説明

エレベータの乗客誘導装置

【課題】乗りかご内に乗客がスムーズに乗り込むことができるエレベータの乗客誘導装置を提供する。
【解決手段】実施形態のエレベータ1の乗客誘導装置28は、LEDパネル43とエレベータ制御部9とを備えている。LEDパネル43は、エレベータ1の乗りかご2の床板29のうちの、乗りかご2の開閉ドアを除く内壁面30a寄りの滞留推奨領域に少なくとも設けられている。エレベータ制御部9は、建造物の各階の乗り場に設けられた操作盤の優先呼びボタンから呼び登録がされると、乗客の立ち位置を示すために滞留推奨領域に設けられたLEDパネル43の発光状態を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの乗客誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータは、乗客を収容する乗りかごが昇降路内を移動することにより、乗りかごを任意の階床に移動させて、乗客を任意の階床間に移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−1461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来技術においては、乗客が乗りかご内にスムーズ乗り込めることが求められている。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、乗りかご内に乗客がスムーズに乗り込むことができるエレベータの乗客誘導装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のエレベータの乗客誘導装置は、発光装置と制御部とを備えている。発光装置は、エレベータの乗りかごの床のうちの、乗りかごのドアを除く内壁面寄りの滞留推奨領域に少なくとも設けられている。制御部は、建造物の各階の乗り場に設けられた操作盤の優先呼びボタンから呼び登録がされると、乗客の立ち位置を示すために滞留推奨領域に設けられた発光装置の発光状態を変更する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施形態に係るエレベータの全体の構成を模式的に示す正面図である。
【図2】図2は、実施形態に係るエレベータの乗りかごのかご室の構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、実施形態に係るエレベータの乗客誘導装置のLEDパネル装置の斜視図である。
【図4】図4は、実施形態に係るエレベータの乗りかごのかご室の床の平面図である。
【図5】図5は、実施形態に係るエレベータの操作盤の正面図である。
【図6】図6は、実施形態に係るエレベータの乗客誘導装置のエレベータ制御部の乗客が乗る前の処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、実施形態に係るエレベータの乗客誘導装置のLEDパネル装置が乗客を誘導している状態を示す平面図である。
【図8】図8は、実施形態に係るエレベータの乗客誘導装置の振動発生装置が乗客を誘導している状態を示す平面図である。
【図9】図9は、実施形態に係るエレベータの乗客誘導装置のエレベータ制御部の乗客が降りる時の処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】図10は、実施形態に係るエレベータの乗客誘導装置が乗客が降りる時に誘導している状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、実施形態に係るエレベータの全体の構成を模式的に示す正面図、図2は、実施形態に係るエレベータの乗りかごのかご室の構成を示す斜視図、図3は、実施形態に係るエレベータの乗客誘導装置のLEDパネル装置の斜視図、図4は、実施形態に係るエレベータの乗りかごのかご室の床の平面図、図5は、実施形態に係るエレベータの操作盤の正面図、図6は、実施形態に係るエレベータの乗客誘導装置のエレベータ制御部の乗客が乗る前の処理の一例を示すフローチャート、図7は、実施形態に係るエレベータの乗客誘導装置のLEDパネル装置が乗客を誘導している状態を示す平面図、図8は、実施形態に係るエレベータの乗客誘導装置の振動発生装置が乗客を誘導している状態を示す平面図、図9は、実施形態に係るエレベータの乗客誘導装置のエレベータ制御部の乗客が降りる時の処理の一例を示すフローチャート、図10は、実施形態に係るエレベータの乗客誘導装置が乗客が降りる時に誘導している状態を示す平面図である。
