説明

エレベータ装置

【課題】簡素な構成で、エレベータの戸が開いた状態で、かごが昇降することを防止する。
【解決手段】昇降体と、昇降体を鉛直方向にガイドするガイドレールと、エレベータの戸の開閉状態を検出する戸開閉検出器と、昇降体の昇降に同期して循環移動する調速用ロープと、調速用ロープに接続された状態で昇降体に設けられ、調速用ロープが昇降体に対して引き上げられることにより動作して、ガイドレールを把持して昇降体の下降を制止する非常止め装置と、昇降体が所定速度よりも大きい速度で下降している状態を検出した場合に、調速用ロープを制止して非常止め装置を動作させ、昇降体の下降を制止させる調速機と、を備え、調速機は、戸開閉検出器により前記戸が開いていると検出されているときは、調速用ロープを把持し、戸開閉検出器により戸が開いていると検出されている状態で昇降体が下降した場合に、非常止め装置を動作させ、昇降体の下降を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、戸が開いているときにかごが昇降することを防止するエレベータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータのかごの戸が開いた状態でかごが着床位置から外れた場合に、かご下部に設けられた非常止め装置を動作させ、かごの動きを制止するエレベータ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−36426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のエレベータ装置においては、かごを制止させる条件として、かごの戸が開いた状態でかごが着床位置から外れたことを検出する機構が複雑であり、かごの小型化の妨げとなっていた。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、簡素な構成で、エレベータの戸が開いた状態のときにかごの動きを制止するエレベータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータ装置は、昇降路内を昇降する昇降体と、前記昇降体を鉛直方向にガイドするガイドレールと、エレベータの戸の開閉状態を検出する戸開閉検出器と、前記昇降体の昇降に同期して循環移動する調速用ロープと、前記調速用ロープに接続された状態で前記昇降体に設けられ、前記調速用ロープが前記昇降体に対して引き上げられることにより動作して、前記ガイドレールを把持して前記昇降体の下降を制止する非常止め装置と、前記昇降体が所定速度よりも大きい速度で下降している状態を検出した場合に、前記調速用ロープを制止して前記非常止め装置を動作させ、前記昇降体の下降を制止させる調速機と、を備え、前記調速機は、前記戸開閉検出器により前記戸が開いていると検出されているときは、前記調速用ロープを把持し、前記戸開閉検出器により前記戸が開いていると検出されている状態で前記昇降体が下降した場合に、前記非常止め装置を動作させ、前記昇降体の下降を防止するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、簡素な構成で、エレベータの戸が開いた状態のときにかごの動きを制止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明を実施するための最良の形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ装置の全体構成図である。
【0010】
図1において、1はエレベータの昇降路である。この昇降路1は、建築物の各階を跨った鉛直方向に延びる空間からなる。この昇降路1上部には、機械室2が設けられる。この機械室2には、巻上機3が設けられる。この巻上機3は、シーブを回転駆動する駆動機械装置である。また、機械室2には、巻上機3に隣接してそらせ車4も設けられる。そして、巻上機3及びそらせ車4には、巻上ロープ5が巻回される。この巻上ロープ5は、主索とも言われる。
【0011】
