方法が提供され、ここで、該方法は、該水溶性マンガン錯体が、一般式(I):[LMnX]Y(I)の単核錯体又は一般式(II):[LMn(μ−X)MnL](Y)(II)の二核錯体〔ここで、Mnは、マンガンであり;Lは、又は、各Lは独立して、多座配位子であり;各Xは独立して、配位化学種であり、及び、各μ−Xは独立して、配位架橋化学種であり;Yは、非配位対イオンである〕であることを特徴とし、また、該エポキシ化は、1.0から6.0の範囲内のpHで実施される。本発明は、エポキシエチルエーテル類にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシエチルエーテル類又はグリシジルエーテル類を製造する方法に関し、ここで、該方法は、ビニルエーテル又はアリルエーテルを、マンガン錯体の存在下で、酸化剤を用いて接触酸化させることによる。
【背景技術】
【0002】
エポキシエーテル類は、化学工業における重要な出発物質である。例えば、Heloxy(登録商標)調節剤は、初めから1以上のヒドロキシル基を有しているエポキシ官能基化アルコールである。これらの調節剤は、例えば、単官能性グリシジルエーテル類及び多官能性グリシジルエーテル類などの形態で提供される。調節剤は、硬化系のたわみ性を改善するのを補助し、剥離強度及び衝撃強さを増強するのを補助し、充填材のローディングのレベルを増大させるのを補助し、樹脂の湿潤作用を改善するのを補助し、並びに、粘度及び表面張力を低減させるのを補助する。特に、多官能性グリシジルエーテル類は、有用である。アルコール、ジオール及びポリオールのビニルエーテル類のエポキシ化生成物も同様に適切である。
【0003】
該グリシジルエーテル類は、エピクロロヒドリンとアルコール類(ジオール類及びポリオール類)を用いて調製することができる。環境についての観点から、代替的な調製経路を見いだすことはかなり魅力的であろう。E.Kaczmarczykらによる「Journal of Molecular Catalysis A: Chemical 244 (2006) 173−178 “Epoxidation of 1,4−bis(allyloxy)butane by Hydrogen Peroxide Under Phase Transfer Catalysis”」においては、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテルの調製について研究された。モノエポキシドとジエポキシドの両方とも製造された。ジアリルエーテルは、Peng Wuら(「Journal of Catalysis 228 (2004) 183−191」における“A Novel Titanosilicate With MWW Structure Catalytic Properties In Selective Epoxidation Of Diallyl Ether With Hydrogen Peroxide”)によってエポキシ化された。
【0004】
E.Kaczmarczykらによる「Journal of Molecular Catalysis A: Chemical 235 (2005) 52−56 “Epoxidation of 1,4−Diallyloxybutane To 1−Allyloxy−4−Glycidyloxybutane By The Method Of Phase Transfer Catalysis”」においては、該触媒としてのホスホロタングステン酸(PTA)水和物又はリン(V)−酸−タングステン(VI)酸ナトリウム二水和物系(PO3−/WO2−)及び相間移動触媒としての(ホスホ)オニウム塩の存在下において30重量%の過酸化水素を用いた1,4−ジアリルオキシブタン(DiAB)のエポキシ化について研究された。再度、E.Kaczmarczykらにより、「Journal of Molecular Catalysis A: Chemical 265 (2007) 148−152, “Selective Epoxidation Of 1,4−Bis(Allyloxy)Butane To 1−Allyloxy−Glycidoloxybutane In The Presence Of Ionic Liquids”」において、1,4−ビス(アリルオキシ)ブタンのエポキシ化について研究された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】E.Kaczmarczyk et al.,Journal of Molecular Catalysis A: Chemical 244 (2006) 173−178
【非特許文献2】Peng Wu et al.,Journal of Catalysis 228 (2004) 183−191
【非特許文献3】E.Kaczmarczyk et al.,Journal of Molecular Catalysis A: Chemical 235 (2005) 52−56
【非特許文献4】E.Kaczmarczyk et al.,Journal of Molecular Catalysis A: Chemical 265 (2007) 148−152