【0009】
図1に示す本実施形態のエレベータ1は、建造物(建築物ともいう)の昇降路内に設置されて、乗りかご2内の操作装置22(図2に示す)の各種のボタン及び各階の乗り場23に設けられた操作盤24(図5に示す)の呼びボタン25,26,27の操作による呼び登録に基づいて乗客などを建造物の所望の階に運搬する。操作盤24には、図5に示すように、通常呼びボタンとしての上階呼びボタン25と、通常呼びボタンとしての下階呼びボタン26と、これらのボタン25,26とは別体の優先呼びボタン27とが上から順に設けられている。上階呼びボタン25は、乗り場23に位置する乗客が上の階の乗り場23へ移動する際に用いられる。下階呼びボタン26は、乗り場23に位置する乗客が下の階の乗り場23へ移動する際に用いられる。優先呼びボタン27は、主として、身体的弱者が所望の階に移動する際に用いられる。本発明でいう、身体的弱者とは、高齢者、聴覚、視覚障害者などの各種の障害者、ベビーカーとともに移動中の乗客や車椅子で移動中の乗客などの、種々の要件により移動が制約される乗客をいう。さらに、本発明でいう、身体的弱者とは、望ましくは、ベビーカーとともに移動中の乗客や車椅子で移動中の乗客などの、乗りかご2内に占める容積が、起立状態の乗客よりも大きな乗客をいう。操作盤24は、呼びボタン25,26,27の少なくとも一つが操作されると、この少なくとも一つが操作されたことを示す呼び登録をエレベータ制御部9に向かって出力する。
【0010】
昇降路は、建造物の複数の階に亘って設けられ、かつ鉛直方向に沿って直線状に延びている。また、昇降路の内部のエレベータ停止階となる各階には、各階の所定の着床位置に乗りかご2が停止したことを検出するかご着床検出装置8(図1に示す)がそれぞれ設けられている。各かご着床検出装置8は、乗りかご2の設けられた図示しない検知板により、各階の着床位置に乗りかご2が停止したことを検出すると、着床位置検出信号をエレベータ制御部9に向かって出力する。
【0011】
エレベータ1は、図1に示すように、一対のかご用ガイドレール3と、乗りかご2と、カウンタウェイト4と、一対のウェイト用ガイドレール5と、メインロープ6と、駆動機構7と、コンペンセーション装置10と、非常停止装置11と、乗客誘導装置28(図2に示す)と、を備えている。
【0012】
かご用ガイドレール3は、直線状に延びかつ鉛直方向と平行に設けられている。かご用ガイドレール3は、互いに間隔をあけて平行な状態で昇降路内に設けられている。かご用ガイドレール3は、互いの間に乗りかご2を位置づけているとともに、この乗りかご2を鉛直方向に昇降自在に支持している。
【0013】
乗りかご2は、昇降路内に鉛直方向に移動自在に収容されている。乗りかご2は、かご枠12と、乗客を収容するかご室13とを備えている。かご枠12は、一対のかご用ガイドレール3間に位置することのできる大きさの枠状に形成されている。かご枠12は、水平方向と平行な下梁14と、水平方向と平行でかつ下梁14の上方に設けられた上梁15と、下梁14と上梁15の両端同士を連結した一対の側梁16とを備えている。下梁14と上梁15は、水平梁をなしている。
【0014】
かご室13は、図2に示すように、床面としての床板29と、この床板29の外縁から立設した複数の側板30と、前記側板30の床板29から離れた側の縁に連なって前記床板29と平行に設けられた天井31とを備えて、内側に乗客を収容可能な箱状に形成されている。複数の側板30のうちの図1中手前側の一つの側板30には、乗客をかご室13内に出入り可能とする出入り口32と、この出入り口32を開閉するドアとしての開閉ドア33が設けられている。
