説明

エポキシ系塗料組成物

【課題】 鉱石や重機などによる極めて厳しい引っかきや衝撃にも耐える極めて強固な塗膜を形成することができ、且つ塗装時に用いられる機械の磨耗量が小さい塗料組成物を提供すること。
【解決手段】 エポキシ樹脂及びアミン系硬化剤を含有するエポキシ系塗料組成物であって、エポキシ樹脂とアミン系硬化剤との合計固形分100質量部に対して長石粒子を60〜400質量部、アルミナ粒子を20〜200質量部及び鱗片状顔料を10〜100質量部の範囲内で含有することを特徴とするエポキシ系塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐傷つき性に極めて優れた被膜を形成することのできるエポキシ系塗料組成物に関するものであり、特に鉱石運搬船等の船倉内壁用として有用なものである。
【背景技術】
【0002】
鉱石や石炭などを運搬する船舶は、積荷を積むための巨大な船倉(ホールド)を備えている。その内壁は積荷である鉱石や石炭によって激しいダメージを受けるだけでなく、積荷の荷揚げ作業等で使われる重機によって機械的ダメージを受ける。そのため、船倉内壁に塗装された塗膜は深くまで傷つき、短時間で錆が発生するため塗膜寿命は2〜4年と短く、再塗装が必要となる。
【0003】
塗膜の傷つき性を改良する方法としては、硬い粒子を塗料に添加する方法がある。特に硬い粒子としてはアルミナ粒子が知られている。
【0004】
例えば特許文献1では、ポリテトラフルオロエチレンとポリアミドイミドとアルミナ粒子とからなる塗料組成物が開示されており、内燃機関の摺動部材という極めて耐磨耗性の必要な用途に使用可能なことが記載されている。ここで用いられるアルミナ粒子は平均粒径が0.1〜20μm、特に好ましくは0.1〜1.0μmとしている。
【0005】
また、特許文献2には、活性エネルギー線硬化性アクリル系樹脂と、揮発性有機酸と、アルミナ微粒子とを少なくとも含有することを特徴とするハードコート性コーティング組成物が開示されている。ここで用いられるアルミナ粒子は平均粒径が1〜100nm程度のものである。
【0006】
しかしながら、船倉に塗布する塗膜の場合の傷つきは上記用途の場合とはかなり異なるものであり、塗装膜厚も150〜500μm程度とかなり厚いものである。そのため、アルミナ粒子の粒径が小さいと十分な効果を発揮することができず、傷つき改良のためアルミナ粒子の量を増加させると塗装機械系、特にスプレーガンのガン先の磨耗が顕著となり、実用上問題となることが明らかとなった。
【0007】
【特許文献1】特開2001−11372号公報
【特許文献2】特開2001−139888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、積荷の鉱石や荷揚げ用の重機などによる極めて厳しい引っかきや衝撃にも耐える強固な塗膜を形成することができ、且つ塗装時に用いられるスプレーガンなどの塗装機械の磨耗量が小さい塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、エポキシ樹脂及びアミン系硬化剤を含有するエポキシ系塗料組成物に、長石粒子、アルミナ粒子及び鱗片状顔料を特定量組み合わせて用いることにより、塗装時の塗装機の磨耗が少なく、且つ厳しい引っかきにも耐える極めて強固な塗膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして、本発明は、エポキシ樹脂(A)及びアミン系硬化剤(B)を含有するエポキシ系塗料組成物であって、エポキシ樹脂(A)とアミン系硬化剤(B)との合計固形分100質量部に対して長石粒子(C)を60〜400質量部、アルミナ粒子(D)を20〜200質量部及び鱗片状顔料(E)を10〜100質量部の範囲内で含有することを特徴とするエポキシ系塗料組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、金属素材上にプライマーを塗布、乾燥させた後、上記エポキシ系塗料組成物を乾燥膜厚が100〜500μmになるようにして塗布し、乾燥することを特徴とする耐傷つき性に優れた塗膜の形成方法に関する。
【0012】
さらに、本発明は、上記エポキシ系塗料組成物よりなる被膜を有することを特徴とする塗装物品に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の、エポキシ系塗料組成物は、エポキシ樹脂及びアミン系硬化剤を主成分とする成膜成分に、長石粒子、アルミナ粒子及び鱗片状顔料を特定量含有せしめてなるものである。
【0014】
