エレクトロウェッティング方式の技術を用いて小滴を操作するための方法および装置
小滴を操作するために1つの装置が提供される。この装置は、単一表面電極デザインであり、すべての導電性部材が小滴を操作する第1の表面上に含まれる。操作すべき小滴を収容するために、追加的な表面を第1の表面と並行に設けることができる。エレクトロウェッティング方式を用いた技術を実行することにより、小滴を操作することができ、第1の基板の上に形成されるか、その中に埋設された電極を制御しながら順次活性化し、不活性化する。この装置は、2つの小滴を併合および混合する動作、1つの小滴を2つまたはそれ以上の小滴に分離する動作、連続液体フローから独立して制御可能な小滴を形成することにより、連続液体フローをサンプル採取する動作、および所望の混合比を得るために、小滴を反復的にバイナリ式またはデジタル式に混合する動作などの数多くの小滴動作を実行することができる。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願]
本発明は、2002年9月24日付けで出願された米国特許出願第10/253,368号の優先権を主張し、その開示内容はここに一体のものとして統合される。
【0002】
[政府の利害関係]
本発明は、米国国防総省高等研究事業局により承認された承認番号F30602−98−2−0140号に基づき、米国政府からの支援を受けてなされたものである。米国政府は、本発明に関する所定の権利を有する。
【0003】
[技術分野]
本発明は、一般に、マイクロ流体スケールの小滴サンプルを作成、混合、希釈するなど、小滴の液体を操作および処理する技術分野に関する。とりわけ本発明は、エレクトロウェッティング方式の技術を用いた小滴の操作に関する。
【0004】
[背景技術]
現在、キャピラリサイズの連続した液体フローに対して所定の処理技術を実施する可能性を模索すべく、マイクロ流体システムが開発されつつある。特に、「ケミストリ・オン・チップ(chemistry-on-a-chip)」のセンサおよびアナライザと一般に呼ばれるマイクロ流体デバイスを開発することに対する強い要請があり、これらはラボ・オン・チップ(labs-on-a-chip: LoC)およびマイクロトータル分析システム(μ−TAS)としても知られている。この分野の研究の究極的な目標は、もっとも一般的な(生)化学実験の処理および装置を、小型化され、自動化されたチップ形式フォーマットに簡略化することにより、迅速で、携帯可能で、安価で、しかも信頼性の高い(生)化学実験機器を実現することにある。適用例は、医療診断用、環境モニタ用、および基礎科学研究用を含む。
【0005】
HPLC(高圧液体クロマトグラフィ:high pressure liquid chromatography)、CE(キャピラリ電気泳動:capillary electrophoresis)またはMS(質量分析:mass spectrometry)システムなどの大規模分析機器の入力に、連続フローの出力を接続することにより、連続フローをオンラインでモニタすることが極めて頻繁に行われている。連続フローのストリームが一連のバイオセンサの上を通過するところで、連続的にモニタするためのマイクロ流体システムは、通常、小型化されたアナライト固有のバイオセンサを採用している。センサは、共通のチャンネル内に配設されているので、センサ間のクロストークまたはコンタミネーションが頻繁に問題となる。試薬を連続フローに混ぜ合わせる必要がある場合の分析において、試薬を添加し、フローを制御・混合し、各ストリームにおける検出を行う分割手段を用いて、フローを複数の並行するストリームに分割しなければ、1度にただ1つのアナライトしか測定できない。さらに、マイクロ流体フローで混合することは通常、あまり容易なことではない。混合のためには、十分な時間と距離を設ける必要があり、チップの設計およびシステムのフロー速度に対する制約が課せられることになる。
【0006】
一般に、化学的および生物学的応用例において、混合(混合)することは基本的な処理である。マイクロ流体デバイス内で混合することは、マイクロトータル分析システム(μ−TAS)またはラボ・オン・チップシステムにおいて、極めて重要なステップである。以下説明する本発明においては、これらのシステムにおける混合は、サンプルを事前に希釈処理するか、特定の比率でサンプルと試薬を反応させるために用いられるものである。また、最小限度のチップ領域を用いて、液体を迅速に混合する機能は、こうしたシステムの収量を大幅に改善するものである。2つの原理に基づき混合を改善し、乱流、すなわち極めて微小スケールの不可逆的フローを形成するか、あるいは拡散により混合を改善するために複数の層流を形成する。
【0007】
ミキサー(混合装置)は、連続フロー方式および小滴方式の構成に大別することができる。すべての連続フロー方式の装置の共通の問題は、流体の搬送が常にエッチングされた構造体に物理的に制限され、混合処理を改善するためには追加的な機構が必要なる点にある。用いられる搬送機構は、通常、外部ポンプによる圧力を用いて駆動されるか、あるいは高電圧源による電気動力学を用いて駆動される。これにより、バルブ、複雑な通路、消費する貴重なチップ上の物的構造物を用いることが必要となる。これらの制約により、連続フロー方式のマイクロミキサーを自己内蔵型の再設定可能なラボ・オン・チップとして形成することができない。従来式の連続フローシステムは、制限されたチャンネル内の連続液体フローに基づいており、小滴方式のシステムは、液体の複数の離散的な容量を用いる。連続フロー方式および小滴方式の両方の構造は、さらに受動型および能動型のミキサーに分類することができる。受動的ミキサーは、混合するための外力エネルギを入力することなく、受動的な拡散により混合する。他方、能動的な混合は、分散された多層流または乱流を形成するために、ある種の駆動力による外部エネルギを活用する。微視的な世界では、機械的動作により乱流フローを形成することは困難であるため、有効に混合することは技術的な問題である。乱流を形成するための慣性力、混合を促進するために必要な大面積の界面表面が形成されない。すなわち、限定的な界面領域を介した拡散させることによる混合は問題となる。
【0008】
最近になって、音響波を用いた能動的混合[ビベック(Vivek)らの「新規な音響マイクロミキサー(Novel acoustic micromixer)」(MEMS 2000 p. 668-73)を参照のこと]、超音波を用いた能動的混合[ヤング(Yang)らの「マイクロ流体システムのための超音波マイクロミキサー(Ultrasonic micromixer for microfluidic systems)」(MEMS 2000, p. 80を参照のこと)]、およびピエゾ圧電素子により駆動されるバルブレスマイクロポンプ用いた能動的混合[ヤング(Yang)らの「ピエゾ素子で駆動されるバルブレスマイクロポンプ(Micromixer incorporated with piezoelectrically driven valveless micropump)」(Micro Total Analysis System '98, p. 177-180を参照のこと)]が提案され、これらの有用性が実証されている。電気振動流による混合は、同様に、ポール(Paul)らに付与された米国特許第6,086,243号に開示されている。混合のためのカオス的移流を採用した、別の混合技術が提案された。リー(Lee)らの「電気および圧力で駆動されるカオス的混合(Chaotic mixing in electrically and pressure driven microflows)」(The 14th IEEE workshop on MEMS 2001, p. 483-485)、リウ(Liu)らの3次元の曲がりくねったマイクロチャンネル(Passive Mixing in a Three-Dimensional Serpentine Microchannel)」(J. of MEMS, vol 9 (No.2), p. 190-197(June 2000))、およびエバンズ(Evans)らの「平坦な層流ミキサー(Planar laminar mixer)」(Proc., of IEEE, The tenth annual workshop on Micro Electro Mechanical Systems (MEMS 97), p.96-101(1997))を参照されたい。リーらは、カオス的移流を形成するために、電気泳動力または圧力を採用することに焦点を当て、リウらは、同様の移流を励起するために、マイクロチャンネルの幾何学的形態に依拠している。エバンズらは、平坦な混合チャンバを構成し、その側方で、非対称ソースおよびシンクがフロー領域を形成し、これにより、流体粒子の当初の位置のわずかな差異により、最終的な位置を大きく変化させる。これは流体粒子をカオス的に再配置させ、こうして2つの粒子を混ぜ合わせる。ごく最近になって、能動的に混合させるために、電気流体力学的な対流を用いることが提案されている。ジン(Jin)らの「マイクロ流体式生化学分析のための、電気流体力学的な対流を用いた能動的ミキサー(An active mixer using electrohydrodynamic (EHD) convection for microfluidic-based biochemical analysis)」(Technical Digest, Solid-State Sensor and Actuator Workshop, p. 52-55)を参照されたい。
【0009】
分子の拡散は、レイノルズ数の小さい液体フローにおいて重要な役割を果たす。一般に、2種類の液体の接触表面が増大すると、拡散速度は大きくなる。分子が拡散するために必要な時間は、拡散距離の二乗に比例する。混合チャンネルを単純に狭くした迅速な拡散ミキサーがヴィーンストラ(Veenstra)らの「マイクロフロー注入分析システムに適用可能な拡散ミキサーのための特徴的方法(Characterization method for a new diffusion mixer applicable in micro flow injection analysis systems)」(J. Micromech. Microeng. , Vol. 9, pg. 199-202 (1999))に開示されている。拡散型マイクロ混合に対する第1のアプローチは、界面領域を増大させ、2種類の液体を交互に配置することにより、拡散長を減少させることであった。交互に配置することは、構造物の形状を操作することにより行われた。1つのアプローチは、マイクロノズルアレイを用いて、1つの液体を他の液体に注入することである。ミヤケ(Miyake)らの「迅速な拡散を用いたマイクロミキサー(Micro mixer with fast diffusion)」(Proceedings of Micro Electro Mechanical Systems, p. 248-253 (1993))を参照されたい。択一的な方法は、複数のステージで分離・再結合させることにより、2種類のフローのストリームを1つのチャンネル内で重ね合わせることである。ブラネビエルグ(Branebierg)らの「層流のによる迅速な混合(Fast mixing by lamination)」(Proc. IEEE Micro Electro Mechanical Systems, p. 441 (1996))、クロア(Kroa)らの「平坦なシリコン/ガラス技術を用いて形成されたマイクロミキサー上の実験およびシミュレーション(Experiments and simulations on a micro-mixer fabricated using a planar silicon/glass technology)」(MEMS, p. 177-182 (1998))、シュベシンガー(Schwesinger)らの「集積マイクロミキサーを用いたモジュール式マイクロ流体システム(A modular microfluidic system with an integrated micromixer)」(J. Micromech. Microeng., Vol 6, pg. 99-102 (1996))、およびシュベシンガーらの「シリコン内に積層された静的マイクロミキサー(A static micromixer built up in silicon)」(Proceedings of the SPIE, The International Society for Optical Engineering, Micromachined Devices and Components, Vol. 2642, p. 150-155)を参照されたい。このタイプのミキサーの特徴は、コック(Koch)らの「シリコンに基づく2つの簡便なマイクロミキサー(Two simple micromixers based on silicon)」(J. Micromech. Microeng., Vol 8, p. 123-126 (1998))、コックらの「マイクロマシーンによる化学反応システム(Micromachined chemical reaction system)」(Sensors and Actuators, Physical(74), p. 207-210)、およびコックらの「マイクロミキサーのための改善された特徴技術(Improved characterization technique for micromixer)」(J. Micromech. Microeng, Vol 9, p. 156-158 (1999))に開示されている。層流技術の変形は、シヌソイド形状の流体チャンネル(カンパー(Kamper)らの「生化学的および化学的マイクロ反応装置のためのマイクロ流体成分(Microfluidic components for biological and chemical microreactors)」(MEMS 1997, p. 338)を参照のこと)、または2種類の対向する流れの流体の択一的チャンネル(http://www. imm-mainz.de/Lnews/Lnews 4/mire. htmlを参照のこと)、あるいは内部で交差するチャンネルを形成する一連の固定的な硬い部材を用いた3Dパイプ(バートシュ(Bertsch)らの「産業用静的ミキサーを大幅に小型化した3Dマイクロミキサー(3D micromixers-downscaling large scale industrial static mixers)」(MEMS 2001 14th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems, p. 507-510を参照のこと)の中で、液体を個別化、再配置、その後に再統合することにより同様に実現される。拡散型の静的な拡散の1つの欠点は、面外流体フローを提供するために、複雑な3次元構造を必要とする点にある。別の欠点は、フローを特徴付ける小さいレイノルド数により、混合時間が長くなることである。
【0010】
能動的なミキサーの問題点は、混合プロセス中のエネルギ吸収により、温度に影響を受けやすい流体に対しては適用できない点である。さらに、いくつかの能動的なミキサーは、帯電または分極可能な流体粒子に基づき、対流または局在的乱流が形成される。すなわち、伝導度の低い液体は適切に混合することができない。摂動力が機械的なマイクロポンプから与えられる場合、バルブのないマイクロポンプが存在するため、混合のための溶液のフロー速度を制御することが極めて複雑となる。
【0011】
連続的なフローシステムにおいて、混合比を制御することは常に技術的な問題となる。サンプルと試薬のフロー速度を変えることにより、試薬とサンプルのポートにおける圧力を適正に制御して、混合比を得ることができる。しかし、流体の特性および混合チャンバ/チャンネルの幾何学的形状により圧力が依存するため、制御することは極めて煩雑となる。インレットがマイクロポンプにより制御される場合、動作周波数とフロー速度の間の関係が非線形であるため、フロー速度を自由に変えることは容易な作業ではない。ミキサーを調整し、電気的に作動するフラッパバルブを用いて、2種類の液体を不連続的に混合することが、ヴォルドマン(Voldman)らの「集積された液体ミキサー/バルブ(An Integrated Liquid Mixer/Valve)」(Journal of Microelectromechanical Systems", Vol. 9, No. 3 (Sep. 2000))に開示されている。このデザインは、所定の混合比を得るために、洗練された圧力フローの較正を必要とする。
【0012】
ホソカワ(Hosokawa)らの「マイクロキャピラリベントを用いた小滴方式のナノ/ピコリットルミキサー(Droplet based nano/picoliter mixer using hydrophobic microcapillary vent)」(MEMS'99, p. 388)、ホソカワらの「ポリ(ジメチルシロキサン)式マイクロ流体デバイスにおけるピコリットルの液体サンプルの処理(Handling of Picoliter Liquid Samples in a Poly (dimethylsiloxane)-Based Microfluidic Device)」(Anal. Chem 1999, Vol. 71, p. 4781-4785)、ワシズ(Washizu)らの「マイクロリアクタ用液体小滴の静電気的駆動(Electrostatic actuation of liquid droplets for micro-reactor applications)」(IEEE Transactions on Industry Applications, Vol. 34 (No. 4), p. 732-737 (1998))、バーンズ(Burns)らの「集積化されたナノリットルDNA分析デバイス(An Integrated Nanoliter DNA Analysis Device)」(Science, Vol. 282 (No. 5388), p. 484 (Oct. 16,1998))、ポーラック(Pollack)らの「マイクロ流体用液体小滴のエレクトロウェッティング方式駆動(Electrowetting-based actuation of liquid droplets for microfluidic applications)」(Appl. Phys. Lett., Vol. 77, p. 1725 (Sept. 2000))、パムラ(Pamula)らの「マイクロ流体のエレクトロウェッティング方式の小滴混合(Microfluidic electrowetting-based droplet mixing)」(MEMS Conference, 2001,8-10)、ファウラー(Fowler)らの「小滴方式のマイクロ流体力学による今後の改善(Enhancement of Mixing by Droplet-based Microfluidics)」(IEEE MEMS Proceedings, 2002,97-100)、ポーラックの「デジタルマイクロ流体力学のためのエレクトロウェッティング方式マイクロ駆動(Electrowetting-based microactuation of droplets for digital microfluidics)」(Ph. D. Thesis, Department of Electrical and Computer Engineering, Duke University)、およびウ(Wu)の「ユニットマイクロ流体システムのためのインプットバッファの設計および製造(Design and Fabrication of an Input Buffer for a Unit Flow Microfluidic System)」(Master thesis, Department of Electrical and Computer Engineering, Duke University)において、小滴方式のミキサーが研究されている。
【0013】
小滴式ミキサーは、連続フロー方式のマイクロ流体デバイスより数多くの利点を有するように設計・構成できると考えられている。離散的フローは、連続的なマイクロ流体デバイスが有するフロー速度に対する問題点を払拭することができる。小滴式混合デバイスのデザインは、安価で製造できる平坦な構造物に依拠することができる。空気式駆動、静電気またはエレクトロウェッティングによる作動メカニズムは、ヒータを必要としないので、(生)化学物質に対する影響を最小限に抑えることができる。適正な小滴形成技術を用いることにより、小滴型ミキサーは、液体の体積をより良好に制御することができる。最後に、小滴式ミキサーは、前後運動または振動などの小滴動作により、小滴内部において再循環させ、拡散が主流となるスケールにおける混合効果を増大させることができる。
【0014】
上述のように、連続フローを必要とするこれまでの分析・混合技術の問題点に対処するために、新規な小滴操作技術を提供することは有用である。特に、以下説明し、クレームする本発明は、部分的には、連続フロー構造に対する択一的でより良好な解決手段が、チャンネルおよび混合チャンバが永久的にエッチングされず、むしろ仮想的なもので、フライ上に構成および再構成することができる場合のシステムを設計することにあると認識することにより実現された。本発明は、流体を小滴に個別(離散)化する手段と、各小滴が仮想的な混合または反応チャンバとして機能するように、個々の小滴を制御する手段とを提供することにより、こうしたシステムを実現する。
【0015】
[発明の要約]
本発明は、エレクトロウェッティング方式の技術を用いた、液体の小滴方式の処理方法および操作方法を提供するものである。小滴はマイクロリットル以下の容量を有していてもよく、電極に対する電圧を制御することにより自由に移動させることができる。小滴の駆動メカニズムは、一般に、電圧誘起されたエレクトロウェッティング効果による小滴内の表面張力勾配に依拠している。本発明のメカニズムによれば、小滴を搬送することができる一方、仮想的なチャンバとして機能させて、チップ上の任意の場所で混合することができる。チップは、所望の作業を実行するためにリアルタイムで再構築可能な電極アレイを有する。本発明によれば、サンプル小滴、試薬小滴、希釈小滴などを独立して制御するように、いくつかの異なるタイプの処理および操作を行うことができる。従前、こうした処理は連続液体フローに対してなされていた。これらの処理は、例えば、駆動または移動、モニタ、検出、照射、培養、反応、希釈、混合、透析、分析などを含む。さらに、本発明の方法を用いて、例えば、マイクロ流体チップにおける連続入力から、連続フロー液体源から小滴を形成することができる。すなわち、本発明は、連続フローから均一の大きさを有し、独立して制御可能な複数の小滴単位に個別化または断片化する方法を提供する。
【0016】
微視的に操作するために、離散的で独立して制御可能パケットまたは小滴に液体を細分化することにより、連続フローシステムに比していくつかの重要な利点が得られる。例えば、流体操作または流体工学を基本的な反復可能な動作に縮減することにより(1つのステップとしての1つの液体ユニットの移動)、デジタル電気工学と類似した、階層的またはセル方式デザインのアプローチを可能にする。
【0017】
上記利点に加えて、以下のような利点を得るため、小滴駆動または小滴操作のためのメカニズムとしてエレクトロウェッティング技術を用いる。
1.小滴の位置に関する改善された制御
2.高密度電極アレイを用いた高い並行処理機能
3.再構築性
4.プログラム動作を用いた混合比制御、混合比のより良好な制御性、混合比の精度改善
5.高い生産性、改善された並行性
6.非同期制御性および精度のさらなる改善を可能にする光学的検出部品との集積
【0018】
とりわけ本発明は、小滴方式のサンプル作成および分析を可能にするサンプリング方法を提供する。本発明は、マイクロ流体チップまたは他の適当な構造体において、エレクトロウェッティング現象を誘発し、制御することにより、連続液体フローから均一な大きさを有する一連の小滴に断片化または個別化する。この液体は、一連の小滴として、順次、構造体の中を通り抜けるか、構造体をわたって搬送され、一連の小滴は、最終的にはアウトプットにおいて、連続フローとして再結合され、収集貯蔵部に配置され、あるいは分析のためフローから迂回する。択一的には、連続フローストリームは、構造体を完全に横断して、小滴を分析するため、連続フローに沿った特定場所で小滴が取り除かれ、サンプル収集される。両方の場合、サンプル収集された小滴は、分析のため構造体の特定領域に搬送される。すなわち、オンラインではあるが、メインフローに対してインラインではなく、分析が行われ、分析をメインフローから分断することができる。
【0019】
メインフローから外れると、各小滴の動きを独立して制御するための設備が存在する。化学分析の目的で、サンプル小滴を、チップまたは他の構造体の上または隣接する試薬貯蔵部から形成された特定の化学的試薬を含む小滴と合体させ、混合させることができる。いくつかの場合、小滴の混合、反応または培養などの所定の機能が付与されるチップの一部を用いて、複数ステップの反応または希釈が必要である。サンプルが準備されると、アナライトの検出または測定に特化したチップの別の部分に、エレクトロウェッティングによりサンプル小滴が搬送される。いくつかの検出領域は、例えば、所定の結合酵素や他の生体分子識別剤を含み、特定の検出に特化したものであってもよく、別のいくつかの検出領域は、蛍光式または吸光式検定のための光学的システムなどの汎用性検出手段を有していてもよい。連続フロー源からチップの分析部分に至る小滴フロー(分析フロー)は、連続フロー(入力フロー)とは独立し、分析を実行する上で格段の柔軟性が許容される。本発明の方法の他の特徴および利点を以下により詳細に説明する。
【0020】
本発明の方法は、連続フローからマイクロ小滴を形成する手段を用いて、小滴を独立して搬送、併合、混合および他の処理を行う。好適な実施形態は、表面張力(すなわちエレクトロウェッティング)を電気的に制御して、これらの操作を実現する。1つの実施形態において、液体は、2つの並行なプレートの間の空間に収容される。一方のプレートは、その表面上にエッチングされた駆動電極を有し、他方のプレートは、接地されるか、基準電位に設定されたエッチング電極または単一の連続的な平面電極を有する。疎水性絶縁物が電極をカバーし、電場が電極と対向プレートの間に形成される。この電場により表面張力勾配が形成され、その結果、電圧印加された電極に重畳する小滴をこの電極に向かって移動させる。電極を適当に配置し、制御することにより、小滴を隣接する電極間において連続的に搬送することができる。パターン化された電極を2次元アレイに配置して、アレイによりカバーされる任意の位置に小滴を搬送することができる。小滴の周囲の空間には空気やオイルなどの不混和性流体を充填してもよい。
【0021】
別の実施形態において、接地電位または基準電位に用いられる構造体は、駆動電極と同一平面上にあり、第2プレート(用いられた場合)は単に汚染空間を定義する。同一平面上の接地部材が電極アレイ上に重畳された導電性グリッドであってもよい。択一的には、接地部材は、接地電極または基準電極として機能するように動的に選択された電極アレイとする一方、別のアレイ電極を駆動電極として機能するように選択してもよい。
【0022】
複数の小滴を同一の電極上で搬送することにより、小滴を一体に合体させることができる。小滴を受動的または能動的に順次混合する。小滴は、拡散により受動的に混合する。小滴は、エレクトロウェッティング現象を利用して、合体小滴を移動または「振動」させることにより能動的に混合する。好適な実施形態において、小滴は、2×2の電極アレイの周囲を回転することにより混合する。小滴を駆動することにより、不可逆的な乱流を形成するか、分散した層流を形成して、拡散による混合を促進させる。小滴は、以下のようにして、より大きい小滴または液体の連続本体部から分離させることができる。すなわち、液体の直下にある電極に沿って、液体本体部の端部に隣接する少なくとも2つの電極を活性化し、活性化した複数の電極の広がりにわたって拡張するように液体を移動させる。そして中間電極を不活性化して、本質的に親水性を有する領域の間の疎水性領域を形成する。液体メニスカスが疎水性領域で破断し、新しい小滴が形成される。この処理を用いて、連続フローストリームから複数の小滴を形成する。
【0023】
本発明の1つの実施形態によれば、小滴を操作するための装置は、基板表面を含む基板、基板表面上に形成された電極アレイ、基準部材アレイ、基板表面上に形成された誘電層、および電極選択部を有する。基準部材は基準電位に設定することができる。基準部材アレイは、各基準部材は少なくとも1つの電極と隣接するように、電極アレイと実質的に同一平面上に配設されている。誘電層は、基板表面上に形成され、電極をカバーするようにパターン形成される。電極選択部は、選択された電極に順次、駆動電圧をバイアスするように、アレイの中から選択された1つまたはそれ以上の電極を順次活性化し、不活性化するマイクロプロセッサまたは他の適当な部品として構成してもよい。電極選択部により実施されるシーケンスにより、選択された電極により決まる所望の経路に沿って、基板表面上に形成された小滴を移動させる。
【0024】
本発明の1つの方法によれば、電極アレイと実質的に同一平面上の基準部材アレイとを有する表面上に小滴を形成することにより、小滴を活性化する。小滴は、複数の電極のうちの第1の電極上に配置され、第2の電極と、第1および第2電極の間に配設された中間基準部材に少なくとも部分的に重なる。第1および第2の電極を活性化して、小滴の少なくとも一部を第2の電極にわたって拡張する。第1の電極を不活性化して、小滴を第1の電極から第2の電極へ移動させる。
【0025】
この方法の1つの態様によれば、第2の電極は第1の方向に沿って第1の電極に隣接している。さらに、アレイは1つまたはそれ以上の追加的な方向に沿って第1の電極に隣接する1つまたはそれ以上の追加的な電極を有する。小滴は、第2電極と同様、これらの追加的な電極に少なくとも部分的に重なる。この方法の態様によれば、第1および第2の電極を含む第1の方向が小滴を移動させるべき方向に沿った所望の方向として選択される。第1の方向の選択に基づいて活性化するために、第2電極が選択される。
【0026】
本発明の別の方法によれば、1つの小滴が2つまたはそれ以上の小滴に分離される。電極アレイと実質的に同一平面上の基準部材アレイとを有する表面上に開始小滴を形成する。電極アレイは、第1の外側電極、第1の外側電極に隣接した中央電極、および中央電極に隣接した第2の外側電極からなる少なくとも3つの電極を含む電極を有する。開始小滴は、当初において、3つの電極のうちの少なくとも1つの電極上に配置され、3つの電極のうちの少なくとももう1つの電極と重なる。3つの電極のそれぞれを活性化して、開始小滴を3つの電極にわたって拡張させる。中間電極の不活性化して、開始小滴を第1および第2の分離小滴に分離する。第1の分離小滴を第1の外側電極上に配置し、第2の分離小滴を第2の外側電極上に配置する。
【0027】
本発明のさらに別の方法において、2つまたはそれ以上の小滴を1つの小滴に併合する。電極アレイと実質的に同一平面上の基準部材アレイとを有する表面上に第1および第2の小滴を形成する。電極アレイは、第1の外側電極、第1の外側電極に隣接した中央電極、および中央電極に隣接した第2の外側電極からなる少なくとも3つの電極を含む電極を有する。第1の小滴は、第1の外側電極上に配置され、少なくとも部分的に中間電極と重なる。第2の小滴は、第2の外側電極上に配置され、少なくとも部分的に中間電極と重なる。3つの電極のうちの1つの電極を目的地電極として選択する。目的地電極の選択に基づいて、3つの電極のうちの2つまたはそれ以上の電極を選択して、順次活性化し、不活性化する。第1および第2の小滴の一方を他方に向かって移動させるか、第1および第2の小滴を互いに向かって移動させるようにシーケンス処理するために選択された電極を順次活性化し、不活性化する。第1および第2の小滴が一体に併合し、目的地電極上で合体小滴が形成される。
【0028】
この方法の1の態様によれば、第1の小滴が第1の成分を有し、第2の小滴が第2の成分を有し、合体小滴が第1および第2の成分を有する。この方法が、第1および第2の成分を一体に混合するステップを有する。本発明によれば、合体小滴を形成するステップにより、第1および第2の成分が一体に混合される。本発明によれば、混合ステップを受動的または能動的に行うことができる。本発明の態様において、混合ステップは、4つの電極からなる2×2のサブアレイ上の合体小滴を、4つの電極を順次活性化し、不活性化することにより、合体小滴を回転させるように移動させることを含む。合体小滴が回転する一方、合体小滴の少なくとも一部が4つの電極の交差領域またはその近辺において実質的に静止した状態で維持される。本発明の別の態様において、混合ステップは、合体小滴を直線的に配列された電極アレイの一連の電極に沿って、所望回数および所望振動数で前後に振動させるために、直線的に配列された電極アレイの一連の電極を順次活性化し、不活性化することを含む。本発明の追加的な混合手法を以下詳細に説明する。
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、小滴を操作するための装置は、基板表面を含む基板と、基板表面上に形成された電極アレイと、基板表面上に形成され、電極をカバーする誘電層と、電極選択部とを備える。電極選択部は、電極対のシーケンスを動的に形成する。各電極対は、第1の電圧がバイアスされた選択された第1の電極と、第1の電圧より低い第2の電圧がバイアスされ、選択された第1の電極に隣接して配設された選択された第2の電極とを有する。好適には、第2の電圧は接地電圧またはいくつかの他の基準電圧である。基板表面上に形成された小滴は、電極選択部により選択された電極対の間にある所望経路に沿って移動する。
【0030】
本発明のさらに別の方法によれば、電極アレイを含む表面上に小滴を形成することにより、小滴を駆動する。小滴は、当初において、第1の電極上に配置され、第1のギャップを隔てて第1の電極から離間した第2の電極に少なくとも部分的に重なる。第1の電極に第1の電圧をバイアスし、第1の電圧より低い第2の電圧を第2の電極にバイアスする。こうして、小滴を第1のギャップ上の中央に配置する。第1および第2の電極に近接する第3の電極に、第2の電圧より高い第3の電圧をバイアスし、第3の電極の上に小滴を拡張する。第1の電極へのバイアスを取り除き、第1の電極から遠ざかる方向に小滴を移動させる。こうして、小滴を第2および第3の電極の間の第2のギャップ上の中央に配置する。
【0031】
本発明のさらに別の方法によれば、小滴を2つまたはそれ以上の小滴に分離する。電極アレイを有する表面上に開始小滴を形成する。電極アレイは、第1の外側電極、第1の外側電極に隣接した中央電極、および中央電極に隣接した第2の外側電極からなる少なくとも3つの電極を含む電極を有する。開始小滴は、当初において、3つの電極のうちの少なくとも1つの電極上に配置され、3つの電極のうちの少なくとももう1つの電極と重なる。開始小滴を3つの電極にわたって拡張させるために、3つの電極のそれぞれに第1の電圧をバイアスする。開始小滴を第1および第2の分離小滴に分離するために、中間電極に第1の電圧より低い第2の電圧をバイアスする。第1の分離小滴を第1の外側電極上に配置し、第2の分離小滴を第2の外側電極上に配置する。
【0032】
本発明の別の方法によれば、2つまたはそれ以上の小滴を1つの小滴に併合する。電極アレイを有する表面上に第1および第2の小滴を形成する。電極アレイは、第1の外側電極、第1の外側電極に隣接した中央電極、および中央電極に隣接した第2の外側電極からなる少なくとも3つの電極を含む電極を有する。第1の小滴は、第1の外側電極上に配置され、少なくとも部分的に中間電極と重なる。第2の小滴は、第2の外側電極上に配置され、少なくとも部分的に中間電極と重なる。3つの電極のうちの1つの電極を目的地電極として選択する。目的地電極の選択に基づいて、3つの電極のうちの2つまたはそれ以上の電極を選択して、順次バイアスする。第1および第2の小滴の一方を他方に向かって移動させるか、第1および第2の小滴を互いに向かって移動させるように、第1および第2の電圧の間でシーケンス処理するために選択された電極を順次バイアスする。第1および第2の小滴を一体に併合して、目的地電極上で合体小滴を形成する。
【0033】
本発明は、連続液体フローをサンプリングする方法を提供する。第1フロー経路に沿って表面に液体フローを供給する。表面は電極アレイと実質的に同一平面上の基準部材アレイとを有する。液体フローの少なくとも一部が第1の電極上に配置され、第2の電極と第1および第2の電極の間の基準部材の上に少なくとも部分的に重なる。液体フロー部分を第2および第3の電極にわたって拡張するために、第1の電極、第2の電極、および第2電極に隣接する第3の電極を活性化する。第3の電極上の液体フローから小滴を形成するために、第2の電極を不活性化する。この小滴を液体フローとは別体とし、制御可能に独立させる。
【0034】
連続液体フローをサンプリングするための本発明の別の方法によれば、第1フロー経路に沿って表面に液体フローを供給する。表面は電極アレイを有する。液体フローの少なくとも一部が第1の電極上に配置され、第2の電極に少なくとも部分的に重なる。液体フロー部分を第2および第3の電極にわたって拡張するために、第1の電極、第2の電極、および第2電極に隣接する第3の電極に第1の電圧をバイアスする。第3の電極上の液体フローから小滴を形成するために、第1の電圧より低い電圧を第2の電極にバイアスする。こうして形成された小滴は、液体フローとは別体であり、制御可能に独立している。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態によれば、バイナリ混合装置は、第1の混合ユニット、第2の混合ユニット、および電極選択部を備える。第1の混合ユニットは、第1の表面領域、第1の表面領域上に配設された第1の電極アレイ、および第1の電極アレイと実質的に同一平面上に配設された第1の基準部材を有する。第2の混合ユニットは、第2の表面領域、第2の表面領域上に配設された第2の電極アレイ、第2の電極アレイと実質的に同一平面上に配設された第2の基準部材、および第2の表面領域と第1の混合ユニットとに連通した小滴アウトレット領域を有する。電極選択部は、第1の表面領域に供給された2つの小滴を一体に混合するように1つまたはそれ以上の選択された第1の電極を順次活性化し、不活性化する。電極選択部は、同様に、第2の表面領域に供給された別の2つの小滴を一体に混合するように1つまたはそれ以上の選択された第2の電極を順次活性化し、不活性化する。
【0036】
したがって本発明の目的は、連続フロー液体入力源をサンプル採取して、均一の大きさを有し、独立して制御可能な小滴を連続的かつ自動的に形成することにある。
【0037】
本発明のさらなる目的は、エレクトロウェッティング技術を用いて、搬送、混合、検出、分析などの小滴方式の操作を実行し、制御することにある。
【0038】
本発明のさらなる目的は、高い精度で所望の混合比を得るようにバイナリ混合を有効に実現するのに適した構成を提供することにある。
【0039】
これまで説明した本発明の目的は、以下に最良に開示する添付図面を参照しながら以下の記載を参照すると明らかとなるであろう。
【0040】
[発明の詳細な説明]
本明細書の主旨において、「層(film)」および「フィルム(film)」なる用語は、置換可能に用いられ、必須ではないが、通常平坦または実質的に平坦で、一般にコーティングや処理したものの上に形成されるか、別の構造体の上に積層される構造物または本体部を示す。
【0041】
本明細書の主旨において、「連絡する(communicate)」なる用語(例えば、第1部品が第2部品と「連絡する」、または「連通する」。)を用いて、2つの構成部品または構成要素の間の構造的関係、機能的関係、機械的関係、電気的関係、光学的関係、流体的関係、またはそれらの組み合わせを意味する。したがって、1つの構成部品が第2の構成部品と連絡するという場合、追加的な構成部品が第1および第2の構成部品との間に存在する連絡の可能性、および/または追加的な構成部品と動作可能に関連するか、係合する可能性を排除するものではない。
【0042】
本明細書の主旨において、1つの層、領域、または基板などの所与の構成部品を参照して、別の構成部品「の上に(on)」、「の中に(in)」、または「において(at)」積層または形成されるとした場合、所与の構成部品は他の構成部品の上に直接的に形成してもよいし、あるいは介在する構成部品(例えば、1つ以上のバッファ層、中間層、電極またはコンタクト)があってもよいと理解すべきである。さらに、「積層される(disposed on)」または「形成される(formed on)」なる用語は置換可能に用いられ、所与の構成部品が別の構成部品とのどのような関係で配設されるかを意味すると理解すべきである。したがって、「積層される(disposed on)」または「形成される(formed on)」なる用語は、材料の搬送、積層、または形成に関する特定方法に関して限定を与えるように意図するものではない。