この巻上ロープ5の一端には、エレベータのかご6が吊られる。一方、巻上ロープ5の他端には、つり合いおもり7が吊られる。かご6は、昇降路1内に立設されたかごガイドレール8に鉛直方向にガイドされる。一方、つり合いおもり7は、昇降路1内に立設されたおもりガイドレール9に鉛直方向にガイドされる。そして、かご6及びつり合いおもり7は、巻上ロープ3を介して連動して反対方向に昇降する。また、昇降路1のピット底部には、非常時に落下するかご6、つり合いおもり7との衝突による衝撃を緩和するかご用緩衝器10、つり合いおもり用緩衝器11が設けられる。
【0012】
12はかごの戸である。このかごの戸12は、かご6の出入口に設けられる。そして、かごの戸12の上部には、かごの戸12の開閉を操作するためのかご戸装置13が設けられる。14a〜14dは乗場の戸である。これらの乗場の戸14a〜14dは、昇降路1の各階床の乗場出入口に設けられる。図1においては、最下階から順番に14a〜14dと設けられる。そして、これらの乗場の戸14a〜14dの上部には、それぞれ乗場の戸14a〜14dの開閉移動をガイドする乗場戸装置15a〜15dが設けられる。図1においては、各乗場の戸14a〜14dに対応して、最下階から順番に15a〜15dと設けられる。これらの乗場の戸14a〜14dは、かご6が各階の着床位置に停止した際に、かごの戸12の開閉に連動して開閉する。
【0013】
そして、かごの戸12及び乗場の戸14a〜14dには、かご戸スイッチ及び乗場戸スイッチ(図1においては、共に図示せず)がそれぞれ設けられる。これらにより、かごの戸12及び乗場の戸14a〜14dの開閉状態が検出される。即ち、かご戸スイッチ及び乗場戸スイッチは、かごの戸12及び乗場の戸14a〜14dの開閉状態をそれぞれ検出する戸開閉検出器として機能する。そして、かご戸スイッチ及び乗場戸スイッチにより、かごの戸12及び全ての乗場の戸14a〜14dが閉じていると検出されていなければ、かご6が昇降しないようになっている。これにより、エレベータ利用者の昇降路1への転落が防止される。
【0014】
16は制御装置である。この制御装置16は、機械室2内に設置され、巻上機3の回転を制御する。かかる制御により、かご6が設定された速度で昇降する。また、制御装置16は、かご6が着床位置に停止したときにかご戸装置13の開閉の制御も行う。かかる構成のエレベータ装置においては、かご6下部に、かご非常止め装置17が設けられる。このかご非常止め装置17は、非常時にかごガイドレール8を把持してかご6の下降を制止するものである。このかご非常止め装置17には、動作用アーム18を介して無端状のかご調速用ロープ19が接続される。このかご調速用ロープ19下部は、かご張り車20に巻き掛けられる。一方、かご調速用ロープ19上部は、機械室2に設けられたかご調速機21に巻き掛けられる。これにより、かご調速用ロープ19はかご6の昇降に同期して循環移動する。
【0015】
そして、かご調速機21は、かご6が所定速度(通常は定格速度)よりも大きい速度で下降している状態を検出した場合に、かご調速用ロープ19の循環移動を制止する。これにより、動作用アーム18を介してかご調速用ロープ19がかご6に対して引き上げられる。その結果、かご非常止め装置17が動作し、かご6が制止する。
【0016】
次に、図2及び図3を用いて、かご戸スイッチの構成及び動作をより詳細に説明する。
図2はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ装置のかごの戸が閉じた状態を示す正面図である。図3はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ装置のかごの戸が開いた状態を示す正面図である。
【0017】
図2において、一方のかごの戸12上面には、カム22が取り付けられる。このカム22の戸袋側端は、戸袋側下方へ傾斜する傾斜面が形成される。一方、かご戸装置13下部には、かご戸スイッチ23が取り付けられる。このかご戸スイッチ23は、戸当り側端から戸袋側下方へ傾斜する。また、かご戸スイッチ23の先端には、ローラ24が取り付けられる。そして、図2に示すように、かごの戸12が閉じているときは、ローラ24がカム22の傾斜面よりも戸袋側に配置される。かかる状態では、かご戸スイッチ23は操作されていない。
【0018】
