説明

エレベータセキュリティシステム

【課題】本発明の実施形態は、セキュリティ装置の存在が判別しにくいエレベータセキュリティシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の実施形態に係るエレベータセキュリティシステムは、昇降路内を昇降する乗りかご2の運行を制御するエレベータ制御装置と、各階の乗場7に設けられ、乗場呼び登録を行うための乗場呼び登録釦と、乗場7に複数配置されることにより特定経路を構築し乗場にいる特定の利用者を検出するホールセンサ14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、セキュリティ装置の存在が判別しにくいエレベータセキュリティシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエレベータシステムにおいては、乗場等にICカードや暗証番号等によりエレベータの利用を制限するセキュリティシステムが設置され、不審者が建物内に侵入しないように管理されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−63050号公報
【特許文献2】特開2008−280117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようにICカードや暗証番号等によりエレベータの利用制限をするものでは、ICカードや暗証番号の読取装置などのセキュリティシステムが利用者に見える位置に設置される。そのため、居住者以外の不審者等にも乗場等にセキュリティ機能がついていることを容易に判別されてしまう。居住者以外の不審者等にセキュリティシステムがあることが判別されると、不審者等に対しセキュリティシステムを回避する機会を与えることにもなり得る。したがって、不審者等にセキュリティシステムを回避する機会を与えないようなセキュリティシステムが求められている。
【0005】
そこで、本発明の実施形態は、特定の利用者以外の者がその存在を判別しづらいエレベータセキュリティシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態に係るエレベータセキュリティシステムは、昇降路内を昇降する乗りかごの運行を制御するエレベータ制御装置と、各階の乗場に設けられ、乗場呼び登録を行うための乗場呼び登録釦と、前記乗場に複数配置されることにより特定経路を構築し前記乗場にいる特定の利用者を検出するホールセンサと、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係るエレベータの構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るかご内を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る乗場を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係るエレベータセキュリティシステムの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態に係る乗場及びかご内を示す模式図である。
【図6】本発明の実施形態に係るエレベータセキュリティシステムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0009】
まず、図1ないし図3を用いて本発明の実施形態に係るエレベータの構成について説明する。
【0010】
図1に示すように、建物に設けられる昇降路1内には昇降路1内を昇降するかご2が設置され、昇降路1上部に設けられる機械室100には、エレベータの運行を制御するエレベータ制御装置3が設置されている。ここではエレベータ制御装置3が機械室101に設置されるものとしたが、機械室無しのエレベータの場合にあっては、昇降路1内上部にエレベータ制御装置3が設置されるものとする。
【0011】
かご2の出入口には開閉自在なかごドア4が設けられている。また、かご2上部にはかご制御装置5が設けられ、かご制御装置5はかご2の着床時にかごドア4を戸開閉させ、利用者の乗り降りを可能とする。かご制御装置5はテールコード6によりエレベータ制御装置3と通信可能に接続されている。また、かご制御装置5は、戸開閉動作の他に、図示しない、かご照明、空調装置、アナウンス装置などをそれぞれ制御するように設定されている。
【0012】
建物の各階に設けられる乗場7には昇降路1の開口部を塞ぐようにして乗場ドア8が設置されている。この乗場ドア8は、かご2の階床への着床時にかごドア4と係合し戸開閉動作が連動して行われる構成となっている。
【0013】
図2に示すように、かご2内には、操作盤9が設けられ、操作盤9には、かご2の現在位置や移動情報等を表示するかご内表示部10及びエレベータの利用者がかご呼び登録を行うかご呼び登録釦11が備えられている。さらにかご2内には、かご2内における利用者の存在を検知するかご内センサ12が設置されている。かご内センサ12の詳細については後述する。
【0014】
