説明

エレクトレット及びエレクトレットに有用な化合物

熱可塑性樹脂、及び式Y−A(R−Y(I)の化合物を包含するエレクトレット濾材であって、式中、Aはベンゼン、ナフタレン、又はアントラセンであり、Y及びYはそれぞれ独立してR−Rであり、Rはエステル連結基又はアミド連結基であり、Rは10〜22個の炭素原子を有するアルキル基であり、RはR−Rであり、ここで、R及びRはそれぞれ独立して上記に定義された通りであり、並びにAがベンゼンであるとき、nは0〜4であり、Aがナフタレンであるとき、nは0〜6であり、及びAがアントラセンであるとき、nは0〜8である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトレットを調製すること、及び樹脂添加剤を用いて熱可塑性フィルムの剥離特性を向上させることに関する。
【背景技術】
【0002】
不織布高分子繊維ウェブの濾過特性は、ウェブをエレクトレット、すなわち半永久的な電荷を示す誘電体に変換することによって改善することができる。エレクトレットはエアゾールフィルターにおける粒子捕捉を向上させるのに有効である。エレクトレットは、例えば、エアフィルター、フェイスマスク、及びレスピレータ(respirator)を包含する種々の装置において、及びマイクロホン、ヘッドホン、及び静電記録装置のような電気音響装置における静電素子として、有用である。
【0003】
エレクトレットは現在、直流(「DC」)コロナ帯電(例えば、米国再発行特許第30,782号(バン・テュルンハウト(van Turnhout))参照)、及びハイドロチャージ(hydrocharging)(例えば、米国特許第5,496,507号(アンガドジバンド(Angadjivand)ら)参照)を包含する種々の方法によって製造されており、一部のエレクトレットの繊維を製造するために使用される溶融物中にフッ素性化学物質を組み込むことによって(例えば、米国特許第5,025,052号(クレーター(Crater)ら)参照)、及びプラズマフッ素化により(例えば、米国特許第6,397,458号(ジョーンズ(Jones)ら)参照)改善することができる。
【0004】
エレクトレットフィルターが接触する粒子及び汚染物質の多くは、ウェブの濾過能力を阻害する。液体エアゾール、例えば、特に油性のエアゾールは、エレクトレットフィルターがエレクトレットにより向上された濾過効率を失う原因となる傾向がある(例えば、米国特許第5,411,576号(ジョーンズ(Jones)ら)参照)。加えて、熱及び経年が一部のエレクトレットフィルターの濾過効率を損う可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エレクトレットフィルターの濾過効率の損失を補うために多くの取り組みが考案されてきた。エレクトレットフィルターの効率を改善するための1つの方法として、ウェブの層を付加すること又はエレクトレットフィルターの厚さを増大させることにより、エレクトレットフィルター中の不織布高分子ウェブの量を増大させることが挙げられる。追加のウェブは、しかしながら、エレクトレットフィルターの呼吸抵抗を増大させ、エレクトレットフィルターに重量及び嵩を付加し、及びエレクトレットフィルターのコストを増大させる。
【0006】
油性のエアゾールに対するエレクトレットフィルターの耐性を改善するための別の方法としては、フルオロケミカルオキサゾリジノン類、フルオロケミカルピペラジン類、及びペルフルオロアルカン類のような溶融加工可能なフルオロケミカル添加剤(例えば、米国特許第5,025,052号(クレーター(Crater)ら)、ペルフルオロ部分を包含する樹脂からエレクトレットフィルターを形成することが挙げられる。フッ素性化学物質は溶融加工可能であり、すなわち、一部のエレクトレットの繊維ウェブにおいて使用されるマイクロファイバーを形成するのに使用される溶融加工条件下で実質的に分解の恐れがない(PCT国際公開特許WO97/07272(ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチャリング(Minnesota Mining and Manufacturing))参照)。熱的に安定な有機トライジン(traizine)化合物類もまた、エレクトレットフィルターの帯電を改善するために使用されてきた(例えば、米国特許第5,908,598号(ルソー(Rousseau)ら)及び同第6,002,017号(ルソーら)参照)。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、本発明は、熱可塑性樹脂、及び式、Y−A(R−Y(I)の化合物を包含する繊維を有する繊維ウェブを包含するエレクトレット濾材を特徴とし、式中、Aはベンゼン、ナフタレン、又はアントラセンであり、Y及びYはそれぞれ独立してR−Rであり、Rはエステル連結基又はアミド連結基であり、Rは10〜22個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、RはR−Rであり、ここで、R及びRはそれぞれ独立して上記に定義された通りであり、並びにAがベンゼンであるとき、nは0〜4であり、Aがナフタレンであるとき、nは0〜6であり、及びAがアントラセンであるとき、nは0〜8である。一実施形態では、Aはベンゼンである。一部の実施形態では、Rは、−CONH、−NHCO、−OCO、又は−COOである。他の実施形態では、Rは12〜22個の炭素原子を有するアルキル基である。別の実施形態では、nは1である。
【0008】
一部の実施形態では、nは1であり、並びにR、Y、及びYは互いにメタ位に位置する。他の実施形態では、nは0であり、並びにY及びYは互いにパラ位に位置する。
【0009】
他の実施形態では、Aはナフタレンである。
【0010】
他の実施形態では、Rは12〜22個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0011】
一部の実施形態では、nは0であり、Yはナフタレン上の2位に位置し、及びYはナフタレン上の6位に位置している。別の実施形態では、nは1である。
【0012】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス−オクタデシルアミド、p−フェニレンジステアリルアミド、ジステアリル−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(naphthalenedicarboyxlate)、及び2,6−ナフタレンジステアラミドから成る群から選択される。
【0013】
別の実施形態では、熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリスチレン、又はこれらの組み合わせから成る群から選択される。一部の実施形態では、熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリ−(4−メチル−1−ペンテン)、又はこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0014】
一実施形態では、不織布ウェブはメルトブローンマイクロファイバーを包含する。
【0015】
一部の実施形態では、エレクトレット濾材はフィルターの形態である。
【0016】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示された熱可塑性組成物から非導電性熱可塑性繊維の繊維ウェブを形成すること、及びウェブを帯電させてそのウェブに濾過性向上(filtration enhancing)エレクトレット帯電を与えることを包含する、繊維性エレクトレット材料の製造方法を特徴とする。一部の実施形態では、この帯電は、ウェブに濾過性向上(filtration enhancing)エレクトレット帯電を与えるのに十分な圧力で水の噴射又は水滴流をウェブ上に衝突させること、及びウェブを乾燥させることを包含する。
【0017】
1つの態様では、本発明は、本明細書に開示されているエレクトレット濾材を包含する濾材を包含するレスピレータ(respirator)を特徴とする。
【0018】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示されているエレクトレット濾材を包含する濾材を包含する車両換気システムを特徴とする。
【0019】
他の態様では、本発明は、熱可塑性樹脂及び、式、Y−A(R−Y(I)の化合物を包含する熱可塑性組成物を特徴とする。一実施形態では、前記熱可塑性組成物は剥離面である。一部の実施形態では、前記剥離面は、自己支持性フィルムの形態である。
【0020】
一実施形態では、感圧性粘着テープが、本明細書に開示されている剥離面を包含する基材及び前記基材上に配置された感圧性接着剤組成物を包含する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、熱可塑性樹脂及び、式、Y−A(R−Y(I)の化合物を包含する熱可塑性組成物をフィルムへと形成することを包含する剥離面の製造方法を特徴とする。
【0022】
他の態様では、本発明は、次式の化合物を特徴とし、
−A(R−Y (II)
式中、Aはナフタレン又はアントラセンであり、Y及びYはそれぞれ独立してR−Rであり、Rはエステル又はアミドであり、Rは10〜22個の炭素原子を有するアルキル基であり、RはR−Rであり、ここでR及びRはそれぞれ独立して上記に定義された通りであり、並びにAがナフタレンのとき、nは0〜6であり、及びAがアントラセンのとき、nは0〜8である。一実施形態では、Aはナフタレンである。一部の実施形態では、Rは、−CONH−、−NHCO−、−OCO−、又は−COO−である。一部の実施形態では、Rは12〜22個の炭素原子を有するアルキル基である。他の実施形態では、nは0であり、Yはナフタレン上の2位に位置し、及びYはナフタレン上の6位に位置している。一部の実施形態では、nは1である。他の実施形態では、Aはアントラセンである。
【0023】
一部の実施形態では、化合物は式IIa
【0024】
【化1】

