説明

エレクトロフュージョン継手製造用の金型

【課題】金型設置作業に伴い、ターミナルピンと電熱線の接続部に断線などの破損が生じることを防止できるとともに、作業効率を向上させることが可能なエレクトロフュージョン継手製造用の金型を提供する。
【解決手段】棒状の内型16と筒状の外型17とを備えて金型Bを構成する。また、ピン挿入孔16cを備えるとともに他端16b側に係合部18を備えて内型16を形成し、射出空間形成部19よりも他端17b側に位置する内孔部分に係合受部20を備えて外型17を形成する。そして、ピン挿入孔16cにターミナルピン3を挿入して内型16を設置し、係合部18と係合受部20を係合させて外型17を設置した状態で、ターミナルピン3と内型16と外型17の互いの軸線O1、O2、O5が同軸上に配され、且つ内型16の外周面と外型17の内周面との間に射出空間Hが形成されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロフュージョン継手製造用の金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下水道管、ガス管等には、耐久性、耐食性、可撓性(柔軟性、耐震性)に優れる上、軽量で作業性(施工性)に優れることからポリエチレン管(合成樹脂管)が多用されている。また、この種の管の接合手段(ソケット、エルボ、チーズ、サドルなどの継手)として、高価な工具を用いることなく簡便に接合作業を行うことができ、接合品質にばらつきがなく信頼性が高いなどの多くの利点を有することから、EF継手(エレクロトフュージョン継手)が多用されている。
【0003】
このEF継手は、ポリエチレン等の合成樹脂を用いて形成され、継手部の内周面側に電熱線をらせん状に埋設して形成されている。また、EF継手には、継手部の外周面から突出する一対のターミナルピン(端子ピン)が一体に設けられ、これらターミナルピンに電熱線の両端部をそれぞれ接続して形成されている。さらに、ターミナルピンを保護するとともにコントローラ(通電装置)のケーブルコネクタを取り付けるためのコネクタ取付部(ボス)を一体に設けて形成されている。
【0004】
一方、このようなEF継手を製造する際には、電熱線を略円柱棒状のコアにらせん状に巻き付け、電熱線の端部にターミナルピンを接続する。そして、電熱線、ターミナルピンを取り付けたコアを金型内にセットして型締めし、合成樹脂を金型内に射出することにより、EF継手が製造される。
【0005】
このとき、例えば図6に示すように、コネクタ取付部は、ピン挿入孔1aを備えた内型1と、内型1の外周面との間に射出空間Hを形成する外型2とを一体化した金型Aを用い、ピン挿入孔1aにターミナルピン3を挿入して金型Aを設置し、射出空間Hに合成樹脂を射出して形成している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−1371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、コネクタ取付部を形成するための従来の金型Aにおいては、ピン挿入孔1aを備えた内型1と射出空間Hを形成するための外型2とが一体形成されているため、ピン挿入孔1aにターミナルピン3を挿入して金型Aを設置する際に、内型1とターミナルピン3を視認することができない。
【0008】
このため、金型設置時に、内型1(金型A)とターミナルピン3の軸線O1、O2がずれていると、内型1がターミナルピン3の頂端3aに接触したり、ピン挿入孔1aに無理にターミナルピン3が挿入されるなどして、ターミナルピン3と電熱線4の接続部5に外力(金型Aの自重や無理に挿入した際の外力)が作用し、このターミナルピン3と電熱線4の接続部5に断線などの破損が生じるおそれがあった。
【0009】
また、内型1とターミナルピン3を視認することができないことにより、作業効率の低下を招くという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0011】
