説明

エリスロマイシンをベースとするマクロライド

本発明は、式(I)の化合物に関する[式中、R、RおよびXは、本明細書中で定義される通りである]。本発明はまた、式(I)の化合物を使用した医薬組成物および細菌感染を治療する方法に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクロライド化合物ならびにヒトを包含する動物での抗菌剤および抗原虫剤としてのその使用に関する。本発明はまた、化合物を調製する方法、化合物の調製に有用な中間体および化合物を含有する医薬組成物に関する。本発明はさらに、治療を必要とする対象に化合物または組成物を投与することにより、疾患、例えば、細菌感染および/または原虫感染(または他の適応症、例えば、癌、炎症またはアテローム性動脈硬化症)を治療および/または予防する方法を包含する。
【背景技術】
【0002】
ケトライドを包含するマクロライドは、多くの場合に抗菌活性を有する群として一般に知られている。本発明に限らず、マイクロライドは、細菌リボソームのサブユニットに結合して、タンパク質合成阻害をもたらすと考えられている。したがって、少なくとも一般的に、エリスロマイシン、クラリスロマイシンおよび他のマクロライドの活性および作用機序は知られているが、本発明は、どのような理論に拘束されることも制限されることもない。
【0003】
エリスロマイシンおよびクラリスロマイシンは、よく知られているマクロライドである。例えば、米国特許第4331803号;米国特許第4474768号;米国特許第4517359号;米国特許第5523399号;米国特許第5527780号;米国特許第5635485号;米国特許第5804565号;米国特許第6020521号;米国特許第6025350号;米国特許第6075133号;米国特許第6162794号;米国特許第6191118号;米国特許第6248719号;米国特許第6291656号;米国特許第6437151号;米国特許第6472371号;米国特許第6555524号;米国特許出願公開第2002/0052328号;米国特許出願公開第2002/0061856号;米国特許出願公開第2002/0061857号;米国特許出願公開第2002/0077302号;米国特許出願公開第2002/0151507号;米国特許出願公開第2002/0156027号;米国特許出願公開第2003/0100518号;米国特許出願公開第2003/0100742号;米国特許出願公開第2003/0199458号;米国特許出願公開第2004/0077557号;米国特許出願公開第2006/0135447号;WO99/11651;WO99/21866;WO99/21869;WO99/35157;EP1114826;およびTanikawaら、J.Med.Chem.、46:2706〜2715(2003年)においての通り、エリスロマイシンをベースとする他のマクロライド化合物は、例えば、エリスロマイシンまたはクラリスロマイシンの様々な位置に修飾を導入することにより調製されている。追加の関連刊行物を本明細書の下記で挙げる。本明細書に挙げられているこれらの文献および全ての文献は、教示、修飾および様々な組合せでマクロライド環上の対象位置を修飾する方法を包含するあらゆる目的のために、参照により本明細書に十分に援用される。したがって、誘導体は、例えば、C−2、C−3、C−6、C−9、C−10、C−11、C−12およびC−13エリスロマイシン位置などでの修飾ならびに対応するアザリド誘導体を包含しうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
耐性生物の発生の高まりに応じて、他の理由の中でも特に、安全性を改善し、活性スペクトルを改善するために、ケトライドなどの新規のマクロライドが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ある種の式(I)の化合物、その調製および有用な中間体、その医薬組成物ならびにそれを用いて細菌感染を治療および予防する方法に関する。多くの実施形態では、化合物は、他のマクロライドを包含する他の抗生物質に耐性がある生物に対して活性であり、有効である。
【0006】
特に、本発明は、式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩に関する:
【0007】
【化1】

[式中、Rは、3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−イル、3−ヒドロキシ−[1,6]−ナフチリジン−4−イルおよび3−ヒドロキシ−[1,7]−ナフチリジン−4−イルからなる群から選択され、ここで、前記3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−イル、3−ヒドロキシ−[1,6]−ナフチリジン−4−イルおよび3−ヒドロキシ−[1,7]−ナフチリジン−4−イルは、(C〜C)アルキル、シクロプロピルおよびシクロブチルからなる群から選択される基により置換されていてもよく、
は、水素、メチルおよびエチルからなる群から選択され、
Xは、水素またはフッ素である]。
【0008】
一実施形態では、Rは、3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−イルである。他の実施形態では、Rは、3−ヒドロキシ−[1,6]−ナフチリジン−4−イルである。他の実施形態では、Rは、3−ヒドロキシ−[1,7]−ナフチリジン−4−イルである。
【0009】
一実施形態では、Rは、メチルにより置換されている。他の実施形態では、Rは、エチルにより置換されている。他の実施形態では、Rは、プロピルにより置換されている。他の実施形態では、Rは、シクロプロピルにより置換されている。他の実施形態では、Rは、シクロブチルにより置換されている。
【0010】
一実施形態では、Rは水素である。他の実施形態では、Rはメチルである。他の実施形態では、Rはエチルである。
【0011】
一実施形態では、Xは水素である。他の実施形態では、Xはフッ素である。
【0012】
一実施形態では、Rは3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−イルであり、Rは水素であり、Xは水素であるか、または薬学的に許容できるその塩である。
【0013】
具体的な式(I)の化合物の例には、
【0014】
【化2】

および薬学的に許容できるその塩が包含される。
【0015】
一実施形態では、式(I)の化合物は、
【0016】
【化3】

または薬学的に許容できるその塩である。
【0017】
他の実施形態では、式(I)の化合物は、
【0018】
【化4】

または薬学的に許容できるその塩である。
【0019】
他の実施形態では、式(I)の化合物は、
【0020】
【化5】

または薬学的に許容できるその塩である。
【0021】
他の実施形態では、式(I)の化合物は、
【0022】
【化6】

または薬学的に許容できるその塩である。
【0023】
他の実施形態では、式(I)の化合物は、
【0024】
【化7】

または薬学的に許容できるその塩である。
【0025】
他の実施形態では、式(I)の化合物は、
【0026】
【化8】

または薬学的に許容できるその塩である。
【0027】
他の実施形態では、式(I)の化合物は、
【0028】
【化9】

または薬学的に許容できるその塩である。
【0029】
他の実施形態では、式(I)の化合物は、
【0030】
【化10】

または薬学的に許容できるその塩である。
【0031】
他の実施形態では、式(I)の化合物は、
【0032】
【化11】

または薬学的に許容できるその塩である。
【0033】
本発明の一実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容できる塩は、フマル酸塩である。
【0034】
本発明の他の実施形態では、上記で示されている式(I)の化合物の具体的な構造の薬学的に許容できる塩は、フマル酸塩である。
【0035】
本発明はまた、式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物に関する。
【0036】
本発明はまた、哺乳動物における細菌感染を治療する方法に関し、これは、前記哺乳動物に、細菌感染を治療するのに有効な量の式(I)の化合物または薬学的に許容できる式(I)の化合物のその塩を投与することを含む。一実施形態では、細菌感染は、市中呼吸器感染症(RTI)、細菌性市中肺炎(CAP)、慢性気管支炎の急性憎悪(AECB)、副鼻腔炎および咽頭炎からなる群から選択される。他の実施形態では、細菌感染は市中呼吸器感染症(RTI)である。他の実施形態では、細菌感染は市中肺炎(CAP)である。他の実施形態では、細菌感染は慢性気管支炎の急性憎悪(AECB)である。他の実施形態では、細菌感染は副鼻腔炎である。他の実施形態では、細菌感染は咽頭炎である。
【0037】
本発明はまた、クラリスロマイシンに耐性がある細菌感染を治療する方法に関していて、これは、治療有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする哺乳動物対象に投与することを含む。
【0038】
本発明はまた、クラリスロマイシンに耐性があるStreptococcus pyogenesまたはStreptococcus pneumoniaeのうちの少なくとも1種による感染を治療する方法に関し、これは、治療有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする哺乳動物対象に投与することを含む。
【0039】
本発明はまた、S.pyogenes、S.pneumoniae、Haemophilus influenzaeまたはMoraxella catarrhalisのうちの少なくとも1種により誘発された感染を治療する方法に関し、これは、治療有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする哺乳動物対象に投与することを含む。
【0040】
本発明はまた、式(I)の化合物
【0041】
【化12】

または薬学的に許容できるその塩を製造する方法を対象とし、これは、式(VIII)の化合物
【0042】
【化13】

を式(IC)の化合物
【0043】
【化14】

と酸触媒および極性非プロトン性溶媒の存在下に反応させて、混和物を形成する第1のステップと、
前記混和物を還元剤で処理する第2のステップとを含む
[式中、Rは、3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−イル、3−ヒドロキシ−[1,6]−ナフチリジン−4−イルおよび3−ヒドロキシ−[1,7]−ナフチリジン−4−イルからなる群から選択され、ここで、前記3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−イル、3−ヒドロキシ−[1,6]−ナフチリジン−4−イルおよび3−ヒドロキシ−[1,7]−ナフチリジン−4−イルは、(C〜C)アルキル、シクロプロピルおよびシクロブチルからなる群から選択される基により置換されていてもよく、
は、水素、メチルおよびエチルからなる群から選択され、
Xは、水素またはフッ素である]。
【0044】
一実施形態では、前記酸触媒は、ピバル酸、イソ酪酸、2,2−ジメチルブタン酸および2−フェニルプロパン酸からなる群から選択され;前記極性非プロトン性溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルTHF、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトニトリルおよびその混合物からなる群から選択され;前記還元剤は、トリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム、シアノ水素化ほう素ナトリウムおよび金属触媒を伴う水素からなる群から選択される。一実施形態では、金属触媒は、炭素上のイリジウムまたは炭素上の白金から選択される。
【0045】
一実施形態では、前記酸触媒はピバル酸であり、前記還元剤はトリアセトキシ水素化ほう素ナトリウムである。
【0046】
本発明はまた、式(C)の化合物
【0047】
【化15】