一方、図3に示すように、かごの戸12が開いているときは、ローラ24がカム22の傾斜面を乗り上げて上面に配置される。かかる状態では、かご戸スイッチ23が操作されている。また、詳細は省略するが、同様に、一方の乗場の戸14a等の上部には、カムが取り付けられる。また、乗場戸装置15a等の下部には、乗場戸スイッチが取り付けられる。かかる乗場戸スイッチは、かご戸スイッチ23と同様に、乗場の戸14a等が閉じているときは操作されておらず、乗場の戸14a等が開いているときは操作されている。
【0019】
図4はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ装置のかご調速機を示す詳細図である。
図4において、25は綱車である。この綱車25は、綱車軸26を中心にして回転自在に基台27に支持される。そして、綱車25に、かご調速用ロープ19が巻き掛けられる。28は一対のフライウエイトである。これらのフライウエイト28は、ピン29を中心に回動自在に綱車25の側面に取り付けられる。そして、これらのフライウエイト28は、リンク30により互いに連結される。
【0020】
また、一方のフライウエイト28の一端には、作動爪31が固定される。かかる構成のフライウエイト28は、綱車25の回転による遠心力により回動される。これにより、作動爪31は、綱車25の径方向外側へ変位される。また、32は平衡ばねである。この平衡ばね32は、一方のフライウエイト28の他端と綱車25との間に取り付けられる。そして、平衡ばね32は、上記遠心力に対抗する。33はかご停止用スイッチである。このかご停止用スイッチ33は、基台27に取り付けられる。そして、かご停止用スイッチ33は、スイッチレバー33aを有する。このスイッチレバー33aは、作動爪31により操作される。
【0021】
34はラッチ部である。このラッチ部34は、一方のフライウエイト28の他端に設けられる。35はラチェットである。このラチェット35は、綱車軸26を中心に回転可能に基台27に設けられる。そして、ラチェット35外周部には、歯が設けられる。この歯には、綱車25が図中で反時計方向に回転しているときにフライウエイト28が予め設定されただけ回動した場合に、ラッチ部34が係合する。
【0022】
36はアームである。このアーム36は、基台27に回動自在に取り付けられる。37はシューである。このシュー37は、アーム36に回動自在に取り付けられる。そして、シュー37は、所定条件下で、かご調速用ロープ19に押し付けられる。38はばね軸である。このばね軸38は、アーム36のばね受け部36aに貫通される。39は接続レバーである。この接続レバー39は、ばね軸38の一端とラチェット35の間に接続される。40はばね受け部材である。このばね受け部材40は、ばね軸38の他端に設けられる。41はロープ掴みばねである。このロープ掴みばね41は、ばね受け部36aとばね受け部材40との間に設けられる。そして、ロープ掴みばね41は、所定条件下で、シュー37をかご調速用ロープ19に押し付ける。
【0023】
かかる構成のかご調速機21においては、かご6の昇降に同期してかご調速用ロープ19が循環移動する。これにより、綱車25が回転される。このとき、フライウエイト28は、綱車25とともに公転する。そして、フライウエイト28は、綱車25の回転速度、即ち、かご6の速度に対応した遠心力を受ける。このとき、かご6の速度が所定値以上になると、フライウエイト28が平衡ばね32に逆らってピン29を中心に回動する。
【0024】
そして、かご6の昇降速度が第1過速度(通常は定格速度の1.3倍程度)になると、遠心力によるフライウエイト28の回動によって作動爪31がかご停止用スイッチ33のスイッチレバー33aに当接する。これにより、スイッチレバー33aが回動される。そして、かかる回動により、かご停止用スイッチ33が動作し、巻上機3の電源が遮断される。かかる遮断により、巻上機3のブレーキ装置(図示せず)が動作して、かご6が停止される。
【0025】
そして、例えば、巻上ロープ5が破断した場合など、巻上機3が停止しても、かご6が停止することなく下降を続け、かご速度が第2過速度(通常は定格速度の1.4倍程度)になると、この速度に対応した綱車25の回転による遠心力でフライウエイト28がさらに回動する。これにより、ラッチ部34がラチェット35の歯に係合する。そして、ラチェット35が綱車25とともに図4の反時計方向へ僅かに回転される。
【0026】