長石粒子とアルミナ粒子の組合せにより強靭な塗膜を作るとともに、そこに鱗片状顔料を特定量組み合わせることにより、固くて脆さを有する塗膜に柔軟性を付与し、鉱石や重機の先などが塗膜に当たった時に生ずる強烈な衝撃にも耐える塗膜を形成できたものと推測される。
【0015】
したがって、本発明の、エポキシ系塗料組成物は、鉱石や重機などによる極めて厳しい引っかきや衝撃にも耐える極めて強固な塗膜を形成することができ、且つ塗装時に用いられるスプレーガン等の機械の磨耗量も小さく、特に鉱石や石炭などを運搬する船舶の船倉(ホールド)内壁用として極めて有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のエポキシ系塗料組成物は、エポキシ樹脂(A)、アミン系硬化剤(B)、長石粒子(C)、アルミナ粒子(D)及び鱗片状顔料(E)を含有してなるものである。
【0017】
エポキシ樹脂(A)
本発明の(A)成分であるエポキシ樹脂は、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するものであり、エポキシ当量が150〜600、好ましくは130〜300のものが適当である。かかるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂など従来公知のものが挙げられ、これらは1種又は2種以上混合して使用してもよい。これらの中でも特にビスフェノール型エポキシ樹脂が硬度や下塗り密着性などの点から好ましい。
【0018】
アミン系硬化剤(B)
本発明の(B)成分であるアミン系硬化剤は、従来公知のエポキシ樹脂用硬化剤が使用でき、例えばメタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタンなどの脂肪族ポリアミン類、脂環族ポリアミン類、芳香族ポリアミン類、ポリアミドアミン類;これらポリアミンのエポキシ樹脂アダクト物、ポリアミド樹脂などが挙げられる。これらは1種又は2種以上混合して使用できる。これらの中でもアルキル化フェノリックポリアミンであるフェナルカミンをアミン系硬化剤の一部として使用することにより塗膜の強度が著しく向上することが確認された。フェナルカミンの量としてはアミン系硬化剤(B)中10〜90質量%、特に30〜80質量%の範囲内が好ましく、硬化剤の組合せとしては、特にフェナルカミンとポリアミドアミン類又はそのエポキシ樹脂アダクト物が塗膜の硬度と可撓性のバランスの点から好ましい。
【0019】
上記(A)及び(B)成分の混合割合は、両者の使用種により適宜選択されるが、通常[(B)中の活性水素当量/(A)中のエポキシ当量]の当量比が0.5〜1.0の範囲となるようにするのが適当である。
【0020】
長石粒子(C)
本発明の(C)成分である長石粒子は、アルミノケイ酸塩系鉱物である長石を粉砕して微粒子にしたものが用いられる。長石としては、そこに含まれる化学組成によって多くの種類に分類されるが、代表的なものとしては、アルカリ長石、斜長石などが挙げられる。また、準長石といわれるSiOの少ないものも本発明の長石に包含され、準長石の代表的なものとしては霞石、白榴石などが挙げられる。また、長石と準長石とからなる霞石閃長岩なども手に入りやすい原料であり好ましい。
【0021】
長石粒子(C)の平均粒径(D50)は1〜30μm、特に5〜20μmの範囲内が好ましい。平均粒径(D50)が1μm未満では耐傷つき性の向上効果はほとんどなく、30μmを超えると塗装時の塗装機の磨耗が大きくなり好ましくない。
【0022】
長石粒子(C)の含有量としては、エポキシ樹脂(A)とアミン系硬化剤(B)との合計固形分100質量部に対して60〜400質量部、特に100〜300質量部の範囲内であることが好ましく、60質量部未満であると耐傷つき性の向上効果はほとんどなく、また400質量部を超えると塗膜が脆くなり、強固な塗膜を形成することができにくくなる。
【0023】
アルミナ粒子(D)
本発明の(D)成分であるアルミナ粒子は、一般には研磨剤として販売されている極めて固い酸化アルミニウムの粒子である。塗膜の耐傷つき性の向上には最も効果を発揮するものであるが、固いがために塗装関連設備、特にスプレーガンの塗料吐出部、ポンプ等の磨耗が激しく注意が必要である。アルミナ粒子(D)の粒径が大きかったり、塗料中の含有量が多いと磨耗は大きくなるが、粒径が小さすぎたり、塗料中の含有量が少ないと添加の効果がほとんどなくなってしまう。
【0024】
長石粒子(C)だけでは十分な耐傷つき性はとても得られないものであるが、一方アルミナ粒子(D)単独では塗装関連設備の磨耗を考慮すると添加量の制限が低いところにあり、やはり十分な耐傷つき性を得ることは困難であった。
【0025】