の化合物である。
【0025】
他の実施形態では、化合物は式IIb
【0026】
【化2】

の化合物である。
【0027】
式(II)の化合物はジステアリル−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(naphthalenedicarboyxlate)及び2,6−ナフタレンジステアラミドから成る群から選択される。
【0028】
他の態様では、本発明は次式の化合物を特徴とし、
−A(R−Y (III)
式中、Aはベンゼンであり、Y及びYはそれぞれ独立してR−Rであり、Rはエステル又はアミドであり、Rは10〜22個の炭素原子を有するアルキル基であり、RはR−Rであり、ここでR及びRはそれぞれ独立して上記で定義された通りであり、少なくとも1つのRはY及びYの少なくとも1つに対しメタ位に位置し、並びにnは1〜4である。
【0029】
本発明は、不織布高分子繊維ウェブの濾過性能を高めるため、不織布高分子繊維ウェブ中に存在する電荷を安定化させるため、エレクトレットフィルムにおける帯電を高めるため、エレクトレットフィルムにおける帯電を安定化させるため、又はそれらの組み合わせのために使用することができる化合物を特徴とする。当該新規化合物のうちの幾つかのものはまた、熱安定性を示し及び不織布高分子繊維ウェブに帯電安定性を付与する。当該新規化合物のうちの幾つかのものはまた、剥離コーティングのための剥離材として有用である。
【0030】
以下の好ましい実施形態の説明及び特許請求の範囲から、他の特徴及び利点が明らかになるであろう。
【0031】
用語解説
本発明に関して、これらの用語は下記の意味を有する:
用語「アルキル」とは、記載された数の炭素原子を有し、炭素及び水素のみを含有する、完全飽和の一価直鎖ラジカルを言う。
用語「エレクトレット」は、少なくとも半永久的な電荷を示す、誘電体を意味する。用語「半永久的な」とは、電荷の減衰に関する時定数特性がエレクトレットが使用される期間よりも相当長いことを意味し;
用語「エアゾール」とは、固体又は液体形態で懸濁された粒子を含有する気体を意味し;及び
用語「汚染物質」とは、粒子及び/又は、一般に粒子であるとみなされない場合のある他の物質(例えば有機蒸気)を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明者らは、繊維性濾材に組み込まれたときに、その繊維性濾材の濾過性能特性を向上させることができ、それから作製された基材からの感圧性テープの剥離を向上させることができ、又はその両方が可能である化合物の部類を発見した。その部類の化合物としては次式の化合物が挙げられ、
−A(R−Y (I)
式中、Aはベンゼン、ナフタレン、又はアントラセンであり、
及びYはそれぞれ独立してR−Rであり、
はエステル連結基又はアミド連結基であり、
は10〜22個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、
はR−Rであり、ここで、R及びRはそれぞれ独立して上記に定義された通りであり、並びに
Aがベンゼンであるとき、nは0〜4であり、
Aがナフタレンであるとき、nは0〜6であり、及び
Aがアントラセンであるとき、nは0〜8である。
のエステル連結基は、互いに独立に、−OCO−及び−COO−であることができる。
のアミド連結基は、互いに独立に、−CONH−、及び−NHCO−であることができる。
のアルキル基は好ましくは12〜22個、16〜22個、又は更には18〜22個の炭素原子を有し、及び好ましくは直鎖の形態である。
好ましくは、Y及びYは、互いに対してオルト位、メタ位、若しくはパラ位に位置し、又は更には互いに対してメタ位若しくはパラ位に位置し、連結基がエステルである場合、Y及びYは好ましくは互いに対してオルト位、メタ位、若しくはパラ位に位置し、及び連結基がアミドである場合には、連結基は好ましくは互いに対してメタ位若しくはパラ位に位置する。
【0033】
式(I)に従う有用な化合物の例としては、
【0034】
【化3】

【0035】
並びにより具体的には、
【0036】
【化4】

が挙げられる。有用な式(I)の化合物の具体例としては、
【0037】
【化5】

【0038】
すなわち、ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス−オクタデシルアミド、
【0039】
【化6】