を製造する方法を対象とし、これは、式(IX)の化合物
【0048】
【化16】

を式(X)の化合物
【0049】
【化17】

と塩基の存在下に反応させて、式(XI)の化合物
【0050】
【化18】

を製造する第1のステップと、
式(XI)の化合物を過ヨウ素酸ナトリウムと水中で反応させて、式(XII)の化合物
【0051】
【化19】

を形成する第2のステップと、
式(XII)の化合物をLiClまたはHCl中で反応させて、式(C)の化合物を形成する第3のステップとを含む。
【0052】
本発明は、例えば、細菌または原虫感染を抑制または治療(予防を包含する)するためにヒトまたは非ヒト動物体を治療する方法を包含し、これは、対象に、有用または有効量の本発明の化合物(生理学的に許容できるその塩または溶媒和物を包含し、組成物を包含する)を投与することを含む。
【0053】
本発明の化合物はまた、複数の状態または生物学的標的のために併用療法を達成するために、所望の通りに他の活性成分と組み合わせることができる。例えば、化合物を、他の抗感染剤または抗感染剤の有効性もしくは他の特性を高める薬剤、例えば、エフラックス阻害剤と組み合わせることができる。
【0054】
式(I)の化合物は、例えば、細菌感染などの障害を患っている患者を治療するために有用である。
【0055】
本明細書で使用される場合、「患者」との用語は、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシなどの哺乳動物を指す。一実施形態では、患者は、ヒトである。
【0056】
本発明の式(I)の化合物、医薬組成物および方法による治療に適している細菌感染には、これらに限られないが、S.pneumoniae、S.pyogenes、H.influenzaeおよびM.catarrhalisなどの幅広い病原体により誘発されるものが包含される。一実施形態では、式(I)の化合物は、S.pneumoniaeおよびS.pyogenesのマクロライド耐性分離株を治療するのに有用である。他の実施形態では、式(I)の化合物は、マクロライド耐性ブドウ球菌および連鎖球菌を治療するために有用である。さらなる実施形態では、式(I)の化合物は、Chlamydia pneumoniaeおよびMycoplasma pneumoniaeを治療するのに有用である。本発明の他の実施形態では、式(I)の化合物は、他の連鎖球菌(Lancefield群B、C、DおよびG)およびLegionella pneumophilaを治療するのに有用である。
【0057】
式(I)の化合物は、市中呼吸器感染症(RTI)を治療するために有用でありうる。式(I)の化合物は、S.pneumoniae、S.pyogenes、H.influenzaeおよびM.catarrhalisを包含する感受性および多剤耐性(MDR)の両方の、一般に市中で獲得される呼吸性病原体を治療する際に有用でありうる。
【0058】
本発明はまた、1種または複数の式(I)の化合物および少なくとも1種の追加の成分の任意の組合せを含む本発明の組成物(後記では、「本発明の組成物」)に関する。一実施形態では、本発明の組成物は、治療有効量の本発明の式(I)の化合物を含む。
【0059】
少なくとも1種の追加の成分の非限定的な例には、不純物(例えば、未精製の式(I)の化合物中に存在する中間体)、下記で検討される通りの活性剤もしくは薬剤(例えば、他の抗菌剤)、薬学的に許容できる賦形剤または1種もしくは複数の溶媒(例えば、本明細書で検討される通りの薬学的に許容できる担体)を包含する。
【0060】
それを必要とする患者(例えば、ヒト)に投与するために適している本発明の組成物はまた、本明細書では、「本発明の医薬組成物」とも称される。
【0061】
医薬組成物は、患者に投与するために適した任意の形態であってよい。例えば、医薬組成物は、経口投与では錠剤、カプセル、丸薬、粉剤、持続放出製剤、溶液、懸濁液など、非経口注射では無菌溶液、懸濁液もしくはエマルションとして、局所投与では軟膏もしくはクリームとして、または直腸投与では坐剤として適切な形態であってよい。医薬組成物は、正確な用量を1回投与するために適した単位投与形態であってよい。
【0062】
例示的な非経口投与形態には、無菌水溶液、例えばプロピレングリコールまたはデキストロース水溶液中の活性化合物の溶液または懸濁液が包含される。このような剤形は、望ましい場合には、適切に緩衝されていてよい。
【0063】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、経口剤形の形態であってよい。経口剤形の非限定的な例には、例えば、標準的な薬剤実施に従った咀嚼錠剤、カプセル、丸薬、ロゼンジ、トローチ、サシェ、粉剤、シロップ、エリキシル、液剤および懸濁剤などが包含される。
【0064】
他の実施形態では、本発明の医薬組成物はまた、経鼻胃管を介して、患者の胃腸管に直接送達することもできる。
【0065】
錠剤、丸薬、カプセルなどは、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン、アカシアゴム、トラガカントゴムまたはトウモロコシデンプンなどの結合剤;微結晶セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、グリシンおよびデンプンなどの充填剤;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、アルギン酸、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウムおよびある種の複合体ケイ酸塩などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクなどの滑剤;ならびにスクロースラクトースまたはサッカリンなどの甘味剤から選択される賦形剤を含有してもよい。投与単位形態がカプセルである場合、これは、上記のタイプの物質に加えて、脂肪油などの液体担体を含有してもよい。様々な他の物質が、コーティングとして、または投与単位の物理的形態を調節するために存在してよい。例えば、錠剤を、シェラック、糖またはその両方でコーティングすることができる。
【0066】
小児用経口懸濁剤およびサシェの場合には、これらの賦形剤は、キサンタンガムまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの懸濁化助剤、コロイドシリカなどの流動促進剤、二酸化ケイ素などの希釈剤および充填剤、バブルガム、オレンジ、バナナ、ラズベリーおよびゴールデンシロップまたはその混合物などの香料、アスパルテームまたは糖などの甘味剤ならびにコハク酸などの安定剤を含んでよい。小児用懸濁製剤およびサシェなどの粉剤または顆粒製剤は、医薬製剤の製造分野およびこのような懸濁剤に再構成するための無水製剤の製造において一般的に慣用である技術を使用して製造することができる。例えば、適切な技術は、無水粉末化または顆粒化成分を混合することである。
【0067】
式(I)の化合物を、一実施形態では、ヒトにおける呼吸器、外科、中枢神経系、胃腸、尿生殖器、婦人科、皮膚および軟部組織ならびに眼感染および市中肺炎などの様々な院内および市中感染(後記では「感染」)を治療するために使用することができる。
【0068】
一実施形態では、感染は、慢性気管支炎の急性憎悪、副鼻腔炎、中耳炎、脳膿瘍、咽頭炎、髄膜炎、非併発性/併発性尿路感染、腎盂腎炎、院内肺炎、市中肺炎、外科的予防、非併発性/併発性皮膚および皮膚構造感染、腹腔内感染、前立腺炎、産科および婦人科感染、骨関節感染、糖尿病性足ならびに菌血症からなる群から選択される。
【0069】
他の実施形態では、感染は、併発性/非併発性尿路感染、併発性皮膚および皮膚構造感染、糖尿病性足感染、市中肺炎、院内肺炎、腹腔内感染ならびに産科および婦人科感染からなる群から選択される。
【0070】
特定の一実施形態では、感染は中耳炎である。他の特定の実施形態では、感染は併発性皮膚および皮膚構造感染である。
【0071】
投与される式(I)の化合物の最小量が、治療有効量である。「治療有効量」との用語は、哺乳動物、例えば、ヒトにおける細菌感染の発症を予防し、その症状を緩和し、その進行を止め、かつ/または除去する化合物の量を意味する。
【0072】
典型的には、成人での本発明の式(I)の化合物の有効な一日用量(即ち、約24時間にわたる全用量)は、式(I)の化合物約200mgから約6000mgであり;他の実施形態では、有効な一日用量は、約800mgから約6000mgであり;他の実施形態では、有効な一日用量は、約800mgから約4000mgである。この一日用量を、約1週間から約2週間の期間にわたって投与する。場合によっては、これらの範囲外の用量を使用することが必要なこともある。
【0073】
本発明の式(I)の化合物を、1種または複数の追加の医薬品または薬剤(「追加の活性剤」)と組み合わせて投与することができる。式(I)の化合物を追加の活性剤と組み合わせるこのような使用は、同時か、別々か、または連続使用であってよい。
【0074】
一実施形態では、追加の活性剤は、抗菌剤である。有用な抗菌剤の非限定的な例には:ペニシリン(例えば、アモキシリンおよびアンピシリン)、セファロスポリン(例えば、セフィピム、セフジトレンピボキシル(Spectracef(登録商標))、セファロシン、セファクロルまたはセフィキシムなどのβ−ラクタム;スルバクタム、クラブラン酸、タゾバクタムおよびピペラシリン−タゾバクタム(Zosyn(登録商標))などの□−ラクタマーゼ阻害剤および□−ラクタム/□−ラクタマーゼ阻害剤の組合せ;アジスロマイシン、エリスロマイシンまたはクラリスロマイシンなどのマクロライド;ならびにノルフロキサシン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン(Levaquin(登録商標))、モキシフロキサシン(Avelox(登録商標))またはエノキサシンなどのフルオロキノロンが包含される。追加の抗菌剤の他の非限定的な例は、WalshおよびWright、Chemical Reviews 105(2):391〜394(2005年);およびBushら、Current Opinion in Microbiology 7:466〜476(2004年)で見ることができる。
【0075】
マクロライド抗生物質が、抗炎症作用を示す通り(例えば、Scaglioneら、Journal of Antimicrobial Chemotherapy、41、Supplement B:47〜50(1998年)およびIanaroら、The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 292:156〜163(2000年)参照)、式(I)の化合物の他の有望な使用には、関節リウマチを包含する炎症性疾患における免疫応答の減衰が包含されうる。この抗炎症作用での作用機序は明らかでないが、最近の証拠により、エンドソームコンパートメントのpHを上昇させるヒドロキシクロロキンなどの薬剤は、いくつかのToll様受容体(TLR)シグナル伝達を阻害しうることが示唆されている。マクロライドもまた、この特性を有し、そのままで、TLR7、8または9アンタゴニストとして有用であろうことが考えられる(Kyburzら、Nature Clinical Practice Rheumatology 2:458〜459(2006年))。
【0076】
一実施形態では、1種または複数の追加の活性剤を、使用する場合には、式(I)の化合物を投与する前に投与する。他の実施形態では、1種または複数の追加の活性剤を、使用する場合には、式(I)の化合物を投与した後に投与する。他の実施形態では、1種または複数の追加の活性剤を、使用する場合には、式(I)の化合物の投与とほぼ同時に投与する。
【0077】
追加の活性剤は、前記の追加の活性剤を投与するために有用な任意の経路により投与することができる。
【0078】
一実施形態では、1種または複数の追加の活性剤は、本発明の医薬組成物中に存在する。したがって、他の実施形態では、本発明は、1種または複数の追加の活性剤をさらに含む本発明の医薬組成物で患者を治療する方法に関する。
【0079】
本明細書中のいずれの段落見出しおよび小見出しも、読者の簡便さのためにあり、非限定的であることを理解されたい。例えば、発明の概要の内容は、この段落におけるその配置の単なる結果としての特別な状況を有さない。
【0080】
別段に示されていない限り、本文献で使用される言語および用語は、該当する当業者に理解される通り、その最も広い合理的な解釈を与えられるべきである。加えて、対象(例えば、所定の分子位置での置換)は、可能な群から選択されると述べられている明細書および請求項では、記述は、述べられている群の任意のサブセットを包含することが特に意図されている。変化しうる位置または置換基が複数ある場合には、基の任意の組合せまたは変化しうるサブセットもまた、企図される。
【0081】
別段に述べられていない限り、次の略語は次の意味を有する:「mmol」は「ミリモル」を意味し、「mol」は「モル」を意味し、「GCMS」は「ガスクロマトグラフ質量分析計」を意味し(本明細書では全ての試料を、Agilent Technologies 5975 GCMSでランさせた)、「室温」は「周囲温度」を意味し、「QD」は「1日1回」を意味し、「Ac」は「アセチル」を意味し、「AUC」は「曲線下面積」を意味し、「Ph」は「フェニル」を意味し、「Bz」は「ベンゾイル」を意味し、「CBZ」は「ベンジルオキシカルボニル」を意味し、「CDI」は「カルボニルジイミダゾール」を意味し、「DBU」は「1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン」を意味し、「DCM」または「CHCl」は「ジクロロメタン」を意味し、「DMAP」は「ジメチルアミノピリジン」を意味し、「DMF」は「ジメチルホルムアミド」を意味し、「DMF/DMA」は「N,N−ジメチルホルムアミド ジメチルアセタール」を意味し、「DMSO」は「ジメチルスルホキシド」を意味し、「EDC」は「1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドヒドロクロリド」を意味し、「EtOAc」は「酢酸エチル」を意味し、「EtOH」は「エタノール」を意味し、「HCl」は「塩酸」を意味し、「IPE」は「ジイソプロピルエーテル」を意味し、「MeCN」は「アセトニトリル」を意味し、「MeOH」は「メタノール」を意味し、「MIC」は「最小発育阻止濃度」を意味し、「MS」は「質量分析法」を意味し(本明細書では全ての試料を、LCMS−エレクトロスプレー(アセトニトリル、水、ギ酸混合物を使用する勾配溶離)またはプローブAPCI法により分析した)、「NaHCO」は「炭酸水素ナトリウム」を意味し、「NaSO」は「硫酸ナトリウム」を意味し、「NHOH」は「28〜30%の濃水酸化アンモニウム水溶液」を意味し、「NMR」は「核磁気共鳴分光法」を意味し(本明細書では全ての試料を、400MHzで、Varian装置でランさせた)、「TEA」は「トリエチルアミン」を意味し、「THF」は「テトラヒドロフラン」を意味する。
【0082】
本明細書で使用される場合、「(C〜C)アルキル」との用語は、1から3個の炭素原子の直鎖または分枝鎖(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル)基を指す。
【0083】
本明細書で使用される場合、「ジヒドロクロリド」との用語は、「約2当量のHCl」を意味する。
【0084】
本明細書で別段に述べられていない限り、エリスロマイシンをベースとするマクロライド炭素は、下記で示されるナンバリング規則により同定される:
【0085】
【化20】

