説明

エレベーター装置

【課題】
各階床のホール端末機器に設けていたID設定用のスイッチを削減し、人為的ミスによるID設定誤りを防止する。
【解決手段】
エレベーター主制御装置1とホール端末機器21〜2Nは、通信線3と電源供給線4で接続され、電源は主制御装置1からホール端末機器21〜2Nに供給される。ホール端末機器21〜2Nは、CPU5、RAM6、送受信回路部7、電源入力部8、AD変換回路部9を備え、さらに電源供給線4に接続する負荷抵抗10と負荷抵抗10を制御するトランジスタ11を備えている。電源供給線4にホール端末機器21〜2Nで消費される電流が流れるため、ホール端末機器21〜2Nに供給する電源電圧レベルは、ホール端末機器21>ホール端末機器22>ホール端末機器23>ホール端末機器2Nと差異が生じる。この差を相対比較することで、ホール端末機器21〜2Nの正式IDを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター装置に係り、特に各階床に設置するホール端末機器の固有識別番号(ID)を設定する場合に好適な装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの乗場には、ホール呼びボタン及び応答ランプ等からなるホール端末機器が設けられており、例えば特許文献1のように高階床向けのエレベーターでは、このホール端末機器の数も階床数に比例して設置する個数が多くなる。
【0003】
このように階床数に比例して多くなるホール端末機器は、設置する階床ごとに識別する必要があることから、ホール端末機器毎にID設定用のスイッチを設け、このスイッチの設定により各ホール端末機器のIDを決定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−271217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術では、各ホール端末機器のIDをホール端末機器毎に設けたスイッチの設定により行っていたため、コスト高の問題があった。また、スイッチの設定は手動となるため、人為的ミスによる設定誤りが発生する問題があった。
【0006】
一方、前記特許文献1では、高階床化によりホール端末機器が増加し、電源供給ケーブルの電圧降下を問題とし、解決策を提案しているが、上記IDの設定については考慮されていない。
【0007】
本発明の目的は、前記ホール端末機器に設けていたスイッチの削減、また、人為的ミスによる前記ホール端末機器のID設定誤りを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明の一つの特徴は、階床毎に設置される前記ホール端末機器の固有識別番号(ID)を、各ホール端末機器に供給される電源からの電圧レベルの違いに基づいて決定することにある。
【0009】
本発明のその他の目的及び特徴は、以下に述べる実施の形態の中で明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ホール端末機器毎に設けていたスイッチは不要となり、また、スイッチによる設定も不要となるため、前記ホール端末機器のID設定誤りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るエレベーター装置の一実施形態を示す要部概略図である。
【図2】図1の主制御装置を構成する処理フローの一実施例である。
【図3】図1のホール端末機器を構成する処理フローの一実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図3を参照して説明する。いずれも本発明の一実施例であり、図1はエレベーター装置全体の要部概略図、図2は主制御装置側の処理フロー、図3はホール端末機器側の処理フローである。
【0013】
図1において、エレベーター主制御装置1とホール端末機器21〜2Nは、通信線3と電源供給線4で接続され、電源は主制御装置1からホール端末機器21〜2Nに供給される。また、ホール端末機器21〜2Nは、CPU5、RAM6、送受信回路部7、電源入力部8、AD変換回路部9を備えている。さらに、電源供給線4に接続する負荷抵抗10と負荷抵抗10を制御するトランジスタ11を備えている。尚、前記のNはホール端末機器の接続数である。
【0014】
図1の構成では、電源供給線4にホール端末機器21〜2Nで消費される電流が流れるため、ホール端末機器21〜2Nに供給する電源電圧レベルは、ホール端末機器21>ホール端末機器22>ホール端末機器23>ホール端末機器2Nと差異が生じる。この差を相対比較することで、ホール端末機器21〜2Nの正式IDを決定する。
【0015】
次に、図2及び図3のフローチャートを参照して処理手順の詳細を説明する。
【0016】
まず、ホール端末機器21〜2Nは電圧レベル問い合わせ受信待ちの状態である。主制御装置1は、図2の手順S101において変数nを0に設定する。次に、手順S102において、主制御装置1から全ホール端末機器に対し、供給されている電源電圧レベルが何Vかを問い合わせるためにブロードキャスト送信を行い、手順S103にてホール端末機器21〜2Nからの電圧レベル(仮ID)受信待ち状態となる。
【0017】