【0040】
すなわち、p−フェニレンジステアリルアミド、
【0041】
【化7】

【0042】
すなわち、ジステアリル2,6−ナフタレンジカルボキシレート、及び
【0043】
【化8】

【0044】
すなわち、2,6−ナフタレンジステアラミド、が挙げられる。
【0045】
エレクトレット濾材に使用するのに好ましい化合物は、例えば、少なくとも150℃、少なくとも200℃、少なくとも230℃、又は更には約150℃〜約330℃の温度への暴露を包含する、繊維形成及びウェブ形成プロセス条件下で、十分に安定である。
【0046】
有用な繊維性エレクトレット濾材は、式(I)の化合物及び熱可塑性樹脂のブレンド(例えば、均質のブレンド)を包含する、熱可塑性組成物から調製される。式(I)の化合物は好ましくは、熱可塑性組成物中に、約0.1重量%〜10重量%、約0.2重量%〜5重量%、又は更には約0.5〜約2重量%の量で存在する。
【0047】
有用な熱可塑性樹脂は、繊維ウェブへと形成し及び水の噴射又は水滴流と衝突させたときに、大量の捕獲電荷を有することのできるあらゆる熱可塑性非導電性ポリマーを包含する。繊維を形成するために使用される熱可塑性樹脂は、電気伝導度を増大させるか又は他の態様で静電荷を受容し及び保持する繊維の能力を妨げる可能性のある、静電気防止剤のような物質を実質的に含むべきではない。好ましくは、熱可塑性樹脂は非導電性であり、すなわち、1014ohm−cmよりも大きな固有抵抗を有し、及び大量の捕獲電荷を有することができる。大量の捕獲電荷を有する樹脂の能力を決定するための方法は、その樹脂から不織布ウェブを形成すること、水の噴射又は水滴流の衝突前にウェブの濾過性能を測定すること、ウェブ上に水の噴射又は水滴流を衝突させることによりウェブを処理すること、ウェブを乾燥させること、及びその後処理されたウェブの濾過性能を測定することを包含する。濾過性能の増大は、捕獲電荷の指標となる。
【0048】
捕獲電荷を獲得することのできる有用な熱可塑性ポリマーの例としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ−(4−メチル−1−ペンテン)、及びこれらの組み合わせを包含するポリオレフィン類、ハロゲン化ビニルポリマー類(例えば、ポリ塩化ビニル)、ポリスチレン、ポリカーボネート類、ポリエステル類、及びこれらの組み合わせ、並びにポリプロピレン、4−メチル−1−ペンテン及びこれらの組み合わせの少なくとも1つから形成されるコポリマー類が挙げられる。
【0049】
例えば、顔料類、UV安定剤類、酸化防止剤類、及びこれらの組み合わせが挙げられる種々の添加剤類を熱可塑性組成物にブレンドすることができる。
【0050】
熱可塑性樹脂及び添加剤のブレンドはあらゆる好適な方法を用いて調製することができる。樹脂及び添加剤は、予備ブレンドし、及びペレット化することができ、そしてその後そのペレットを溶融押出成形することができる。或いは、又はそれに加えて、添加剤を押出成形機内で樹脂とブレンドしそしてその後溶融押出成形することができる。有用な押出成形条件は、一般には、添加剤なしで樹脂を押出成形するのに好適であるものである。
【0051】
ブレンドされた混合物は、次いで、いずれかの好適な技術を用いて繊維及び繊維ウェブへと形成される。繊維ウェブは、例えばメルトブローンマイクロファイバー、短繊維、フィブリル化フィルム、及びこれらの組み合わせを包含する種々の繊維タイプから、例えばエアレイド法、ウェットレイド法、水流交絡(hydro-entanglement)、スパンボンド法、メルトブローン法、及びこれらの組み合わせを包含する種々の技術を用いて、作製することができる。繊維ウェブを形成するための有用な方法は、例えば、米国特許第6,827,764号(スプリンゲット(Springett)ら)及び同第6,197,709号(ツァイ(Tsai)ら)に記載されている。メルトブローンマイクロファイバーを形成するための有用な方法は、ウェント・バン・A(Wente, Van A.)、「超微細熱可塑性繊維(Superfine Thermoplastic Fibers)」インダストリアル・アンド・エンジニアリング・ケミストリー(Industrial Eng. Chemistry)48巻1342〜1346頁、及びナバル・リサーチ・ラボラトリーズ(Naval Research laboratories)(1954年5月25日出版)のレポートNo.4364、表題「超微細有機繊維の製造(Manufacture of Super Fine Organic Fibers)」(ウェント(Wente)ら)に記載されている。メルトブローンマイクロファイバーは好ましくは、デイビス・C.N.(Davies, C.N.)、「浮遊塵埃及び粒子の分離(The Separation of Airborne Dust and Particles)」(機械技術者協会(Institution of Mechanical Engineers)(ロンドン、議事録1B(Proceedings 1B)、1952年)に記載されている方法に従って計算した場合に、1μm未満から50μmまでの範囲の有効繊維径を有する。
【0052】
短繊維の存在は、メルトブローンマイクロファイバーのみで構成されたウェブよりも嵩高く(loftier)、密度の低いウェブを与える。エレクトレットに有用なウェブは、約90重量%を超えない短繊維、又は更には約70重量%を超えない短繊維を包含する。短繊維を含有するウェブは、米国特許第4,118,531号(ハウザー(Hauser))に開示されている。
【0053】
繊維は、単一の樹脂、樹脂のブレンド、層状化構成の多数の樹脂(例えば、コア/シース構成)、及びこれらの組み合わせから形成されることができる。
【0054】
不織布高分子繊維ウェブを包含するエレクトレットは好ましくは、少なくとも約2E−5kPa(2グラム/平方メートル(g/m))、約10E−5kPa(10g/m)〜約0.005kPa(500g/m)、又は更には約10E−5kPa(10g/m)〜約0.0015kPa(約150g/m)の範囲の坪量を有する。不織布高分子繊維ウェブの厚さは好ましくは約0.25mm〜約20mm、又は更には約0.5mm〜2mmである。
【0055】
エレクトレットの不織布高分子ウェブはまた、例えば、米国特許第3,971,373号(ブラウン(Braun))、同第4,100,324号(アンダーソン(Anderson))、及び同第4,429,001号(コルピン(Kolpin)ら)に開示されているような粒子状物質も包含することができる。
【0056】
繊維を帯電させてエレクトレット物品を生成することは、例えば、ハイドロチャージ(hydrocharging)、すなわち、繊維に電荷を付与するのに十分な態様で繊維を水と接触させ、次いでその物品を乾燥させること、及びDCコロナ帯電を包含する、種々の技術を用いて達成することができる。有用なハイドロチャージ(hydrocharging)工程の1つの例としては、ウェブへ濾過性向上(filtration enhancing)エレクトレット帯電を付与するのに十分な圧力及び時間で水噴射又は水滴流を物品上に衝突させ、そしてその後、その物品を乾燥させることを包含する。物品に付与される濾過性向上(filtration enhancing)エレクトレット帯電を最適化するのに必要な圧力は、使用される噴霧器の種類、物品が形成されるポリマーの種類、ポリマーに対する添加剤の種類及び濃度、並びに物品の厚み及び密度によって変化する。約69kPa〜3450kPa(10psi〜約500psi)の圧力が好適であり得る。水噴射又は水滴流は、あらゆる好適な噴霧装置によって提供されることができる。有用な噴霧装置の1つの例は、水力絡み合い(hydraulically entangling)繊維に使用される装置である。ハイドロチャージ(hydrocharging)の好適な方法の例は、米国特許第5,496,507号(アンガドジバンド(Angadjivand)ら)に記載されている。他の方法は、米国特許第6,824,718号(エイツマン(Eitzman)ら)、同第6,743,464号(インスレイ(Insley)ら)、同第、6,454,986号(エイツマンら)、同第6,406,657号(エイツマンら)、及び同第6,375,886号(アンガドジバンド(Angadjivand)ら)に記載されている。
【0057】
好適なDCコロナ放電法の例は、米国再発行特許第30,782号(バン・テュルンハウト(van Turnhout))、米国再発行特許第31,285号(バン・テュルンハウト)、米国再発行特許第32,171号(バン・テュルンハウト)、米国特許第4,375,718号(ウォズワース(Wadsworth)ら)、米国特許第5,401,446号(ウォズワースら)、米国特許第4,588,537号(クラッセ(Klasse)ら)、及び米国特許第4,592,815号(ナカオ(Nakao))に記載されている。
【0058】
繊維性エレクトレットは好ましくは良好な濾過性能特性を示す。濾過性能の1つの尺度は、エアゾールによる攻撃時に繊維性エレクトレットがその品質係数をいかに良好に維持するかということである。品質係数は、フタル酸ジオクチル(「DOP」)初期透過試験(「DOP試験」)により得られる結果から計算することができる。DOP試験はまた、フィルターの帯電状態の相対的な尺度をも与える。DOP試験手順は、DOPエアゾールを6.9cm/秒の面速度で約30秒間試料に送り込み、試料を横切る圧力低下(mmHO単位で測定される圧力低下)を差圧計を用いて測定し、及びパーセントDOP透過(DOPPen%)を測定することを伴う。品質係数(QF)(1/mmH単位で測定される)は、これらの値から次式に従って計算することができる:
【0059】
【数1】

