説明

エポキシ樹脂組成物、及びその硬化物

【課題】 その硬化物において、優れた難燃性を有すると共に、誘電正接の低いエポキシ樹脂組成物、及びその硬化物を提供する。
【解決手段】 ビスフェノール型エポキシ樹脂、ジグリシジルオキシナフタレン等の2官能型エポキシ樹脂にフェノール又はナフトールを反応させ、次いで、ジイソシアネート化合物を反応させて得られ、エポキシ当量が300〜2000g/当量の範囲にある2官能型エポキシ樹脂(A)、及び硬化剤(B)を必須成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は得られる硬化物の難燃性に優れ、半導体封止材、プリント回路基板、ビルドアップフィルム、塗料、注型用途等に好適に用いる事が出来るエポキシ樹脂組成物、その硬化物、及びプリント回路基板用ワニスに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、硬化時の低収縮性、硬化物の寸法安定性、電気絶縁性及び耐薬品性などに優れた硬化物を与える点から半導体封止材やプリント回路基板等のエレクトロニクス分野などに広く用いられている。かかるエレクトロニクス分野においては、電子部品の高機能化に伴い、ギガHz帯の高周波域に対応できるプリント配線板および電子部品が求められており、その為、絶縁材料にはより伝送損失の低い材料が求められ、一層誘電正接の低いエポキシ樹脂材料が求められている。
【0003】
このような性能を満足するエポキシ樹脂材料として、例えば、ジシクロペンタジエン骨格を分子構造中に有するエポキシ樹脂が知られている(下記、特許文献1参照)。斯かるエポキシ樹脂は、エポキシ基の官能基濃度が低く、優れた誘電性能を発現する一方で、電子部品材料に要求される難燃性に劣る為、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物を更に配合して絶縁材料に調整されるのが一般的であった。
【0004】
しかしながら、近年の環境・安全への取り組みのなかで、ハロゲン系難燃剤はダイオキシン発生が懸念されている。一方、アンチモン化合物も発ガン性が疑われており、ハロゲン系難燃剤・アンチモン化合物に代わる環境・安全対応型の難燃化方法の開発が強く要求されていた。それらの要求に対応するための手段として、エポキシ樹脂自体に難燃性を付与する技術が種々検討されており、例えば、2,7−ジヒドロキシナフタレン又はβ−ヒドロキシナフタレンと、アルデヒド類とを反応させて得られる多価フェノール化合物をグリシジルエーテル化して得られるナフタレン核を1分子中に2つ有するエポキシ樹脂が知られている(下記特許文献2参照)。斯かる多官能型エポキシ樹脂は、1分子内にナフタレン構造を2つ有することから優れた難燃性を発現するものの、近年要求される高度な難燃レベルには至らないものであり、更に、硬化物の誘電正接も十分に低いものは得られないものであった。
【0005】
【特許文献1】特開平8−113628号公報
【特許文献2】特開平4−217675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、その硬化物において、優れた難燃性を有すると共に、誘電正接の低いエポキシ樹脂組成物、及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、高分子量化された2官能型エポキシ樹脂の樹脂構造中にフェノキシ基又はナフトキシ基と共にウレタン結合を導入することにより優れた難燃性を発現させると共に硬化物の誘電正接が飛躍的に低くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、分子構造内にフェノキシ基又はナフトキシ基とウレタン結合とを有する2官能型エポキシ樹脂であって、かつ、そのエポキシ当量が300〜2000g/当量の範囲にあるエポキシ樹脂(A)、及び硬化剤(B)を必須成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物に関する。
【0009】
本発明は、更に、前記エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、その硬化物において、優れた難燃性を有すると共に、誘電正接の低いエポキシ樹脂組成物、及びその硬化物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、分子構造内にフェノキシ基又はナフトキシ基とウレタン結合とを有する2官能型エポキシ樹脂であって、かつ、そのエポキシ当量が300〜2000g/当量の範囲にあるエポキシ樹脂(A)を主剤として用いることを特徴としている。
【0012】
前記エポキシ樹脂(A)は分子構造中にフェノキシ基又はナフトキシ基と、ウレタン結合とを有することから、その硬化物が優れた難燃性を発現する。また、2官能型エポキシ樹脂であってエポキシ当量が300〜2000g/当量の範囲にあることから、硬化物において硬化反応で発生する水酸基の濃度が低減され、硬化物の誘電正接が低減される。更に、本発明ではエポキシ樹脂(A)の分子側鎖にフェノキシ基又はナフトキシ基を有することから、エポキシ当量が比較的高くなっても優れた硬化性を発現する。このようにエポキシ樹脂としての硬化性を犠牲にすることなく、エポキシ当量を高くして誘電正接を低減できることは特筆すべき点である。このような効果が顕著なものとなる点からエポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は特に300〜800g/eq.であることが好ましい。