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、グリシジルエーテル類へと至る、エピクロロヒドリンに依存しない代替的な経路を見いだすことを試みた。さらに、この新規経路は、グリシジルエーテル類が使用される同じ用途で使用されるエポキシエチルエーテル類を調製する可能性も開く。本発明は、そのそうな生成物へと至る魅力的な経路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、水性反応媒体中で水溶性マンガン錯体(ここで、該水溶性マンガン錯体は、酸化触媒を含む)の存在下にビニルエーテル又はアリルエーテルを酸化剤と反応させることを含む、エポキシエチルエーテル又はグリシジルエーテルを製造する方法を提供し、ここで、該方法は、該水溶性マンガン錯体が、一般式(I):[LMnX]Y(I)の単核錯体又は一般式(II):[LMn(μ−X)MnL](Y)(II)の二核錯体〔ここで、Mnは、マンガンであり;Lは、又は、各Lは独立して、多座配位子であり;各Xは独立して、配位化学種であり、及び、各μ−Xは独立して、配位架橋化学種であり;Yは、非配位対イオンである〕であることを特徴とし、また、該反応は、1.0から6.0の範囲内のpHで実施される。
【0008】
一実施形態では、本発明は、酸化剤(好ましくは、過酸化水素)及びマンガン錯体を用いてビニルエーテル又はアリルエーテルを接触酸化(ここで、該接触酸化は、10体積%未満の共溶媒と一緒に水を含んでいる水性反応媒体中で実施され、水溶性マンガン錯体は、酸化触媒として使用され得る)に付すことによってエポキシエチルエーテル又はグリシジルエーテルを製造する方法を提供し、ここで、該方法は、該水溶性マンガン錯体が、一般式(I):[LMnX]Y(I)の単核化学種又は一般式(II):[LMn(μ−X)MnL](Y)(II)の二核化学種〔ここで、Mnは、マンガンであり;Lは、又は、各Lは独立して、多座配位子であり;各Xは独立して、配位化学種であり、及び、各μ−Xは独立して、配位架橋化学種であり;Yは、非配位対イオンである〕であることを特徴とし、また、該反応は、1.0から6.0の範囲内のpHで実施される。この方法は、ジエポキシド類及びポリエポキシド類を調製するのに特に適している。
【0009】
ビニルエーテル類のエポキシ化生成物は、新規であると考えられる。従って、本発明は、エポキシエチルエーテル類にも関する。
【0010】
一実施形態では、本発明は、水性反応媒体中で水溶性マンガン錯体(ここで、該水溶性マンガン錯体は、酸化触媒を含む)の存在下にN−アリルアミンを酸化剤と反応させることを含む、N−グリシド化合物を製造する方法を提供し、ここで、該方法は、前記水溶性マンガン錯体が、一般式(I):
[LMnX]Y(I)
の単核錯体又は一般式(II):
[LMn(μ−X)MnL](Y)(II)
の二核錯体〔ここで、Mnは、マンガンであり;Lは、又は、各Lは独立して、多座配位子であり;各Xは独立して、配位化学種であり、及び、各μ−Xは独立して、配位架橋化学種であり;Yは、非配位対イオンを含んでいる〕であることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するためのモード
本明細書中で使用される場合、表現「エポキシ化」及び表現「酸化」は、同じ反応(ビニル基又はアリル基の炭素−炭素二重結合のオキシラン環への変換)を示している。以下において、本発明について詳細に論じる。
【0012】
本発明の方法を使用して、エポキシエチルエーテル類及びグリシジルエーテル類(これは、ジエポキシド類及びポリエポキシド類を包含する)を、当該反応を水性反応媒体中で実施しながら改善された選択性で調製することができるということは、かなり驚くべきことである。例えば、該方法は、別の成分(例えば、ジオール類)と比較して、エポキシド生成物に対して80%以上という改善された選択性を有している。ビニルエーテル又はアリルエーテルから製造し得るエポキシエチルエーテル類及びグリシジルエーテル類としては、例えば、それぞれ、1,2−エポキシエチルエーテル=ROCH−CHO;及び、2,3−エポキシプロピルエーテル=ROCHCH−CHO;などがある。
【0013】
酸化触媒として使用し得る水溶性マンガン錯体に関して、多くの適切な錯体が知られている。これに関連して、本特許中において記載されているものが実際には触媒前駆物質であるということは留意されたい。さらに言えば、活性化学種は当該系の間に異なり得るし、それが触媒する反応の間に変化さえするので、典型的には、全ての公開文献及び特許文献において触媒前駆物質が定義されている。便宜上、そして、文献中ではそれが一般的であるので、本発明者らは、当該錯体について、その錯体が触媒であるかのように、言及する。
【0014】
一実施形態では、該触媒は、1つの配位子又は複数の配位子に配位結合している1個のマンガン原子又は複数のマンガン原子を含んでいる。1個又は複数個の当該マンガン原子は、II、III又はIVの酸化状態にあることができ、そして、当該反応中に活性化され得る。特に興味深いのは、二核マンガン錯体である。従って、適切なマンガン錯体としては、一般式(I):