一方、ホール端末機器21〜2Nに備えたCPU5は、図3の手順S201において問い合せ指令を送受信回路7を介して受信すると、手順S202にてトランジスタ11により負荷抵抗10をONし、電源供給線4に流す電流を増やす。この手順S202によって、ホール端末機器21〜2Nに供給する電源電圧レベルに、より差異が生じるため、手順S107における電圧レベル比較が容易となる。
【0018】
次に、手順S203にて、供給されている電源電圧レベルが何Vかを計測してAD変換し、手順S204にて計測結果を仮IDとしてRAM6に格納する。次に、手順S205において、各ホール端末機器に備えたCPU5は送受信回路7を介して、手順204にて格納した仮IDデータを主制御装置1に送信する。次に、手順S206において、トランジスタ11により負荷抵抗10をOFFし、主制御装置1からの送信データ待ちとなる。
【0019】
主制御装置1は、図2の手順S103において、ホール端末機器21〜2Nから電圧レベル(仮ID)を受信すると、手順S104で電圧レベル値(仮ID)を格納し、手順S105で変数nがNと一致しているかを判定する。不一致の場合は、手順S10にて変数nに1を加え、他ホール端末機器からの電圧レベル(仮ID)受信待ち状態となる。
【0020】
手順S105にて変数nがホール端末機器接続数Nと一致するまで、手順S103から手順S106を繰り返す。変数nとホール端末機器接続数Nが一致すると、手順S107にて格納した電圧レベル(仮ID)を相対比較する。図1の構成においては、ホール端末機器21のデータが最大、次いでホール端末機器22、次いでホール端末機器23、最小がホール端末機器2Nとなるので、手順S108にて、ホール端末機器21の正式IDを1、ホール端末機器22の正式IDを2、ホール端末機器23の正式IDを3、ホール端末機器2Nの正式IDをNと決定する。
【0021】
次に、手順S110において、ホール端末機器に対し、仮IDに正式IDを付加したデータを送信し、正式ID設定完了信号受信待ちとなる。ホール端末機器は、手順S207でデータを受信すると、手順S208で仮IDを抽出し、手順S209において、手順S204にて格納した仮IDと一致するかを判定する。
【0022】
一致していれば、手順S210で正式IDを抽出し、手順S211でRAMに格納した仮IDを正式IDに変更し、手順S212にて正式ID設定完了信号を主制御装置1へ送信し、設定完了となる。一致していなければ、再び、主制御装置1からの送信データ待ち状態となる。
【0023】
そして、主制御装置1は、手順S110にて正式ID設定完了信号を受信すると、手順S111において、正式IDを全ホール端末機器へ送信したかを判定し、送信していなければ、手順S109から手順S111を繰り返す。全ホール端末機器への正式ID送信が終了すると、主制御装置1の設定も完了となる。
【0024】
以上述べたように、本発明の一実施例によれば、各ホール端末機器のIDを前記ホール端末機器に供給される電源電圧レベルの違いに基づいて決定することができるので、各ホール端末機器に設けていたスイッチは不要となり、また、スイッチの設定も不要となるため、前記ホール端末機器のID設定誤りを防止することもできる。
【符号の説明】
【0025】
1・・・エレベーター主制御装置
21〜2N・・・ホール端末機器
3・・・通信線
4・・・電源供給線
5・・・CPU
6・・・RAM
7・・・送受信回路部
8・・・電源入力部
9・・・AD変換回路部
10・・・負荷抵抗
11・・・負荷抵抗制御用トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの運行を制御する主制御装置と、各階ホールの呼び入力や運行表示等を行うホール端末機器と、前記主制御装置と前記ホール端末機器との間の通信線と、前記ホール端末機器に電源を供給する共通の電源線を備えたエレベーター装置において、階床毎に設置される前記ホール端末機器の固有識別番号(ID)を、各ホール端末機器に供給される前記電源からの電圧レベルの違いに基づいて決定することを特徴とするエレベーター装置。
【請求項2】
請求項1記載のエレベーター装置において、前記各ホール端末機器は夫々CPUを備え、供給される電源電圧レベルをAD変換して記憶部に格納すると共に、前記通信線を介して前記主制御装置に送信するように構成することを特徴とするエレベーター装置。
【請求項3】
請求項2記載のエレベーター装置において、前記主制御装置は、前記通信線を介して送信された各ホール端末機器からの電圧レベルを比較して各ホール端末機器のIDを決定し、前記通信線を介して前記各ホール端末機器に送信するように構成することを特徴とするエレベーター装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載されたエレベーター装置において、前記ホール端末機器は前記電源からの電圧を負荷抵抗を介して接地するスイッチング素子を備え、前記ホール端末機器の固有識別番号(ID)は、前記スイッチング素子を作動して接地したときの電圧レベルを用いて決定することを特徴とするエレベーター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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