別段で明らかであるか、示されていない限り、本発明の化合物および請求項中の「化合物」との用語は、文脈中で特に述べられていてもいなくても、任意の薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物および任意の非晶質もしくは結晶形態または互変異性体を包含する。同様に、記述は、述べられている化合物を含有する任意の物質または組成物に対してオープンである(例えば、化合物のラセミ混合物の塩、互変異性体、エピマー、立体異性体、不純な混合物などを含有する組成物)。
【0086】
式(I)の化合物は、非溶媒和および溶媒和された形態で存在することができる。したがって、本発明の化合物はまた、下記で検討される通りの水和物および溶媒和物形態を包含することが理解されるであろう。
【0087】
本発明の組成物に関する「溶媒」との用語には、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、塩化メチレンおよびテトラヒドロフラン)ならびに水が包含される。1種または複数の溶媒が、非化学量論的な量で、例えば、痕跡量の不純物として、または本発明の化合物を溶解するために十分な過剰で存在してよい。別法では、1種または複数の溶媒が、化学量論的量、例えば、本発明の化合物の量に対して0.5:1、1:1または2:1のモル比で存在してよい。
【0088】
「溶媒和物」との用語は、本明細書では、溶媒と溶質との非共有結合もしくは容易に可逆性の組合せ、または分散手段および分散相を記載するために使用されている。溶媒和物は、固体、スラリー(例えば、懸濁液または分散液)または溶液の形態であってよいことが理解されるであろう。溶媒の非限定的な例には、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトニトリル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、塩化メチレンおよび水が包含される。「水和物」との用語は、前記溶媒が水である場合に使用される。
【0089】
有機水和物に関して現在認められている分類体系は、孤立サイトまたはチャネル水和物を定義する分類体系である。K.R.Morrisによる「Polymorphism in Pharmaceutical Solids」(H.G.Brittain編、Marcel Dekker、1995年)参照。孤立サイト水和物は、その水分子が、有機分子の介在により、相互の直接的な接触から孤立している水和物である。チャネル水和物では、水分子は、格子チャネル内に存在し、他の水分子に隣接している。
【0090】
溶媒または水が十分に結合していると、複合体は、湿度とは独立に、十分に定義される化学量論を有するはずである。しかしながら、チャネル溶媒和物および吸湿性化合物においてのように、溶媒または水の結合が弱い場合、水/溶媒含分は、湿度および乾燥状態に左右される。このようなケースでは、非化学量論が標準となる。
【0091】
「薬学的に許容できる塩」との用語には、本明細書で使用される場合、別段に示されていない限り、化合物中に存在しうる酸性または塩基性基の塩が包含される。元々塩基性である化合物は、様々な無機および有機酸と共に幅広い様々な塩を形成しうる。このような塩基性化合物の薬学的に許容できる酸付加塩を調製するために使用することができる酸は、非毒性酸付加塩を形成するものである。化合物は例えば、硫酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、トシル酸塩、コハク酸塩、ベシル酸塩、メシル酸塩、乳酸塩および塩酸塩を形成することができる。塩基性塩は、一塩基性または二塩基性であってよい。好ましい一実施形態では、塩は、フマル酸塩である。
【0092】
本発明の化合物を使用する状況で本明細書で使用される場合、別段に示されていない限り、「治療する」、「治療」および「治療すること」との用語は、このような用語が適用される障害もしくは状態またはそのような障害もしくは状態の1種もしくは複数の症状の進行を反転、緩和、阻害するか、またはそれらを部分的または完全に予防することを意味している。「予防すること」は、感染が生じる前に治療することを意味する。
【0093】
「医薬組成物」との用語は、対象に有効に投与するために適した任意の形態の活性化合物、例えば、化合物および少なくとも1種の薬学的に許容できる担体の混合物を指す。
【0094】
「薬学的に許容できる担体」との用語は、対象に、化合物と一緒に医薬組成物中で投与することができる物質を指す。担体は、化合物の薬理学的活性を損なうべきでなく、化合物の治療量を送達するために十分な用量で投与される場合に非毒性であるべきである。
【0095】
「賦形剤」との用語は、医薬組成物または経口薬物剤形をもたらすために式(I)の化合物と共に組み合わされる不活性物質を意味する。「薬学的に許容できる賦形剤」との用語は、その賦形剤が、組成物の他の成分と相容性であるべきであり、その受容者に有害でないことを意味する。薬学的に許容できる賦形剤は、所定の剤形をベースに選択される。
【0096】
本発明の化合物は、不斉中心を有し、したがって、様々な鏡像異性およびジアステレオ異性形態で存在しうる。本発明は、あらゆる光学異性体および立体異性体ならびにあらゆる比のその混合物ならびにそれらを使用または含有することができるあらゆる医薬組成物および治療方法を包含する。本出願に例示されている具体的な化合物を、特定の立体化学配置で図示することができるが、任意のキラル中心で反対の立体化学を有する化合物またはその混合物もまた、考えられる。前記は、混合物として、または任意の程度まで任意の成分で濃縮されていてよい。ある位置での立体化学が明示されていない場合、任意の割合の配置または混合物が包含されることが意図されている。
【0097】
本発明の化合物には、薬学的に許容できるその誘導体またはプロドラッグが包含される。「薬学的に許容できる誘導体またはプロドラッグ」は、受容者に投与すると、本発明の化合物またはその代謝産物または残基を提供(直接か、または間接に)することができる化合物の任意の薬学的に許容できる塩、エステル、エステルまたは他の誘導体の塩を意味する。本発明の特に好ましい誘導体およびプロドラッグは、このような化合物が患者に投与された場合に化合物の生物学的利用率を高めるか(例えば、経口投与化合物が、血中により有効に吸収されるようにすることにより)、親化合物から所定の生物学的コンパートメントへの送達を増強するか、注射により投与することができるように溶解性を高めるか、代謝を変更するか、または排出率を変更するものである。
【0098】
式(I)の化合物は、多形性を示すことがある。式(I)の多形化合物は、本発明の化合物を様々な条件下に結晶化させることにより調製することができる。例えば、様々な溶媒(水を包含)または様々な溶媒混合物を再結晶化;様々な温度での結晶化;結晶化の際の非常に急速なものから非常に緩徐なものまである様々な様式の冷却のために使用することができる。多形をまた、本発明の化合物を加熱または溶融し、続いて、徐々に、または迅速に冷却することにより得ることができる。多形の存在は、固体プローブNMR分光法、IR分光法、示差走査熱分析、粉末X線回折または他のこのような技術により決定することができる。
【0099】
本発明は、1個または複数の水素、炭素または他の原子がその異なる同位体により置き換えられている化合物を包含する。このような化合物は、代謝薬物動態研究および結合アッセイにおける研究および診断ツールとして有用でありうる。これらの同位体標識された化合物は、式(I)の化合物と同一であるが、実際には、1個または複数の原子が、自然に優勢に存在する原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子により置き換えられている。本発明の化合物に導入することができる同位体の例には、これらに限られないが、それぞれH、H、13C、14C、15N、18O、17Oおよび35Sなどの水素、炭素、窒素、酸素およびイオウの同位体が包含される。これらの原子の上記の同位体および/または他の同位体を含有する本発明の式(I)の化合物は、本発明の範囲内である。ある種の同位体標識された式(I)の化合物、例えば、Hおよび14Cなどの放射性同位体が導入されているものは、薬物および/または基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム、即ち、Hおよび炭素−14、即ち14C同位体が、その調製の容易さおよび検出性により特に好ましい。さらに、ジュウテリウム、即ちHなどの同位体での置換は、比較的大きい代謝安定性、例えば、長いin vivo半減期または低い用量要求から生じるある種の治療的利点をもたらすことができ、したがって、場合によっては好ましいことがある。非同位体標識試薬を容易に利用可能な同位体標識試薬に代えて、下記のスキームおよび/または実施例に開示されている手順を実施することにより、本発明の同位体標識された化合物を通常は調製することができる。
【0100】
「保護基」との用語は、官能基に結合させることができ、後の段階で、そのままの官能基を現すために除去することができる適切な化学基を指す。様々な官能基のための適切な保護基の例が、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第2版、John Wiley and Sons(1991年および後の版);L.FieserおよびM.Fieser、「Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis」、John Wiley and Sons(1994年);およびL.Paquette編、「Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis」、John Wiley and Sons(1995年)に記載されている。本明細書で使用される場合、「ヒドロキシ保護基」との用語は、別段に示されていない限り、Greeneで言及されている基を包含する当業者に熟知されているAc、Bzおよび様々なヒドロキシ保護基を包含する。
【0101】
下記に示す実施例および調製で、本発明の化合物およびそのような化合物を調製する方法をさらに説明および図示する。本発明の範囲は、次の実施例および調製の範囲により何ら制限されないことを理解されたい。
【0102】
本明細書中、上記および下記の特許、特許出願、刊行物、試験方法、文献および他の材料は全て、その全体が参照により本明細書に援用される。
【発明を実施するための形態】
【0103】
上述の通り、一実施形態では、本発明は、上記の通りの式(I)の化合物および薬学的に許容できるその塩に関する。式(I)の化合物を、発明の概要では構造的に、本発明の他の箇所では、読者の簡便さのために描写している。式(I)の化合物は、C−11位での絶対立体化学が(R)であるクラリスロマイシンと同じ立体化学を有することも理解されたい。式(I)の化合物を構造的に描写する別の方法は
【0104】
【化21】