【0043】
本明細書の主旨において、任意の形態を有する液体が、電極、マトリックス、または表面「の上に(on)」、「の中に(in)」、または「の上方に(over)」あると説明される場合、こうした液体は、電極/アレイ/マトリックス/表面と直接的に接触するか、液体と電極/アレイ/マトリックス/表面との間に介在する1つ以上の層またはフィルムと接触し得ると理解すべきである。
【0044】
ここで用いられる「試薬(reagent)」なる用語は、サンプル材料と反応し、希釈し、溶媒和し、懸濁し、乳状化し、封入し、相互作用する上で有用な材料を意味する。
【0045】
必要に応じて図1−25Bを参照しながら、本発明により提供される小滴方式の方法および装置を詳細に説明する。
【0046】
[エレクトロウェッティングによる小滴方式駆動]
ここで図1を参照すると、エレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構が、ポンプ、バルブ、または固定されたチャンネルを必要とすることなく、小滴Dに対してエレクトロウェッティング方式に操作する好適な実施形態として、一般に符号10で図示されている。小滴Dは、電解質か、分極可能か、あるいは電流を流すか、帯電させることができる。小滴Dは、一般に符号12で示す上側プレーンと、一般に符号14で示す下側プレーンとの間で挟持されている。本明細書においては、これら2つのプレーン12,14を区別するために、「上側(upper)」および「下側(lower)」なる用語が用いられるが、水平方向におけるプレーン12,14の向きを限定するものではない。下側プレーン12は、独立してアドレス可能な一連の制御電極を有する。一例として、3つからなる直線的な一連の制御電極または駆動電極E(特にE1,E2,E3)が図1に図示されている。ただし、制御電極E1,E2,E3は、円などの直線的でない経路に沿って配置することもできると理解される。さらに、本発明の利点を享受するデバイス構成(例えば、マイクロ流体チップ)において、制御電極E1,E2,E3は、全体として2次元電極アレイまたはグリッドを構成するより多数の制御電極の一部である。図1は、一般にC(特にC1,C2,C3)と称するユニットセルを概念化するために、隣接する制御電極E1,E2,E3の間に破線を有する。好適には、各ユニットセルC1,C2,C3は、単一の制御電極E1,E2,E3を含む。通常、各ユニットセルCまたは制御電極Eの大きさは、約0.05mm〜約2mmの間である。
【0047】
制御電極E1,E2,E3は、適当な下側基板または下側プレート21の中に埋め込まれるか、その上に形成されている。疎水性絶縁物からなる下側薄膜層23が下側プレート21をカバーするように形成され、制御電極E1,E2,E3を電気的に絶縁する。下側疎水層23は、単一の連続した層であるが、択一的には制御電極E1,E2,E3が配設された領域だけをカバーするようにパターン形成してもよい。上側プレーン14は、単一の連続した接地電極Gを有している。適当な上側基板またはプレート25の中に埋め込まれるか、その上に形成されている。択一的には、複数の接地電極Gが各制御電極E1,E2,E3の配置位置に並行して設けてもよく、この場合、1つの接地電極Gが対応する1つの制御電極Eに関連付けられる。好適には、疎水性絶縁物からなる上側薄膜層27が同様に、接地電極Gを絶縁するために上側プレート25に付設される。下側層23および上側層27に好適な疎水性材料の非限定的な具体例は、(ウィルミントン州デラウェアにあるE.I. duPont deNemours and Companyから市販されている)テフロン(登録商標)AF1600材料である。マイクロアクチュエータ機構10の形状および小滴Dの容量は、小滴Dの足跡が、中央制御電極(例えば、E2)に隣接する少なくとも2つの制御電極(例えば、E1,E2)と重なり合うとともに、上側層27と接触するように制御される。好適には、これは、下側プレーン12と上側プレーン14により決まる、圧迫されていない状態の小滴の直径より小さいギャップまたは間隔dを特定することにより実現される。通常、間隔dの断面寸法は、約0.01mm〜約1mmの間である。好適には、媒質がギャップdを充填し、小滴Dを包囲する。媒質は、小滴Dの蒸発を防ぐために、空気のような不活性ガスあるいはシリコーンオイルなどの非混和性流体であってもよい。
【0048】
接地電極Gおよび制御電極E1,E2,E3は、従来式の導電性リードラインL1,L2,L3を介して、好適にはDC電圧源であるが、択一的にはAC電圧源であってもよい少なくとも1つの適当な電圧源と電気的に導通している。各制御電極E1,E2,E3に対して他の制御電極E1,E2,E3とは独立して通電することができる。これは、各制御電極E1,E2,E3に接続された適当なスイッチS1,S2,S3、または能動状態(オン状態、ハイ電圧、またはバイナリ数の1)または受動状態(オフ状態、ロー電圧、またはバイナリ数の0)に各制御電極E1,E2,E3を独立して切り替えるための他の適当な手段を設けることにより実現することができる。他の実施形態において、あるいは電極アレイの他の領域において、2つ以上の制御電極Eを同時に駆動するために、共通に接続してもよい。
【0049】
エレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構10は、マイクロ流体チップの一部を示し、この上に従来式のマイクロ流体部品および/またはマイクロ電気部品を集積してもよい。このチップは、例えば、MOS(金属酸化物半導体)回路部とインターフェイスされた抵抗性発熱領域、マイクロチャンネル、マイクロポンプ、圧力センサ、光学的導波路、および/またはバイオセンシングまたは化学センシング部品を有していてもよい。
【0050】
ここで図2を参照すると、電極アレイまたはその一部が図示され、制御電極(図示せず)を有する隣接するユニットセル(例えば、C1,C2)の間の各構造的インターフェイスは、好適には、各ユニットセルC1,C2の主要平坦構造物から外側に延びる相互連結突起部42,43により形成される、一般に符号40で示す相互嵌合領域(互いにかみ合う領域)により特徴付けられる。セルとセルの間のインターフェイスが直線的な端部境界を有する場合に比して、こうした相互嵌合領域40は、1つのユニットセル(例えば、C1)から隣接するユニットセル(例えば、C2)への搬送をより連続的なものとする上で有用である。ただし、本発明の任意の実施形態による電極またはユニットセルは、高密度で配列された2次元アレイを構成する上で好適な正方形または八角形などの多角形形状を有していてもよい。
【0051】
再び図1を参照して、マイクロアクチュエータ機構10のデザインにより実現される基本的なエレクトロウェッティング技術について説明する。当初において、すべての制御電極(すなわち、小滴Dが中央に配置される制御電極E2および隣接する制御電極E1,E3)が接地または浮動状態にあり、小滴Dの任意の位置における接触角度が小滴Dに対する平衡接触角に等しい。小滴Dの真下に配設された制御電極E2に電位が付加されると、小滴Dと活性化された(電圧が印加された)制御電極E2の間の界面において、電荷層が形成され、界面エネルギγSLが局在的に低減する。より小さい疎水性を有する絶縁層23により与えられる硬い絶縁物が小滴Dと制御電極E2の間の静電容量を制御するため、これまでに開発された非絶縁型の電極構成を有する場合と同様、その効果は小滴Dの電解質の液相の特定の空間−電荷効果に依存しない。界面エネルギが低減する際の電圧依存性は、以下のように記述される。
ここで、εは絶縁物の誘電率、dは絶縁物の厚み、Vは印加される電位である。γSLにおける変化は、ヤング方程式に従い、小滴Dおよび活性化された制御電極E2の間のインターフェイスにおける接触角を低減する。小滴Dの一部が接地電極E1またはE3と重なり合うと、小滴のメニスカスが非対称に変形し、小滴Dの端部間に圧力勾配が形成され、活性化された電極E1またはE3に向かうバルクフローが生じる。例えば、制御電極E2,E3を接地状態に維持しながら、制御電極E1を活性化することにより、小滴Dを左方向へ(すなわち、ユニットセルC1の方へ)移動させることができる。別の具体例では、制御電極E1,E2を接地状態に維持しながら、制御電極E3を活性化することにより、小滴Dを右方向へ(すなわち、ユニットセルC3の方へ)移動させることができる。
【0052】
以下の実施例は、一般に、図1および図2を参照して、エレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構10のプロトタイプの実施形態を説明する。
【0053】
[実施例]
1.5mmピッチで7つの相互嵌合した制御電極Eの単一の直線的アレイからなるプロトタイプデバイスを製造し、テストを行った。標準的なマイクロ製造技術を用いて、2000オングストローム厚のクロム層をガラス製の下側プレート21上にパターン形成することにより、制御電極Eを形成した。チップは、7000オングストローム厚のパリレンCをコーティングした後、テフロン(登録商標)AF1600からなる約2000オングストローム厚の層をコーティングした。接地電極Gは、透明インジウムスズ酸化物(ITO)からなる導電層(Rζ<20Ω/平方)でコーティングされたガラス製の上側プレート25を有する。同様に、テフロン(登録商標)AF1600からなる薄膜27(〜500オングストローム)を接地電極Gに付設した。接地電極G上の薄いTEFLON(登録商標)コーティングは、表面を疎水化させるが、絶縁性ではなかった。テフロン(登録商標)でコーティングした後、両方の表面は水に対して104°の接触角を有する。
【0054】
ピペットを用いて、100mMのKClの水小滴(0.7〜1.0μl)をアレイ上に供給し、対向する電極Eと電極Gの間に0.3mmのギャップdを形成するように上側プレート25を配置した。ばね荷重式のコンタクトピン(図示せず)を有するカスタマイズされたクランプを用いて、ボンドパッドを接続した。コンピュータを用いて、接地電圧および120VのDC供給電源の出力電圧を個別にスイッチングすることができるカスタム仕様電気インターフェィスを制御した。
【0055】
小滴は、当初において、接地された制御電極(例えば、E2)の中央に配置され、動きが観察されるまで、隣接する電極の電位を増大させた。小滴Dの移動させ始めるために、通常30〜40Vの電圧が必要であった。一旦、この閾値を超えると、小滴の移動は素早く、反復可能なものであった。接触角ヒステリシスは、この閾値効果に呼応するメカニズムであると考えられている。80Vの印加電位で4つの隣接する制御電極Eを活性化すると、小滴Dは、15Hzのスイッチング周波数で、4つの制御電極にわたって反復して移動した。
【0056】
小滴Dの移動時間ttrは、電圧電位を印加した後、小滴Dが隣接する電極の遠い方の端部に到達するまでの時間と定義された。したがって移動時間ttrは、連続的な移動の間に許容された最小時間を示し、(1/ttr)は、小滴Dの連続的移動に対する最大スイッチング速度であった。電圧の関数としての最大スイッチング速度を図3にプロットした。ここでttrは、移動する小滴Dの記録されたビデオフレームの数をカウントすることにより求められた。
【0057】
6nlの容量の小滴に対して、小滴が1000Hz以上のスイッチング速度で1000サイクル以上の移動し続けることが確かめられた。この速度は、10.0cm/秒の平均速度に相当し、小滴の電気的な操作に関して先に報告されたものより約300倍速い。M.ワシズ(M. Washizu)の論文(IEEE Trans. Ind. Appl. 34,732 (1998))を参照されたい。(水の)小滴Dの端部間の必要とされる温度差が100℃を超えるため、サーモキャピラリィシステムではこれに相当する速度を得ることができない。サンマルコ(Sammarco)らの論文(AlChE J., 45, 350 (1999))を参照されたい。これらは、小滴方式のマイクロ流体システムのための作動メカニズムとしてのエレクトロウェッティングの可能性を示唆している。このデザインは、任意の大規模な2次元アレイに拡張することができ、多数の小滴Dを正確に独立して制御し、マイクロ流体処理に対する一般的なプラットフォームとして機能することを可能にする。
【0058】
図4A−7Bを参照すると、いくつかの小滴を操作する基本動作の具体例が開示されている。図1の場合、直線的に配置された3つのユニットセルC1,C2,C3と関連する制御電極E1,E2,E3が図示されるが、これらのユニットセルC1,C2,C3および制御電極E1,E2,E3は、ユニットセル/制御電極のより大きい直線的な領域、非直線的領域、または2次元アレイを構成してもよい。図4B−7Bにおいては、便宜上、制御電極およびユニットセルを合わせて制御電極E1,E2,E3という。さらにユニットセルC1,C2,C3は、チップ表面上の領域などの物理的な部材または概念的な部品であってもよい。図4A−7Bのそれぞれにおいて、能動的(すなわち活性化された)制御電極E1,E2,E3は、その関連する電気的リードラインL1,L2,L3をONとし、受動的(すなわち不活性化された、浮動または接地状態にある)制御電極E1,E2,E3は、その関連する電気的リードラインL1,L2,L3をOFFとしている。
【0059】
図4A−4Dを参照すると、基本的な「移動(MOVE)」動作が図示されている。図4Aは、小滴Dが制御電極E1上の中央に配置されたスタート位置を示す。当初、すべての制御電極E1,E2,E3は接地されており、小滴Dは制御電極E1上で静止し、平衡状態にある。択一的には、他の小滴に対して他の操作動作がなされ得るときに、制御電極E1を活性化し、隣接するすべての制御電極(例えばE2)を接地して、当初において小滴Dを「維持(HOLD)」または「格納(STORE)」状態に保ち、アレイの隣接する領域から小滴Dを孤立させる。図4A−4Bの矢印で示す方向に小滴Dを移動させるために、制御電極E2を活性化して小滴Dを引き寄せ、図4Bに示すように、小滴Dを移動させ、制御電極E2上の中央に配置する。制御電極E2の電圧電位を取り除いた後、続けて制御電極E3を活性化して、図4Cに示すように、小滴Dを制御電極E3上に移動させる。電極のこの操作シーケンスを反復して、小滴Dを矢印で示す所望の方向に移動させ続けることができる。予め設定されたシーケンス(順序)に従い、選択されたアレイ電極を活性化し、不活性化するように、(従来式のマイクロプロセッサなどの)電気的制御ユニットを適当にプログラムすることにより、小滴Dが電極アレイにわたって移動する経路を正確に容易に制御することができる。すなわち、例えば小滴Dを駆動して、アレイ内で右転回および左転回させることができる。例えば、図4Bに示すように、小滴Dを制御電極E2から制御電極E1まで移動させた後、図4Dに示すように、別の列の電極E4−E46の制御電極E5へ移動させることができる。さらに、上記実施例で説明したように、小滴Dのかき混ぜなどのさまざまな目的により、所望する数のユニットセルに沿って、所望する周波数で小滴Dを往復して循環させる(すなわち振動させる)。
【0060】
図5A−5Cは、基本的な「併合(MERGE)または混合(MIX)」動作を開示し、2つの小滴D1,D2を1つの小滴D3に合体させる。図5Aにおいて、2つの小滴D1,D2は、当初において、少なくとも1つの介在する制御電極E2により隔てられた制御電極E1,E3に配置されている。図5Bに示すように、3つすべての制御電極E1,E2,E3を活性化することにより、図5Bの矢印で示すように、中央の制御電極E2を超えて、小滴D1,D2を互いに引き寄せる。小滴D1,D2の対向する端部が中央の制御電極E2で互いに出くわすと、2つの小滴D1,D2を一体に連結する単一のメニスカスMが形成される。図5Cに示すように、活性化された中央制御電極E2と接触する小滴D1,D2の隣接表面のぬれ性を増大させたまま、2つの外側にある制御電極E1,E3を接地状態に戻すことにより、制御電極E1,E3を含むユニットセルの表面の疎水性を増大させ、併合した小滴D1,D2を押し返す。その結果、図5Cに示すように、小滴D1,D2は単一の混合小滴D3に合体する。これは、こうした状況において、小滴D3に対する最低のエネルギ状態を示す。結果として得られた混合小滴D3は、寄生損失が無視できるか、ゼロであるので、元の混合される前の小滴D1,D2の2倍の容量または質量を有すると推定できる。その理由は、小滴を包囲するフィラー流体(例えば、空気またはシリコーンオイルなどの不混和性液体)を好適に使用することにより、小滴材料が蒸発することを回避し、小滴材料(例えば、図1に示す上側および下側疎水性層27,23)が低摩擦表面であり、そして/または本発明で採用されたエレクトロウェッティング機構が熱によらないためである。
【0061】
本明細書において、2つまたはそれ以上の小滴が合体することを指して、併合(MERGE)または混合(MIX)なる用語は置換可能に用いられてきた。それは、小滴が併合しても、当初別々であった小滴が常に直接的または間接的に完全に混合するとは限らないためである。併合することにより混合されるかどうかは、数多くのファクタに依存する。これらのファクタとして、混合すべき小滴のそれぞれの組成または化学成分、小滴の物理的特性、または温度や圧力などの周囲条件、小滴の粘性や表面張力などの派生的特性、および小滴が移動するか、再び分離する前の合体した状態で維持される時間が挙げられる。一般に、小滴が一体に混合するメカニズムは、受動的混合と能動的混合に分類することができる。受動的混合において、混合動作している間、併合された小滴は最終的な電極上に配置される。合体小滴内で許容可能な程度の拡散が生じれば、受動的混合は十分であり得る。他方、能動的混合においては、併合された小滴がいくつかの手法で動き回り、処理にエネルギを加えて、完全またはより完全な混合を実現する。本発明により実現される能動的混合の手法を以下に説明する。
【0062】
併合動作の後に別個の混合動作が行われる場合、これら2つの動作は、チップの電極アレイ上の異なる部分または異なる領域で起こり得ることに留意されたい。例えば、2つの小滴を1つの領域で併合し、併合小滴を別の領域に搬送するために、1つまたはそれ以上の移動動作を行うことができる。以下説明するように、能動的混合の手法は、他の領域で行うか、併合された小滴が他の領域に搬送される間に行うことができる。
【0063】
図6A−6Cは、基本的な「分離(SPRIT)」動作を図示し、上記説明した併合または混合動作の動作と本質的に正反対のものである。当初、図6Aに示すように、3つすべての制御電極E1,E2,E3が接地され、平衡状態において、単一の小滴Dが中央の制御電極E2上に配置される。図6Bに示すように、外側にある制御電極E1,E3が活性化され、小滴を水平方向外側へ(矢印の方向へ)制御電極E1,E3上に引き寄せる。これは、小滴DのメニスカスMを縮小させる効果を有し、この効果は、活性化された制御電極E1,E3上に形成された外側ローブ(lobe:丸い突起物)を有する「ネッキング」として特徴付けられる。最終的には、図6Cに示すように、メニスカスMの中央部分が破断して、元の小滴Dから分離した2つの新しい小滴D1,D2を形成する。部分的には、物理的構成部品の対称性、およびエレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構10(図1)の構造、さらに外側にある制御電極E1,E3に印加される電圧電位が等しいことに起因して、分離した小滴D1,D2は同じか、実質的に同じ容量を有する。分析動作および検定動作などの本発明の数多くの実施形態において、マイクロ流体チップまたは他のアレイ包含デバイスの上の小滴の大きさを均一に維持するために、分離動作は併合または混合動作のすぐ後に行われる。
【0064】
ここで図7A−7Bを参照すると、基本的な分離動作から個別化(DISCRETIZE)動作を派生させることができる。図7Aに示すように、電極包含ユニットセル(例えば、制御電極E1)に隣接する電極グリッドまたはその端部のいずれかに、1つの表面またはI/Oポートが設けられ、これが液体の入口および/または出口として機能する。液体供給デバイス50を設け、これは、所定量の液体LQを供給および/または吸引するために構成された任意の従来式のデザイン(例えば、キャピラリィチューブ、ピペット、流体ペン、シリンジなど)であってもよい。供給デバイス50は、ポートI/Oまたは制御電極E1に直接的に液体LQの計量された用量(例えば、アリクォート)または液体LQの連続フローを供給するように構成することができる。供給デバイス50を用いる代わりに、液体LQの連続フローをマイクロ流体チップの表面にわたって案内してもよく、このとき制御電極E1,E2,E3は、連続フローの方向、または連続フローの方向に対して同一直線上にない方向(例えば、直角方向)に配置される。図7Aに示す特定の例示的な実施形態において、供給デバイス50は液体LQを制御電極E1に供給する。
【0065】
電極アレイ上に小滴を形成するために、液体LQの主要部の直下にある制御電極(制御電極E1)、および液体主要部の端部に隣接する少なくとも2つの制御電極(例えば、制御電極E1,E3)が活性化される。すると、図7Aに示すように、供給された液体LQの主要部が制御電極E1,E2に広がる。図6A−6Cを参照して上記説明した分離動作と同様に、中間にある制御電極(制御電極E2)を不活性化して、実質的な親水性を有する2つの領域の間に疎水性領域を形成する。液体メニスカスは、疎水性領域上で破断し、図7Bに示すように、制御電極E3の中央に配置された新しい小滴Dを形成または摘み取る。この時点から、他のアレイ電極を活性化/不活性化シーケンスを行い、小滴Dを任意の所望する列方向および/または行方向へ電極アレイの他の領域に移動させてもよい。さらに、液体LQの連続的入力フローに対して、この供給プロセスを反復して、グリッドまたはアレイ上に一連の小滴を形成することにより、連続フローを個別化することができる。以下により詳細に説明するように、特に、数多くの小滴に対して複数の動作を同時に行う場合、個別化処理はアレイ上の小滴方式のプロセスを実行する上で極めて有用である。
【0066】
[小滴方式の混合手法]
本発明に基づき小滴を混合させるためのいくつかの手法の具体例を以下説明する。図8A−8Bを参照すると、図1を参照して上記説明したエレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ10などの構成を採用して、2つまたはそれ以上の小滴、すなわち小滴D1,D2に関する併合動作および混合動作を行うことができる。図8A−8Bにおいて、小滴D1,D2は、当初、それぞれ制御電極E2,E5の中央に配置される。図5A−5Cを参照して先に説明したように、小滴D1,D2は、エレクトロウェッティングを用いて駆動し、互いに向かって移動し、最終的な電極上において一体に併合する。最終的な電極は、電極E3,E4などの中間に配置された電極であってもよい。択一的には、1つの小滴が1つまたはそれ以上の制御電極を超えて移動し、別の静止した小滴と併合してもよい。すなわち、図8A−8Bに示すように、小滴D1を駆動して、矢印に示すように、中間電極E3,E4を超えて移動させ、電極上にある小滴D2と電極E5上で併合する。合体小滴は、1次元の直線的な混合、2次元の直線的な混合、または2次元のループ状の混合の手法により能動的に混合される。
【0067】
1次元の直線的な混合手法の具体例として、複数の小滴が先に説明したように併合され、その結果、合体小滴の内容物を動揺させるために、いくつかの電極にわたって所望する振動数で合体小滴を前後に振動させる(動揺させる、または切り替える)。この混合処理は、上記実施例で説明されたが、アレイの行上または列上にある電極などの直線的に配置された任意の数の電極が関与していてもよい。図9A,9B,9Cは、それぞれ2つの電極、3つの電極、4つの電極が連なったものを示し、振動させることにより、併合または混合させることができる。1次元の直線的な混合の別の具体例では、複数の小滴を併合し、1つまたは複数の合体小滴を上述のように分離する。その結果、分離/併合された小滴は、いくつかの電極にわたって所望の周波数で前後に振動する。所望の混合の程度が得られるまで、分離/併合された小滴を数多くの連続サイクルで再結合、再分離、再振動させることができる。これらの両方の1次元の直線的な混合アプローチにより、1つまたは複数の合体小滴の中で可逆的なフローが形成される。すなわち、合体小滴が反対方向へ振動するとき、一方向に移動することにより得られる混合の流れを止めるか、反転させることができる。したがって、いくつかの状況において、1次元の混合プロセスを伴う可逆的フローは、あまりにも多大な混合時間を要することがある。
【0068】
ここで図10A−10Cを参照すると、「搬送による混合(mixing-in-transport)」と称する1次元の直線的混合の別の具体例について説明する。この方法は、2つまたはそれ以上の小滴を合体させること、および混合が完了するまで合体小滴を所望するフロー経路に沿って前進方向に連続的に駆動することを必要とする。図10Aを参照すると、合体小滴Dは、事前に設定された到着電極Efに達するまで、始点電極E0からアレイ上電極のプログラムされた経路に沿って搬送される。終点電極Efは、分析、反応、培養または検出などの後続のプロセスがプログラムされたアレイ上の所定位置であってもよい。こうした場合、合体小滴Dが能動的に混合されるフロー経路は、矢印で示すように、サンプルが入口からアレイ上の処理領域まで搬送される分析フローとしても機能する。始点電極E0から終点電極Efまでの選択経路を含む数多くの電極の数は、合体小滴Dが受ける数多くの駆動に対応する。すなわち、十分な数の中間経路電極を用いることにより、合体小滴Dは、終点電極Efに到達するまでの時間に十分に混合される。上述の振動的な混合技術の場合、フロー経路は反転しないことに留意されたい。ただしフロー経路は、図10A−10Cのそれぞれの矢印で示すように、アレイのx−y平面において、1つまたはそれ以上の直角の転回を有していてもよい。いくつかの場合においては、経路を転回することにより、混合効果を改善する独特のフローパターンを形成する。図10Bにおいて、数多くの直角の転回からなる梯子状または階段状の構造を有する。図10Cにおいて、終点電極Efは始点電極E0と同じ列にあるが、合体小滴Dは、通過する数多くの電極および転回数を多くするために、その列から逸脱し、連続的に転回するフロー経路を介して駆動される。
【0069】
ここで図11を参照すると、2次元の直線的な混合手法が図示されている。アレイの1つの電極列EROWおよび1つの電極行ECOLが用いられる。小滴D1,D2が電極列EROWに沿って互いに向かって移動し、上記の通り併合し、電極列EROWおよび電極行ECOLの交点に配置された電極の中央に併合した小滴D3が形成される。先に説明したように、選択された電極行ECOLの電極を順次活性化し、不活性化して、併合した小滴D3を分割して、分割された小滴D4,D5を形成する。分割小滴D4,D5は、電極行ECOLに沿って移動する。分割された小滴D4,D5の連続的な移動により、分割された小滴D4,D5の内容物に対する混合効果が改善される。
【0070】
図12A−12Bを参照すると、2次元のループ混合手法の具体例が図示されている。図12Aにおいて、合体小滴Dは、円形状、正方形状、またはアレイの選択された列と行の電極に沿った閉じたループ経路上で時計回りまたは反時計回りに循環する。選択された経路を含む適当な電極をシーケンスする(順序付ける)ことにより、合体小滴Dを周期的に駆動させることができる。合体小滴Dは、その内容物を混ぜ合わせるのに十分な回数だけ循環する。合体小滴Dの循環により、混合効果を改善し、完全に混合するために必要な時間を低減する不可逆的フローパターンが得られる。図12Aにおいて、駆動に際して利用されない中央の電極がただ1つだけ図示されているが、経路をより大きく形成して、より多くの中央電極を囲むようにしてもよい。
【0071】
図12Bにおいて、少なくとも4つの隣接する電極E1−E4からなるサブアレイを用いる。合体小滴Dは、サブアレイの4つすべての電極E1−E4上を同時に重なり合う程度に十分大きい。より大きいサイズの合体小滴Dは、2つのより小さいサイズの小滴が分割することなく併合した結果であるか、あるいは2組の小滴が併合した後、2つの併合した小滴が合体した結果であってもよい。時計回りまたは反時計回りに回転させるのに適した順序で電極E1−E4をシーケンス処理することにより、合体小滴Dをサブアレイの周りで回転させる。しかし、図12Aに示す混合手法と比較すると、より大きいサイズの合体小滴Dは、サブアレイの4つの電極E1−E4の交点またはその付近で「固定された状態(pinned)」に維持される。すなわち、合体小滴Dは、固定部分が配置された交差領域の周りで実質的に回転またはスピンする。この効果は、合体小滴Dが回転またはスピンすることに起因する混合効果を改善し、不可逆的フローを促進するための独特の内部フローパターンを形成する。さらに、4つの電極E1−E4だけを用いて合体小滴Dを混合させる機能により、高い周波数でかつより少ない電力条件で、周期的な駆動を実現する。
【0072】
図12Bに示す混合手法は、同様に、他のアレイサイズを用いて実施することができる。例えば、本発明に基づき、2×4のアレイが良好に機能することが確認された。
【0073】
上記のすべての混合手法において、関与する小滴は、同じサイズの容量を有していてもよいし、異なる容量を有していてもよい。n対1の混合容量比が必要である場合、1つの小滴(1)に対して1つの小滴(n)を混合させるように、電極領域を比例的に選択することができる。
【0074】
図13は、1次元の直線的な混合手法の特性を示すグラフデータである。完全に混合するまでの時間が小滴の振動周波数(すなわち、1つの電極と隣接する電極の間のスイッチ時間)の関数としてプロットされている。それぞれの曲線は、2電極(図9A参照)、3電極(図9B参照)、および4電極(図9C参照)の混合構成に対してプロットされている。混合時間は、1,2,4,8,16Hzの周波数に対して得られた。各電極に印加される駆動電圧は50Vであった。スイッチング周波数を増大させると、混合時間がより短くなることが観測された。同様に、所与の振動数において、電極の数を増やすと、混合が改善される。併合された小滴が振動する電極の数を増やすと、小滴内に形成された多層流(multi-laminate)の数が増え、拡散が行われる界面領域が増大する。
【0075】
図14は、2次元のループ混合手法の特性を示すグラフデータであって、このとき小滴は、2×2電極のサブアレイ上に重なり合う程度に十分に大きい(図12B参照)。8,16,32,および64Hzの周波数に対する混合時間が得られた。図13のグラフを得るための実験と同様に、各電極に印加される駆動電圧は50Vであった。2次元の混合によれば、1次元混合が有するフロー可逆性の効果が低減されることが確認された。さらに、小滴が1点の周囲を回転するため、50Vの駆動電圧に対してスイッチング周波数を64Hzまで上げることができた。同じ電圧で1次元の直線的な駆動を行う場合、この周波数は不可能であった。小滴が4つすべての電極上を同時に重なり合うという事実により、こうした高い周波数で、かつ低い電圧で小滴を搬送できると考えられている。小滴が2×2のサブアレイの隣接する任意の2つの電極と同時に導通しているので、これらの2つの電極を連続的に駆動する際の時間間隔を短くすることができる。すなわち、小滴が一方の電極から他方の電極へ物理的に移動するために必要なタイムラグおよび距離が低減される。結果として、2次元混合の場合、小滴の速度を上げることができ、渦巻を形成し、混合を促進することができる。
【0076】
[小滴方式のサンプリングおよび処理]
図15A−15Bを参照すると、連続フロー入力源61からサンプリングし、小滴を処理するための本発明の方法が概略的に図示されている。とりわけ、この方法は、後続の小滴方式のチップ上および/またはチップ外の処理(例えば、混合、反応、培養、分析、検定、モニタなど)のための準備として、上述のようなエレクトロウェッティング技術を用いて、連続フロー入力源61から均一の大きさを有するサンプル小滴Sを個別化することができる。この文脈において、「連続的(continuous)」なる用語は、より少量の小滴に個別化されていない所定量の液体を意味するのとする。連続フロー入力源の非限定的な具体例として、適当なソース(源)または供給デバイスから基板表面または他の表面に導入されるキャピラリィスケールのストリーム、フィンガ、スラグ、アリクォート、および計量された用量が挙げられる。サンプル小滴Sは、通常、件の被分析物質(例えば、質量分析装置などを用いて特定される薬理効果を有する分子、または分光装置などを用いて特定すべき濃度を有する既知の分子)を含む。図15A−15Bに示すいくつかのサンプル小滴Sは、連続フロー源61から個別化された独立した複数のサンプル小滴Sであるか、あるいは電極のシーケンス処理に応じて形成されるさまざまな分析フロー経路に沿って、長時間電極アレイ上の異なる位置に移動可能な単一のサンプル小滴Sである。
【0077】
この方法は、分析信号を処理しやすくするために、アナログ入力から分析信号をデジタル化するような特徴を有する。図15A−15Bに図示された小滴の処理動作は、好適にも、上述のように電極アレイ上で行われる。IC、MEMS、およびマイクロ流体技術に一般に関連する他の構造またはデバイスを含むかどうかによらず、こうしたアレイは、マイクロ流体チップの表面上に形成されるか、マイクロ流体チップの中に埋設することができる。適当な電気コントローラと通信するなどして、アレイ電極を適当にシーケンス処理し、制御することにより、(小滴形成および搬送を含む)サンプル抽出を連続的にかつ自動的に行うことができる。
【0078】
図15Aにおいて、連続フロー源61の液体入力フローが、適当な注入ポイントにおいて電極アレイに供給される。上述のエレクトロウェッティング技術を用いて、連続液体フロー61を断片化または個別化して、均一な大きさを有する一連または一続きのサンプル小滴Sを形成する。上述の基本的な移動、併合、混合、および/または分割動作、さらにこれらの基本的動作から派生する任意の動作の1つまたはそれ以上を含む望ましいプロトコルに従って、これらの新たに形成された1つまたはそれ以上のサンプル小滴Sを操作してもよい。特に、本発明によれば、オンチップ分析、または他のオンチップ処理のために、連続液体入力フロー61からサンプル小滴Sを派生させることができる。例えば、図15Aは、マイクロ流体チップにわたり、プログラム可能な分析フロー経路に沿って、セル63,65などのマイクロ流体チップの表面上に配設された1つまたはそれ以上の基本的なセルまたは領域まで搬送される複数の小滴を示す。
【0079】
機能セル63,65は、例えば、混合部、反応部、検出部、または格納領域であってもよい。混合部および反応部の場合、マイクロ流体チップ上またはこれに隣接する1つまたはそれ以上の個別の貯蔵器または注入領域から供給され、エレクトロウェッティング技術を用いてマイクロ流体チップ上を搬送された添加剤小滴R1および/またはR2と、サンプル小滴Sとを合体させる。混合部の場合、添加剤小滴R1および/またはR2は、サンプル小滴Sとは異なる成分を有する他のサンプル材料であってもよい。択一的には、サンプル小滴Sを希釈したい場合、添加剤小滴R1および/またはR2は、異なるタイプの溶媒であってもよい。反応部である場合、添加剤小滴R1および/またはR2は、異なるタイプの化学試薬を含んでいてもよい。これまでは、96ウェル・マイクロリットルプレート、溶媒ボトル、液体搬送チューブ、シリンジまたは蠕動ポンプ、複数部品バルブ、ロボットシステムなどの大きな構成部品を利用する必要があったが、例えば、電極アレイまたはその一部を小型化されたマルチサンプル液体処理/検定装置として用いることができる。
【0080】
機能セル63,65は、好適には、アレイ上の1つまたはそれ以上の電極包含ユニットセルを有する。こうした機能セル63,65は、多くの場合、対応する制御電極をシーケンス処理することにより定義することができ、シーケンス処理は、好ましいプロトコルの一部としてプログラムされ、マイクロ流体チップに接続された電気的制御ユニットにより制御される。これにより、機能セル63,65は、マイクロ流体チップの電極アレイ上の任意の位置に形成し、リアルタイムで再構成することができる。例えば、図16は、一般に符号MCで示す混合セルを図示し、これは、上記の任意の混合手法を用いて、サンプル小滴Sを添加剤小滴Rと混合させるか、サンプル小滴Sを希釈するために形成される。混合セルMCは、5×3マトリックスの電極包含ユニットセルを有するが、チップ上に形成されるより大きい電極アレイであってもよい。ここでは、混合セルMCは、5列の電極/セルROW1−ROW5と、3行の電極/セルCOL1−COL3で構成される。図5A−6Cを参照して上記説明したように、中央に配置された電極E1−E3で併合および分割動作を行ってもよい。外側に配置された行COL1,COL3および外側に配置された列ROW1,ROW5を用いて、連続フロー源61から個別化された後など、サンプル小滴Sおよび添加剤小滴Rを電極アレイの外側から運搬するための搬送経路を形成してもよい(図15A−15B参照)。図12Bに示すように、2次元のループ混合処理を行うために、2×2サブアレイを定義することができる。混合動作、併合動作、分割動作、または維持動作を行う間、外側に配置された行COL1,COL3および外側に配置された列ROW1,ROW5のうちのいくつかまたはすべてを接地して、ゲートとして機能させ、チップ上の他の領域から混合セルMCを孤立させることができる。必要ならば、拡散のような受動的メカニズム、または上述のエレクトロウェッティングにより合体小滴を移動または「振動」させる能動的なメカニズムにより、完全にまたは実質的に完全に混合させることができる。
【0081】
本発明は、反応装置、検出装置、および他の分析・測定装置などの従来式のマクロスケールのデバイスまたは機器を実質的に小型化した実施例または模倣例である機能セルを有する他のタイプの機能セルを提供する。既知の分光器技術を用いて光ビームが通過するサンプル保持セルまたはフローセルを模倣するために、例えば、電極アレイの単一の列または行の中、あるいは主要アレイから外れたところに配置されたセルにおいて、小滴は個別化され、保持される。初期強度を有する光ビームは、入力光ファイバから供給され、サンプルセルに含まれる小滴を通過する。小滴から出射した減衰した光ビームは、出力光ファイバに入り、フォトセルなどの適当な検出装置に案内される。光ファイバは、サンプルセルのいずれか一方の側に配置してもよく、サンプルセルと一体に形成されるか、サンプルセル内に挿入される小型のディッププローブ内に設けてもよい。
【0082】
再び、図15Aを参照すると、機能セル(例えば、セル63,65)で行われた処理が完了すると、その結果として得られた小滴(図示せず)は、不要物収集、貯蔵、または出力の目的で、マイクロチップ上またはそれ以外に配設された各容器67または69に搬送される。さらに、サンプル小滴Sおよび/またはプロダクト小滴は、収集、不要物回収、またはさら処理するための出力の目的で、マイクロ流体チップ上またはそれに隣接した好適な出力領域における連続液体出力フロー71に再結合させてもよい。さらに、機能セル63または65で処理された小滴をサンプル小滴として形成してもよく、このサンプル小滴は、1つまたはそれ以上のステップで希釈され、そして/または反応させた後、アナライトの検出または測定のために、エレクトロウェッティングによりチップの別の部分に搬送される。例えば、いくつかの検出領域は、結合酵素または他の生分子同定試薬を含んでいてもよく、特定の分析に特化したものであってもよい。他の検出領域は、上記実施例のような蛍光式検定または吸光式検定を行うための光学システムなどの汎用性検出手段を有していてもよい。
【0083】
図15Bに示す択一的な実施形態において、連続液体フロー61は、入力領域61Aから供給され、マイクロ流体チップの表面全体を横断し、出力領域61Bまで搬送される。この実施形態において、連続液体入力フロー61の長さに沿った、図示された位置73などの特定の選択可能なユニットセル位置で、サンプル小滴Sが形成され(連続液体入力フロー61がサンプル採取され)、図15Aの実施形態に関連して上述したような後続のエレクトロウェッティング操作が行われる。
【0084】
図15Aおよび15Bに関連して説明した方法は、数多くの用途において有用性を有する。オンライン式マイクロ流体分析の用途は、例えば、マイクロ透析または他の生物学的灌流フローの分析、環境学的水質調査、および発酵などの産業化学的処理の調査などを含む。分析は、液体中に流れる任意の特定物質の存在の特定、濃度、または挙動を特定することを含み得る。古典的な具体例は投入病患者のグルコース測定であるが、経時的に変化する化学的信号をリアルタイムで測定しなければならない場合のオンライン式連続分析は、すべての用途で有用である。マイクロ流体によれば、分析に必要なサンプル容量を低減し、測定されるアナライトを枯渇させることを回避する非侵襲性のサンプリング技術を可能とするとともに、小型化された携帯可能な機器を実現する。