[LMnX]Y(I)
の単核化学種、及び、一般式(II):
[LMn(μ−X)MnL](Y)(II)
の二核化学種などを挙げることができ、ここで、上記式中、Mnは、マンガンであり;Lは、又は、各Lは独立して、多座配位子、好ましくは、3個の窒素原子を含んでいる環式化合物又は非環式化合物である。各Xは、独立して、配位化学種であり、及び、各μ−Xは、独立して、配位架橋化学種であって、それらは、RO、Cl、Br、I、F、NCS、N、I、NH、NR、RCOO、RSO、RSO、OH、O2−、O2−、HOO、HO、SH、CN、OCN及びS2−及びそれらの組合せからなる群から選択され、ここで、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ベンジル及びそれらの組合せからなる群から選択されるC−C20ラジカルである。Yは、非配位対イオンである。非配位対イオンYは、該錯体の電荷的中性をもたらすことができ、nの値は、カチオン性錯体とアニオン性対イオンYの電荷に依存し、例えば、nは、1又は2であり得る。対イオンYは、例えば、RO、Cl、Br、I、F、SO2−、RCOO、PF、トシラート、トリフラート(CFSO)及びそれらの組合せからなる群から選択されるアニオンであり得る(ここで、Rは、再度、アルキル、シクロアルキル、アリール、ベンジル及びそれらの組合せからなる群から選択されるC−C20ラジカルである)。アニオンのタイプは全く重要ではないが、数種類のアニオンは他のアニオンよりも好ましい。一実施形態では、非配位対イオンとして、CHCOO又はPFのイオンを使用することができる。
【0015】
本発明に適している配位子は、その骨格内に少なくとも7個の原子を含んでいる非環式化合物又はその環内に少なくとも9個の原子を含んでいる環式化合物であり、これらは、それぞれ、少なくとも2個の炭素原子で隔てられた複数の窒素原子を有している。配位子の好ましい種類は、(置換されている)トリアザシクロノナン(“Tacn”)に基づく配位子である。適切な一配位子は、1,4,7−トリメチル−1,4,7,−トリアザシクロノナン(TmTacn)であり、これは、例えば、Aldrichから市販されている。これに関して、上記マンガン触媒の水溶解性が上記で挙げた全ての触媒成分の作用であるということに留意することは重要である。水溶性マンガン錯体を使用する本発明の有利点は、該触媒が本質的に有機相に移動しないことである。
【0016】
二核マンガン錯体が好ましいが、それは、それらがより大きな活性及び水中溶解性を有しているからである。好ましい二核マンガン錯体は、式[MnIV(μ−O)](Y)(これは、以下の式と同じである:[LMn(μ−O)MnL](Y))〔式中、nは、2であり、並びに、L及びYは、上記で特定されている意味(好ましくは、配位子として、TmTacn、及び、対イオンとして、CHCOO)を有する〕の二核マンガン錯体である。
【0017】
本発明によれば、該マンガン錯体は、直接利用し得るか、又は、溶媒に溶解しない支持体の表面に吸着された状態で利用し得る。そのような基体の例証的ではあるが非限定的である例は、構造化アルミノケイ酸塩(例えば、ゼオライトA、ホージャサイト、及び、ソーダライト)、無定型アルミノケイ酸塩、シリカ、アルミナ、木炭、微孔性高分子樹脂(例えば、高内部相エマルション技術によって形成されたポリスチレンビーズ)及び粘土(特に、層状粘土、例えば、ヘクトライト、及び、ヒドロタルサイト)である。該マンガン錯体と該支持体の相対重量比は、概して、約10:1から約1:10,000にまで及び得る。
【0018】
該マンガン錯体は、触媒的に有効な量で使用することができる。本発明の高い選択性及びターンオーバー数を達成するために、該触媒及び酸化剤は、好ましくは、ビニルエーテル又はアリルエーテルとの反応に関して、1:10から1:10,000,000(例えば、1:100から1:1,000,000、例えば、1:1000から1:100,000)の触媒と酸化剤のモル比で組み合わせる。該マンガン錯体は、1:10から1:10,000,000(例えば、1:100から1:1,000,000、例えば、1:1000から1:100,000)の触媒(Mn錯体)と過酸化水素のモル比で使用することができる。
【0019】
本発明の反応(接触酸化)は、酸化剤を用いて、好ましくは、過酸化水素を用いて、実施する。別の酸化剤も使用することができる(即ち、過酸化水素の前駆物質として)が、有用性を考慮すれば、また、環境に対する影響を低減するためには、過酸化水素が好ましい酸化剤である。過酸化水素は、強力な酸化特性を有し、水溶液中で使用し得る。添加する過酸化水素の濃度は、15%から98%(推進薬グレード)まで、さまざまであることができ、工業用グレードに関して好ましいのは、20から80%、好ましくは、30から70%である。酸化剤の最適の効率を確実なものとするために、該酸化剤は、好ましくは、接触酸化の反応速度とほぼ等しい速度で水性反応媒体に添加する。使用し得る別の酸化剤としては、有機過酸化物、過酸及びそれらの組合せなどがある。
【0020】