である。
【0105】
一般的な調製方法
本発明の化合物は、非限定的な本明細書の記載、スキームおよび実施例に従って、当業者の知識と組み合わせて調製することができる。
【0106】
【化22】

【0107】
スキーム1は、式(I)の化合物に達するために使用される合成スキームを図示している。エリスロマイシンおよびクラリスロマイシンは知られていて、市販されており、本発明の化合物を調製するための適切な出発物質である。例えば、米国特許第2,653,899号;米国特許第2,823,203号;米国特許第4,331,803号参照。当分野でよく知られている方法を使用して、クラリスロマイシンを2’および4”(II)で、DCM、THFまたはトルエンなどの溶媒中、TEAなどの塩基の存在下およびDMAPなどの活性化剤または触媒の存在下、ほぼ室温で、約2時間から24時間、2当量の無水酢酸と反応させることなどにより保護することができる。次いで、11−デオキシ−2’,4”−ジアセチル−10,11−ジデヒドロ−12−O−((1H−イミダゾール−1−イル)−カルボニル)−6−O−メチル−エリスロマイシンA(III)を、(II)を約3から5当量のCDIと反応させることにより調製することができる。例えば、Bakerら、J.Org.Chem.、53:2340〜2345(1988年)参照。反応を、MeCN、THF、IPE、DMFまたはその混合物などの非プロトン性溶媒中、約2から5当量のDBUなどの塩基の存在下、約25から40℃で、約2から12時間実施することができる。(III)を、1−ベンズヒドリル−アゼチジン−3−イルアミン(下記の調製A参照)または2007年3月8日公開のWO2007/026207に記載されている他の同様の化合物などの「リンカー」と反応させて、(IV)を製造する。反応は典型的には、DBU、Huenig塩基、トリエチルアミンなどのアミン塩基およびアセトニトリル、THF、DMFなどの非プロトン性溶媒を25〜80℃の温度で2から16時間使用する。次いで、C−3位のクラジノース部分を、25〜40℃で酸性加水分解することにより除去して、(V)を得る。この反応のための標準的な条件は、エタノール中のHCl水溶液であるが、しかしながら、例えば、HCl水溶液、THF/HCl水溶液、アセトン/HCl水溶液などを伴うイソプロパノールまたは1−プロパノールなどの、他の条件もまた使用することができる。これに続いて、アルコールをケトンに酸化させて、(VI)を形成する。これは、N−クロロスクシンイミド(NCS)および硫化ジメチルをCHCl中で使用するか、または当業者に知られている他の酸化条件を使用して達成することができる。
【0108】
次いで、メタノール中、25℃から還流温度で反応させることにより、保護基Acを除去して、(VII)を形成する。次いで、炭素上の触媒Pdまたは炭素上のPd(OH)を水素圧下に、20〜80℃で使用して、ベンズヒドリル基を除去し、(VIII)を形成する。(VIII)、3−デスクラジノシル−11,12−ジデオキシ−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−(オキシカルボニル−(アゼチジン−3−イル)−イミノ)−エリスロマイシンAジヒドロクロリドの合成は、調製Bに記載されている。アゼチジンマクロライドを用いるアルデヒドでの還元的アミノ化(またはアルキルハロゲン化物でのアルキル化)などの当業者に知られている方法を使用して、最終ステップを達成し、式(I)の化合物を得る。還元的アミノ化は、例えば、ピバル酸、イソ酪酸、2,2−ジメチルブタン酸、2−フェニルプロパン酸および他のヒンダード(hindered)カルボン酸などの酸触媒の存在下、THF、2−メチルTHF、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトニトリルなどの極性非プロトン性溶媒中で実施することができる。アゼチジンマクロライドおよびアルデヒド(またはケトン)を混合し、場合によって、酸触媒で処理し、反応で生じた水を共沸により除去する。次いで、反応混合物を、トリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム(NaBH(OAc))またはシアノ水素化ほう素ナトリウムなどの還元剤で、MeCNまたは他の同様の溶媒(例えば、THF、EtOAcなど)中で処理して、式(I)の化合物を得る。頂部は、当業者に知られている方法を使用して、ガイドとして調製Cに記載されている例示の3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒド合成を使用して調製することができる。別法では、非保護頂部と同じ方法で、アゼチジンマクロライドを、ヒドロキシ保護されている頂部に直接結合させることができる。例えば、3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒドのピバル酸エステル(その合成は調製Dに記載されている)を、スキーム1の最終ステップの間に、3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒドの代わりに使用することができる。
【0109】
【化23】