【0085】
本発明の小滴方式方法は、既知の連続フロー方式のマイクロスケール方法、およびより一般的なマクロスケール装置を用いた方法に比べて数多くの利点を有する。図15Aまたは図15Bを参照すると、連続フロー源61からチップの分析部分までのサンプル小滴Sのフローは、連続フロー(入力フロー)とは独立して制御され、分析を行う上で多大なフレキシビリティを許容する。分析フローを連続入力フローから分断することにより、それぞれのフローを個別に最適化し、制御することができる。マイクロ透析において、連続フローを最適化することにより特定の再現速度を実現し、分析フローを最適化することにより特定の感度またはサンプリング速度を実現する。主要な入力フローに影響を与えることなく、また悪影響を及ぼすことなく、試薬小滴Rを分析フロー中のサンプル小滴Sに混合することができる。分析フロー中のサンプル小滴Sは、入力フローを中断することなく、不定期間、格納または培養することができる。入力フローを中断することなく、異なる時間を要する複数の分析を同時に並行して行うことができる。
【0086】
図15Aまたは図15Bに図示された実施形態において、連続フロー源61の入力を含む同一のシーケンス処理の一部として分析が行われるとき、サンプル小滴Sの分析または他の処理はオンラインで行われる。しかし、新たに形成されたサンプル小滴Sは連続液体入力フロー61から派生するので、連続液体入力フロー61に関する分析はインライン(同じライン上)では実施されない。このデザインにより、分析フローを入力フローから分断することができる。
【0087】
別の利点として、複数のアナライトを同時に測定することができる。連続液体フロー61が複数のサンプル小滴Sに細分化されるので、各サンプル小滴Sを異なる試薬小滴R1またはR2と混合させて、クロストークまたはクロスコンタミーションすることなく、単一サンプルの複数アナライトを同時に測定することができる。加えて、複数ステップの化学プロトコルが可能で、広範な種類の分析を単一チップ内で行うことができる。
【0088】
さらに、較正およびサンプル測定を複合化することができる。較正小滴を形成し、サンプル間で測定することができる。較正するために、入力フローを中断する必要はなく、モニタ中、周期的に再較正することができる。さらに、複数のアナライトに対して検定または検出を複合化することができる。例えば、単一の蛍光計または吸光検出器を用いて、サンプル小滴Sの検出領域までの搬送をシーケンス処理することにより、複数のアナライトを測定することができる。
【0089】
別の重要な利点は、チップ動作の再構築可能性である。ソフトウェア制御によりサンプリング速度を動的に変化させることができる。ソフトウェアを用いて、混合比、較正処理、および特定のテストを制御して、柔軟で再構築可能なチップ動作を可能にする。フィードバック制御が可能で、分析結果をチップ動作に反映させることができる。
【0090】
[小滴方式のバイナリ補間デジタル混合]
図17を参照すると、一般に符号100で示す本発明のバイナリ混合装置が図示されている。バイナリ混合装置100は、所望の混合比を得るために、1つ、2つまたはそれ以上の混合段階における多様な小滴方式の希釈バイナリ混合技術を実現する上で有用である。得られる混合比の正確な度合いは、使用される離散的バイナリ混合ユニットの数に依存する。1つの具体例として、図17は、第1のバイナリ混合ユニット110と、第2のバイナリ混合ユニット210とを概略的に図示している。1つ以上の混合ユニットがある場合、好適には、これらの混合ユニットと流体連通するバッファ310が設けられ、必要に応じ、中間生成物を貯蔵し、混合ユニット間で搬送する。コンピュータプログラムの指令を実行することができるマイクロプロセッサなどの適当な電気コントローラECが、適当な通信ライン111,211,311を介して、それぞれ第1のバイナリ混合ユニット110、第2のバイナリ混合ユニット210、およびバッファ310と通信する。
【0091】
本発明によるデジタル式バイナリ補間混合処理を行うために、バイナリ混合装置100をマイクロ流体チップ上で形成してもよい。バイナリ混合装置100のさまざまな小滴操作部品の物理的なレイアウト(一例が図18Aおよび図20に図示されている)を設計する際、電極デザインおよび搬送デザイン(スケジューリング)が考慮された。特定の物理的レイアウトは、少なくとも部分的に電気コントローラにより実行される一連のコードまたは指令を決定して、電極ひいては実施される小滴方式の操作の種類とシーケンスを制御する。好適には、バイナリ混合装置100の電極を含む小滴処理領域が、図1の断面図に示すエレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構10に関して上述したように、または上記説明した単一表面電極を有する構造に従って構成される。各混合ユニットの電極をシーケンス処理して、ここに開示した任意の混合手法を実現することができる。
【0092】
バイナリ混合装置100の構成は、小滴−小滴(小滴単位)の混合実験において観察された速い速度の利点を十分に享受するように設計され、複数ポイントの較正に対して動的に変えることのできる混合比を正確に制御することができる。以下の開示から明白となるように、バイナリ混合装置100は、広範な混合比を所定の精度をもって処理でき、混合操作における高い並行性を示し、2次元アレイの混合部品を構成する上での高い寸法拡張性を示す混合パターンを可能にする。バイナリ混合装置100は広範な小滴サイズを処理することができる。しかし、サンプル小滴が検出または測定のために構成される場合、小滴サイズに対する下限値がある。
【0093】
バイナリ混合装置100の構成は、互いに向かって移動する2つの小滴間で最も効果的な混合が生じるという理解に基づいている。これは、実験で観測されたもので、流体の剪断運動に誘発される対流により、混合処理が純粋な物理的な拡散より速くなるように加速されるという事実により説明することができる。すなわち、一般的な設計原理としては、できるだけ1対1の混合が用いられる。上述のように、均一な小滴サイズを維持するために、1対1の混合は混合動作および分離動作を含む。基本的な混合動作および分離動作は図5A−6Cを参照して上述した。
【0094】
バイナリ混合装置100の構成をデザインする上で、以下の点について仮定した。
1.化学的処理および/または物理的処理において、十分な時間をかけると、完全に混合させることができる。
2.物理的容量および化学的成分において、同等の小滴が分離される。
3.小滴が搬送される間、残渣は無視できるほど少ない。
4.大きい希釈比で混合する時間はボトルネックである。
5.混合比に対して公差がある。
6.混合時間に対して搬送時間は無視できるほど短い。
【0095】
好適なデザインの要件および問題点に関し、以下の点を同様に考慮した。
1.検出可能性を保証する混合物アウトプットの最小容量
2.独立した制御電極の最大数
3.最大混合領域
4.電極あたりの最大駆動数
5.異なる混合比に対する再構築可能性
【0096】
すなわち、1つのデザインの目的は、混合比の精度を維持しながら、混合−分離動作の回数を極力抑えて、混合処理を完了させることであった。
【0097】
さらに、理想的な混合構成のための好適な特徴に関し、以下の点を同様に考慮した。
1.正確な混合比
2.少ない混合サイクル回数
数多くの混合プロセスは1つ以上の混合段階を含むので、2つのバイナリ混合ユニット110および210は、第1段階において、互いに並行し、かつ独立して処理される。しかし、第2段階は、第1段階が完了した後にのみ開始することができる。すなわち、2段階の混合の全体的な混合時間は、第1段階における第1および第2のバイナリ混合ユニット110,210の最大混合時間に、第1バイナリ混合ユニット110または第2バイナリ混合ユニット210のいずれかで第2段階での混合時間を加えたものである。したがって、混合サイクルは、1つの混合処理を完了させるために要する全体的な混合時間として定義される。混合処理において標準化され、例えば、小滴搬送と比較して、最も時間の要する処理であると推定される。
3.少ない全体的混合動作回数
混合、分割、および/または搬送からなる単一のバイナリ混合動作は、誤差の源である。より回数の多い混合動作は、より多くの電極を使用することを意味し、電極上に帯電した電荷に起因して別の誤差を招き得る。
4.動作の単純性
5.寸法拡張性
多くの収量が要求される場合に、異なる混合比を処理するためのバイナリ混合装置100の機能および複数の混合ユニットに対する拡張性
6.並行性
【0098】
バイナリ混合装置100の構造は、バイナリ混合段階の複数の階層を実行し、第1の階層により近似的な混合比を実現し、較正メカニズムを用いて次の階層のものを実現する。この概念は、補間デジタル・アナログコンバータ(DAC)に類似し、その構成は2つの部品に分割され、メインDACはバイナリ方式でMSB(最大重要ビット)を処理し、サブDACはLSB(最小重要ビット)に対する較正および補正を処理する。図19A−19Fを参照して、1/32の濃度に希釈された16個のサンプル小滴を形成するために行われた1段階バイナリ混合処理の具体例を以下説明する。
【0099】
バイナリ方式の混合により、2,3回の混合動作だけで、2のべき乗の大きい比で希釈することができる。バイナリ方式で2つの中間生成物をさらに混合させることにより、比の精度を補間することができる。例えば、1つの混合処理により1/8の濃度が形成され、さらなる混合により1/16の濃度が形成される。これら2つの混合物をそれぞれ1:1,1:3,3:1,1:7,7:1の比で混合すると、最終的な生成物の濃度は、1/10.67,1/12.8,1/9.14,1/14.2となる。この原理に基づいて、2,3段階の混合により、許容可能な公差で任意の混合比を得ることができる。さらなる精度が必要である場合、先の段階からの生成物を用いた追加的な混合段階を用いて、混合比を調整することができる。先に説明したように、高い精度と期待される混合比にアプローチする処理は、アナログ−デジタルコンバータの設計で用いられたものと類似した連続的な近似処理として特徴付けられる。精度を速度でトレードオフするアプローチである。ただし、十分な精度を得るために必要な混合段階数は驚くほど少ない。一般に、要求される混合比が32以下である場合、しばしば2段階混合で十分である。同様に理解されるように、混合比が32以上、64以下である場合、おそらく3段階混合が必要である。所定範囲のバイナリ比を有する中間生成物をさまざまに組み合わせることにより、より多くの補間ポイントが形成され、精度を上げることができ、余分な混合段階を用いる必要性がなくなる。
【0100】
既知の数学的原理に基づいて、好適には2つの同一構造を有する混合ユニット(例えば、図17に示す第1のバイナリ混合ユニット110と第2のバイナリ混合ユニット210)を有するようにバイナリ混合装置100の構造を設計することができ、各バイナリユニット110および210はバイナリ混合を処理し、所定容量の混合物を生成する。各バイナリ混合ユニット110および210によれば、異なる処理により、2のべき乗の比とは異なる混合比が得られる。第1の混合段階では、2つのバイナリ混合ユニット110および210を並行して用いて、一連の比(1:1, 1:3, 1:7, ..., 1:2n-1)の任意の比を有する試薬とサンプルを混合させる。生成物は同じ容量の2つの混合物である。2つの混合物の比は、最終生成物の要請される比により決まり、好適にはコンピュータプログラムを用いて制御される。第2段階では、2つのユニットの内の一方で、2つの混合物が所定のバイナリ比(2値比)で混合される。バイナリ混合ユニット110または210の一方で第2段階の混合が行われるとき、バッファ310を用いて、いくつかの中間生成物を貯蔵する。中間生成物の容量には限りがあるので(例えば16個の小滴)、第2の混合を任意の大きいバイナリ比で行うことはできない。バイナリ混合装置100の構造および動作に関する記載より、4行16個の小滴が各ユニットで形成された場合、後続の混合段階における可能性のあるバイナリ比は31以下となるように制約される。そうした場合、十分な精度は第2段階の後に得られる。さらなる精度が要求される場合、一連の2のべき乗の比を有する(例えば、較正混合物)第2段階からの生成物および別の混合物を用いて、追加的に混合を行い、要請される比に近い比を有する混合物を形成する。
【0101】
上記開示内容から分かるように、一連の2のべき乗の混合物を生成することが、期待される比を得る上で基本的な処理となる。この混合物の正確な比を前もって決定するか、動的に変えることができる。例えば、第1の混合段階中に、要求される比に応じて、2つの比を事前に計算することができる。しかし、先の混合物の質からフィードバックされる場合、第2段階に続く段階において、較正混合物を動的に変化させることができる。事前に決定された場合でも、さらなる段階の混合が行われる前に、較正混合物を用意するために、余分な時間を必要とする傾向がある。こうした場合、ただ2つのバイナリ混合ユニット110および210を用いるだけでは十分でない可能性があり、先の較正混合処理と並行して、較正混合物を生成するために、さらなるバイナリ混合ユニットを追加してもよい。
【0102】
混合手法の決定は、要求される比と公差に基づいて、混合段階数および各段階における混合比を計算することを含む。目的関数として混合動作数と混合時間を最適化することにより、混合手法を決定することができる。
【0103】
図18A−18Bを参照すると、第1のバイナリ混合ユニット110の例示的な構造が図示されており、第2のバイナリ混合ユニット210および他の追加的な混合ユニットが同様に設計されると理解される。図18Aに示す実施形態は、第1段階の混合を行い、図20に示す実施形態(以下に概略的に説明する)が第2段階の混合を実施する。図18Aに示すように、第1のバイナリ混合ユニット110は、一般に、符号EAで示す7×7の電極マトリックスまたはアレイを有し、49個のマトリックス電極と付随するセルEijを有する。ここで、「i」は1,2,...,7番目の電極列を示し、「j」は1,2,...,7番目の電極行を示す。図18Bは、列ROW1−ROW7および行COL1−COL7の2次元システムによる電極アレイEAのマトリックス電極Eijを特定する。しかし、本発明は特定の電極数、列数および行数に限定されることはない。より大きいまたは小さい電極アレイEAを適宜用意することができる。
【0104】
再び図18Aを参照すると、サンプル貯蔵部113、廃棄物貯蔵部115,試薬貯蔵部117が設けられている。電極アレイEAに対する貯蔵部113,115,117の位置に依存して、小滴を電極アレイEAに搬送し、電極アレイEAから搬送するために、適当な数および構成の通路または経路、および付随するセルT1−T4が設けられている。小滴の移動または他の操作を制御するために、数多くの電気的リード(例えばL)がマトリックス電極Eijおよび搬送電極T1−T4に接続されている。理解されるように、電気的リードLが、マイクロプロセッサ(図17の電気コントローラ)などの適当な電気コントローラに接続されている。各マトリックス電極Eijは、独立した電気リード接続を有していてもよい。しかし、電気リードLの数を低減し、第1のバイナリ混合ユニット110の簡素化するために、COL2−COL7の各行(図18参照)の電極は、図18Aに示す共通の電気リードLに接続される。第1のバイナリ混合ユニット110を用いて実施される混合動作のためのプロトコルを作成するとき、これらの共通する接続について配慮しなければならない。
【0105】
実質的に、バイナリ混合装置100の各バイナリ混合ユニット110および210は、サンプル、試薬または中間混合物を格納する、4×4のロジックセルを有するように設計される。これは、図18Bのマトリックスレイアウトを、図19A−19Fに図示された4×4ロジックセルマトリックスと比較することにより概念化することができる。混合(または混合−分離)動作が完了した時点で、小滴が隣接する制御電極から中間制御電極(例えば、図5A−6Cに示す中間制御電極E2と隣接する制御電極E1,E3)上で合体し、混合小滴が分離し、新たに形成された混合小滴が隣接する制御電極に戻るという事実を、4×4構成は担保する。したがって、小滴が実際に合体する間に、所定の電極列を暫定的な中間電極としてのみ用いる必要がある。同様に、所定の電極行を小滴の搬送のためだけに用いる必要があるという事実を、この構成は担保する(例えば、1つの行から別の行に小滴を移動させることは、新たな試薬小滴を追加するための空間を作る)。上述のように、図18Bの電極列ROW2,ROW4およびROW6と、電極行COL2,COL4およびCOL6は、図19A−19Fでは単なる直線として図示されている。同様に、図19A−19Fでは、活性化電極が陰付きバーで示され、混合動作が「―――→,←―――」のシンボルで図示され、搬送動作が「―――→」のシンボルで図示されている。さらに小滴の濃度は、小滴が存在する列および行の隣の数字(例えば、0,1,1/2)で示されている。
【0106】
活性化電極が2つのセル間に存在するかどうかに依存して、(図19A−19Fを含む図面の観点から)水平方向および垂直方向におけるいくつかの隣接するセルの間で、1対1の混合を行うことができる。第1行において、小滴を含む任意の2つの隣接する列セルの間に活性化電極が存在すると、2つの隣接する列セルで混合動作が行われる。他の行においては、列セル間に活性化電極がない。例えば、これは図19Aに図示されている。小滴を含む任意の行の間に電極が存在すると、行内のすべてのセルが隣接する行のセルと混合動作を同時に行う。例えば、これは図19Dに図示されている。活性化電極を用いることにより、ロジックセル(すなわち、小滴)の内容物は、第1行にある一方の列から他方の列に移動し、行間を移動することができる。4×4のロジック構造の採用は、以下の具体例で説明されるように、バイナリ操作を最適化するために設計される。第1のバイナリ混合ユニット110の1つ混合ユニットの実施形態は、16個の小滴に限定されるが、最終的な生成物の物理的容量は各小滴のサイズを変えることにより調整することができる。
【0107】
バイナリ混合装置100がどのように任意の2のべき乗の比を生成できるかを示すために、図19A−19Fは、1:31の比(1/32の濃度に等しい)を目標する一連の混合動作の具体例を示す。分かるように、混合処理は、2つの基本的段階を有し、列混合と行混合がある。一般に、列混合の目的は、2つの混合入力の最小容量を有する混合比を所定範囲に接近させることである。行混合は、出力において要求された容量を生成し、4倍大きい比を得ることである。図19A−19Fに示すように、1:31の比を得るためには、列混合して、1:7の比または1/8の濃度を得る(図19D参照)。行混合が1:31の濃度の最終的な生成物比または1/32の濃度を得る(図19F参照)。
【0108】
特に図19Aを参照すると、濃度1(すなわち100%)を有するサンプル小滴S1を、濃度0を有する試薬(または溶媒)小滴R1を組み合わせることにより、単一の行混合を行う。この結果、図19Bに示すように、それぞれ1/2の濃度を有する2つの中間混合小滴I1,I2を得る。一方の中間混合小滴(例えばI1)を廃棄して、新たな試薬小滴R2を他方の中間混合小滴(例えばI2)に隣接する論理セルへ移す。中間混合小滴I2と試薬小滴R2を組み合わせることにより、もう一度、列混合を行う。この結果、図19Cに示すように、それぞれ1/4の濃度を有する2つの中間混合小滴I3,I4を得る。2つの新たな試薬小滴R3,R4を追加し、2組の列混合動作で、それぞれの中間混合小滴I3,I4を合体させる。この結果、図19Dに示すように、それぞれ1/8の濃度を有する4つの中間混合小滴I5−I8を得る。
【0109】
図19Dに示すように、4つの新たな試薬小滴R5−R8を中間混合小滴I5−I8のそれぞれに隣接するマトリックス上に移す。そして、各中間混合小滴I5−I8と対応する試薬小滴R5−R8の対の間で行混合を行う。こうして、図19Eに示すように、それぞれ1/16の濃度を有する8つの中間混合小滴I9−I16を得る。同様に、図19Eに示すように、4つの中間混合小滴I9−I12およびI13−I16が、右側の行に1つずらして、新たな試薬小滴R9−R12およびR13−R16をそれぞれマトリックスの外側の行に充填することができるようにする。追加的な行混合動作を介して、中間混合小滴と試薬小滴のそれぞれの対(例えば、I9とR9の対、I9とR9の対など)を合体させる。
【0110】
これらの混合動作の結果、図19Fに示すように、それぞれ(目標とする1:31の混合比に対応する)1/32の濃度を有する16個の最終的な混合生成小滴P1−P16を得る。こうして、上述の具体例で説明したサンプリング、検出、分析などの後に行われる任意の動作のために、生成小滴(プロダクト小滴)P1−P16が準備される。さらに正確な混合比を所望するかどうかに応じて、上述のように必要ならば、第2段階および第3段階の混合動作を生成小滴P1−P16に対して行ってもよい。こうした追加的な混合動作は、第1のバイナリ混合ユニット110の一部であってもよい電極アレイ上の異なる領域で行ってもよい。択一的には、図17に示すように、第1のバイナリ混合ユニット110に直接的にまたはバッファ310を介して流体連通する別のバイナリ混合装置(例えば、バイナリ混合ユニット210)に最終混合小滴を搬送することができる。
【0111】
本発明の方法は、31以上または31以下の比に対して適用することができる。例えば、目標が1:15の比を得ることならば、列混合により入力を1:3の比に混合し、これは2段階の混合動作を必要とし、3段階の混合動作で1:7の混合比を得る。混合動作において、図19A−19Fを用いて、こうした場合、第1段階の(単一)列混合および第2段階の廃棄動作を排除し得ることを示すことができる。
【0112】
1:31の混合比を実現する動作を詳細に説明するために、とりわけ図19A−19F(一般的には図18Bを参照して)に図示された具体例に対する擬似コードを下記にリストする。
1.S(1,1)を充填し、R(2,1)を充填し、1,2列を混合する。
2.((1,1)を廃棄し、R(3,1)を充填し、)2,3列を混合する。
3.R(1,1)を充填し、R(3,1)を充填する。
(1,2列および3,4列を混合する)。
4.2行を充填し、1,2行を混合する。
5.2行を3行へ、1行を2行へ移し、1行を充填し、4行を充填する。
(1,2行および3,4行を混合する)。
6.終了。
【0113】
上記擬似コードは、可能性のある複数の混合動作を1つの混合処理に標準化する。動作のシーケンスは、混合動作の回数を低減しつつ、混合収量を増大させるためにより可能性のある最適化を行う。この設計は、活性化電極の数をできるだけ少なくし、すべての混合動作が適正に機能することを担保するように配慮する。好適実施な形態において、各バイナリ混合ユニット110および210(図17参照)は、混合機能を処理するための13個の活性化電極を有する。各バイナリ混合ユニット110および210の中に小滴を搬送する機能は、別の検討事項である。アレイの外側にある2つの列を、混合部の両側に沿って走る輸送チャンネルとして用いて、混合部の他の動作と同時に、小滴を混合部に搬送する。同様に、同数の電極がこれらの輸送機能を処理する。
【0114】
第2段階は、2つのバイナリ混合ユニット110および210(図17参照)からの中間生成物が混合される際の混合処理である。それは、図19A−19Fを参照して上記説明した第1段階における標準的なバイナリ混合処理と同様のものである。唯一の違いは、第2段階の混合は、バイナリ混合ユニット110および210の内の一方が、先の混合生成物(例えば、図19Fに図示される小滴P1−P16)を保持する点にある。先に示唆したように、この処理中、バッファ310を用い、いくつかの生成物を保持する。
【0115】
第2段階中の最大混合比が31に限定されることを計算することができる。その理由は、最大比を得るためには、列混合をできるだけ数多く用いる必要があるためである。列混合を用いて比を増大させると、廃棄処理中に失う入力がより少ない。すなわち、入力材料が有限量である場合、第1の選択は、混合出力のための条件を満足させるために十分な量が残るまで、どの程度の列混合を行うことができるかを確かめることである。こうして、出力条件が16個の小滴以下であると特定される場合、16個の小滴の2つの混合物だけが1:31の最大比で混合させることができる。1:31の比で混合させる場合、16個の試薬小滴が最小量であることが図19A−19Fから分かる。
【0116】
2段階混合の機能をより良好に実現するために、第1のバイナリ混合ユニット110のための図18Aに示す物理的レイアウトを修正することができる。したがって、図20を参照すると、一般に符号410で示す2段階混合ユニットが図示されている。2段階混合ユニットの構造は、図18Aの第1のバイナリ混合ユニット110と類似しており、7×7マトリックス、サンプル貯蔵部413、廃棄物処理部415,試薬処理部417、およびさまざまな貯蔵部から7×7マトリックスへ小滴を搬送するための適当な数と構成を有するオフアレイ電極を有する。2段階混合ユニット410は、混合処理中に洗浄流体を供給する洗浄容器部419と、生成物小滴を他の混合ユニットまたはバッファ310に搬送するための出力領域421を追加的に有する(図17)。さらに、追加的な電極列および電極行を7×7マトリックスの周縁部に設けて、マトリックスに至るおよびマトリックスからの小滴のための搬送経路を形成する。
【0117】
以下に記載する表を検討することにより、バイナリ混合ユニット100の構造の特性を知ることができる。この表は、63の最大混合比(または1/64の最大濃度に対応)に対する2段階混合手法を用いて、可能性のあるすべての補間混合比を列挙するように作成された。第1段階における混合ユニット1および2(例えば、第1および第2のバイナリ混合ユニット110および210)の混合比など、対応する混合バラメータ、第2段階のための混合比、および全体的混合サイクルが記録される。複数の混合部が存在するときリソースの利用を改善し、全体的な混合動作を低減し、並行性を改善する、適当な混合手法および/または時間に対する精度のトレードオフに関するさらなる最適化を選択するための根拠として、この表は機能する。装置100を制御するために用いるソフトウェアの一部として、参照テーブルまたはデータ構造を参照テーブルとしてこの表を用いる。
【0118】
この表は、本発明の構造を用いた全部で196の混合手法を記述しており、これは152の固有の混合ポイントに対応する。63の最大混合比の元で2のべき乗を用いて、可能性のある任意の2つの混合物を補間することにより、196の混合手法を計算することができる。これらのポイントは、直線的な間隔ではなく、非直線的な間隔を有する。比がより小さければ、間隔も小さくなる。実現可能なポイントが図21にプロットしてある。この表から明らかなように、実現可能な比は、従来式の直線的な混合ポイントより大きく、分布がより合理的である。さらに、1つの小滴とは異なる所定容量の出力は、1対1の混合に起因する誤差に対するより大きい公差を許容することができる。混合サイクルに関して、最良の特性は、近似する比と比較して、2のべき乗の混合比に対するものである。精度に関して、比が大きければ、より少ない補間ポイント数が実現されるので、通常、特性は悪くなる。
【0119】
図21にプロットされた2段階の混合プランから分かるように、目標の比が36より大きい場合、十分なポイントが存在しない。図21は、比が40の周辺にはポイントがないことを示している。目標の比および理論的に実現可能な比の間の差異は3である。しかし、40の周辺で実現可能なポイントを注意深く検証することにより、最大の誤差が第2段階の混合プランから生じる場合、利用可能なポイントを補間するために、第1段階からの残りの混合物を適当に利用することが、36.5714と42.6667の間のいくつかの追加的な補間ポイントを得ることができる。例えば、表中の混合プラン#183は、1:31の比を有する混合物1および1:63の比を有する混合物2を得るために呼び出され、3:1の比で混合する。混合物2の3/4部分が存在することが分かる。36.5714の濃度を有する段階2の混合物と63の濃度を有する混合物2を比3:1または7:1などを用いて混合することができる。これにより、40.9、38.5などにおけるポイントが得られる。このようにして、わずかばかりの混合サイクルだけを増やして(この具体例では、それぞれ2サイクルおよび3サイクル)、補間混合物を追加的に用意することなく、追加的な混合段階を用いて、より高い精度を実現することができる。
【0120】
図22は、段階1、段階2、段階3の混合プランにより実現可能なすべてのポイントを示す。ポイントの全体数は2044である。段階3により実現されるポイントは、段階2および段階1の残りの生成物を用いることにより得る。段階2が完了した後、段階1の残りの生成物の容量を考慮し、これらを再利用して段階2からの生成物と混合することによりポイントを計算する。段階3の可能性のある混合比は段階2の混合比より求められる。
【表1−1】
【表1−2】
【表1−3】
【表1−4】
【表1−5】
【0121】
[単一表面側に電極アレイを有するエレクトロウェッティング方式の小滴駆動]
これまで、図1に示すマイクロアクチュエータ10などの両面電極構造を有する小滴駆動装置を用いて、本発明の態様について説明してきた。すなわち、下側プレーン12が制御または駆動電極E1−E3を含み、上側プレーン14が接地電極Gを含む。マイクロアクチュエータ機構10に関して、上側プレーン14の機能は、小滴Dを接地電位またはいくつかの他の基準電位にバイアスすることである。下側プレーン12の駆動電極E1−E3を選択的にバイアスして、上側プレーン14を接地すると、電位差が形成され、段階的なエレクトロウェッティング技術により小滴Dを移動させることができる。しかし、本発明の別の実施形態によれば、接地された上側プレーン14の必要性を排除することにより、2次元エレクトロウェッティング方式の小滴操作のために採用された装置のデザインを簡略化し、よりフレキシブルに構成することができる。
【0122】
ここで図23A−23Bを参照すると、一般に符号500で示す単一表面エレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構が図示されている。マイクロアクチュエータ機構500は、図1の機構と同様の下側プレーン512を備え、これは、綿密に凝集する駆動電極E(駆動電極E1−E3)の2次元アレイが埋設された適当な基板521を有し、このアレイは、銅、クロム、ITOなどの導電層のパターン形成により形成される。誘電層523は、駆動電極Eをカバーする。誘電層523は、疎水性であるか、そして/または疎水性層(特に図示せず)で処理されている。図1のマイクロアクチュエータ機構10との主な相違点として、基準電位の導通ラインの2次元グリッド(例えば、導通ラインG1−G6およびその他)が、図23A−23Bのマイクロアクチュエータ機構500の電極アレイ上に重畳され、各導通ラインGが隣接する駆動電極Eの間に配設されている。基準電位は、接地電位、微小電位、あるいは駆動電極Eに印加される駆動電位より小さい他の電位であってもよい。各導通ラインGは、ワイヤ、バー、または駆動電極Eと比較して遙かにより狭小な幅/長さのアスペクト比を有する任意の他の導電性構造物であってもよい。択一的には、各導通ラインGは、綿密に凝集した一連のより小さい電極を有し得るが、ほとんどの場合、こうした択一例は必要とされる電気的接続の数が増大するため、非実用的である。
【0123】
重要なことに、導通ライングリッドは、電極アレイと同一平面上または実質的に同一平面上にある。マイクロチップ上に導電性の内部接続構造物を形成するために広く用いられたマイクロ製造技術により、導電ライングリッドを下側プレーン512の上に埋設してもよい。こうして、理解されるように、マイクロアクチュエータ機構500を単一基板デバイスとして構成することができる。ただし、上側プレーン514は、適当なプラスティックシートまたは疎水性ガラスプレートなどの疎水性表面527を有するプレート525を備えることが好ましい。図1のマイクロアクチュエータ機構10とは異なり、図23A−23Bのマイクロアクチュエータ機構500の上側プレーン514は、小滴Dをバイアスするための電極として機能しない。むしろ上側プレーン514は、小滴Dおよび不活性ガスや非混和性液体などの任意のフィラー流体を包含するための構造部品としてのみ機能する。
【0124】
小滴をエレクトロウェッティング方式で操作するためのマイクロアクチュエータ機構500の使用に際して、小滴を搬送する間は本質的に常に小滴Dに対する接地または基準電位に接続しておく必要がある。すなわち、小滴Dが隣接するすべての駆動電極Eおよび小滴Dが載置される駆動電極の周囲にあるすべての導通ラインGと確実に重なるように、小滴Dのサイズまたは容量が選択される(例えば、図23Bの電極E2)。さらに好適には、導通ラインGが小滴Dに対して露出するか、または少なくとも小滴Dとは電気的に絶縁しないように、駆動電極Eだけをカバーするように誘電層523をパターン形成する。しかし、同時に、導通ラインGは駆動電極Eに沿って疎水性を有し、小滴Dの移動を妨げないようにすることが好ましい。すなわち、好適な実施形態において、誘電層523をパターン形成した後、駆動電極Eおよび導通ラインGの両方をコーティングするか、疎水性を有するように処理する。導通ラインGは図23A−23Bには特に図示されていない。しかし理解されるように、導通ラインGをカバーする疎水性層は非常に薄く、疎水性層の多孔性に起因して、小滴Dおよび導通ラインGの間の電気的接触は依然として維持される。
【0125】
マイクロアクチュエータ機構500を作動させるために、適当な電圧源Vおよび電気リード部品が導通ラインGおよび駆動電圧Eに接続されている。導通ラインGが駆動電極Eと同一平面内に配設されているので、導電ラインGと選択された駆動電極E1,E2,E3(図23AのスイッチS1−S3により選択される)の間に電位を印加すると、小滴Dの直下の誘電層523の領域において電場が形成される。図1のマイクロアクチュエータ10の動作に類似して、電場は、さらに表面張力勾配を形成し、電圧印加された電極に重畳する小滴Dを電極(例えば、図23Aの右方向へ移動させたい場合には駆動電極E3)に向かって移動させることができる。一連のソフトウェア指令に従い、電極アレイを事前設定された方法で、あるいは適当なフィードバック回路に呼応してリアルタイムでシーケンス処理を行うことができる。
【0126】
単一表面電極構成を有するマイクロアクチュエータ機構500を用いて、小型化されたラボ・オン・チップシステムを実現するための、図1の両面電極構成で上記説明したすべての機能および方法(例えば、供給、搬送、併合、混合、培養、分離、分析、モニタ、反応、検出、配置など)を行うことができる。例えば、図23Bに示す小滴Dを右方向へ移動させるためには、駆動電極E2,E3を活性化して、小滴Dを駆動電極E3上に拡張させる。その後、駆動電極E2を不活性化して、小滴Dをより好ましい低エネルギ状態に弛緩させると、小滴Dは駆動電極E3の中央に配置される。別の具体例では、小滴Dを分割するために、駆動電極E1,E2,E3を活性化して、小滴Dを駆動電極E1,E3上に広げる。そして駆動電極E2を不活性化して、小滴Dを駆動電極E1,E3上の中央に配置される2つの小滴に分断する。
【0127】
図24A−24Dを参照すると、本発明の択一的な単一表面電極構成が図示されている。これまでに説明した実施形態と同様、列および行のバイアス電極Eijのアレイを含むベース基板を再び用いる。とりわけ図24Aを参照すると、アレイまたはアレイの一部が図示され、3列のE11−E14、E21−E25、E31−E34が設けられている。本発明の他の実施形態に対して説明したのと同様、電極アレイの列および行を配列することができる。択一的には、特に図24Aに図示されているように、任意の所定の列が隣接する列の電極からずれるように、アレイをずらして配列することができる。例えば、第1列の電極E11−E14、第3列の電極E31−E34は、中間にある第2列の電極E21−E25に対してずれている。配列するか、ずらして配列するかによらず、上記の実施形態と同様、電極アレイは絶縁性および疎水性を有する層でカバーされることが好ましい。図23A−23Bで示す構成と同様、上部プレートは、閉じ込めのためのものであるが、電極として機能しない。
【0128】
動作において、選択されたバイアス電極Eijが駆動電極または接地(基準)電極として動的に割り当てられる。小滴を駆動するために、所与電極を駆動電極として割り当てた場合、隣接する電極を接地または基準電極として割り当て、小滴Dを含む回路を形成して、駆動電圧を印加することが必要である。図24Aにおいて、電極E21を活性化すると、駆動電極として機能し、電極E22を接地または基準電位に設定する。図示された他のすべての電極Eijまたは少なくとも駆動電極E21/基準電極E22の対を包囲する電極を、電気的に浮動状態に維持する。図24Aに示すように、この活性化により、電極E21,E22の間のギャップまたは界面領域に沿って中央に配置されるように移動することにより、電極E21,E22の両方に重畳する小滴Dがエネルギ的に好ましい状態を模索させる。
【0129】
図24Bにおいて、電極E21を不活性化して、隣接する列の電極E11を活性化して次の駆動電極として機能させる。これにより、小滴Dを矢印で示すように結果として北東方向に移動させることにより、小滴Dを電極E21およびE22の間の中央に配置する。図24Cで示すように、電極E11を不活性化して、電極E12を活性化することにより、第1列および第2列の間のギャップに沿って右方向へ小滴Dを駆動する。図24Dに示すように、電極E22を接地電位または基準電位から切断して、電極E23を接地電位または基準電位にして、小滴Dを続けて右方向に移動させる。駆動電極または基準電極を変化させるように、電極Eijを追加的にシーケンス処理することにより、電極アレイ上の好ましいフロー経路に沿って任意の方向に移動させることができる。これまでの実施形態とは異なり、小滴の搬送経路は、電極Eijの中心ではなく、電極Eijの間のギャップに沿って形成されることが分かる。また、誘電層が駆動電極および基準電極の両方をカバーし、その厚みが実質的に2倍となるので、必要とされる駆動電圧は、ほとんどの場合、図23A−23Bに示す構成と比較してより高くなる。
【0130】
図25A−25Bを参照すると、配列された列および行を有する電極アレイを用いて、小滴を直線ライン上に南北方向(図25A)または東西方向(図25B)に搬送することかできる。この動作は、図24A−24Dを参照して上記説明した動作と類似する。すなわち、駆動電極および基準電極の対をプログラム可能に順序付けることにより、意図した方向に沿って小滴Dを移動させることができる。図25Aにおいて、第1行の電極E12,E22,E32が選択的に接地電位または基準電位に設定され、隣接する行の電極E13,E23,E33が選択的に活性化される。図25Bでは、第1列の電極E11,E12,E13,E14が選択的に活性化され、隣接する列の電極E21,E22,E23,E24が選択的に接地電位または基準電位に設定される。
【0131】
図24A−24Dおよび図25A−24Bに図示された、この択一的な単一表面電極構成を有するマイクロアクチュエータ機構を用いて、図1の両面表面電極構成に関して上記説明したすべての機能および方法を実現することができる。例えば、択一的構成のいずれかにおける小滴Dを分離するためには、3つまたはそれ以上の隣接する電極に電圧を印加して、小滴Dを拡張させ、適当に選択された中間電極を不活性化して、1つの小滴Dを2つの小滴に分断する。
【0132】
本発明に関し、本発明の精神から逸脱することなく、さまざまな詳細を変更することができる。さらに、上記説明は、例示する目的だけでなされたものであり、限定する意図はなく、本発明はクレームにより定義される。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】図1は、本発明による両面電極構成を有するエレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータの断面図である。
【図2】図2は、本発明の1つの実施形態による、互いに嵌合する周縁部を有する電極セルアレイの平面図である。
【図3】図3は、本発明により構成されたエレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構の特性を示す電圧の関数としてのスイッチング速度のグラフである。
