説明

エレベータ用情報処理装置

【課題】乗りかごに乗り込むだけで乗客の健康管理意識を高められると共に、エコ効果を促進できる機能を有するエレベータ用情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理装置4では、カロリ消費量算出部41において、乗りかごに乗客が乗り込んだときの乗り込み階と乗客の行き先を登録した行き先階(行き先階登録装置1から得られる)との情報に対応する建物データ格納部41aに格納された建物データに基づいて、エレベータを利用せずに行き先階まで階段を利用して上り又は下りした場合におけるカロリ消費量(消費エネルギー)を概算する。個人情報管理部42では、乗客個人を認識するために乗りかご、各階の乗り場の少なくとも一方側に設けられた個人認識装置2から得られた個人情報を管理し、表示データ制御部43では、個人情報に基づいてかご内表示装置5の表示画面上にカロリ消費量についての表示データをエレベータ運転情報に付加して表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ制御装置に付設されると共に、エレベータに連動する情報処理装置であって、詳しくは乗客の健康管理意識及びエコ効果を促進する機能を有するエレベータ用情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータに連動するエレベータ用情報処理装置に関連する周知技術としては、例えばエレベータの乗りかご内に設けた提示装置において、エレベータの運転情報以外の情報として、情報処理装置で生成した電子ペットの仕種や鳴き声を乗りかご内の乗客が知覚可能に出力するようにしたエレベータにおける娯楽提供装置及びその方法(特許文献1参照)等が挙げられる。
【0003】
一方、個人が携帯する携帯端末の分野では、例えば表示画面上に消費エネルギー(カロリ消費量を表示するようにした携帯端末および通勤ガイド支援システム(特許文献2参照)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−7239号公報
【特許文献2】特開2003−244767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に係るエレベータ用情報処理装置に関連する技術は、あくまでも乗りかご内に設けられる呈示装置により音や光で娯楽情報を呈示するものであり、エレベータを利用する乗客についての健康意識を高めたり、或いは利用頻度を抑制する等のエコ効果には何等寄与しないものとなっている。
【0006】
また、特許文献2に係る技術は、あくまでも個人が携帯する携帯端末に対する表示機能であり、乗りかごを複数人が利用する機会の多いエレベータ機構を対象としたものではないため、乗客相互間で健康意識を高めるような効果は期待できず、しかも消費エネルギー(カロリ消費量)を表示する携帯端末を個人が必ず携帯していなければならないという不便さを伴うものとなっている。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、表示機能を備えた特別な携帯端末を携帯する必要がなく、乗りかごに乗り込むだけで乗客の健康管理意識を高められると共に、エコ効果を促進できる機能を有するエレベータ用情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記技術的課題を解決するため、乗りかごの昇降動作を制御するエレベータ制御装置に付設されるエレベータ用情報処理装置において、乗りかごに乗客が乗り込んだときの乗り込み階と当該乗客の行き先を登録した行き先階との情報に対応する建物データに基づいて、エレベータを利用せずに当該行き先階まで階段を利用して上り又は下りした場合における消費エネルギーを概算する消費エネルギー算出手段と、乗りかご内で乗客に消費エネルギーの情報を報知する報知手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記エレベータ用情報処理装置の一実施態様は、エレベータ用情報処理装置において、建物データは、少なくとも同一階床上でのエレベータ設置位置から階段設備位置までの移動距離、並びに建物全体の高さに対する各階間の間隔における階段についての総数及び段差を含む階段データであることを特徴とする。
【0010】