スキーム2は、C−2位でフッ素化されている式(I)の化合物の製法を図示している。これは、(VI)を水素化ナトリウム、カリウムジイソプロピルアミドまたはリチウムヘキサメチルジシラジドなどの塩基と、DMFなどの溶媒中、約−50から−30℃で、約10から30分間反応させて、C−2炭素でアニオン/エノラートを初めに生じさせることにより、C−2位置で(VI)をフッ素化して、(VI)Bを製造することにより行う。次いで、このアニオンを、Selectfluor(登録商標)などの電気陽性フッ素化剤を包含する様々な求電子試薬と反応させることができる。(VI)Bを製造した後に、スキーム1に関して記載されたのと同じ手順を使用して、式(I)の化合物に達することができる。
【0110】
次の化合物は、式(I)の化合物を調製する際の有用な中間体である。
【0111】
調製A
1−ベンズヒドリル−アゼチジン−3−イルアミン:
メタンスルホン酸1−ベンズヒドリル−アゼチジン−3−イルエステル(14.8g、47mmol、Oakwood Products)を無水DMF(60mL)に溶かし、この溶液に、アジ化ナトリウム(9.0g、138mmol)を加えた。混合物を18時間加熱し(80℃)、室温に冷却し、次いで、水(20mL)および飽和NaHCO水溶液(20mL)で処理した。生じた混合物をDCM(4×60mL)で抽出し、有機層をNaSO上で乾燥させた。溶媒を除去すると、粗製のオイル(11g)が得られ、これを、THF(85mL)に再び溶かし、トリフェニルホスフィン(15g、57mmol)で処理した。室温で撹拌した後に(30分;ガス発生および多少の発熱が認められた)、混合物を還流に加熱し(6時間)、次いで、室温に再び冷却し、その後、NHOH(7mL)を加え、再び還流させた(5時間)。室温に冷却した後に、溶媒を除去し、残渣を3NのHCl(35mL)で処理すると、pH1が得られた。生じた酸性溶液をDCM(3×50mL)で抽出し、有機層を廃棄した。次いで、水性層を固体の水酸化カリウムでpH10まで塩基性にし、次いで、DCM(3×75mL)で再び抽出した。次いで、水性層を、固体の塩化ナトリウムで飽和させ、DCM(3×75mL)で再抽出した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮すると、粗製の1−ベンズヒドリル−アゼチジン−3−イルアミン(9.0g、37.8mmol)が得られた。MS(ESI+):m/z (M+H)239。
【0112】
調製B
3−デスクラジノシル−11,12−ジデオキシ−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−(オキシカルボニル−(アゼチジン−3−イル)−イミノ)−エリスロマイシン A ジヒドロクロリド(VIII)(スキーム1のステップ1〜5):
ステップ1:DBU(10mL、67mmol)を、無水MeCN(100mL)に溶けている1−ベンズヒドリル−アゼチジン−3−イルアミン(9.0g、37.8mmol)に室温で加えた。この溶液に、11−デオキシ−2’,4”−ジアセチル−10,11−ジデヒドロ−12−O−((1H−イミダゾール−1−イル)−カルボニル)−6−O−メチル−エリスロマイシンA(III)(32.5g、35.8mmol)を加え、生じた混合物を7.5時間加熱し(50℃)、次いで、室温で一晩撹拌した。白色の沈澱物を濾過により集めた(21g、19.5mmol)。濾液を約25mLに濃縮し、その後、水(20mL)、飽和NaHCO水溶液(30mL)を加え、生じた混合物をDCM(50mL)で抽出した。有機層を飽和NaHCO水溶液で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、真空下に濃縮して、黄褐色の泡(IV)にした。MS(ESI+):m/z 540(M/2+H)
【0113】
ステップ2:ステップ1からの生成物をEtOH(100mL)および2NのHCl(100mL)に溶かし、3時間加熱し(40℃)、次いで、30℃に冷却し、一晩撹拌した。生じた混合物を真空下に濃縮し、浴を28℃で維持して、元の体積のほぼ半分にした。生じた濃縮液に、DCM(100mL)を加え、続いて、固体の炭酸カリウムを慎重に加えて、水性層を塩基性にした(pH10に)。有機層を分離し、水性層をDCM(3×100mL)で再び抽出した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させ、白色の泡(V)に濃縮した。MS(ESI+):m/z 440(M/2+H)
【0114】
ステップ3a:ステップ2からの粗製の生成物を、無水DCM(200mL)に再び溶かした。これに、無水DMSO(20mL、282mmol)、トリフルオロ酢酸ピリジニウム(15g、77.7mmol)を、最後にEDC(30g、156.5mmol)を加えた。混合物を室温で3時間撹拌し、次いで、飽和NaHCO水溶液(30mL)および水(30mL)で処理した。反応混合物を、分離漏斗に入れ、層を数時間分離した。水性層をDCM(3×75mL)で再び抽出し、合わせた有機層を水(50mL)で洗浄した。有機層をNaSO上で乾燥させた後に、溶媒を真空下に除去すると、黄色の泡(VI)が得られた。MS(ESI+):m/z 439(M+H)
【0115】
ステップ4:ステップ3aからの黄色の泡を、MeOH(200mL)に再び溶かし、24時間加熱し(50℃)、次いで、真空下に乾燥するまで濃縮した。この固体物質を、ヘキサン/ジエチルエーテル(2/1)ですすぎ、MeOH(50mL)で処理し、生じたスラリーを、蒸気浴上で沸点まで加熱し、次いで、室温に冷却した。生じた白色の固体(VII)を濾過し、真空下に乾燥させた(10.5g、12.6mmol、4つのステップ全体で収率35%)。MS(ESI+):m/z 418(M/2+H)H NMR(CDCl)δ 7.41(m,4H)、7.21(m,4H)、7.16(m,2H)、4.88(br d,1H)、4.60(s,1H)。
【0116】
次のステップ3bは、ステップ3aおよび4の代わりに使用することができる別の経路である。
【0117】
ステップ3b:NCS(9.94g、74.5mmol)をDCM(175mL)に溶かし、生じた溶液を−10℃に冷却した。硫化ジメチル(5.09g、81.9mmol)を加え、その間、温度を−10℃未満に維持した。生じた混合物を−10℃で1時間撹拌した。ジクロロメタン(175mL)中の中間体(V)(35g、37.2mmol)(ここで、BzをAcの代わりに使用した)を−10℃で、徐々に導入したが、その間、反応温度を−10℃未満に維持した。生じた混合物を−10℃で1時間撹拌した。トリエチルアミン(5.92mL、42.4mL)を徐々に加え、温度を−10℃以下に再び維持した。−10℃以下で1時間撹拌した後に、反応を飽和NaHCO水溶液350mLおよびDCM(350mL)にクエンチした。有機層を分離し、飽和NaHCO水溶液(350mL)で洗浄し、僅かに撹拌可能な体積(約100mL)まで濃縮した。残りのDCMをメタノール(最終メタノール体積350mL)に代えた。生じた混合物をメタノール中、還流で12時間加熱し、約100mLまで濃縮した。混合物を5℃に冷却し、濾過した。生成物(VII)を濾過により集めると、20.5g(24.6mmol、収率66%)が得られた。
【0118】
ステップ5:ステップ4からの白色の固体をMeOHに溶かし、濃HCl水溶液(2.4mL、28mmol)で処理した。これに、Pearlman触媒(炭素上の水酸化パラジウム、20重量%のPd、約6g)を加えた。スラリーを濾過した。濾液に、Pearlman触媒(炭素上の水酸化パラジウム、10重量%のPd、約3g)を加え、スラリーを水素ガス(40から50psi)に、圧力反応器中でさらし、その間、2時間まで加熱した(35℃〜45℃)。圧力反応器を室温に冷却し、窒素でパージし、触媒を濾別した。濾液を真空下に濃縮して、より小さな体積(約50mL)にし、THF(約200mL)を加えた。溶液を、残りの水およびメタノールが除去されるまで濃縮し(GC−ヘッドスペースおよびカールフィッシャー試験でそれぞれ確認)、最終体積として60mLまでさらに濃縮した。生じたスラリーを10℃で最低2時間顆粒化し、濾過した。集められた固体を完全真空下に乾燥させると、表題化合物(14g)(VIII)が得られた。MS(ESI+):m/z 335(M/2+H)H NMR(CDOD)δ 4.71〜4.59(m,2H)、4.48(br t,1H)、4.33(d,1H)、4.27(d,1H)、4.16(br t,1H)。
【0119】
調製C
3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒド:
【0120】
【化24】

【0121】
ステップ1(エナミン形成):[(E)−2−(3−メトキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−イル−ビニル]−ジメチル−アミン
【0122】
【化25】

オーバーヘッド撹拌機、還流凝縮器、内部温度プローブ、加熱ジャケットおよび窒素入口/出口を備えた250mL丸底フラスコに、3−メトキシ−4−メチル−[1,5]−ナフチリジン(10.01g、57.46mmol)、DMF(100mL、10体積)、DMF/DMA(13.73g、115.22mmol)およびカリウムtert−ブトキシド(3.23g、28.78mmol)を充填し、撹拌しながら120℃で20時間加熱した。反応混合物をGCMSによりサンプリングすると、4%の出発物質および96%の生成物を含有することが判明した。次いで、混合物を65℃に冷却し、完全真空下に蒸留して、約50mLにした。この混合物をステップ2の酸化へ持ち越した。分析試料を、混合物を濾過することにより得た。H−NMR(CDCl,400MHz)δ 8.824(1H,dd,J=4.14,2.07Hz)、8.604(1H,s)、8.315(1H,d,J=13.69Hz)、8.207(1H,dd,J=8.71,2.07Hz)、7.434(1H,dd,J=8.29,3.73Hz)、6.209(1H,d,J=13.69Hz)、4.083(3H,s)、3.022(6H,s)。
【0123】
ステップ2(過ヨウ素酸ナトリウム酸化):3−メトキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒド
【0124】
【化26】

オーバーヘッド撹拌機、還流凝縮器、内部温度プローブおよび窒素入口/出口を備えた250mL丸底フラスコに、過ヨウ素酸ナトリウム(24.7g、115.48mmol)の水(150mL)中のスラリーを充填した。ステップ1でのエナミン形成からの生成物混合物(約50mL溶液、理論13.16g、エナミン57.40mmol)を、過ヨウ素酸塩スラリーに充填すると、20℃から50℃の発熱が生じた。溶液は初めに紫色に変わり、次いで、赤/茶色に変わった。反応混合物を25℃に冷却し、2時間撹拌し、次いで、GCMSにより完了に関してサンプリングした。分析により、出発物質は残っておらず、生成物は、混合物の82%を占めることが示された。固体を濾別し、ケークをEtOAc(200mL)で洗浄した。相を分離し、水/DMF層をEtOAc(3×200mL)で抽出した。次いで、合わせた有機層をMgSO上で乾燥させ、濾過し、真空下に濃縮して(40℃、60mbar)、茶色の固体にした。次いで、粗製生成物をEtOAc(30mL)に戻し入れ、−10℃で再結晶化させた。固体を濾別し、冷EtOAc(5mL)で洗浄し、乾燥させると、所望の生成物(5.34g、28.4mmol、49%)が得られた。H−NMR(CDCl,300MHz)。δ 11.352(1H,s)、9.094(1H,s)、9.051(1H,dd,J=4.36,1.86Hz)、8.425(1H,dd,J=8.41,1.55Hz)、7.613(1H,dd,J=8.41,4.05Hz)、4.246(3H,s)。
【0125】
ステップ3(脱メチル化):3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒド
ステップ2からの生成物(50g、0.266mol)をフラスコ中で、LiCl(11.3g)、DMF(200mL)と合わせ、還流で20時間加熱した。反応混合物を真空下に蒸留して、元のDMF体積のほぼ半分にした。次いで、水(250mL)を(リチウム塩、着色剤および不純物が水に溶けていた)、続いて、MeOH(1000mL)を加え、生成物を沈澱させると、表題化合物27.7g(収率60%)が得られた。H−NMR(DO,400MHz)δ 10.045(1H,s)、8.54〜8.46(1H,m)、8.46〜8.40(1H,m)、8.319(1H,s)、7.56〜7.46(1H,m)。
【0126】
調製D
4−ホルミル−1,5−ナフチリジン−3−イルピバレート
【0127】
【化27】