しかしながら、適度の粒子径を有する長石粒子(C)を添加することにより、アルミナ粒子による塗装関連設備に磨耗の問題が起こらない程度にアルミナ粒子の添加量を下げても十分な耐傷つき性が得られることを見出したものである。
【0026】
アルミナ粒子(D)の平均粒径(D50)としては5〜100μm、特に10〜50μmの範囲内が好ましい。平均粒径(D50)が5μm未満では耐傷つき性の向上効果はほとんどなく、100μmを超えると塗装時の塗装機の磨耗が大きくなり好ましくない。
【0027】
アルミナ粒子(D)の含有量としては、エポキシ樹脂(A)とアミン系硬化剤(B)との合計固形分100質量部に対して20〜200質量部、特に40〜100質量部の範囲内であることが好ましく、20質量部未満であると耐傷つき性の向上効果はほとんどなく、また200質量部を超えると塗装時の塗装機の磨耗が大きくなり好ましくない。
【0028】
また、長石粒子(C)とアルミナ粒子(D)の比率によっても差が見られ、長石粒子(C)/アルミナ粒子(D)(質量比)が0.5〜10、特に1〜5の範囲内が塗膜の耐傷つき性と塗装設備の磨耗のバランスの点で好ましい。
【0029】
鱗片状顔料(E)
本発明の(E)成分である鱗片状顔料は、例えば、天然又は合成の雲母(マイカ)、アルミニウムフレーク、シリカフレーク、ガラスフレーク、ステンレスフレーク等を挙げることができる。
【0030】
長石粒子(C)とアルミナ粒子(D)を配合した塗膜は極めて固いものであるが、衝撃に弱く、塗膜のワレや剥離を起こしやすい。これにさらに鱗片状顔料(E)を添加することで耐衝撃性が向上するだけでなく、耐食性も向上することが明らかとなった。
【0031】
耐衝撃性が向上する効果は特に天然又は合成の雲母(マイカ)が大きく、このものを使用するのが好ましい。上記雲母(マイカ)としては、例えば白マイカ、金マイカ、黒マイカ等を挙げることができるが、本発明においてはいずれも使用可能である。
【0032】
鱗片状顔料(E)の大きさは、特に限定されず、塗装に支障を起こさない範囲で適宜選択すればよいが、特に好ましいものとしては、大きさ(長径)5〜500μm程度、短径が厚さの5倍以上のものが望ましい。鱗片状顔料(E)の大きさ(長径)が5μm未満では耐衝撃性向上に効果が少なく、500μmを超えるとスプレー塗装性が低下してくる。
【0033】
鱗片状顔料(E)の含有量としては、エポキシ樹脂(A)とアミン系硬化剤(B)との合計固形分100質量部に対して10〜100質量部、特に20〜60質量部の範囲内であることが好ましく、10質量部未満であると耐衝撃性向上に効果が少なく、また100質量部を超えると耐傷つき性が低下する。
【0034】
本発明のエポキシ系塗料組成物には、エポキシ樹脂(A)以外の有機樹脂を必要に応じて添加することができる。
【0035】
エポキシ樹脂(A)以外の有機樹脂としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂ならびにそれらの水素添加物;アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、ブチルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの中でもキシレン樹脂が、塗膜に適度の可撓性を付与する点から好ましい。キシレン樹脂の含有量は、エポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂(A)以外の有機樹脂との合計固形分中、固形分で5〜50質量%、特に10〜40質量%の範囲内であることが好ましく、5質量%未満では添加の効果があまりみられないが、50質量%を超えると塗膜強度を低下し、十分な耐傷つき性が得られなくなる。
【0036】
本発明のエポキシ系塗料組成物には、さらに必要に応じて、体質顔料、防錆顔料、着色顔料等の顔料類;反応性希釈剤;有機溶剤;沈降防止剤、タレ止め剤、湿潤剤、反応促進剤、付着性付与剤、脱水剤等の通常の塗料用添加剤などを適宜含有してもよい。
【0037】
また本発明のエポキシ系塗料組成物は、エポキシ樹脂を含む主剤とアミン系硬化剤からなる二液型塗料であり、金属等の素材に直接又はジンクプライマーなどの一次防錆塗膜上に塗装される。上記塗料の塗装方法には、エアスプレー、エアレススプレー、刷毛塗り、ローラーなどの従来公知の方法が採用でき、上記塗料を乾燥膜厚で100〜500μmとなるよう塗布することができる。
【0038】
本発明のエポキシ系塗料組成物は、耐傷つき性に極めて優れているため、耐スクラッチ性を求められる建築、防食、船等の用途に使用することができるが、特に鉱石や石炭などを運搬する船舶の船倉(ホールド)内壁用塗料として極めて有用である。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものとする。