【0015】
かご室13は、下梁14上に重ねられ、かつ一対の側梁16間に挟まれた状態で、かご枠12に取り付けられている。かご室13は、かご枠12に支えられる。かご室13内には、エレベータ1の各種の操作を行うための操作装置22の各種のボタンなどが設けられている。また、乗りかご2には、開閉ドア33の開閉動作を検出する開閉検出センサが取り付けられている。開閉検出センサは、開閉ドアの開閉動作を検出して、検出した結果をエレベータ制御部9に向かって出力する。
【0016】
また、かご室13の床板29上には、図4に示すように、複数の第1床補強部材34と複数の第2床補強部材35が設けられている。床補強部材34,35は、それぞれ、帯板状に形成されており、幅方向の一方の縁が床板29上に取り付けられて、床板29から立設している。複数の第1床補強部材34は、等間隔に互いに間隔をあけて設けられている。複数の第2床補強部材35は、等間隔に互いに間隔をあけて設けられている。第1床補強部材34の長手方向と第2床補強部材35の長手方向は、互いに直交している。長手方向が互いに直交することで、床補強部材34,35は、床板29上の空間を升目状に仕切っている。以下、互いに隣り合う床補強部材34,35間及び側板30とで囲まれた空間を升目36と呼ぶ。
【0017】
カウンタウェイト4は、昇降路内に鉛直方向に移動自在に収容されている。
【0018】
ウェイト用ガイドレール5は、直線状に延びかつ鉛直方向と平行に設けられている。ウェイト用ガイドレール5は、互いに間隔をあけて平行な状態で昇降路内に設けられている。ウェイト用ガイドレール5は、互いの間にカウンタウェイト4を位置づけているとともに、このカウンタウェイト4を鉛直方向に昇降自在に支持している。
【0019】
メインロープ6は、一端部に乗りかご2が固定され、かつ他端部にカウンタウェイト4が固定されている。メインロープ6は、駆動機構7の駆動シーブ17に掛渡されて、乗りかご2とカウンタウェイト4とが互いに上下反対方向に昇降するように設けられている。即ち、エレベータ1は、所謂、つるべ式のエレベータとなっている。このように、メインロープ6は、巻き上げ機により移動されることで、乗りかご2とカウンタウェイト4とを釣瓶式に昇降させる。
【0020】
駆動機構7は、図1に示すように、例えば、昇降路の上部に設けられた機械室又は昇降路内の上部などに設けられ、周知の巻き上げ機と、メインロープ6が掛け渡されて巻き上げ機により回転駆動される駆動シーブ17と、図示しないブレーキと、ロータリエンコーダなどを備えている。ブレーキは、例えば、電磁ブレーキであり、エレベータ制御部9により巻き上げ機を制動する制動状態あるいは巻き上げ機を開放する開放状態のいずれかに動作制御される。ブレーキは、乗りかご2が各階に着床すると制動状態となり、乗りかご2の昇降中には開放状態となる。ロータリエンコーダは、駆動シーブ17の回転を検出するものであり、乗りかご2の速度に関する速度情報としての駆動シーブ17の回転数を検出して、検出した結果をエレベータ制御部9に向かって出力する。駆動機構7は、巻き上げ機が駆動シーブ17を回転駆動することにより、メインロープ6を昇降路内で移動させて、乗りかご2とカウンタウェイト4を昇降させる。
【0021】
コンペンセーション装置10は、一端が乗りかご2に取り付けられ他端がカウンタウェイト4に取り付けられたコンペンロープ19と、このコンペンロープ19に掛けられたコンペンシーブ20を備えている。コンペンセーション装置10は、昇降中の乗りかご2やカウンタウェイト4の振動を抑制するとともに、乗りかご2とカウンタウェイト4が昇降路内を昇降する際のメインロープ6の重量を相殺する。
【0022】
非常停止装置11は、図1に示すように、乗りかご2の底面に取り付けられた一対の非常止機構21などを備えている。非常停止装置11は、乗りかご2が予め定められた所定の速度よりも高速で降下すると、非常止機構21がかご用ガイドレール3に対して乗りかご2を停止させる。
【0023】