【図4A−4D】図4A−4Dは、本発明のエレクトロウェッティング技術を用いて移動させた小滴の一連の概略図である。
【図5A−5C】図5A−5Cは、本発明のエレクトロウェッティング技術を用いて、2つの小滴を1つの併合小滴に合体させる様子を示す。
【図6A−6C】図6A−6Cは、本発明のエレクトロウェッティング技術を用いて、1つの小滴が2つの小滴に分割される様子を示す。
【図7A−7B】図7A−7Bは、液体が電極アレイに供給され、小滴が液体から形成される様子を示す。
【図8A】図8Aは、1次元の直線的な小滴併合プロセスを実現する本発明のエレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータの断面図である。
【図8B】図8Bは、図8Aの上側プレーンを取り除いた構成の平面図である。
【図9A−9C】図9A−9Cは、本発明により1次元の直線的な小滴混合を実現する2電極、3電極、および4電極構成の各平面図である。
【図10A−10C】図10A−10Cは、本発明により実現される搬送による混合(mixing-in-transport)プロセスの具体例を示す概略図である。
【図11】図11は、本発明により実現される2次元の直線的な混合プロセスを示す概略図である。
【図12A】図12Aは、本発明による2次元のループ混合プロセスが実現される電極セルアレイの平面図である。
【図12B】図12Bは、回転中、小滴の一部がピンで固定された状態で2次元のループ混合プロセスを実現する2×2の電極セルアレイの平面図である。
【図13】図13は、図9A、9Bおよび9Cにそれぞれ図示された2電極、3電極、および4電極構成の小滴の能動的混合の特性を特徴付けるプロットデータである。
【図14】図14は、図12Bに図示された2×2の電極構成の特性を特徴付けるプロットデータである。
【図15A】図15Aは、連続フロー源から小滴を形成し、電極包含表面をわたって表面のプロセス領域まで小滴を移動させる様子を示す概略図である。
【図15B】図15Bは、電極包含表面の全体または一部を移動する連続フローから小滴を形成する様子を示す。
【図16】図16は、リアルタイムで電極アレイ上に形成される小滴−小滴混合ユニットの平面図である。
【図17】図17は、本発明により提供されるバイナリ混合装置の概略図である。
【図18A】図18Aは、本発明の第1段階の混合を可能とするバイナリ混合ユニットの構造を示す概略図である。
【図18B】図18Bは、図18Aに示すバイナリ混合ユニットの部分的概略図であって、バイナリ混合動作が行われるマトリックス領域の詳細を示す。
【図19A−19F】図19A−19Fは、本発明のバイナリ混合ユニットにより提供された電極アレイまたはマトリックス領域であって、所定の所望する混合比を有する小滴を得るために、バイナリ混合動作を行う具体例を示す。
【図20】図20は、本発明の第2段階の混合を可能とするバイナリ混合ユニットの構造を示す概略図である。
【図21】図21は、本発明のバイナリ混合構成により実現される第1段階または第2段階の混合の混合ポイントを示すグラフである。
【図22】図22は、本発明のバイナリ混合構成により実現される第1段階、第2段階、または第3段階の混合ポイントを示すグラフである。
【図23A】図23Aは、本発明の別の実施形態による単一表面電極構成を有するエレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータの断面図である。
【図23B】図23Bは、図23Aの上側プレーンを取り除いた一部構成の平面図である。
【図24A−24D】図24A−24Dは、択一的な単一表面電極構成を有するエレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構の一連の概略図であって、この機構のずらして配列された電極アレイ上に配置された小滴がエレクトロウェッティング方式で移動する様子を示す。
【図25A−25B】図25A−25Bは、配列アレイとして配列された単一表面電極構成を有する択一的なエレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構の概略図であって、それぞれ南北方向および東西方向に小滴が駆動される様子を示す。
【符号の説明】
【0134】
10 両面表面エレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構、12 上側プレーン、14 下側プレーン、21 下側プレート、23 下側疎水性薄膜層、27 上側疎水性薄膜層、40 相互嵌合領域、42,43 相互連結突起部、50 液体供給デバイス、61 連続フロー入力源、100 バイナリ混合装置、110 第1のバイナリ混合ユニット、210 第2のバイナリ混合ユニット、310 バッファ、111,211,311通信ライン、113 サンプル貯蔵部、115 廃棄物貯蔵部、117 試薬貯蔵部、500 単一表面エレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構、512 下側プレーン、514 上側プレーン、523 誘電層、D 小滴、E 駆動電極、C ユニットセル、G 接地電極、L 導電性リードライン、M メニスカス、S スイッチ、EROW 電極列、ECOL 電極行、EC 電気コントローラ、EA 電極マトリックス。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願]
本発明は、2002年9月24日付けで出願された米国特許出願第10/253,368号の優先権を主張し、その開示内容はここに一体のものとして統合される。
【0002】
[政府の利害関係]
本発明は、米国国防総省高等研究事業局により承認された承認番号F30602−98−2−0140号に基づき、米国政府からの支援を受けてなされたものである。米国政府は、本発明に関する所定の権利を有する。
【0003】
[技術分野]
本発明は、一般に、マイクロ流体スケールの小滴サンプルを作成、混合、希釈するなど、小滴の液体を操作および処理する技術分野に関する。とりわけ本発明は、エレクトロウェッティング方式の技術を用いた小滴の操作に関する。
【0004】
[背景技術]
現在、キャピラリサイズの連続した液体フローに対して所定の処理技術を実施する可能性を模索すべく、マイクロ流体システムが開発されつつある。特に、「ケミストリ・オン・チップ(chemistry-on-a-chip)」のセンサおよびアナライザと一般に呼ばれるマイクロ流体デバイスを開発することに対する強い要請があり、これらはラボ・オン・チップ(labs-on-a-chip: LoC)およびマイクロトータル分析システム(μ−TAS)としても知られている。この分野の研究の究極的な目標は、もっとも一般的な(生)化学実験の処理および装置を、小型化され、自動化されたチップ形式フォーマットに簡略化することにより、迅速で、携帯可能で、安価で、しかも信頼性の高い(生)化学実験機器を実現することにある。適用例は、医療診断用、環境モニタ用、および基礎科学研究用を含む。
【0005】
HPLC(高圧液体クロマトグラフィ:high pressure liquid chromatography)、CE(キャピラリ電気泳動:capillary electrophoresis)またはMS(質量分析:mass spectrometry)システムなどの大規模分析機器の入力に、連続フローの出力を接続することにより、連続フローをオンラインでモニタすることが極めて頻繁に行われている。連続フローのストリームが一連のバイオセンサの上を通過するところで、連続的にモニタするためのマイクロ流体システムは、通常、小型化されたアナライト固有のバイオセンサを採用している。センサは、共通のチャンネル内に配設されているので、センサ間のクロストークまたはコンタミネーションが頻繁に問題となる。試薬を連続フローに混ぜ合わせる必要がある場合の分析において、試薬を添加し、フローを制御・混合し、各ストリームにおける検出を行う分割手段を用いて、フローを複数の並行するストリームに分割しなければ、1度にただ1つのアナライトしか測定できない。さらに、マイクロ流体フローで混合することは通常、あまり容易なことではない。混合のためには、十分な時間と距離を設ける必要があり、チップの設計およびシステムのフロー速度に対する制約が課せられることになる。
【0006】
一般に、化学的および生物学的応用例において、混合(混合)することは基本的な処理である。マイクロ流体デバイス内で混合することは、マイクロトータル分析システム(μ−TAS)またはラボ・オン・チップシステムにおいて、極めて重要なステップである。以下説明する本発明においては、これらのシステムにおける混合は、サンプルを事前に希釈処理するか、特定の比率でサンプルと試薬を反応させるために用いられるものである。また、最小限度のチップ領域を用いて、液体を迅速に混合する機能は、こうしたシステムの収量を大幅に改善するものである。2つの原理に基づき混合を改善し、乱流、すなわち極めて微小スケールの不可逆的フローを形成するか、あるいは拡散により混合を改善するために複数の層流を形成する。
【0007】
ミキサー(混合装置)は、連続フロー方式および小滴方式の構成に大別することができる。すべての連続フロー方式の装置の共通の問題は、流体の搬送が常にエッチングされた構造体に物理的に制限され、混合処理を改善するためには追加的な機構が必要なる点にある。用いられる搬送機構は、通常、外部ポンプによる圧力を用いて駆動されるか、あるいは高電圧源による電気動力学を用いて駆動される。これにより、バルブ、複雑な通路、消費する貴重なチップ上の物的構造物を用いることが必要となる。これらの制約により、連続フロー方式のマイクロミキサーを自己内蔵型の再設定可能なラボ・オン・チップとして形成することができない。従来式の連続フローシステムは、制限されたチャンネル内の連続液体フローに基づいており、小滴方式のシステムは、液体の複数の離散的な容量を用いる。連続フロー方式および小滴方式の両方の構造は、さらに受動型および能動型のミキサーに分類することができる。受動的ミキサーは、混合するための外力エネルギを入力することなく、受動的な拡散により混合する。他方、能動的な混合は、分散された多層流または乱流を形成するために、ある種の駆動力による外部エネルギを活用する。微視的な世界では、機械的動作により乱流フローを形成することは困難であるため、有効に混合することは技術的な問題である。乱流を形成するための慣性力、混合を促進するために必要な大面積の界面表面が形成されない。すなわち、限定的な界面領域を介した拡散させることによる混合は問題となる。
【0008】
最近になって、音響波を用いた能動的混合[ビベック(Vivek)らの「新規な音響マイクロミキサー(Novel acoustic micromixer)」(MEMS 2000 p. 668-73)を参照のこと]、超音波を用いた能動的混合[ヤング(Yang)らの「マイクロ流体システムのための超音波マイクロミキサー(Ultrasonic micromixer for microfluidic systems)」(MEMS 2000, p. 80を参照のこと)]、およびピエゾ圧電素子により駆動されるバルブレスマイクロポンプ用いた能動的混合[ヤング(Yang)らの「ピエゾ素子で駆動されるバルブレスマイクロポンプ(Micromixer incorporated with piezoelectrically driven valveless micropump)」(Micro Total Analysis System '98, p. 177-180を参照のこと)]が提案され、これらの有用性が実証されている。電気振動流による混合は、同様に、ポール(Paul)らに付与された米国特許第6,086,243号に開示されている。混合のためのカオス的移流を採用した、別の混合技術が提案された。リー(Lee)らの「電気および圧力で駆動されるカオス的混合(Chaotic mixing in electrically and pressure driven microflows)」(The 14th IEEE workshop on MEMS 2001, p. 483-485)、リウ(Liu)らの3次元の曲がりくねったマイクロチャンネル(Passive Mixing in a Three-Dimensional Serpentine Microchannel)」(J. of MEMS, vol 9 (No.2), p. 190-197(June 2000))、およびエバンズ(Evans)らの「平坦な層流ミキサー(Planar laminar mixer)」(Proc., of IEEE, The tenth annual workshop on Micro Electro Mechanical Systems (MEMS 97), p.96-101(1997))を参照されたい。リーらは、カオス的移流を形成するために、電気泳動力または圧力を採用することに焦点を当て、リウらは、同様の移流を励起するために、マイクロチャンネルの幾何学的形態に依拠している。エバンズらは、平坦な混合チャンバを構成し、その側方で、非対称ソースおよびシンクがフロー領域を形成し、これにより、流体粒子の当初の位置のわずかな差異により、最終的な位置を大きく変化させる。これは流体粒子をカオス的に再配置させ、こうして2つの粒子を混ぜ合わせる。ごく最近になって、能動的に混合させるために、電気流体力学的な対流を用いることが提案されている。ジン(Jin)らの「マイクロ流体式生化学分析のための、電気流体力学的な対流を用いた能動的ミキサー(An active mixer using electrohydrodynamic (EHD) convection for microfluidic-based biochemical analysis)」(Technical Digest, Solid-State Sensor and Actuator Workshop, p. 52-55)を参照されたい。
【0009】
分子の拡散は、レイノルズ数の小さい液体フローにおいて重要な役割を果たす。一般に、2種類の液体の接触表面が増大すると、拡散速度は大きくなる。分子が拡散するために必要な時間は、拡散距離の二乗に比例する。混合チャンネルを単純に狭くした迅速な拡散ミキサーがヴィーンストラ(Veenstra)らの「マイクロフロー注入分析システムに適用可能な拡散ミキサーのための特徴的方法(Characterization method for a new diffusion mixer applicable in micro flow injection analysis systems)」(J. Micromech. Microeng. , Vol. 9, pg. 199-202 (1999))に開示されている。拡散型マイクロ混合に対する第1のアプローチは、界面領域を増大させ、2種類の液体を交互に配置することにより、拡散長を減少させることであった。交互に配置することは、構造物の形状を操作することにより行われた。1つのアプローチは、マイクロノズルアレイを用いて、1つの液体を他の液体に注入することである。ミヤケ(Miyake)らの「迅速な拡散を用いたマイクロミキサー(Micro mixer with fast diffusion)」(Proceedings of Micro Electro Mechanical Systems, p. 248-253 (1993))を参照されたい。択一的な方法は、複数のステージで分離・再結合させることにより、2種類のフローのストリームを1つのチャンネル内で重ね合わせることである。ブラネビエルグ(Branebierg)らの「層流のによる迅速な混合(Fast mixing by lamination)」(Proc. IEEE Micro Electro Mechanical Systems, p. 441 (1996))、クロア(Kroa)らの「平坦なシリコン/ガラス技術を用いて形成されたマイクロミキサー上の実験およびシミュレーション(Experiments and simulations on a micro-mixer fabricated using a planar silicon/glass technology)」(MEMS, p. 177-182 (1998))、シュベシンガー(Schwesinger)らの「集積マイクロミキサーを用いたモジュール式マイクロ流体システム(A modular microfluidic system with an integrated micromixer)」(J. Micromech. Microeng., Vol 6, pg. 99-102 (1996))、およびシュベシンガーらの「シリコン内に積層された静的マイクロミキサー(A static micromixer built up in silicon)」(Proceedings of the SPIE, The International Society for Optical Engineering, Micromachined Devices and Components, Vol. 2642, p. 150-155)を参照されたい。このタイプのミキサーの特徴は、コック(Koch)らの「シリコンに基づく2つの簡便なマイクロミキサー(Two simple micromixers based on silicon)」(J. Micromech. Microeng., Vol 8, p. 123-126 (1998))、コックらの「マイクロマシーンによる化学反応システム(Micromachined chemical reaction system)」(Sensors and Actuators, Physical(74), p. 207-210)、およびコックらの「マイクロミキサーのための改善された特徴技術(Improved characterization technique for micromixer)」(J. Micromech. Microeng, Vol 9, p. 156-158 (1999))に開示されている。層流技術の変形は、シヌソイド形状の流体チャンネル(カンパー(Kamper)らの「生化学的および化学的マイクロ反応装置のためのマイクロ流体成分(Microfluidic components for biological and chemical microreactors)」(MEMS 1997, p. 338)を参照のこと)、または2種類の対向する流れの流体の択一的チャンネル(http://www. imm-mainz.de/Lnews/Lnews 4/mire. htmlを参照のこと)、あるいは内部で交差するチャンネルを形成する一連の固定的な硬い部材を用いた3Dパイプ(バートシュ(Bertsch)らの「産業用静的ミキサーを大幅に小型化した3Dマイクロミキサー(3D micromixers-downscaling large scale industrial static mixers)」(MEMS 2001 14th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems, p. 507-510を参照のこと)の中で、液体を個別化、再配置、その後に再統合することにより同様に実現される。拡散型の静的な拡散の1つの欠点は、面外流体フローを提供するために、複雑な3次元構造を必要とする点にある。別の欠点は、フローを特徴付ける小さいレイノルド数により、混合時間が長くなることである。
【0010】
能動的なミキサーの問題点は、混合プロセス中のエネルギ吸収により、温度に影響を受けやすい流体に対しては適用できない点である。さらに、いくつかの能動的なミキサーは、帯電または分極可能な流体粒子に基づき、対流または局在的乱流が形成される。すなわち、伝導度の低い液体は適切に混合することができない。摂動力が機械的なマイクロポンプから与えられる場合、バルブのないマイクロポンプが存在するため、混合のための溶液のフロー速度を制御することが極めて複雑となる。
【0011】
連続的なフローシステムにおいて、混合比を制御することは常に技術的な問題となる。サンプルと試薬のフロー速度を変えることにより、試薬とサンプルのポートにおける圧力を適正に制御して、混合比を得ることができる。しかし、流体の特性および混合チャンバ/チャンネルの幾何学的形状により圧力が依存するため、制御することは極めて煩雑となる。インレットがマイクロポンプにより制御される場合、動作周波数とフロー速度の間の関係が非線形であるため、フロー速度を自由に変えることは容易な作業ではない。ミキサーを調整し、電気的に作動するフラッパバルブを用いて、2種類の液体を不連続的に混合することが、ヴォルドマン(Voldman)らの「集積された液体ミキサー/バルブ(An Integrated Liquid Mixer/Valve)」(Journal of Microelectromechanical Systems", Vol. 9, No. 3 (Sep. 2000))に開示されている。このデザインは、所定の混合比を得るために、洗練された圧力フローの較正を必要とする。
【0012】
ホソカワ(Hosokawa)らの「マイクロキャピラリベントを用いた小滴方式のナノ/ピコリットルミキサー(Droplet based nano/picoliter mixer using hydrophobic microcapillary vent)」(MEMS'99, p. 388)、ホソカワらの「ポリ(ジメチルシロキサン)式マイクロ流体デバイスにおけるピコリットルの液体サンプルの処理(Handling of Picoliter Liquid Samples in a Poly (dimethylsiloxane)-Based Microfluidic Device)」(Anal. Chem 1999, Vol. 71, p. 4781-4785)、ワシズ(Washizu)らの「マイクロリアクタ用液体小滴の静電気的駆動(Electrostatic actuation of liquid droplets for micro-reactor applications)」(IEEE Transactions on Industry Applications, Vol. 34 (No. 4), p. 732-737 (1998))、バーンズ(Burns)らの「集積化されたナノリットルDNA分析デバイス(An Integrated Nanoliter DNA Analysis Device)」(Science, Vol. 282 (No. 5388), p. 484 (Oct. 16,1998))、ポーラック(Pollack)らの「マイクロ流体用液体小滴のエレクトロウェッティング方式駆動(Electrowetting-based actuation of liquid droplets for microfluidic applications)」(Appl. Phys. Lett., Vol. 77, p. 1725 (Sept. 2000))、パムラ(Pamula)らの「マイクロ流体のエレクトロウェッティング方式の小滴混合(Microfluidic electrowetting-based droplet mixing)」(MEMS Conference, 2001,8-10)、ファウラー(Fowler)らの「小滴方式のマイクロ流体力学による今後の改善(Enhancement of Mixing by Droplet-based Microfluidics)」(IEEE MEMS Proceedings, 2002,97-100)、ポーラックの「デジタルマイクロ流体力学のためのエレクトロウェッティング方式マイクロ駆動(Electrowetting-based microactuation of droplets for digital microfluidics)」(Ph. D. Thesis, Department of Electrical and Computer Engineering, Duke University)、およびウ(Wu)の「ユニットマイクロ流体システムのためのインプットバッファの設計および製造(Design and Fabrication of an Input Buffer for a Unit Flow Microfluidic System)」(Master thesis, Department of Electrical and Computer Engineering, Duke University)において、小滴方式のミキサーが研究されている。
【0013】
小滴式ミキサーは、連続フロー方式のマイクロ流体デバイスより数多くの利点を有するように設計・構成できると考えられている。離散的フローは、連続的なマイクロ流体デバイスが有するフロー速度に対する問題点を払拭することができる。小滴式混合デバイスのデザインは、安価で製造できる平坦な構造物に依拠することができる。空気式駆動、静電気またはエレクトロウェッティングによる作動メカニズムは、ヒータを必要としないので、(生)化学物質に対する影響を最小限に抑えることができる。適正な小滴形成技術を用いることにより、小滴型ミキサーは、液体の体積をより良好に制御することができる。最後に、小滴式ミキサーは、前後運動または振動などの小滴動作により、小滴内部において再循環させ、拡散が主流となるスケールにおける混合効果を増大させることができる。
【0014】
上述のように、連続フローを必要とするこれまでの分析・混合技術の問題点に対処するために、新規な小滴操作技術を提供することは有用である。特に、以下説明し、クレームする本発明は、部分的には、連続フロー構造に対する択一的でより良好な解決手段が、チャンネルおよび混合チャンバが永久的にエッチングされず、むしろ仮想的なもので、フライ上に構成および再構成することができる場合のシステムを設計することにあると認識することにより実現された。本発明は、流体を小滴に個別(離散)化する手段と、各小滴が仮想的な混合または反応チャンバとして機能するように、個々の小滴を制御する手段とを提供することにより、こうしたシステムを実現する。
【0015】
[発明の要約]
本発明は、エレクトロウェッティング方式の技術を用いた、液体の小滴方式の処理方法および操作方法を提供するものである。小滴はマイクロリットル以下の容量を有していてもよく、電極に対する電圧を制御することにより自由に移動させることができる。小滴の駆動メカニズムは、一般に、電圧誘起されたエレクトロウェッティング効果による小滴内の表面張力勾配に依拠している。本発明のメカニズムによれば、小滴を搬送することができる一方、仮想的なチャンバとして機能させて、チップ上の任意の場所で混合することができる。チップは、所望の作業を実行するためにリアルタイムで再構築可能な電極アレイを有する。本発明によれば、サンプル小滴、試薬小滴、希釈小滴などを独立して制御するように、いくつかの異なるタイプの処理および操作を行うことができる。従前、こうした処理は連続液体フローに対してなされていた。これらの処理は、例えば、駆動または移動、モニタ、検出、照射、培養、反応、希釈、混合、透析、分析などを含む。さらに、本発明の方法を用いて、例えば、マイクロ流体チップにおける連続入力から、連続フロー液体源から小滴を形成することができる。すなわち、本発明は、連続フローから均一の大きさを有し、独立して制御可能な複数の小滴単位に個別化または断片化する方法を提供する。
【0016】
微視的に操作するために、離散的で独立して制御可能パケットまたは小滴に液体を細分化することにより、連続フローシステムに比していくつかの重要な利点が得られる。例えば、流体操作または流体工学を基本的な反復可能な動作に縮減することにより(1つのステップとしての1つの液体ユニットの移動)、デジタル電気工学と類似した、階層的またはセル方式デザインのアプローチを可能にする。
【0017】
上記利点に加えて、以下のような利点を得るため、小滴駆動または小滴操作のためのメカニズムとしてエレクトロウェッティング技術を用いる。
1.小滴の位置に関する改善された制御
2.高密度電極アレイを用いた高い並行処理機能
3.再構築性
4.プログラム動作を用いた混合比制御、混合比のより良好な制御性、混合比の精度改善
5.高い生産性、改善された並行性
6.非同期制御性および精度のさらなる改善を可能にする光学的検出部品との集積
【0018】
とりわけ本発明は、小滴方式のサンプル作成および分析を可能にするサンプリング方法を提供する。本発明は、マイクロ流体チップまたは他の適当な構造体において、エレクトロウェッティング現象を誘発し、制御することにより、連続液体フローから均一な大きさを有する一連の小滴に断片化または個別化する。この液体は、一連の小滴として、順次、構造体の中を通り抜けるか、構造体をわたって搬送され、一連の小滴は、最終的にはアウトプットにおいて、連続フローとして再結合され、収集貯蔵部に配置され、あるいは分析のためフローから迂回する。択一的には、連続フローストリームは、構造体を完全に横断して、小滴を分析するため、連続フローに沿った特定場所で小滴が取り除かれ、サンプル収集される。両方の場合、サンプル収集された小滴は、分析のため構造体の特定領域に搬送される。すなわち、オンラインではあるが、メインフローに対してインラインではなく、分析が行われ、分析をメインフローから分断することができる。
【0019】
メインフローから外れると、各小滴の動きを独立して制御するための設備が存在する。化学分析の目的で、サンプル小滴を、チップまたは他の構造体の上または隣接する試薬貯蔵部から形成された特定の化学的試薬を含む小滴と合体させ、混合させることができる。いくつかの場合、小滴の混合、反応または培養などの所定の機能が付与されるチップの一部を用いて、複数ステップの反応または希釈が必要である。サンプルが準備されると、アナライトの検出または測定に特化したチップの別の部分に、エレクトロウェッティングによりサンプル小滴が搬送される。いくつかの検出領域は、例えば、所定の結合酵素や他の生体分子識別剤を含み、特定の検出に特化したものであってもよく、別のいくつかの検出領域は、蛍光式または吸光式検定のための光学的システムなどの汎用性検出手段を有していてもよい。連続フロー源からチップの分析部分に至る小滴フロー(分析フロー)は、連続フロー(入力フロー)とは独立し、分析を実行する上で格段の柔軟性が許容される。本発明の方法の他の特徴および利点を以下により詳細に説明する。
【0020】
本発明の方法は、連続フローからマイクロ小滴を形成する手段を用いて、小滴を独立して搬送、併合、混合および他の処理を行う。好適な実施形態は、表面張力(すなわちエレクトロウェッティング)を電気的に制御して、これらの操作を実現する。1つの実施形態において、液体は、2つの並行なプレートの間の空間に収容される。一方のプレートは、その表面上にエッチングされた駆動電極を有し、他方のプレートは、接地されるか、基準電位に設定されたエッチング電極または単一の連続的な平面電極を有する。疎水性絶縁物が電極をカバーし、電場が電極と対向プレートの間に形成される。この電場により表面張力勾配が形成され、その結果、電圧印加された電極に重畳する小滴をこの電極に向かって移動させる。電極を適当に配置し、制御することにより、小滴を隣接する電極間において連続的に搬送することができる。パターン化された電極を2次元アレイに配置して、アレイによりカバーされる任意の位置に小滴を搬送することができる。小滴の周囲の空間には空気やオイルなどの不混和性流体を充填してもよい。
【0021】
別の実施形態において、接地電位または基準電位に用いられる構造体は、駆動電極と同一平面上にあり、第2プレート(用いられた場合)は単に汚染空間を定義する。同一平面上の接地部材が電極アレイ上に重畳された導電性グリッドであってもよい。択一的には、接地部材は、接地電極または基準電極として機能するように動的に選択された電極アレイとする一方、別のアレイ電極を駆動電極として機能するように選択してもよい。
【0022】
複数の小滴を同一の電極上で搬送することにより、小滴を一体に合体させることができる。小滴を受動的または能動的に順次混合する。小滴は、拡散により受動的に混合する。小滴は、エレクトロウェッティング現象を利用して、合体小滴を移動または「振動」させることにより能動的に混合する。好適な実施形態において、小滴は、2×2の電極アレイの周囲を回転することにより混合する。小滴を駆動することにより、不可逆的な乱流を形成するか、分散した層流を形成して、拡散による混合を促進させる。小滴は、以下のようにして、より大きい小滴または液体の連続本体部から分離させることができる。すなわち、液体の直下にある電極に沿って、液体本体部の端部に隣接する少なくとも2つの電極を活性化し、活性化した複数の電極の広がりにわたって拡張するように液体を移動させる。そして中間電極を不活性化して、本質的に親水性を有する領域の間の疎水性領域を形成する。液体メニスカスが疎水性領域で破断し、新しい小滴が形成される。この処理を用いて、連続フローストリームから複数の小滴を形成する。
【0023】
本発明の1つの実施形態によれば、小滴を操作するための装置は、基板表面を含む基板、基板表面上に形成された電極アレイ、基準部材アレイ、基板表面上に形成された誘電層、および電極選択部を有する。基準部材は基準電位に設定することができる。基準部材アレイは、各基準部材は少なくとも1つの電極と隣接するように、電極アレイと実質的に同一平面上に配設されている。誘電層は、基板表面上に形成され、電極をカバーするようにパターン形成される。電極選択部は、選択された電極に順次、駆動電圧をバイアスするように、アレイの中から選択された1つまたはそれ以上の電極を順次活性化し、不活性化するマイクロプロセッサまたは他の適当な部品として構成してもよい。電極選択部により実施されるシーケンスにより、選択された電極により決まる所望の経路に沿って、基板表面上に形成された小滴を移動させる。
【0024】
本発明の1つの方法によれば、電極アレイと実質的に同一平面上の基準部材アレイとを有する表面上に小滴を形成することにより、小滴を活性化する。小滴は、複数の電極のうちの第1の電極上に配置され、第2の電極と、第1および第2電極の間に配設された中間基準部材に少なくとも部分的に重なる。第1および第2の電極を活性化して、小滴の少なくとも一部を第2の電極にわたって拡張する。第1の電極を不活性化して、小滴を第1の電極から第2の電極へ移動させる。
【0025】
この方法の1つの態様によれば、第2の電極は第1の方向に沿って第1の電極に隣接している。さらに、アレイは1つまたはそれ以上の追加的な方向に沿って第1の電極に隣接する1つまたはそれ以上の追加的な電極を有する。小滴は、第2電極と同様、これらの追加的な電極に少なくとも部分的に重なる。この方法の態様によれば、第1および第2の電極を含む第1の方向が小滴を移動させるべき方向に沿った所望の方向として選択される。第1の方向の選択に基づいて活性化するために、第2電極が選択される。
【0026】
本発明の別の方法によれば、1つの小滴が2つまたはそれ以上の小滴に分離される。電極アレイと実質的に同一平面上の基準部材アレイとを有する表面上に開始小滴を形成する。電極アレイは、第1の外側電極、第1の外側電極に隣接した中央電極、および中央電極に隣接した第2の外側電極からなる少なくとも3つの電極を含む電極を有する。開始小滴は、当初において、3つの電極のうちの少なくとも1つの電極上に配置され、3つの電極のうちの少なくとももう1つの電極と重なる。3つの電極のそれぞれを活性化して、開始小滴を3つの電極にわたって拡張させる。中間電極の不活性化して、開始小滴を第1および第2の分離小滴に分離する。第1の分離小滴を第1の外側電極上に配置し、第2の分離小滴を第2の外側電極上に配置する。
【0027】
本発明のさらに別の方法において、2つまたはそれ以上の小滴を1つの小滴に併合する。電極アレイと実質的に同一平面上の基準部材アレイとを有する表面上に第1および第2の小滴を形成する。電極アレイは、第1の外側電極、第1の外側電極に隣接した中央電極、および中央電極に隣接した第2の外側電極からなる少なくとも3つの電極を含む電極を有する。第1の小滴は、第1の外側電極上に配置され、少なくとも部分的に中間電極と重なる。第2の小滴は、第2の外側電極上に配置され、少なくとも部分的に中間電極と重なる。3つの電極のうちの1つの電極を目的地電極として選択する。目的地電極の選択に基づいて、3つの電極のうちの2つまたはそれ以上の電極を選択して、順次活性化し、不活性化する。第1および第2の小滴の一方を他方に向かって移動させるか、第1および第2の小滴を互いに向かって移動させるようにシーケンス処理するために選択された電極を順次活性化し、不活性化する。第1および第2の小滴が一体に併合し、目的地電極上で合体小滴が形成される。
【0028】
この方法の1の態様によれば、第1の小滴が第1の成分を有し、第2の小滴が第2の成分を有し、合体小滴が第1および第2の成分を有する。この方法が、第1および第2の成分を一体に混合するステップを有する。本発明によれば、合体小滴を形成するステップにより、第1および第2の成分が一体に混合される。本発明によれば、混合ステップを受動的または能動的に行うことができる。本発明の態様において、混合ステップは、4つの電極からなる2×2のサブアレイ上の合体小滴を、4つの電極を順次活性化し、不活性化することにより、合体小滴を回転させるように移動させることを含む。合体小滴が回転する一方、合体小滴の少なくとも一部が4つの電極の交差領域またはその近辺において実質的に静止した状態で維持される。本発明の別の態様において、混合ステップは、合体小滴を直線的に配列された電極アレイの一連の電極に沿って、所望回数および所望振動数で前後に振動させるために、直線的に配列された電極アレイの一連の電極を順次活性化し、不活性化することを含む。本発明の追加的な混合手法を以下詳細に説明する。
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、小滴を操作するための装置は、基板表面を含む基板と、基板表面上に形成された電極アレイと、基板表面上に形成され、電極をカバーする誘電層と、電極選択部とを備える。電極選択部は、電極対のシーケンスを動的に形成する。各電極対は、第1の電圧がバイアスされた選択された第1の電極と、第1の電圧より低い第2の電圧がバイアスされ、選択された第1の電極に隣接して配設された選択された第2の電極とを有する。好適には、第2の電圧は接地電圧またはいくつかの他の基準電圧である。基板表面上に形成された小滴は、電極選択部により選択された電極対の間にある所望経路に沿って移動する。
【0030】
本発明のさらに別の方法によれば、電極アレイを含む表面上に小滴を形成することにより、小滴を駆動する。小滴は、当初において、第1の電極上に配置され、第1のギャップを隔てて第1の電極から離間した第2の電極に少なくとも部分的に重なる。第1の電極に第1の電圧をバイアスし、第1の電圧より低い第2の電圧を第2の電極にバイアスする。こうして、小滴を第1のギャップ上の中央に配置する。第1および第2の電極に近接する第3の電極に、第2の電圧より高い第3の電圧をバイアスし、第3の電極の上に小滴を拡張する。第1の電極へのバイアスを取り除き、第1の電極から遠ざかる方向に小滴を移動させる。こうして、小滴を第2および第3の電極の間の第2のギャップ上の中央に配置する。
【0031】
本発明のさらに別の方法によれば、小滴を2つまたはそれ以上の小滴に分離する。電極アレイを有する表面上に開始小滴を形成する。電極アレイは、第1の外側電極、第1の外側電極に隣接した中央電極、および中央電極に隣接した第2の外側電極からなる少なくとも3つの電極を含む電極を有する。開始小滴は、当初において、3つの電極のうちの少なくとも1つの電極上に配置され、3つの電極のうちの少なくとももう1つの電極と重なる。開始小滴を3つの電極にわたって拡張させるために、3つの電極のそれぞれに第1の電圧をバイアスする。開始小滴を第1および第2の分離小滴に分離するために、中間電極に第1の電圧より低い第2の電圧をバイアスする。第1の分離小滴を第1の外側電極上に配置し、第2の分離小滴を第2の外側電極上に配置する。
【0032】
本発明の別の方法によれば、2つまたはそれ以上の小滴を1つの小滴に併合する。電極アレイを有する表面上に第1および第2の小滴を形成する。電極アレイは、第1の外側電極、第1の外側電極に隣接した中央電極、および中央電極に隣接した第2の外側電極からなる少なくとも3つの電極を含む電極を有する。第1の小滴は、第1の外側電極上に配置され、少なくとも部分的に中間電極と重なる。第2の小滴は、第2の外側電極上に配置され、少なくとも部分的に中間電極と重なる。3つの電極のうちの1つの電極を目的地電極として選択する。目的地電極の選択に基づいて、3つの電極のうちの2つまたはそれ以上の電極を選択して、順次バイアスする。第1および第2の小滴の一方を他方に向かって移動させるか、第1および第2の小滴を互いに向かって移動させるように、第1および第2の電圧の間でシーケンス処理するために選択された電極を順次バイアスする。第1および第2の小滴を一体に併合して、目的地電極上で合体小滴を形成する。
【0033】
