説明

エレベーターの異常時制御装置

【課題】ドア制御電圧またはその他の機器制御電圧の異常の際、一方を他方に供給し、最寄階への停止動作を正常に行うことができるエレベーターの異常時制御装置を得る。
【解決手段】ドア開閉モータ1を制御するドア制御部9と、ドア制御部9に直流電源を供給するドア制御電圧生成部5と、ドア制御電圧生成部5の出力間に接続された電解コンデンサ7と、ドア制御電圧生成部5の電圧が予め定められた基準電圧より低下したことを検出するリレー8と、ドアとは別の機器を制御する機器制御部14と、ドア制御電圧生成部5と同一電圧で機器制御部14に直流電圧を供給する機器制御電圧生成部10と、ドア制御部9と機器制御部14の電源入力部を開閉する開閉手段20a1、20a2と、ドア制御電圧生成部5の電圧低下をリレー8で検出した際に、開閉手段20a1、20a2を閉成して機器制御電圧生成部10をドア制御部9に接続する電圧供給リレーを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベーターの異常時制御装置に関し、例えばドア装置の制御電圧が異常となった際に、その他の機器の制御電圧をドア装置に供給するようにしたエレベーターの異常時制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの異常時制御装置としては、例えば特開平10−203740号公報(特許文献1)に、エレベーターの制御回路と、かご呼び登録回路、乗場呼び登録回路、かご位置検出回路、モータ電流検出回路、ドア位置検出回路などの各種外部機器の電源が一つの共通電源から供給される装置において、上記共通電源の電圧低下を検出する電源電圧検出回路と、上記検出された電圧低下に対応した電源切放し信号を出力する電源接続/切放し制御回路と、上記出力された電源切放し信号に対応する上記外部機器を上記共通電源から切り放す電源接続/切放し回路と、上記外部機器が上記共通電源から切り放されると上記エレベーターのかごを停止させる異常時制御手段と、を備えた装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−203740号公報(請求項2、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された技術によれば、エレベーターの電源電圧が外部機器側の異常で低下した場合でも、異常個所を容易に特定でき、また、かごの最寄り階停止及び共通電源の破損防止を可能にすることができる。しかし、ドア制御電圧の異常を検出すると、最寄階停止モードへ移行するシステム構成となっていて、かごは最寄階にて停止するもののドア自体は開けることができず、結果的に乗客が閉じ込めとなる問題点があった。
【0005】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、ドア制御電圧またはその他の機器制御電圧が異常となった際、正常側の制御電圧を異常側の制御部へ供給し、最寄階への停止動作を正常に行うことができるエレベーターの異常時制御装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベーターの異常時制御装置は、エレベータードアの開閉を行うドア開閉モータを制御するドア制御部と、上記ドア制御部に直流電源を供給するドア制御用電源と、上記ドア制御用電源の出力間に接続された電解コンデンサと、上記ドア制御用電源の電圧が予め定められた基準電圧より低下したことを検出する検出手段と、上記エレベータードアとは別の機器を制御する機器制御部と、上記ドア制御用電源と同一電圧であって上記機器制御部に直流電源を供給する機器制御用電源と、上記ドア制御部と上記機器制御部の電源入力部を開閉する開閉手段と、上記ドア制御用電源の電圧低下を上記検出手段で検出した際に、上記開閉手段を閉成して上記機器制御用電源を上記ドア制御部に接続する制御手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るエレベーターの異常時制御装置によれば、上記構成により、ドア制御電圧またはその他の機器制御電圧が異常となった際、正常側の制御電圧を異常側の制御部へ供給し、最寄階への停止動作を正常に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエレベーターの異常時制御装置を説明する全体構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るエレベーターの異常時制御装置の動作タイミングチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2に係るエレベーターの異常時制御装置を説明する全体構成図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係るエレベーターの異常時制御装置の動作タイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照して、この発明に係るエレベーターの異常時制御装置について好適な実施の形態を説明する。なお、この実施の形態により発明が限定されるものではなく、諸種の設計的変更を含むものである。