該水性反応媒体は、ビニルエーテル又はアリルエーテル及び/又はそれらのそれぞれのエポキシ化生成物並びに存在する場合には10体積%未満(好ましくは、ほんの少量)の別の有機化合物を含んでいる水相であり得る。好ましいわけではないが、該反応媒体は、少量の共溶媒(これは、例えば、アセトン、メタノール及び別の水溶性アルコール類を包含する)を含むことができる。反応物及びそれらのエポキシ化生成物の存在を除いた場合、該水性反応媒体は、従って、適切には、少なくとも90体積%(v%)の水を含有し、好ましくは、95v%の水、さらに好ましくは、99v%の水、及び、さらに一層好ましくは、99.9v%の水を含有している。一実施形態では、該水性反応媒体は(この場合もやはり、その水性反応媒体の中に溶解している全ての反応物及び/又はそれらのエポキシ化生成物を除いて)、本質的に100%水相である。
【0021】
該水性反応媒体は、pHを安定化させるために、緩衝液系を含有する。例えば、該水性反応媒体が1.0から6.0のpH範囲内において適切に安定化されるのに対して、好ましいpH範囲は2.0から5.0であることが分かった。適切な範囲又は好ましい範囲は、有機酸−塩の数種類の既知組合せによって達成することができ、ここで、好ましい組合せは、シュウ酸−シュウ酸塩に基づくか、又は、酢酸(acetate acid)−酢酸塩に基づくか、又は、シュウ酸−シュウ酸塩及び酢酸−酢酸塩に基づく。シュウ酸とシュウ酸ナトリウムを使用する場合、pH比(pH ratio)は、2.0から6.0まで変えることができる。該緩衝液は、該触媒に対して、約60:1のモル比で使用し得るが、その量は、広い範囲で変えることができ、例えば、1:1から300:1にまで及ぶ。
【0022】
該水性反応媒体は、相間移動剤及び/又は界面活性剤も含むことができる。本発明の方法において使用し得る既知相間移動剤としては、第4級アルキルアンモニウム塩などがある。本発明の方法において使用し得る既知界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、例えば、Union Carbide社製の「Triton X100TM」などがある。
【0023】
該水性反応媒体が少なくとも極微量の出発物質であるビニルエーテル又はアリルエーテルを含んでいるのが有益であると考えられる。これは全くの仮説であるが、この出発物質が存在していることは該触媒を活性状態に維持することを可能とするのに有益であると考えられる。それに対して、該ビニルエーテル又はアリルエーテルが存在していないと(並びに/又は、出発物質が全くない状態でエポキシ化生成物及び/若しくは酸化剤が存在していると)、該触媒の活性は低減されると考えられる。さらに、出発物質が全く存在していない状態でエポキシ化生成物及び/又は酸化剤が存在していても、該触媒の活性は低減されると考えられる。
【0024】
接触酸化に関する反応条件は、当業者が直ちに決定することができる。該エポキシ化は、加圧下で実施するか、又は、大気圧下で実施する。該反応は発熱性であると考えられ、該反応媒体を冷却することが必要であり得る。該反応は、好ましくは、概して、−5℃から40℃の温度で、好ましくは、5℃から30℃の温度で、実施する。
【0025】
ビニルエーテル又はアリルエーテルと酸化剤のモル比は、当該反応及びその反応の生成物に対して影響を与える。例えば、過剰量の酸化剤(例えば、過酸化水素)を使用し得る場合、望ましくない副産物(例えば、ジオール類)が生成されることに起因して所望のエポキシドに対する選択性が低減し、又は、当該酸化剤の多量の廃棄物を伴う。不充分な量の酸化剤を使用する場合、ターンオーバー数が最適値を下回る。従って、これは、従来技術において記載されている漂白条件〔ここでは、過剰量の酸化剤(例えば、過酸化水素)が使用される〕とは著しく異なる。ビニルエーテル又はアリルエーテルと酸化剤(例えば、過酸化水素)のモル比は、1:2よりも大きい範囲内にあり得る。一実施形態では、ビニルエーテル又はアリルエーテルと酸化剤(例えば、過酸化水素)のモル比は、1:1.2から約12:1の範囲内、例えば、約1:1から約10:1(又は、代替的に、約1:1.2から約2:1、又は、2:1から12:1)の範囲内にあることができ、例えば、約1:1であり得る。該エーテルは、好ましくは、酸化剤に対して過剰量で使用する。
【0026】
本発明の方法で使用する出発物質は、モノアルコール、ジオール、トリオール、テトラオール又はポリオールに基づくビニルエーテル又はアリルエーテルであり得る。従って、当該分子内に2以上のエーテル基を有するエーテル類が包含される。それは、脂肪族アルコール又は芳香族アルコールに基づき得る。さらに好ましくは、ジオールのジビニルエーテル類又はジアリルエーテル類、例えば、モノエチレングリコールのジビニルエーテル又はポリエチレングリコールのジビニルエーテルなどを使用する。ビスフェノール−A又はビスフェノール−F又は類似した芳香族ポリオール類のジビニルエーテル又はジアリルエーテルも同様に適切である。例えばペンタエリトリトール及び一般的な糖類の、トリエーテル類及びテトラエーテル類も同様に興味深い
該出発物質は、好ましくは、下記一般式のエーテルである:
【0027】
【化1】