【0060】
所与の流量における品質係数が高いほど、そのエレクトレットの濾過性能は良好である。繊維性エレクトレットは好ましくは少なくとも0.6/mmHO、又は更には少なくとも1.2/mmHOの初期品質係数(Q)を示し、及び少なくとも0.5/mmHO、又は更には少なくとも1/mmHOの加速経年試験後の品質係数(Q)を示す。
フィルムの形体のエレクトレットもまた、上述の熱可塑性組成物(例えば、上述の熱可塑性樹脂及び少なくとも1つの式(I)の化合物のブレンド)から形成することができる。熱可塑性樹脂及び上述の帯電方法はまた、エレクトレットフィルムを形成するのにも大変適しており、及び本明細書に組み込まれる。エレクトレットフィルムの帯電性を測定するために有用な方法の例には、表面電位がある。好ましくはエレクトレットフィルムは、50ミリボルト(mV)よりも大きな、100mVよりも大きな、200mVよりも大きな、400mVよりも大きな、又は更には500mVよりも大きな絶対値を有する表面電位を示す。エレクトレットフィルムは例えば圧電フィルムが挙げられる種々の用途において有用である。
【0061】
式(I)の化合物はまた、剥離面の生成において使用するのにも大変適している。剥離面は、接着剤、例えば感圧性接着剤に対して低い粘着性を示す、物品、好ましくはフィルムの表面である。用語「低い粘着性」とは、接着剤と剥離面の接合部間に分離を生じさせる粘着性の程度を言う。多くのテープの用途において、剥離面は少なくとも1つの他の基材及び1つの接着剤と組み合わされる。剥離基材は、多くの場合、低粘着性バックサイズ(low adhesion backsize)又はLABと呼ばれる。LAB類は典型的には約50N/dm未満の剥離力値を有する。LAB類は、使用に際しロールからテープを巻き戻すことが必要であるロール形態の粘着テープに大変適している。
【0062】
剥離面は、熱可塑性樹脂及び式(I)の化合物を包含する組成物から調製される。剥離面を形成するのに有用な熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレンビニルコポリマー類、修飾エチレンビニルアセテートコポリマー類、ポリオレフィン類(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリ−4−メチルペンテン)、ポリアミド類(例えば、ナイロン)、ポリスチレン、ポリエステル、コポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、エチレンとプロピレン、プロピレンとブチレン、及びエチレンとブチルアクリレートのコポリマー類、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン、及びスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンを包含する熱可塑性ラバーブロックコポリマー類、並びにこれらのブレンドが挙げられる。剥離面組成物を調製するために、例えば、メルトブレンディング、溶媒ブレンディング、物理的ブレンディング(例えば、攪拌及びかき混ぜ(stirring and agitating))、並びにこれらの組み合わせを包含する、あらゆる好適な方法を使用することができる。
【0063】
剥離面組成物は好ましくは、式(I)に従う化合物を、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、約0.1重量%〜約2.0%、約0.1重量%〜約1.0重量%、又は更には約0.5重量%の量で包含する。
【0064】
剥離面組成物は、UV安定剤類を包含する種々の他の構成成分もまた包含することができる。
【0065】
剥離面は、例えば、押出成形を包含する、フィルムを形成するためのあらゆる好適な技術を用いて形成することができる。
【0066】
剥離面は、例えば、感圧性粘着テープ類(例えば片側テープのロール)のための低粘着性バックサイズを包含する種々の形態で提供されることができる。剥離組成物を適用することができる基材の例としては、熱可塑性ポリマー類、非熱可塑性ポリマー類、金属類、布、織布ウェブ類、不織布ウェブ類、発泡体、セラミック、紙、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
式(I)によって表され及びエステル連結基を包含する化合物を調製するための特に有用な手順は、以下のスキームIに従って進められる
【0068】
【化9】

