説明

エレクトロルミネッセンス装置

エレクトロルミネッセンス(EL)装置は、基板(40)と、基板(40)の上部に、基板電極(20)と、対向電極(30)と、基板電極(20)と前記対向電極(30)との間に備えられた少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセンス(EL)積層構造(50)を有し、少なくとも1つの像担持体(200)は、EL装置(10)の外観に適切に影響を与える基板電極(20)において少なくとも一部が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板、基板の上部の基板電極、対向電極、及び基板電極と対向電極との間に備えられた少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセンス(EL)層を有するエレクトロルミネッセンス(EL)積層構造、を有するエレクトロルミネッセンス(EL)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な有機発光装置(OLED)は、ガラス基板と、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明な基板電極と、EL積層構造と、反射性対向電極とを有する。EL積層構造において生成された光は基板材料を通ることが可能であり、有機発光装置が左右方向に延在する均一な層構造を有するとき、有機発光装置は、全体的な発光フィールドにおいて実質的に均一な発光の特徴を有する。有機発光装置に特にオン状態にあるパターンを与えるためには、特にオン状態でパターンを生成する複数のパターン層を有する有機発光装置が知られている。
【0003】
米国特許第7,064,483B2明細書においては、基板面を有する基板、前記基板面に堆積される基板電極、少なくとも1つのEL(エレクトロルミネッセンス)層及び対向電極を有する有機発光ダイオードについて開示されている。更に、前記有機発光ダイオードにおいては、OLED装置の発光フィールドにおいてパターンを生成するように、ある構造を有する抵抗層が特徴である。残念ながら、それらの種類のOLEDは、オン状態で発光フィールドをパターニングするが、オフ状態でダークミラーとして現れる抵抗層を有する。更に、オン状態及びオフ状態の両方でのOLED装置の異なる外観の変化性は、前記抵抗層を使用するために、かなり限定される。特に、抵抗層の外観は、オフ状態におけるOLED装置のパターニング効果に繋がらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,064,483B2明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
故に、本発明の目的は、上記の短所を解消することを目的としている。特に、本発明の目的は、EL装置の外観において改善された変化性を有するEL装置について開示することである。更に、本発明の目的は、特にオフ状態についての設計及び光効果において改善されたフレキシビリティを有するEL装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、基板、基板の上部の基板電極、対向電極、及び基板電極と対向電極との間に備えられた少なくとも1つの有機EL層を有するEL積層構造、を有するEL装置であって、少なくとも1つの像担持体が、EL装置の外観に適切に影響を与えるように、基板電極上に少なくとも一部が備えられる、EL装置により達成される。上記目的はまた、本発明に従ったEL装置の製造方法により達成される。EL装置及びEL装置の製造方法の好適な実施形態については、従属請求項に記載されている。EL装置に関連して詳述する特徴及び詳細は、EL装置の製造方法にも適用することができ、その逆もまた真である。
【0007】
本発明については、装置の外観に適切に影響を与えるように、基板電極上に少なくとも一部が備えられている少なくとも1つの像担持体が開示されている。
【0008】
本発明の主な概念は、目的の本体として好適に実行され、基板電極の表面に適用される少なくとも1つの像担持体を用いることである。従って、本発明の概念は、別個の複数の領域にパターニング層を有する層システムに基づいていない。目的の本体の適用のために、好適には、像担持体に繋がる三次元の広がりにおいて、EL装置の外観における変化性は実質的には向上する。特に、EL装置の設計及び光効果におけるフレキシビリティは、EL装置のオン状態及びオフ状態の両方で向上する。