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るエレベーターの異常時制御装置を説明する全体構成図である。図1において、符号1はエレベータードアを開閉するドア開閉モータを示し、このドア開閉モータ1は、交流電源2の交流電圧(例えば、AC200V)を整流回路3で整流した主回路電圧を入力とするモータ制御回路4により制御される。なお、モータ制御回路4には、一般的には半導体素子で構成されている。
【0011】
ドア制御用電源であるドア制御電圧生成部5は、上記主回路電圧を入力とし、出力の正電圧部に直列に接続された第1の逆電流防止素子6、ドア制御電圧生成部5の出力間に接続された第1の電解コンデンサ、即ちドア制御電圧用電解コンデンサ7、このドア制御電圧用電解コンデンサ7に並列接続され、ドア制御電圧生成部5の電圧が予め定められた基準電圧より低下したことを検出する第1の検出手段であるドア制御電圧異常検出リレー8を介してドア制御部9に制御電圧を供給している。なお、ドア制御電圧用電解コンデンサ7及びドア制御電圧異常検出リレー8の負電圧部は接地線に接続されている。
【0012】
図示しない例えばかご操作盤用電源など、ドアとは別の機器を制御する機器制御用電源である機器制御電圧生成部10は、ドア制御電圧生成部5と同様に上記主回路電圧を入力とし、出力の正電圧部に直列に接続された第2の逆電流防止素子11、機器制御電圧生成部10の出力間に接続された第2の電解コンデンサ、即ち機器制御電圧用電解コンデンサ12、この機器制御電圧用電解コンデンサ12に並列接続され、機器制御電圧生成部10の電圧が予め定められた基準電圧より低下したことを検出する第2の検出手段である機器制御電圧異常検出リレー13を介して機器制御部14に制御電圧を供給している。なお、機器制御電圧用電解コンデンサ12及び機器制御電圧異常検出リレー13の負電圧部は接地線に接続されている。
【0013】
電源異常検出部15は、上記主回路電圧を入力として動作する、例えばフォトスイッチ16の出力側に接続されており、フォトスイッチ16に接続されて電源起動信号を入力する第1の回路L1、ドア制御電圧異常検出リレー8の常開接点8aを介して接続され、ドア制御電源異常信号を入力する第2の回路L2、機器制御電圧異常検出リレー13の常開接点13aを介して接続され、機器制御電源異常信号を入力する第3の回路L3からなる並列回路を介してフォトスイッチ16に接続されている。なお、電源異常検出部15の出力は、電源異常制御部17に入力されて遠隔監視装置18を介して情報センター19に発報されるように構成されている。
【0014】
また、電源異常制御部17は、遠隔監視装置18に出力すると共に、ドア制御電圧生成部5にドア制御電源部停止信号を出力し、機器制御電圧生成部10に機器用電源部停止信号を出力するように構成されている。更に、電源異常制御部17には、接地線との間に電圧供給リレー20が接続されており、この電圧供給リレー20に対して電圧供給バックアップ信号を出力するように構成されている。そして、電圧供給リレー20の常開接点20a1、20a2がドア制御部9と機器制御部14との間に接続されている。
【0015】
実施の形態1に係るエレベーターの異常時制御装置は、上記のように構成されており、次にその動作について説明する。
図2は、実施の形態1に係るエレベーターの異常時制御装置の動作タイミングチャートである。図2において、ドア制御電圧が異常値になる(低下する)と、ドア制御電圧異常検出リレー8がOFFとなり、その常開接点8aを開放する。これにより電源異常検出部15がドア制御電圧異常を検出し、その信号を電源異常制御部17に出力する。
【0016】
電源異常制御部17は、電源異常検出部15からの信号を受けて、ドア制御電圧生成部5にドア制御電源部停止信号を出力し、ドア制御電圧生成部5の動作を停止させる。同時に、電源異常制御部17は電圧供給バックアップ信号を出力して電圧供給リレー20を動作させ、その常開接点20a1、20a2を閉成し、機器制御電圧生成部10から正常である機器制御電圧をドア制御部9へ供給させる。
【0017】
また、ドア制御電圧の異常検出後、電源異常制御部17より遠隔監視装置18に対し異常信号を出力し、ドア制御電圧の異常を情報センター19へ発報する。
【0018】