乗客誘導装置28は、図2に示すように、誘導部37と、制御部としてのエレベータ制御部9(図1に示す)とを備えている。誘導部37は、スピーカ38と、複数のLEDパネル装置39とを備えている。スピーカ38は、かご室13の天井31に取り付けられて、かご室13内の乗客に対して、エレベータ制御部9からの命令通りの音声を発する。なお、本実施形態では、スピーカ38は、乗りかご2のかご室13の幅方向に間隔をあけて二つ設置されている。
【0024】
LEDパネル装置39は、互いに大きさの等しい厚手の平板状に形成されている。LEDパネル装置39は、前述した升目36と同数設けられている。LEDパネル装置39は、図2及び図4に示すように、升目36内に収容されて、床板29上に設置される。升目36内に収容される複数のLEDパネル装置39のうちの乗りかご2の床板29のうちの、乗りかご2の開閉ドア33を除く内壁面30a寄りのLEDパネル装置39(図7及び図8中に密な平行斜線で示す)は、滞留推奨領域Aを構成している。なお、乗りかご2の開閉ドア33を除く内壁面30a寄りのLEDパネル装置39とは、複数の側板30のうちの開閉ドア33が取り付けられていない側板30の内壁面30aに外縁部が近接するLEDパネル装置39をいう。また、升目36内に収容される複数のLEDパネル装置39のうちの乗りかご2の床板29のうちの、前記滞留推奨領域Aを除く、乗りかご2の中央寄りのLEDパネル装置39(図中に疎な平行斜線で示す)は、退避推奨領域Bを構成している。LEDパネル装置39は、図3に示すように、振動発生装置40と、荷重検出部としての荷重検出器41と、弾性部材としてのゴム板42と、発光装置としてのLEDパネル43と、透光部材としての床面ガラス44とが下から順に重ねられて構成されている。このために、複数の振動発生装置40と複数の荷重検出器41と複数のLEDパネル43とが、床板29上に順に設けられて、振動発生装置40とLEDパネル43とが、滞留推奨領域Aと退避推奨領域Bとの双方に設けられている。こうして、LEDパネル43は、少なくとも滞留推奨領域Aに設けられ、振動発生装置40は、少なくとも退避推奨領域Bに設けられている。
【0025】
振動発生装置40は、LEDパネル装置39が升目36内に収容されると、床板29上に重ねられる。振動発生装置40は、周知の圧電素子又は出力軸に偏芯した錘が取り付けられたモータなどを備えて、エレベータ制御部9からの命令通りに振動する。即ち、振動発生装置40は、床面ガラス44を振動させる。
【0026】
荷重検出器41は、振動発生装置40上に設けられて、LEDパネル43下に重ねられている。荷重検出器41は、周知の圧電素子などを備えて、この圧電素子が床面ガラス44上の荷重(乗りかご2の積載量の荷重)により変形することなどによって、この荷重を検出する。そして、荷重検出器41は、検出して得た荷重の値を示す情報をエレベータ制御部9に向かって出力する。
【0027】
ゴム板42は、ゴムなどの弾性を有する合成樹脂で構成されている。ゴム板42は、荷重検出器41上でかつ荷重検出器41とLEDパネル43との間に設けられることにより、振動発生装置40とLEDパネル43との間に設けられる。また、ゴム板42が、荷重検出器41とLEDパネル43との間に設けられることにより、荷重検出器41が、LEDパネル43下に重ねられている。ゴム板42は、振動発生装置40が振動すると、弾性変形する。ゴム板42は、弾性変形することで、振動発生装置40が発してLEDパネル43上の床面ガラス44に伝わる振動を減衰させる。振動発生装置40と荷重検出器41とゴム板42の平面形状の大きさは、升目36の平面形状と略同じ大きさに形成されている。
【0028】
LEDパネル43は、透光性を有するガラス、アクリル樹脂、ポリカーネートのうち少なくとも一つで構成された透光平板部材と、この透光平板部材の外縁などに取り付けられたLED(Light Emitting Diode)とを備えている。LEDパネル43は、エレベータ制御部9の命令通りに、点灯、消灯する。床面ガラス44は、透光性を有するガラス、アクリル樹脂、ポリカーネートのうち少なくとも一つで構成されている。床面ガラス44は、LEDパネル43上に重ねられて、LEDパネル43を保護する。