【0009】
有利であることに、像担持体は、平坦に広がった本体のフォイル及び/又はシートとして実施される。従って、像担持体は、その像担持体が基板電極の表面に適用される前に、表面の外観及び特定のパターンにおいて設計される及び影響されることが可能である。EL積層構造において生成される光は、基板電極及び基板材料のそれぞれを通ることにより、装置から出射する。像担持体が基板電極の表面に適用されたい発光フィールドの領域においては、装置の発光は影響されない。像担持体が基板電極の表面に適用される領域における発光は、像担持体により妨げられる。
【0010】
有利であることに、像担持体は、その表面に適用される及び/又はその像担持体の材料内に埋め込まれるあるパターン、好適には、1つ又はそれ以上の文字、シンボル、符号及び/又は画像を有する。一方では、像担持体は、基板電極の表面に適用される、像担持体の特定の輪郭のためのパターンを構成することが可能である。他方、像担持体は、その像担持体の表面においてあるパターンを有することが可能である。従って、前記文字、シンボル、符号及び/又は画像は、その像担持体自体の輪郭により、又は像担持体の表面外観における像により構成されることが可能である。好適には、その表面に適用される及び/又は像担持体の材料内に組み込まれる文字、シンボル、符号及び/又は画像は好適には、オフ状態でEL装置の外観に影響する。
【0011】
フォイルが、基板電極の表面に適用されることが可能であるポリプロピレンフォイル、ポリエチレンフォイル、ポリカーボネートフォイル等の合成フォイルであることが可能である。特に、前記材料は、積層処理を用いて基板電極の表面に積層されることが可能である。代替として又は付加的に、像担持体は、特に、像担持体が非自己接着挙動を特徴として有するときに、接着手段により基板電極の表面に適用されることが可能である。合成材料又は金属材料の次に、像担持体は、プラスチック、ガラス、セラミック、プリント回路基板、紙、木又は何れかの他の材料のフォイル又はシートを有することが可能である。一般に、像担持体は平坦で広がりのある特徴を有し、特定の材料に限定されるものではない。
【0012】
本発明のコンテキストでは、EL積層構造の概念は、基板と対向電極との間に形成される層全てを意味する。EL積層構造の一実施形態においては、基板と対向電極との間に形成される少なくとも1つの発光有機EL層を有する。他の実施形態においては、その積層構造は。基板と対向電極との間に形成される複数の層を有することが可能である。それらの複数の層は、1つ又はそれ以上の正孔輸送層、電子阻止層、電子輸送等、正孔阻止層、発光層、又は複数の有機層及び無機層の組み合わせ等の複数の有機層であることが可能である。無機層は、積層構造及び/又は電荷注入層における2つ又はそれ以上の発光層の場合の追加の電極であることが可能である。好適な実施形態においては、基板電極及び/又は対向電極は、ITO、アルミニウム、銀、ドープされたZnO又は酸化物層のうちの少なくとも1つを有する。
【0013】
本発明のコンテキストでは、基板の概念は、EL装置の異なる層が堆積されるベース材料を意味する。通常、基板は透明であり、ガラスから成る。通常、基板は、ガラスから基板電極への移動可能な原子又はイオンの拡散を抑制するように、SiO又はSiOのアンダーコーティングを任意に有する透明なITO(Indium Tin Oxide)を有する。ITO電極を有するガラス基板については、ITOは通常、陽極であるが、特別な場合には、そのITO電極は陰極として用いられることも可能である。一部の場合には、通常、約8nm乃至15nmの厚さを有する薄いAg又はAu層が、基板電極として単独に、又はITOと組み合わされて用いられる。
【0014】
金属フォイルが基板として用いられる場合、その金属フォイルは基板であって、陽極又は陰極の役割も果たす。“上部の”の標記法は、一連の列挙された層の上部の、を意味する。この表記法は明示的に、互いの上部として表される層間の更なる層の可能性を有する。例えば、基板電極と基板との間に備えられた、光取り出しを改善する付加的な光学層が存在することが可能である。