【0013】
前記エポキシ樹脂(A)中のフェノキシ基又はナフトキシ基の含有率は、該フェノキシ基を構成するベンゼン環の質量、又は、該ナフトキシ基を構成するナフタレン環の質量で、5〜30質量%の範囲となる割合であることが、難燃性の改善効果と、硬化性に優れる点から好ましい。
【0014】
前記エポキシ樹脂(A)中のウレタン結合の含有率は、その濃度が5〜15重量%となる割合であることが硬化物の難燃性が良好となる他、エポキシ樹脂(A)の粘度が低減される点から好ましい。更に、具体的には該エポキシ樹脂1分子中、ウレタン結合を平均0.1〜5.6個となる割合で含むことが、硬化物の難燃性が良好となる点から好ましい。ここで、前記したフェノキシ基又はナフトキシ基を構成するベンゼン環又はナフタレン環の質量、及び、エポキシ樹脂(A)中のウレタン結合の含有率は、原料の仕込み量からの計算値である。
【0015】
前記エポキシ樹脂(A)の樹脂構造中にフェノキシ基又はナフトキシ基、及びウレタン結合を導入する方法としては、例えば、2官能型エポキシ樹脂(a)にフェノール又はナフトール(b)を反応させ、次いで、生成した水酸基にジイソシアネート化合物(c)を反応させる方法が挙げられる。
【0016】
ここで用いられる2官能型エポキシ樹脂(a)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジグリシジルオキシナフタレン;キサンテン骨格を分子構造中に有するエポキシ樹脂が挙げられる。
【0017】
これらの中でも、特にビスフェノール型エポキシ樹脂、又は、ジグリシジルオキシナフタレンが硬化物の難燃効果が顕著なものとなる点から好ましく、とりわけ液状ビスフェノール型エポキシ樹脂が、安価で経済性に優れ、かつ、硬化物の難燃性及び誘電特性に優れる点から好ましい。更に、該液状ビスフェノール型エポキシ樹脂の中でも、とりわけ2核体の含有率が80質量%以上のものがエポキシ樹脂(A)製造時の三次元化分岐性が低く、フェノキシ基又はナフトキシ基を多量に含有させても、過度の増粘やゲル化に至るような問題が少なく為、特に好ましい。
【0018】
次に、フェノール又はナフトール(b)としては、フェノール、α−ナフトール、β−ナフトールが挙げあれる。これらのなかでも難燃性や硬化性の改善効果が高い点からナフトールであることが好ましく、特にβ−ナフトールが好ましい。
【0019】
次に、ジイソシアネート化合物(c)としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0020】
これらのなかでも特に2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、及び1,5−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート化合物であることが硬化物の難燃性の効果が顕著なものとなる点から好ましい。また、本発明では、前記芳香族系ジイソシアネート化合物に、1,6−ヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族系ジイソシアネートを適宜併用することで接着性や靭性のバランスを図ることができる。
【0021】
上記した2官能型エポキシ樹脂(a)にフェノール又はナフトール(b)を反応させ、次いで、生成した水酸基にジイソシアネート化合物(c)を反応させて得られるエポキシ樹脂(A)は、更に具体的には下記構造式1
【0022】
下記構造式1
【0023】
【化1】


(構造式1中、Gはグリシジル基、Arは、ナフチレン基、又は、下記構造式2
【0024】
【化2】


(構造式2中、Xは炭素原子数1〜3のアルキリデン基又はスルホニル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立的に水素原子又はメチル基を表す。)で表される2価の有機基、Arは芳香族炭化水素基、Yはフェノキシ基又はナフトキシ基をそれぞれ表し、nは繰り返し単位の平均で0.05〜2.8である。)
で表される構造を有するエポキシ樹脂であることが本発明の効果が顕著なものとなる点から好ましい。
【0025】
前記構造式1で表されるエポキシ樹脂(A)の中でも、特に下記構造式3
【0026】
【化3】


(構造式3中、Xは炭素原子数1〜3のアルキリデン基又はスルホニル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立的に水素原子又はメチル基を表し、Arは芳香族炭化水素基を表し、Yはフェノキシ基又はナフトキシ基を表し、nは繰り返し単位の平均で0.05〜2.8である。)で表されるものが、硬化物の靱性向上の効果が顕著なものとなる点から好ましい。
【0027】
ここで、構造式1又は構造式3中「Y」で示されるYはフェノキシ基又はナフトキシ基は、具体的には、下記構造式p1〜p3で表されるものが挙げられる。
【0028】
【化4】



これらのなかでもエポキシ樹脂(A)の製造が容易であり、かつ、該エポキシ樹脂(A)の難燃効果が顕著なものとなる点から前記p2及びp3で表されるナフトキシ基が好ましく、特にp2で表されるβ−ナフトキシ基が好ましい。
【0029】
また、構造式2又は構造式3中の「X」は、前記した通り、炭素原子数1〜3のアルキリデン基又はスルホニル基であり、炭素原子数1〜3のアルキリデン基としてはメチリデン基、エチリデン基、2,2−プロピリデン基が挙げられる。これらのなかでも本発明の効果が顕著なものとなる点からメチリデン基であることが好ましい。