【0029】
エレベータ制御部9は、前述した機械室又は昇降路内の上部などに設けられ、図示しないRAM、ROM、CPU、入出力ポート及び記憶装置を備えた演算装置である。エレベータ制御部9には、図1に示すように、乗りかご2に一端が取り付けられたテールコード18が接続している。テールコード18は、動力線や伝送線を束ねたコードであり、乗りかご2内の操作装置とエレベータ制御部9とを接続している。エレベータ制御部9は、乗りかご2の操作装置22の各種のボタンや、各階の乗り場23の操作盤24の呼びボタン25,26,27、駆動機構7、開閉ドア33などとも接続して、エレベータ1全体の制御をつかさどる。
【0030】
また、エレベータ制御部9は、誘導部37の各スピーカ38と、LEDパネル装置39それぞれの振動発生装置40、荷重検出器41及びLEDパネル43とに接続して、乗客誘導装置28全体の制御を行う。エレベータ制御部9は、エレベータ1の運転時には、操作装置22及び操作盤24からの命令とおりに駆動機構7、開閉ドア33などを制御することに加えて、図6及び図9に一例が示されるフローチャートを実行する。図6に示されたフローチャートは、乗り場23の操作盤24の優先呼びボタン27が操作されたことを示す呼び登録された時に実行される、即ち、乗り場23の乗客が乗りかご2内に乗る前に実行されるフローチャートである。即ち、図6に示されたフローチャートは、主として、乗り場23に乗りかご2が到着する前に実行されるフローチャートである。図9に示されたフローチャートは、乗りかご2のかご室13内の操作装置22の操作通りの階の乗り場23に乗りかご2が停止した時に実行される、即ち、乗りかご2内の乗客が乗りかご2外に出る時に実行されるフローチャートである。即ち、図9に示されたフローチャートは、主として、乗り場23に乗りかご2が到着した後に実行されるフローチャートである。
【0031】
図6に示されたフローチャートのステップS1では、まず、エレベータ制御部9が、少なくとも一つの階の乗り場23の操作盤24から優先呼びボタン27の操作による呼び登録が登録されると、乗りかご2が移動中でかつこの呼び登録に応答可能であると、複数のLEDパネル装置39の荷重検出器41の少なくとも一つが荷重を検出しているか否かを判定するとともに、乗りかご2を前記呼び登録を出力した操作盤24が設けられた乗り場23に向かって移動させる。複数のLEDパネル装置39の荷重検出器41の全てが荷重を検出していないと、フローチャートを終了し、荷重検出器41の少なくとも一つが荷重を検出していると、ステップS2に進む。こうして、乗りかご2内に乗客が一人も乗っていない状態では、フローチャートを終了し、一人でも乗りかご2内に乗客が乗っている状態では、ステップS2に進む。なお、ステップS1前即ち呼び登録が入力される前には、エレベータ制御部9は、複数のLEDパネル装置39の全てのLEDパネル43を点灯しておく。
【0032】
ステップS2では、エレベータ制御部9は、複数のLEDパネル装置39のLEDパネル43の前記滞留推奨領域Aを構成するLEDパネル装置39のLEDパネル43を点滅させるとともに、点滅しているLEDパネル装置39のLEDパネル43上への移動を促す音声をスピーカ38から出力する。こうして、ステップS2では、エレベータ制御部9は、少なくとも一つの荷重検出器41が乗りかご2内の乗客による荷重を検出している状態で操作盤24から優先呼びボタン27の操作による呼び登録がされると、乗りかご2内の乗客の立ち位置を示すために、滞留推奨領域Aに設けられたLEDパネル装置39のLEDパネル43の発光状態を変更して、側板30の内壁面30a寄りの滞留推奨領域Aへの乗客の誘導を行なう。そして、エレベータ制御部9は、LEDパネル43が点滅しているLEDパネル装置39の荷重検出器41が乗客を検出すると、この乗客を検出した荷重検出器41を有するLEDパネル装置39のLEDパネル43を点灯させる。その後、ステップS3に進む。
【0033】