【0040】
塗料組成物
実施例1
4リットル容器に、JER834(ビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ当量250、ジャパンエポキシレジン社製)75部、ニカノールL(キシレン樹脂、フドー社製)25部、キシレン40部、チタン白40部、タルク50部、ミネックス4F(長石粒子、平均粒径(D50)7μm、白石カルシウム社製)150部、モランダムA320(アルミナ粒子、平均粒径(D50)40μm、昭和電工社製)150部、スゾライトマイカ200HK(鱗片状顔料、平均粒径約80μm、アスペクト比約45、クラレ社製)15部、及びディスパロンA630−20XN(タレ止め剤、ポリアマイド系ワックス、楠本化成社製)10部を添加しディスパ−で混合・攪拌し分散して主剤とし、これにサンマイドCX105(フェナルカミン、活性水素当量130、エアープロダクツジャパン社製)34部およびサンマイド390−70(ポリアミドアミン系硬化剤、活性水素当量270、エアープロダクツジャパン社製、固形分70%)8.5部を塗装直前に添加し混合・攪拌してエポキシ系塗料組成物を得た。
【0041】
実施例2〜21及び比較例1〜7
実施例1において、表1に示す組成及び配合量とする以外は実施例1と同様の操作で各エポキシ系塗料組成物を得た。また、比較例7として従来型のエポキシ塗料「エポマリンEX500」(NKMコーティングス社製、変性エポキシ樹脂塗料)を使用した。
【0042】
なお、表1中の(注1)〜(注10)の原料は、下記の内容のものである。
(注1)JER828EL:ビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ当量190、ジャパンエポキシレジン社製。
(注2)JER1001:ビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ当量475、ジャパンエポキシレジン社製。
(注3)エピクロン830:エポキシ樹脂、エポキシ当量180、大日本インキ化学工業社製。
(注4)長石A:長石粒子、平均粒径(D50)1μm、白石カルシウム社製。
(注5)長石B:長石粒子、平均粒径(D50)70μm、白石カルシウム社製。
(注6)ホワイトモランダムWA8000:アルミナ粒子、平均粒径(D50)1.2μm、昭和電工社製。
(注7)モランダムA100:アルミナ粒子、平均粒径(D50)125μm、昭和電工社製。
(注8)ガラスフレークRCF140:鱗片状ガラス、中心粒径140μm、アスペクト比約70、日本板硝子社製。
(注9)サンマイド353N:ポリアミドアミン系硬化剤、活性水素当量270、エアープロダクツジャパン社製、固形分50%。
(注10)サンマイド270X:ポリアミドアミン系硬化剤、活性水素当量245、エアープロダクツジャパン社製、固形分70%。
【0043】
性能試験
上記の通り得られた各エポキシ系塗料組成物を用いて下記試験方法に従って試験を行なった。結果を表1に合わせて示す。
【0044】
塗装機磨耗性
エアレス塗装機(グラコ社製、エアーモーター式エアレスポンプ 圧縮比30:1)に容量4Lのホッパー、塗料用ホース(ホース径:3/8インチ、長さ:約5m)、エアレススプレーガン(「G7」、ワグナー社製)、およびエアレスチップ(「163−625」グラコ社製)を取り付け、ホッパーに上記で得た各エポキシ系塗料組成物を投入する。次に塗料圧を約12MPaになるように調整し、エアレススプレーガンの先端部分をホッパー内の塗料に浸し、エアレススプレーガンより塗料を吐出させる。これにより塗料を連続して30分間循環させる。塗料の循環終了後、エアレススプレーガンよりエアレスチップを取外して洗浄し、その吐出口の磨耗の状態を拡大鏡を用いて未使用のエアレスチップと比較しながら目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:ほとんど磨耗なし。
○:わずかに磨耗あるも実用の範囲。
△:少し磨耗があり、実用上少し問題がある。
×:かなり磨耗がある。
【0045】
耐衝撃性
サンドブラスト鋼板(150×70×2.3mm)に上記で得た各エポキシ系塗料組成物をエアレススプレーにて乾燥膜厚が約250μmとなるように塗装し、20℃×65%RHの雰囲気で4日間乾燥後、さらに40℃の雰囲気で3日間乾燥して各試験塗板を得た。得られた各塗板をJIS K 5600−5−3の規定に従って、デュポン式衝撃変形試験器にて20℃雰囲気で塗面を上側にし、半径6.35mmの撃ち型と受け台を用い、質量1kgの重りを50cmの高さから撃ち型の上に落下させる。これによって生じた試験片の衝撃変形による塗膜のつぶれ、割れ、剥離等の塗膜欠損状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:欠損はほとんどない。