フラスコに、ヒドロキシアルデヒドナフチリジン(10g、1.0当量)、THF(100mL)、トリエチルアミン(1当量)および塩化ピバロイル(1当量)を室温で加えた。反応を1時間撹拌した。反応混合物をセライトで濾過し、THF(20mL)ですすいだ。濾液およびすすぎ液を合わせ、僅かに撹拌可能な体積までストリッピングした。ヘプタン(200mL)を加え、混合物を還流に加熱した。反応混合物を85℃に冷却し、温濾過した。フラスコをすすぎ、温ヘプタン(100mL)で濾過した。濾液およびすすぎ液を合わせ、約100mLまでストリッピングした。混合物を氷浴で冷却し、生成物を晶出させた。生成物を濾過し、ヘプタン(20mL)ですすぎ、真空下に乾燥させ、単離すると、表題化合物9.6g(65%)が得られた。H−NMR(CDCl,400MHz)δ 11.32(1H,s)、9.08(1H,dd,J=4.15,1.66Hz)、8.85(1H,s)、8.50(1H,dd,J=8.29,1.66Hz)、7.73(1H,dd,J=8.71,4.15Hz)、1.47(9H,s)。13C−NMR(CDCl)δ 27.32、39.60、124.48、127.73、137.77、142.39、142.47、143.64、149.00、152.41、176.39、191.20。
【実施例】
【0128】
本発明を、次の非限定的な実施例によりさらに説明する。
【0129】
(実施例1)
3−デスクラジノシル−11,12−ジデオキシ−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−(オキシカルボニル−(1−((3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−イル)メチル)−アゼチジン−3−イル)−イミノ)−エリスロマイシンAフマラート
【0130】
【化28】

3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒド(10g、57.6mmol)および3−デスクラジノシル−11,12−ジデオキシ−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−(オキシカルボニル−(アゼチジン−3−イル)−イミノ)−エリスロマイシンAジヒドロクロリド(41g、55.3mmol)をTHF(410mL)中で合わせ、次いで、TEA(21.9mL、157mmol)を加えた。混合物を30分間撹拌し、続いて、ピバル酸(21.4g、210mmol)を加えた。混合物を還流に加熱し、大気圧下での濃縮により、溶媒約600mLを除去して、水の完全な除去を保証した(追加の無水THF400mLを濃縮の間に加えた)。次いで、混合物を20〜25℃に冷却し、トリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム(55.5g、262mmol)、アセトニトリル(164mL)および酢酸エチル(1230mL)を含有する反応フラスコに、20〜25℃で撹拌下に移した。30分間撹拌した後に、5%の炭酸水素ナトリウム水溶液(205mL)を加えた。層を分離した。水性層を酢酸エチル(205mL)で抽出した。合わせた有機相を無水硫酸マグネシウム(41g)で処理し、次いで、活性炭素(10.3g)を加えた。混合物を濾過し、フマル酸(4.26g、36.7mmol)を加えた。生じた混合物を最低48時間撹拌した。生成物を濾過により集め、真空下に35℃で乾燥させると、表題化合物28.72g(55.1%)が得られた。LCMS:陽イオンスキャン:414(M/2+1)、827(M+1)。H NMR(400MHz,CDOD):[選択ピークのみ]δ 8.88(m,1H);8.67(s,1H);8.30(dd,J=2,9Hz,1H);7.54(m,1H);6.66(s,2H,フマラートオレフィン);2.79(s,6H);2.59(s,3H);0.98(d,J=7Hz,3H);0.85(t,J=7Hz,3H)。
【0131】
(実施例2)
3−デスクラジノシル−11,12−ジデオキシ−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−(オキシカルボニル−(1−((3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−イル)−メチル)−アゼチジン−3−イル)−イミノ)−エリスロマイシンA(遊離塩基)
3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒド(11g、63mmol)を無水アセトニトリル(1400mL)に3L三つ口丸底フラスコ中で溶かし、続いて、トリエチルアミン(44mL、316mmol)および粉末化分子ふるい(47g、4オングストローム)を加えた。混合物を機械的に50℃で30分間撹拌し、続いて、3−デスクラジノシル−11,12−ジデオキシ−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−(オキシカルボニル−(アゼチジン−3−イル)−イミノ)−エリスロマイシンAジヒドロクロリド(46.8g、63.2mmol)を加えた。生じた混合物を50℃でさらに1時間撹拌し、この時間の後に、室温に冷却し、40分間にわたって当量で少量ずつ加えられるトリアセトキシ水素化ほう素ナトリウム(67g、316mmol)で慎重に処理した。生じた混合物を室温で一晩撹拌した。続いて、セライト(50g)およびMeOH(800mL)を反応混合物に加え、固体を、セライトを予め充填された粗いガラス漏斗での濾過により除去し、MeOH(約4L)で複数回すすいだ。有機濾液を回転蒸発器で濃縮して、より小さい体積(約200mL)にし、ジクロロメタン(400mL)で希釈し、ビーカーに移し、水(300mL)で処理し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(300mL)で慎重に処理した。続いて、生じた溶液を分離漏斗に移し、ジクロロメタン(5×600mL、圧力上昇を回避するために慎重に)で抽出した。有機抽出物を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、真空中で乾燥するまで濃縮すると、粗製生成物(56g)が茶色の固体として得られた。次いで、この固体をジクロロメタンに溶かし、酢酸エチル/MeOH/濃水酸化アンモニウム水溶液(89/10/1)で定組成溶離して、シリカゲルクロマトグラフィー処理すると、多少の着色された不純物が除去され、濃縮されたフラクションが達成された。濃縮されたフラクションを真空乾燥させ、ジクロロメタンに再び溶かし、次いで、シリカゲルで、溶媒A(酢酸エチル)および溶媒混合物B(酢酸エチル/MeOH/濃水酸化アンモニウム水溶液、各比は89/10/1)の勾配溶離を使用して、溶媒A100%で出発して、溶媒Aと溶媒Bとの95/5の比で終了して、再び精製した。これは、精製された表題化合物約23gを遊離塩基としてもたらした。LCMS:陽イオンスキャン:414(M/2+1)、陰イオンスキャン:825(M−1)、H NMR(400MHz,CDCl):[選択ピークのみ]δ 8.79(m,1H);8.59(s,1H);8.22(dd,J=2,8Hz,1H);7.37(m,1H);4.87(br d,1H);4.70(m,2H);4.25(t,J=8Hz,2H);2.65(s,3H);2.23(s,6H);0.98(d,J=7Hz,3H);0.82(t,J=7Hz,3H)。
【0132】
次の実施例3から10は、当業者であれば、本明細書に記載の方法を使用して、同様に調製することができる。
【0133】
(実施例3)
3−デスクラジノシル−11,12−ジデオキシ−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−(オキシカルボニル−(1−((3−ヒドロキシ−[1,6−]ナフチリジン−4−イル)−メチル)−アゼチジン−3−イル)−イミノ)−エリスロマイシンAフマラート
【0134】
【化29】

実施例1に記載の手順と同じであるが、同様に製造することができる3−ヒドロキシ−[1,6]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒドを、3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒドの代わりに使用。
【0135】
(実施例4)
3−デスクラジノシル−11,12−ジデオキシ−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−(オキシカルボニル−(1−((3−ヒドロキシ−[1,7]−ナフチリジン−4−イル)−メチル)−アゼチジン−3−イル)−イミノ)−エリスロマイシンAフマラート
【0136】
【化30】

実施例1に記載の手順と同じであるが、同様に製造することができる3−ヒドロキシ−[1,7]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒドを、3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒドの代わりに使用。
【0137】
(実施例5)
3−デスクラジノシル−11,12−ジデオキシ−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−(オキシカルボニル−(1−((3−ヒドロキシ−8−メチル−[1,5]−ナフチリジン−4−イル)−メチル)−アゼチジン−3−イル)−イミノ)−エリスロマイシンAフマラート
【0138】
【化31】

実施例1に記載の手順と同じであるが、同様に製造することができる3−ヒドロキシ−8−メチル−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒドを、3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒドの代わりに使用。
【0139】
(実施例6)
3−デスクラジノシル−11,12−ジデオキシ−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−(オキシカルボニル−(1−((3−ヒドロキシ−6−メチル−[1,5]−ナフチリジン−4−イル)−メチル)−アゼチジン−3−イル)−イミノ)−エリスロマイシンAフマラート
【0140】
【化32】

実施例1に記載の手順と同じであるが、同様に製造することができる3−ヒドロキシ−6−メチル−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒドを、3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒドの代わりに使用。
【0141】
(実施例7)
3−デスクラジノシル−11,12−ジデオキシ−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−(オキシカルボニル−(1−((3−ヒドロキシ−7−メチル−[1,5]−ナフチリジン−4−イル)−メチル)−アゼチジン−3−イル)−イミノ)−エリスロマイシンAフマラート
【0142】
【化33】