【0015】
本発明のコンテキストでは、対向電極の概念は、基板から離れた電極を意味する。対向電極は通常、非透明であり、その電極は反射性であり、その厚さは典型的には、Alについては100nmであり、Agについては100nm乃至200nmの範囲内にあるように、十分な厚さのAl又はAgの層から成る。その対向電極は通常、陰極であるが、陽極としてバイアスされることも可能である。トップエミッション方式の又は透過性EL装置については、対向電極は透明である必要がある。透明な対向電極は、上記の他の層の上部に堆積された約5nmの厚さを有する薄いAg又はAl層若しくはITO層から成る。
【0016】
本発明のコンテキストでは、透明な基板、透明な基板電極及び通常反射性であり、非透明な対向電極を有する、基板を透過して光を発するEL装置は“ボトムエミッティング”と呼ばれる。
【0017】
更なる電極を有するEL装置の場合には、特定の実施形態においては、内部電極が陰極又は陽極として駆動されるとき、基板及び対向電極の両方は、両方共陽極又は両方共陰極であり得る。更に、本発明のコンテキストでは、非透明は基板電極及び透明な対向電極の組み合わせを有する、対向電極を透過して光を発するEL装置は“トップエミッティング”と呼ばれる。
【0018】
本発明のコンテキストでは、層、基板又は電極は、可視域における光の透過性が50%以上であり、残りの部分が吸収又は反射される場合には、透明であるといわれる。更に、本発明のコンテキストでは、層、基板又は電極は、可視域における光の透過率が10%乃至50%の範囲内にあり、残りの部分が吸収又は反射される場合には、半透明であるといわれる。更に、本発明のコンテキストでは、光が450nm乃至650nmの範囲内の波長を有するとき、光は可視光と呼ばれる。本発明のコンテキストでは、光がEL装置の有機EL層より発せられるとき、光は人口光と呼ばれる。
【0019】
更に、本発明のコンテキストでは、EL装置の層、コネクタ又は構成要素は、その電気抵抗が100000Ωより小さい場合に、導電性であると呼ばれる。本発明のコンテキストでは、受動電子構成要素には、抵抗、コンデンサ及び誘導体がある。更に、本発明のコンテキストでは、能動電子構成要素には、ダイオード、トランジスタ及び全ての種類の集積回路がある。
【0020】
本発明のコンテキストでは、EL装置の層、基板、電極又は構成要素は、界面に入射する光が反射法則に従って戻る場合、反射性と呼ばれ、巨視的な入射角は巨視的な反射角に等しい。また、用語、鏡面反射が、この場合に用いられる。更に、本発明のコンテキストでは、EL装置の層、基板、電極又は構成要素は、それらに入射する光が反射法則に従って戻らない場合には、散乱と呼ばれ、巨視的な入射角は巨視的な戻り光角に等しくない。また、複数の戻り光角の分布が存在する。散乱に代えて、用語、拡散も用いられる。
【0021】
他の実施形態に従って、像担持体が、好適には、接着剤を有する接着手段により基板電極に取り付けられる。基板電極の上部に前記像担持体を付ける接着剤を用いることによる単純で容易な製造方法が提供される。
【0022】
一般に、接着手段は、像担持体と基板電極との間のオプティカルコンタクトを備えるように、光透過性接着手段を構成して、高屈折率の特徴を有し、好適には、基板の屈折率に少なくとも適合する。高光透過性を有する接着剤を用いることにより、基板と像担持体との間の光学的遷移は最適化される。好適には、接着剤の屈折率は、基板材料の屈折率に少なくとも等しく、像担持体の屈折率に等しい又はそれより低い。ガラス基板の屈折率の典型的な値は1.51乃至1.54の範囲内にあり、基板電極の屈折率の典型的な値は1.9乃至2.0の範囲内にある。
【0023】
好適な実施形態においては、接着手段及び、特に、接着剤は無水である及び/又は接着剤には水がない。本発明のコンテキストでは、水がない及び/又は無水の概念は、EL装置の平均寿命中に水含有量による劣化が肉眼では観測されないことである。積層構造内に拡散する水による有機EL層の可視的劣化は、端部からの発光領域の収縮又はブラックスポットの成長の形をとり得る。水がない及び/又は無視の概念は、導電性接着剤自体に依存するばかりでなく、有機EL層を損傷することなく有機EL層により吸収されることが可能である。
【0024】