上記式中、Rは、1個以上のヘテロ原子(例えば、酸素、窒素又はケイ素)を場合により含んでいてもよい1個以上の炭素原子からなるラジカルであり、及び、R’は、1個以上のヘテロ原子を場合により含んでいてもよい1個以上の炭素原子からなる2価ラジカルであり、ここで、該R’は、1以上のビニルオキシ置換基又はアリルオキシ置換基を有していてもよい。適切な例としては、ジビニルエーテル、ジアリルエーテル、アリルn−ブチルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、ビニルアリルエーテル、エチルビニルエーテル、エチレンジビニルジエーテル、1,4−ジグリシジルブチレンジエーテル、テトラアリルペンタエリトリトールテトラエーテル及びそれらの組合せなどを挙げることができる。
【0028】
出発物質として特に興味深いのは、アリル基で官能基化されているジオール類である。これらの生成物は、例えば、2段階方法で製造することができる。例えば、第1段階において、アルコール類を脱水することによってエーテル類を調製することができる。
【0029】
【化2】

【0030】
2番目の段階において、当該エーテル類のエポキシ化を実施することができる。
【0031】
【化3】

【0032】
ビスフェノール−A(BPA)又はビスフェノール−F(BPF)の上記変換も同様に興味深い。下記反応スキームに示されているように、対応するエーテル類を形成させるために、BPA(反応スキーム)をアリルアルコールと反応させることができる。次いで、対応するエポキシ樹脂を形成させるために、そのエーテル類をエポキシ化に付す。
【0033】
【化4】

【0034】
対応するエーテル類を形成させるために、同様の方法によって、BPFをアリルアルコールと反応させることができる。例えば、BPAのビニルエーテル類は、「Advanced Organic Chemistry, Reactions, Mechanisms and Structure 5th edition M. Smith, J. March」に記載されているように、よく知られているウィリアムソン反応によって、塩化ビニルをBPAのアルコキシドと反応させることにより、製造することができる。
【0035】
ビニルエーテル類のエポキシ化生成物は新規であると考えられる。従って、本発明は、そのような新規エポキシエチルエーテル類にも関する。
【0036】
かくして、本発明において適切に使用されるビニルエーテル類及びアリルエーテル類の種類としては、以下のものを挙げることができる。
【0037】
一実施形態では、該アリルエーテル類及びビニルエーテル類は、脂肪族アルコールのモノアリルエーテル類、ビス(ジ)アリルエーテル類、トリス(トリ)アリルエーテル類及びポリアリルエーテル類並びにモノビニルエーテル類、ビス(ジ)ビニルエーテル類、トリス(トリ)ビニルエーテル類及びポリ−ビニルエーテル類である。脂肪族アルコールの上記アリルエーテル類又はビニルエーテル類は、第1級置換基、第2級置換基又は第3級置換基を有し得る。脂肪族アルコールの上記アリルエーテル類又はビニルエーテル類は、少なくとも以下の構造(Ia)又は構造(Ib)を有することができ、ここで、R、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は有機基(ここで、該有機基は、1個以上の炭素原子、例えば、1から20個の炭素原子を有している)を含んでいる。該有機基は、それぞれ、直鎖有機基、分枝鎖有機基又は環式有機基であり得る。該有機基は、それぞれ、さらに、アリル基(これは、アリルエーテル基を包含する)、ビニル基(これは、ビニルエーテル基を包含する)、アルコール基、ハロゲン原子及びそれらの組合せを有している置換された有機基であることもできる。該有機基は、さらに、酸素原子(エーテル基)、硫黄原子(チオール基)、窒素原子(アミノ基)及びそれらの組合せなどの非炭素原子も含み得る。
【0038】
【化5】

【0039】
そのような化合物の例は、可能な場合には、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、n−ブタノール、1−デカノール、2−ブトキシエタノール、2−エチルヘキサノール、3−ジエチルアミノ−1,2−プロパンジオール、ジブロモネオペンチルグリコール、ブチルジグリコール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、ペンタエリトリトール、トリメチロールエタン、4,4’−(プロパン−2,2−ジイル)ジシクロヘキサノール、ジグリセリン、2−ブタノール及びそれらの組合せのモノアリルエーテル類、ジアリルエーテル類及びトリアリルエーテル類である。8(C)から15(C15)個の炭素原子を有する脂肪族アルコール(これは、C−C10、C12−C14及びC13−C15の炭素原子を有するアルコールを包含する)のアリルエーテル類も、本明細書中に記載されている方法で使用することができる。
【0040】
この種類を代表するさらなるエーテル化合物としては、構造(II):
【0041】
【化6】

から調製される、ポリグリコール(ここで、nは、1から100、例えば、7である)のモノアリルエーテル類、ビス(ジ)アリルエーテル類、トリス(トリ)アリルエーテル類及びポリアリルエーテル類などがある。
【0042】
そして、油のポリアリルエーテル、これは、一例を挙げれば、ヒマシ油のポリアリルエーテルは、マンガン錯体の存在下で酸化剤と反応した後、ヒマシ油ポリグリシジルエーテルを形成し得る。
【0043】
基体の別の種類は、構造(III)
【0044】
【化7】