請求項1記載のエレクトロフュージョン継手製造用の金型は、合成樹脂に電熱線を埋設して形成される継手部の外周面から外側に突出するターミナルピンの軸線を中心として、前記ターミナルピンを囲繞するように前記外周面から外側に突出する筒状のコネクタ取付部を射出成形で形成するためのエレクトロフュージョン継手製造用の金型であって、棒状の内型と筒状の外型とを備え、前記内型は、一端から他端側に向けて軸線上に穿設され、前記ターミナルピンを挿入するピン挿入孔を備えるとともに、他端側に係合部を備えて形成され、前記外型は、軸線方向一端から他端側までの前記コネクタ取付部の長さに応じた部分が射出空間形成部とされ、前記射出空間形成部よりも前記外型の他端側に位置する内孔部分に係合受部を備えて形成され、前記ピン挿入孔に前記ターミナルピンを挿入して前記内型を設置し、該内型を前記外型の一端側から内孔に挿入し前記係合部と前記係合受部を係合させて前記外型を設置した状態で、前記ターミナルピンと前記内型と前記外型の互いの軸線が同軸上に配され、且つ前記内型の外周面と前記外型の射出空間形成部の内周面との間に前記合成樹脂を射出する射出空間が形成されるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載のエレクトロフュージョン継手製造用の金型は、請求項1記載のエレクトロフュージョン継手製造用の金型において、前記内型の係合部は、前記内型の軸線方向一端側から他端に向かうに従い漸次外径が小となるテーパー部を備えて形成され、前記外型の係合受部は、前記テーパー部と同形同大に形成されて前記テーパー部が係合するテーパー受部を備えて形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載のエレクトロフュージョン継手製造用の金型は、合成樹脂に電熱線を埋設して形成される継手部の外周面から外側に突出するターミナルピンの軸線を中心として、前記ターミナルピンを囲繞するように前記外周面から外側に突出する筒状のコネクタ取付部を射出成形で形成するためのエレクトロフュージョン継手製造用の金型であって、棒状の内型と一方の開口を閉塞して形成された略筒状の外型とを備え、前記内型は、一端から他端側に向けて軸線上に穿設され、前記ターミナルピンを挿入するピン挿入孔を備えるとともに、他端から一端側に向けて軸線上に穿設され、他端から一端側に向かうに従い漸次内径が小となるテーパー状の係合受部を備えて形成され、前記外型は、前記一方の開口を閉塞する閉塞部に繋がって前記外型の軸線方向一端側に向けて軸線上に突設され、前記閉塞部に繋がる一端部から他端部に向かうに従い漸次外径が小となるテーパー状の係合部を備えて形成され、前記ピン挿入孔に前記ターミナルピンを挿入して前記内型を設置し、該内型を前記外型の一端側から内孔に挿入し前記係合部と前記係合受部を係合させて前記外型を設置した状態で、前記ターミナルピンと前記内型と前記外型の互いの軸線が同軸上に配され、且つ前記内型の外周面と前記外型の内周面との間に前記合成樹脂を射出する射出空間が形成されるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載のエレクトロフュージョン継手製造用の金型においては、コネクタ取付部を形成するための金型が着脱可能な(分離可能な)一対の内型と外型を備えて構成されているため、内型とターミナルピンの相対位置を視認しながらターミナルピンをピン挿入孔に挿入することができ、容易に内型を設置できる。また、設置した内型を外型の一端側から内孔に挿入し、内型の係合部と係合受部を係合させることにより外型を設置することができる。このとき、外型が筒状に形成されているため、外型の内孔に挿入した内型(内型の他端(係合部))を外型の他端側の開口部から視認することができ、外型と内型の双方を視認しながら係合部と係合受部を係合させて容易に外型を設置することができる。
【0015】
そして、このようにターミナルピン、内型、外型を視認しながら金型を設置できることで、金型設置時に、内型がターミナルピンの頂端に接触したり、ピン挿入孔に無理にターミナルピンが挿入されるなどしてターミナルピンと電熱線の接続部に外力が作用し、ターミナルピンと電熱線の接続部に断線などの破損が生じることを防止することが可能になる。また、ターミナルピン、内型、外型を視認しながら金型を設置できることによって、従来と比較し、金型設置作業の効率を向上させることが可能になる。
【0016】
さらに、内型と外型の係合部と係合受部を係合させるとともに、ターミナルピンと内型と外型の互いの軸線が同軸上に配され、且つ内型の外周面と外型の射出空間形成部の内周面との間に合成樹脂を射出する射出空間が形成されるため、精度よくコネクタ取付部ひいてはエレクトロフュージョン継手を形成することが可能になる。
【0017】
請求項2記載のエレクトロフュージョン継手製造用の金型においては、内型の係合部(他端側)にテーパー部が設けられていることによって、内型の他端の径が小さくなり、外型の内孔に挿入しやすくすることが可能になる。また、内型と外型の軸線がずれ、外型の内周面に内型の他端側が接触した場合であっても、内型の係合部にテーパー部を設けることで内型が外型の内周面に引っかかることがなく、テーパー部によって内型と外型の軸線を一致させるように滑らかに案内させることが可能になる。これにより、より確実に、ターミナルピンと電熱線の接続部に断線などの破損が生じることを防止することが可能になり、また、金型設置作業の効率を向上させることが可能になる。