このラチェット35の回転は、接続レバー39、ばね軸38、ばね受け部材40及びロープ掴みばね41を介してアーム36に伝達される。これにより、アーム36も図4の反時計方向へ回動される。そして、シュー37がかご調速用ロープ19に当接するとともに、ロープ掴みばね41によりシュー37がかご調速用ロープ19に押し付けられる。これにより、かご調速用ロープ19が制止される。そして、かご調速用ロープ19の循環が制止された状態で、かご6が下降し続けることにより、動作用アーム18が操作される。これにより、かご非常止め装置17が動作する。即ち、かご調速機21は、上記動作により過速監視を行い、乗客の安全を図っている。
【0027】
本実施の形態におけるかご調速機21においては、さらに、操作レバー42が、シュー37近傍に配置される。この操作レバー42は、軸43を中心に揺動可能に基台27に設けられる。一方のフライウエイト28には、ローラ44が設けられる。このローラ44は、操作レバー42の上部が図4の時計方向に揺動することにより押圧される。そして、基台27上部中央と操作レバー42の鉛直方向中央一側との間には、戻しばね45が設けられる。この戻しばね45は、ローラ44から開離する方向へ略水平方向に操作レバー42を付勢する。
【0028】
また、操作レバー42の鉛直方向中央他側には、操作ワイヤ46の一端が接続される。そして、水平方向に延びる操作ワイヤ46の他端には、ソレノイド47の可動鉄心47a先端が接続される。このソレノイド47のコイルには、電気を供給するための導線48が接続される。このソレノイド47は、導線48を介してコイルに電気が供給されているときは可動鉄心47aを綱車25中心方向に移動させ、コイルへの電気が遮断されると可動鉄心47aを綱車25反中心方向に移動させる。
【0029】
図5及び図6はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ装置に用いるソレノイドのコイルの電気配線を示す回路図である。より具体的には、図5はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ装置のかごの戸及び乗場の戸が全て閉じていて、かご戸スイッチ及び各階の乗場戸スイッチの常閉接点が全て閉じた状態を示す回路図である。図6はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ装置のかごが最下階で停止してかごの戸及び乗場の戸が開き、かご戸スイッチ及び最下階の乗場戸スイッチの常閉接点が開いた状態を示す回路図である。
【0030】
図5及び図6において、49はかご戸スイッチ23の常閉接点である。また、50a〜50dはそれぞれ各階の乗場戸スイッチの常閉接点である。乗場戸スイッチの常閉接点50a〜50dは、直列に接続される。そして、これらの常閉接点50a〜50dと、かご戸スイッチ23の常閉接点49は、並列に接続される。かかる回路に、導線48を介して電源51とソレノイド47のコイルが直列に接続される。
【0031】
上記構成のソレノイド47のコイルの電気配線によれば、図5に示すように、かご戸スイッチ23の常閉接点49が閉じているか、全ての乗場戸スイッチの常閉接点50a〜50dが閉じていれば、電源51の電気が導線48を介してソレノイド47のコイルに供給される。一方、図6に示すように、かご戸スイッチ23の常閉接点49と、いずれかの階の乗場戸スイッチの常閉接点50a〜50dの両方が開いていれば、電源51の電気はソレノイド47のコイルに供給されない。
【0032】
次に、本実施の形態におけるかご調速機21の特徴的な動作を説明する。図7は図4の要部を示す正面図である。
エレベータが通常の運転をする場合、走行中は、図5に示すように、かご戸スイッチ23常閉接点49と乗場戸スイッチの常閉接点50a〜50dは全て閉じている。このため、ソレノイド47のコイルには、電源51の電気が供給される。即ち、操作レバー42は、待機位置にあり、ローラ44から開離している。
【0033】
図8は図7の操作レバーを動作位置まで揺動させた状態を示す正面図である。
かご6がいずれかの階床に到着すると、かごの戸12及び乗場の戸14a等が開く。このとき、図6に示すように、かご戸スイッチ23の常閉接点49と、いずれかの階の乗場戸スイッチの常閉接点50a等の両方が開く。このため、ソレノイド47のコイルには、電源51の電気が供給されない。即ち、操作レバー42は、操作位置にあり、その上部がローラ44と接触している。