【0069】
このプロセスは、芳香族化合物(例えば、ベンゼン、ナフタレン、又はアントラセン)上に存在するカルボン酸基を、還流条件下で及びヒドロキシル基がハロゲン原子で置換されて酸ハロゲン化物を形成するのに十分な温度及び時間で、塩化チオニルと反応させることを包含する。次いで得られた組成物を冷却し及び過剰の塩化チオニルを蒸発させる。次に化合物を好適な非ヒドロキシ溶媒(例えば、ヘキサン、トルエン、酢酸エチル、及びクロロホルム)に懸濁させ、及び乾燥状態まで蒸発させて酸ハロゲン化物を得る。次にこの酸ハロゲン化物を10〜22個の炭素原子を有する直鎖アルコールと、高熱及び攪拌条件下で、塩素基のアルコキシ基による置換を最大にしてエステルを形成させるのに十分な時間組み合わせる。有用な直鎖アルコール類としては、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びパルミチルアルコール(palmitic alcohol)が挙げられる。次に化合物を好適な溶媒(例えば、イソプロピルアルコール)から再結晶させる。
式(I)によって表され及びアミド連結基を包含する化合物を調製するための特に有用な手順は、次のスキームIIに従って進められる。
【0070】
【化10】

【0071】
このプロセスは、少なくとも2つのアルキルカルボキシレート基を有する芳香族化合物(例えば、ベンゼン、ナフタレン、又はアントラセン)を10〜22個の炭素原子を有する直鎖アルキルアミンと、機械的攪拌器を備えた樹脂フラスコ内で接触させ、そしてこの混合物を適切な高温において、アルコキシル基をアルキルアミン基で置換するのに十分な時間(例えば、210℃で5時間半)攪拌することを包含する。得られる生成物を室温まで冷却し、及び好適な有機溶媒(例えばキシレン)から再結晶させて粘性のスラリーを形成し、これを次にイソプロピルアルコールで希釈し、ブフナー漏斗中に収集し、及び好適な溶媒(例えば、イソプロピルアルコール)で洗浄する。次にこの固体生成物を加熱及び真空下で乾燥させる。
【0072】
本明細書に記載された方法によって形成されるエレクトレットは、例えば、マイクロホン、ヘッドホン、及びスピーカーのような電気音響装置における静電素子として、流体フィルターとして、例えば高電圧静電発電機、静電記録装置、呼吸装置(例えば、前置フィルター、キャニスター、及び交換可能カートリッジ)、加熱装置、換気装置(例えば、車両及び建造物(例えば、家屋、オフィスビル、及び共同住宅)内における)、エアコンディショニング、及びフェイスマスクにおける塵埃粒子抑制装置としての用途が挙げられる、種々の用途において好適である。本発明のエレクトレット濾材は、レスピレータ(respirator)における繊維性空気濾材として使用するのに特に好適である。繊維性濾材はまた、フェースピースに取り付けられる(取り外し可能に又は他の態様で)フィルターカートリッジにおいて使用されてもよく(例えば、米国特許第6,895,960号(ファビン(Fabin))、同第6,883,518号(ミッテルシュタット(Mittelstadt)ら)、及び同第6,874,499号(バイナー(Viner)ら)参照)、又はそれは、人の鼻及び口を覆ってフィットするマスク本体の1以上の層として使用することができる(例えば、米国特許第6,923,182号(アンガドジバンド(Angadjivand)ら)、同第6,886,563号(ボストック(Bostock)ら)、同第5,307,796号(クロンザー(Kronzer)ら)、同第4,827,924号(ヤプンチヒ(Japuntich))、同第4,807,619号(ディルド(Dyrud)ら)、及び同第4,536,440号(ベルグ(Berg))参照)。
【0073】
図1はエレクトレット濾材を包含するように構成されてよいフィルタリングフェイスマスク10の例を示している。一般にカップ形状の本体部分12が着用者の鼻及び口を覆ってフィットするようになされている。本体部分12は、吸入した空気が通り抜けることができるように多孔質である。エレクトレット濾材はマスク本体12中(典型的には実質的に全表面領域を覆って)に配置され、吸入した空気から汚染物質を取り除く。着用者の鼻を覆うぴったりした適合を維持するのを助けるために、マスク本体上に適合性鼻クリップ13を載置してもよい。鼻クリップは、米国意匠特許第412,573号及び米国特許第5,558,089号(カスティリオーネ(Castiglione))に記載されているような「M形状」クリップであることができる。ストラップ又はハーネスシステム14がマスク本体12を着用者の顔上に支持するために提供されてもよい。図1では二重ストラップシステムが示されているが、ハーネス14は1本のストラップ16のみを採用してもよく、及び例えば米国特許第4,827,924号(ヤプンチヒ(Japuntich)ら)、同第5,237,986号(セッパラ(Seppalla)ら)、及び同第5,464,010号(バイラム(Byram))に開示されている構成を包含する、種々の他の構成を取ることができる。マスクの内側からの吐き出される空気を迅速に浄化するために、マスク本体に呼気弁を取り付けることができる。有用な呼気弁の例は、米国特許第5,325,892号、同第5,509,436号、同第6,843,248号、及び同第6,854,463号(ヤプンチヒ(Japuntich)ら)、及び米国再発行特許第37,974号(バウアーズ(Bowers)に開示されている。
【0074】
図2はマスク本体12の断面の一例を示す。マスク本体12は、数字18、20、及び22で示されるように複数の層を有することができる。エレクトレット濾材は、繊維の交点において繊維を他の繊維と結合させることができる外側の熱可塑性構成成分を有する2成分繊維のような、熱により結合される繊維から作製される形成層のような、他の層によって支持されることができる。層18は外側形成層であることができ、層20は濾過層であることができ、及び層22は内側形成層であることができる。形成層18及び22は濾過層20を支持し、及びマスク本体12に形状を提供する。マスク本体の層18、20、22のうちの少なくとも1つがエレクトレット濾材を包含する。本説明では「形成層」との用語が用いられているが、形成層とはまた他の機能をも有しており、その機能は最も外側の層の場合には、濾過層の保護、及び気体流の前濾過のように主要な機能であることもできる。さらに、「層」との用語が用いられているが、1つの層は、所望の厚さ又は重量を得るために組み合わされた幾つかの副層を包含していてもよい。一部の実施形態では、1つだけの、一般には内側の、形成層がフェイスマスクに包含されるが、2つの形成層が、例えば図2に示されているように濾過層の各側に1つずつ用いられる場合に、形成はより耐久的に及び都合よく達成されることができる。形成層については、例えば米国特許第4,536,440号(ベルグ(Berg))、同第4,807,619号(ディラド(Dyrud)ら)、同第5,307,796号(クロンザー(Kronzer)ら)、同第5,374,458号(バージオ(Burgio))、及び同第4,850,347号(スコブ(Skov))に記載されている。図1及び2に例示されるマスク本体は一般に、丸いカップ型の形状を有しているが、例えば米国特許第4,883,547号(ヤプンチヒ(Japuntich))に記載されるような他の形状を有することもできる。