【0018】
請求項3記載のエレクトロフュージョン継手製造用の金型においては、コネクタ取付部を形成するための金型が着脱可能(分離可能)に形成された一対の内型と外型を備えて構成されているため、内型とターミナルピンの相対位置を視認しながらターミナルピンをピン挿入孔に挿入することができ、容易に内型を設置できる。また、設置した内型を外型の一端側から内孔に挿入し、外型の係合部と内型の係合受部を係合させることにより外型を設置することができる。このとき、外型の係合部がテーパー状に形成されて他端部の径が小さく、内型の係合受部がテーパー状に形成されて他端の開口が大きくなっているため、容易に外型の係合部を内型の係合受部に挿入して係合させることが可能になる。また、内型の係合受部の内周面に外型の係合部の他端部が接触した場合であっても、内型と外型の軸線を一致させるように滑らかに案内させて係合することが可能になる。
【0019】
そして、このようにターミナルピン、内型、外型を視認しながら金型を設置できることで、金型設置時に、内型がターミナルピンの頂端に接触したり、ピン挿入孔に無理にターミナルピンが挿入されるなどしてターミナルピンと電熱線の接続部に外力が作用し、ターミナルピンと電熱線の接続部に断線などの破損が生じることを防止することが可能になる。また、ターミナルピン、内型、外型を視認しながら金型を設置できることによって、従来と比較し、金型設置作業の効率を向上させることが可能になる。
【0020】
さらに、内型と外型の係合部と係合受部を係合させるとともに、ターミナルピンと内型と外型の互いの軸線が同軸上に配され、且つ内型の外周面と外型の射出空間形成部の内周面との間に合成樹脂を射出する射出空間が形成されるため、精度よくコネクタ取付部ひいてはエレクトロフュージョン継手を形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】エレクトロフュージョン継手を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るエレクトロフュージョン継手製造用の金型を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るエレクトロフュージョン継手製造用の金型の変形例を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るエレクトロフュージョン継手製造用の金型の変形例を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るエレクトロフュージョン継手製造用の金型を示す図である。
【図6】従来のエレクトロフュージョン継手製造用の金型を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1及び図2を参照し、本発明の第1実施形態に係るエレクトロフュージョン継手製造用の金型について説明する。本実施形態は、ターミナルピンと電熱線の接続部に断線などの破損が生じることを防止し、効率的にコネクタ取付部ひいてはエレクトロフュージョン継手を形成(製造)することを可能にするエレクトロフュージョン継手製造用の金型に関するものである。
【0023】
図1に示すように、本実施形態において金型の製造対象となるEF継手(エレクトロフュージョン継手)10は、ソケットであり、ポリエチレン等の合成樹脂を用いて形成されている。また、このEF継手10は、ニクロム線等の電熱線4を内周面11a側に埋設して形成された円筒状の継手部11と、この継手部11の軸線O3方向両端部側の外周面11bにそれぞれ設けられ、コントローラのケーブルコネクタを取り付けて電熱線4に電流を流すためのターミナル部12とを備えて構成されている。
【0024】
一対のターミナル部12はそれぞれ、継手部11の外周面11bから軸線O3直交方向(径方向)外側に突出して設けられたターミナルピン3と、ターミナルピン3の軸線O2を中心として、ターミナルピン3を囲繞するように継手部11の外周面11bから軸線O3直交方向外側に突出するコネクタ取付部13とを備えて構成されている。また、コネクタ取付部13は、円筒状に形成され、ターミナルピン3と互いの軸線O2、O4が同軸上に配されるように、継手部11の外周面11bから径方向外側に突出して一体形成されている。そして、各ターミナルピン3に電熱線4の端部が接続されている。
【0025】
一方、上記構成からなるEF継手10を製造する際には、図1及び図2に示すように、略円柱棒状のコア14の外周面にポリエチレンやポリブテン等で絶縁被覆した電熱線4をらせん状に巻き付け、電熱線4の両端部にそれぞれターミナルピン3を接続する。そして、コネクタ取付部13(ターミナル部12)を形成するための金型Bを設置するとともに、電熱線4、ターミナルピン3を取り付けたコア14を内包するように継手部形成用金型15を設置して型締めする。