【0034】
かかる状態で、何らかの故障により、かご6が下降した場合、かご調速機21のラチェット35の歯にラッチ部34が係合する。このとき、ラチェット35が綱車25とともに僅かに図8の反時計方向へ回転される。
【0035】
上記のようにラチェット35が回転すると、接続レバー39が図8の左方へ変位される。そして、ばね軸38、ばね受け部材40及びロープ掴みばね41を介してアーム36に伝達される。これにより、アーム36も図8の反時計方向へ回動される。
【0036】
その結果、シュー37がかご調速用ロープ19に当接するとともに、ロープ掴みばね41によりシュー37がかご調速用ロープ19に押し付けられる。即ち、かご調速用ロープ19は、把持される。そして、かご調速用ロープ19が把持された状態で、かご6が下降すると、動作用アーム18が操作される。これにより、かご非常止め装置17が動作する。その結果、かごの戸12と乗場の戸の両方が開いた状態でのかご6の下降が防止される。
【0037】
なお、停止中にかご6が下降せず、乗客の乗降が正常に行われて、再び昇降を開始する前にかごの戸12及び乗場の戸14a等が閉じれば、かご戸スイッチ23及び乗場戸スイッチの常閉接点49、50a等は、全て閉じた状態になる。従って、かご調速機21の操作レバー42も待機位置に戻る。このため、かごかご非常止め装置17は動作せず、かご6は正常に昇降する。
【0038】
以上で説明した実施の形態によれば、従来のエレベータのようにかご6の下部に複雑な機構を設ける必要がなく、エレベータの戸が開いた状態で、かご6が下降することを防止できる。即ち、従来から設置されるかご非常止め装置17、かご戸スイッチ23、乗場戸スイッチを利用できるため、かご6の小型化が可能となる。また、既設のエレベータに、本発明を適用する場合は、かご調速機21を交換し、かご戸スイッチ23と乗場戸スイッチの配線を追加するだけで対応可能である。このとき、本発明を適用するために必要となるかご調速装置21は、機械室2に設けられるため、かご6の小型化を妨げない。
【0039】
さらに、かご6が着床位置に停止した場合は、常時、かご調速機21が動作状態となる。このため、かご6が下降し始めたらすぐに制止することができる。加えて、かごの戸12だけでなく、乗場の戸14a等の開閉も非常止め装置の動作条件に加えることができる。このため、状況に応じたかご非常止め装置17の動作条件を選択できる。
【0040】
実施の形態2.
図9及び図10はこの発明の実施の形態2におけるエレベータ装置に用いるソレノイドのコイルの電気配線を示す回路図である。より具体的には、図9はこの発明の実施の形態2におけるエレベータ装置のかごの戸及び乗場の戸が全て閉じていて、かご戸スイッチ及び各階の乗場戸スイッチの常閉接点が全て閉じた状態を示す回路図である。図10はこの発明の実施の形態2におけるエレベータ装置のかごが最下階で停止して乗場の戸のみが開き、最下階の乗場戸スイッチの常閉接点が開いた状態を示す回路図である。なお、実施の形態1と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
実施の形態1では、乗場戸スイッチの常閉接点50a〜50dと、かご戸スイッチ23の常閉接点49は、並列に接続されていた。一方、実施の形態2では、乗場戸スイッチの常閉接点50a〜50dと、かご戸スイッチ23の常閉接点49は、直列に接続されている。従って、かご戸スイッチ23の常閉接点49と、乗場戸スイッチの常閉接点50a〜50dが全て閉じた状態の場合のみ、電源51の電気が導線48を介してソレノイド47のコイルに供給される。一方、かご戸スイッチ23の常閉接点49及び乗場戸スイッチの常閉接点50a〜50dのいずれかが一つでも開いた状態の場合は、電源51の電気はソレノイド47のコイルに供給されない。
【0042】
即ち、実施の形態1では、かごの戸12と乗場の戸14a等の両方が開けば、かご調速機21が動作状態となるが、実施の形態2では、かごの戸12、乗場の戸14a等の一つでも開けば、かご調速機21が動作状態になる。
【0043】
以上で説明した実施の形態2によれば、かごの戸12、乗場の戸14a等が一つでも開けば、かご調速機21が動作状態になる。このため、実施の形態1の効果に加え、より安全なエレベータ装置が実現される。
【0044】
実施の形態3.