【0075】
図3は、エレクトレット物品を包含するフィルターを包含するレスピレータ(respirator)24を示している。レスピレータ(respirator)24は自身に固定されるフィルターカートリッジ28を有するエラストマーのマスク本体26を包含する。マスク本体26は典型的には人の鼻及び口を覆って柔軟にフィットするようなエラストマーのフェースピース30を包含する。フィルターカートリッジ28は、汚染物質を着用者に吸入される前に捕獲するためにエレクトレット濾材を含有する。フィルター要素は、エレクトレットフィルター物品を単独で、又は、例えば活性炭床のようなガス状フィルター(gaseous filter)を包含する他のフィルター類とともに包含することができる。フィルター要素の外部表面を保護するフィルターカートリッジ上に多孔質のカバー又はスクリーン32を設けることができる。エレクトレット濾材を使用できる他のフィルターカートリッジの例としては、米国再発行特許第35,062号(ブロストロム(Brostrom)ら)、又は同第5,062,421号(バーンズ(Burns)及びレイシェル(Reischel))に開示されているフィルターカートリッジが挙げられる。同じレスピレータ(respirator)中に複数のフィルターカートリッジを使用することができる。カートリッジはまた取り外し可能及び交換可能であることができる。濾材はまた電動式空気浄化マスク(powered air purifying respirators)(PAPR)のフィルターカートリッジにおいても使用することができる。PAPRの例は、米国特許第6,666,209号(ベネット(Bennett)ら)及び同第6,575,165号(クック(Cook)ら)に示されている。濾材はまた、排気フード(escape hood)用のフィルターカートリッジにおいても使用することができ、この例は、米国意匠特許第480,476号(マーチンソン(Martinson)ら)、及び米国特許第6,302,103号、同第6,371,116号、及び同第6,701,925号(レスニック(Resnick))に開示されている。
【0076】
図4は濾材配列40の斜視図を示す。配列40の構造は、多流路42を包含し、多流路42は配列40の第1の側44に入口43を画定し、配列の第2の側48に出口46を有する。流路は、波形又はミクロ構造化層50及びキャップ層52によって画定されることができる。曲線状層50は1つ以上の頂点又は谷部分においてキャップ層52に結合されることができる。構造化部材及び平面部材の複数の層を積み重ねることで、マイクロチャネル配列を達成することができる。流路は高アスペクト比を有する傾向があり、及びフィルム層は良好な捕獲効率を有する物品40を提供するために好ましくは帯電している。第1の側44から第2の側48への配列40を横切る圧力低下は極僅かである。この配列の少なくとも1つの層がエレクトレット濾材を包含している。非繊維性エレクトレット物品の例は、米国特許6,7532,889号(6,7532,889)(インスレイ(Insley)ら)、米国特許第6,280,824号(インスレイら)、米国特許第4,016,375号(バン・テュルンハウト(Van Turnout))、及び米国特許第2,204,705号(ラザフォード(Rutherford))に記載されている。
【0077】
ここで本発明を以下の実施例によって説明する。特に指定がない限り、百分率は全て重量に基づく。
【実施例】
【0078】
試験手順
本実施例において使用される試験手順は以下のものを包含する。
【0079】
有効繊維径
有効幾何学的繊維径は、デイビス・C.N.(Davies, C. N.)、「浮遊塵埃及び粒子の分離(The Separation of Airborne Dust and Particles)(機械技術者協会(Institution of Mechanical Engineers)、ロンドン、議事録1B、1952年)に記載されている方法に従って評価される。
【0080】
初期フタル酸ジオクチル透過(DOP)及び圧力低下試験手順
ブローンマイクロファイバーウェブの濾過性能は、攻撃エアゾール(challenge aerosol)としてフタル酸ジオクチル(DOP)を用いるTSI 8130自動フィルター試験機、及びフィルターを通した圧力低下(DP)(DP−mmHO)を測定するMKS圧力変換器を使用して評価される。
【0081】
初期のDOP透過は、直径0.3マイクロメートルのフタル酸ジオクチル(DOP)粒子を70mg/m〜140mg/mの濃度(4つのオリフィス及び207kPa(30psi)の清浄な空気を有するTSI No.212噴霧器を用いて発生させる)で、直径11.4cm(4.5インチ)の濾材の試料を通して42.5L/分の速度(6.9cm/秒の面速度)で送り込むことによって決定される。読みが安定するまで30秒間試料をDOPエアゾールに曝す。光学散乱チャンバ、エア・テクニクス社(Air Techniques Inc.)から入手可能な透過率メータTPA−8F型(Percent Penetration Meter Model TPA-8F)を用いて透過を測定する。
【0082】
試料を横切る圧力低下は、流量42.5L/分(面速度6.9cm/秒)において電子圧力計を用いて測定される。圧力低下は水のmm(「mmHO」)の単位で報告される。
DOP透過及び圧力低下を用いて、以下の式によりDOP透過の自然対数(ln)から品質係数「QF」を計算する。
【0083】
【数2】