〔ここで、各Rは独立して、水素原子、ビニル基又はアリル基であるが、少なくとも1のRは、ビニル基又はアリル基である〕
を有する炭水化物から誘導されるポリアリルエーテル類又はポリビニルエーテル類である。糖アルコールのポリアリルエーテル類又はポリビニルエーテル類には、さらに、それらの誘導体も包含される。そのような化合物の例としては、アラビトール(5−炭素)、キシリトール(5−炭素)、リビロール(5−炭素)、エリトリトール(4−炭素)、トレイトール(4−炭素)、マンニトール(6−炭素)、ズルシトール(6−炭素)及びソルビトール(6−炭素)のポリアリルエーテル類又はポリビニルエーテル類、例えば、ソルビトールのテトラアリルエーテルなどを挙げることができる。
【0045】
適切な基体の別の種類は、フェノール誘導体及びベンジルアルコール類のモノアリルエーテル類、ビス(ジ)アリルエーテル類、トリス(トリ)アリルエーテル類及びポリアリルエーテル類並びにモノビニルエーテル類、ビス(ジ)ビニルエーテル類、トリス(トリ)ビニルエーテル類及びポリビニルエーテル類である。このようなものとしては、少なくとも下記構造:
【0046】
【化8】

〔ここで、Rは、当該アリルオキシ基に関してオルト位、メタ位又はパラ位に位置している炭素原子、水素原子、ハロゲン原子、窒素原子、硫黄原子又は酸素原子である〕
を有しているモノフェノール、ビスフェノール、トリスフェノール及びポリフェノールのフェノール誘導体などがある。
【0047】
このようなものとしては、可能な場合には、フェノール、4−tert−ブチルフェノール、2,4−ジブロモフェノール、4−(1,1,3,3)−テトラメチルブチルフェノール、4−(2−フェニルイソプロピル)フェノール、ノニルフェノール、o−クレゾール、p−メトキシフェノール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノールP、ビスフェノールM、p−tert−ブチルフェノール、レゾルシン、スチレン化フェノール、テトラフェニロエタン(tetraphenyloethane)、トリスフェノール、ベンジルアルコール及びそれらの組合せのモノアリルエーテル類、ジアリルエーテル類及びトリアリルエーテル類などがある。上記化合物の水素化された種類のもの(例えば、水素化ビスフェノールA)も使用し得る。上記化合物のハロゲン化された種類のものの例としては、とりわけ、テトラ−ブロモビスフェノールA及びフルオレンビスフェノールなどを挙げることができる。上記化合物の窒素で置換されている種類のものの例は、(N,N)−ジアリル−p−アミノフェノールである。
【0048】
この種類を代表するさらなるエーテル化合物としては、ノボラック(novolac)化合物のアリルエーテル類などがある。ノボラック樹脂を形成させるのに使用されるフェノールの例としては、以下のものを挙げることができる:フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、キシレノール類、例えば、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、及び、3,4−キシレノール;アルキルフェノール類、例えば、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−エチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,5−トリエチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、及び、2−tert−ブチル−5−メチルフェノール;アルコキシフェノール類、例えば、p−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−エトキシフェノール、m−エトキシフェノール、p−プロポキシフェノール、及び、m−プロポキシフェノール;イソプロペニルフェノール類、例えば、o−イソプロペニルフェノール、p−イソプロペニルフェノール、2−メチル−4−イソプロペニルフェノール、及び、2−エチル−4−イソプロペニルフェノール;アリールフェノール類、例えば、フェニルフェノール;及び、ポリヒドロキシフェノール類、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、レゾルシノール、ヒドロ−キノン、及び、ピロガロール。これらのフェノール類は、単独で使用し得るか、又は、2種類以上の化合物の組合せで使用し得る。上記フェノール類の中で、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール及び2,3,5−トリメチルキシレノールが好ましい。
【0049】
そのようなノバラック類(novalacs)の例は、フェノールノボラックのポリアリルエーテル類及びそれらの誘導体、例えば、ジシクロペンタジエンノボラックのポリアリルエーテル類、o−クレゾールノボラックのポリアリルエーテル類、ビスフェノールAホルムアルデヒドノボラックのポリアリルエーテル類及びビスフェノールFホルムアルデヒドノボラックのポリアリルエーテル類などである。
【0050】
さらに、1以上のアリル基を有するN−アリルアミン化合物からエポキシド化合物を形成させることができる。そのような化合物のエポキシ化(酸化)は、n−グリシドの部類の化合物の形成をもたらし得る。本明細書中に記載されているエポキシ化反応において使用するためのN−アリルアミン化合物の非限定的な例としては、以下のものを挙げることができる:
【0051】
アニリンの(N,N)−ジアリルエーテル:
【0052】
【化9】