図11はこの発明の実施の形態3におけるエレベータ装置の全体構成図である。なお、実施の形態1と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
実施の形態3は、実施の形態1に、おもり非常止め装置52、動作用アーム53、おもり調速用ロープ54、おもり張り車55、おもり調速機56を加えたものである。そして、おもり調速機56は、かご調速機21と同様の構成であり、ソレノイド57が設けられる。以下、実施の形態3におけるレベータ装置の特徴部分を説明する。
【0046】
おもり非常止め装置52は、つり合いおもり7下部に設けられ、非常時におもりガイドレール9を把持してつり合いおもり7の下降を制止するものである。このおもり非常止め装置52には、動作用アーム53を介して無端状のおもり調速用ロープ54が接続される。このおもり調速用ロープ54下部は、おもり張り車55に巻き掛けられる。一方、おもり調速用ロープ54上部は、機械室2に設けられたおもり調速機56に巻き掛けられる。これにより、おもり調速用ロープ54はつり合いおもり7の昇降に同期して循環移動する。
【0047】
そして、おもり調速機56は、つり合いおもり7が定格速度(通常は定格速度)よりも大きい速度で下降している状態を検出した場合に、おもり調速用ロープ54の循環移動を制止する。これにより、動作用アーム53を介しておもり調速用ロープ54がつり合いおもり7に対して引き上げられる。その結果、おもり非常止め装置52が動作し、つり合いおもり7が制止する。
【0048】
図12及び図13はこの発明の実施の形態3におけるエレベータ装置に用いるソレノイドのコイルの電気配線を示す回路図である。より具体的には、図12はこの発明の実施の形態3におけるエレベータ装置のかごの戸及び乗場の戸が全て閉じていて、かご戸スイッチ及び各階の乗場戸スイッチの常閉接点が全て閉じた状態を示す回路図である。図13はこの発明の実施の形態3におけるエレベータ装置のかごが最下階で停止してかごの戸及び乗場の戸が開き、かご戸スイッチ及び最下階の乗場戸スイッチの常閉接点が開いた状態を示す回路図である。
【0049】
図12及び図13に示すように、実施の形態3におけるおもり調速機56のソレノイド57のコイルは、実施の形態1における回路構成のかご調速機21のソレノイド47のコイルに直列に接続される。
【0050】
上記構成のソレノイド47、57のコイルの電気配線によれば、図12に示すように、かご戸スイッチ23の常閉接点49が閉じているか、全ての乗場戸スイッチの常閉接点50a〜50dが閉じていれば、電源51の電気が導線48を介してソレノイド47、57の両方に供給される。一方、図13に示すように、かご戸スイッチ23の常閉接点49と、いずれかの階の乗場戸スイッチの常閉接点50a〜50dの両方が開いていれば、電源51の電気はソレノイド47、57のコイルに供給されない。
【0051】
そして、実施の形態3におけるおもり調速機56においては、かご6がいずれかの階床に到着すると、かごの戸12及び乗場の戸14a等が開く。このとき、図12に示すように、かご戸スイッチ23の常閉接点49と、いずれかの階の乗場戸スイッチの常閉接点50a等の両方が開いている。このため、ソレノイド47、57のコイルには、電源51の電気が供給されない。即ち、操作レバー(図示せず)は、操作位置にあり、その上部がローラ(図示せず)と接触している。
【0052】
かかる状態で、何らかの故障により、つり合いおもり7が下降した場合、おもり調速機56のラチェットの歯(図示せず)にラッチ部(図示せず)が係合する。このとき、ラチェットが綱車(図示せず)とともに僅かに回転される。このラチェットの回転により、接続レバー(は図示せず)が変位される。そして、ばね軸、ばね受け部材及びロープ掴みばね(共に図示せず)を介してアーム(図示せず)に伝達される。これにより、アームも回動される。
【0053】
その結果、シュー(図示せず)がおもり調速用ロープ54に当接するとともに、ロープ掴みばねによりシューがおもり調速用ロープ54に押し付けられる。即ち、おもり調速用ロープ54は、把持される。そして、おもり調速用ロープ54が把持された状態で、つり合いおもり7が下降すると、動作用アーム53が操作される。これにより、おもり非常止め装置52が動作する。その結果、かごの戸12と乗場の戸の両方が開いた状態でのつり合いおもり7の下降が防止される。このとき、つり合いおもり7と巻上ロープ3を介して連動して反対方向に昇降するかご3の上昇も防止される。
【0054】
このようにして、かごの戸12と乗場の戸14a等の両方が開いた状態で、何らかの故障により、かご6が上下いずれの方向に動き始めてしまう場合にも、かご非常止め装置17又はおもり非常止め装置52が動作して、かご6の移動が防止される。
【0055】
以上で説明した実施の形態3によれば、おもり調速機56により、かご6の上昇を防止することができる。即ち、かご6及びつり合いおもり7の両昇降体に、非常止め装置、調速機等を設けることにより、より安全なエレベータ装置が実現される。
【0056】
実施の形態4.