【0084】
初期QFが高いほど初期濾過性能が良好であることを示す。QFの減少は濾過性能の減少と有効に相関する。
【0085】
DOP負荷試験手順
DOP負荷は、DOP透過及び圧力低下試験に用いられるのと同じ試験装置を使用して決定される。試験試料を秤量し、及び次いでDOPエアゾールに少なくとも45分間曝して少なくとも約130mgの最小暴露量を与える。試験を通して少なくとも1分に1回の頻度でDOP透過量及び圧力低下を測定する。測定された透過、フィルターウェブの質量、及び暴露中にフィルターウェブ上に収集されたDOPの総質量から、収集されたDOPの質量を各測定間隔について計算する(「DOP負荷」)。
【0086】
表面電位(Surface Potential)試験方法
フィルムの表面における電位は、モンロー・エレクトロニクス社(Monroe Electronics Inc.)(ニューヨーク、リンドンビル(Lyndonville))からの170−3型アイソプローブ電位計(Model 170-3 isoprobe electrometer)及び接地平面上およそ3mmのギャップを用いて測定される。
【0087】
加速経年条件
試料を71℃のオーブン中に3日間置きそしてその後取り出す。
【0088】
300℃での熱重量分析(TGA)
TA熱重量分析装置(TA thermogravimetric analysis unit)(TAインストルメンツ社(TA Instruments, Inc.)(デラウェア州、ニューキャッスル(New Castle)))において窒素下でデュポン2000オペレーティングシステム(DuPont 2000 operating system)を用いて10〜15mgの添加剤の試料の熱的安定性を試験する。出発温度は室温であり、及び最終温度は600℃であり、10℃/分の温度傾斜を用いる。
【0089】
(実施例1)
調製化合物I
還流凝縮器及び磁性攪拌器を備えた250mLの一口丸底にナフタレン−2,6−ジカルボン酸(10.00g)、塩化チオニル(16.00g)、及びクロロホルム(86mL)を加えた。混合物を還流下で8時間攪拌及び加熱した。この透明溶液を室温まで冷却しそして溶媒を窒素流中で蒸発させた。得られた固体を75mLのヘキサンに懸濁させ、ロータリーエバポレータで乾燥状態まで蒸発させ、
【0090】
【化11】

の構造を有する、下記に例示される二塩基酸クロライド11.71gを黄色結晶性固体として得、これは赤外線スペクトル分析により確認された。
【0091】
調製化合物I(11.71g)にステアリルアルコール(26.27g)を加え、及び内容物を磁気攪拌しながら80℃に加熱した。5時間後、この透明な融解生成物を室温に冷却した。次いでこの粗固体生成物をイソプロピルアルコール(350mL)から再結晶させ、及びこの結晶性固体をブフナー漏斗中に集め、メタノールで洗浄し、空気乾燥し、そしてその後真空オーブン中で一晩(133Pa(1Torr)及び40℃の条件下で)乾燥させた。収量は29.6g(すなわち75%)であった。生成物、すなわちジステアリル−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの構造は、
【0092】
【化12】

であると決定され、及び赤外線スペクトル分析によって確認された。
【0093】
(実施例2)
機械的撹拌機を備えた500mLの樹脂フラスコにジメチルナフタレン−2,6−ジカルボキシレート(23.77g)及びステアリルアミン(55.09g)を加えた。混合物を210℃で5時間半、攪拌及び加熱した。得られた粗生成物を室温に冷却しそしてキシレン(350mL)から再結晶させた。得られた粘性のスラリーをイソプロピルアルコール(350mL)で希釈しブフナー漏斗中に収集し、イソプロピルアルコールで洗浄した。固体生成物を真空オーブン中で(133Pa(1Torr)及び40℃の条件下で)一晩乾燥させた。白色結晶性生成物の収量は48.3g(すなわち69%)であった。生成物、すなわち2,6−ナフタレン−ジステアリルアミドの構造は、
【0094】
【化13】

であると決定され、及び赤外線スペクトル分析によって確認された。
【0095】
対照及び実施例3〜7
ブローンマイクロファイバーウェブ(BMF)の調製
BMFウェブは、バン・A・ウェンテ(Van A. Wente)、超微細熱可塑性繊維(Superfine Thermoplastic Fibers)(「インダストリアル・アンド・エンジニアリング・ケミストリー(Industrial Engineering Chemistry)」48巻、1342〜1346頁)に記載されているように、ブラベンダー−キリオン円錐型2軸押出成形機(Brabender-Killion conical twin screw extruder)(ブラベンダー・インストルメンツ社(Brabender Instruments, Inc.))を用いて約3.2kg/時〜約4.5kg/時(7〜10ポンド/時)の速度及び約280℃〜約300℃の押出温度で運転して、熱可塑性ブレンドを押出成形することによって調製した。この熱可塑性ブレンドには、ベースポリマーとしてエクソン(EXXON)3505ポリプロピレン、及び1重量%の表1に記載された添加剤の1つを包含させた。得られたウェブは、7μm〜8μmの有効繊維径、及び0.00045kPa(46グラム/平方メートル(g/m))〜0.00052kPa(54g/m)、又は0.00059kPa(60g/m)〜0.00069kPa(70g/m)の坪量を有していた。各ウェブについての実際の有効繊維径及び坪量は下記の表1に記載する。
【0096】
対照のウェブは0.00059kPa(60g/m)の坪量を有していた。
【0097】
ハイドロチャージの方法(Hydrocharging Method)
エアゾールの噴射及び6〜7のpHを有する水の水流を、ノズル圧力689kPa(100ポンド/平方インチ(psig))でBMFウェブに向けることにより、上述のように調製されたBMFウェブを帯電させた。およそ2.5センチ/秒(1インチ/秒)で噴射を通り抜けるベルト上にウェブを置いた。噴霧された水は、媒体よりも下方で真空ノズルを通して急速に除去した。ウェブのエア側とコレクター側の両方に水を噴霧した。試料を2時間〜6時間乾燥させた後フィルター効率を試験した。
【0098】
得られたハイドロチャージされたウェブを次いで、初期フタル酸ジオクチル透過(DOP)及び圧力低下試験手順に従って試験した。結果をそれぞれQ及び圧力低下として下記の表に報告する。
【0099】
得られた一組のハイドロチャージウェブを加速経年条件に暴露しそしてその後初期フタル酸ジオクチル透過試験手順に従って試験した。結果をQとして下記の表に報告する。
【0100】
【表1】