【0030】
以上詳述したエポキシ樹脂(A)を製造する方法は、
(i)2官能型エポキシ樹脂(a)、フェノール又はナフトール(b)、及びジイソシアネート化合物(c)を全て一度に混合して反応させる方法、或いは、
(ii)2官能型エポキシ樹脂(a)と、フェノール又はナフトール(b)とを反応させ(工程1)、次いで得られた反応生成物にジイソシアネート化合物(c)を反応させる(工程2)方法が挙げられる。
【0031】
ここで、前記方法(i)及び(ii)において、2官能型エポキシ樹脂(a)と、フェノール又はナフトール(b)との反応割合は、前記2官能型エポキシ樹脂(a)中のエポキシ基1当量に対して、フェノール又はナフトール(b)中のフェノール性水酸基が0.2〜0.8当量の範囲となる割合、特に0.3〜0.6当量の範囲となる割合であることがフェノキシ基又はナフトキシ基の濃度を適性範囲に調整できて難燃性が良好なものとなり、かつ、エポキシ樹脂(A)の耐湿信頼性も良好なものとなる点から好ましい。
【0032】
また、ジイソシアネート化合物(c)の使用量は、前記2官能型エポキシ樹脂(a)中のエポキシ基1当量に対して、ジイソシアネート化合物(c)中のイソシアネート基が0.2〜0.8当量の範囲となる割合、特に0.3〜0.6当量の範囲となる割合であることがエポキシ樹脂(A)の硬化物の靱性が良好なものとなる点から好ましい。
【0033】
上記した各方法のなかでも、特に後者の方法(ii)が、反応選択性が高く、直鎖構造性の高い分子構造のエポキシ化合物を得ることができる点から好ましい。以下、方法(ii)について詳述する。
【0034】
方法(ii)の工程1の反応条件としては、例えば、2官能型エポキシ樹脂(a)と、フェノール又はナフトール(b)を混合して、50〜200℃の温度範囲で1〜20時間撹拌することによって中間体を得ることができる。その際、必要に応じて有機溶媒も使用できる。用いられる有機溶媒としては、キシレン、トルエン等の芳香族系有機溶剤、
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル系有機溶剤、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤などが挙げられる。その使用量は、原料100質量部に対して10〜500質量部となる割合であることが好ましい。
【0035】
また必要に応じて触媒も使用できる。ここで使用し得る触媒としては、例えば、ベンジルジメチルアミン等の第3級アミン類、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類、2メチルイミダゾール、2エチル4メチルイミダゾール等のイミダゾール類、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸等が挙げられる。添加量としては、原料成分との合計に対して、10ppm〜1質量%の範囲であることが好ましい。
【0036】
次に、工程2としては、中間体とジイソシアネート化合物(c)の反応工程においては、両者を混合して、40〜100℃の温度で1〜20時間撹拌させることによって目的のウレタン変性エポキシ樹脂を得ることができる。その際、必要に応じて有機溶媒も使用できる。用いられる有機溶媒としては、具体的には、キシレン、トルエン等の芳香族系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル系有機溶剤、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤などが挙げられる。その使用量は、原料100質量部に対して10〜500質量部となる割合であることが好ましい。
【0037】
また必要に応じて触媒も使用できる。ここで使用し得る触媒としては、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ラウレートなどの有機金属化合物、1、4−ジアザ−2、2、2−ビシクロオクタン、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデカン、ジエチルベンジルアミンなどの3級アミン等が挙げられる。添加量としては、原料成分との合計に対して、5〜1000ppmとなる範囲であることが好ましい。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂(A)と共に、その他のエポキシ樹脂を併用してもよい。
【0039】
ここで使用し得る他の種類のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。またこれらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。特にビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂及びキサンテン骨格を分子構造中に有するエポキシ樹脂が、難燃性に優れる点から特に好ましい。
上記したその他のエポキシ樹脂の使用割合は、エポキシ樹脂組成物中5〜70質量%、特に5〜60質量%であることが好ましい。
【0040】
次に、本発明で用いる硬化剤(B)は、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系樹脂などが挙げられる。
【0041】
具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0042】
酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0043】
フェノール系樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(通称、「ザイロック樹脂」)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミンやベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物、及びこれらの変性物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0044】
これらの中でも、特にフェノール系樹脂であることが好ましく、なかでもフェノールノボラック樹脂であることが硬化物の難燃性の改善効果が顕著なものとなる点から好ましい。また、本発明ではとりわけ軟化点90〜130℃のフェノールノボラック樹脂が耐熱性、難燃性の点から好ましい。
【0045】
本発明のエポキシ樹脂組成物における前記硬化剤(B)の配合量は、得られる硬化物特性が良好である点から、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計1当量に対して、硬化剤(B)中の活性基が0.7〜1.5当量になる量が好ましい。イミダゾールなどの触媒硬化系では、エポキシ樹脂に対して0.5〜10質量%の範囲が好ましい。
【0046】
また、必要に応じて本発明のエポキシ樹脂組成物に硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、第3級アミンでは1、8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
【0047】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記したエポキシ樹脂(A)自身が難燃性付与効果を有するものである事から、別途難燃剤を配合しなくても、硬化物において良好な難燃性を発現させることができるものであるが、より高度な難燃性を発揮させるために、封止工程での成形性や半導体装置の信頼性を低下させない範囲で、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合することが好ましい。
【0048】
ここでいう実質的にハロゲン原子を含有しない難燃性樹脂組成物とは、難燃性付与の目的でハロゲン系の化合物を配合しなくても充分な難燃性を示す樹脂組成物を意味するものであり、例えばエポキシ樹脂に含まれるエピハロヒドリン由来の5000ppm以下程度の微量の不純物によるハロゲン原子は含まれていても良い。
【0049】
前記非ハロゲン系難燃剤は、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
【0050】
前記リン系難燃剤は、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
【0051】
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
【0052】
前記有機リン系化合物は、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサー10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物が挙げられる。
【0053】
それらの配合量は、リン系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0054】
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
【0055】
前記窒素系難燃剤は、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、中でもトリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
【0056】
前記トリアジン化合物は、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(i)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(ii)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール類と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン類およびホルムアルデヒドとの共縮合物、(iii)前記(ii)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂類との混合物、(iv)前記(ii)又は(iii)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
【0057】
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
【0058】
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0059】
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
【0060】
