説明

エレベータ昇降路の落下養生方法

【課題】かごE1上にフレーム1を組んでアスベスト除去作業を行う場合に、簡単に落下防止の養生をする。
【解決手段】縦枠2と横枠3とにより組まれてかごE1の上に設置されたフレーム1において縦枠2よりも外方へ突出する突出部3pa,3pbを設け、棒体11を並列配置して該棒体間に養生材12を張って構成された落下養生具10の棒体11を、突出部3pa,3pbに交差させて架設することにより、当該落下養生具10によってかごE1と昇降路壁E6との間隙を落下養生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エレベータの保守点検、改修に関する技術が以下に開示される。
【背景技術】
【0002】
商業用ビルなどの建築物において、エレベータ昇降路内の壁面や鉄骨に耐火性向上の目的で、アスベストを吹き付けてあるものが現存する。そこで、特許文献1に開示される技術を使用して、昇降路内のアスベスト除去が実施される。特許文献1の被覆材除去方法は、かご上にフレームを組み上げ、該フレームを利用して昇降路壁面を透明のカバーで養生し、この養生したカバー内でアスベストを掻き落とす方法である。フレームは、かご上に立設した縦枠とこの縦枠に架け渡した横枠とにより組まれ、作業時の足場及び作業員の落下防止柵として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−113986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の図面からも分かるように、一般に、エレベータのかごの横と後側には昇降路壁との間に間隙があり、ここから工具等が落下し得る。したがって、上記のように、かご上にフレームを組んでアスベスト除去作業を行う場合に、落下防止の養生が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に対して提案するエレベータ昇降路の落下養生方法は、
縦枠と横枠とにより組まれてかごの上に設置されたフレームにおいて前記縦枠よりも外方へ突出する突出部を設け、
少なくとも2本の棒体を並列配置して該棒体間に養生材を張って構成された落下養生具の前記棒体を、前記突出部に交差させて架設することにより、
当該落下養生具によって前記かごと昇降路壁との間隙を落下養生する、落下養生方法である。
【発明の効果】
【0006】
上記提案に係るエレベータ昇降路の落下養生方法によれば、使い回し可能な落下養生具によって、かごと昇降路壁との間隙に関し、簡単に落下養生をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】かご上にフレームを組むと共に落下養生具を設置した状態を側方から見て示す昇降路内の図。
【図2】図1に示すフレームの最下層の横枠と落下養生具について上方から見て示す昇降路内の図。
【図3】実施形態に係る落下養生具の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1及び図2に、一例として、特許文献1に開示されるアスベスト除去作業に際し、エレベータのかご上に組み上げられるフレームを示す。
エレベータのかごE1は、周知のように、鉛直方向の昇降路E2内において、かごE1を挟むようにして左右に延設されているガイドレールE3に案内されて上下動する。また、かごE1は、昇降路E2内で、前側にある乗降口E4へ近接するように配置され、後側には、図示せぬカウンターウエイトを案内するガイドレールE5が延設される。したがって、昇降路E2内において、かごE1と昇降路壁E6との間隙は、かごE1の左右と後側の三方において広く空いている。
【0009】
フレーム1は、上面視で四角形の頂点をなすようにしてかごE1の上に立設された4本の縦枠2と、この縦枠2に対し、前後及び左右方向に架け渡して井桁に組み付けた横枠3と、により組まれ、作業時の足場及び作業員の落下防止柵として機能する。縦枠2は、建物の1階分に相当する高さに立設され、この縦枠2に対し、足場となる横枠3が複数段、組み付けられる。足場管を使った縦枠2及び横枠3は、足場クランプ(直交クランプ又は自在クランプ)4を介して互いに組み付けられている。
【0010】
本実施形態のフレーム1において、足場床を形成するための最下層の横枠3fa,3fbは、その他の横枠3と違い、次のように組まれている。
【0011】
まず、前後方向に延びる横枠3faは、縦枠2の下端部に取り付けられた調整ジャッキ2aに対し、足場クランプ4により組み付けられる。調整ジャッキ2aがあることにより、各縦枠2の高さを調整することができる。横枠3faは他の横枠3よりも長く、その前側端部は当接板により前側の昇降路壁E6に当接する。一方、当該横枠3faの後側は、縦枠2からさらに昇降壁E6へ向け延長された延長部分として存在し、縦枠2よりも外方へ突出する突出部3paが形成される。そして、この突出部3paの先端である横枠3faの後側延長部分の端部に、突っ張りジャッキ3fcが取り付けられており、該突っ張りジャッキ3fcが昇降路壁E6に当接して押圧する。突っ張りジャッキ3fcの押圧により、横枠3faは、突っ張り棒のごとく昇降路E2内に配置される。
【0012】
なお、突っ張りジャッキ3fcによる押圧を利用して突っ張り棒状態にしておくことが、後述の落下養生具を支持し、落下物の荷重を受け止める機能のためには好ましいが、必ずしも突っ張りジャッキ3fcを設けなければならないというわけではない。また、突出部3paとしては、横枠3の延長部分を利用するほかにも、別途のブラケットを縦枠2に固定して突出部とすることも可能であるが、フレーム1の設置工数や材料費を勘案すると、本実施形態のごとく長い横枠3faを使用するのが優れている。
【0013】
前後方向に延びる横枠3faには、床下ジャッキ3fdが足場クランプ4により組み付けられる。床下ジャッキ3fdはかごE1の天井に載置されてフレーム1を下支えするものであるが、本実施形態のフレーム1は次に述べるようにガイドレールE3,E5によって支持されるので、床下ジャッキ3fdを不要とすることもできる。横枠3faにはまた、点線で示すごとく足場床3feが載せられ、作業用の床として機能する。
【0014】