【0026】
そして、コネクタ取付部13を形成するための金型Bは、図2に示すように、着脱可能(分離可能)に形成された略円柱棒状の内型16と略円筒状の外型17とを備えて構成されている。
【0027】
内型16は、一端16aから他端16b側に向けて軸線O1上に穿設されたピン挿入孔16cを備えるとともに、他端16b側に外型17に着脱可能に係合させるための係合部18を備えて形成されている。また、係合部18は、内型16の軸線O1方向一端16a側から他端16bに向かうに従い漸次外径が小となるテーパー部18aを備えて形成されている。
【0028】
一方、外型17は、内型16と軸線O1、O5方向の長さを同寸法にして形成されている。また、この外型17は、軸線O5方向一端17aから他端17bまでの前述したコネクタ取付部13の長さに応じた部分が射出空間形成部19とされ、射出空間形成部19よりも外型17の他端17b側に位置する内孔部分に係合受部20を備えて形成されている。そして、射出空間形成部19の内孔は、内径が軸線O5方向に一定で形成され、コネクタ取付部13の外径と同寸法で形成されている。
【0029】
係合受部20は、内型16の係合部18と軸線O1、O5方向の長さを同寸法にして形成されている。また、係合受部20は、射出空間形成部19の内孔に連設され、内型16の一端16a側の外径と略同等の内径で形成されるとともに内径を軸線O5方向に一定にして形成された定径部20aと、定径部20aに連設され、定径部20a側(外型17の一端17a側)から軸線O5方向他端17bに向かうに従い漸次その内径が小となるテーパー受部20bとを備えて形成されている。そして、テーパー受部20bは、内型16の係合部18のテーパー部18aと同形同大で形成されている。
【0030】
そして、本実施形態のコネクタ取付部13を形成するための金型Bを設置する際には、図2(及び図1)に示すように、はじめに、電熱線4の端部に接続して設けられたターミナルピン3をピン挿入孔16cに挿入して内型16を設置する。このとき、従来の内型1と外型2を一体形成した金型Aを用いる場合と比較し、分離した内型16のみを設置するため、内型16とターミナルピン3の相対位置を視認しながらピン挿入孔16cにターミナルピン3を挿入して、容易に内型16の設置作業が行える。
【0031】
これにより、金型設置作業時に、内型16がターミナルピン3の頂端3aに接触したり、ピン挿入孔16cに無理にターミナルピン3が挿入されるなどしてターミナルピン3と電熱線4の接続部5に外力が作用することがない。このため、ターミナルピン3と電熱線4の接続部5に断線などの破損が生じることを防止して内型16の設置作業が行える。
【0032】
次に、設置した内型16を一端17a側から内孔に挿入するようにして外型17を設置する。このとき、外型17が円筒状に形成され、外型17の内孔に挿入した内型16(内型16の他端16b(係合部18))を外型17の他端17b側の開口部21から臨むことができる。このため、内型16と外型17の双方を視認しながら係合部18と係合受部20とを係合させて、容易に外型17の設置作業が行える。
【0033】
また、係合部18(他端16b側)にテーパー部18aが設けられていることにより、内型16の他端16b側の径が小さくなっている。このため、係合受部20に内型16の他端16b側が挿入しやすくなっており、この点からも容易に外型17の設置作業が行えることになる。さらに、内型16と外型17の軸線O1、O5がずれ、外型17の内周面に内型16の他端16b側が接触した場合であっても、係合部18にテーパー部18aを設けて係合部18の外周面がテーパー状に形成されているため、内型16が外型17の内周面に引っかかることがない。これにより、内型16と外型17の軸線O1、O5がずれた場合であっても、テーパー部18aにより内型16と外型17の軸線O1、O5を一致させるように滑らかに案内されて、係合部18と係合受部20が係合することになる。
【0034】
このように係合部18と係合受部20が係合するとともに、ターミナルピン3と内型16と外型17の互いの軸線O1、O2、O5が同軸上に配され、且つ内型16の外周面と外型17の射出空間形成部19の内周面との間に合成樹脂を射出する射出空間Hが精度よく形成される。
【0035】
そして、上記のようにコネクタ取付部13を形成するための金型Bと継手部形成用金型15を設置した後に、各金型B、15の射出空間Hに溶融した合成樹脂を射出することにより、電熱線4が継手内周面11a側に埋設された継手部11と、この継手部11の軸線O3方向両端部側の継手外周面11bにそれぞれ精度よく設けられたコネクタ取付部13(ターミナル部12)とを備えるEF継手10が製造される。