更に好適な実施形態においては、EL装置は、水分バリア及び/又は酸素バリアを有することが可能である。本発明のコンテキストでは、積層状構造への水分及び/又は酸素の有害な拡散を防止する層は水分バリア及び/又は酸素バリアと呼ばれる。発せられる光のかなりの寿命の短縮が観測され得る場合には、拡散は有害であることを意味する。最新技術に従った標準的なOLED装置は、100.000時間又はそれ以上のオーダーの保存期限を達成する。かなりの短縮は、約2倍又はそれ以上の短縮された寿命を表す。
【0025】
接着手段の特徴に関連する好適な実施形態に従って、接着手段は非電導性である。従って、接着手段は、EL積層構造及び対向電極に対して像担持体を電気的に絶縁する保護手段を構成する。有利であることに、接着手段は、像担持体の側面の領域におけるシャドウイングエッジの発生を回避するように、像担持体の側面を越えて広がり、好適には、像担持体は接着手段内に完全に埋め込まれる。
【0026】
像担持体は導電性又は非導電性であることが可能である。一方で、像担持体は導電性の特徴を有することが可能であり、保護手段は好適には、非導電性であり、EL装置は、適用される非導電性保護手段の領域において暗く現れる。
【0027】
EL装置の好適な実施形態に従って、EL積層構造及び対向電極は、像担持体及び基板電極の表面の両方に堆積される。好適には、像担持体と基板電極の表面との間の対向電極及びEL積層構造の遷移部分は、基板電極の表面に関して45°以下、好適には30°以下、より好適には20°以下、最も好適には10°以下の角度を有する平坦な形状を有する。なだらかな遷移部分により、そのことは、有機層及び対向電極における孔の原因になるシャドウイング効果はこの遷移領域には生じない。
【0028】
更なる実施形態に従って、EL装置は、電源に対する対向電極の電気的接触のための少なくとも1つの電気的接触手段を有することが可能であり、前記電気的接触手段は好適には導電性接着剤の特徴を有し、非導電性接着手段としての接着手段及び非導電性像担持体としての像担持体は電気的接触手段の下の領域を少なくとも完全にカバーする。
【0029】
前記電気的接触手段は好適には、導電性接着剤の特徴を有する。これは、短絡のリスクが最小である三次元接触スキーマが提供される有利点に繋がる。接触手段は、対向電極と基板電極との間の短絡のリスクを回避するように、像担持体の上に完全に付けられる必要がある。
【0030】
通常、導電性接着剤は、導電性フレーク又は粒子の形で導電性フィラーを有する有機接着剤から成る。接着剤の固化中、接着剤は移動してある収縮が起こり、そのことは、フィラー粒子の一部が下方の層内に入るようにし、基板電極と対向電極との間の短絡を生じ得る。これを回避するように、基板電極と対向電極との間に非導電性の保護手段を用いることは、即ち、保護手段が像担持体を完全に封入することは有利である。
【0031】
従って、全ての既知の導電性接着剤が、電源に対向電極を接触させるために用いられることが可能である。保護手段は、接触手段が短絡の原因になり得るために、接触手段が対向電極に付けられる全領域をカバーする必要があり、その保護手段は対向手段の領域より大きいことも可能である。対向電極と基板電極との間の直接的な接触を回避するように、像担持体を封入する保護手段は、接触手段が基板電極と電気的接触しないことを保証する厚さ及び/又は硬さを有することは好ましいことである。好適な実施形態においてこの目的を達成するように、保護手段は、非導電性接着剤及び非導電性像担持体を有することが可能である。
【0032】
像担持体は、所望の保護を達成するのに十分厚い且つ硬いことが可能である。本発明に従って、像担持体の材料は何れかの特定の材料に限定されるものではなく、その像担持体は、プラスチック、ガラス、セラミック、紙、木、繊維又は何れかの他の材料を有することが可能である。接着剤は、可視光に対して高透過性を有する速硬化性エポキシ接着剤、シリコーンゲル、ポリウレタン接着剤に基づくものであることが可能である。全ての指定材料が保護手段を構成し、基板電極の上部の像担持体の達成を実現する。
【0033】