N/A=適用不可
【0101】
他の実施形態は、特許請求の範囲内にある。他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明の属する分野の当業者に慣例的に理解されるものと同じ意味を有する。上記に引用されたすべての出版物、特許出願、特許、及び他の参照文献の全体を本明細書に参照として組み入れる。不一致である場合、定義を含め本明細書は調整される。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明のエレクトレット濾材を包含する使い捨て呼吸マスクの斜視図。
【図2】図1の呼吸マスクの本体の断面図。
【図3】本発明のエレクトレット濾材を包含するフィルターカートリッジを有する呼吸マスクの斜視図。
【図4】エレクトレット濾材配列の斜視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂、及び
次式の化合物
−A(R−Y (I)
(式中、Aはベンゼン、ナフタレン、又はアントラセンであり、
及びYはそれぞれ独立してR−Rであり、
はエステル連結基又はアミド連結基であり、
は10〜22個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、
はR−Rであり、ここで、R及びRはそれぞれ独立して上記に定義された通りであり、並びに
Aがベンゼンであるとき、nは0〜4であり、
Aがナフタレンであるとき、nは0〜6であり、及び
Aがアントラセンであるとき、nは0〜8である)を含む繊維を含む繊維ウェブを含む、エレクトレット濾材。
【請求項2】
Aはベンゼンである、請求項1に記載のエレクトレット濾材。
【請求項3】
は−CONH、−NHCO、−OCO、又は−COOである、請求項2に記載のエレクトレット濾材。
【請求項4】
は12〜22個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項3に記載のエレクトレット濾材。
【請求項5】
nは1である、請求項3に記載のエレクトレット濾材。
【請求項6】
nは1であり、並びにR、Y、及びYは互いにメタ位に位置している、請求項3に記載のエレクトレット濾材。
【請求項7】
nは0であり、並びにY及びYは互いにパラ位に位置している、請求項3に記載のエレクトレット濾材。
【請求項8】
Aはナフタレンである、請求項1に記載のエレクトレット濾材。
【請求項9】
は−CONH−、−NHCO−、−OCO−、又は−COO−である、請求項8に記載のエレクトレット濾材。
【請求項10】
は12〜22個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項8に記載のエレクトレット濾材。
【請求項11】
nは0であり、Yはナフタレン上の2位に位置し、及びYはナフタレン上の6位に位置している、請求項8に記載のエレクトレット濾材。
【請求項12】
nは1である、請求項8に記載のエレクトレット濾材。
【請求項13】
前記式(I)の化合物が、
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス−オクタデシルアミド、
p−フェニレンジステアリルアミド、
ジステアリル−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(naphthalenedicarboyxlate)、及び
2,6−ナフタレンジステアラミドから成る群から選択される、請求項1に記載のエレクトレット濾材。
【請求項14】
前記熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリスチレン、又はこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載のエレクトレット濾材。
【請求項15】
前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリ−(4−メチル−1−ペンテン)、又はこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載のエレクトレット濾材。
【請求項16】
前記繊維はメルトブローンマイクロファイバーを包含する、請求項1に記載のエレクトレット濾材。
【請求項17】
請求項1に記載のエレクトレット濾材を含む、エアフィルター。
【請求項18】
請求項1に記載のエレクトレット濾材を包含する濾材の少なくとも1つの層を含む、呼吸マスク。
【請求項19】
請求項1に記載のエレクトレット濾材を包含する濾材の少なくとも1つの層を含む、車両換気システム。
【請求項20】
熱可塑性樹脂、及び
次式の化合物、
−A(R−Y (I)
(式中、Aはベンゼン、ナフタレン、又はアントラセンであり、
及びYはそれぞれ独立してR−Rであり、
はエステル連結基又はアミド連結基であり、
は10〜22個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、
はR−Rであり、ここで、R及びRはそれぞれ独立して上記に定義された通りであり、並びに
Aがベンゼンであるとき、nは0〜4であり、
Aがナフタレンであるとき、nは0〜6であり、及び
Aがアントラセンであるとき、nは0〜8である)を含む、剥離面。
【請求項21】
自己支持性フィルムの形態である、請求項20に記載の剥離面。
【請求項22】
請求項20に記載の剥離面を包含する基材、及び
前記基材上に配置された感圧性接着剤組成物を含む、感圧性粘着テープ
【請求項23】
熱可塑性樹脂、及び
次式の化合物、
−A(R−Y (I)
(式中、Aはベンゼン、ナフタレン、又はアントラセンであり、
及びYはそれぞれ独立してR−Rであり、
はエステル連結基又はアミド連結基であり、
は10〜22個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、
はR−Rであり、ここで、R及びRはそれぞれ独立して上記に定義された通りであり、並びに
Aがベンゼンであるとき、nは0〜4であり、
Aがナフタレンであるとき、nは0〜6であり、及び
Aがアントラセンであるとき、nは0〜8である)を含む、熱可塑性組成物。
【請求項24】
繊維性エレクトレットウェブの製造方法であって、
請求項23に記載の熱可塑性組成物からの非導電性熱可塑性繊維を含有する繊維ウェブを形成すること、及び
前記繊維ウェブを帯電させて前記ウェブに濾過性向上(filtration enhancing)エレクトレット帯電を与えることを含む、製造方法。
【請求項25】
前記帯電工程は前記ウェブを水と接触させ、及び乾燥させて前記ウェブに電荷を付与することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
剥離面の製造方法であって、前記方法は請求項23の組成物をフィルムに形成することを含む、方法。
【請求項27】
次式
−A(R−Y (II)
(式中、
Aは、ナフタレン又はアントラセンであり、
及びYはそれぞれ独立してR−Rであり、
はエステル又はアミドであり、
は10〜22個の炭素原子を有するアルキル基であり、
はR−Rであり、ここで、R及びRはそれぞれ独立して上記に定義された通りであり、
並びに
Aがナフタレンであるとき、nは0〜6であり、及び
Aがアントラセンであるとき、nは0〜8である)を有する、化合物。
【請求項28】
Aはナフタレンである、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
は、−CONH−、−NHCO−、−OCO−、又は−COO−である、請求項27に記載の化合物。
【請求項30】
は12〜22個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項27に記載の化合物。
【請求項31】
nは0であり、Yはナフタレン上の2位に位置し、及びYはナフタレン上の6位に位置している、請求項27に記載の化合物。
【請求項32】
nは1である、請求項27に記載の化合物。
【請求項33】
Aはアントラセンである、請求項27に記載の化合物。
【請求項34】
式IIa
【化1】

の化合物である、請求項27に記載の化合物。
【請求項35】
式IIb
【化2】

の化合物である、請求項27に記載の化合物。
【請求項36】
ジステアリル−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(naphthalenedicarboyxlate)及び2,6−ナフタレンジステアラミドから成る群から選択される、請求項27に記載の式(I)の化合物。
【請求項37】
次式
−A(R−Y (III)
(式中、
Aはベンゼンであり、
及びYはそれぞれ独立してR−Rであり、
はエステル又はアミドであり、
は10〜22個の炭素原子を有するアルキル基であり、
はR−Rであり、ここで、R及びRはそれぞれ独立して上記で定義した通りであり、
少なくとも1つのRはY及びYの少なくとも1つに対してメタ位に位置しており、並びに
nは1〜4である)の、化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−526141(P2009−526141A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554247(P2008−554247)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/001502
【国際公開番号】WO2007/094917
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】