本発明は、連続液体フローをサンプリングする方法を提供する。第1フロー経路に沿って表面に液体フローを供給する。表面は電極アレイと実質的に同一平面上の基準部材アレイとを有する。液体フローの少なくとも一部が第1の電極上に配置され、第2の電極と第1および第2の電極の間の基準部材の上に少なくとも部分的に重なる。液体フロー部分を第2および第3の電極にわたって拡張するために、第1の電極、第2の電極、および第2電極に隣接する第3の電極を活性化する。第3の電極上の液体フローから小滴を形成するために、第2の電極を不活性化する。この小滴を液体フローとは別体とし、制御可能に独立させる。
【0034】
連続液体フローをサンプリングするための本発明の別の方法によれば、第1フロー経路に沿って表面に液体フローを供給する。表面は電極アレイを有する。液体フローの少なくとも一部が第1の電極上に配置され、第2の電極に少なくとも部分的に重なる。液体フロー部分を第2および第3の電極にわたって拡張するために、第1の電極、第2の電極、および第2電極に隣接する第3の電極に第1の電圧をバイアスする。第3の電極上の液体フローから小滴を形成するために、第1の電圧より低い電圧を第2の電極にバイアスする。こうして形成された小滴は、液体フローとは別体であり、制御可能に独立している。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態によれば、バイナリ混合装置は、第1の混合ユニット、第2の混合ユニット、および電極選択部を備える。第1の混合ユニットは、第1の表面領域、第1の表面領域上に配設された第1の電極アレイ、および第1の電極アレイと実質的に同一平面上に配設された第1の基準部材を有する。第2の混合ユニットは、第2の表面領域、第2の表面領域上に配設された第2の電極アレイ、第2の電極アレイと実質的に同一平面上に配設された第2の基準部材、および第2の表面領域と第1の混合ユニットとに連通した小滴アウトレット領域を有する。電極選択部は、第1の表面領域に供給された2つの小滴を一体に混合するように1つまたはそれ以上の選択された第1の電極を順次活性化し、不活性化する。電極選択部は、同様に、第2の表面領域に供給された別の2つの小滴を一体に混合するように1つまたはそれ以上の選択された第2の電極を順次活性化し、不活性化する。
【0036】
したがって本発明の目的は、連続フロー液体入力源をサンプル採取して、均一の大きさを有し、独立して制御可能な小滴を連続的かつ自動的に形成することにある。
【0037】
本発明のさらなる目的は、エレクトロウェッティング技術を用いて、搬送、混合、検出、分析などの小滴方式の操作を実行し、制御することにある。
【0038】
本発明のさらなる目的は、高い精度で所望の混合比を得るようにバイナリ混合を有効に実現するのに適した構成を提供することにある。
【0039】
これまで説明した本発明の目的は、以下に最良に開示する添付図面を参照しながら以下の記載を参照すると明らかとなるであろう。
【0040】
[発明の詳細な説明]
本明細書の主旨において、「層(film)」および「フィルム(film)」なる用語は、置換可能に用いられ、必須ではないが、通常平坦または実質的に平坦で、一般にコーティングや処理したものの上に形成されるか、別の構造体の上に積層される構造物または本体部を示す。
【0041】
本明細書の主旨において、「連絡する(communicate)」なる用語(例えば、第1部品が第2部品と「連絡する」、または「連通する」。)を用いて、2つの構成部品または構成要素の間の構造的関係、機能的関係、機械的関係、電気的関係、光学的関係、流体的関係、またはそれらの組み合わせを意味する。したがって、1つの構成部品が第2の構成部品と連絡するという場合、追加的な構成部品が第1および第2の構成部品との間に存在する連絡の可能性、および/または追加的な構成部品と動作可能に関連するか、係合する可能性を排除するものではない。
【0042】
本明細書の主旨において、1つの層、領域、または基板などの所与の構成部品を参照して、別の構成部品「の上に(on)」、「の中に(in)」、または「において(at)」積層または形成されるとした場合、所与の構成部品は他の構成部品の上に直接的に形成してもよいし、あるいは介在する構成部品(例えば、1つ以上のバッファ層、中間層、電極またはコンタクト)があってもよいと理解すべきである。さらに、「積層される(disposed on)」または「形成される(formed on)」なる用語は置換可能に用いられ、所与の構成部品が別の構成部品とのどのような関係で配設されるかを意味すると理解すべきである。したがって、「積層される(disposed on)」または「形成される(formed on)」なる用語は、材料の搬送、積層、または形成に関する特定方法に関して限定を与えるように意図するものではない。
【0043】
本明細書の主旨において、任意の形態を有する液体が、電極、マトリックス、または表面「の上に(on)」、「の中に(in)」、または「の上方に(over)」あると説明される場合、こうした液体は、電極/アレイ/マトリックス/表面と直接的に接触するか、液体と電極/アレイ/マトリックス/表面との間に介在する1つ以上の層またはフィルムと接触し得ると理解すべきである。
【0044】
ここで用いられる「試薬(reagent)」なる用語は、サンプル材料と反応し、希釈し、溶媒和し、懸濁し、乳状化し、封入し、相互作用する上で有用な材料を意味する。
【0045】
必要に応じて図1−25Bを参照しながら、本発明により提供される小滴方式の方法および装置を詳細に説明する。
【0046】
[エレクトロウェッティングによる小滴方式駆動]
ここで図1を参照すると、エレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構が、ポンプ、バルブ、または固定されたチャンネルを必要とすることなく、小滴Dに対してエレクトロウェッティング方式に操作する好適な実施形態として、一般に符号10で図示されている。小滴Dは、電解質か、分極可能か、あるいは電流を流すか、帯電させることができる。小滴Dは、一般に符号12で示す上側プレーンと、一般に符号14で示す下側プレーンとの間で挟持されている。本明細書においては、これら2つのプレーン12,14を区別するために、「上側(upper)」および「下側(lower)」なる用語が用いられるが、水平方向におけるプレーン12,14の向きを限定するものではない。下側プレーン12は、独立してアドレス可能な一連の制御電極を有する。一例として、3つからなる直線的な一連の制御電極または駆動電極E(特にE1,E2,E3)が図1に図示されている。ただし、制御電極E1,E2,E3は、円などの直線的でない経路に沿って配置することもできると理解される。さらに、本発明の利点を享受するデバイス構成(例えば、マイクロ流体チップ)において、制御電極E1,E2,E3は、全体として2次元電極アレイまたはグリッドを構成するより多数の制御電極の一部である。図1は、一般にC(特にC1,C2,C3)と称するユニットセルを概念化するために、隣接する制御電極E1,E2,E3の間に破線を有する。好適には、各ユニットセルC1,C2,C3は、単一の制御電極E1,E2,E3を含む。通常、各ユニットセルCまたは制御電極Eの大きさは、約0.05mm〜約2mmの間である。
【0047】
制御電極E1,E2,E3は、適当な下側基板または下側プレート21の中に埋め込まれるか、その上に形成されている。疎水性絶縁物からなる下側薄膜層23が下側プレート21をカバーするように形成され、制御電極E1,E2,E3を電気的に絶縁する。下側疎水層23は、単一の連続した層であるが、択一的には制御電極E1,E2,E3が配設された領域だけをカバーするようにパターン形成してもよい。上側プレーン14は、単一の連続した接地電極Gを有している。適当な上側基板またはプレート25の中に埋め込まれるか、その上に形成されている。択一的には、複数の接地電極Gが各制御電極E1,E2,E3の配置位置に並行して設けてもよく、この場合、1つの接地電極Gが対応する1つの制御電極Eに関連付けられる。好適には、疎水性絶縁物からなる上側薄膜層27が同様に、接地電極Gを絶縁するために上側プレート25に付設される。下側層23および上側層27に好適な疎水性材料の非限定的な具体例は、(ウィルミントン州デラウェアにあるE.I. duPont deNemours and Companyから市販されている)テフロン(登録商標)AF1600材料である。マイクロアクチュエータ機構10の形状および小滴Dの容量は、小滴Dの足跡が、中央制御電極(例えば、E2)に隣接する少なくとも2つの制御電極(例えば、E1,E2)と重なり合うとともに、上側層27と接触するように制御される。好適には、これは、下側プレーン12と上側プレーン14により決まる、圧迫されていない状態の小滴の直径より小さいギャップまたは間隔dを特定することにより実現される。通常、間隔dの断面寸法は、約0.01mm〜約1mmの間である。好適には、媒質がギャップdを充填し、小滴Dを包囲する。媒質は、小滴Dの蒸発を防ぐために、空気のような不活性ガスあるいはシリコーンオイルなどの非混和性流体であってもよい。
【0048】
接地電極Gおよび制御電極E1,E2,E3は、従来式の導電性リードラインL1,L2,L3を介して、好適にはDC電圧源であるが、択一的にはAC電圧源であってもよい少なくとも1つの適当な電圧源と電気的に導通している。各制御電極E1,E2,E3に対して他の制御電極E1,E2,E3とは独立して通電することができる。これは、各制御電極E1,E2,E3に接続された適当なスイッチS1,S2,S3、または能動状態(オン状態、ハイ電圧、またはバイナリ数の1)または受動状態(オフ状態、ロー電圧、またはバイナリ数の0)に各制御電極E1,E2,E3を独立して切り替えるための他の適当な手段を設けることにより実現することができる。他の実施形態において、あるいは電極アレイの他の領域において、2つ以上の制御電極Eを同時に駆動するために、共通に接続してもよい。
【0049】
エレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構10は、マイクロ流体チップの一部を示し、この上に従来式のマイクロ流体部品および/またはマイクロ電気部品を集積してもよい。このチップは、例えば、MOS(金属酸化物半導体)回路部とインターフェイスされた抵抗性発熱領域、マイクロチャンネル、マイクロポンプ、圧力センサ、光学的導波路、および/またはバイオセンシングまたは化学センシング部品を有していてもよい。
【0050】
ここで図2を参照すると、電極アレイまたはその一部が図示され、制御電極(図示せず)を有する隣接するユニットセル(例えば、C1,C2)の間の各構造的インターフェイスは、好適には、各ユニットセルC1,C2の主要平坦構造物から外側に延びる相互連結突起部42,43により形成される、一般に符号40で示す相互嵌合領域(互いにかみ合う領域)により特徴付けられる。セルとセルの間のインターフェイスが直線的な端部境界を有する場合に比して、こうした相互嵌合領域40は、1つのユニットセル(例えば、C1)から隣接するユニットセル(例えば、C2)への搬送をより連続的なものとする上で有用である。ただし、本発明の任意の実施形態による電極またはユニットセルは、高密度で配列された2次元アレイを構成する上で好適な正方形または八角形などの多角形形状を有していてもよい。
【0051】
再び図1を参照して、マイクロアクチュエータ機構10のデザインにより実現される基本的なエレクトロウェッティング技術について説明する。当初において、すべての制御電極(すなわち、小滴Dが中央に配置される制御電極E2および隣接する制御電極E1,E3)が接地または浮動状態にあり、小滴Dの任意の位置における接触角度が小滴Dに対する平衡接触角に等しい。小滴Dの真下に配設された制御電極E2に電位が付加されると、小滴Dと活性化された(電圧が印加された)制御電極E2の間の界面において、電荷層が形成され、界面エネルギγSLが局在的に低減する。より小さい疎水性を有する絶縁層23により与えられる硬い絶縁物が小滴Dと制御電極E2の間の静電容量を制御するため、これまでに開発された非絶縁型の電極構成を有する場合と同様、その効果は小滴Dの電解質の液相の特定の空間−電荷効果に依存しない。界面エネルギが低減する際の電圧依存性は、以下のように記述される。
ここで、εは絶縁物の誘電率、dは絶縁物の厚み、Vは印加される電位である。γSLにおける変化は、ヤング方程式に従い、小滴Dおよび活性化された制御電極E2の間のインターフェイスにおける接触角を低減する。小滴Dの一部が接地電極E1またはE3と重なり合うと、小滴のメニスカスが非対称に変形し、小滴Dの端部間に圧力勾配が形成され、活性化された電極E1またはE3に向かうバルクフローが生じる。例えば、制御電極E2,E3を接地状態に維持しながら、制御電極E1を活性化することにより、小滴Dを左方向へ(すなわち、ユニットセルC1の方へ)移動させることができる。別の具体例では、制御電極E1,E2を接地状態に維持しながら、制御電極E3を活性化することにより、小滴Dを右方向へ(すなわち、ユニットセルC3の方へ)移動させることができる。
【0052】
以下の実施例は、一般に、図1および図2を参照して、エレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構10のプロトタイプの実施形態を説明する。
【0053】
[実施例]
1.5mmピッチで7つの相互嵌合した制御電極Eの単一の直線的アレイからなるプロトタイプデバイスを製造し、テストを行った。標準的なマイクロ製造技術を用いて、2000オングストローム厚のクロム層をガラス製の下側プレート21上にパターン形成することにより、制御電極Eを形成した。チップは、7000オングストローム厚のパリレンCをコーティングした後、テフロン(登録商標)AF1600からなる約2000オングストローム厚の層をコーティングした。接地電極Gは、透明インジウムスズ酸化物(ITO)からなる導電層(Rζ<20Ω/平方)でコーティングされたガラス製の上側プレート25を有する。同様に、テフロン(登録商標)AF1600からなる薄膜27(〜500オングストローム)を接地電極Gに付設した。接地電極G上の薄いTEFLON(登録商標)コーティングは、表面を疎水化させるが、絶縁性ではなかった。テフロン(登録商標)でコーティングした後、両方の表面は水に対して104°の接触角を有する。
【0054】
ピペットを用いて、100mMのKClの水小滴(0.7〜1.0μl)をアレイ上に供給し、対向する電極Eと電極Gの間に0.3mmのギャップdを形成するように上側プレート25を配置した。ばね荷重式のコンタクトピン(図示せず)を有するカスタマイズされたクランプを用いて、ボンドパッドを接続した。コンピュータを用いて、接地電圧および120VのDC供給電源の出力電圧を個別にスイッチングすることができるカスタム仕様電気インターフェィスを制御した。
【0055】
小滴は、当初において、接地された制御電極(例えば、E2)の中央に配置され、動きが観察されるまで、隣接する電極の電位を増大させた。小滴Dの移動させ始めるために、通常30〜40Vの電圧が必要であった。一旦、この閾値を超えると、小滴の移動は素早く、反復可能なものであった。接触角ヒステリシスは、この閾値効果に呼応するメカニズムであると考えられている。80Vの印加電位で4つの隣接する制御電極Eを活性化すると、小滴Dは、15Hzのスイッチング周波数で、4つの制御電極にわたって反復して移動した。
【0056】
小滴Dの移動時間ttrは、電圧電位を印加した後、小滴Dが隣接する電極の遠い方の端部に到達するまでの時間と定義された。したがって移動時間ttrは、連続的な移動の間に許容された最小時間を示し、(1/ttr)は、小滴Dの連続的移動に対する最大スイッチング速度であった。電圧の関数としての最大スイッチング速度を図3にプロットした。ここでttrは、移動する小滴Dの記録されたビデオフレームの数をカウントすることにより求められた。
【0057】
6nlの容量の小滴に対して、小滴が1000Hz以上のスイッチング速度で1000サイクル以上の移動し続けることが確かめられた。この速度は、10.0cm/秒の平均速度に相当し、小滴の電気的な操作に関して先に報告されたものより約300倍速い。M.ワシズ(M. Washizu)の論文(IEEE Trans. Ind. Appl. 34,732 (1998))を参照されたい。(水の)小滴Dの端部間の必要とされる温度差が100℃を超えるため、サーモキャピラリィシステムではこれに相当する速度を得ることができない。サンマルコ(Sammarco)らの論文(AlChE J., 45, 350 (1999))を参照されたい。これらは、小滴方式のマイクロ流体システムのための作動メカニズムとしてのエレクトロウェッティングの可能性を示唆している。このデザインは、任意の大規模な2次元アレイに拡張することができ、多数の小滴Dを正確に独立して制御し、マイクロ流体処理に対する一般的なプラットフォームとして機能することを可能にする。
【0058】
図4A−7Bを参照すると、いくつかの小滴を操作する基本動作の具体例が開示されている。図1の場合、直線的に配置された3つのユニットセルC1,C2,C3と関連する制御電極E1,E2,E3が図示されるが、これらのユニットセルC1,C2,C3および制御電極E1,E2,E3は、ユニットセル/制御電極のより大きい直線的な領域、非直線的領域、または2次元アレイを構成してもよい。図4B−7Bにおいては、便宜上、制御電極およびユニットセルを合わせて制御電極E1,E2,E3という。さらにユニットセルC1,C2,C3は、チップ表面上の領域などの物理的な部材または概念的な部品であってもよい。図4A−7Bのそれぞれにおいて、能動的(すなわち活性化された)制御電極E1,E2,E3は、その関連する電気的リードラインL1,L2,L3をONとし、受動的(すなわち不活性化された、浮動または接地状態にある)制御電極E1,E2,E3は、その関連する電気的リードラインL1,L2,L3をOFFとしている。
【0059】
図4A−4Dを参照すると、基本的な「移動(MOVE)」動作が図示されている。図4Aは、小滴Dが制御電極E1上の中央に配置されたスタート位置を示す。当初、すべての制御電極E1,E2,E3は接地されており、小滴Dは制御電極E1上で静止し、平衡状態にある。択一的には、他の小滴に対して他の操作動作がなされ得るときに、制御電極E1を活性化し、隣接するすべての制御電極(例えばE2)を接地して、当初において小滴Dを「維持(HOLD)」または「格納(STORE)」状態に保ち、アレイの隣接する領域から小滴Dを孤立させる。図4A−4Bの矢印で示す方向に小滴Dを移動させるために、制御電極E2を活性化して小滴Dを引き寄せ、図4Bに示すように、小滴Dを移動させ、制御電極E2上の中央に配置する。制御電極E2の電圧電位を取り除いた後、続けて制御電極E3を活性化して、図4Cに示すように、小滴Dを制御電極E3上に移動させる。電極のこの操作シーケンスを反復して、小滴Dを矢印で示す所望の方向に移動させ続けることができる。予め設定されたシーケンス(順序)に従い、選択されたアレイ電極を活性化し、不活性化するように、(従来式のマイクロプロセッサなどの)電気的制御ユニットを適当にプログラムすることにより、小滴Dが電極アレイにわたって移動する経路を正確に容易に制御することができる。すなわち、例えば小滴Dを駆動して、アレイ内で右転回および左転回させることができる。例えば、図4Bに示すように、小滴Dを制御電極E2から制御電極E1まで移動させた後、図4Dに示すように、別の列の電極E4−E46の制御電極E5へ移動させることができる。さらに、上記実施例で説明したように、小滴Dのかき混ぜなどのさまざまな目的により、所望する数のユニットセルに沿って、所望する周波数で小滴Dを往復して循環させる(すなわち振動させる)。
【0060】
図5A−5Cは、基本的な「併合(MERGE)または混合(MIX)」動作を開示し、2つの小滴D1,D2を1つの小滴D3に合体させる。図5Aにおいて、2つの小滴D1,D2は、当初において、少なくとも1つの介在する制御電極E2により隔てられた制御電極E1,E3に配置されている。図5Bに示すように、3つすべての制御電極E1,E2,E3を活性化することにより、図5Bの矢印で示すように、中央の制御電極E2を超えて、小滴D1,D2を互いに引き寄せる。小滴D1,D2の対向する端部が中央の制御電極E2で互いに出くわすと、2つの小滴D1,D2を一体に連結する単一のメニスカスMが形成される。図5Cに示すように、活性化された中央制御電極E2と接触する小滴D1,D2の隣接表面のぬれ性を増大させたまま、2つの外側にある制御電極E1,E3を接地状態に戻すことにより、制御電極E1,E3を含むユニットセルの表面の疎水性を増大させ、併合した小滴D1,D2を押し返す。その結果、図5Cに示すように、小滴D1,D2は単一の混合小滴D3に合体する。これは、こうした状況において、小滴D3に対する最低のエネルギ状態を示す。結果として得られた混合小滴D3は、寄生損失が無視できるか、ゼロであるので、元の混合される前の小滴D1,D2の2倍の容量または質量を有すると推定できる。その理由は、小滴を包囲するフィラー流体(例えば、空気またはシリコーンオイルなどの不混和性液体)を好適に使用することにより、小滴材料が蒸発することを回避し、小滴材料(例えば、図1に示す上側および下側疎水性層27,23)が低摩擦表面であり、そして/または本発明で採用されたエレクトロウェッティング機構が熱によらないためである。
【0061】
本明細書において、2つまたはそれ以上の小滴が合体することを指して、併合(MERGE)または混合(MIX)なる用語は置換可能に用いられてきた。それは、小滴が併合しても、当初別々であった小滴が常に直接的または間接的に完全に混合するとは限らないためである。併合することにより混合されるかどうかは、数多くのファクタに依存する。これらのファクタとして、混合すべき小滴のそれぞれの組成または化学成分、小滴の物理的特性、または温度や圧力などの周囲条件、小滴の粘性や表面張力などの派生的特性、および小滴が移動するか、再び分離する前の合体した状態で維持される時間が挙げられる。一般に、小滴が一体に混合するメカニズムは、受動的混合と能動的混合に分類することができる。受動的混合において、混合動作している間、併合された小滴は最終的な電極上に配置される。合体小滴内で許容可能な程度の拡散が生じれば、受動的混合は十分であり得る。他方、能動的混合においては、併合された小滴がいくつかの手法で動き回り、処理にエネルギを加えて、完全またはより完全な混合を実現する。本発明により実現される能動的混合の手法を以下に説明する。
【0062】
併合動作の後に別個の混合動作が行われる場合、これら2つの動作は、チップの電極アレイ上の異なる部分または異なる領域で起こり得ることに留意されたい。例えば、2つの小滴を1つの領域で併合し、併合小滴を別の領域に搬送するために、1つまたはそれ以上の移動動作を行うことができる。以下説明するように、能動的混合の手法は、他の領域で行うか、併合された小滴が他の領域に搬送される間に行うことができる。
【0063】
図6A−6Cは、基本的な「分離(SPRIT)」動作を図示し、上記説明した併合または混合動作の動作と本質的に正反対のものである。当初、図6Aに示すように、3つすべての制御電極E1,E2,E3が接地され、平衡状態において、単一の小滴Dが中央の制御電極E2上に配置される。図6Bに示すように、外側にある制御電極E1,E3が活性化され、小滴を水平方向外側へ(矢印の方向へ)制御電極E1,E3上に引き寄せる。これは、小滴DのメニスカスMを縮小させる効果を有し、この効果は、活性化された制御電極E1,E3上に形成された外側ローブ(lobe:丸い突起物)を有する「ネッキング」として特徴付けられる。最終的には、図6Cに示すように、メニスカスMの中央部分が破断して、元の小滴Dから分離した2つの新しい小滴D1,D2を形成する。部分的には、物理的構成部品の対称性、およびエレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構10(図1)の構造、さらに外側にある制御電極E1,E3に印加される電圧電位が等しいことに起因して、分離した小滴D1,D2は同じか、実質的に同じ容量を有する。分析動作および検定動作などの本発明の数多くの実施形態において、マイクロ流体チップまたは他のアレイ包含デバイスの上の小滴の大きさを均一に維持するために、分離動作は併合または混合動作のすぐ後に行われる。
【0064】
ここで図7A−7Bを参照すると、基本的な分離動作から個別化(DISCRETIZE)動作を派生させることができる。図7Aに示すように、電極包含ユニットセル(例えば、制御電極E1)に隣接する電極グリッドまたはその端部のいずれかに、1つの表面またはI/Oポートが設けられ、これが液体の入口および/または出口として機能する。液体供給デバイス50を設け、これは、所定量の液体LQを供給および/または吸引するために構成された任意の従来式のデザイン(例えば、キャピラリィチューブ、ピペット、流体ペン、シリンジなど)であってもよい。供給デバイス50は、ポートI/Oまたは制御電極E1に直接的に液体LQの計量された用量(例えば、アリクォート)または液体LQの連続フローを供給するように構成することができる。供給デバイス50を用いる代わりに、液体LQの連続フローをマイクロ流体チップの表面にわたって案内してもよく、このとき制御電極E1,E2,E3は、連続フローの方向、または連続フローの方向に対して同一直線上にない方向(例えば、直角方向)に配置される。図7Aに示す特定の例示的な実施形態において、供給デバイス50は液体LQを制御電極E1に供給する。
【0065】
電極アレイ上に小滴を形成するために、液体LQの主要部の直下にある制御電極(制御電極E1)、および液体主要部の端部に隣接する少なくとも2つの制御電極(例えば、制御電極E1,E3)が活性化される。すると、図7Aに示すように、供給された液体LQの主要部が制御電極E1,E2に広がる。図6A−6Cを参照して上記説明した分離動作と同様に、中間にある制御電極(制御電極E2)を不活性化して、実質的な親水性を有する2つの領域の間に疎水性領域を形成する。液体メニスカスは、疎水性領域上で破断し、図7Bに示すように、制御電極E3の中央に配置された新しい小滴Dを形成または摘み取る。この時点から、他のアレイ電極を活性化/不活性化シーケンスを行い、小滴Dを任意の所望する列方向および/または行方向へ電極アレイの他の領域に移動させてもよい。さらに、液体LQの連続的入力フローに対して、この供給プロセスを反復して、グリッドまたはアレイ上に一連の小滴を形成することにより、連続フローを個別化することができる。以下により詳細に説明するように、特に、数多くの小滴に対して複数の動作を同時に行う場合、個別化処理はアレイ上の小滴方式のプロセスを実行する上で極めて有用である。
【0066】
[小滴方式の混合手法]
本発明に基づき小滴を混合させるためのいくつかの手法の具体例を以下説明する。図8A−8Bを参照すると、図1を参照して上記説明したエレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ10などの構成を採用して、2つまたはそれ以上の小滴、すなわち小滴D1,D2に関する併合動作および混合動作を行うことができる。図8A−8Bにおいて、小滴D1,D2は、当初、それぞれ制御電極E2,E5の中央に配置される。図5A−5Cを参照して先に説明したように、小滴D1,D2は、エレクトロウェッティングを用いて駆動し、互いに向かって移動し、最終的な電極上において一体に併合する。最終的な電極は、電極E3,E4などの中間に配置された電極であってもよい。択一的には、1つの小滴が1つまたはそれ以上の制御電極を超えて移動し、別の静止した小滴と併合してもよい。すなわち、図8A−8Bに示すように、小滴D1を駆動して、矢印に示すように、中間電極E3,E4を超えて移動させ、電極上にある小滴D2と電極E5上で併合する。合体小滴は、1次元の直線的な混合、2次元の直線的な混合、または2次元のループ状の混合の手法により能動的に混合される。
【0067】
1次元の直線的な混合手法の具体例として、複数の小滴が先に説明したように併合され、その結果、合体小滴の内容物を動揺させるために、いくつかの電極にわたって所望する振動数で合体小滴を前後に振動させる(動揺させる、または切り替える)。この混合処理は、上記実施例で説明されたが、アレイの行上または列上にある電極などの直線的に配置された任意の数の電極が関与していてもよい。図9A,9B,9Cは、それぞれ2つの電極、3つの電極、4つの電極が連なったものを示し、振動させることにより、併合または混合させることができる。1次元の直線的な混合の別の具体例では、複数の小滴を併合し、1つまたは複数の合体小滴を上述のように分離する。その結果、分離/併合された小滴は、いくつかの電極にわたって所望の周波数で前後に振動する。所望の混合の程度が得られるまで、分離/併合された小滴を数多くの連続サイクルで再結合、再分離、再振動させることができる。これらの両方の1次元の直線的な混合アプローチにより、1つまたは複数の合体小滴の中で可逆的なフローが形成される。すなわち、合体小滴が反対方向へ振動するとき、一方向に移動することにより得られる混合の流れを止めるか、反転させることができる。したがって、いくつかの状況において、1次元の混合プロセスを伴う可逆的フローは、あまりにも多大な混合時間を要することがある。
【0068】
ここで図10A−10Cを参照すると、「搬送による混合(mixing-in-transport)」と称する1次元の直線的混合の別の具体例について説明する。この方法は、2つまたはそれ以上の小滴を合体させること、および混合が完了するまで合体小滴を所望するフロー経路に沿って前進方向に連続的に駆動することを必要とする。図10Aを参照すると、合体小滴Dは、事前に設定された到着電極Efに達するまで、始点電極E0からアレイ上電極のプログラムされた経路に沿って搬送される。終点電極Efは、分析、反応、培養または検出などの後続のプロセスがプログラムされたアレイ上の所定位置であってもよい。こうした場合、合体小滴Dが能動的に混合されるフロー経路は、矢印で示すように、サンプルが入口からアレイ上の処理領域まで搬送される分析フローとしても機能する。始点電極E0から終点電極Efまでの選択経路を含む数多くの電極の数は、合体小滴Dが受ける数多くの駆動に対応する。すなわち、十分な数の中間経路電極を用いることにより、合体小滴Dは、終点電極Efに到達するまでの時間に十分に混合される。上述の振動的な混合技術の場合、フロー経路は反転しないことに留意されたい。ただしフロー経路は、図10A−10Cのそれぞれの矢印で示すように、アレイのx−y平面において、1つまたはそれ以上の直角の転回を有していてもよい。いくつかの場合においては、経路を転回することにより、混合効果を改善する独特のフローパターンを形成する。図10Bにおいて、数多くの直角の転回からなる梯子状または階段状の構造を有する。図10Cにおいて、終点電極Efは始点電極E0と同じ列にあるが、合体小滴Dは、通過する数多くの電極および転回数を多くするために、その列から逸脱し、連続的に転回するフロー経路を介して駆動される。
【0069】
ここで図11を参照すると、2次元の直線的な混合手法が図示されている。アレイの1つの電極列EROWおよび1つの電極行ECOLが用いられる。小滴D1,D2が電極列EROWに沿って互いに向かって移動し、上記の通り併合し、電極列EROWおよび電極行ECOLの交点に配置された電極の中央に併合した小滴D3が形成される。先に説明したように、選択された電極行ECOLの電極を順次活性化し、不活性化して、併合した小滴D3を分割して、分割された小滴D4,D5を形成する。分割小滴D4,D5は、電極行ECOLに沿って移動する。分割された小滴D4,D5の連続的な移動により、分割された小滴D4,D5の内容物に対する混合効果が改善される。
【0070】
図12A−12Bを参照すると、2次元のループ混合手法の具体例が図示されている。図12Aにおいて、合体小滴Dは、円形状、正方形状、またはアレイの選択された列と行の電極に沿った閉じたループ経路上で時計回りまたは反時計回りに循環する。選択された経路を含む適当な電極をシーケンスする(順序付ける)ことにより、合体小滴Dを周期的に駆動させることができる。合体小滴Dは、その内容物を混ぜ合わせるのに十分な回数だけ循環する。合体小滴Dの循環により、混合効果を改善し、完全に混合するために必要な時間を低減する不可逆的フローパターンが得られる。図12Aにおいて、駆動に際して利用されない中央の電極がただ1つだけ図示されているが、経路をより大きく形成して、より多くの中央電極を囲むようにしてもよい。
【0071】
図12Bにおいて、少なくとも4つの隣接する電極E1−E4からなるサブアレイを用いる。合体小滴Dは、サブアレイの4つすべての電極E1−E4上を同時に重なり合う程度に十分大きい。より大きいサイズの合体小滴Dは、2つのより小さいサイズの小滴が分割することなく併合した結果であるか、あるいは2組の小滴が併合した後、2つの併合した小滴が合体した結果であってもよい。時計回りまたは反時計回りに回転させるのに適した順序で電極E1−E4をシーケンス処理することにより、合体小滴Dをサブアレイの周りで回転させる。しかし、図12Aに示す混合手法と比較すると、より大きいサイズの合体小滴Dは、サブアレイの4つの電極E1−E4の交点またはその付近で「固定された状態(pinned)」に維持される。すなわち、合体小滴Dは、固定部分が配置された交差領域の周りで実質的に回転またはスピンする。この効果は、合体小滴Dが回転またはスピンすることに起因する混合効果を改善し、不可逆的フローを促進するための独特の内部フローパターンを形成する。さらに、4つの電極E1−E4だけを用いて合体小滴Dを混合させる機能により、高い周波数でかつより少ない電力条件で、周期的な駆動を実現する。
【0072】
図12Bに示す混合手法は、同様に、他のアレイサイズを用いて実施することができる。例えば、本発明に基づき、2×4のアレイが良好に機能することが確認された。
【0073】
上記のすべての混合手法において、関与する小滴は、同じサイズの容量を有していてもよいし、異なる容量を有していてもよい。n対1の混合容量比が必要である場合、1つの小滴(1)に対して1つの小滴(n)を混合させるように、電極領域を比例的に選択することができる。
【0074】
図13は、1次元の直線的な混合手法の特性を示すグラフデータである。完全に混合するまでの時間が小滴の振動周波数(すなわち、1つの電極と隣接する電極の間のスイッチ時間)の関数としてプロットされている。それぞれの曲線は、2電極(図9A参照)、3電極(図9B参照)、および4電極(図9C参照)の混合構成に対してプロットされている。混合時間は、1,2,4,8,16Hzの周波数に対して得られた。各電極に印加される駆動電圧は50Vであった。スイッチング周波数を増大させると、混合時間がより短くなることが観測された。同様に、所与の振動数において、電極の数を増やすと、混合が改善される。併合された小滴が振動する電極の数を増やすと、小滴内に形成された多層流(multi-laminate)の数が増え、拡散が行われる界面領域が増大する。
【0075】
図14は、2次元のループ混合手法の特性を示すグラフデータであって、このとき小滴は、2×2電極のサブアレイ上に重なり合う程度に十分に大きい(図12B参照)。8,16,32,および64Hzの周波数に対する混合時間が得られた。図13のグラフを得るための実験と同様に、各電極に印加される駆動電圧は50Vであった。2次元の混合によれば、1次元混合が有するフロー可逆性の効果が低減されることが確認された。さらに、小滴が1点の周囲を回転するため、50Vの駆動電圧に対してスイッチング周波数を64Hzまで上げることができた。同じ電圧で1次元の直線的な駆動を行う場合、この周波数は不可能であった。小滴が4つすべての電極上を同時に重なり合うという事実により、こうした高い周波数で、かつ低い電圧で小滴を搬送できると考えられている。小滴が2×2のサブアレイの隣接する任意の2つの電極と同時に導通しているので、これらの2つの電極を連続的に駆動する際の時間間隔を短くすることができる。すなわち、小滴が一方の電極から他方の電極へ物理的に移動するために必要なタイムラグおよび距離が低減される。結果として、2次元混合の場合、小滴の速度を上げることができ、渦巻を形成し、混合を促進することができる。
【0076】
[小滴方式のサンプリングおよび処理]
図15A−15Bを参照すると、連続フロー入力源61からサンプリングし、小滴を処理するための本発明の方法が概略的に図示されている。とりわけ、この方法は、後続の小滴方式のチップ上および/またはチップ外の処理(例えば、混合、反応、培養、分析、検定、モニタなど)のための準備として、上述のようなエレクトロウェッティング技術を用いて、連続フロー入力源61から均一の大きさを有するサンプル小滴Sを個別化することができる。この文脈において、「連続的(continuous)」なる用語は、より少量の小滴に個別化されていない所定量の液体を意味するのとする。連続フロー入力源の非限定的な具体例として、適当なソース(源)または供給デバイスから基板表面または他の表面に導入されるキャピラリィスケールのストリーム、フィンガ、スラグ、アリクォート、および計量された用量が挙げられる。サンプル小滴Sは、通常、件の被分析物質(例えば、質量分析装置などを用いて特定される薬理効果を有する分子、または分光装置などを用いて特定すべき濃度を有する既知の分子)を含む。図15A−15Bに示すいくつかのサンプル小滴Sは、連続フロー源61から個別化された独立した複数のサンプル小滴Sであるか、あるいは電極のシーケンス処理に応じて形成されるさまざまな分析フロー経路に沿って、長時間電極アレイ上の異なる位置に移動可能な単一のサンプル小滴Sである。
【0077】
この方法は、分析信号を処理しやすくするために、アナログ入力から分析信号をデジタル化するような特徴を有する。図15A−15Bに図示された小滴の処理動作は、好適にも、上述のように電極アレイ上で行われる。IC、MEMS、およびマイクロ流体技術に一般に関連する他の構造またはデバイスを含むかどうかによらず、こうしたアレイは、マイクロ流体チップの表面上に形成されるか、マイクロ流体チップの中に埋設することができる。適当な電気コントローラと通信するなどして、アレイ電極を適当にシーケンス処理し、制御することにより、(小滴形成および搬送を含む)サンプル抽出を連続的にかつ自動的に行うことができる。
【0078】
図15Aにおいて、連続フロー源61の液体入力フローが、適当な注入ポイントにおいて電極アレイに供給される。上述のエレクトロウェッティング技術を用いて、連続液体フロー61を断片化または個別化して、均一な大きさを有する一連または一続きのサンプル小滴Sを形成する。上述の基本的な移動、併合、混合、および/または分割動作、さらにこれらの基本的動作から派生する任意の動作の1つまたはそれ以上を含む望ましいプロトコルに従って、これらの新たに形成された1つまたはそれ以上のサンプル小滴Sを操作してもよい。特に、本発明によれば、オンチップ分析、または他のオンチップ処理のために、連続液体入力フロー61からサンプル小滴Sを派生させることができる。例えば、図15Aは、マイクロ流体チップにわたり、プログラム可能な分析フロー経路に沿って、セル63,65などのマイクロ流体チップの表面上に配設された1つまたはそれ以上の基本的なセルまたは領域まで搬送される複数の小滴を示す。
【0079】
機能セル63,65は、例えば、混合部、反応部、検出部、または格納領域であってもよい。混合部および反応部の場合、マイクロ流体チップ上またはこれに隣接する1つまたはそれ以上の個別の貯蔵器または注入領域から供給され、エレクトロウェッティング技術を用いてマイクロ流体チップ上を搬送された添加剤小滴R1および/またはR2と、サンプル小滴Sとを合体させる。混合部の場合、添加剤小滴R1および/またはR2は、サンプル小滴Sとは異なる成分を有する他のサンプル材料であってもよい。択一的には、サンプル小滴Sを希釈したい場合、添加剤小滴R1および/またはR2は、異なるタイプの溶媒であってもよい。反応部である場合、添加剤小滴R1および/またはR2は、異なるタイプの化学試薬を含んでいてもよい。これまでは、96ウェル・マイクロリットルプレート、溶媒ボトル、液体搬送チューブ、シリンジまたは蠕動ポンプ、複数部品バルブ、ロボットシステムなどの大きな構成部品を利用する必要があったが、例えば、電極アレイまたはその一部を小型化されたマルチサンプル液体処理/検定装置として用いることができる。
【0080】