なお、内型16の係合部18と外型17の係合受部20には、係合部18と係合受部20を係合させて内型16と外型17を一体にした状態で連通する孔18cが設けられており、この孔18cに挿入して操作棒を操作することにより、内型16と外型17を容易に分離させることが可能である(図2参照)。
【0036】
したがって、本実施形態のEF継手製造用の金型Bにおいては、着脱可能(分離可能)に形成された一対の内型16と外型17を備えて構成されているため、内型16とターミナルピン3の相対位置を視認しながらターミナルピン3をピン挿入孔16cに挿入することができ、容易に内型16を設置できる。また、設置した内型16を外型17の一端17a側から内孔に挿入し、係合部18と係合受部20を係合させることにより、外型17を設置することができる。このとき、外型17が筒状に形成されているため、外型17の内孔に挿入した内型16を外型17の他端17b側の開口部21から視認することができ、内型16と外型17の双方を視認しながら係合部18と係合受部20を係合させて、容易に外型17を設置することができる。
【0037】
また、内型16の係合部18にテーパー部18aが設けられていることによって、内型16の他端16bの径が小さくなり、外型17の内孔に挿入しやすくすることが可能になる。また、内型16と外型17の軸線O1、O5がずれ、外型17の内周面に内型16の他端16b側が接触した場合であっても、係合部18にテーパー部18aを設けることで内型16が外型17の内周面に引っかかることがなく、テーパー部18aによって内型16と外型17の軸線O1、O5を一致させるように滑らかに案内させることが可能になる。
【0038】
これにより、金型設置時に、内型16がターミナルピン3の頂端3aに接触したり、ピン挿入孔16cに無理にターミナルピン3が挿入されるなどしてターミナルピン3と電熱線4の接続部5に外力が作用し、ターミナルピン3と電熱線4の接続部5に断線などの破損が生じることを防止することが可能になる。また、ターミナルピン3と内型16を視認しながら内型16を設置でき、さらに内型16と外型17の双方を視認しながら外型17を設置できることにより、従来と比較し、金型設置作業の効率を向上させることが可能になる。
【0039】
さらに、内型16の係合部18と外型17の係合受部20を係合させるとともに、ターミナルピン3と内型16と外型17の互いの軸線O1、O2、O5が同軸上に配され、且つ内型16の外周面と外型17の射出空間形成部19の内周面との間に合成樹脂を射出する射出空間Hが形成されるため、精度よくコネクタ取付部13ひいてはEF継手10を形成することが可能になる。
【0040】
よって、本実施形態のEF継手製造用の金型Bによれば、ターミナルピン3と電熱線4の接続部5に電熱線4の断線などの破損が生じることがなく、精度よくターミナル部12(コネクタ取付部13)を形成することができるため、信頼性の高いEF継手10を製造、提供することが可能になる。
【0041】
以上、本発明に係るエレクトロフュージョン継手製造用の金型の第1実施形態について説明したが、本発明は上記の第1実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、エレクトロフュージョン継手(EF継手)10がソケットであるものとしたが、勿論、本発明に係るエレクトロフュージョン継手は、エルボ、チーズ、サドルなどの継手でもよく、ソケット以外の継手であっても本実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0042】
また、例えば、図3に示すように、内型16が、内型16の係合部18を外型17の係合受部20に係合させた状態で外型17の他端17bに形成された開口部21から外型17の軸線O5方向外側に突出する円柱棒状のガイド部22を他端16b側に備えて形成されていてもよい。そして、この場合には、外型17の係合受部20の定径部20aにガイド部22を挿入し、さらに他端17bの開口部21を通じて軸線O5方向外側に挿通させることで、内型16を外型17の内孔に挿入しやすくすることが可能になり、より容易にターミナルピン3と電熱線4の接続部5に外力を作用させることなく係合部18と係合受部20を係合させることが可能になる。これにより、さらに確実に、ターミナルピン3と電熱線4の接続部5に断線などの破損が生じることを防止することが可能になるとともに、金型設置作業の効率を向上させることが可能になる。
【0043】