図3に示すように、乗場7には乗場ドア8のほか、エレベータの利用者が乗場呼び登録を行うための乗場呼び登録釦13及び乗場7における利用者の存在を検知するホールセンサ14が設置されている。ホールセンサ14の詳細については後述する。
【0015】
また、図4のブロック図に示すように、本発明の実施形態に係るエレベータ制御装置3は、かご呼び登録釦11、乗場呼び登録釦13、かご内センサ12、ホールセンサ14と通信可能に接続されている。また既述のように、かご制御装置5とも接続されている。
【0016】
次に図5を用いて、かご内センサ12及びホールセンサ14について説明する。
【0017】
図5に示すように、乗場7には互いに離間されて配置される一対のホールセンサ14が複数配置されている。そして、これら複数のホールセンサ14で構築される離間範囲を乗場出入口へ案内する特定経路とする。具体的には、乗場出入口へ案内される特定経路は、特定経路とする範囲の両端に複数のホールセンサ14が配置されることにより形成される。なお、ホールセンサ14の離間間隔は特に定めず、ホールセンサ14の配置及び特定経路の範囲は本実施例の形状に限定されない。また、ホールセンサ14が複数配置されてなる特定経路は、一定時間ごとに変化するものとしてもよい。すなわち、一定時間ごとに、特定のホールセンサ14の検知機能をON/OFF制御することにより、一定時間ごとに特定経路を変化させることができる。
【0018】
また、既述のようにかご2内にはかご内センサ12が設置されている。
【0019】
かご内センサ12はかご2内に、ホールセンサ14は乗場7に設置されるものとしたが、具体的には床や天井、壁等にセンサ自体を埋め込む形で設置される。このかご内センサ2及びホールセンサ14は光電管や赤外線センサ等から構成されるものであり、これらのセンサから発せられるセンサ光は肉眼では視別できないものとなっている。具体的には、かご内センサ12及びホールセンサ14は、乗場7の床に発光部が埋め込まれ、その位置に対応する天井の位置に受光部を取り付けることによりセンサ光が授受される構成となっている。当然、発光部を天井に、受光部を床に埋め込む構成とすることも可能である。
【0020】
このように、かご内センサ12及びホールセンサ14は発光部と受光部とから構成され、発光部から射光されるセンサ光を受光部が受光する。このセンサ光が遮光され、受光部にてセンサ光が受光できないことにより、乗場7の利用者を検知するものとなっている。すなわち、ホールセンサ14は、上述した特定経路を通過している利用者は検知せず、特定経路内から特定経路外もしくは特定経路外から特定経路内を交差通過している利用者を検知する。
【0021】
また、かご内センサ12の利用者検知範囲は、操作盤9の近傍に設定され、操作盤9の前に利用者がいるか否かを判断している。これは、例えば操作盤9の前で正しくかご呼び登録を行っていない場合には通常の利用者によるかご呼び登録でないものとして、かご呼び登録を行う必要が無いと判断するためである。
【0022】
次に図6を用いて本実施形態におけるエレベータセキュリティシステムの機能について説明する。
【0023】
まず、エレベータの利用者が乗場7にて乗場呼び登録を行う際に、エレベータ制御装置3がホールセンサ14から検知信号を受信しているか否かを判断する(S1)。エレベータ制御装置3がホールセンサ14から検知信号を受信していない場合は(S1のNO)、通常のエレベータの運転制御と同様に、利用者による乗場呼び登録を許可する(S2)。そして、その後利用者によって乗場呼び登録釦13が押下された場合(S3のYES)、エレベータ制御装置3は乗場呼び登録釦13が押下された階へかご2を移動させる(S4)。
【0024】
一方、エレベータ制御装置3がホールセンサ14から検知信号を受信している場合は(S1のYES)、特定経路を知らない特定者、いわゆるセキュリティ機能を知らない外部の者が乗場7にいると判断し、エレベータ制御装置3は一定時間、乗場呼び登録釦13による乗場呼び登録を禁止する(S5)。一定時間経過後(S6)、エレベータ制御装置3がホールセンサ14からの検知信号を受信していない場合は、乗場呼び登録の禁止を解除する。一方、一定時間経過後(S6)、エレベータ制御装置3が未だにホールセンサ14から検知信号を受信している場合は、乗場呼び登録釦13による乗場呼び登録の禁止を一定時間継続する。乗場呼び登録の禁止は、ホールセンサ14からの検知信号が受信されなくなるまで、継続される。
【0025】
ステップ4にて、エレベータ制御装置3がかご2を乗場呼び登録釦13が押下された階へ移動させた後、エレベータ制御装置3はホールセンサ14から検知信号を受信しているか否かを判断する(S7)。エレベータ制御装置13がホールセンサ14から検知信号を受信していない場合(S7のNO)、かご制御装置5はかごドア4を戸開させる(S8)。一方、エレベータ制御装置13がホールセンサ14から検知信号を受信している場合は(S7のYES)、特定経路を知らない特定者、いわゆるセキュリティ機能を知らない外部の者が乗場7にいると判断し、一定時間、かご制御装置5は戸開動作を行わずに戸閉状態を継続する(S9)。一定時間経過後(S10)、エレベータ制御装置3がホールセンサ14からの検知信号を受信していない場合、かご制御装置5はかごドア4を戸開させる(S8)。一方、一定時間経過後(S10)、エレベータ制御装置3が未だにホールセンサ14から検知信号を受信している場合は、戸閉状態を一定時間継続する。このように戸閉状態の継続は、ホールセンサ14からの検知信号が受信されなくなるまで、継続される。
