説明

エレベータ排煙装置、エレベータ及びエレベータの排煙方法

【課題】火災時に発生する煙を昇降路から効率よく排煙できるエレベータ排煙装置、エレベータ、及びエレベータの排煙方法を提供する。
【解決手段】エレベータの運行を制御する制御部と、昇降路の高さ方向に沿って下層階から上層階にわたって設けられ、昇降路と区画される排煙ダクトと、排煙ダクトの昇降路に面する側面に設けられる複数の排煙扉と、排煙ダクトに設けられ、排煙ダクト内の空気を排煙ダクト外に排出する気流を発生させるダクトファンと、昇降路の下方に設置され、昇降路の気圧を加圧する昇降路ファンと、排煙ダクト内の気圧を検知するダクトセンサと、昇降路内の気圧を検知する昇降路センサと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ排煙装置、エレベータ及びエレベータの排煙方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータが設置されている建物において火災が発生した場合、火災発生階の煙がエレベータの昇降路を伝わって火災の発生していない階に広がることがある。また、エレベータの昇降路に煙が充満すると、そのエレベータは消火活動、救出活動に使用できなくなる。これらの問題は、高層のビルにおいて特に深刻な事態を引き起こす。
【0003】
この点に関し、昇降路の最下部からファンによって昇降路内部の気圧を加圧し、昇降路の最上部に設けた開口部から排煙する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−289949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、高層のビルでは昇降路の気圧を加圧している間に煙が広がってしまうという懸念がある。また、下層階において発生した煙を最上階に設けた開口部から排出することは、これらの間の昇降路に煙を充満させてしまうため、当該エレベータは非常時には使用できなくなってしまう。
【0006】
従って、本実施形態は火災時に発生する煙を昇降路から効率よく排煙できるエレベータ排煙装置、エレベータ及びエレベータの排煙方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、一実施形態はカゴ室と、錘と、カゴ室及び錘を吊りあげるロープと、ロープを巻き上げる巻き上げ機と、カゴ室が昇降する昇降路と、乗り場側ドアと、エレベータの運行を制御するエレベータ制御部と、エレベータの昇降路の高さ方向に沿って下層階から上層階にわたって設けられ、昇降路と区画される排煙ダクトと、排煙ダクトの昇降路に面する側面に設けられ、排煙時に開放する複数の排煙扉と、排煙ダクトに設けられ、排煙ダクト内の空気を排煙ダクト外に排出する気流を発生させる気流発生装置と、昇降路の下端に設置され、昇降路内部の気圧を排煙ダクト内部の気圧より高く加圧する加圧装置と、を備えるエレベータを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】エレベータの側面図である。
【図2】排煙扉の側面図である。
【図3】排煙扉付近の斜視図である。
【図4】エレベータ排煙装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、エレベータ排煙装置、エレベータ、及びエレベータの排煙方法の一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0010】
本実施形態のエレベータの一実施形態はカゴ室と、錘と、カゴ室及び錘を吊りあげるロープと、ロープを巻き上げる巻き上げ機と、カゴ室が昇降する昇降路と、乗り場側ドアと、エレベータの運行を制御するエレベータ制御部と、エレベータの昇降路の高さ方向に沿って下層階から上層階にわたって設けられ、昇降路と区画される排煙ダクトと、排煙ダクトの昇降路に面する側面に設けられ、排煙時に開放する複数の排煙扉と、排煙ダクトに設けられ、排煙ダクト内の空気を排煙ダクト外に排出する気流を発生させる気流発生装置と、昇降路の下端に設置され、昇降路内部の気圧を排煙ダクト内部の気圧より高く加圧する加圧装置と、を備える。
【0011】
図1は、本実施形態に係るエレベータ100の側面図である。図1に示すように、エレベータ100は、乗客を乗せるカゴ室101と、錘103と、カゴ室101及び錘103を吊りあげるロープ106と、ロープ106を巻き上げる巻き上げ機102と、カゴ室101が昇降する昇降路110と、乗り場側ドア104と、乗り場側ドア104の下方に設置されるステップ部105と、エレベータの運行を制御する制御部107と、昇降路110の高さ方向に沿って下層階から上層階にわたって設けられ、昇降路110と区画される排煙ダクト201と、排煙ダクト201の昇降路110に面する側面に設けられる複数の排煙扉202と、排煙ダクト201に設けられ、排煙ダクト201内の空気を排煙ダクト201外に排出する気流を発生させる気流発生装置であるダクトファン203と、昇降路110の下方に設置され、昇降路110の気圧を加圧する加圧装置である昇降路ファン205と、排煙ダクト201内の気圧を検知する第1気圧センサであるダクトセンサ206と、昇降路110内の気圧を検知する第2気圧センサである昇降路センサ207と、を備える。