また、外型17の内周面に内型16の他端16b側が接触する場合には、ガイド部22の先端(内型16の他端16b)を外型17の内周面に接触させることができるため、内型16が外型17の内周面に引っかかることがなく、テーパー部18aとテーパー受部20bに加え、このガイド部22によって内型16と外型17の軸線O1、O5を一致させるように滑らかに案内させることが可能になる。さらに、内型16の係合部18を外型17の係合受部20に係合させた状態で、外型17の他端17b側の開口部21からガイド部22が外型17の軸線O5方向外側に突出するため、このガイド部22によって内型16と外型17を安定した状態で一体化させることも可能になる。
【0044】
また、ガイド部22の先端(内型16の他端16b)を、図3に示すように球面状に形成することが望ましい。この場合には、ガイド部22の先端が外型17の内孔内で引っかかるようなことがなく、さらに確実に、電熱線4の断線などの破損が生じることを防止することが可能になるとともに、効率的に金型設置作業を行うことが可能になる。また、内型16の外周面と外型17の射出空間形成部19の内周面の間に射出空間Hを精度よく形成することが可能になる。なお、ガイド部22の先端を、内型16の一端16a側から他端16b(先端)に向かうに従い漸次その外径が小となるテーパー状に形成してもよく、この場合においても球面状に形成した場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0045】
また、本実施形態では、外型17の係合受部20が定径部20aとテーパー受部20bを備えて形成され、この係合受部20に係合する内型16の係合部18が、定径部20aに係合する部分18bと、テーパー受部20bに係合するテーパー部18aとを備えて形成されているものとした。これに対し、例えば図4に示すように、定径部20aに係合する内型18の部分18bを一端16a側から他端16b側(テーパー部18a側)に向かうに従い漸次その外径が小となるテーパー状にし、内型16の係合部18全体をテーパー部として内型16を傘状に形成し、この傘状の内型16の係合部18が係合する外型17の定径部20aをテーパー状にし、外型17の係合受部20全体をテーパー受部としてもよい。
【0046】
この場合には、本実施形態のように外型17の射出空間形成部19と係合受部20の境界部分の段部23を無くすことが可能になる(図2及び図3参照)。そして、このようにすることで係合受部20の開口を大きくすることができ、係合受部20に係合部18を挿入しやすくすることが可能になる。また、外型17の係合受部20全体をテーパー受部にすることで、外型17の射出空間形成部19と係合受部20の内周面を滑らかに繋ぐことができ、外型17の内周面に内型16の他端16b側が接触した場合であっても、内型16が外型17の内周面に引っかかることがなく、テーパー部18とテーパー受部20によって内型16と外型17の軸線O1、O5を一致させるように滑らかに案内させることが可能になる。これにより、さらに確実に、ターミナルピン3と電熱線4の接続部5に断線などの破損が生じることを防止することが可能になるとともに、金型設置作業の効率を向上させることが可能になる。
【0047】
次に、図5を参照し、本発明の第2実施形態に係るエレクトロフュージョン継手製造用の金型について説明する。本実施形態は、第1実施形態と同様、着脱可能に形成された一対の内型と外型を備えて構成した金型に関するものである。よって、第1実施形態と同様の構成に対しては、その詳細な説明を省略する。
【0048】
図5に示すように、本実施形態の内型30は、第1実施形態と同様、略円柱棒状に形成され、一端30aから他端30b側に向けて軸線O1上に穿設されたピン挿入孔30cを備えて形成されている。
【0049】
一方、本実施形態では、内型30が、他端30bから一端30a側に向けて軸線O1上に穿設され、他端30bから一端30a側に向かうに従い漸次内径が小となるテーパー状の係合受部31を備えて形成されている。さらに、本実施形態の内型30においては、他端30b側に、内型30の径方向外側に突出するとともに周方向に延びて環状に繋がり、他端30bから一端30a側に向かうに従い漸次外径が大となるテーパー状のガイド部32を備えて形成されている。このガイド部32は、一端30a側端部位置での最大径が外型33の内径よりも僅かに小さい寸法で形成されている。
【0050】
外型33は、一方の開口(他端33b側の開口)を閉塞した略筒状で形成されている。また、この外型33は、一方の開口を閉塞する閉塞部34に繋がって外型33の軸線O5方向一端33a側に向けて軸線O5上に突設され、閉塞部34に繋がる一端部から他端部に向かうに従い漸次外径が小となるテーパー状の係合部35を備えて形成されている。この係合部35は、内型30の係合受部31と同形同大で形成されている。
【0051】