上記何れかのエレベータ用情報処理装置の他の実施態様は、乗客についての個人を認識するために乗りかご及び各階の乗り場の少なくとも一方側に設けられた個人認識手段から得られた個人情報を管理する個人情報管理手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、上記何れか1つのエレベータ用情報処理装置の別の実施態様は、報知手段は、乗りかご内に設置されて表示画面上に消費エネルギーを表示する表示装置であり、個人情報に基づいて表示画面上に消費エネルギーについての表示データをエレベータ運転情報に付加して表示するための表示データ制御部を備えたことを特徴とする。このエレベータ用情報処理装置において、表示データ制御部は、表示データとして、個人情報に基づいて乗客が一人の場合と複数人乗り合わせている場合とを識別して消費エネルギーについての表示内容を異なるパターンとすることが好ましい。
【0012】
加えて、上記何れか1つのエレベータ用情報処理装置の更に別の実施態様は、個人情報管理手段から得られる個人情報に対応するエレベータの利用状況を統計的に蓄積して管理すると共に、当該エレベータの利用状況に応じた当該個人情報についての属性データを当該個人情報に付与して当該個人情報管理手段との間で授受する外部端末を備えたことを特徴とする。このエレベータ用情報処理装置において、属性データには、乗客に係る体重変化のデータが含まれることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエレベータ用情報処理装置によれば、エレベータの乗りかごに乗り込んだ乗客に対して階段を利用した場合の消費エネルギー(カロリ消費量)の情報を提供(報知)することができるため、表示機能を備えた特別な携帯端末を携帯する必要がなく、乗りかごに乗り込むだけで乗客の健康管理意識を高められると共に、乗客がエレベータの利用頻度を少なくすることによるエコ効果の促進を大いに期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1に係るエレベータ用情報処理装置の基本構成を周辺部分の関連装置を含めて示した要部の概略ブロック図である。
【図2】図1に示すエレベータ用情報処理装置を含むエレベータ機構が設備される様子を示した概略図であり、(a)は建物の各階に対応するエレベータ機構の乗り場側と階段設備との対応を示した概略図、(b)はエレベータ機構に備えられる乗りかご内の概略図である。
【図3】図1に示すエレベータ用情報処理装置に付設されると共に、図2(b)に示す乗りかご内に設けられるかご内表示装置の表示画面上におけるカロリ消費量の表示パターンを例示した図であり、(a)は乗客が複数人の場合の表示パターンを例示した図、(b)は乗客が一人の場合の表示パターンを例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明のエレベータ用情報処理装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例1に係るエレベータ用情報処理装置4の基本構成を周辺部分の関連装置を含めて示した要部の概略ブロック図である。
【0017】
このエレベータ用情報処理装置4は、エレベータ機構の乗りかごの昇降動作を制御するエレベータ制御装置3に付設されると共に、エレベータ機構に連動するもので、乗りかごに乗り込んだ乗客の健康管理意識及びエコ効果を促進する機能を有する。
【0018】
具体的に云えば、このエレベータ用情報処理装置4は、周辺部分の関連装置として、上述したエレベータ制御装置3の他、乗客が乗り込む乗りかご内に設置されて行き先を登録する行き先階登録装置(かご呼びとも呼ばれる)1と、乗りかご側又は各階の乗り場(ホール)側に設置されて乗りかごに乗り込む乗客の個人を認識するための個人認識装置2と、個人を認識した個人情報を管理する健康管理センタ(サーバ)7及びこれに接続されて個人情報についての属性データである体重変化のデータ等の健康管理情報を受信する個人管理端末(PC:パーソナルコンピュータ)6と、乗りかご内に設置されてエレベータ運転情報や消費エネルギー(カロリ消費量)を表示するためのかご内表示装置5と、を備えている。
【0019】
エレベータ用情報処理装置4自体は、エレベータ制御装置3からの運転制御信号(エレベータ運転情報を含む)を入力し、乗りかごに乗客が乗り込んだときの乗り込み階と乗客の行き先を登録した行き先階(行き先階登録装置1から得られる)との情報に対応する建物データ格納部41aに格納された建物データに基づいて、エレベータを利用せずに行き先階まで階段を利用して上り又は下りした場合におけるカロリ消費量(消費エネルギー)を概算するカロリ消費量算出部41と、乗客についての個人を認識するために乗りかご及び各階の乗り場の少なくとも一方側に設けられた個人認識装置2から得られた個人情報を管理する個人情報管理部42と、エレベータ制御装置3から入力した運転制御信号(エレベータ運転情報を含む)、個人情報管理部42からの個人情報に基づいてかご内表示装置5の表示画面上にカロリ消費量算出部41から得られたカロリ消費量についての表示データをエレベータ運転情報に付加して表示するためのコンテンツを制御する表示データ制御部43と、を備えて構成される。このため、かご内表示装置5は、エレベータ運転情報を表示するエレベータ運転情報表示部51と、カロリ消費量を表示するカロリ消費量表示部52とを有する。