接触手段として導電性接着剤を用いることにより達成される更なる有利点は、EL装置のための基板電極としての役割を果たす、1つのみの連続的な電極を有する基板が用いられることである。既知のOLEDにおいては、基板における電極は、2つの電気的に分離された領域に少なくとも構造化される。一の領域は基板電極としての役割を果たし、他の領域は対向電極に接続される。従って、基板電極及び対向電極の両方は、基板のへりに対して同一平面内に担われ、それらは標準的な手段で接触されることが可能である。
【0034】
二次元接触スキーマの不利点は、基板電極及び対向電極が接触のためにOLEDの周囲を共有する必要があることであり、故に、基板における電極は2つの分離された領域に分割される必要があり、即ち、基板電極及び第2の電極は、装置の短絡を回避するように、対向電極と接触する必要がある。この開示されている三次元接触は、二次元接触のこの重大な不利点を取り除く。
【0035】
有利であることに、像担持体は、光のアウトカップリングを改善するように、有機EL層により生成される光を散乱する散乱手段を有する。対向電極又は基板電極からEL積層構造への電荷注入は阻止されるために、保護手段が付けられる領域はEL装置の正常な動作において暗く現れることが示されている。
【0036】
従って、他の好適な実施形態においては、像担持体が、EL層により生成された光を散乱する少なくとも1つの散乱手段を有し、散乱手段がまた、保護手段内に埋め込まれることが可能であるという特徴を有する。この散乱手段は、基板により案内された人口光の一部を散乱する及び/又は反射する。これは、それらの領域を明るくするようにし、像担持体であって、特に、保護手段が備えられる。基板は導光体として機能するため、保護手段における散乱手段は、この光が散乱されて、EL装置の外部に反射されるようにする。
【0037】
散乱手段は、保護手段内に組み込まれた複数の顔料及び/又はフレークにより構成されることが可能である、この顔料及び/又はフレークは、例えば、アルミニウム、雲母効果の顔料、酸化チタン粒子、若しくはEL装置の人口光を散乱する及び/又は反射するとして当業者が知っている他のフレーク又は粒子を有することが可能である。従って、散乱手段は、保護手段及び像担持体の両方に付けられることが可能である。
【0038】
本発明はまた、基板、基板の上部の基板電極、対向電極、及び基板電極と対向電極との間に備えられた少なくとも1つの有機EL層を有するEL積層構造、を有する層システムを有するEL装置の製造方法であって、装置の外観に適切な影響を与える、基板電極において少なくとも1つの像担持体の一部又は全部を備えるステップと、像担持体の上部及び基板電極の両方に有機EL層及び対向電極を付けるステップとを少なくとも有する、製造方法に関する。
【0039】
更に、その方法は、高屈折率を有する接着剤を付けることと、基板電極に像担持体を接着剤により付けるように並びに像担持体と基板電極との間にオプティカルコンタクトを備えるように、基板の屈折率を少なくとも好適に適合させることとにおいて具現化されることが可能である。
【0040】
更に、その方法は、像担持体と基板電極の表面との間の接着剤の遷移部分が、基板電極の表面に関して45°以下、好適には30°以下、より好適には20°以下、最も好適には10°以下の角度を有するなだらかな形状を有することを特徴とするように、前記像担持体を埋め込むための接着剤を有する保護手段を付けるステップを有することが可能である。
【0041】
EL装置の製造方法の他のステップに従って、基板電極に像担持体を付けることが、好適には窒素及び/又はアルゴンを有することを特徴とする気体環境中で実行されることが可能であり、か焼処理は、少なくとも100℃以下の、好適には80℃以下の温度を有することを特徴として、接着剤を硬化するために適用される。
【0042】
上記のEL装置及び/又は方法、並びに所望の実施形態における発明に従って用いられる構成要素は、大きさ、形状又は材料選択に関する何れかの特定の例外は課せられない。選択基準等の技術概念は、関連分野において知られていて、制限なく適用されることが可能である。本発明の目的の付加的な詳細、特徴及び有利点については、特許請求の範囲の従属請求項に開示されていて、以下の単なる例示であるそれぞれの図は、本発明に従ったEL装置についての複数の好適な実施形態を示している。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】基板電極に付けられた像担持体を有する本発明に従ったEL装置の実施形態を示す図である。