そして、図5(及び図1)に示すように、コネクタ取付部13を形成するための本実施形態の金型Cを設置する際には、電熱線4の端部に接続して設けられたターミナルピン3をピン挿入孔30cに挿入して内型30を設置する。このとき、第1実施形態と同様に、分離した内型30のみを設置するため、内型30とターミナルピン3の相対位置を視認しながらピン挿入孔30cにターミナルピン3を挿入して、容易に内型30の設置作業が行える。
【0052】
これにより、金型設置作業時に、内型30がターミナルピン3の頂端3aに接触したり、ピン挿入孔30cに無理にターミナルピン3が挿入されるなどしてターミナルピン3と電熱線4の接続部5に外力が作用することがない。このため、ターミナルピン3と電熱線4の接続部5に断線などの破損が生じることを防止して内型30の設置作業が行える。
【0053】
次に、設置した内型30を一端33a側から内孔に挿入して外型33を設置する。このとき、外型33の係合部35がテーパー状に形成されて他端部の径が小さく、内型30の係合受部31がテーパー状に形成されて他端30bの開口が大きくなっているため、容易に外型33の係合部35と内型30の係合受部31が係合する。また、内型30と外型33の軸線O1、O5がずれ、内型30の係合受部31の内周面に外型33の係合部35の他端部が接触した場合であっても、係合部35と係合受部31がテーパー状に形成されているため、係合部35が係合受部31の内周面に引っかかることがない。これにより、内型30と外型33の軸線O1、O5がずれた場合であっても、内型30と外型33の軸線O1、O5を一致させるように滑らかに案内されて、係合部35と係合受部31が係合することになる。
【0054】
さらに、ガイド部32によっても内型30と外型33の軸線O1、O5を一致させるように滑らかに案内されて、係合部35と係合受部31が係合することになる。これにより、係合部35と係合受部31とを係合させて容易に外型33の設置作業が行える。
【0055】
そして、このように係合部35と係合受部31が係合するとともに、ターミナルピン3と内型30と外型35の互いの軸線O1、O2、O5が同軸上に配され、且つ内型30の外周面と外型33の内周面の間に(内型30の外周面と外型33の内周面とガイド部材32の端面とによって)合成樹脂を射出する射出空間Hが精度よく形成される。
【0056】
したがって、本実施形態のEF継手製造用の金型Cにおいては、第1実施形態と同様、着脱可能に形成された一対の内型30と外型33を備えて構成されているため、内型30とターミナルピン3の相対位置を視認しながらターミナルピン3をピン挿入孔30cに挿入することができ、容易に内型30を設置できる。また、設置した内型30を外型33の一端33a側から内孔に挿入し、外型33の係合部35と内型30の係合受部31を係合させることにより外型33を設置することができる。このとき、係合部35がテーパー状に形成されて他端部の径が小さく、係合受部31がテーパー状に形成されて一端30bの開口が大きくなっているため、容易に係合部35を係合受部31に挿入して係合させることが可能になる。また、内型30の係合受部31の内周面に外型33の係合部35の他端部が接触した場合であっても、内型30と外型33の軸線O1、O5を一致させるように滑らかに案内させて係合することが可能になる。
【0057】
また、内型30の他端30b側に径方向外側に突出して環状に繋がるテーパー状のガイド部32が設けられているため、このガイド部32によって内型30と外型33の軸線O1、O5を一致させるように滑らかに案内させて係合部35と係合受部31を係合することが可能になる。
【0058】
これにより、金型設置時にターミナルピン3と電熱線4の接続部5に断線などの破損が生じることを防止することが可能になる。また、ターミナルピン3と内型30を視認しながら内型30を設置でき、さらに、外型33の係合部35と内型30の係合受部31を係合させて容易に金型Cを設置することできるため、従来と比較し、金型設置作業の効率を向上させることが可能になる。
【0059】
さらに、係合部35と係合受部31を係合させるとともに、ターミナルピン3と内型30と外型33の互いの軸線O1、O2、O5が同軸上に配され、且つ内型30の外周面と外型33の内周面との間に合成樹脂を射出する射出空間Hが形成されるため、精度よくコネクタ取付部13ひいてはEF継手10を形成することが可能になる。
【0060】
よって、本実施形態のEF継手製造用の金型Cによれば、ターミナルピン3と電熱線4の接続部5に電熱線4の断線などの破損が生じることがなく、精度よくターミナル部12(コネクタ取付部13)を形成することができるため、信頼性の高いEF継手10を製造、提供することが可能になる。
【0061】