【0020】
因みに、かご内表示装置5は、基本的に乗りかご内で乗客にカロリ消費量の情報を報知する報知手段としての機能を持つものであれば良く、例えば個人情報に基づいて乗りかごに付設されたスピーカから音声等でカロリ消費量をアナウンスして乗客に認識させるための音声パターンデータの発生に要するコンテンツを制御する音声パターンデータ制御部を表示データ制御部43に代えて備える構成にしても良い。また、上述した健康管理センタ7及び個人管理端末6は、個人情報管理部42から得られる個人情報に対応するエレベータの利用状況を統計的に蓄積して管理すると共に、エレベータの利用状況に応じた個人情報についての属性データ(例えば乗客に係る体重変化のデータ)を個人情報に付与して個人情報管理部42との間で授受する外部端末として機能する。即ち、個人情報管理部42は、個人のエレベータ利用状況やカロリ消費量を管理する。
【0021】
以下は、図1に示したエレベータ用情報処理装置4の基本動作を説明する。
【0022】
乗客がエレベータ機構の乗りかごに乗り込み、行き先階登録装置(かご呼び)1によって入力した行き先階の情報は、エレベータ制御装置3及びカロリ消費量算出部41に送信される。カロリ消費量算出部41では、建物データ格納部41aに予め格納されている建物データに基づいて、その階移動に対応する階段利用時のカロリ消費量を概算する。
【0023】
ここでの建物データは、一般に各階の高さや階段の段差は建物によってまちまちであるため、エレベータ機構が設備された建物における少なくとも同一階床上でのエレベータ設置位置から階段設備位置までの移動距離、並びに建物全体の高さに対する各階間の間隔における階段についての総数及び段差を含む階段データを示すものである。
【0024】
概算されたカロリ消費量のデータは、個人情報管理部42及び表示データ制御部43に送信される。表示データ制御部43では、乗りかご内のかご内表示装置5のエレベータ運転情報表示部51にはエレベータ運転情報のデータを、カロリ消費量表示部52にはカロリ消費量のデータを表示するためのコンテンツ制御を行い、これにより表示が行われる。
【0025】
個人情報管理部42は、例えばIDカード等を使用可能なカードリーダ等の個人識別装置2から得られる個人情報について、識別した個人のエレベータ利用状況、階段利用時のカロリ消費量を管理すると共に、その個人情報に付帯する属性データを含めて管理する外部の個人管理端末6や健康管理センタ7等との間で個人情報の授受が可能なものである。
【0026】
例えば健康管理センタ7で個人のエレベータ利用状況、階段利用時のカロリ消費量を健康管理データとして統計的に管理登録し、その統計処理された健康管理データを個人情報として受信し、かご内表示装置5のカロリ消費量表示部52上に表示させて階段利用を促したり、或いはエレベータ機構から隔てられた場所で独自に個人の健康管理データを管理することが可能である。
【0027】
図2は、上述したエレベータ用情報処理装置4を含むエレベータ機構が設備される様子を示した概略図であり、同図(a)は建物の各階に対応するエレベータ機構の乗り場側と階段設備との対応を示した概略図、同図(b)はエレベータ機構に備えられる乗りかご8内の概略図である。
【0028】
図2(a)では、上述した個人認識装置2として、エレベータの乗りかご8が昇降する各階毎に乗り場(ホール)側個人認識装置21が設けられた様子(略図するホール呼びボタンの近傍に設けられる)を示している。
【0029】
図2(b)では、乗りかご8内の構成として、行き先階登録装置1の上側にかご内表示装置5が配備されると共に、行き先階登録装置1の下側に上述した個人認識装置2として、乗りかご(かご呼び)側個人認識装置22が配備された様子を示している。
【0030】
なお、乗り場側個人認識装置21、乗りかご側個人認識装置22は、何れか一方が設けられていれば良いものであるが、勿論、設備コストに余裕があれば両方に設けられて良いものである。
【0031】
図3は、かご内表示装置5の表示画面上におけるカロリ消費量の表示パターンを例示した図であり、同図(a)は乗客が複数人の場合の表示パターンを例示した図、同図(b)は乗客が一人の場合の表示パターンを例示した図である。