【0012】
カゴ室101は、カゴ室側ドア101Aと、カゴ室側ドア101Aの昇降路110側に設置される係合装置101Bと、を備える。
【0013】
乗り場側ドア104は、昇降路110側に係合装置101Bと係合する突起部104Aを備える。
【0014】
制御部107は、指示された行き先階までカゴ室101を昇降させる。行き先階にカゴ室101が到着すると、係合装置101Bと突起部104Aとが係合している状態となる。この状態にてカゴ室側ドア101Aが開閉すると乗り場側ドア104が従動して開閉する。
【0015】
排煙ダクト201は昇降路110の高さ方向、すなわち縦方向に沿って設けられる。排煙ダクト201は最下層の階から最上層の階にわたって設けられることが望ましい。排煙ダクト201の内部空間は排煙扉202が全て閉まっている状態では昇降路110と区画されている。従って、排煙扉202が全て閉まっている状態では昇降路110の空気と排煙ダクト201の空気とは混ざり合わない。
【0016】
排煙ダクト201は、昇降路110に面した側面に各階から侵入する煙を排出するのに適した位置に複数の排煙扉202を備える。各階から侵入する煙を排出するのに適した位置とは、例えば各階の乗り場側ドア104の位置以上の高さである。
【0017】
排煙扉202は各階の乗り場側ドア104の数以上の数を設けることが望ましい。排煙扉202は、制御部107の指示に従って開閉する。
【0018】
排煙ダクト201は排煙ダクト201の上部、望ましくは排煙ダクト201の最上部にダクトファン203として排気ファンを備えることができる。排気ファンは排煙ダクト201内部の空気をエレベータ100の外に排気する。
【0019】
排煙ダクト201は排煙ダクト201の排気ファンより下部、望ましくは排煙ダクト201の最下部にダクトファン203として吸気ファンを備えることができる。吸気ファンはエレベータ100の外部の空気を排煙ダクト201内に吸引する。
【0020】
ダクトファン203は、排気ファン及び吸気ファンのいずれかを備えていても、両方を備えていてもよい。
【0021】
ダクトセンサ206は昇降路センサ207と同じ高さに設置されることが、測定誤差を生じさせないという点から望ましい。
【0022】
制御部107は、ダクトセンサ206と昇降路センサ207とが検知した気圧を比較し、排煙ダクト201の内部の気圧が昇降路110の内部の気圧より低くなるようにダクトファン203及び昇降路ファン205を制御する。制御部107は、電力を節約しつつ排煙効果を得るために、例えば排煙ダクト201の内部の気圧が昇降路110の内部の気圧より40Pa以上50Pa以下だけ低くなるようにダクトファン203及び昇降路ファン205を制御することができる。なお、気圧差はこれ以上あっても構わない。
【0023】
昇降路ファン205は、昇降路110の下端、すなわち最下層の階より下方に設けられることが排煙効率の点から望ましい。
【0024】
昇降路ファン205によって吸引された空気は矢印X1方向に流れ、昇降路110の気圧を加圧する。
【0025】
ダクトファン203は排煙ダクト201の下方から上方に向かう矢印X2方向の気流を生じさせる。
【0026】
制御部107は、例えば火災報知器から入力した火災が発生した階F1の情報を入力する。制御部107は火災発生階F1にて生じた煙Sを排煙するのに適した位置にある排煙扉202のIDをメモリから読み出し、このIDに対応する排煙扉202を開放する。
【0027】
ここで、制御部107は複数の排煙扉202の開き具合を制御してもよい。例えば、火災発生階F1の直近の排煙扉202を全開にし、この排煙扉202に隣接する排煙扉202を半開にするように制御することもできる。
【0028】
また、煙感知機から入力した値に応じて、煙が多いときは火災発生階F1以外の階F2に直近の排煙扉202を開放するように制御することもできる。
【0029】
図2は、排煙扉202の側面図である。図2に示すように、排煙扉202は、シャッタ202Bと、シャッタ202Bを格納する戸袋202Aと、シャッタ202Bを開閉させる排煙扉駆動部202Cと、を備える。シャッタ202Bは、排煙扉駆動部202Cの歯車がかみ合う歯202B1を備える。
【0030】
排煙扉駆動部202Cが矢印X5の方向に回転するとシャッタ202Bは矢印X6の方向に変位し、排煙扉202が開放される。
【0031】
図3は、排煙扉202付近の斜視図である。図3に示すように、排煙扉202は排煙ダクト201の昇降路110に面した側面に設けられる。シャッタ202Bが開くと、昇降路110と排煙ダクト201が連結され、昇降路110の煙は排煙ダクト201の内部に吸い込まれる。
【0032】
図4は、エレベータ排煙装置の構成を示すブロック図である。図4に示すように、エレベータ100が備えるエレベータ排煙装置は、制御部107としてのCPU401と、記憶装置であるメモリ402と、火災報知器及びエレベータ100の制御盤との通信を行うインターフェース(I/F)403と、を備える。
【0033】
CPU401は、ダクトセンサ206及び昇降路センサ207からの出力を入力する。CPU401は、ダクトファン203と昇降路ファン205の回転数を制御する。CPU401は、各排煙扉202の排煙扉駆動部202Cを制御する。
【0034】