○:わずかに欠損あるも実用の範囲。
△:少し欠損があり、実用上少し問題がある。
×:かなり欠損がある。
【0046】
耐スリ傷性
サンドブラスト鋼板(150×70×2.3mm)(試験板I)、該サンドブラスト鋼板上に「SDジンク100QD」(関西ペイント社製、エポキシジンクプライマー)を乾燥膜厚で約25μmとなるように塗装し1日乾燥してなる試験板(試験板II)、及び該サンドブラスト鋼板上に「エポマリンAC(M)」(NKMコーティングス社製、エポキシ防食塗料)を乾燥膜厚で約100μmとなるように塗装し1日乾燥してなる試験板(試験板III)を用意した。上記3種類の試験板について、各エポキシ系塗料組成物をエアレススプレーにて乾燥膜厚が約250μm及び乾燥膜厚が約100μmとなるように別々の板に塗装し、20℃×65%RHの雰囲気で4日間乾燥後、さらに40℃の雰囲気で3日間乾燥して各試験塗板を得た(各エポキシ系塗料組成物に対し6種類の試験板)。得られた各塗板を20℃雰囲気で塗面を上側にして図1に示すような耐スリ傷性試験機にセットする。このとき、図に示したスレートカッターの刃先の大きさは約0.25mm×0.25mmであり、塗面には約490MPa(4800kgf/cm)の圧力がかかることになる。この状態を保持したまま、該塗板を1cm/秒の速度で引き、塗面にスリ傷を発生させる。このスリ傷の状態を拡大鏡などを用いて目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:ごく浅いスリ傷。
○:膜の中ほどまでスリ傷あるも実用の範囲。
△:素地までは達しないが深いスリ傷があり、実用上少し問題がある。
×:素地に達するスリ傷。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】耐スリ傷性試験機の正面図である。
【図2】耐スリ傷性試験機の側面図である。
【符号の説明】
【0052】
1:重り(3Kg)
2:スレートカッター
3:各塗料組成物の塗膜
4:試験板(鋼板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)及びアミン系硬化剤(B)を含有するエポキシ系塗料組成物であって、エポキシ樹脂(A)とアミン系硬化剤(B)との合計固形分100質量部に対して長石粒子(C)を60〜400質量部、アルミナ粒子(D)を20〜200質量部及び鱗片状顔料(E)を10〜100質量部の範囲内で含有することを特徴とするエポキシ系塗料組成物。
【請求項2】
長石粒子(C)の平均粒径が1〜30μmの範囲内である請求項1に記載のエポキシ系塗料組成物。
【請求項3】
アルミナ粒子(D)の平均粒径が5〜100μmの範囲内である請求項1又は2に記載のエポキシ系塗料組成物。
【請求項4】
鱗片状顔料(E)が天然又は合成の雲母である請求項1〜3のいづれか一項に記載のエポキシ系塗料組成物。
【請求項5】
塗料組成物が、さらにキシレン樹脂を含有するものである請求項1〜4のいづれか一項に記載のエポキシ系塗料組成物。
【請求項6】
アミン系硬化剤(B)が、フェナルカミンをアミン系硬化剤中10〜90質量%の範囲内で含有するものである請求項1〜5のいづれか一項に記載のエポキシ系塗料組成物。
【請求項7】
金属素材上にプライマーを塗布、乾燥させた後、請求項1〜6のいづれか一項に記載のエポキシ系塗料組成物を乾燥膜厚が100〜500μmになるようにして塗布し、乾燥することを特徴とする耐傷つき性に優れた塗膜の形成方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいづれか一項に記載のエポキシ系塗料組成物よりなる被膜を有することを特徴とする塗装物品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−6884(P2010−6884A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165260(P2008−165260)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(501481724)NKMコーティングス株式会社 (7)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】