ステップS3では、エレベータ制御部9は、LEDパネル装置39のLEDパネル43を点滅させてから予め定められた所定時間が経過する間に、LEDパネル43が点滅している全てのLEDパネル装置39の荷重検出器41が乗客の荷重を検出しているか否かを判定する。LEDパネル43が点滅している全てのLEDパネル装置39の荷重検出器41が乗客の荷重を検出していると、フローチャートを終了し、全てのLEDパネル装置39の荷重検出器41が乗客の荷重を検出していないと、ステップS4に進む。ステップS4では、エレベータ制御部9は、点滅しているLEDパネル装置39のLEDパネル43上への移動を促す音声をスピーカ38から再度出力するとともに、複数のLEDパネル装置39のうちの前記退避推奨領域Bを構成するLEDパネル装置39(図8中に粗な平行斜線で示す)の振動発生装置40を駆動して、これらのLEDパネル装置39の床面ガラス44を振動させて、さらに、乗客の移動を促す。そして、予め定められた所定時間、振動発生装置40を駆動して、床面ガラス44を振動させると、フローチャートを終了する。こうして、ステップS3及びステップS4では、複数のLEDパネル43による乗客を誘導してから所定時間内に、少なくとも一つの前記側板30寄りの荷重検出器41が検出する荷重の値が一定である場合に、振動発生装置40による側板30の内壁面30a寄りへの乗客の誘導を行なう。即ち、ステップS3及びステップS4では、操作盤24から優先呼びボタン27の操作による呼び登録がされると、乗りかご2内の乗客の退避すべく位置を示すために、退避推奨領域Bに設けられたLEDパネル装置39の振動発生装置40により、退避推奨領域Bを振動させて、滞留推奨領域Aへの乗客の誘導を行なう。エレベータ制御部9は、図6に示されたフローチャートを終了すると、全てのLEDパネル装置39のLEDパネル43を点灯させる。
【0034】
図9に示されたフローチャートのステップS11では、まず、エレベータ制御部9が、操作装置22からの命令通りの階の乗り場23に乗りかご2が停止して開閉ドア33が開くと、全てのLEDパネル装置39のうちの少なくとも一つの荷重検出器41が検出している荷重の値が所定時間内に変化したか否かを判定し、所定時間内に変化するとステップS12に進み、変化しないとフローチャートを終了する。
【0035】
ステップS12では、エレベータ制御部9が、複数のLEDパネル装置39のうちの退避推奨領域Bを構成するLEDパネル装置39(図10中に粗な平行斜線で示す)の振動発生装置40を駆動して、床面ガラス44を振動させるとともに、スピーカ38から振動している床面ガラス44に沿って進むことを促すアナウンスを発する。すると、特に、乗りかご2内の視覚障害者などの障害者が出入り口まで誘導される。
【0036】
また、本実施形態では、乗りかご2内に乗客が乗り込む際に、次のように、乗客を乗りかご2内に誘導しても良い。まず、エレベータ制御部9が、荷重検出器41が乗りかご2内に乗り込んだ乗客を検出することにより、開閉ドア33のドアの開放を延長するとともに、乗り込んだ乗客の概略の人数を把握する。そして、エレベータ制御部9は、乗客による荷重を検出していない荷重検出器41を有するLEDパネル装置39のLEDパネル43を点滅させる。エレベータ制御部9は、LEDパネル43の点滅と同時に、点滅中のLEDパネル装置39上への乗客の移動を促す音声をスピーカ38から出力し、点滅中のLEDパネル装置39の荷重検出器41が乗客を検出すると、この乗客を検出した荷重検出器41を備えたLEDパネル装置39のLEDパネル43を点灯させる。そして、再度、乗りかご2に乗客が出入りして、乗客による荷重を検出しなくなった荷重検出器41を備えたLEDパネル装置39のLEDパネル43を点滅させて、点滅中のLEDパネル装置39上への乗客の移動を促しても良い。こうして、エレベータ制御部9は、乗りかご2内に乗客が乗り込む際に乗客を誘導して、乗りかご2内に一様の密度で乗客を収容することができるとともに、乗りかご2に乗りこもうとする乗客を滞りなく乗りかご2内に収容することができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、エレベータ制御部9は、乗りかご2内に乗客が乗り込む際には、前述したLEDパネル43の点滅や点滅と同時に、退避推奨領域Bを構成するLEDパネル装置39の振動発生装置を駆動させて、スピーカ38から振動している床面ガラス44に沿って進むことを促す音声を出力してもよい。この場合には、LEDパネル43の点滅やスピーカ38からの音声を認識することができない視覚障害者や聴覚障害者も乗りかご2内外に誘導することができる。また、誘導に従わない乗客に対しては、振動発生装置40を駆動することで、注意を促すことができる。