【図2】像担持体と基板電極との間に付けられた保護手段を有する図1に従った実施形態を示す図である。
【図3】像担持体を完全に埋め込んだ保護手段を有する図1及び2に従った実施形態を示す図である。
【図4】保護手段に完全に埋め込まれた像担持体を示す構成の詳細図であって、有機EL層及び対向電極の遷移部分が示されている、詳細図である。
【図5】散乱手段を有する像担持体を有するEL装置の実施形態を示す図である。
【図6】対向電極と封入手段との間に像担持体及び接触手段を有するEL装置の実施形態を示す図である。
【図7】基板電極の表面に備えられた像担持体を有するEL装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1においては、本発明の実施形態に従ったエレクトロルミネッセンス(EL)装置10が示されている。EL装置10は、基板電極20と、対向電極30と、この実施形態及び以下の実施形態においてエレクトロルミネッセンス(EL)積層構造を表す有機エレクトロルミネッセンス(EL)層50とを有する。有機EL層50は、基板電極20と前記積層構造を構成する対向電極30との間に備えられる。
【0045】
それらの層は基板上に備えられ、基板上にEL装置10の輸送材料を構成する。図示している実施形態においては、基板電極20は、透明な且つ導電材料であるITOを約100nm形成されたものである。この基板電極20上に、有機EL層50が堆積される。電圧が基板電極20と対向電極30との間に印加される場合、有機EL層50内の有機分子の一部が励起され、EL層50により発せられる人工的な光の発光が得られる。
【0046】
対向電極30は、基板電極20及び基板40を透過する人口光を反射するミラーとしての役割を果たすアルミニウム層により形成される。周囲に光を発するように、実施形態における基板40はガラスから成る。従って、EL装置20はボトムエミッション方式OLEDである。以下の図に示されているEL装置10及び本発明に従って用いられる構成要素はそれらの真の縮尺で示されていない。特に、電極20及び30、有機EL層50及び基板40の厚さは真の縮尺で表されていない。全ての図は、本発明を単に明確にする役割を担う。
【0047】
詳細に図示しているように、EL装置10は、基板電極20の表面に像担持体200を有する。像担持体200は、EL装置10の外観に適切に影響するように、基板電極20上に一部が又は全部が備えられる。像担持体200は、平坦であるフォイル又はシートとして機能する。図示しているように、EL層積層構造を表す有機EL層50及び対向電極30は、基板電極20の表面に及び像担持体200の上側に堆積される。
【0048】
前記表面の上部に有機EL層50及び対向電極30を付けることは、当業者に知られている真空蒸着方法に基づいている。像担持体200は、フレキシブルなフォイル又は一種のマスクを構成し、固体として扱われ、硬い又はフレキシブルであり、及び取り付け処理により基板電極20の表面に適用される。
【0049】
図2は、像担持体200が、保護手段70を用いることにより基板電極20の表面に付けられている。保護手段70は、基板電極20に像担持体200を接着剤で付けるための接着剤として機能することが可能である。図示しているように、その接着剤は、有機層内の及び対向電極内の孔の原因になるシャドウイングエッジ(shadowing edge)の発生を回避するように、像担持体200の側面を越えて伸びている。
【0050】
図3は、基板電極20の表面に像担持体200を有するEL装置10の実施形態であり、像担持体200が完全に保護手段70に埋め込まれていることを示している。図示しているように、保護手段70は、基板電極20の表面及び像担持体200の上側から平滑でなだらかな遷移部分をもたらす。その平滑でなだらかな遷移部分により、有機EL層50及び対向電極30の堆積処理が改善される。保護手段70は非導電性接着剤を有することが可能である。
【0051】