【0053】
N,N,N’,N’−テトラアリル a,a’−ビス(4−アミノ−3,5ジメチルフェニル)p−ジイソプロピルベンゼン:
【0054】
【化10】

【0055】
テトラアリルメチレンアニリン:
【0056】
【化11】

【0057】
アルキル化MDAポリアリル/ビニル化合物:
【0058】
【化12】

〔ここで、各Rは独立して、水素原子、ビニル基又はアリル基であるが、少なくとも1のRは、ビニル基又はアリル基である〕。
【0059】
本明細書中に記載されている方法において、上記化合物アリルエーテル類、ビニルエーテル類又はN−アリルアミン類のうちの1種類以上を、それぞれ、アリルエーテル、ビニルエーテル又はN−アリルアミンとして使用することができる。さらに、1種類以上のアリルエーテル類、ビニルエーテル類又はそれらの両方を当該反応に使用することができる。一実施形態では、アリルエーテル及びビニルエーテルは、本明細書中に記載されている方法反応において、1分子中に存在し得るか、又は、2以上の分子中に存在し得る。さらに、それぞれの該アリルエーテル類のうちの1種類以上及び該ビニルエーテル類のうちの1種類以上を、それぞれ、上記反応において使用することができる。
【0060】
該接触酸化は、バッチ方法で、連続方法で、又は、半連続方法で、実施することができる。さらに言えば、該方法は、本発明の要旨から逸脱することなく、さまざまな態様において変更することができる。
【0061】
該接触酸化は、撹拌手段を備えた撹拌下にある一般的なタンク型反応器の中で実施することができる。該触媒、水性反応媒体及び反応物は、バッチ式で添加することができる、又は、その反応物をある期間にわたって添加してもよい。反応中に過酸化水素を添加する場合、その過酸化水素は、存在する場合には当該反応物を含んでいる(撹拌下にある)有機相に添加するか、又は、(撹拌下にある)水性反応媒体に添加する。(半)連続的に実施する場合、さまざまな再循環流を用いて反応条件(−5℃から40℃の温度に維持されている)を制御し、製造速度を最適化することができる。
【実施例】
【0062】
一般的な例として、アリルn−ブチルエーテル及びn−ブチルビニルエーテルの接触酸化について、以下に記載する。以下の実施例によって、本発明の選択された実施形態についてさらに充分に説明する。本明細書及び添付されている「特許請求の範囲」において言及されている全ての「部」、「百分率」及び「比率」は、特に別途示されていない限り、重量基準である。
【0063】
実験
式:
【0064】
【化13】

の二核マンガン錯体を触媒として用いて、接触酸化を実施することができる。
【0065】
本発明による実施例においては、酸化剤としての35%水性H及び水性反応媒体としての水(純粋)と一緒に、シュウ酸塩/シュウ酸緩衝液を使用することができる。該実験は、出発物質としてアリルn−ブチルエーテル及びn−ブチルビニルエーテルを用いて実施することができる。実施例1及び実施例2は、本発明を実施し得る方法について例証している。
【0066】
実施例1
アリルn−ブチルエーテルの接触エポキシ化(catalytic epoxidation)は、機械式撹拌機、冷却ジャケット及びボトムバルブが付いている(facilitated with)四つ口ガラス製反応器の中で、5℃で、触媒として[(TmTacn)MnIV(μ−O)2+(CHCOOを用いて実施することができる。
【0067】
触媒:共触媒の比率は、1:60であり得る。かくして、100mLの水の中に約23μmolの触媒を添加した後、撹拌条件下にあるガラス製反応器の中に、0.675mmolのシュウ酸ナトリウム及び0.675mmolのシュウ酸を添加することができる。酸化剤としての希Hを添加して、反応を開始させることができる。当該反応溶液の中に、例えば10mL/時間の流量で、総量で300mmolの酸化剤を添加する。酸化剤の供給は、最初の2.8時間以内で完了することが可能であり、その後しばらくの間は反応を継続させることができる。反応後、反応器の中の水溶液を分析して、Hの残留レベルを求めることができる。反応器内の未反応の過酸化水素は、NaSOで中和することができる。次いで、反応器内の水溶液及び有機溶液をGCで分析して、当該反応のエポキシ化の量を求めることができる。
【0068】
実施例2
n−ブチルビニルエーテルの接触エポキシ化は、実施例1と同様に実施することができる。該反応は、機械式撹拌機、冷却ジャケット及びボトムバルブが付いている四つ口ガラス製反応器の中で、5℃で、触媒として[(TmTacn)MnIV(μ−O)2+(CHCOOを用いて実施することができる。
【0069】
エチルビニルエーテルに対する生成物選択性及び反応性は、対応するエチルアリルエーテルよりも低いと予期される。これは、ビニル基におけるC=C結合がC=O結合と共役しており、このことが、それをアリル基内のC=C結合よりも電子的に欠乏した状態にするという事実に起因している。反応後、反応器の中の水溶液を分析して、Hの残留レベルを求めることができる。反応器内の未反応の過酸化水素は、NaSOで中和することができる。次いで、反応器内の水溶液及び有機溶液をGCで分析することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシエチルエーテル又はグリシジルエーテルを製造する方法であって、
水性反応媒体中で水溶性マンガン錯体の存在下にビニルエーテル又はアリルエーテルを酸化剤と反応させることを含み、前記水溶性マンガン錯体は、酸化触媒を含み、前記水溶性マンガン錯体が、一般式(I):
[LMnX]Y(I)
の単核錯体又は一般式(II):
[LMn(μ−X)MnL](Y)(II)
の二核錯体
〔ここで、Mnは、マンガンであり;Lは、又は、各Lは独立して、多座配位子であり;各Xは独立して、配位化学種であり、及び、各μ−Xは独立して、配位架橋化学種であり;Yは、非配位対イオンを含む〕であることを特徴とし、また、反応が、1.0から6.0の範囲内のpHで実施される、前記方法。
【請求項2】
各Xが独立して配位化学種であり、及び、各μ−Xが独立して、RO、Cl、Br、I、F、NCS、N、I、NH、NR、RCOO、RSO、RSO、OH、O2−、O2−、HOO、HO、SH、CN、OCN及びS2−及びそれらの組合せからなる群から選択される配位架橋化学種であり、ここで、Rが、アルキル、シクロアルキル、アリール、ベンジル及びそれらの組合せからなる群から選択されるC−C20ラジカルである、請求項1の方法。
【請求項3】
各多座配位子が、独立して、その骨格内に少なくとも7個の原子を含んでいる非環式化合物又はその環内に少なくとも9個の原子を含んでいる環式化合物から選択され、ここで、各多座配位子が3個の窒素原子(窒素原子は少なくとも2個の炭素原子で隔てられている。)を有する、請求項1の方法。
【請求項4】
酸化触媒として二核水溶性マンガン錯体を使用する、請求項1から3のいずれか1項の方法。
【請求項5】
前記触媒を、1:10から1:10,000,000の触媒(Mn)対過酸化水素のモル比で使用する、請求項1から4のいずれか1項の方法。
【請求項6】
前記水性反応媒体が、10体積%未満の共溶媒を含んでいる水相である、請求項1から5のいずれか1項の方法。
【請求項7】
水性反応媒体が、さらに緩衝液系および1.0から6.0の範囲内のpHを含む、請求項1から6のいずれか1項の方法。
【請求項8】
反応を、−5℃から40℃の範囲内の温度で実施する、請求項1から7のいずれか1項の方法。
【請求項9】
過酸化水素を、15%から98%の濃度の水溶液として使用する、請求項1から8のいずれか1項の方法。
【請求項10】
ビニルエーテル又はアリルエーテルが、分子内に1以上のエーテル基を含有するモノアルコール分子、ジオール分子、トリオール分子、テトラオール分子又はポリオール分子を含む、請求項1から9のいずれか1項の方法。
【請求項11】
ビニルエーテル又はアリルエーテルが、脂肪族アルコール又は芳香族アルコールを含んでいる、請求項10の方法。
【請求項12】
ビニルエーテル又はアリルエーテルが、一般式:
【化1】