【0038】
実施形態にかかるエレベータ1の乗客誘導装置28によれば、各階の乗り場23に設けられた操作盤24の優先呼びボタン27から呼び登録がされると、エレベータ制御部9が誘導部37に滞留推奨領域AのLEDパネル43の発光状態を変更させて、乗りかご2内の乗客を滞留推奨領域Aに誘導させる。このため、乗りかご2が乗り場23に停止するころには、乗客が乗りかご2の滞留推奨領域A上に位置することとなって、出入り口32付近には位置していなくなる。よって、乗客が出入り口32を通して、乗りかご2にスムーズに出入りすることができる。よって、乗りかご2内に前述した身体的弱者を含む乗客がスムーズに乗り込むことができる。
【0039】
また、各階の乗り場23に設けられた操作盤24の優先呼びボタン27から呼び登録がされると、荷重検出器41が乗りかご2内の乗客による荷重を検出している状態では、エレベータ制御部9が誘導部37の複数のLEDパネル装置39に乗りかご2内の乗客を滞留推奨領域Aに誘導させる。したがって、乗りかご2内に前述した身体的弱者を含む乗客がスムーズに乗り込むことができる。
【0040】
また、荷重検出器41が乗りかご2内の乗客による荷重を検出していない即ち乗りかご2内に乗客がいない状態では、LEDパネル装置39などの誘導部37に乗客の誘導をさせないこととなる。このため、乗客がいない状態で、誘導部37が乗客を誘導する動作を行なうことを規制できるので、省エネルギにも寄与することができる。また、LEDパネル装置39を複数設けているので、これらの複数のLEDパネル装置39の動作を個別に制御することができ、乗客を乗りかご2の側板30に誘導できるように、誘導部37を動作させることができる。
【0041】
さらに、エレベータの乗客誘導装置28では、LEDパネル装置39による誘導を開始してから所定時間内に少なくとも一つの側板30寄りの荷重検出器41の検出する荷重値が変化しないと、即ち、乗りかご2内の乗客が滞留推奨領域Aに移動しないと、退避推奨領域Bの複数の振動発生装置40に、乗りかご2内の乗客を滞留推奨領域Aに誘導させる。したがって、LEDパネル装置39による誘導により乗客が移動しない場合であっても、乗客を滞留推奨領域Aに移動させることができる。
【0042】
また、LEDパネル装置39と振動発生装置40とが互いに重ねられているとともに、これらの間にゴム板42が設けられているので、ゴム板42が弾性変形することにより、振動発生装置40が発してLEDパネル装置39上の床面ガラス44に伝わる振動を減衰させることができる。したがって、LEDパネル装置39上の床面ガラス44などが、振動発生装置40の振動により破損することを防止できる。
【0043】
エレベータの乗客誘導装置28では、操作盤24の優先呼びボタン27からの呼び登録により、エレベータ制御部9が乗客を滞留推奨領域Aに誘導するので、乗りかご2内に、乗客としての身体的弱者がスムーズに乗り込むことができる。
【0044】
前述した実施形態では、優先呼びボタン27による呼び登録により、乗客誘導装置28のLEDパネル装置39や振動発生装置40による乗客の誘導を行なってきた。しかしながら、本発明では、優先呼びボタン27に限らず、上階呼びボタン25や下階呼びボタン26などからの呼び登録により、乗客誘導装置28のLEDパネル装置39や振動発生装置40による乗客の誘導を行なっても良い。また、本発明では、乗客誘導装置28を構成する制御部を、エレベータ1全体の制御を司るエレベータ制御部9と別体にしても良い。また、荷重検出器41をLEDパネル装置39各々に設けることなく即ち荷重検出器41を乗りかご2のかご室13の床に複数設けることなく、乗りかご2のかご室13の床板29の下面などにロードセルなどで構成されかつ乗りかご2のかご室13内の乗客などの積載物による荷重を検出する荷重検出部としての荷重センサを一つのみ取り付けても良い。また、振動発生装置40を圧電素子などで構成して、この圧電素子のひずみなどを検出することで、振動発生装置40が荷重検出部をかねても良い。さらに、本発明では、荷重検出部をLEDパネル装置39各々に設ける場合には、振動発生装置40と荷重検出部とを、LEDパネル装置39の表面に沿って、並べて配置しても良い。