図4は、像担持体200を有するEL装置10の他の実施形態を拡大して示している。像担持体200は完全に保護手段70に埋め込まれている。更に、像担持体200の側面201がその像担持体の左側及び右側に示されている。保護手段70は、像担持体200の側面201におけるシャドウイングエッジの発生を回避するように、像担持体の側面201の方に広がっている。更に、遷移部分75が遷移角αで示されている。遷移角αは、基板電極の表面に関して45°、好適には30°、より好適には20°、最も好適には10°以下の値であることが可能である。遷移角αの値が小さければ小さい程、基板電極の表面と像担持体200の上側との間の遷移は良好になり、有機EL層50及び対向電極30のそれぞれの堆積処理は、低減されたシャドウイング効果のために改善される。
【0052】
図5は、散乱手段180を有する像担持体200を有するEL装置10の実施形態を示している。図示しているように、像担持体200は、有機EL層50により発生される光を散乱する少なくとも1つの散乱手段180を有する。散乱手段180は、顔料及び/又は粒子を有する及び/又は顔料及び/又は粒子から成ることが可能である。これは、像担持体200の下の領域がその周囲より暗く現れることを回避する。それらの散乱手段180は、雲母、アルミニウムフレーク、又はTiO2粒子のような高屈折率の材料を有することが可能である。散乱手段180はまた、基板40内を案内される人口光及び/又は可視光の一部を反射し、故に、像担持体200の下の他の非発光層を明るくする。
【0053】
図6は、対向電極30と封入手段90との間に接触手段60を有するEL装置10の他の実施形態を示している。電源に対向電極30を電気的に接触するように配置された少なくとも1つの又は複数の図示されている接触手段を有することが可能であるEL装置10は、電源にそれ自体接触されることが可能である封入手段90として具現化される。従って、接触手段60は、対向電極30から電源に繋がる電流経路の一部である。従来技術においては、コンタクトポストが、対向電極30に適用される接触手段60として用いられている。そのようなコンタクトポストは、それらが対向電極20に機械的に適用され、対向電極30と基板電極20との間で短絡をしばしばもたらすという短所を有する。この短所を克服するように、本発明においては、接触手段60は、対向電極30に適用される導電性接着剤であることを開示している。更に、保護手段70は全領域を覆う必要があり、これにより、短絡の原因になり得るため、接触手段60が対向電極30に適用され、接触手段60の領域より大きいことも可能である。
【0054】
図7は、基板電極20、対向電極30及び有機EL層50を有するEL装置10の平面図である。図示しているように、像担持体200は、矢印に関連するシンボルを構成する。像担持体200の輪郭のパターンにより、第1種類のパターンが得られる。故に、異なる複数のパターンの重ね合わせが、基板電極20の上部におけるたった1つの適用された像担持体200により得られる。
【0055】
上記の実施形態においては、例示として、積層構造に有機EL層50を有する。本発明の範囲内の他の実施形態においては、EL積層構造は、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層、電子阻止層、電子注入層、更なる導電層等の有機EL層50に付加的な層を有することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、該基板の上部の基板電極、対向電極、及び前記基板電極と前記対向電極との間に備えられた少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセンス(EL)層を有するエレクトロルミネッセンス(EL)積層構造、を有するエレクトロルミネッセンス(EL)装置であって、
少なくとも1つの像担持体は、当該EL装置の外観に適切に影響を与える前記基板電極において少なくとも一部が備えられていることを特徴とする、
EL装置。
【請求項2】
前記像担持体は、平坦に広げられた本体のフォイル及び/又はシートとして実行されることを特徴とする、請求項1に記載のEL装置。
【請求項3】
前記像担持体は、接着剤を好適に有する接着手段により基板電極に取り付けられている、請求項1又は2に記載のEL装置。
【請求項4】
前記接着手段は、前記像担持体と前記基板電極との間のオプティカルコンタクトを備えるように、高屈折率の特徴を有し、前記基板の屈折率に少なくとも好適に適合する光透過性接着手段を構成する、請求項3に記載のEL装置。
【請求項5】