以上、本発明に係るエレクトロフュージョン継手製造用の金型の第2実施形態について説明したが、本発明は上記の第2実施形態に限定されるものではなく、第1実施形態の変更例を含め、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 従来の内型
1a ピン挿入孔
2 従来の外型
3 ターミナルピン
4 電熱線
5 接続部
10 EF継手(エレクトロフュージョン継手)
11 継手部
11a 内周面
11b 外周面
12 ターミナル部
13 コネクタ取付部
14 コア
15 継手部形成用金型
16 内型
16a 一端
16b 他端
16c ピン挿入孔
17 外型
17a 一端
17b 他端
18 係合部
18a テーパー部
18b 定径部に係合する部分
19 射出空間形成部
20 係合受部
20a 定径部
20b テーパー受部
21 開口部
22 ガイド部
23 段部
30 内型
30a 一端
30b 他端
31 係合受部
32 ガイド部
33 外型
33a 一端
33b 他端
34 閉塞部
35 係合部
A 従来の金型
B 金型
C 金型
H 射出空間
O1 内型の軸線
O2 ターミナルピンの軸線
O3 継手部の軸線
O4 コネクタ取付部の軸線
O5 外型の軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂に電熱線を埋設して形成される継手部の外周面から外側に突出するターミナルピンの軸線を中心として、前記ターミナルピンを囲繞するように前記外周面から外側に突出する筒状のコネクタ取付部を射出成形で形成するためのエレクトロフュージョン継手製造用の金型であって、
棒状の内型と筒状の外型とを備え、
前記内型は、一端から他端側に向けて軸線上に穿設され、前記ターミナルピンを挿入するピン挿入孔を備えるとともに、他端側に係合部を備えて形成され、
前記外型は、軸線方向一端から他端側までの前記コネクタ取付部の長さに応じた部分が射出空間形成部とされ、前記射出空間形成部よりも前記外型の他端側に位置する内孔部分に係合受部を備えて形成され、
前記ピン挿入孔に前記ターミナルピンを挿入して前記内型を設置し、該内型を前記外型の一端側から内孔に挿入し前記係合部と前記係合受部を係合させて前記外型を設置した状態で、前記ターミナルピンと前記内型と前記外型の互いの軸線が同軸上に配され、且つ前記内型の外周面と前記外型の射出空間形成部の内周面との間に前記合成樹脂を射出する射出空間が形成されるように構成されていることを特徴とするエレクトロフュージョン継手製造用の金型。
【請求項2】
請求項1記載のエレクトロフュージョン継手製造用の金型において、
前記内型の係合部は、前記内型の軸線方向一端側から他端に向かうに従い漸次外径が小となるテーパー部を備えて形成され、
前記外型の係合受部は、前記テーパー部と同形同大に形成されて前記テーパー部が係合するテーパー受部を備えて形成されていることを特徴とするエレクトロフュージョン継手製造用の金型。
【請求項3】
合成樹脂に電熱線を埋設して形成される継手部の外周面から外側に突出するターミナルピンの軸線を中心として、前記ターミナルピンを囲繞するように前記外周面から外側に突出する筒状のコネクタ取付部を射出成形で形成するためのエレクトロフュージョン継手製造用の金型であって、
棒状の内型と一方の開口を閉塞して形成された略筒状の外型とを備え、
前記内型は、一端から他端側に向けて軸線上に穿設され、前記ターミナルピンを挿入するピン挿入孔を備えるとともに、他端から一端側に向けて軸線上に穿設され、他端から一端側に向かうに従い漸次内径が小となるテーパー状の係合受部を備えて形成され、
前記外型は、前記一方の開口を閉塞する閉塞部に繋がって前記外型の軸線方向一端側に向けて軸線上に突設され、前記閉塞部に繋がる一端部から他端部に向かうに従い漸次外径が小となるテーパー状の係合部を備えて形成され、
前記ピン挿入孔に前記ターミナルピンを挿入して前記内型を設置し、該内型を前記外型の一端側から内孔に挿入し前記係合部と前記係合受部を係合させて前記外型を設置した状態で、前記ターミナルピンと前記内型と前記外型の互いの軸線が同軸上に配され、且つ前記内型の外周面と前記外型の内周面との間に前記合成樹脂を射出する射出空間が形成されるように構成されていることを特徴とするエレクトロフュージョン継手製造用の金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−167869(P2011−167869A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31757(P2010−31757)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】