機能セル63,65は、好適には、アレイ上の1つまたはそれ以上の電極包含ユニットセルを有する。こうした機能セル63,65は、多くの場合、対応する制御電極をシーケンス処理することにより定義することができ、シーケンス処理は、好ましいプロトコルの一部としてプログラムされ、マイクロ流体チップに接続された電気的制御ユニットにより制御される。これにより、機能セル63,65は、マイクロ流体チップの電極アレイ上の任意の位置に形成し、リアルタイムで再構成することができる。例えば、図16は、一般に符号MCで示す混合セルを図示し、これは、上記の任意の混合手法を用いて、サンプル小滴Sを添加剤小滴Rと混合させるか、サンプル小滴Sを希釈するために形成される。混合セルMCは、5×3マトリックスの電極包含ユニットセルを有するが、チップ上に形成されるより大きい電極アレイであってもよい。ここでは、混合セルMCは、5列の電極/セルROW1−ROW5と、3行の電極/セルCOL1−COL3で構成される。図5A−6Cを参照して上記説明したように、中央に配置された電極E1−E3で併合および分割動作を行ってもよい。外側に配置された行COL1,COL3および外側に配置された列ROW1,ROW5を用いて、連続フロー源61から個別化された後など、サンプル小滴Sおよび添加剤小滴Rを電極アレイの外側から運搬するための搬送経路を形成してもよい(図15A−15B参照)。図12Bに示すように、2次元のループ混合処理を行うために、2×2サブアレイを定義することができる。混合動作、併合動作、分割動作、または維持動作を行う間、外側に配置された行COL1,COL3および外側に配置された列ROW1,ROW5のうちのいくつかまたはすべてを接地して、ゲートとして機能させ、チップ上の他の領域から混合セルMCを孤立させることができる。必要ならば、拡散のような受動的メカニズム、または上述のエレクトロウェッティングにより合体小滴を移動または「振動」させる能動的なメカニズムにより、完全にまたは実質的に完全に混合させることができる。
【0081】
本発明は、反応装置、検出装置、および他の分析・測定装置などの従来式のマクロスケールのデバイスまたは機器を実質的に小型化した実施例または模倣例である機能セルを有する他のタイプの機能セルを提供する。既知の分光器技術を用いて光ビームが通過するサンプル保持セルまたはフローセルを模倣するために、例えば、電極アレイの単一の列または行の中、あるいは主要アレイから外れたところに配置されたセルにおいて、小滴は個別化され、保持される。初期強度を有する光ビームは、入力光ファイバから供給され、サンプルセルに含まれる小滴を通過する。小滴から出射した減衰した光ビームは、出力光ファイバに入り、フォトセルなどの適当な検出装置に案内される。光ファイバは、サンプルセルのいずれか一方の側に配置してもよく、サンプルセルと一体に形成されるか、サンプルセル内に挿入される小型のディッププローブ内に設けてもよい。
【0082】
再び、図15Aを参照すると、機能セル(例えば、セル63,65)で行われた処理が完了すると、その結果として得られた小滴(図示せず)は、不要物収集、貯蔵、または出力の目的で、マイクロチップ上またはそれ以外に配設された各容器67または69に搬送される。さらに、サンプル小滴Sおよび/またはプロダクト小滴は、収集、不要物回収、またはさら処理するための出力の目的で、マイクロ流体チップ上またはそれに隣接した好適な出力領域における連続液体出力フロー71に再結合させてもよい。さらに、機能セル63または65で処理された小滴をサンプル小滴として形成してもよく、このサンプル小滴は、1つまたはそれ以上のステップで希釈され、そして/または反応させた後、アナライトの検出または測定のために、エレクトロウェッティングによりチップの別の部分に搬送される。例えば、いくつかの検出領域は、結合酵素または他の生分子同定試薬を含んでいてもよく、特定の分析に特化したものであってもよい。他の検出領域は、上記実施例のような蛍光式検定または吸光式検定を行うための光学システムなどの汎用性検出手段を有していてもよい。
【0083】
図15Bに示す択一的な実施形態において、連続液体フロー61は、入力領域61Aから供給され、マイクロ流体チップの表面全体を横断し、出力領域61Bまで搬送される。この実施形態において、連続液体入力フロー61の長さに沿った、図示された位置73などの特定の選択可能なユニットセル位置で、サンプル小滴Sが形成され(連続液体入力フロー61がサンプル採取され)、図15Aの実施形態に関連して上述したような後続のエレクトロウェッティング操作が行われる。
【0084】
図15Aおよび15Bに関連して説明した方法は、数多くの用途において有用性を有する。オンライン式マイクロ流体分析の用途は、例えば、マイクロ透析または他の生物学的灌流フローの分析、環境学的水質調査、および発酵などの産業化学的処理の調査などを含む。分析は、液体中に流れる任意の特定物質の存在の特定、濃度、または挙動を特定することを含み得る。古典的な具体例は投入病患者のグルコース測定であるが、経時的に変化する化学的信号をリアルタイムで測定しなければならない場合のオンライン式連続分析は、すべての用途で有用である。マイクロ流体によれば、分析に必要なサンプル容量を低減し、測定されるアナライトを枯渇させることを回避する非侵襲性のサンプリング技術を可能とするとともに、小型化された携帯可能な機器を実現する。
【0085】
本発明の小滴方式方法は、既知の連続フロー方式のマイクロスケール方法、およびより一般的なマクロスケール装置を用いた方法に比べて数多くの利点を有する。図15Aまたは図15Bを参照すると、連続フロー源61からチップの分析部分までのサンプル小滴Sのフローは、連続フロー(入力フロー)とは独立して制御され、分析を行う上で多大なフレキシビリティを許容する。分析フローを連続入力フローから分断することにより、それぞれのフローを個別に最適化し、制御することができる。マイクロ透析において、連続フローを最適化することにより特定の再現速度を実現し、分析フローを最適化することにより特定の感度またはサンプリング速度を実現する。主要な入力フローに影響を与えることなく、また悪影響を及ぼすことなく、試薬小滴Rを分析フロー中のサンプル小滴Sに混合することができる。分析フロー中のサンプル小滴Sは、入力フローを中断することなく、不定期間、格納または培養することができる。入力フローを中断することなく、異なる時間を要する複数の分析を同時に並行して行うことができる。
【0086】
図15Aまたは図15Bに図示された実施形態において、連続フロー源61の入力を含む同一のシーケンス処理の一部として分析が行われるとき、サンプル小滴Sの分析または他の処理はオンラインで行われる。しかし、新たに形成されたサンプル小滴Sは連続液体入力フロー61から派生するので、連続液体入力フロー61に関する分析はインライン(同じライン上)では実施されない。このデザインにより、分析フローを入力フローから分断することができる。
【0087】
別の利点として、複数のアナライトを同時に測定することができる。連続液体フロー61が複数のサンプル小滴Sに細分化されるので、各サンプル小滴Sを異なる試薬小滴R1またはR2と混合させて、クロストークまたはクロスコンタミーションすることなく、単一サンプルの複数アナライトを同時に測定することができる。加えて、複数ステップの化学プロトコルが可能で、広範な種類の分析を単一チップ内で行うことができる。
【0088】
さらに、較正およびサンプル測定を複合化することができる。較正小滴を形成し、サンプル間で測定することができる。較正するために、入力フローを中断する必要はなく、モニタ中、周期的に再較正することができる。さらに、複数のアナライトに対して検定または検出を複合化することができる。例えば、単一の蛍光計または吸光検出器を用いて、サンプル小滴Sの検出領域までの搬送をシーケンス処理することにより、複数のアナライトを測定することができる。
【0089】
別の重要な利点は、チップ動作の再構築可能性である。ソフトウェア制御によりサンプリング速度を動的に変化させることができる。ソフトウェアを用いて、混合比、較正処理、および特定のテストを制御して、柔軟で再構築可能なチップ動作を可能にする。フィードバック制御が可能で、分析結果をチップ動作に反映させることができる。
【0090】
[小滴方式のバイナリ補間デジタル混合]
図17を参照すると、一般に符号100で示す本発明のバイナリ混合装置が図示されている。バイナリ混合装置100は、所望の混合比を得るために、1つ、2つまたはそれ以上の混合段階における多様な小滴方式の希釈バイナリ混合技術を実現する上で有用である。得られる混合比の正確な度合いは、使用される離散的バイナリ混合ユニットの数に依存する。1つの具体例として、図17は、第1のバイナリ混合ユニット110と、第2のバイナリ混合ユニット210とを概略的に図示している。1つ以上の混合ユニットがある場合、好適には、これらの混合ユニットと流体連通するバッファ310が設けられ、必要に応じ、中間生成物を貯蔵し、混合ユニット間で搬送する。コンピュータプログラムの指令を実行することができるマイクロプロセッサなどの適当な電気コントローラECが、適当な通信ライン111,211,311を介して、それぞれ第1のバイナリ混合ユニット110、第2のバイナリ混合ユニット210、およびバッファ310と通信する。
【0091】
本発明によるデジタル式バイナリ補間混合処理を行うために、バイナリ混合装置100をマイクロ流体チップ上で形成してもよい。バイナリ混合装置100のさまざまな小滴操作部品の物理的なレイアウト(一例が図18Aおよび図20に図示されている)を設計する際、電極デザインおよび搬送デザイン(スケジューリング)が考慮された。特定の物理的レイアウトは、少なくとも部分的に電気コントローラにより実行される一連のコードまたは指令を決定して、電極ひいては実施される小滴方式の操作の種類とシーケンスを制御する。好適には、バイナリ混合装置100の電極を含む小滴処理領域が、図1の断面図に示すエレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構10に関して上述したように、または上記説明した単一表面電極を有する構造に従って構成される。各混合ユニットの電極をシーケンス処理して、ここに開示した任意の混合手法を実現することができる。
【0092】
バイナリ混合装置100の構成は、小滴−小滴(小滴単位)の混合実験において観察された速い速度の利点を十分に享受するように設計され、複数ポイントの較正に対して動的に変えることのできる混合比を正確に制御することができる。以下の開示から明白となるように、バイナリ混合装置100は、広範な混合比を所定の精度をもって処理でき、混合操作における高い並行性を示し、2次元アレイの混合部品を構成する上での高い寸法拡張性を示す混合パターンを可能にする。バイナリ混合装置100は広範な小滴サイズを処理することができる。しかし、サンプル小滴が検出または測定のために構成される場合、小滴サイズに対する下限値がある。
【0093】
バイナリ混合装置100の構成は、互いに向かって移動する2つの小滴間で最も効果的な混合が生じるという理解に基づいている。これは、実験で観測されたもので、流体の剪断運動に誘発される対流により、混合処理が純粋な物理的な拡散より速くなるように加速されるという事実により説明することができる。すなわち、一般的な設計原理としては、できるだけ1対1の混合が用いられる。上述のように、均一な小滴サイズを維持するために、1対1の混合は混合動作および分離動作を含む。基本的な混合動作および分離動作は図5A−6Cを参照して上述した。
【0094】
バイナリ混合装置100の構成をデザインする上で、以下の点について仮定した。
1.化学的処理および/または物理的処理において、十分な時間をかけると、完全に混合させることができる。
2.物理的容量および化学的成分において、同等の小滴が分離される。
3.小滴が搬送される間、残渣は無視できるほど少ない。
4.大きい希釈比で混合する時間はボトルネックである。
5.混合比に対して公差がある。
6.混合時間に対して搬送時間は無視できるほど短い。
【0095】
好適なデザインの要件および問題点に関し、以下の点を同様に考慮した。
1.検出可能性を保証する混合物アウトプットの最小容量
2.独立した制御電極の最大数
3.最大混合領域
4.電極あたりの最大駆動数
5.異なる混合比に対する再構築可能性
【0096】
すなわち、1つのデザインの目的は、混合比の精度を維持しながら、混合−分離動作の回数を極力抑えて、混合処理を完了させることであった。
【0097】
さらに、理想的な混合構成のための好適な特徴に関し、以下の点を同様に考慮した。
1.正確な混合比
2.少ない混合サイクル回数
数多くの混合プロセスは1つ以上の混合段階を含むので、2つのバイナリ混合ユニット110および210は、第1段階において、互いに並行し、かつ独立して処理される。しかし、第2段階は、第1段階が完了した後にのみ開始することができる。すなわち、2段階の混合の全体的な混合時間は、第1段階における第1および第2のバイナリ混合ユニット110,210の最大混合時間に、第1バイナリ混合ユニット110または第2バイナリ混合ユニット210のいずれかで第2段階での混合時間を加えたものである。したがって、混合サイクルは、1つの混合処理を完了させるために要する全体的な混合時間として定義される。混合処理において標準化され、例えば、小滴搬送と比較して、最も時間の要する処理であると推定される。
3.少ない全体的混合動作回数
混合、分割、および/または搬送からなる単一のバイナリ混合動作は、誤差の源である。より回数の多い混合動作は、より多くの電極を使用することを意味し、電極上に帯電した電荷に起因して別の誤差を招き得る。
4.動作の単純性
5.寸法拡張性
多くの収量が要求される場合に、異なる混合比を処理するためのバイナリ混合装置100の機能および複数の混合ユニットに対する拡張性
6.並行性
【0098】
バイナリ混合装置100の構造は、バイナリ混合段階の複数の階層を実行し、第1の階層により近似的な混合比を実現し、較正メカニズムを用いて次の階層のものを実現する。この概念は、補間デジタル・アナログコンバータ(DAC)に類似し、その構成は2つの部品に分割され、メインDACはバイナリ方式でMSB(最大重要ビット)を処理し、サブDACはLSB(最小重要ビット)に対する較正および補正を処理する。図19A−19Fを参照して、1/32の濃度に希釈された16個のサンプル小滴を形成するために行われた1段階バイナリ混合処理の具体例を以下説明する。
【0099】
バイナリ方式の混合により、2,3回の混合動作だけで、2のべき乗の大きい比で希釈することができる。バイナリ方式で2つの中間生成物をさらに混合させることにより、比の精度を補間することができる。例えば、1つの混合処理により1/8の濃度が形成され、さらなる混合により1/16の濃度が形成される。これら2つの混合物をそれぞれ1:1,1:3,3:1,1:7,7:1の比で混合すると、最終的な生成物の濃度は、1/10.67,1/12.8,1/9.14,1/14.2となる。この原理に基づいて、2,3段階の混合により、許容可能な公差で任意の混合比を得ることができる。さらなる精度が必要である場合、先の段階からの生成物を用いた追加的な混合段階を用いて、混合比を調整することができる。先に説明したように、高い精度と期待される混合比にアプローチする処理は、アナログ−デジタルコンバータの設計で用いられたものと類似した連続的な近似処理として特徴付けられる。精度を速度でトレードオフするアプローチである。ただし、十分な精度を得るために必要な混合段階数は驚くほど少ない。一般に、要求される混合比が32以下である場合、しばしば2段階混合で十分である。同様に理解されるように、混合比が32以上、64以下である場合、おそらく3段階混合が必要である。所定範囲のバイナリ比を有する中間生成物をさまざまに組み合わせることにより、より多くの補間ポイントが形成され、精度を上げることができ、余分な混合段階を用いる必要性がなくなる。
【0100】
既知の数学的原理に基づいて、好適には2つの同一構造を有する混合ユニット(例えば、図17に示す第1のバイナリ混合ユニット110と第2のバイナリ混合ユニット210)を有するようにバイナリ混合装置100の構造を設計することができ、各バイナリユニット110および210はバイナリ混合を処理し、所定容量の混合物を生成する。各バイナリ混合ユニット110および210によれば、異なる処理により、2のべき乗の比とは異なる混合比が得られる。第1の混合段階では、2つのバイナリ混合ユニット110および210を並行して用いて、一連の比(1:1, 1:3, 1:7, ..., 1:2n-1)の任意の比を有する試薬とサンプルを混合させる。生成物は同じ容量の2つの混合物である。2つの混合物の比は、最終生成物の要請される比により決まり、好適にはコンピュータプログラムを用いて制御される。第2段階では、2つのユニットの内の一方で、2つの混合物が所定のバイナリ比(2値比)で混合される。バイナリ混合ユニット110または210の一方で第2段階の混合が行われるとき、バッファ310を用いて、いくつかの中間生成物を貯蔵する。中間生成物の容量には限りがあるので(例えば16個の小滴)、第2の混合を任意の大きいバイナリ比で行うことはできない。バイナリ混合装置100の構造および動作に関する記載より、4行16個の小滴が各ユニットで形成された場合、後続の混合段階における可能性のあるバイナリ比は31以下となるように制約される。そうした場合、十分な精度は第2段階の後に得られる。さらなる精度が要求される場合、一連の2のべき乗の比を有する(例えば、較正混合物)第2段階からの生成物および別の混合物を用いて、追加的に混合を行い、要請される比に近い比を有する混合物を形成する。
【0101】
上記開示内容から分かるように、一連の2のべき乗の混合物を生成することが、期待される比を得る上で基本的な処理となる。この混合物の正確な比を前もって決定するか、動的に変えることができる。例えば、第1の混合段階中に、要求される比に応じて、2つの比を事前に計算することができる。しかし、先の混合物の質からフィードバックされる場合、第2段階に続く段階において、較正混合物を動的に変化させることができる。事前に決定された場合でも、さらなる段階の混合が行われる前に、較正混合物を用意するために、余分な時間を必要とする傾向がある。こうした場合、ただ2つのバイナリ混合ユニット110および210を用いるだけでは十分でない可能性があり、先の較正混合処理と並行して、較正混合物を生成するために、さらなるバイナリ混合ユニットを追加してもよい。
【0102】
混合手法の決定は、要求される比と公差に基づいて、混合段階数および各段階における混合比を計算することを含む。目的関数として混合動作数と混合時間を最適化することにより、混合手法を決定することができる。
【0103】
図18A−18Bを参照すると、第1のバイナリ混合ユニット110の例示的な構造が図示されており、第2のバイナリ混合ユニット210および他の追加的な混合ユニットが同様に設計されると理解される。図18Aに示す実施形態は、第1段階の混合を行い、図20に示す実施形態(以下に概略的に説明する)が第2段階の混合を実施する。図18Aに示すように、第1のバイナリ混合ユニット110は、一般に、符号EAで示す7×7の電極マトリックスまたはアレイを有し、49個のマトリックス電極と付随するセルEijを有する。ここで、「i」は1,2,...,7番目の電極列を示し、「j」は1,2,...,7番目の電極行を示す。図18Bは、列ROW1−ROW7および行COL1−COL7の2次元システムによる電極アレイEAのマトリックス電極Eijを特定する。しかし、本発明は特定の電極数、列数および行数に限定されることはない。より大きいまたは小さい電極アレイEAを適宜用意することができる。
【0104】
再び図18Aを参照すると、サンプル貯蔵部113、廃棄物貯蔵部115,試薬貯蔵部117が設けられている。電極アレイEAに対する貯蔵部113,115,117の位置に依存して、小滴を電極アレイEAに搬送し、電極アレイEAから搬送するために、適当な数および構成の通路または経路、および付随するセルT1−T4が設けられている。小滴の移動または他の操作を制御するために、数多くの電気的リード(例えばL)がマトリックス電極Eijおよび搬送電極T1−T4に接続されている。理解されるように、電気的リードLが、マイクロプロセッサ(図17の電気コントローラ)などの適当な電気コントローラに接続されている。各マトリックス電極Eijは、独立した電気リード接続を有していてもよい。しかし、電気リードLの数を低減し、第1のバイナリ混合ユニット110の簡素化するために、COL2−COL7の各行(図18参照)の電極は、図18Aに示す共通の電気リードLに接続される。第1のバイナリ混合ユニット110を用いて実施される混合動作のためのプロトコルを作成するとき、これらの共通する接続について配慮しなければならない。
【0105】
実質的に、バイナリ混合装置100の各バイナリ混合ユニット110および210は、サンプル、試薬または中間混合物を格納する、4×4のロジックセルを有するように設計される。これは、図18Bのマトリックスレイアウトを、図19A−19Fに図示された4×4ロジックセルマトリックスと比較することにより概念化することができる。混合(または混合−分離)動作が完了した時点で、小滴が隣接する制御電極から中間制御電極(例えば、図5A−6Cに示す中間制御電極E2と隣接する制御電極E1,E3)上で合体し、混合小滴が分離し、新たに形成された混合小滴が隣接する制御電極に戻るという事実を、4×4構成は担保する。したがって、小滴が実際に合体する間に、所定の電極列を暫定的な中間電極としてのみ用いる必要がある。同様に、所定の電極行を小滴の搬送のためだけに用いる必要があるという事実を、この構成は担保する(例えば、1つの行から別の行に小滴を移動させることは、新たな試薬小滴を追加するための空間を作る)。上述のように、図18Bの電極列ROW2,ROW4およびROW6と、電極行COL2,COL4およびCOL6は、図19A−19Fでは単なる直線として図示されている。同様に、図19A−19Fでは、活性化電極が陰付きバーで示され、混合動作が「―――→,←―――」のシンボルで図示され、搬送動作が「―――→」のシンボルで図示されている。さらに小滴の濃度は、小滴が存在する列および行の隣の数字(例えば、0,1,1/2)で示されている。
【0106】
活性化電極が2つのセル間に存在するかどうかに依存して、(図19A−19Fを含む図面の観点から)水平方向および垂直方向におけるいくつかの隣接するセルの間で、1対1の混合を行うことができる。第1行において、小滴を含む任意の2つの隣接する列セルの間に活性化電極が存在すると、2つの隣接する列セルで混合動作が行われる。他の行においては、列セル間に活性化電極がない。例えば、これは図19Aに図示されている。小滴を含む任意の行の間に電極が存在すると、行内のすべてのセルが隣接する行のセルと混合動作を同時に行う。例えば、これは図19Dに図示されている。活性化電極を用いることにより、ロジックセル(すなわち、小滴)の内容物は、第1行にある一方の列から他方の列に移動し、行間を移動することができる。4×4のロジック構造の採用は、以下の具体例で説明されるように、バイナリ操作を最適化するために設計される。第1のバイナリ混合ユニット110の1つ混合ユニットの実施形態は、16個の小滴に限定されるが、最終的な生成物の物理的容量は各小滴のサイズを変えることにより調整することができる。
【0107】
バイナリ混合装置100がどのように任意の2のべき乗の比を生成できるかを示すために、図19A−19Fは、1:31の比(1/32の濃度に等しい)を目標する一連の混合動作の具体例を示す。分かるように、混合処理は、2つの基本的段階を有し、列混合と行混合がある。一般に、列混合の目的は、2つの混合入力の最小容量を有する混合比を所定範囲に接近させることである。行混合は、出力において要求された容量を生成し、4倍大きい比を得ることである。図19A−19Fに示すように、1:31の比を得るためには、列混合して、1:7の比または1/8の濃度を得る(図19D参照)。行混合が1:31の濃度の最終的な生成物比または1/32の濃度を得る(図19F参照)。
【0108】
特に図19Aを参照すると、濃度1(すなわち100%)を有するサンプル小滴S1を、濃度0を有する試薬(または溶媒)小滴R1を組み合わせることにより、単一の行混合を行う。この結果、図19Bに示すように、それぞれ1/2の濃度を有する2つの中間混合小滴I1,I2を得る。一方の中間混合小滴(例えばI1)を廃棄して、新たな試薬小滴R2を他方の中間混合小滴(例えばI2)に隣接する論理セルへ移す。中間混合小滴I2と試薬小滴R2を組み合わせることにより、もう一度、列混合を行う。この結果、図19Cに示すように、それぞれ1/4の濃度を有する2つの中間混合小滴I3,I4を得る。2つの新たな試薬小滴R3,R4を追加し、2組の列混合動作で、それぞれの中間混合小滴I3,I4を合体させる。この結果、図19Dに示すように、それぞれ1/8の濃度を有する4つの中間混合小滴I5−I8を得る。
【0109】
図19Dに示すように、4つの新たな試薬小滴R5−R8を中間混合小滴I5−I8のそれぞれに隣接するマトリックス上に移す。そして、各中間混合小滴I5−I8と対応する試薬小滴R5−R8の対の間で行混合を行う。こうして、図19Eに示すように、それぞれ1/16の濃度を有する8つの中間混合小滴I9−I16を得る。同様に、図19Eに示すように、4つの中間混合小滴I9−I12およびI13−I16が、右側の行に1つずらして、新たな試薬小滴R9−R12およびR13−R16をそれぞれマトリックスの外側の行に充填することができるようにする。追加的な行混合動作を介して、中間混合小滴と試薬小滴のそれぞれの対(例えば、I9とR9の対、I9とR9の対など)を合体させる。
【0110】
これらの混合動作の結果、図19Fに示すように、それぞれ(目標とする1:31の混合比に対応する)1/32の濃度を有する16個の最終的な混合生成小滴P1−P16を得る。こうして、上述の具体例で説明したサンプリング、検出、分析などの後に行われる任意の動作のために、生成小滴(プロダクト小滴)P1−P16が準備される。さらに正確な混合比を所望するかどうかに応じて、上述のように必要ならば、第2段階および第3段階の混合動作を生成小滴P1−P16に対して行ってもよい。こうした追加的な混合動作は、第1のバイナリ混合ユニット110の一部であってもよい電極アレイ上の異なる領域で行ってもよい。択一的には、図17に示すように、第1のバイナリ混合ユニット110に直接的にまたはバッファ310を介して流体連通する別のバイナリ混合装置(例えば、バイナリ混合ユニット210)に最終混合小滴を搬送することができる。
【0111】
本発明の方法は、31以上または31以下の比に対して適用することができる。例えば、目標が1:15の比を得ることならば、列混合により入力を1:3の比に混合し、これは2段階の混合動作を必要とし、3段階の混合動作で1:7の混合比を得る。混合動作において、図19A−19Fを用いて、こうした場合、第1段階の(単一)列混合および第2段階の廃棄動作を排除し得ることを示すことができる。
【0112】
1:31の混合比を実現する動作を詳細に説明するために、とりわけ図19A−19F(一般的には図18Bを参照して)に図示された具体例に対する擬似コードを下記にリストする。
1.S(1,1)を充填し、R(2,1)を充填し、1,2列を混合する。
2.((1,1)を廃棄し、R(3,1)を充填し、)2,3列を混合する。
3.R(1,1)を充填し、R(3,1)を充填する。
(1,2列および3,4列を混合する)。
4.2行を充填し、1,2行を混合する。
5.2行を3行へ、1行を2行へ移し、1行を充填し、4行を充填する。
(1,2行および3,4行を混合する)。
6.終了。
【0113】
上記擬似コードは、可能性のある複数の混合動作を1つの混合処理に標準化する。動作のシーケンスは、混合動作の回数を低減しつつ、混合収量を増大させるためにより可能性のある最適化を行う。この設計は、活性化電極の数をできるだけ少なくし、すべての混合動作が適正に機能することを担保するように配慮する。好適実施な形態において、各バイナリ混合ユニット110および210(図17参照)は、混合機能を処理するための13個の活性化電極を有する。各バイナリ混合ユニット110および210の中に小滴を搬送する機能は、別の検討事項である。アレイの外側にある2つの列を、混合部の両側に沿って走る輸送チャンネルとして用いて、混合部の他の動作と同時に、小滴を混合部に搬送する。同様に、同数の電極がこれらの輸送機能を処理する。
【0114】
第2段階は、2つのバイナリ混合ユニット110および210(図17参照)からの中間生成物が混合される際の混合処理である。それは、図19A−19Fを参照して上記説明した第1段階における標準的なバイナリ混合処理と同様のものである。唯一の違いは、第2段階の混合は、バイナリ混合ユニット110および210の内の一方が、先の混合生成物(例えば、図19Fに図示される小滴P1−P16)を保持する点にある。先に示唆したように、この処理中、バッファ310を用い、いくつかの生成物を保持する。
【0115】
第2段階中の最大混合比が31に限定されることを計算することができる。その理由は、最大比を得るためには、列混合をできるだけ数多く用いる必要があるためである。列混合を用いて比を増大させると、廃棄処理中に失う入力がより少ない。すなわち、入力材料が有限量である場合、第1の選択は、混合出力のための条件を満足させるために十分な量が残るまで、どの程度の列混合を行うことができるかを確かめることである。こうして、出力条件が16個の小滴以下であると特定される場合、16個の小滴の2つの混合物だけが1:31の最大比で混合させることができる。1:31の比で混合させる場合、16個の試薬小滴が最小量であることが図19A−19Fから分かる。
【0116】
2段階混合の機能をより良好に実現するために、第1のバイナリ混合ユニット110のための図18Aに示す物理的レイアウトを修正することができる。したがって、図20を参照すると、一般に符号410で示す2段階混合ユニットが図示されている。2段階混合ユニットの構造は、図18Aの第1のバイナリ混合ユニット110と類似しており、7×7マトリックス、サンプル貯蔵部413、廃棄物処理部415,試薬処理部417、およびさまざまな貯蔵部から7×7マトリックスへ小滴を搬送するための適当な数と構成を有するオフアレイ電極を有する。2段階混合ユニット410は、混合処理中に洗浄流体を供給する洗浄容器部419と、生成物小滴を他の混合ユニットまたはバッファ310に搬送するための出力領域421を追加的に有する(図17)。さらに、追加的な電極列および電極行を7×7マトリックスの周縁部に設けて、マトリックスに至るおよびマトリックスからの小滴のための搬送経路を形成する。
【0117】
以下に記載する表を検討することにより、バイナリ混合ユニット100の構造の特性を知ることができる。この表は、63の最大混合比(または1/64の最大濃度に対応)に対する2段階混合手法を用いて、可能性のあるすべての補間混合比を列挙するように作成された。第1段階における混合ユニット1および2(例えば、第1および第2のバイナリ混合ユニット110および210)の混合比など、対応する混合バラメータ、第2段階のための混合比、および全体的混合サイクルが記録される。複数の混合部が存在するときリソースの利用を改善し、全体的な混合動作を低減し、並行性を改善する、適当な混合手法および/または時間に対する精度のトレードオフに関するさらなる最適化を選択するための根拠として、この表は機能する。装置100を制御するために用いるソフトウェアの一部として、参照テーブルまたはデータ構造を参照テーブルとしてこの表を用いる。
【0118】
この表は、本発明の構造を用いた全部で196の混合手法を記述しており、これは152の固有の混合ポイントに対応する。63の最大混合比の元で2のべき乗を用いて、可能性のある任意の2つの混合物を補間することにより、196の混合手法を計算することができる。これらのポイントは、直線的な間隔ではなく、非直線的な間隔を有する。比がより小さければ、間隔も小さくなる。実現可能なポイントが図21にプロットしてある。この表から明らかなように、実現可能な比は、従来式の直線的な混合ポイントより大きく、分布がより合理的である。さらに、1つの小滴とは異なる所定容量の出力は、1対1の混合に起因する誤差に対するより大きい公差を許容することができる。混合サイクルに関して、最良の特性は、近似する比と比較して、2のべき乗の混合比に対するものである。精度に関して、比が大きければ、より少ない補間ポイント数が実現されるので、通常、特性は悪くなる。
【0119】
図21にプロットされた2段階の混合プランから分かるように、目標の比が36より大きい場合、十分なポイントが存在しない。図21は、比が40の周辺にはポイントがないことを示している。目標の比および理論的に実現可能な比の間の差異は3である。しかし、40の周辺で実現可能なポイントを注意深く検証することにより、最大の誤差が第2段階の混合プランから生じる場合、利用可能なポイントを補間するために、第1段階からの残りの混合物を適当に利用することが、36.5714と42.6667の間のいくつかの追加的な補間ポイントを得ることができる。例えば、表中の混合プラン#183は、1:31の比を有する混合物1および1:63の比を有する混合物2を得るために呼び出され、3:1の比で混合する。混合物2の3/4部分が存在することが分かる。36.5714の濃度を有する段階2の混合物と63の濃度を有する混合物2を比3:1または7:1などを用いて混合することができる。これにより、40.9、38.5などにおけるポイントが得られる。このようにして、わずかばかりの混合サイクルだけを増やして(この具体例では、それぞれ2サイクルおよび3サイクル)、補間混合物を追加的に用意することなく、追加的な混合段階を用いて、より高い精度を実現することができる。
【0120】
図22は、段階1、段階2、段階3の混合プランにより実現可能なすべてのポイントを示す。ポイントの全体数は2044である。段階3により実現されるポイントは、段階2および段階1の残りの生成物を用いることにより得る。段階2が完了した後、段階1の残りの生成物の容量を考慮し、これらを再利用して段階2からの生成物と混合することによりポイントを計算する。段階3の可能性のある混合比は段階2の混合比より求められる。
【表1−1】
【表1−2】
【表1−3】
【表1−4】
【表1−5】
【0121】
[単一表面側に電極アレイを有するエレクトロウェッティング方式の小滴駆動]
これまで、図1に示すマイクロアクチュエータ10などの両面電極構造を有する小滴駆動装置を用いて、本発明の態様について説明してきた。すなわち、下側プレーン12が制御または駆動電極E1−E3を含み、上側プレーン14が接地電極Gを含む。マイクロアクチュエータ機構10に関して、上側プレーン14の機能は、小滴Dを接地電位またはいくつかの他の基準電位にバイアスすることである。下側プレーン12の駆動電極E1−E3を選択的にバイアスして、上側プレーン14を接地すると、電位差が形成され、段階的なエレクトロウェッティング技術により小滴Dを移動させることができる。しかし、本発明の別の実施形態によれば、接地された上側プレーン14の必要性を排除することにより、2次元エレクトロウェッティング方式の小滴操作のために採用された装置のデザインを簡略化し、よりフレキシブルに構成することができる。
【0122】
ここで図23A−23Bを参照すると、一般に符号500で示す単一表面エレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構が図示されている。マイクロアクチュエータ機構500は、図1の機構と同様の下側プレーン512を備え、これは、綿密に凝集する駆動電極E(駆動電極E1−E3)の2次元アレイが埋設された適当な基板521を有し、このアレイは、銅、クロム、ITOなどの導電層のパターン形成により形成される。誘電層523は、駆動電極Eをカバーする。誘電層523は、疎水性であるか、そして/または疎水性層(特に図示せず)で処理されている。図1のマイクロアクチュエータ機構10との主な相違点として、基準電位の導通ラインの2次元グリッド(例えば、導通ラインG1−G6およびその他)が、図23A−23Bのマイクロアクチュエータ機構500の電極アレイ上に重畳され、各導通ラインGが隣接する駆動電極Eの間に配設されている。基準電位は、接地電位、微小電位、あるいは駆動電極Eに印加される駆動電位より小さい他の電位であってもよい。各導通ラインGは、ワイヤ、バー、または駆動電極Eと比較して遙かにより狭小な幅/長さのアスペクト比を有する任意の他の導電性構造物であってもよい。択一的には、各導通ラインGは、綿密に凝集した一連のより小さい電極を有し得るが、ほとんどの場合、こうした択一例は必要とされる電気的接続の数が増大するため、非実用的である。
【0123】
重要なことに、導通ライングリッドは、電極アレイと同一平面上または実質的に同一平面上にある。マイクロチップ上に導電性の内部接続構造物を形成するために広く用いられたマイクロ製造技術により、導電ライングリッドを下側プレーン512の上に埋設してもよい。こうして、理解されるように、マイクロアクチュエータ機構500を単一基板デバイスとして構成することができる。ただし、上側プレーン514は、適当なプラスティックシートまたは疎水性ガラスプレートなどの疎水性表面527を有するプレート525を備えることが好ましい。図1のマイクロアクチュエータ機構10とは異なり、図23A−23Bのマイクロアクチュエータ機構500の上側プレーン514は、小滴Dをバイアスするための電極として機能しない。むしろ上側プレーン514は、小滴Dおよび不活性ガスや非混和性液体などの任意のフィラー流体を包含するための構造部品としてのみ機能する。
【0124】
小滴をエレクトロウェッティング方式で操作するためのマイクロアクチュエータ機構500の使用に際して、小滴を搬送する間は本質的に常に小滴Dに対する接地または基準電位に接続しておく必要がある。すなわち、小滴Dが隣接するすべての駆動電極Eおよび小滴Dが載置される駆動電極の周囲にあるすべての導通ラインGと確実に重なるように、小滴Dのサイズまたは容量が選択される(例えば、図23Bの電極E2)。さらに好適には、導通ラインGが小滴Dに対して露出するか、または少なくとも小滴Dとは電気的に絶縁しないように、駆動電極Eだけをカバーするように誘電層523をパターン形成する。しかし、同時に、導通ラインGは駆動電極Eに沿って疎水性を有し、小滴Dの移動を妨げないようにすることが好ましい。すなわち、好適な実施形態において、誘電層523をパターン形成した後、駆動電極Eおよび導通ラインGの両方をコーティングするか、疎水性を有するように処理する。導通ラインGは図23A−23Bには特に図示されていない。しかし理解されるように、導通ラインGをカバーする疎水性層は非常に薄く、疎水性層の多孔性に起因して、小滴Dおよび導通ラインGの間の電気的接触は依然として維持される。
【0125】
マイクロアクチュエータ機構500を作動させるために、適当な電圧源Vおよび電気リード部品が導通ラインGおよび駆動電圧Eに接続されている。導通ラインGが駆動電極Eと同一平面内に配設されているので、導電ラインGと選択された駆動電極E1,E2,E3(図23AのスイッチS1−S3により選択される)の間に電位を印加すると、小滴Dの直下の誘電層523の領域において電場が形成される。図1のマイクロアクチュエータ10の動作に類似して、電場は、さらに表面張力勾配を形成し、電圧印加された電極に重畳する小滴Dを電極(例えば、図23Aの右方向へ移動させたい場合には駆動電極E3)に向かって移動させることができる。一連のソフトウェア指令に従い、電極アレイを事前設定された方法で、あるいは適当なフィードバック回路に呼応してリアルタイムでシーケンス処理を行うことができる。
【0126】
単一表面電極構成を有するマイクロアクチュエータ機構500を用いて、小型化されたラボ・オン・チップシステムを実現するための、図1の両面電極構成で上記説明したすべての機能および方法(例えば、供給、搬送、併合、混合、培養、分離、分析、モニタ、反応、検出、配置など)を行うことができる。例えば、図23Bに示す小滴Dを右方向へ移動させるためには、駆動電極E2,E3を活性化して、小滴Dを駆動電極E3上に拡張させる。その後、駆動電極E2を不活性化して、小滴Dをより好ましい低エネルギ状態に弛緩させると、小滴Dは駆動電極E3の中央に配置される。別の具体例では、小滴Dを分割するために、駆動電極E1,E2,E3を活性化して、小滴Dを駆動電極E1,E3上に広げる。そして駆動電極E2を不活性化して、小滴Dを駆動電極E1,E3上の中央に配置される2つの小滴に分断する。
【0127】
図24A−24Dを参照すると、本発明の択一的な単一表面電極構成が図示されている。これまでに説明した実施形態と同様、列および行のバイアス電極Eijのアレイを含むベース基板を再び用いる。とりわけ図24Aを参照すると、アレイまたはアレイの一部が図示され、3列のE11−E14、E21−E25、E31−E34が設けられている。本発明の他の実施形態に対して説明したのと同様、電極アレイの列および行を配列することができる。択一的には、特に図24Aに図示されているように、任意の所定の列が隣接する列の電極からずれるように、アレイをずらして配列することができる。例えば、第1列の電極E11−E14、第3列の電極E31−E34は、中間にある第2列の電極E21−E25に対してずれている。配列するか、ずらして配列するかによらず、上記の実施形態と同様、電極アレイは絶縁性および疎水性を有する層でカバーされることが好ましい。図23A−23Bで示す構成と同様、上部プレートは、閉じ込めのためのものであるが、電極として機能しない。