以上のように、実施の形態1に係るエレベーターの異常時制御部によれば、ドア制御電圧が異常となった場合、機器制御電圧をドア制御部9に供給することにより、電圧異常検出後の最寄階への停止動作において戸開動作を可能とし、乗客の閉じ込めを防止することができる。
【0019】
また、機器制御電圧が異常(低下)となった場合も同様に、正常であるドア制御電圧を機器制御部14へ供給することにより、電圧異常検出後の最寄階への停止動作において追い出しアナウンス動作及び操作盤戸開釦動作を可能とし、乗客の閉じ込めを防止することができる。
【0020】
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係るエレベーターの異常時制御装置について説明する。実施の形態1では、電圧異常検出後にリレーなどの接点を介し、正常な電圧から異常となった電圧の制御部へ電源供給するように構成したが、片方の電源のみにドア制御部と機器制御部の両負荷がかかるため、低負荷である最寄階への停止動作とせざるを得なくなり、保守員が復旧作業を終えるまでの間、エレベーターのサービスは提供できなくなる。
【0021】
そこで、実施の形態2は電圧異常の主たる要因が電解コンデンサの劣化にあることを想定し、図3に示すように構成したものである。
実施の形態2に係るエレベーターの異常時制御装置は、図3に示すように、電源異常制御部17と接地線との間にドア制御電圧バックアップリレー30を接続し、このドア制御電圧バックアップリレー30に対してドア制御電圧バックアップ信号を出力するように構成すると共に、電源異常制御部17と接地線との間に機器制御電圧バックアップリレー31を接続し、この機器制御電圧バックアップリレー31に対して機器制御電圧バックアップ信号を出力するように構成している。
【0022】
また、ドア制御電圧用電解コンデンサ7に、ドア制御電圧用バックアップ電解コンデンサ32をドア制御電圧バックアップリレー30の常開接点30a1、30a2を介して並列接続し、更に、機器制御電圧用電解コンデンサ12に、機器制御電圧用バックアップ電解コンデンサ33を機器制御電圧バックアップリレー31の常開接点31a1、31a2を介して並列接続したものである。なお、その他の構成は実施の形態1と同様であり、同一符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0023】
実施の形態2に係るエレベーターの異常時制御装置は上記のように構成されており、図4に示すように、ドア制御電圧用電解コンデンサ7の劣化により、ドア制御電圧異常を検出すると、電源異常制御部17がドア制御電源バックアップ信号を出力し、ドア制御電圧バックアップリレー30をONさせる。これにより、通常時は無通電となっているドア制御電圧用バックアップ電解コンデンサ32が劣化したドア制御電圧用電解コンデンサ7に並列に接続されることにより、ドア制御電圧が復旧し、その後もドア制御部9を通常動作させることができる。
【0024】
また、機器制御電圧用電解コンデンサ12の劣化により、機器制御電圧異常を検出した場合も、同様に制御することにより、機器制御電圧が復旧し、その後も機器制御部14を通常動作させることができる。
【0025】
実施の形態2に係るエレベーターの異常時制御装置は、上記のように構成されているので、電圧異常の主たる要因であるドア制御電圧用電解コンデンサ7、あるいは機器制御電圧用電解コンデンサ12の劣化が生じた場合には、それぞれの電解コンデンサ7、12に並列接続されたドア制御電圧用バックアップ電解コンデンサ32、あるいは機器制御電圧用バックアップ電解コンデンサ33により、一時的に電圧を復旧させることができ、保守員が復旧作業を終えるまでの間も、エレベーターのサービスを提供し続けることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ドア開閉モータ
2 交流電源
3 整流回路
4 モータ制御回路
5 ドア制御電圧生成部
6 第1の逆電流防止素子
7 ドア制御電圧用電解コンデンサ
8 ドア制御電圧異常検出リレー
8a ドア制御電圧異常検出リレーの常開接点
9 ドア制御部
10 機器制御電圧生成部
11 第2の逆電流防止素子
12 機器制御電圧用電解コンデンサ
13 機器制御電圧異常検出リレー
13a 機器制御電圧異常検出リレーの常開接点
14 機器制御部
15 電源異常検出部
16 フォトスイッチ
17 電源異常制御部
18 遠隔監視装置
19 情報センター
20 電圧供給リレー
20a1、20a2 電圧供給リレーの常開接点
30 ドア制御電圧バックアップリレー
30a1、30a2 ドア制御電圧バックアップリレーの常開接点
31 機器制御電圧バックアップリレー
31a1、31a2 機器制御電圧バックアップリレーの常開接点