以上のべたように、本実施形態のエレベータ100は、エレベータの運行を制御する制御部107と、昇降路110の高さ方向に沿って下層階から上層階にわたって設けられ、昇降路110と区画される排煙ダクト201と、排煙ダクト201の昇降路110に面する側面に設けられる複数の排煙扉202と、排煙ダクト201に設けられ、排煙ダクト201内の空気を排煙ダクト201外に排出する気流を発生させるダクトファン203と、昇降路110の下方に設置され、昇降路110の気圧を加圧する昇降路ファン205と、排煙ダクト201内の気圧を検知するダクトセンサ206と、昇降路110内の気圧を検知する昇降路センサ207と、を備える。
【0035】
従って、本実施形態によれば、火災時に発生する煙を昇降路110から効率よく排煙でき、煙の昇降路110内及び火災発生階以外の階への還流を防止することができるという効果がある。
【0036】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0037】
101:カゴ室
102:巻き上げ機
104:乗り場側ドア
105:ステップ部
107:制御部
201:排煙ダクト
202:排煙扉
203:ダクトファン
205:昇降路ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの昇降路の高さ方向に沿って下層階から上層階にわたって設けられ、前記昇降路と区画される排煙ダクトと、
前記排煙ダクトの前記昇降路に面する側面に設けられ、排煙時に開放する複数の排煙扉と、
前記排煙ダクトに設けられ、前記排煙ダクト内の空気を前記排煙ダクト外に排出する気流を発生させる気流発生装置と、
前記昇降路の下端に設置され、前記昇降路内部の気圧を前記排煙ダクト内部の気圧より高く加圧する加圧装置と、
を備えるエレベータ排煙装置。
【請求項2】
火災発生階の直近の前記排煙扉を火災発生時に開放する制御部をさらに備える請求項1記載のエレベータ排煙装置。
【請求項3】
前記制御部は、
火災発生時に複数の前記排煙扉の開き具合を制御する請求項2記載のエレベータ排煙装置。
【請求項4】
前記排煙ダクト内の気圧を検知する第1気圧センサと、
前記昇降路内の気圧を検知する第2気圧センサと、をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1気圧センサ及び前記第2気圧センサの出力に基づいて前記昇降路内部の気圧を前記排煙ダクト内部の気圧より高く加圧するように前記加圧装置を制御する請求項3記載のエレベータ排煙装置。
【請求項5】
カゴ室と、
錘と、
前記カゴ室及び前記錘を吊りあげるロープと、
前記ロープを巻き上げる巻き上げ機と、
前記カゴ室が昇降する昇降路と、
乗り場側ドアと、
エレベータの運行を制御するエレベータ制御部と、
前記エレベータの昇降路の高さ方向に沿って下層階から上層階にわたって設けられ、前記昇降路と区画される排煙ダクトと、
前記排煙ダクトの前記昇降路に面する側面に設けられ、排煙時に開放する複数の排煙扉と、
前記排煙ダクトに設けられ、前記排煙ダクト内の空気を前記排煙ダクト外に排出する気流を発生させる気流発生装置と、
前記昇降路の下端に設置され、前記昇降路内部の気圧を前記排煙ダクト内部の気圧より高く加圧する加圧装置と、
を備えるエレベータ。
【請求項6】
前記制御部は、
火災発生階の直近の前記排煙扉を火災発生時に開放する請求項5記載のエレベータ。
【請求項7】
前記制御部は、
火災発生時に複数の前記排煙扉の開き具合を制御する請求項6記載のエレベータ。
【請求項8】
前記排煙ダクト内の気圧を検知する第1気圧センサと、
前記昇降路内の気圧を検知する第2気圧センサと、をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1気圧センサ及び前記第2気圧センサの出力に基づいて前記昇降路内部の気圧を前記排煙ダクト内部の気圧より高く加圧するように前記加圧装置を制御する請求項7記載のエレベータ。
【請求項9】
エレベータの昇降路の高さ方向に沿って下層階から上層階にわたって設けられ、前記昇降路と区画される排煙ダクト内の気圧を前記昇降路内の気圧より低くし、
前記排煙ダクトの前記昇降路に面する側面に設けられる複数の排煙扉のうちの一部を開放し、
火災発生階にて発生した煙を前記昇降路から前記排煙ダクトに流入させて排煙するエレベータの排煙方法。
【請求項10】
火災発生階の直近の前記排煙扉を火災発生時に開放する請求項9記載のエレベータの排煙方法。
【請求項11】
火災発生時に複数の前記排煙扉の開き具合を制御する請求項10記載のエレベータ排煙方法。
【請求項12】
前記排煙ダクト内の気圧を検知する第1気圧センサと、前記昇降路内の気圧を検知する第2気圧センサとの出力に基づいて前記昇降路内部の気圧を前記排煙ダクト内部の気圧より高く加圧するように前記加圧装置を制御する請求項11記載のエレベータ排煙方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−180135(P2012−180135A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42067(P2011−42067)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】