【0045】
また、本発明では、前述した実施形態のLEDパネル装置39や振動発生装置40の制御方法に限らず、本発明の目的を達成できる範囲内で、乗りかご2のかご室13内の乗客を整理したり、特に身体的弱者などの乗客が乗り降りし易くなるように、エレベータ制御部9が実行するフローチャートを、図6及び図9に示されたフローチャートに限らず、適宜変更しても良い。さらに、本発明は、振動発生装置、荷重検出部、弾性部材、発光装置の構成を適宜変更しても良い。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
1 エレベータ
2 乗りかご
9 エレベータ制御部(制御部)
23 乗り場
24 操作盤
25 上階呼びボタン(通常呼びボタン)
26 下階呼びボタン(通常呼びボタン)
27 優先呼びボタン
29 床板(床)
30a 内壁面
33 開閉ドア(ドア)
37 誘導部
40 振動発生装置
41 荷重検出器(荷重検出部)
42 ゴム板(弾性部材)
43 LEDパネル(発光装置)
A 滞留推奨領域
B 退避推奨領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの床のうち、乗りかごのドアを除く内壁面寄りの滞留推奨領域に少なくとも設けられた発光装置と、
建造物の各階の乗り場に設けられた操作盤から呼び登録がされると、乗客の立ち位置を示すために前記滞留推奨領域に設けられた発光装置の発光状態を変更する制御部と、
を備えることを特徴とする、
エレベータの乗客誘導装置。
【請求項2】
前記乗りかご内の前記乗客による荷重を検出可能な荷重検出部を備え、
前記制御部は、前記荷重検出部が前記乗りかご内の前記乗客による荷重を検出している状態で前記操作盤から前記呼び登録がされると、前記滞留推奨領域に設けられた発光装置の発光状態を変更することを特徴とする、
請求項1記載のエレベータの乗客誘導装置。
【請求項3】
前記乗りかごの床の前記滞留推奨領域を除く退避推奨領域に少なくとも設けられた振動発生装置を備え、
前記制御部は、建造物の各階の乗り場に設けられた操作盤から呼び登録がされると、前記乗客の退避すべく位置を示すために前記退避推奨領域に設けられた振動発生装置により前記退避推奨領域を振動させることを特徴とする、
請求項2記載のエレベータの乗客誘導装置。
【請求項4】
前記発光装置と前記振動発生装置が、互いに重ねられて、前記滞留推奨領域と前記退避推奨領域との双方に設けられ、かつ、
前記発光装置と前記振動発生装置との間に弾性部材が設けられていることを特徴とする、
請求項3記載のエレベータの乗客誘導装置。
【請求項5】
前記操作盤が、通常呼びボタンと、前記通常呼びボタンとは別体でかつ身体的弱者が操作するための優先操作ボタンを備え、かつ、
前記制御部が、前記優先操作ボタンからの呼び登録により前記乗客を前記滞留推奨領域に設けられた発光装置の発光状態を変更することを特徴とする、
請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載のエレベータの乗客誘導装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−56751(P2013−56751A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196289(P2011−196289)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】