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0061】
前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
【0062】
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
【0063】
前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0064】
前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0065】
前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
【0066】
前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
【0067】
前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
【0068】
前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO−MgO−HO、PbO−B系、ZnO−P−MgO系、P−B−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V−TeO系、Al−HO系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
【0069】
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0070】
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
【0071】
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0072】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、半導体封止材料、アンダーフィル材、導電ペースト、プリント回路基板用ワニス、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、レジストインキ、絶縁粉体塗料、樹脂注型材料、接着剤、等の各種の用途に適用することができる。
【0073】
これらのなかでも特に本発明のエポキシ樹脂組成物をプリント回路基板用ワニスとして用いる場合、硬化物の優れた靱性によってプリント配線基板製造における吸湿後のハンダ処理工程で、剥離やクラックなどを良好に防止できる為好ましい。
【0074】
本発明のエポキシ樹脂組成物からプリント回路基板用ワニスを製造する方法は、前記した各成分に有機溶剤を配合してワニス化する方法が挙げられる。前記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤を用いることが好ましく、単独でも2種以上の混合溶剤としても使用することができる。
【0075】
前記したプリント回路基板用ワニスからプリント回路基板用銅張積層板を製造するには、先ず、上記プリント回路基板用ワニスを、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などの各種補強基材に含浸させ、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを製造する。この際、エポキシ樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、このようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、銅張り積層板を得ることができる。
【0076】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物からビルドアップフィルムを製造する方法は、例えば、前記した各成分に前記した有機溶剤を配合してワニス化し、これを支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
【0077】
本発明のエポキシ樹脂組成物をビルドアップフィルムに用いる場合、該フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
【0078】
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の本発明のエポキシ樹脂組成物を調製した後、支持フィルムの表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させてエポキシ樹脂組成物の層を形成させることにより製造することができる。
【0079】
形成されるエポキシ樹脂組成物の層の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
【0080】
なお、エポキシ樹脂組成物の層は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0081】
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0082】