次に、左右方向に延びる横枠3fbは、前後方向の横枠3faの下側に、足場クランプ4により組み付けられる。この横枠3fbは、足場クランプ4を介して、ガイドレールブラケット3ffに固定される。ガイドレールブラケット3ffは、特許文献1の図17〜図19に開示されるものと同等のブラケットで、ガイドレールE3,E5に固定されて、フレーム1及び作業時の荷重を支える。ガイドレールE3,E5を利用して荷重を支えることにより、かごE1の天井に荷重集中部位ができないように工夫してある。
【0015】
左右方向に延びる横枠3fbも、他の横枠3より長く、その左右両側において縦枠2からさらに昇降壁E6へ向け延長された延長部分が存在し、縦枠2よりも外方へ突出する突出部3pbがそれぞれ形成される。横枠3fbの左側端部(又は右側端部)は当接板により左側の昇降路壁E6に当接する。また、横枠3fbの右側(又は左側)延長部分の端部、すなわち突出部3pbの先端に、突っ張りジャッキ3fcが取り付けられており、該突っ張りジャッキ3fcが昇降路壁E6に当接して押圧する。突っ張りジャッキ3fcの押圧により、横枠3fbも、突っ張り棒のごとく昇降路E2内に配置され、後述の落下養生具を支持する。
【0016】
以上のように、縦枠2と横枠3とにより組まれてかごE1の上に設置されたフレーム1において縦枠2よりも外方へ突出する、前後方向の突出部3pa及び左右方向の突出部3pbに、落下養生具10がそれぞれ載置される(載せるだけでもよいが、結束するのもよい)。図3Aに詳細を示すように、落下養生具10は、並列配置した2本の棒体11と、この2本の棒体11間に張られた養生材12と、を含んで構成される担架型である。その棒体11は、金属製、木製、又は樹脂製の円柱や角柱で、好ましくは、昇降路E2の前後又は左右方向の径相当の長さとされ、当該棒体11が、突出部3pa,3pbに交差させて架設される。棒体11は2本あればよいが、耐荷重性能を向上させたければ3本以上を並列にしたものも可能である。養生材12は柔軟な材料のネット、布、樹脂製シートなどで、落下物をバウンドさせないことを考えると、ネットとするのが適している。このように、2本の棒体11を並列配置して該棒体11間に養生材12を張って構成された落下養生具10は、2本の棒体11の間の幅を自在に変えることができるので、昇降路E2内の前後方向にも左右方向にも使用することができる。
【0017】
図3Bに示すのは、落下養生具10の変形例で、棒体11の一方(両方でもよい)から垂下する延長養生材13を形成した例である。延長養生材13には切れ目13aが形成されており、設置に際し障害物があれば避けることができるようにしてある。この延長養生材13は、図1に点線で示すように、突出部3pa上に設置した落下養生具10から垂れ下げて、横枠3fbや床下ジャッキ3fdに結束することにより、フレーム1の床近くから落下し得る落下物を受け止めることができる。なお、同様に、延長養生材13を有する落下養生具10を左右側の突出部3pbに適用することも可能である。
【0018】
落下養生具10は、図2に示すように、フレーム1後側の突出部3pa上に載置されてかごE1の後側において左右方向へ伸延し、かごE1後側の間隙を養生する。また、落下養生具10は、フレーム1左右側の突出部3pb上に載置されてかごE1の左右両側において前後方向へ伸延し、かごE1左右側の間隙を養生する。
【0019】
図2の場合、かごE1後側を落下養生する落下養生具10の端部に対し、かごE1左右側を落下養生する落下養生具10の端部を重ねていないが、当該端部を重ねるようにして互いに結束しておくこともできる。
【0020】
本実施形態の落下養生具10は、フレーム1の突出部3pa,3pbに載置するだけで、かごE1と昇降路壁E6との間隙に関し、簡単に落下養生をすることができる。載置するだけでよいので、一つの階の作業後に次の階の作業へ移動する際にも簡単に取り外せ、各階へ使い回しすることが可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 フレーム
2 縦枠
3,3fa,3fb 横枠
3fc ジャッキ
3pa,3pb 突出部(延長部分)
10 落下養生具
11 棒体
12 養生材
13 延長養生材
E1 かご
E2 昇降路
E3,E5 ガイドレール
E4 乗降口
E6 昇降路壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦枠と横枠とにより組まれてかごの上に設置されたフレームにおいて前記縦枠よりも外方へ突出する突出部を設け、
少なくとも2本の棒体を並列配置して該棒体間に養生材を張って構成された落下養生具の前記棒体を、前記突出部に交差させて架設することにより、
当該落下養生具によって前記かごと昇降路壁との間隙を落下養生する、エレベータ昇降路の落下養生方法。
【請求項2】
前記フレームの突出部が前記横枠の延長部分である、請求項1記載の落下養生方法。
【請求項3】
前記横枠の延長部分の端部に、前記昇降路壁に当接して押圧するジャッキを取り付ける、請求項2記載の落下養生方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の落下養生方法に使用する落下養生具であって、
並列配置した少なくとも2本の棒体と、該棒体間に張られた養生材と、を含んで構成される、落下養生具。
【請求項5】
前記棒体の少なくとも一方から垂下する延長養生材が形成される、請求項4の落下養生具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−30927(P2012−30927A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171511(P2010−171511)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000189800)常盤工業株式会社 (9)
【出願人】(503364320)井上定株式会社 (4)
【出願人】(500303940)株式会社 小川テック (14)
【出願人】(510169424)株式会社トッププランニングJAPAN (4)
【出願人】(510169435)株式会社ヨシケン (4)
【Fターム(参考)】