前記接着手段は、非導電性であり、前記EL積層構造及び前記対向電極に対して前記像担持体を電気的に絶縁する保護手段を構成することを特徴とする、請求項3又は4に記載のEL装置。
【請求項6】
前記接着手段は、前記像担持体の側面におけるシャドウイングエッジの発生を回避するように、前記像担持体の側面の方に広がっていて、好適には、前記像担持体は前記接着手段に完全に埋め込まれている、請求項3乃至5の何れか一項に記載のEL装置。
【請求項7】
前記EL積層構造及び前記対向電極は、前記像担持体及び前記基板電極の前記表面の両方に堆積されていることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか一項に記載のEL装置。
【請求項8】
前記像担持体上に及び前記基板電極の前記表面上に前記接着手段が付けられる間に前記EL積層構造と前記対向電極における遷移部分は、前記基板電極の前記表面に関して45°以下の、好適には30°以下の、より好適には20°以下の、最も好適には10°以下の遷移角を有するなだらかな形状を有することを特徴とする、請求項1乃至7の何れか一項に記載のEL装置。
【請求項9】
前記像担持体は、光のアウトカップリングを改善するように、前記有機EL層により生成される光を散乱させる散乱手段を有することを特徴とする、請求項1乃至8の何れか一項に記載のEL装置。
【請求項10】
前記像担持体は、パターンであって、好適には、前記表面に付けられる及び/又は前記像担持体の材料内に埋め込まれる、好適には、当該EL装置のオフ状態で現れるように好適に実行される、1つ又はそれ以上の文字、シンボル、符号及び/又は画像を有することを特徴とする、請求項1乃至9の何れか一項に記載のEL装置。
【請求項11】
前記像担持体は、受動電子構成要素及び/又は能動電子構成要素であって、好適には、照明目的で有機LEDを担持するプリント回路基板を有することを特徴とする、請求項1乃至10の何れか一項に記載のEL装置。
【請求項12】
前記EL装置は、電源に前記対向電極を電気的に接触させる少なくとも1つの電気的接触手段を有し、前記電気的接触手段は好適には導電性接着剤を有することを特徴とし、非導電性接着手段としての前記接着手段又は非導電性像担持体としての前記像担持体は、前記電気的接触手段の下の領域を少なくとも完全にカバーしていることを特徴とする、請求項1乃至11の何れか一項に記載のEL装置。
【請求項13】
基板と、該基板の上部の基板電極と、対向電極と、基板電極と対向電極との間に備えられた少なくとも1つの有機エレクトロルミネッセンス(EL)層を有するエレクトロルミネッセンス(EL)積層構造と、を有する層システムを有するエレクトロルミネッセンス(EL)装置を製造する方法であって、
前記EL装置の外観に適切に影響を与える、前記基板電極において少なくとも1つの像担持体を少なくとも一部を備えるステップ、及び
前記像担持体の上部及び前記基板電極の両方に前記有機EL層及び前記対向電極を付けるステップ、
を少なくとも有する方法。
【請求項14】
前記像担持体と前記基板電極との間にオプティカルコンタクトを備えるように、高屈折率を有する接着剤を付け、前記基板電極に前記像担持体を接着するための基板の屈折率を少なくとも好適に適合させることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記像担持体を埋め込むための接着剤を有する保護手段を付けるステップであって、前記像担持体上に及び前記基板電極の前記表面上に前記保護手段が付けられる間に前記接着剤の遷移部分は、前記基板電極の前記表面に関して45°以下の、好適には30°以下の、より好適には20°以下の、最も好適には10°以下の遷移角を有するなだらかな形状を有することを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−529139(P2012−529139A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513709(P2012−513709)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052391
【国際公開番号】WO2010/140097
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】