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法としては例えば、ゴム、フィラーなどを適宜配合した当該硬化性樹脂組成物を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0083】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分に更に無機充填剤を配合することにより半導体封止材料又は導電ペーストを製造することができる。
前記無機質充填材としては、例えば、半導体封止材料用途では溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられ、また、導電ペースト用途では、銀粉や銅粉等の導電性充填剤が挙げられる。
【0084】
ここで、前記無機充填材の配合量は、特に半導体封止材料用途では、エポキシ樹脂組成物100質量部当たり、充填剤を70〜95質量%の範囲であることが好ましい。
【0085】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物を導電ペーストとして使用する場合には、例えば、微細導電性粒子を該エポキシ樹脂組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
【0086】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、更にレジストインキとして使用することも可能である。この場合、前記エポキシ樹脂(A)に、エチレン性不飽和二重結合を有するビニル系モノマーと、硬化剤(B)としてカチオン重合触媒を配合し、更に、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。
【0087】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物を絶縁粉体塗料として用いる場合には、前記エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)に加え、必要に応じて、前記無機質充填剤、着色剤、難燃剤、離型剤、またはカップリング剤などの公知慣用の各種の添加剤成分をミキサー等によって十分に均一に混合した後、更に熱ロールまたはニーダ−等で溶融混練し、射出あるいは冷却後粉砕するなどして、目的とする絶縁粉体塗料を得ることができる。このようにして製造された悦塩粉体塗料を用いて電気電子部品の絶縁被覆を行う方法としては、流動浸漬法、ホットスプレー法、静電スプレー法、静電流動浸漬法等の一般の粉体塗装法が挙げられる。
【0088】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記した各種用途に応じて、適宜、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0089】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、目的或いは使用する用途に応じて常法により硬化させて硬化物とすることができる。この際、硬化物を得る方法は、本発明のエポキシ樹脂組成物に、各種の配合成分を加え、更に適宜硬化促進剤を配合して得られた組成物を、20〜250℃程度の温度範囲で加熱する方法が好ましい。成形方法などもエポキシ樹脂組成物の一般的な方法を採用することができる。このようにして得られる硬化物は、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等を形成する。
【実施例】
【0090】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り重量基準である。尚、150℃における溶融粘度及びGPC測定、NMR、MSスペクトルは以下の条件にて測定した。
1)150℃における溶融粘度:ASTMD4287に準拠
2)軟化点測定法:JISK7234
3)GPC:
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折径)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0091】
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
4)NMR:日本電子株式会社製NMR「GSX270」
5)MS:日本電子株式会社製二重収束型質量分析装置AX505H(FD505H)
【0092】
実施例1(ナフチルオキシ基含有ウレタン変性エポキシ樹脂(A−1)の合成)
温度計、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量188g/eq、水酸基価19.3KOHmg/g、大日本インキ化学工業株式会社製「エピクロンN850S」)188g(エポキシ基1.0当量)とβ−ナフトール48.4gを仕込み、トリフェニルフォスフィン0.07gを添加後、130℃に昇温して、5時間撹拌して、エポキシ当量とGPC測定によってβ−ナフトールが実質的に消滅したことを確認して中間体を得た。次いで、反応系内にトリレンジイソシアネート(TDI:NCO当量87g/eq.、三井化学ポリウレタン株式会社製:コスモネートT−100)29.2g(イソシアネート基0.3当量)を滴下して、90℃で1時間撹拌して、IR測定でイソシアネート基が実質的に消滅したことを確認して、目的のナフチルオキシ基含有ウレタン変性エポキシ樹脂(A−1)を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は425g/eq.、軟化点80℃、ナフトキシ基を構成するナフタレン骨格含有量15質量%、芳香環濃度50.2質量%、ウレタン結合基濃度5.3質量%であった。