【0128】
動作において、選択されたバイアス電極Eijが駆動電極または接地(基準)電極として動的に割り当てられる。小滴を駆動するために、所与電極を駆動電極として割り当てた場合、隣接する電極を接地または基準電極として割り当て、小滴Dを含む回路を形成して、駆動電圧を印加することが必要である。図24Aにおいて、電極E21を活性化すると、駆動電極として機能し、電極E22を接地または基準電位に設定する。図示された他のすべての電極Eijまたは少なくとも駆動電極E21/基準電極E22の対を包囲する電極を、電気的に浮動状態に維持する。図24Aに示すように、この活性化により、電極E21,E22の間のギャップまたは界面領域に沿って中央に配置されるように移動することにより、電極E21,E22の両方に重畳する小滴Dがエネルギ的に好ましい状態を模索させる。
【0129】
図24Bにおいて、電極E21を不活性化して、隣接する列の電極E11を活性化して次の駆動電極として機能させる。これにより、小滴Dを矢印で示すように結果として北東方向に移動させることにより、小滴Dを電極E21およびE22の間の中央に配置する。図24Cで示すように、電極E11を不活性化して、電極E12を活性化することにより、第1列および第2列の間のギャップに沿って右方向へ小滴Dを駆動する。図24Dに示すように、電極E22を接地電位または基準電位から切断して、電極E23を接地電位または基準電位にして、小滴Dを続けて右方向に移動させる。駆動電極または基準電極を変化させるように、電極Eijを追加的にシーケンス処理することにより、電極アレイ上の好ましいフロー経路に沿って任意の方向に移動させることができる。これまでの実施形態とは異なり、小滴の搬送経路は、電極Eijの中心ではなく、電極Eijの間のギャップに沿って形成されることが分かる。また、誘電層が駆動電極および基準電極の両方をカバーし、その厚みが実質的に2倍となるので、必要とされる駆動電圧は、ほとんどの場合、図23A−23Bに示す構成と比較してより高くなる。
【0130】
図25A−25Bを参照すると、配列された列および行を有する電極アレイを用いて、小滴を直線ライン上に南北方向(図25A)または東西方向(図25B)に搬送することかできる。この動作は、図24A−24Dを参照して上記説明した動作と類似する。すなわち、駆動電極および基準電極の対をプログラム可能に順序付けることにより、意図した方向に沿って小滴Dを移動させることができる。図25Aにおいて、第1行の電極E12,E22,E32が選択的に接地電位または基準電位に設定され、隣接する行の電極E13,E23,E33が選択的に活性化される。図25Bでは、第1列の電極E11,E12,E13,E14が選択的に活性化され、隣接する列の電極E21,E22,E23,E24が選択的に接地電位または基準電位に設定される。
【0131】
図24A−24Dおよび図25A−24Bに図示された、この択一的な単一表面電極構成を有するマイクロアクチュエータ機構を用いて、図1の両面表面電極構成に関して上記説明したすべての機能および方法を実現することができる。例えば、択一的構成のいずれかにおける小滴Dを分離するためには、3つまたはそれ以上の隣接する電極に電圧を印加して、小滴Dを拡張させ、適当に選択された中間電極を不活性化して、1つの小滴Dを2つの小滴に分断する。
【0132】
本発明に関し、本発明の精神から逸脱することなく、さまざまな詳細を変更することができる。さらに、上記説明は、例示する目的だけでなされたものであり、限定する意図はなく、本発明はクレームにより定義される。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】図1は、本発明による両面電極構成を有するエレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータの断面図である。
【図2】図2は、本発明の1つの実施形態による、互いに嵌合する周縁部を有する電極セルアレイの平面図である。
【図3】図3は、本発明により構成されたエレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構の特性を示す電圧の関数としてのスイッチング速度のグラフである。
【図4A−4D】図4A−4Dは、本発明のエレクトロウェッティング技術を用いて移動させた小滴の一連の概略図である。
【図5A−5C】図5A−5Cは、本発明のエレクトロウェッティング技術を用いて、2つの小滴を1つの併合小滴に合体させる様子を示す。
【図6A−6C】図6A−6Cは、本発明のエレクトロウェッティング技術を用いて、1つの小滴が2つの小滴に分割される様子を示す。
【図7A−7B】図7A−7Bは、液体が電極アレイに供給され、小滴が液体から形成される様子を示す。
【図8A】図8Aは、1次元の直線的な小滴併合プロセスを実現する本発明のエレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータの断面図である。
【図8B】図8Bは、図8Aの上側プレーンを取り除いた構成の平面図である。
【図9A−9C】図9A−9Cは、本発明により1次元の直線的な小滴混合を実現する2電極、3電極、および4電極構成の各平面図である。
【図10A−10C】図10A−10Cは、本発明により実現される搬送による混合(mixing-in-transport)プロセスの具体例を示す概略図である。
【図11】図11は、本発明により実現される2次元の直線的な混合プロセスを示す概略図である。
【図12A】図12Aは、本発明による2次元のループ混合プロセスが実現される電極セルアレイの平面図である。
【図12B】図12Bは、回転中、小滴の一部がピンで固定された状態で2次元のループ混合プロセスを実現する2×2の電極セルアレイの平面図である。
【図13】図13は、図9A、9Bおよび9Cにそれぞれ図示された2電極、3電極、および4電極構成の小滴の能動的混合の特性を特徴付けるプロットデータである。
【図14】図14は、図12Bに図示された2×2の電極構成の特性を特徴付けるプロットデータである。
【図15A】図15Aは、連続フロー源から小滴を形成し、電極包含表面をわたって表面のプロセス領域まで小滴を移動させる様子を示す概略図である。
【図15B】図15Bは、電極包含表面の全体または一部を移動する連続フローから小滴を形成する様子を示す。
【図16】図16は、リアルタイムで電極アレイ上に形成される小滴−小滴混合ユニットの平面図である。
【図17】図17は、本発明により提供されるバイナリ混合装置の概略図である。
【図18A】図18Aは、本発明の第1段階の混合を可能とするバイナリ混合ユニットの構造を示す概略図である。
【図18B】図18Bは、図18Aに示すバイナリ混合ユニットの部分的概略図であって、バイナリ混合動作が行われるマトリックス領域の詳細を示す。
【図19A−19F】図19A−19Fは、本発明のバイナリ混合ユニットにより提供された電極アレイまたはマトリックス領域であって、所定の所望する混合比を有する小滴を得るために、バイナリ混合動作を行う具体例を示す。
【図20】図20は、本発明の第2段階の混合を可能とするバイナリ混合ユニットの構造を示す概略図である。
【図21】図21は、本発明のバイナリ混合構成により実現される第1段階または第2段階の混合の混合ポイントを示すグラフである。
【図22】図22は、本発明のバイナリ混合構成により実現される第1段階、第2段階、または第3段階の混合ポイントを示すグラフである。
【図23A】図23Aは、本発明の別の実施形態による単一表面電極構成を有するエレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータの断面図である。
【図23B】図23Bは、図23Aの上側プレーンを取り除いた一部構成の平面図である。
【図24A−24D】図24A−24Dは、択一的な単一表面電極構成を有するエレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構の一連の概略図であって、この機構のずらして配列された電極アレイ上に配置された小滴がエレクトロウェッティング方式で移動する様子を示す。
【図25A−25B】図25A−25Bは、配列アレイとして配列された単一表面電極構成を有する択一的なエレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構の概略図であって、それぞれ南北方向および東西方向に小滴が駆動される様子を示す。
【符号の説明】
【0134】
10 両面表面エレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構、12 上側プレーン、14 下側プレーン、21 下側プレート、23 下側疎水性薄膜層、27 上側疎水性薄膜層、40 相互嵌合領域、42,43 相互連結突起部、50 液体供給デバイス、61 連続フロー入力源、100 バイナリ混合装置、110 第1のバイナリ混合ユニット、210 第2のバイナリ混合ユニット、310 バッファ、111,211,311通信ライン、113 サンプル貯蔵部、115 廃棄物貯蔵部、117 試薬貯蔵部、500 単一表面エレクトロウェッティング・マイクロアクチュエータ機構、512 下側プレーン、514 上側プレーン、523 誘電層、D 小滴、E 駆動電極、C ユニットセル、G 接地電極、L 導電性リードライン、M メニスカス、S スイッチ、EROW 電極列、ECOL 電極行、EC 電気コントローラ、EA 電極マトリックス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小滴を操作するための装置であって、
(a)基板表面を含む基板と、
(b)基板表面上に形成された電極アレイと、
(c)電極アレイと実質的に同一平面上に配設され、少なくとも1つの電極に隣接した、基準電位に設定可能な基準部材アレイと、
(d)基板表面上に形成され、電極をカバーする誘電層と、
(e)選択された電極に順次、駆動電圧をバイアスするように、アレイの中から選択された1つまたはそれ以上の電極を順次活性化し、不活性化して、選択された電極により決まる所望の経路に沿って、基板表面上にある小滴を移動させる電極選択部とを備えたことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
基板表面から所定距離を隔てて配設され、基板表面との間に空間を形成するプレートを有し、
この距離は空間内に小滴を収容するのに十分であることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、
プレートは、基板表面に面したプレート表面を有し、
プレート表面は疎水性を有することを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項2に記載の装置であって、
空間内に配置されたフィラー流体を有することを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって、
電極および基準部材の少なくとも外側にある一部が疎水化されていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、
電極および基準部材の上に配設された疎水性フィルムを有することを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、
基準部材アレイは、細長い構造物のグリッドを有することを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、
基準部材は、駆動電圧より低い基準電圧に設定されることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置であって、
基準部材は、接地電位に設定されることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1に記載の装置であって、
誘電層の少なくとも一部が疎水性を有することを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1に記載の装置であって、
電極選択部は電気的プロセッサを含むことを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1に記載の装置であって、
表面と連通する小滴インレットを有することを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置であって、
表面と連通する小滴アウトレットを有することを特徴とする装置。
【請求項14】
小滴を操作するための方法であって、
(a)電極アレイと実質的に同一平面上の基準部材アレイとを有する表面上に小滴を形成するステップと、
小滴が複数の電極のうちの第1の電極上に配置されるとき、小滴は第2の電極と、第1および第2電極の間に配設された中間基準部材に少なくとも部分的に重なり、
(b)第1および第2の電極を活性化して、第2電極にわたって小滴の少なくとも一部を拡張するステップと、
(c)第1の電極を不活性化して、小滴を第1の電極から第2の電極へ移動させるステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
第2の電極は第1の方向に沿って第1の電極に隣接し、アレイは1つまたはそれ以上の追加的な方向に沿って第1の電極に隣接する1つまたはそれ以上の追加的な電極を有し、小滴は1つまたはそれ以上の追加的な電極に少なくとも部分的に重なり、
この方法は、
(a)小滴を移動させるべき方向に沿った所望の方向として第1の方向を選択するステップと、
(b)第1の方向の選択に基づいて活性化するために、第2電極を選択するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、
活性化ステップは、第1および第2の電極に駆動電圧を選択的にバイアスするステップと、第1の電極を駆動電圧から切断するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項17】
小滴を2つまたはそれ以上の小滴に分離する方法であって、
(a)電極アレイと実質的に同一平面上の基準部材アレイとを有する表面上に開始小滴を形成するステップと、
電極アレイは、第1の外側電極、第1の外側電極に隣接した中央電極、および中央電極に隣接した第2の外側電極からなる少なくとも3つの電極を含む電極を有し、
開始小滴は、当初において、3つの電極のうちの少なくとも1つの電極上に配置され、3つの電極のうちの少なくとももう1つの電極と重なり、
(b)開始小滴を3つの電極にわたって拡張させるために、3つの電極のそれぞれを活性化するステップと、
(c)開始小滴を第1および第2の分離小滴に分離するために、中間電極の不活性化するステップとを有し、
これにより、第1の分離小滴を第1の外側電極上に配置し、第2の分離小滴を第2の外側電極上に配置することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
活性化ステップは、3つの電極に選択的にバイアスして、駆動電圧を印加するステップを有し、
不活性化ステップは、中間電極を駆動電圧から切断するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、
活性化ステップおよび不活性化ステップを制御するために、電極選択部を用いるステップを有することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
電極選択部は電気的プロセッサを含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
2つまたはそれ以上の小滴を1つの小滴に併合する方法であって、
(a)電極アレイと実質的に同一平面上の基準部材アレイとを有する表面上に第1および第2の小滴を形成するステップと、
電極アレイは、第1の外側電極、第1の外側電極に隣接した中央電極、および中央電極に隣接した第2の外側電極からなる少なくとも3つの電極を含む電極を有し、
第1の小滴は、第1の外側電極上に配置され、少なくとも部分的に中間電極と重なり、
第2の小滴は、第2の外側電極上に配置され、少なくとも部分的に中間電極と重なり、
(b)3つの電極のうちの1つの電極を目的地電極として選択するステップと、
(c)目的地電極の選択に基づいて、3つの電極のうちの2つまたはそれ以上の電極を選択して、順次活性化し、不活性化するステップと、
(d)第1および第2の小滴の一方を他方に向かって移動させるか、第1および第2の小滴を互いに向かって移動させるようにシーケンス処理するために選択された電極を順次活性化し、不活性化するステップとを有し、
これにより、第1および第2の小滴を一体に併合して、目的地電極上で合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、
第1の外側電極を目的地電極として選択し、
シーケンス処理ステップは、第2の外側電極および中間電極を活性化して、第2の小滴を中間電極にわたって拡張させ、第2電極を不活性化して、第2の小滴を第2の外側電極から離れるように移動させ、第1の外側電極を活性化して、第1および第2の小滴を互いに対して拡張させ、中間電極を不活性化して、第1の外側電極上に合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法であって、
第2の外側電極を目的地電極として選択し、
シーケンス処理ステップは、第1の外側電極および中間電極を活性化して、第1の小滴を中間電極にわたって拡張させ、第1電極を不活性化して、第1の小滴を第1の外側電極から離れるように移動させ、第2の外側電極を活性化して、第1および第2の小滴を互いに対して拡張させ、中間電極を不活性化して、第2の外側電極上に合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項21に記載の方法であって、
中間電極を目的地電極として選択し、
シーケンス処理ステップは、第1の外側電極、中間電極、および第2の外側電極を活性化して、第1および第2の小滴を中間電極にわたって、かつ互いに対して拡張させ、第1および第2の電極を不活性化して、第1の小滴を第1の外側電極から離れるように移動させ、第2の外側電極を活性化して、第1および第2の小滴を互いに対して拡張させ、中間電極上に合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項21に記載の方法であって、
合体小滴を形成する前に、第1の小滴を第1の外側電極と導通するように移動させるように、電極アレイの他の電極を順次活性化し、不活性化するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項21に記載の方法であって、
シーケンス処理するために選択された電極を順次活性化し、不活性化するステップは、1つまたはそれ以上の選択された電極に駆動電圧を順次バイアスし、1つまたはそれ以上の選択された電極に駆動電圧から切断することを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項21に記載の方法であって、
第1の小滴が第1の成分を有し、第2の小滴が第2の成分を有し、合体小滴が第1および第2の成分を有し、
この方法が、第1および第2の成分を一体に混合するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、
合体小滴を形成するステップにより、第1および第2の成分が一体に混合されることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法であって、
混合ステップは、合体小滴の内部での拡散を可能にすることにより、第1および第2の成分を受動的に一体に混合することを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項27に記載の方法であって、
4つの電極からなる2×2のサブアレイ上の合体小滴を、4つの電極を順次活性化し、不活性化することにより、合体小滴を回転させるように移動させるステップを有することを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、
合体小滴が回転する一方、合体小滴の少なくとも一部が4つの電極の交差領域またはその近辺において実質的に静止した状態で維持されることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項27に記載の方法であって、
合体小滴を直線的に配列された電極アレイの一連の電極に沿って、所望回数および所望振動数で前後に振動させるために、直線的に配列された電極アレイの一連の電極を順次活性化し、不活性化するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項27に記載の方法であって、
混合ステップは、
電極アレイの一連の電極を混合電極として選択し、
合体小滴を2つまたはそれ以上の分離小滴に分離し、分離小滴を1つまたはそれ以上の直線的経路に沿って、所望回数および所望振動数で振動させるために、1つまたはそれ以上の混合電極を順次活性化し、不活性化することを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、
新たに合体小滴を形成するために分離電極を併合するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、
新たな合体小滴を2つまたはそれ以上の分離小滴に分離するステップと、
新たな分離小滴を振動させるステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項27に記載の方法であって、
混合ステップは、
電極アレイの一連の電極を搬送電極として選択し、
搬送電極により決定される搬送経路に沿って合体小滴を操作するために、1つまたはそれ以上の搬送電極を順次活性化し、不活性化し、
これにより、合体小滴が搬送経路に沿って移動する際、合体小滴の第1および第2の成分を一体に混合することを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、
搬送経路は電極アレイ上の反復可能なループを有し、
合体小滴は所定回数ループに沿って操作されることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項27に記載の方法であって、
混合ステップは、
電極アレイの一連の電極を混合電極として選択し、
合体小滴を2つまたはそれ以上の分離小滴に分離し、分離小滴を2つまたはそれ以上の経路に沿って移動させるために、1つまたはそれ以上の混合電極を順次活性化し、不活性化することを特徴とする方法。
【請求項39】
小滴を操作するための装置であって、
(a)基板表面を含む基板と、
(b)基板表面上に形成された電極アレイと、
(c)基板表面上に形成され、電極をカバーする誘電層と、
(d)電極対のシーケンスを動的に形成するための電極選択部と、
各電極対は、第1の電圧がバイアスされた選択された第1の電極と、第1の電圧より低い第2の電圧がバイアスされ、選択された第1の電極に隣接して配設された選択された第2の電極とを有し、
これにより、基板表面上に配置された小滴は、電極選択部により選択された電極対の間にある所望経路に沿って移動することを特徴とする装置。
【請求項40】
請求項39に記載の装置であって、
基板表面から所定距離を隔てて配設され、基板表面との間に空間を形成するプレートを有し、
この距離は空間内に小滴を収容するのに十分であることを特徴とする装置。
【請求項41】
請求項39に記載の装置であって、
プレートは、基板表面に面したプレート表面を有し、
プレート表面は疎水性を有することを特徴とする装置。
【請求項42】
請求項39に記載の装置であって、
空間内に配置されたフィラー流体を有することを特徴とする装置。
【請求項43】
請求項39に記載の装置であって、
アレイは、直線的に配置された複数の群電極を有し、各群電極は隣接する群電極に対して位置がずれていることを特徴とする装置。
【請求項44】
請求項39に記載の装置であって、
電極の少なくとも外側部分は疎水化されていることを特徴とする装置。
【請求項45】
請求項39に記載の装置であって、
電極上に配設された疎水性フィルムを有することを特徴とする装置。
【請求項46】
請求項39に記載の装置であって、
誘電膜の少なくとも一部が疎水性を有することを特徴とする装置。
【請求項47】
請求項39に記載の装置であって、
電極選択部は電気的プロセッサを有することを特徴とする装置。
【請求項48】
請求項39に記載の装置であって、
第2の電圧は基準電圧であることを特徴とする装置。
【請求項49】
請求項39に記載の装置であって、
第2の電圧は接地電位であることを特徴とする装置。
【請求項50】
小滴を操作するための方法であって、
(a)電極アレイを含む表面上に小滴を形成するステップと、
小滴は、当初において、第1の電極上に配置され、第1のギャップを隔てて第1の電極から離間した第2の電極に少なくとも部分的に重なり、
(b)第1の電極に第1の電圧をバイアスし、第1の電圧より低い第2の電圧を第2の電極にバイアスすることにより、小滴を第1のギャップ上の中央に配置するステップと、
(c)第1および第2の電極に近接する第3の電極に、第2の電圧より高い第3の電圧をバイアスし、第3の電極の上に小滴を拡張するステップと、
(d)第1の電極へのバイアスを取り除き、第1の電極から遠ざかる方向に小滴を移動させることにより、小滴を第2および第3の電極の間の第2のギャップ上の中央に配置するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法であって、
第2の電圧は接地電位であることを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項50に記載の方法であって、
第1および第3の電圧は実質的に等しいことを特徴とする方法。
【請求項53】
小滴を2つまたはそれ以上の小滴に分離する方法であって、
(a)電極アレイを有する表面上に開始小滴を形成するステップと、
電極アレイは、第1の外側電極、第1の外側電極に隣接した中央電極、および中央電極に隣接した第2の外側電極からなる少なくとも3つの電極を含む電極を有し、
開始小滴は、当初において、3つの電極のうちの少なくとも1つの電極上に配置され、3つの電極のうちの少なくとももう1つの電極と重なり、
(b)開始小滴を3つの電極にわたって拡張させるために、3つの電極のそれぞれに第1の電圧をバイアスするステップと、
(c)開始小滴を第1および第2の分離小滴に分離するために、中間電極に第1の電圧より低い第2の電圧をバイアスするステップとを有し、
これにより、第1の分離小滴を第1の外側電極上に配置し、第2の分離小滴を第2の外側電極上に配置することを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項53に記載の方法であって、
3つの電極に第1の電圧をバイアスするステップは、3つの電極を電圧源に選択的に接続することを特徴とする方法。
【請求項55】
請求項53に記載の方法であって、
第2の電圧はおよそゼロであることを特徴とする方法。
【請求項56】
2つまたはそれ以上の小滴を1つの小滴に併合する方法であって、
(a)電極アレイを有する表面上に第1および第2の小滴を形成するステップと、
電極アレイは、第1の外側電極、第1の外側電極に隣接した中央電極、および中央電極に隣接した第2の外側電極からなる少なくとも3つの電極を含む電極を有し、
第1の小滴は、第1の外側電極上に配置され、少なくとも部分的に中間電極と重なり、
第2の小滴は、第2の外側電極上に配置され、少なくとも部分的に中間電極と重なり、
(b)3つの電極のうちの1つの電極を目的地電極として選択するステップと、
(c)目的地電極の選択に基づいて、3つの電極のうちの2つまたはそれ以上の電極を選択して、順次バイアスするステップと、
(d)第1および第2の小滴の一方を他方に向かって移動させるか、第1および第2の小滴を互いに向かって移動させるように、第1および第2の電圧の間でシーケンス処理するために選択された電極を順次バイアスするステップとを有し、
これにより、第1および第2の小滴を一体に併合して、目的地電極上で合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法であって、
第1の外側電極を目的地電極として選択し、
順次バイアスするステップは、
第2の外側電極および中間電極に第1の電圧をバイアスして、第2の小滴を中間電極にわたって拡張させ、
第2の外側電極に第2の電圧をバイアスして、第2の小滴を第2の外側電極から離れるように移動させ、
第1の外側電極に第1の電圧を印加して、第1および第2の小滴を互いに対して拡張させ、そして
中間電極に第2の電圧をバイアスして、第1の外側電極上に合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項58】
請求項56に記載の方法であって、
第2の外側電極を目的地電極として選択し、
順次バイアスするステップは、
第1の外側電極および中間電極に第1の電圧をバイアスして、第1の小滴を中間電極にわたって拡張させ、
第1の外側電極に第2の電圧をバイアスして、第1の小滴を第1の外側電極から離れるように移動させ、
第2の外側電極に第1の電圧を印加して、第1および第2の小滴を互いに対して拡張させ、そして
中間電極に第2の電圧をバイアスして、第2の外側電極上に合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項56に記載の方法であって、
中間電極を目的地電極として選択し、
順次バイアスするステップは、
第1の外側電極、中間電極、および第2の外側電極に第1の電圧をバイアスして、第1および第2の小滴を中間電極にわたって、かつ互いに対して拡張させ、
第1および第2の電極に第2の電圧をバイアスして、第1および第2の小滴を第1および第2の外側電極から離れるように移動させ、中間電極上に合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項56に記載の方法であって、
合体小滴を形成する前に、第1の小滴を第1の外側電極と導通するように移動させるように、電極アレイの他の電極を順次バイアスするステップを有することを特徴とする方法。
【請求項61】
請求項56に記載の方法であって、
第2の電圧はおよそゼロであることを特徴とする方法。
【請求項62】
請求項56に記載の方法であって、
第1の小滴が第1の成分を有し、第2の小滴が第2の成分を有し、合体小滴が第1および第2の成分を有し、
この方法が、第1および第2の成分を一体に混合するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項62に記載の方法であって、
合体小滴を形成するステップにより、第1および第2の成分が一体に混合されることを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項62に記載の方法であって、
混合ステップは、合体小滴の内部での拡散を可能にすることにより、第1および第2の成分を受動的に一体に混合することを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項62に記載の方法であって、
4つの電極からなる2×2のサブアレイ上の合体小滴を、4つの電極に順次バイアスすることにより、合体小滴を回転させるように移動させるステップを有することを特徴とする方法。
【請求項66】
請求項65に記載の方法であって、
合体小滴が回転する一方、合体小滴の少なくとも一部が4つの電極の交差領域またはその近辺において実質的に静止した状態で維持されることを特徴とする方法。
【請求項67】
請求項62に記載の方法であって、
合体小滴を直線的に配列された電極アレイの一連の電極に沿って、所望回数および所望振動数で前後に振動させるために、直線的に配列された電極アレイの一連の電極を順次活性化し、不活性化するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項68】
請求項62に記載の方法であって、
混合ステップは、
電極アレイの一連の電極を混合電極として選択し、
合体小滴を2つまたはそれ以上の分離小滴に分離し、分離小滴を1つまたはそれ以上の直線的経路に沿って、所望回数および所望振動数で振動させるために、1つまたはそれ以上の混合電極を順次バイアスすることを特徴とする方法。
【請求項69】
請求項68に記載の方法であって、
新たに合体小滴を形成するために分離電極を併合するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項70】
請求項69に記載の方法であって、
新たな合体小滴を2つまたはそれ以上の分離小滴に分離するステップと、
新たな分離小滴を振動させるステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項71】
請求項62に記載の方法であって、
混合ステップは、
電極アレイの一連の電極を搬送電極として選択し、
搬送電極により決定される搬送経路に沿って合体小滴を操作するために、1つまたはそれ以上の搬送電極を順次バイアスし、
これにより、合体小滴が搬送経路に沿って移動する際、合体小滴の第1および第2の成分を一体に混合することを特徴とする方法。
【請求項72】
請求項71に記載の方法であって、
搬送経路は電極アレイ上の反復可能なループを有し、
合体小滴は所定回数ループに沿って操作されることを特徴とする方法。
【請求項73】
請求項62に記載の方法であって、
混合ステップは、
電極アレイの一連の電極を混合電極として選択し、
合体小滴を2つまたはそれ以上の分離小滴に分離し、分離小滴を2つまたはそれ以上の経路に沿って移動させるために、1つまたはそれ以上の混合電極を順次バイアスすることを特徴とする方法。
【請求項74】
連続液体フローをサンプリングする方法であって、
(a)第1フロー経路に沿って表面に液体フローを供給するステップと、
表面は電極アレイと実質的に同一平面上の基準部材アレイとを有し、
液体フローの少なくとも一部が第1の電極上に配置され、第2の電極と第1および第2の電極の間の基準部材の上に少なくとも部分的に重なり、
(b)液体フロー部分を第2および第3の電極にわたって拡張するために、第1の電極、第2の電極、および第2電極に隣接する第3の電極を活性化するステップと、
(c)第3の電極上の液体フローから小滴を形成するために、第2の電極を不活性化するステップとを有し、
これにより、小滴を液体フローとは別体とし、制御可能に独立させることを特徴とする方法。
【請求項75】
請求項74に記載の方法であって、
第2のフロー経路に沿って表面上の小滴を移動させるステップを有することを特徴とする方法。
【請求項76】
請求項75に記載の方法であって、
小滴を移動させるステップは、電極アレイの一連の電極を順次活性化し、不活性化するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項77】
請求項75に記載の方法であって、
処理領域を形成するために電極アレイの一連の電極を活性化するステップを有し、
小滴は第2フロー経路に沿って処理領域まで移動することを特徴とする方法。
【請求項78】
請求項74に記載の方法であって、
第1のフロー経路は表面に沿って入力方向へ流れ、
第2および第3の電極は入力方向に沿って配置されることを特徴とする方法。
【請求項79】
請求項74に記載の方法であって、
第1のフロー経路は表面に沿って入力方向へ流れ、
第2および第3の電極は入力方向とは異なる搬送方向に沿って配置されることを特徴とする方法。
【請求項80】
請求項74に記載の方法であって、
液体出力フローストリームを形成するために、小滴を1つまたはそれ以上の追加的な小滴と合体させるステップをさらに有することを特徴とする方法。
【請求項81】
連続液体フローをサンプリングする方法であって、
(a)第1フロー経路に沿って表面に液体フローを供給するステップと、
表面は電極アレイを有し、
液体フローの少なくとも一部が第1の電極上に配置され、第2の電極に少なくとも部分的に重なり、
(b)液体フロー部分を第2および第3の電極にわたって拡張するために、第1の電極、第2の電極、および第2電極に隣接する第3の電極に第1の電圧をバイアスするステップと、
(c)第3の電極上の液体フローから小滴を形成するために、第1の電圧より低い電圧を第2の電極にバイアスするステップとを有し、
これにより、小滴を液体フローとは別体とし、制御可能に独立させることを特徴とする方法。
【請求項82】
バイナリ混合装置であって、
(a)第1の表面領域、第1の表面領域上に配設された第1の電極アレイ、および第1の電極アレイと実質的に同一平面上に配設された第1の基準部材を有する第1の混合ユニットと、
(b)第2の表面領域、第2の表面領域上に配設された第2の電極アレイ、第2の電極アレイと実質的に同一平面上に配設された第2の基準部材、および第2の表面領域と第1の混合ユニットとに連通した小滴アウトレット領域を有する第2の混合ユニットと、
(c)第1の表面領域に供給された2つの小滴を一体に混合するように1つまたはそれ以上の選択された第1の電極を順次活性化し、不活性化し、かつ第2の表面領域に供給された別の2つの小滴を一体に混合するように1つまたはそれ以上の選択された第2の電極を順次活性化し、不活性化する電極選択部とを備えたことを特徴とする装置。
【請求項83】
請求項82に記載の装置であって、
第1の混合ユニットおよび小滴アウトレット領域に連通し、電極選択部により制御されるバッファを有することを特徴とする装置。
【請求項84】
バイナリ混合装置であって、
(a)第1の表面領域および第1の表面領域上に配設された第1の電極アレイを有する第1の混合ユニットと、
(b)第2の表面領域、第2の表面領域上に配設された第2の電極アレイ、および第2の表面領域と第1の混合ユニットとに連通した小滴アウトレット領域を有する第2の混合ユニットと、
(c)第1の表面領域上の第1の電極対のシーケンス、および第2の表面領域上の第2の電極対のシーケンスを動的に形成し、
第1の電極対のそれぞれは、第1の電圧でバイアスされた選択された第1の電極と第1の電圧より低い第2の電圧でバイアスされた選択された第1の電極とを有し、
第2の電極対のそれぞれは、第3の電圧でバイアスされた選択された第2の電極と第3の電圧より低い第4の電圧でバイアスされた選択された第2の電極とを有し、
これにより、第1の表面電極に供給された2つの小滴が第1の電極対により活性化されて一体に混合し、第2の表面電極に供給された別の2つの小滴が第2の電極対により活性化されて一体に混合することを特徴とする装置。
【請求項85】
所望の混合比を有する小滴を生成する方法であって、
(a)表面、表面上に形成された電極アレイ、および電極アレイと実質的に同一平面上に形成された導通部材を提供するステップと、
(b)初期濃度を有するサンプル小滴と希釈小滴を表面上に提供するステップと、
(c)選択された電極対を順次活性化、不活性化することにより、合体小滴を形成するためにサンプル小滴および希釈小滴を併合するステップと、
(d)合体小滴の濃度をサンプル小滴の初期濃度以下に低減するために、合体小滴を混合するステップとを有し、
これにより、合体小滴の低減された濃度が近似的な混合比に相当することを特徴とする方法。
【請求項86】
請求項85に記載の方法であって、
1つまたはそれ以上の追加的な希釈小滴を用いて、併合ステップおよび混合ステップを所定回数反復し、最後の合体小滴の低減された濃度が所望の精度範囲内で所望の混合比に近づくまで、1つまたはそれ以上の新しい合体小滴を形成するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項87】
請求項85に記載の方法であって、
混合された合体小滴を2つの混合小滴に分離するステップと、
新たに合体小滴を形成するために、2つの混合小滴のうちの少なくとも一方を追加的な希釈小滴に併合するステップと、
新たな合体小滴を混合するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項88】
請求項85に記載の方法であって、
合体小滴を混合した後、合体小滴の近似的な混合比が所望の精度範囲内で所望の混合比に近づいたかどうか判断するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項89】
請求項88に記載の方法であって、
判断するステップは、
合体小滴の低減された濃度を示す値を測定し、
測定された値を所望する混合比を示す事前設定されたポイント値と比較することを特徴とする方法。