〔式中、Rは、1個以上のヘテロ原子を場合により含んでいてもよい1個以上の炭素原子ラジカルであり、及び、R’は、1個以上の炭素原子の2価ラジカルである〕
を含んでいる、請求項1から9のいずれか1項の方法。
【請求項13】
ビニルエーテル又はアリルエーテルが、脂肪族アルコールのエーテル類、ポリグリコールのエーテル類、脂肪アルコールのエーテル類、炭水化物のエーテル類、ベンジルアルコールのエーテル類、フェノール誘導体のエーテル類、ノバラック樹脂(novalac resins)のエーテル類及びそれらの組合せから選択される、請求項12の方法。
【請求項14】
ビニルエーテル又はアリルエーテルが、ジビニルエーテル、ジアリルエーテル、アリルn−ブチルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、ビニルアリルエーテル、エチルビニルエーテル、エチレンジビニルジエーテル及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項12の方法。
【請求項15】
過酸化水素を当該接触酸化の反応速度とほぼ等しい速度で水性反応媒体に添加する、請求項1から14のいずれか1項の方法。
【請求項16】
ビニルエーテル又はアリルエーテルと酸化剤のモル比が1:2を越え約12:1までである、請求項1から15のいずれか1項の方法。
【請求項17】
N−グリシド化合物を製造する方法であって、
水性反応媒体中で水溶性マンガン錯体の存在下にN−アリルアミンを酸化剤と反応させることを含み、前記水溶性マンガン錯体は、酸化触媒を含み、前記水溶性マンガン錯体が、一般式(I):
[LMnX]Y(I)
の単核錯体又は一般式(II):
[LMn(μ−X)MnL](Y)(II)
の二核錯体
〔ここで、Mnは、マンガンであり;Lは、又は、各Lは独立して、多座配位子であり;各Xは独立して、配位化学種であり、及び、各μ−Xは独立して、配位架橋化学種であり;Yは非配位対イオンを含んでいる〕
であることを特徴とする、前記方法。

【公表番号】特表2013−518836(P2013−518836A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551533(P2012−551533)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000321
【国際公開番号】WO2011/095293
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(511026854)モーメンテイブ・スペシヤルテイ・ケミカルズ・インコーポレーテツド (7)
【Fターム(参考)】