実施例1に記載の手順と同じであるが、同様に製造することができる3−ヒドロキシ−7−メチル−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒドを3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒドの代わりに使用。
【0143】
(実施例8)
3−デスクラジノシル−11,12−ジデオキシ−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−(オキシカルボニル−(1−((3−ヒドロキシ−2−メチル−[1,5]−ナフチリジン−4−イル)−メチル)−アゼチジン−3−イル)−イミノ)−エリスロマイシンAフマラート
【0144】
【化34】

実施例1に記載の手順と同じであるが、同様に製造することができる3−ヒドロキシ−2−メチル−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒドを、3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒドの代わりに使用。
【0145】
(実施例9)
2−フルオロ−3−デスクラジノシル−11,12−ジデオキシ−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−(オキシカルボニル−(1−((3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−イル)−メチル)−アゼチジン−3−イル)−イミノ)−エリスロマイシンAフマラート
【0146】
【化35】

実施例1を製造するために記載された手順と同じであるが、スキーム2に従って、中間体(VI)のC−2を初めにフッ素化し、(VIII)Bを3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−カルボアルデヒドにカップリング。
【0147】
(実施例10)
3−デスクラジノシル−11,12−ジデオキシ−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−(オキシカルボニル−(1−(1−(3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−イル)−エチル)−アゼチジン−3−イル)−イミノ)−エリスロマイシンAフマラート
【0148】
【化36】

2006年6月29日公開のWO2006/067589に記載の実施例1.25のための調製28と同様であるが、1−(3−ヒドロキシ)−[1,5]−ナフチリジン−4−イル−エタノンを、1−[1,8]−ナフチリジン−4−イル−エタノンの代わりに使用。
【0149】
生物学的特性
式(I)の化合物は、単独で、または他の抗菌剤と組み合わせて、細菌感染を予防および/または治療するために有用である。
【0150】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、幅広いスペクトルの抗菌活性を示し、かつ/または様々な該当する感染株に対して有効である。例えば、標準的なマイクロタイターブロス連続希釈試験を使用すると、本発明の化合物は、耐性株を包含するStaphylococcus aureus、S.pneumoniae、M.catarrhalis、S.pyogenesおよびH.influenzaeの株を包含する幅広い病原性微生物に対して有用なレベルの活性を示すことが判明している。したがって、本発明の化合物は、例えば、ヒトおよび動物において病原性細菌により誘発される様々な疾患を治療および/または予防するために使用することができる。
【0151】
ermA、ermBまたはermCの呼称を有する遺伝子を含有する細菌株は、一部のマイクロライド、リンコサミドおよびストレプトグラミンB抗生物質に対して、3種全ての抗生物質群のメンバーによる結合を通常は減衰するErmメチラーゼによる23SrRNA分子の変異(メチル化)によって耐性である。マクロライドエフラックス遺伝子を含有する他の株もまた、記載されている。例えば、msrAは、一部のマクロライドおよびストレプトグラミンの蓄積を妨げるstaphylococciにおけるエフラックス系の成分をコードする一方で、mefA/Eは、マクロライドのみをエフラックスすると思われる膜貫通タンパク質をコードする。2’−ヒドロキシル(mph)のリン酸化によるか、大環状ラクトンの分解(エステラーゼ)により、マクロライド抗生物質の不活性化が生じ、媒介されうる。「AcrAB」または「AcrAB様」は、固有多剤エフラックスポンプが株に存在することを示している。
【0152】
細菌および原虫病原体に対する活性は、規定の病原体株の増殖を阻害する化合物の能力により証明することができる。本明細書に記載のアッセイは、特性決定されているマクロライド耐性機構の代表を包含する様々なターゲット病原体種を包含するように集められた細菌株のパネルを包含する。スクリーニングパネルを含む細菌病原体を下記の表に示す。多くの場合に、マクロライド感受性親株およびそれに由来するマクロライド耐性株を、耐性機構を回避する化合物の能力のより正確な評価を得るために利用することができる。アッセイを、マイクロタイタートレイで行い、The Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)ガイドラインにより刊行されたMethods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria that Grow Aerobically;Approved Standard−Seventh Edition(M7−A7)and Performance Standards for Antimicrobial Susceptibility Testing;17th Informational Supplement(M100−S17)に従って解釈し;MICを使用して、株を比較する。化合物を、DMSOに40mg/mlストック溶液として初めに溶かした。
【0153】
【表1】

【0154】
表1は、鍵となる呼吸性病原体に対する実施例1ならびに比較薬物のエリスロマイシンおよびテリスロマイシンの抗菌活性を証明するin vitroデータを列挙している。マクロライドを、短期療法(<10日)で軽症から中程度症状の市中肺炎のために、および≦5日間、慢性気管支炎の急性増悪、副鼻腔炎、急性中耳炎および扁桃炎/咽頭炎のために使用する。この群での鍵となる病原体には、S.pneumoniae、S.pyogenes、H.influenzaeおよびM.catarrhalisが包含される。これらの鍵となる病原体に対する実施例1および比較剤のためのMIC(範囲、MIC50、MIC90)を下記に示す。実施例1は、テリスロマイシンに匹敵するS.pneumoniaeのマクロライド耐性株(ermB、mefAおよびermB/mefA)に対するin vitro活性を有する。mefAを含有するS.pyogenes株に対する実施例1の活性は、テリスロマイシンの活性と同様である。しかしながら、ermB含有S.pyogenes分離株に対するMIC90を比較すると、実施例1は、テリスロマイシンに対して16倍の改善を示した。82のテリスロマイシン感受性H.influenzae株に対する実施例1およびテリスロマイシンのMIC90は、両方とも4μg/mLであった。12のテリスロマイシン中間H.influenzae分離株に対して評価すると、実施例1およびテリスロマイシンのMIC90は、両方とも8μg/mLであった。M.catarrhalisに対しては、実施例1のin vitro活性は、テリスロマイシンの活性よりもやや良好である(それぞれ、0.06μg/mLと、0.25μg/mLのMIC90)。
【0155】
【表2】

【0156】
非定型肺炎病原体に対する実施例1のin vitro活性
マクロライド群抗生物質は、M.pneumoniae、L.pneumophila、Mycobacterium aviumおよびC.pneumoniaeを包含する非定型病原体として分類される生物により誘発される肺炎のために選択される療法である。表2は、これらの種(L.pneumophila)のうちの1種に対する実施例1のin vitro活性プロファイルを示している。実施例1は、L.pneumophilaの10の分離株に対してアジスロマイシンおよびテリスロマイシンと同等の活性を証明した。
【0157】
【表3】

【0158】
一部の実施形態では、本発明の化合物を、マクロライド耐性または多剤耐性細菌株に対して使用することができる。例えば、一部の実施形態では、本発明の化合物は、ermBなどのメチル化ベースの耐性を包含する耐性S.pyogenes株に対して好ましい活性を示す。したがって、本発明は、このような好ましい特性を利用する化合物の使用を包含する。
【0159】
ヒト肝臓代謝およびCYP3A阻害のin vitro評価
本発明の式(I)の化合物は、ヒト肝臓代謝およびCYP3A阻害のin vitro評価により決定される通り、かなり望ましい代謝特性を有する。
【0160】
3−ヒドロキシ置換類似体(実施例1)は、2006年6月29日公開のWO2006/067589でそれぞれ実施例1.26および1.106として開示されている非置換(比較例A)または3−臭素置換(比較例B)類似体に比較して、低いヒト肝臓ミクロソーム(HLM)除去率(ER)を証明した。ヒト肝臓ミクロソーム除去率は、化合物が薬物代謝酵素、特に、ヒト肝臓でのシトクロムP450によりどれほど迅速に代謝させるかの指標である。実施例1は、比較例AおよびBよりも低い除去率を有するので、ヒトにおいてより低いクリアランスを示し、したがって、同じ有効性に必要な用量は、より低いことが予測されるであろう。結果を、下記の表3中、「HLM ER」と名付けられた欄に示す。
【0161】
実施例1はまた、下記の表3に示されているより高いK値により証明される通り、非置換(比較例A)または臭素置換(比較例B)類似体よりも、シトクロムP450 3A(CYP3A)に対して低い親和性を証明した。CYP3Aは、ヒト肝臓における主要な薬物代謝酵素であり、全薬物の推定50%の代謝を触媒する。CYP3Aの阻害は、薬物−薬物相互作用をもたらしうる。多くの市販のマクロライド/ケトライドは、CYP3Aの時間依存性阻害剤である。時間依存性阻害(TDI)を、ヒト肝臓ミクロソームおよびCYP3A活性のためのプローブ物質(ミダゾラム)を使用してin vitroで評価した。低いK値および/または高いkinact値を有する試験化合物は、CYP3Aに対してより高い親和性を有し、これにより、薬物−薬物相互作用に関してより大きな可能性を有する。表3に示されている通り、[1,5]−ナフチリジン(実施例1)の3位での水酸化は、非置換(比較例A)または臭素置換(比較例B)類似体よりも、CYP3A TDIアッセイにおいてKの約10倍の上昇をもたらした。実施例1で観察された高いKは、比較例AおよびBよりも、同時投与されたCYP3A基質での曲線下面積(AUC)において、低い予測倍率変化(fold change)をもたらす。
【0162】
【表4】