32 ドア制御電圧用バックアップ電解コンデンサ
33 機器制御電圧用バックアップ電解コンデンサ
L1 第1の回路
L2 第2の回路
L3 第3の回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータードアの開閉を行うドア開閉モータを制御するドア制御部と、上記ドア制御部に直流電源を供給するドア制御用電源と、上記ドア制御用電源の出力間に接続された電解コンデンサと、上記ドア制御用電源の電圧が予め定められた基準電圧より低下したことを検出する検出手段と、上記エレベータードアとは別の機器を制御する機器制御部と、上記ドア制御用電源と同一電圧であって上記機器制御部に直流電源を供給する機器制御用電源と、上記ドア制御部と上記機器制御部の電源入力部を開閉する開閉手段と、上記ドア制御用電源の電圧低下を上記検出手段で検出した際に、上記開閉手段を閉成して上記機器制御用電源を上記ドア制御部に接続する制御手段と、を備えたことを特徴とするエレベーターの異常時制御装置。
【請求項2】
上記電解コンデンサに第2の開閉手段を介して並列接続された第2の電解コンデンサと、上記ドア制御用電源の電圧低下を上記検出手段で検出した際に、上記第2の開閉手段を閉成して上記ドア制御用電源の出力間に上記第2の電解コンデンサを接続する第2の制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のエレベーターの異常時制御装置。
【請求項3】
エレベータードアの開閉を行うドア開閉モータを制御するドア制御部と、上記ドア制御部に直流電源を供給するドア制御用電源と、上記エレベータードアとは別の機器を制御する機器制御部と、上記ドア制御用電源と同一電圧であって上記機器制御部に直流電源を供給する機器制御用電源と、上記機器制御用電源の出力間に接続された電解コンデンサと、上記機器制御用電源の電圧が予め定められた基準電圧より低下したことを検出する検出手段と、上記ドア制御部と上記機器制御部の電源入力部を開閉する開閉手段と、上記機器制御用電源の電圧低下を上記検出手段で検出した際に、上記開閉手段を閉成して上記ドア制御用電源を上記機器制御部に接続する制御手段と、を備えたことを特徴とするエレベーターの異常時制御装置。
【請求項4】
上記電解コンデンサに第2の開閉手段を介して並列接続される第2の電解コンデンサと、上記機器制御用電源の電圧低下を上記検出手段で検出した際に、上記第2の開閉手段を閉成して上記機器制御用電源の出力間に上記第2の電解コンデンサを接続する第2の制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項3に記載のエレベーターの異常時制御装置。
【請求項5】
エレベータードアの開閉を行うドア開閉モータを制御するドア制御部と、上記ドア制御部に直流電源を供給するドア制御用電源と、上記ドア制御用電源の出力間に接続された第1の電解コンデンサと、上記ドア制御用電源の電圧が予め定められた基準電圧より低下したことを検出する第1の検出手段と、上記エレベータードアとは別の機器を制御する機器制御部と、上記ドア制御用電源と同一電圧であって上記機器制御部に直流電源を供給する機器制御用電源と、上記機器制御用電源の出力間に接続された第2の電解コンデンサと、上記機器制御用電源の電圧が予め定められた基準電圧より低下したことを検出する第2の検出手段と、上記ドア制御部と上記機器制御部の電源入力部を開閉する開閉手段と、上記ドア制御用電源の電圧低下を上記第1の検出手段で検出した際に、上記開閉手段を閉成して上記機器制御用電源を上記ドア制御部に接続し、上記機器制御用電源の電圧低下を上記第2の検出手段で検出した際に、上記開閉手段を閉成して上記ドア制御用電源を上記機器制御部に接続する制御手段と、を備えたことを特徴とするエレベーターの異常時制御装置。
【請求項6】
上記第1の電解コンデンサに第2の開閉手段を介して並列接続された第3の電解コンデンサと、上記第2の電解コンデンサに第3の開閉手段を介して並列接続された第4の電解コンデンサと、上記ドア制御用電源の電圧低下を上記第1の検出手段で検出した際に、上記第2の開閉手段を閉成して上記ドア制御用電源の出力間に上記第3の電解コンデンサを接続する第2の制御手段と、上記機器制御用電源の電圧低下を上記第2の検出手段で検出した際に、上記第3の開閉手段を閉成して上記機器制御用電源の出力間に上記第4の電解コンデンサを接続する第3の制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項5に記載のエレベーターの異常時制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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