【0032】
図3(a)では、乗客が複数人の場合の各人に共通するカロリ消費量の表示パターンを例示しており、乗りかご8に乗り込んだ乗客の各人が認識し得る情報として、1階から10階まで階段を利用した場合の消費カロリを表示した場合を示している。
【0033】
図3(b)では、乗客が1人の場合の個人に対するカロリ消費量の表示パターンを例示しており、乗りかご8に乗り込んだ乗客の個人が認識し得る情報として、その月のエレベータの利用回数と、階段を利用していた場合のカロリ消費量とを表示した場合を示している。個人に対するカロリ消費量の表示パターンについては、上述した外部の個人管理端末6や健康管理センタ7等からの属性データ付き個人情報に使用すれば、概算により乗客の個人についての体重減データ等を呈示することも可能である。
【0034】
何れにしても、乗りかご8に乗り込んだ乗客数に応じてカロリ消費量の表示内容を変えることが可能であるため、特に個人情報を活用することで乗客の健康意識を高め、エレベータの利用頻度を少なくするように促進すれば、エコ効果にも貢献し得るものとなる。
【符号の説明】
【0035】
1 行き先階登録装置
2 個人認識装置
3 エレベータ制御装置
4 エレベータ用情報処理装置
5 かご内表示装置
6 個人管理端末
7 健康管理センタ
8 乗りかご
21 乗り場側個人認識装置
22 乗りかご側個人認識装置
41 カロリ消費量算出部
41a 建物データ格納部
42 個人情報管理部
43 表示データ制御部
51 エレベータ運転情報表示部
52 カロリ消費量表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの昇降動作を制御するエレベータ制御装置に付設されるエレベータ用情報処理装置において、前記乗りかごに乗客が乗り込んだときの乗り込み階と当該乗客の行き先を登録した行き先階との情報に対応する建物データに基づいて、エレベータを利用せずに当該行き先階まで階段を利用して上り又は下りした場合における消費エネルギーを概算する消費エネルギー算出手段と、前記乗りかご内で前記乗客に前記消費エネルギーの情報を報知する報知手段と、を備えたことを特徴とするエレベータ用情報処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のエレベータ用情報処理装置において、前記建物データは、少なくとも同一階床上でのエレベータ設置位置から階段設備位置までの移動距離、並びに建物全体の高さに対する各階間の間隔における階段についての総数及び段差を含む階段データであることを特徴とするエレベータ用情報処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のエレベータ用情報処理装置において、前記乗客についての個人を認識するために前記乗りかご及び各階の乗り場の少なくとも一方側に設けられた個人認識手段から得られた個人情報を管理する個人情報管理手段を備えたことを特徴とするエレベータ用情報処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載のエレベータ用情報処理装置において、前記報知手段は、前記乗りかご内に設置されて表示画面上に前記消費エネルギーを表示する表示装置であり、前記個人情報に基づいて前記表示画面上に前記消費エネルギーについての表示データをエレベータ運転情報に付加して表示するための表示データ制御部を備えたことを特徴とするエレベータ用情報処理装置。
【請求項5】
請求項4記載のエレベータ用情報処理装置において、前記表示データ制御部は、前記表示データとして、前記個人情報に基づいて前記乗客が一人の場合と複数人乗り合わせている場合とを識別して前記消費エネルギーについての表示内容を異なるパターンとすることを特徴とするエレベータ用情報処理装置。
【請求項6】
請求項3〜5の何れか1項記載のエレベータ用情報処理装置において、前記個人情報管理手段から得られる前記個人情報に対応するエレベータの利用状況を統計的に蓄積して管理すると共に、当該エレベータの利用状況に応じた当該個人情報についての属性データを当該個人情報に付与して当該個人情報管理手段との間で授受する外部端末を備えたことを特徴とするエレベータ用情報処理装置。
【請求項7】
請求項6記載のエレベータ用情報処理装置において、前記属性データには、前記乗客に係る体重変化のデータが含まれることを特徴とするエレベータ用情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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