【0093】
実施例2(ナフチルオキシ基含有ウレタン変性エポキシ樹脂(A−2)の合成)
温度計、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量188g/eq、水酸基価19.3KOHmg/g、大日本インキ化学工業株式会社製「エピクロンN850S」)188g(エポキシ基1.0当量)とβ−ナフトール58.5gを仕込み、トリフェニルフォスフィン0.07gを添加後、130℃に昇温して、5時間撹拌して、エポキシ当量とGPC測定によってβ−ナフトールが実質的に消滅したことを確認して中間体を得た。
その後、該中間体を含む反応生成物とトルエン33gとを溶解させ、次いで、応系内にジフェニルメタンジイソシアネート(MDI:NCO当量125g/eq.、日本ポリウレタン工業株式会社製「ミリオネートMT」)50.7g(イソシアネート基0.4当量)を滴下して、90℃で1時間撹拌して、IR測定でイソシアネート基が実質的に消滅したことを確認して、目的のナフチルオキシ基含有ウレタン変性エポキシ樹脂(A−2)を得た。次いで、このエポキシ樹脂(A−2)を含む反応生成物にメチルエチルケトン94.4gを加え、不揮発分含有率70質量%の樹脂溶液とした。得られたエポキシ樹脂(A−2)のエポキシ当量は515g/eq、ナフトキシ基を構成するナフタレン骨格含有量16.4質量%、芳香環濃度53.4質量%、ウレタン結合基濃度5.7質量%であった。また、得られた樹脂溶液のE型粘度計による溶液粘度は4,300mPa・sであった。
【0094】
実施例3(ナフチルオキシ基含有ウレタン変性エポキシ樹脂(A−3)の合成)
温度計、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量188g/eq、大日本インキ化学工業株式会社製「エピクロン830S」)170g(エポキシ基1.0当量)とβ−ナフトール61.8gを仕込み、トリフェニルフォスフィン0.07gを添加後、130℃に昇温して、5時間撹拌して、エポキシ当量とGPC測定によってβ−ナフトールが実質的に消滅したことを確認して中間体を得た。
その後、該中間体を含む反応生成物とトルエン31.7gとに溶解させ、次いで、反応系内にジフェニルメタンジイソシアネート(MDI:NCO当量125g/eq.、日本ポリウレタン工業株式会社製「ミリオネートMT」)53.6g(イソシアネート基0.4当量)を滴下して、90℃で1時間撹拌して、IR測定でイソシアネート基が実質的に消滅したことを確認して、目的のナフチルオキシ基含有ウレタン変性エポキシ樹脂(A−3)を得た。次いで、このエポキシ樹脂(A−3)を含む反応生成物にメチルエチルケトン90.6gを加え、不揮発分含有率70質量%の樹脂溶液とした。得られたエポキシ樹脂(A−3)のエポキシ当量は515g/eq、ナフトキシ基を構成するナフタレン骨格含有量16.4質量%、芳香環濃度53.4質量%、ウレタン結合基濃度6.3質量%であった。また、得られた樹脂溶液のE型粘度計による溶液粘度は2,740mPa・sであった。
【0095】
実施例4(ナフチルオキシ基含有ウレタン変性エポキシ樹脂(A−4)の合成)
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂の代わりに1,6−ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量151g/eq、大日本インキ化学工業株式会社製「エピクロン HP−4032)151gを用いて、実施例2と同様にしてβ−ナフトール62.3gと反応させて中間体を得、該中間体を含む反応生成物にトルエン65.4gを加え、次いで、1,5−ジイソシアネートナフタレン(NDI:NCO当量105g/eq、三井化学ポリウレタン株式会社製「コスモネートND」)49.1g(イソシアネート基0.4当量)を滴下し、実施例2と同様して反応させて目的のウレタン変性エポキシ樹脂(A−4)を得た。次いで、このエポキシ樹脂(A−4)を含む反応生成物にメチルエチルケトン108.9gを加え、不揮発分含有率60質量%の樹脂溶液とした。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は563g/eq.、ナフタレン骨格含有量59.4質量%、前記β−ナフトールに起因するナフタレン骨格含有率21質量%、ウレタン結合基濃度7.4質量%であった。また、得られた樹脂溶液のE型粘度計による溶液粘度は4,500mPa・sであった。
【0096】
実施例5(フェノキシ基含有ウレタン変性エポキシ樹脂(A−5)の合成)
β−ナフトール48.4gの代わりにフェノール43.4gを用い、かつ、トリレンジイソシアネート(TDI:NCO当量87g/eq.、三井化学ポリウレタン株式会社製:コスモネートT−100)を38.1g用いる他は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂(A−5)を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は511g/eq、軟化点80℃、芳香環濃度は50.4質量%、前記フェノールに起因するベンゼン環含有率12.3質量%、ウレタン結合基濃度6.1質量%であった。
【0097】
実施例6(フェノキシ基含有ウレタン変性エポキシ樹脂(A−6)の合成)