【0163】
次のアッセイ手順を使用して、HLM ER(ヒト肝臓ミクロソーム除去率)およびCYP3A時間依存性阻害を、本発明の式(I)の化合物の代表的な実施例および2種の比較例で決定した。
【0164】
ヒト肝臓代謝およびCYP3A阻害をin vitro評価するためのアッセイ手順
HLM ER:(ヒト肝臓ミクロソーム除去率)。このアッセイにより、NADPH依存性酸化代謝によるヒト肝臓ミクロソーム系での期間にわたる化合物のクリアランスを測定する。これらのデータを使用して、所定の化合物でのヒト肝臓代謝クリアランスを推定する。結果は、0.32から0.99の範囲でありうる。<0.32の値は、アッセイの下限を表し、低いクリアランス化合物を示すはずである。0.33から0.70の範囲の値は、中程度のクリアランスを示し、>0.70の値は、高いクリアランスを示す。
【0165】
アッセイ手順:マクロライド試験化合物を、最終濃度1μMで、ヒト肝臓ミクロソーム(最終CYP濃度=0.50μM)中、0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH=7.4)中、37℃で、10mMの塩化マグネシウム(MgCl)と共にインキュベーションした。反応混合物を37℃で5分間予備インキュベーションし、その後、βニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸還元型四ナトリウム塩(NADPH)(1.0mM)を加えた。インキュベーション混合物のアリコートを0、5、10、20、30および45分目に取り出した。アリコートを、アセトニトリル含有内部標準中でクエンチした。試料を遠心分離し、生じた上澄みを液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS/MS)により、各試験化合物のために最適化された複数反応監視を使用するSciex API4000で分析した。試験化合物のピーク面積応答と内部標準のピーク面積応答との比を使用して、消失の速度を算出した。
【0166】
自然対数(LN)基質濃度(ピーク面積比、薬物/内部標準)をインキュベーション時間に対してプロットし、正確な一次減衰曲線を得ることができるデータを使用して回帰線(k)の傾斜を決定することにより、各インキュベーションでの一次消失速度定数を決定した。予測肝臓クリアランス(CL)および除去率を、次の式に従って算出した。
【0167】
【化37】

除去率(ER)=CL/Q
[式中、定数は、次の通りであった:
肝臓重量=21g/kg[ヒト]
インキュベーション中のミクロソームタンパク質=1.52mg/mL
肝臓タンパク質=45mg/g[ヒト]
肝臓血流(QH)=20mL/分/kg[ヒト]]。
【0168】
CYP3A時間依存性阻害:このアッセイにより、予備インキュベーション時間依存的にCYP3Aを阻害する試験化合物の能力を測定する。最も市販されているマクロライドおよびケトライドは、CYP3Aの時間依存性阻害剤であり、CYP3A基質で薬物−薬物相互作用をもたらしうる特性である。このアッセイにより、CYP3A(K)を阻害する試験化合物の効力およびCYP3Aの不活性化の速度(kinact)を測定する。これら2種のパラメーターを、試験化合物の推定ヒト有効濃度と組み合わせて使用して、ヒトにおける薬物−薬物相互作用の可能性を予測することができる。
【0169】
アッセイ手順:一次インキュベーション:貯留されたヒト肝臓ミクロソーム(0.5μMの最終CYP濃度)を、NADPH再生系[β−NADP−Na(0.54mM)、MgCl(11.5mM)、dl−イソクエン酸(6.2mM)およびイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(0.5単位/mL)含有]の存在下に、100mMのKHPO、pH7.4中、37℃で、開放空気下に、0.7mLの全体積で予備インキュベーションした。5分後に、試験化合物(DMSO中の100×ストック:最終濃度0、1、5、10、50または100μMを得る)のアリコート(7μL)を加えた。一次インキュベーション混合物のアリコート(36μL)を0、5、10、20および30分目に取り出し、下記で記載される通りの二次インキュベーションに移した。
【0170】
二次インキュベーション:ミダゾラム(最終30μM)およびNADPH再生系(一次インキュベーションのために上記される通り)を含有する二次インキュベーションを、100mMのKHPO、pH7.4中、37℃で、開放空気下に、0.7mLの全体積で三重に実施した。一次インキュベーション混合物36μLを加えることにより、反応を開始し、全反応時間4分間でインキュベーションした。反応速度は、4分の反応時間、0.025μMのCYP濃度で直線であることが予め確認されていた。4分の反応時間の後に、反応混合物100μLを、内部標準を伴う氷冷アセトニトリル300μLでクエンチした。アセトニトリル溶液をボルテックス処理し、遠心分離し、生じた上澄みを1’−ヒドロキシミダゾラム形成に関して、複数反応監視を伴うSciex API4000を使用するLC/MS/MSによりアッセイした。分析物(1’−ヒドロキシミダゾラム)のピーク面積応答と内部標準のピーク面積応答の比を、定量のために使用した。
【0171】
予備インキュベーション時間の関数としての1’−ヒドロキシミダゾラムの形成および試験化合物濃度を決定した。ゼロ予備インキュベーション時間で形成された1’−ヒドロキシミダゾラムの量を100パーセントに設定することにより、データを、残存活性パーセントに変換した。残存活性パーセントの自然対数(Ln)を、各試験可能物濃度で、予備インキュベーション時間の関数としてプロットし、各濃度での不活性化速度(kobs)を、残存活性パーセント曲線の直線部の傾斜を算出することにより決定した。次いで、kobs対濃度のプロットを生じさせ、Kおよびkinactパラメーターを、3−パラメーター双曲線フィッティングプログラム(SigmaPlot v 8.0)を使用するプロットの非線形回帰により算出した。in vivo CYP3A活性に対する時間依存性阻害の作用の推定を、Mayhewら、Drug Metab Dispos.、28(9):1031〜7(2000年)により記載された通り、in vitro Kおよびkinactパラメーターを次の定常式に導入することにより評価した。
【0172】
【化38】

【0173】
用語は、下記の通りに定義される。
【0174】
AUCinh/AUC(「AUCにおける予測倍率変化としても知られている)は、CYP3A代謝により専ら除去される同時投与薬物に関する、阻害剤の存在下での血漿濃度−時間曲線下の面積(AUCinh)と、阻害剤の不在下でのAUCとの比である。
【0175】
degは、CYP3Aの推定in vivo分解速度定数を表す。0.0005分−1の値(t1/2約23時間)を使用する。
【0176】
inactは、in vitroで決定された不活性化の最大速度を表す。
【0177】
は、in vitroで決定された最大不活性化の50%をもたらす阻害剤濃度を表す。
【0178】
[I]は、in vivoでの阻害剤の推定遊離定常平均濃度を表す。[I]の値は、0.17μMで推定され、これは、ケトライドでの推定有効未結合定常平均濃度である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩:
【化1】

[式中、Rは、3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−イル、3−ヒドロキシ−[1,6]−ナフチリジン−4−イルおよび3−ヒドロキシ−[1,7]−ナフチリジン−4−イルからなる群から選択され、ここで、前記3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−イル、3−ヒドロキシ−[1,6]−ナフチリジン−4−イルおよび3−ヒドロキシ−[1,7]−ナフチリジン−4−イルは、(C〜C)アルキル、シクロプロピルおよびシクロブチルからなる群から選択される基により置換されていてもよく、
は、水素、メチルおよびエチルからなる群から選択され、
Xは、水素またはフッ素である]。
【請求項2】
が3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−イルである、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【請求項3】
が3−ヒドロキシ−[1,6]−ナフチリジン−4−イルである、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【請求項4】
が3−ヒドロキシ−[1,7]−ナフチリジン−4−イルである、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【請求項5】
前記3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−イル、3−ヒドロキシ−[1,6]−ナフチリジン−4−イルおよび3−ヒドロキシ−[1,7]−ナフチリジン−4−イルが、メチルにより置換されている、請求項1から4に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【請求項6】
が水素である、請求項1から5に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【請求項7】
がメチルである、請求項1から5に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【請求項8】
【化2】

からなる群から選択される化合物または薬学的に許容できるその塩。
【請求項9】
【化3】

である、請求項8に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩。
【請求項10】
請求項1から9に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
【請求項11】
哺乳動物における細菌感染を治療する方法であって、前記哺乳動物に、細菌感染を治療するのに有効な量の請求項1から9に記載の式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩を投与することを含む方法。
【請求項12】
ストレプトコッカス・ポジェンス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・ニューモニアエ(Streptococcus pneumoniae)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)またはモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)のうちの少なくとも1種により誘発される感染を治療する方法であって、治療有効量の請求項1から9に記載の式(I)の化合物または薬学的に許容できるその塩を、それを必要とする哺乳動物対象に投与することを含む方法。
【請求項13】
式(I)の化合物
【化4】

または薬学的に許容できるその塩を製造する方法であって、式(VIII)の化合物
【化5】

を式(IC)の化合物
【化6】

と酸触媒および極性非プロトン性溶媒の存在下に反応させて、混和物を形成する第1のステップと、
前記混和物を還元剤で処理する第2のステップとを含む方法
[式中、Rは、3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−イル、3−ヒドロキシ−[1,6]−ナフチリジン−4−イルおよび3−ヒドロキシ−[1,7]−ナフチリジン−4−イルからなる群から選択され、ここで、前記3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−イル、3−ヒドロキシ−[1,6]−ナフチリジン−4−イルおよび3−ヒドロキシ−[1,7]−ナフチリジン−4−イルは、(C〜C)アルキル、シクロプロピルおよびシクロブチルからなる群から選択される基により置換されていてもよく、
は、水素、メチルおよびエチルからなる群から選択され、
Xは、水素またはフッ素である]。
【請求項14】
3−デスクラジノシル−11,12−ジデオキシ−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−(オキシカルボニル−(1−((3−ヒドロキシ−[1,5]−ナフチリジン−4−イル)−メチル)−アゼチジン−3−イル)−イミノ)−エリスロマイシンAフマラート。
【請求項15】
式(C)の化合物
【化7】

を製造する方法であって、式(IX)の化合物
【化8】

を式(X)の化合物
【化9】

と塩基の存在下に反応させて、式(XI)の化合物
【化10】

を製造する第1のステップと、
式(XI)の化合物を過ヨウ素酸ナトリウムと水中で反応させて、式(XII)の化合物
【化11】

を形成する第2のステップと、
式(XII)の化合物をLiClまたはHCl中で反応させて、式(C)の化合物を形成する第3のステップとを含む方法。

【公表番号】特表2010−521448(P2010−521448A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553232(P2009−553232)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【特許番号】特許第4468487号(P4468487)
【特許公報発行日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/IB2008/000715
【国際公開番号】WO2008/110918
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】