【0026】
かごドア4が戸開された後(S8)、エレベータ制御装置3は、かご内センサ12から検知信号を受信しているか否かを判断する(S11)。かご内センサ12からの検知信号を受信していない場合(S11のNO)、エレベータ制御装置3は、かご呼び登録釦11によるかご呼び登録を禁止し(S12)、かご制御装置5は戸開状態を継続させる(S13)。一方、かご内センサ12から検知信号を受信している場合(S11のYES)、エレベータ制御装置3は利用者によるかご呼び登録を許可する(S14)。
【0027】
かご内センサ12からの検知信号の有無によって、かご呼び登録釦11によるかご呼び登録を禁止するか否かを判断するのは、既述のように、居住者などの利用者の場合は、通常、操作盤9の前でかご呼び登録を行うことを前提としているためである。すなわち、かご内センサ12からの検知信号を受信していない場合には、利用者がいない、もしくは不審者などが乗場側から無理にかご呼び登録を行おうとしている場合など、かご呼び登録を許可することが好ましくない状況であると判断するものである。
【0028】
そしてその後、利用者によってかご呼び登録釦11が押下された場合(S15のYES)、かご制御装置5はかごドア4を戸閉させ、エレベータ制御装置3はかご内センサ12を無効にする(S16)。そして、エレベータ制御装置3は、かご呼び登録釦11が押下された階へかご2を移動させる(S17)。ステップ17にて、エレベータ制御装置3がかご2をかご呼び登録釦11が押下された階へ移動させた後、エレベータ制御装置3はホールセンサ14から検知信号を受信しているか否かを判断する(S18)。エレベータ制御装置13がホールセンサ14から検知信号を受信していない場合(S18のNO)、かご制御装置5はかごドア4を戸開させる(S19)。一方、エレベータ制御装置13がホールセンサ14から検知信号を受信している場合(S18のYES)、一定時間、戸開動作を行わずに戸閉状態を継続する(S20)。一定時間経過後(S21)、エレベータ制御装置3がホールセンサ14からの検知信号を受信していない場合は、かごドア4を戸開させる(S19)。一方、一定時間経過後(S21)、エレベータ制御装置3が未だにホールセンサ14から検知信号を受信している場合は、かご制御装置5は戸閉状態を一定時間継続する。このように戸閉状態の継続は、ホールセンサ14からの検知信号が受信されなくなるまで、継続される。なお、かご内利用者が許可する場合には、ホールセンサ14から検知信号を受信していても、戸開動作可能としてもよい。
【0029】
その後、かご制御装置5はかごドア4を戸開させて(S19)、かご2内の利用者を降車させて処理を終了する。
【0030】
以上のように、本実施形態に係るエレベータセキュリティシステムによれば、特定の利用者以外の者がセキュリティシステムの存在を判別しづらいエレベータのセキュリティシステムを実現することができ、より高いセキュリティ効果を得ることができる。
【0031】
なお、本実施形態において、かご制御装置5がかごドア4を戸開閉させるものとしたが、エレベータ制御装置3がかご制御装置5と同様の処理を行うものとしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…昇降路
2…かご
3…エレベータ制御装置
4…かごドア
5…かご制御装置
6…テールコード
7…乗場
8…乗場ドア
9…操作盤
10…かご内表示部
11…かご呼び登録釦
12…かご内センサ
13…乗場呼び登録釦
14…ホールセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降する乗りかごの運行を制御するエレベータ制御装置と、
各階の乗場に設けられ、乗場呼び登録を行うための乗場呼び登録釦と、
前記乗場に複数配置されることにより特定経路を構築し前記乗場にいる特定の利用者を検出するホールセンサと、
を備えることを特徴とするエレベータセキュリティシステム。
【請求項2】
前記ホールセンサは特定経路内を通過している利用者は検出せず、前記特定経路内から特定経路外もしくは特定経路外から特定経路内を交差通過している利用者を検出することを特徴とする請求項1に記載のエレベータセキュリティシステム。
【請求項3】
前記エレベータ制御装置は、前記ホールセンサによって特定の利用者が検出されたときは、前記乗場呼び登録釦による乗場呼び登録機能を停止させることを特徴とする請求項1に記載のエレベータセキュリティシステム。
【請求項4】
前記ホールセンサが複数配置されることにより構築される特定経路は、一定時間ごとに変化することを特徴とする請求項1に記載のエレベータセキュリティシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−43747(P2013−43747A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182432(P2011−182432)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】