【請求項90】
請求項88に記載の方法であって、
合体小滴の近似的な混合比が所望の精度範囲内で所望の混合比に近づいていない場合、合体小滴を新たな希釈小滴と併合して、所望の混合比により近い濃度を有する新たな合体小滴を形成するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項91】
所望の混合比を有する小滴を生成する方法であって、
(a)表面に形成された電極アレイを提供するステップと、
(b)初期濃度を有するサンプル小滴と希釈小滴を表面上に提供するステップと、
(c)アレイから電極対のシーケンスを動的に形成することにより、サンプル小滴を希釈小滴に併合するステップと、
電極対のそれぞれは、第1の電圧でバイアスされた選択された第1の電極と第1の電圧より低い第2の電圧でバイアスされた選択された第1の電極とを有し、
これにより、サンプル小滴および希釈小滴の一方または両方が電極対のシーケンスにより決定される経路に沿って活性化され、
(d)合体小滴の濃度をサンプル小滴の初期濃度以下に低減するために、合体小滴を混合するステップとを有し、
これにより、合体小滴の低減された濃度が近似的な混合比に相当することを特徴とする方法。
【請求項92】
請求項91に記載の方法であって、
混合ステップは、合体小滴を活性化するために、アレイから電極対の追加的なシーケンスを動的に形成することを特徴とする方法。
【請求項93】
所望の最終的混合比を有する小滴を生成する方法であって、
(a)第1の表面領域、第1の表面領域上に配設された第1の電極アレイ、および第1の電極アレイと実質的に同一平面上に配設された第1の導通部材を有する第1の混合ユニットにおいて、第1のサンプル小滴を第1の希釈小滴に混合して、所定の第1の中間混合比を有する第1の合体小滴を形成するステップと、
(b)第2の表面領域、第2の表面領域上に配設された第2の電極アレイ、および第2の電極アレイと実質的に同一平面上に配設された第2の導通部材を有する第2の混合ユニットにおいて、第2のサンプル小滴を第2の希釈小滴に混合して、所定の第2の中間混合比を有する第2の合体小滴を形成するステップと、
(c)第2の合体小滴を第1の混合ユニットに搬送するステップと、
(d)第1の混合ユニットにおいて、第1の合体小滴を第2の合体小滴に合体させ、所望の最終的混合比を有する第3の合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項94】
所望の最終的混合比を有する小滴を生成する方法であって、
(a)第1の表面領域上に配設された第1の電極アレイを有する第1の混合ユニットにおいて、第1の電極の第1対の第1シーケンスを動的に形成することにより、第1のサンプル小滴を第1の希釈小滴に混合するステップと、
第1対のそれぞれは、第1の電圧でバイアスされた第1の駆動電極と第1の電圧より低い第2の電圧でバイアスされた第1の基準電極とを有し、
これにより、第1のサンプル小滴および第1の希釈小滴を活性化して、所望の第1の中間混合比を有する第1の合体小滴を形成し、
(b)第2の表面領域上に配設された第2の電極アレイを有する第2の混合ユニットにおいて、第2の電極の第2対の第2シーケンスを動的に形成することにより、第2のサンプル小滴を第2の希釈小滴に混合するステップと、
第2対のそれぞれは、第3の電圧でバイアスされた第2の駆動電極と第3の電圧より低い第4の電圧でバイアスされた第2の基準電極とを有し、
これにより、第2のサンプル小滴および第2の希釈小滴を活性化して、所望の第2の中間混合比を有する第2の合体小滴を形成し、
(c)第2の合体小滴を第1の混合ユニットに搬送するステップと、
(d)第1の混合ユニットにおいて、第1の合体小滴を第2の合体小滴に合体させ、所望の最終的混合比を有する第3の合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項1】
小滴を操作するための装置であって、
(a)基板表面を含む基板と、
(b)基板表面上に形成された電極アレイと、
(c)電極アレイと実質的に同一平面上に配設され、少なくとも1つの電極に隣接した、基準電位に設定可能な基準部材アレイと、
(d)基板表面上に形成され、電極をカバーする誘電層と、
(e)選択された電極に順次、駆動電圧をバイアスするように、アレイの中から選択された1つまたはそれ以上の電極を順次活性化し、不活性化して、選択された電極により決まる所望の経路に沿って、基板表面上にある小滴を移動させる電極選択部とを備えたことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
基板表面から所定距離を隔てて配設され、基板表面との間に空間を形成するプレートを有し、
この距離は空間内に小滴を収容するのに十分であることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、
プレートは、基板表面に面したプレート表面を有し、
プレート表面は疎水性を有することを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項2に記載の装置であって、
空間内に配置されたフィラー流体を有することを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって、
電極および基準部材の少なくとも外側にある一部が疎水化されていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、
電極および基準部材の上に配設された疎水性フィルムを有することを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、
基準部材アレイは、細長い構造物のグリッドを有することを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、
基準部材は、駆動電圧より低い基準電圧に設定されることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置であって、
基準部材は、接地電位に設定されることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1に記載の装置であって、
誘電層の少なくとも一部が疎水性を有することを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1に記載の装置であって、
電極選択部は電気的プロセッサを含むことを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1に記載の装置であって、
表面と連通する小滴インレットを有することを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置であって、
表面と連通する小滴アウトレットを有することを特徴とする装置。
【請求項14】
小滴を操作するための方法であって、
(a)電極アレイと実質的に同一平面上の基準部材アレイとを有する表面上に小滴を形成するステップと、
小滴が複数の電極のうちの第1の電極上に配置されるとき、小滴は第2の電極と、第1および第2電極の間に配設された中間基準部材に少なくとも部分的に重なり、
(b)第1および第2の電極を活性化して、第2電極にわたって小滴の少なくとも一部を拡張するステップと、
(c)第1の電極を不活性化して、小滴を第1の電極から第2の電極へ移動させるステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
第2の電極は第1の方向に沿って第1の電極に隣接し、アレイは1つまたはそれ以上の追加的な方向に沿って第1の電極に隣接する1つまたはそれ以上の追加的な電極を有し、小滴は1つまたはそれ以上の追加的な電極に少なくとも部分的に重なり、
この方法は、
(a)小滴を移動させるべき方向に沿った所望の方向として第1の方向を選択するステップと、
(b)第1の方向の選択に基づいて活性化するために、第2電極を選択するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、
活性化ステップは、第1および第2の電極に駆動電圧を選択的にバイアスするステップと、第1の電極を駆動電圧から切断するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項17】
小滴を2つまたはそれ以上の小滴に分離する方法であって、
(a)電極アレイと実質的に同一平面上の基準部材アレイとを有する表面上に開始小滴を形成するステップと、
電極アレイは、第1の外側電極、第1の外側電極に隣接した中央電極、および中央電極に隣接した第2の外側電極からなる少なくとも3つの電極を含む電極を有し、
開始小滴は、当初において、3つの電極のうちの少なくとも1つの電極上に配置され、3つの電極のうちの少なくとももう1つの電極と重なり、
(b)開始小滴を3つの電極にわたって拡張させるために、3つの電極のそれぞれを活性化するステップと、
(c)開始小滴を第1および第2の分離小滴に分離するために、中間電極の不活性化するステップとを有し、
これにより、第1の分離小滴を第1の外側電極上に配置し、第2の分離小滴を第2の外側電極上に配置することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
活性化ステップは、3つの電極に選択的にバイアスして、駆動電圧を印加するステップを有し、
不活性化ステップは、中間電極を駆動電圧から切断するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、
活性化ステップおよび不活性化ステップを制御するために、電極選択部を用いるステップを有することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
電極選択部は電気的プロセッサを含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
2つまたはそれ以上の小滴を1つの小滴に併合する方法であって、
(a)電極アレイと実質的に同一平面上の基準部材アレイとを有する表面上に第1および第2の小滴を形成するステップと、
電極アレイは、第1の外側電極、第1の外側電極に隣接した中央電極、および中央電極に隣接した第2の外側電極からなる少なくとも3つの電極を含む電極を有し、
第1の小滴は、第1の外側電極上に配置され、少なくとも部分的に中間電極と重なり、
第2の小滴は、第2の外側電極上に配置され、少なくとも部分的に中間電極と重なり、
(b)3つの電極のうちの1つの電極を目的地電極として選択するステップと、
(c)目的地電極の選択に基づいて、3つの電極のうちの2つまたはそれ以上の電極を選択して、順次活性化し、不活性化するステップと、
(d)第1および第2の小滴の一方を他方に向かって移動させるか、第1および第2の小滴を互いに向かって移動させるようにシーケンス処理するために選択された電極を順次活性化し、不活性化するステップとを有し、
これにより、第1および第2の小滴を一体に併合して、目的地電極上で合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、
第1の外側電極を目的地電極として選択し、
シーケンス処理ステップは、第2の外側電極および中間電極を活性化して、第2の小滴を中間電極にわたって拡張させ、第2電極を不活性化して、第2の小滴を第2の外側電極から離れるように移動させ、第1の外側電極を活性化して、第1および第2の小滴を互いに対して拡張させ、中間電極を不活性化して、第1の外側電極上に合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法であって、
第2の外側電極を目的地電極として選択し、
シーケンス処理ステップは、第1の外側電極および中間電極を活性化して、第1の小滴を中間電極にわたって拡張させ、第1電極を不活性化して、第1の小滴を第1の外側電極から離れるように移動させ、第2の外側電極を活性化して、第1および第2の小滴を互いに対して拡張させ、中間電極を不活性化して、第2の外側電極上に合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項21に記載の方法であって、
中間電極を目的地電極として選択し、
シーケンス処理ステップは、第1の外側電極、中間電極、および第2の外側電極を活性化して、第1および第2の小滴を中間電極にわたって、かつ互いに対して拡張させ、第1および第2の電極を不活性化して、第1の小滴を第1の外側電極から離れるように移動させ、第2の外側電極を活性化して、第1および第2の小滴を互いに対して拡張させ、中間電極上に合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項21に記載の方法であって、
合体小滴を形成する前に、第1の小滴を第1の外側電極と導通するように移動させるように、電極アレイの他の電極を順次活性化し、不活性化するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項21に記載の方法であって、
シーケンス処理するために選択された電極を順次活性化し、不活性化するステップは、1つまたはそれ以上の選択された電極に駆動電圧を順次バイアスし、1つまたはそれ以上の選択された電極に駆動電圧から切断することを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項21に記載の方法であって、
第1の小滴が第1の成分を有し、第2の小滴が第2の成分を有し、合体小滴が第1および第2の成分を有し、
この方法が、第1および第2の成分を一体に混合するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、
合体小滴を形成するステップにより、第1および第2の成分が一体に混合されることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法であって、
混合ステップは、合体小滴の内部での拡散を可能にすることにより、第1および第2の成分を受動的に一体に混合することを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項27に記載の方法であって、
4つの電極からなる2×2のサブアレイ上の合体小滴を、4つの電極を順次活性化し、不活性化することにより、合体小滴を回転させるように移動させるステップを有することを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、
合体小滴が回転する一方、合体小滴の少なくとも一部が4つの電極の交差領域またはその近辺において実質的に静止した状態で維持されることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項27に記載の方法であって、
合体小滴を直線的に配列された電極アレイの一連の電極に沿って、所望回数および所望振動数で前後に振動させるために、直線的に配列された電極アレイの一連の電極を順次活性化し、不活性化するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項27に記載の方法であって、
混合ステップは、
電極アレイの一連の電極を混合電極として選択し、
合体小滴を2つまたはそれ以上の分離小滴に分離し、分離小滴を1つまたはそれ以上の直線的経路に沿って、所望回数および所望振動数で振動させるために、1つまたはそれ以上の混合電極を順次活性化し、不活性化することを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、
新たに合体小滴を形成するために分離電極を併合するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、
新たな合体小滴を2つまたはそれ以上の分離小滴に分離するステップと、
新たな分離小滴を振動させるステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項27に記載の方法であって、
混合ステップは、
電極アレイの一連の電極を搬送電極として選択し、
搬送電極により決定される搬送経路に沿って合体小滴を操作するために、1つまたはそれ以上の搬送電極を順次活性化し、不活性化し、
これにより、合体小滴が搬送経路に沿って移動する際、合体小滴の第1および第2の成分を一体に混合することを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、
搬送経路は電極アレイ上の反復可能なループを有し、
合体小滴は所定回数ループに沿って操作されることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項27に記載の方法であって、
混合ステップは、
電極アレイの一連の電極を混合電極として選択し、
合体小滴を2つまたはそれ以上の分離小滴に分離し、分離小滴を2つまたはそれ以上の経路に沿って移動させるために、1つまたはそれ以上の混合電極を順次活性化し、不活性化することを特徴とする方法。
【請求項39】
小滴を操作するための装置であって、
(a)基板表面を含む基板と、
(b)基板表面上に形成された電極アレイと、
(c)基板表面上に形成され、電極をカバーする誘電層と、
(d)電極対のシーケンスを動的に形成するための電極選択部と、
各電極対は、第1の電圧がバイアスされた選択された第1の電極と、第1の電圧より低い第2の電圧がバイアスされ、選択された第1の電極に隣接して配設された選択された第2の電極とを有し、
これにより、基板表面上に配置された小滴は、電極選択部により選択された電極対の間にある所望経路に沿って移動することを特徴とする装置。
【請求項40】
請求項39に記載の装置であって、
基板表面から所定距離を隔てて配設され、基板表面との間に空間を形成するプレートを有し、
この距離は空間内に小滴を収容するのに十分であることを特徴とする装置。
【請求項41】
請求項39に記載の装置であって、
プレートは、基板表面に面したプレート表面を有し、
プレート表面は疎水性を有することを特徴とする装置。
【請求項42】
請求項39に記載の装置であって、
空間内に配置されたフィラー流体を有することを特徴とする装置。
【請求項43】
請求項39に記載の装置であって、
アレイは、直線的に配置された複数の群電極を有し、各群電極は隣接する群電極に対して位置がずれていることを特徴とする装置。
【請求項44】
請求項39に記載の装置であって、
電極の少なくとも外側部分は疎水化されていることを特徴とする装置。
【請求項45】
請求項39に記載の装置であって、
電極上に配設された疎水性フィルムを有することを特徴とする装置。
【請求項46】
請求項39に記載の装置であって、
誘電膜の少なくとも一部が疎水性を有することを特徴とする装置。
【請求項47】
請求項39に記載の装置であって、
電極選択部は電気的プロセッサを有することを特徴とする装置。
【請求項48】
請求項39に記載の装置であって、
第2の電圧は基準電圧であることを特徴とする装置。
【請求項49】
請求項39に記載の装置であって、
第2の電圧は接地電位であることを特徴とする装置。
【請求項50】
小滴を操作するための方法であって、
(a)電極アレイを含む表面上に小滴を形成するステップと、
小滴は、当初において、第1の電極上に配置され、第1のギャップを隔てて第1の電極から離間した第2の電極に少なくとも部分的に重なり、
(b)第1の電極に第1の電圧をバイアスし、第1の電圧より低い第2の電圧を第2の電極にバイアスすることにより、小滴を第1のギャップ上の中央に配置するステップと、
(c)第1および第2の電極に近接する第3の電極に、第2の電圧より高い第3の電圧をバイアスし、第3の電極の上に小滴を拡張するステップと、
(d)第1の電極へのバイアスを取り除き、第1の電極から遠ざかる方向に小滴を移動させることにより、小滴を第2および第3の電極の間の第2のギャップ上の中央に配置するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法であって、
第2の電圧は接地電位であることを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項50に記載の方法であって、
第1および第3の電圧は実質的に等しいことを特徴とする方法。
【請求項53】
小滴を2つまたはそれ以上の小滴に分離する方法であって、
(a)電極アレイを有する表面上に開始小滴を形成するステップと、
電極アレイは、第1の外側電極、第1の外側電極に隣接した中央電極、および中央電極に隣接した第2の外側電極からなる少なくとも3つの電極を含む電極を有し、
開始小滴は、当初において、3つの電極のうちの少なくとも1つの電極上に配置され、3つの電極のうちの少なくとももう1つの電極と重なり、
(b)開始小滴を3つの電極にわたって拡張させるために、3つの電極のそれぞれに第1の電圧をバイアスするステップと、
(c)開始小滴を第1および第2の分離小滴に分離するために、中間電極に第1の電圧より低い第2の電圧をバイアスするステップとを有し、
これにより、第1の分離小滴を第1の外側電極上に配置し、第2の分離小滴を第2の外側電極上に配置することを特徴とする方法。
【請求項54】
請求項53に記載の方法であって、
3つの電極に第1の電圧をバイアスするステップは、3つの電極を電圧源に選択的に接続することを特徴とする方法。
【請求項55】
請求項53に記載の方法であって、
第2の電圧はおよそゼロであることを特徴とする方法。
【請求項56】
2つまたはそれ以上の小滴を1つの小滴に併合する方法であって、
(a)電極アレイを有する表面上に第1および第2の小滴を形成するステップと、
電極アレイは、第1の外側電極、第1の外側電極に隣接した中央電極、および中央電極に隣接した第2の外側電極からなる少なくとも3つの電極を含む電極を有し、
第1の小滴は、第1の外側電極上に配置され、少なくとも部分的に中間電極と重なり、
第2の小滴は、第2の外側電極上に配置され、少なくとも部分的に中間電極と重なり、
(b)3つの電極のうちの1つの電極を目的地電極として選択するステップと、
(c)目的地電極の選択に基づいて、3つの電極のうちの2つまたはそれ以上の電極を選択して、順次バイアスするステップと、
(d)第1および第2の小滴の一方を他方に向かって移動させるか、第1および第2の小滴を互いに向かって移動させるように、第1および第2の電圧の間でシーケンス処理するために選択された電極を順次バイアスするステップとを有し、
これにより、第1および第2の小滴を一体に併合して、目的地電極上で合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法であって、
第1の外側電極を目的地電極として選択し、
順次バイアスするステップは、
第2の外側電極および中間電極に第1の電圧をバイアスして、第2の小滴を中間電極にわたって拡張させ、
第2の外側電極に第2の電圧をバイアスして、第2の小滴を第2の外側電極から離れるように移動させ、
第1の外側電極に第1の電圧を印加して、第1および第2の小滴を互いに対して拡張させ、そして
中間電極に第2の電圧をバイアスして、第1の外側電極上に合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項58】
請求項56に記載の方法であって、
第2の外側電極を目的地電極として選択し、
順次バイアスするステップは、
第1の外側電極および中間電極に第1の電圧をバイアスして、第1の小滴を中間電極にわたって拡張させ、
第1の外側電極に第2の電圧をバイアスして、第1の小滴を第1の外側電極から離れるように移動させ、
第2の外側電極に第1の電圧を印加して、第1および第2の小滴を互いに対して拡張させ、そして
中間電極に第2の電圧をバイアスして、第2の外側電極上に合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項59】
請求項56に記載の方法であって、
中間電極を目的地電極として選択し、
順次バイアスするステップは、
第1の外側電極、中間電極、および第2の外側電極に第1の電圧をバイアスして、第1および第2の小滴を中間電極にわたって、かつ互いに対して拡張させ、
第1および第2の電極に第2の電圧をバイアスして、第1および第2の小滴を第1および第2の外側電極から離れるように移動させ、中間電極上に合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項60】
請求項56に記載の方法であって、
合体小滴を形成する前に、第1の小滴を第1の外側電極と導通するように移動させるように、電極アレイの他の電極を順次バイアスするステップを有することを特徴とする方法。
【請求項61】
請求項56に記載の方法であって、
第2の電圧はおよそゼロであることを特徴とする方法。
【請求項62】
請求項56に記載の方法であって、
第1の小滴が第1の成分を有し、第2の小滴が第2の成分を有し、合体小滴が第1および第2の成分を有し、
この方法が、第1および第2の成分を一体に混合するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項63】
請求項62に記載の方法であって、
合体小滴を形成するステップにより、第1および第2の成分が一体に混合されることを特徴とする方法。
【請求項64】
請求項62に記載の方法であって、
混合ステップは、合体小滴の内部での拡散を可能にすることにより、第1および第2の成分を受動的に一体に混合することを特徴とする方法。
【請求項65】
請求項62に記載の方法であって、
4つの電極からなる2×2のサブアレイ上の合体小滴を、4つの電極に順次バイアスすることにより、合体小滴を回転させるように移動させるステップを有することを特徴とする方法。
【請求項66】
請求項65に記載の方法であって、
合体小滴が回転する一方、合体小滴の少なくとも一部が4つの電極の交差領域またはその近辺において実質的に静止した状態で維持されることを特徴とする方法。
【請求項67】
請求項62に記載の方法であって、
合体小滴を直線的に配列された電極アレイの一連の電極に沿って、所望回数および所望振動数で前後に振動させるために、直線的に配列された電極アレイの一連の電極を順次活性化し、不活性化するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項68】
請求項62に記載の方法であって、
混合ステップは、
電極アレイの一連の電極を混合電極として選択し、
合体小滴を2つまたはそれ以上の分離小滴に分離し、分離小滴を1つまたはそれ以上の直線的経路に沿って、所望回数および所望振動数で振動させるために、1つまたはそれ以上の混合電極を順次バイアスすることを特徴とする方法。
【請求項69】
請求項68に記載の方法であって、
新たに合体小滴を形成するために分離電極を併合するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項70】
請求項69に記載の方法であって、
新たな合体小滴を2つまたはそれ以上の分離小滴に分離するステップと、
新たな分離小滴を振動させるステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項71】
請求項62に記載の方法であって、
混合ステップは、
電極アレイの一連の電極を搬送電極として選択し、
搬送電極により決定される搬送経路に沿って合体小滴を操作するために、1つまたはそれ以上の搬送電極を順次バイアスし、
これにより、合体小滴が搬送経路に沿って移動する際、合体小滴の第1および第2の成分を一体に混合することを特徴とする方法。
【請求項72】
請求項71に記載の方法であって、
搬送経路は電極アレイ上の反復可能なループを有し、
合体小滴は所定回数ループに沿って操作されることを特徴とする方法。
【請求項73】
請求項62に記載の方法であって、
混合ステップは、
電極アレイの一連の電極を混合電極として選択し、
合体小滴を2つまたはそれ以上の分離小滴に分離し、分離小滴を2つまたはそれ以上の経路に沿って移動させるために、1つまたはそれ以上の混合電極を順次バイアスすることを特徴とする方法。
【請求項74】
連続液体フローをサンプリングする方法であって、
(a)第1フロー経路に沿って表面に液体フローを供給するステップと、
表面は電極アレイと実質的に同一平面上の基準部材アレイとを有し、
液体フローの少なくとも一部が第1の電極上に配置され、第2の電極と第1および第2の電極の間の基準部材の上に少なくとも部分的に重なり、
(b)液体フロー部分を第2および第3の電極にわたって拡張するために、第1の電極、第2の電極、および第2電極に隣接する第3の電極を活性化するステップと、
(c)第3の電極上の液体フローから小滴を形成するために、第2の電極を不活性化するステップとを有し、
これにより、小滴を液体フローとは別体とし、制御可能に独立させることを特徴とする方法。
【請求項75】
請求項74に記載の方法であって、
第2のフロー経路に沿って表面上の小滴を移動させるステップを有することを特徴とする方法。
【請求項76】
請求項75に記載の方法であって、
小滴を移動させるステップは、電極アレイの一連の電極を順次活性化し、不活性化するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項77】
請求項75に記載の方法であって、
処理領域を形成するために電極アレイの一連の電極を活性化するステップを有し、
小滴は第2フロー経路に沿って処理領域まで移動することを特徴とする方法。
【請求項78】
請求項74に記載の方法であって、
第1のフロー経路は表面に沿って入力方向へ流れ、
第2および第3の電極は入力方向に沿って配置されることを特徴とする方法。
【請求項79】
請求項74に記載の方法であって、
第1のフロー経路は表面に沿って入力方向へ流れ、
第2および第3の電極は入力方向とは異なる搬送方向に沿って配置されることを特徴とする方法。
【請求項80】
請求項74に記載の方法であって、
液体出力フローストリームを形成するために、小滴を1つまたはそれ以上の追加的な小滴と合体させるステップをさらに有することを特徴とする方法。
【請求項81】
連続液体フローをサンプリングする方法であって、
(a)第1フロー経路に沿って表面に液体フローを供給するステップと、
表面は電極アレイを有し、
液体フローの少なくとも一部が第1の電極上に配置され、第2の電極に少なくとも部分的に重なり、
(b)液体フロー部分を第2および第3の電極にわたって拡張するために、第1の電極、第2の電極、および第2電極に隣接する第3の電極に第1の電圧をバイアスするステップと、
(c)第3の電極上の液体フローから小滴を形成するために、第1の電圧より低い電圧を第2の電極にバイアスするステップとを有し、
これにより、小滴を液体フローとは別体とし、制御可能に独立させることを特徴とする方法。
【請求項82】
バイナリ混合装置であって、
(a)第1の表面領域、第1の表面領域上に配設された第1の電極アレイ、および第1の電極アレイと実質的に同一平面上に配設された第1の基準部材を有する第1の混合ユニットと、
(b)第2の表面領域、第2の表面領域上に配設された第2の電極アレイ、第2の電極アレイと実質的に同一平面上に配設された第2の基準部材、および第2の表面領域と第1の混合ユニットとに連通した小滴アウトレット領域を有する第2の混合ユニットと、
(c)第1の表面領域に供給された2つの小滴を一体に混合するように1つまたはそれ以上の選択された第1の電極を順次活性化し、不活性化し、かつ第2の表面領域に供給された別の2つの小滴を一体に混合するように1つまたはそれ以上の選択された第2の電極を順次活性化し、不活性化する電極選択部とを備えたことを特徴とする装置。
【請求項83】
請求項82に記載の装置であって、
第1の混合ユニットおよび小滴アウトレット領域に連通し、電極選択部により制御されるバッファを有することを特徴とする装置。
【請求項84】
バイナリ混合装置であって、
(a)第1の表面領域および第1の表面領域上に配設された第1の電極アレイを有する第1の混合ユニットと、
(b)第2の表面領域、第2の表面領域上に配設された第2の電極アレイ、および第2の表面領域と第1の混合ユニットとに連通した小滴アウトレット領域を有する第2の混合ユニットと、
(c)第1の表面領域上の第1の電極対のシーケンス、および第2の表面領域上の第2の電極対のシーケンスを動的に形成し、
第1の電極対のそれぞれは、第1の電圧でバイアスされた選択された第1の電極と第1の電圧より低い第2の電圧でバイアスされた選択された第1の電極とを有し、
第2の電極対のそれぞれは、第3の電圧でバイアスされた選択された第2の電極と第3の電圧より低い第4の電圧でバイアスされた選択された第2の電極とを有し、
これにより、第1の表面電極に供給された2つの小滴が第1の電極対により活性化されて一体に混合し、第2の表面電極に供給された別の2つの小滴が第2の電極対により活性化されて一体に混合することを特徴とする装置。
【請求項85】
所望の混合比を有する小滴を生成する方法であって、
(a)表面、表面上に形成された電極アレイ、および電極アレイと実質的に同一平面上に形成された導通部材を提供するステップと、
(b)初期濃度を有するサンプル小滴と希釈小滴を表面上に提供するステップと、
(c)選択された電極対を順次活性化、不活性化することにより、合体小滴を形成するためにサンプル小滴および希釈小滴を併合するステップと、
(d)合体小滴の濃度をサンプル小滴の初期濃度以下に低減するために、合体小滴を混合するステップとを有し、
これにより、合体小滴の低減された濃度が近似的な混合比に相当することを特徴とする方法。
【請求項86】
請求項85に記載の方法であって、
1つまたはそれ以上の追加的な希釈小滴を用いて、併合ステップおよび混合ステップを所定回数反復し、最後の合体小滴の低減された濃度が所望の精度範囲内で所望の混合比に近づくまで、1つまたはそれ以上の新しい合体小滴を形成するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項87】
請求項85に記載の方法であって、
混合された合体小滴を2つの混合小滴に分離するステップと、
新たに合体小滴を形成するために、2つの混合小滴のうちの少なくとも一方を追加的な希釈小滴に併合するステップと、
新たな合体小滴を混合するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項88】
請求項85に記載の方法であって、
合体小滴を混合した後、合体小滴の近似的な混合比が所望の精度範囲内で所望の混合比に近づいたかどうか判断するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項89】
請求項88に記載の方法であって、
判断するステップは、
合体小滴の低減された濃度を示す値を測定し、
測定された値を所望する混合比を示す事前設定されたポイント値と比較することを特徴とする方法。
【請求項90】
請求項88に記載の方法であって、
合体小滴の近似的な混合比が所望の精度範囲内で所望の混合比に近づいていない場合、合体小滴を新たな希釈小滴と併合して、所望の混合比により近い濃度を有する新たな合体小滴を形成するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項91】
所望の混合比を有する小滴を生成する方法であって、
(a)表面に形成された電極アレイを提供するステップと、
(b)初期濃度を有するサンプル小滴と希釈小滴を表面上に提供するステップと、
(c)アレイから電極対のシーケンスを動的に形成することにより、サンプル小滴を希釈小滴に併合するステップと、
電極対のそれぞれは、第1の電圧でバイアスされた選択された第1の電極と第1の電圧より低い第2の電圧でバイアスされた選択された第1の電極とを有し、
これにより、サンプル小滴および希釈小滴の一方または両方が電極対のシーケンスにより決定される経路に沿って活性化され、
(d)合体小滴の濃度をサンプル小滴の初期濃度以下に低減するために、合体小滴を混合するステップとを有し、
これにより、合体小滴の低減された濃度が近似的な混合比に相当することを特徴とする方法。
【請求項92】
請求項91に記載の方法であって、
混合ステップは、合体小滴を活性化するために、アレイから電極対の追加的なシーケンスを動的に形成することを特徴とする方法。
【請求項93】
所望の最終的混合比を有する小滴を生成する方法であって、
(a)第1の表面領域、第1の表面領域上に配設された第1の電極アレイ、および第1の電極アレイと実質的に同一平面上に配設された第1の導通部材を有する第1の混合ユニットにおいて、第1のサンプル小滴を第1の希釈小滴に混合して、所定の第1の中間混合比を有する第1の合体小滴を形成するステップと、
(b)第2の表面領域、第2の表面領域上に配設された第2の電極アレイ、および第2の電極アレイと実質的に同一平面上に配設された第2の導通部材を有する第2の混合ユニットにおいて、第2のサンプル小滴を第2の希釈小滴に混合して、所定の第2の中間混合比を有する第2の合体小滴を形成するステップと、
(c)第2の合体小滴を第1の混合ユニットに搬送するステップと、
(d)第1の混合ユニットにおいて、第1の合体小滴を第2の合体小滴に合体させ、所望の最終的混合比を有する第3の合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【請求項94】
所望の最終的混合比を有する小滴を生成する方法であって、
(a)第1の表面領域上に配設された第1の電極アレイを有する第1の混合ユニットにおいて、第1の電極の第1対の第1シーケンスを動的に形成することにより、第1のサンプル小滴を第1の希釈小滴に混合するステップと、
第1対のそれぞれは、第1の電圧でバイアスされた第1の駆動電極と第1の電圧より低い第2の電圧でバイアスされた第1の基準電極とを有し、
これにより、第1のサンプル小滴および第1の希釈小滴を活性化して、所望の第1の中間混合比を有する第1の合体小滴を形成し、
(b)第2の表面領域上に配設された第2の電極アレイを有する第2の混合ユニットにおいて、第2の電極の第2対の第2シーケンスを動的に形成することにより、第2のサンプル小滴を第2の希釈小滴に混合するステップと、
第2対のそれぞれは、第3の電圧でバイアスされた第2の駆動電極と第3の電圧より低い第4の電圧でバイアスされた第2の基準電極とを有し、
これにより、第2のサンプル小滴および第2の希釈小滴を活性化して、所望の第2の中間混合比を有する第2の合体小滴を形成し、
(c)第2の合体小滴を第1の混合ユニットに搬送するステップと、
(d)第1の混合ユニットにおいて、第1の合体小滴を第2の合体小滴に合体させ、所望の最終的混合比を有する第3の合体小滴を形成することを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図11】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図19B】
【図19E】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図11】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図19B】
【図19E】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2006−500596(P2006−500596A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541435(P2004−541435)
【出願日】平成15年4月24日(2003.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/012754
【国際公開番号】WO2004/030820
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(502347087)デューク・ユニバーシティ (19)
【氏名又は名称原語表記】DUKE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年4月24日(2003.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/012754
【国際公開番号】WO2004/030820
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(502347087)デューク・ユニバーシティ (19)
【氏名又は名称原語表記】DUKE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
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