β−ナフトール48.4gの代わりにフェノール41.2gを用い、かつ、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI:NCO当量125g/eq.、日本ポリウレタン工業株式会社製「ミリオネートMT」)を52.1g用いる他は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂(A−6)を得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は506g/eq、軟化点80℃、芳香環濃度は53.1質量%、前記フェノールに起因するベンゼン環含有率12.3質量%、ウレタン結合基濃度6.2質量%であった。
【0098】
実施例7〜12及び比較例1〜3
表1及び表2に示した組成比率(固形分質量比)に従い、各成分を配合し、更に、最終的に組成物の不揮発分が55質量%となるようメチルエチルケトンを加えてワニスを製造した。これを用いて硬化性試験を行った。また、それぞれのワニスを用い下記の積層板作成条件にて積層板を作成し、燃焼試験、誘電特性を評価した。なお、エポキシ樹脂(A−2)〜エポキシ樹脂(A−4)については、実施例2〜4で得られた樹脂溶液に、他の成分を加え、最終的にメチルエチルケトンを加えて不揮発分が55質量%となるよう調整してワニスとした。
【0099】
[積層板作製条件]
基材:180μm;日東紡績株式会社製ガラスクロス「WEA 7628 H258」プライ数:8、プリプレグ化条件:160℃/4分、銅箔:35μm;古河サ−キットホイ−ル株式会社製、硬化条件:200℃、40kg/cm2で1.5時間成型後板厚:1.6mm、樹脂含有量:40%
【0100】
[物性試験条件]
硬化性試験: 固形質量が0.15gとなる量のワニスを160℃に加熱したキュアプレート(THERMO ELECTRIC社製)上に載せ、ストップウォッチで計時を開始する。棒の先端にて試料を均一に攪拌し、糸状に試料が切れてプレートに残るようになった時、ストップウォッチを止める。この試料が切れてプレートに残るようになるまでの時間をゲルタイムとした。
燃焼試験 : UL−94垂直試験に準拠し、厚さ1.6mmの試験片(上記方法にて作成した積層板)を5本用いて燃焼試験を行った。
【0101】
誘電特性:誘電特性評価器を用いて100MHz、1GHzの周波数における誘電率と誘電正接を測定した(積層板の試験片サイズ:75×25×2mm)
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
なお、表1及び表2中の配合成分は以下の通りである。
フェノールノボラック樹脂:フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量105g/eq、軟化点120℃)
2E4MZ:2−エチル−4−メチルイミダゾール
ナフタレン型エポキシ樹脂(x):2,7−ジグリシジルオキシナフタレン(エポキシ当量142g/eq.)
ナフタレン型エポキシ樹脂(y):2,7−ジヒドロキシナフタレンとホルムアルデヒドとを反応させてえられるナフトール2量体のエポキシ化物(エポキシ当量166g/eq.)
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂:ジシクロペンタジエン/フェノール付加重合体のエポキシ化物(エポキシ当量275g/eq.)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子構造内にフェノキシ基又はナフトキシ基とウレタン結合とを有する2官能型エポキシ樹脂であって、かつ、そのエポキシ当量が300〜2000g/当量の範囲にあるエポキシ樹脂(A)、及び硬化剤(B)を必須成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシ樹脂(A)がウレタン結合基を5〜15質量%の割合で含有するものである請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂(A)が2官能型エポキシ樹脂(a)に、フェノール又はナフトール(b)と、ジイソシアネート化合物(c)とを反応させて得られるものである請求項1又は2記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記2官能型エポキシ樹脂(a)が液状ビスフェノール型エポキシ樹脂である請求項3記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記2官能型エポキシ樹脂(a)が、ジグリシジルオキシナフタレンである請求項3記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記硬化剤(B)がフェノールノボラック樹脂であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
エポキシ樹脂(A)及び硬化剤(B)に加え、更に有機溶剤を含有する請求項1〜6の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。

【公開番号】特開2009−84361(P2009−84361A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254121(P2007−254121)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】