図14及び図15はこの発明の実施の形態4におけるエレベータ装置に用いるソレノイドのコイルの電気配線を示す回路図である。より具体的には、図14はこの発明の実施の形態4におけるエレベータ装置のかごの戸及び乗場の戸が全て閉じていて、かご戸スイッチ及び各階の乗場戸スイッチの常閉接点が全て閉じた状態を示す回路図である。図15はこの発明の実施の形態4におけるエレベータ装置のかごが最下階で停止して乗場の戸のみが開き、最下階の乗場戸スイッチの常閉接点が開いた状態を示す回路図である。なお、実施の形態3と同一又は相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
実施の形態3では、実施の形態1と同様に、乗場戸スイッチの常閉接点50a〜50dと、かご戸スイッチ23の常閉接点49は、並列に接続されていた。一方、実施の形態4では、実施の形態2と同様に、常閉接点50a〜50dと、かご戸スイッチ23の常閉接点49は、直列に接続されている。
【0058】
従って、かご戸スイッチ23の常閉接点49と、乗場戸スイッチの常閉接点50a〜50dが全て閉じた状態の場合のみ、電源51の電気が導線48を介してソレノイド47、57のコイルに供給される。一方、かご戸スイッチ23の常閉接点49及び乗場戸スイッチの常閉接点50a〜50dのいずれかが一つでも開いた状態の場合は、電源51の電気はソレノイド47、57のコイルに供給されない。
【0059】
即ち、実施の形態3では、かごの戸12と乗場の戸14a等の両方が開けば、かご調速機21及びおもり調速機56が動作状態となるが、実施の形態4では、かごの戸12、乗場の戸14a等の一つでも開けば、かご調速機21及びおもり調速機56が動作状態になる。
【0060】
以上で説明した実施の形態4によれば、かごの戸12、乗場の戸14a等が一つでも開けば、かご調速機21及びおもり調速機56が動作状態になる。このため、実施の形態3に加え、より安全なエレベータ装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータ装置の全体構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエレベータ装置のかごの戸が閉じた状態を示す正面図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるエレベータ装置のかごの戸が開いた状態を示す正面図である。
【図4】この発明の実施の形態1におけるエレベータ装置のかご調速機を示す詳細図である。
【図5】この発明の実施の形態1におけるエレベータ装置のかごの戸及び乗場の戸が全て閉じていて、かご戸スイッチ及び各階の乗場戸スイッチの常閉接点が全て閉じた状態を示す回路図である。
【図6】この発明の実施の形態1におけるエレベータ装置のかごが最下階で停止してかごの戸及び乗場の戸が開き、かご戸スイッチ及び最下階の乗場戸スイッチの常閉接点が開いた状態を示す回路図である。
【図7】図4の要部を示す正面図である。
【図8】図7の操作レバーを動作位置まで揺動させた状態を示す正面図である。
【図9】この発明の実施の形態2におけるエレベータ装置のかごの戸及び乗場の戸が全て閉じていて、かご戸スイッチ及び各階の乗場戸スイッチの常閉接点が全て閉じた状態を示す回路図である。
【図10】この発明の実施の形態2におけるかごが最下階で停止して乗場の戸のみが開き、最下階の乗場戸スイッチの常閉接点が開いた状態を示す回路図である。
【図11】この発明の実施の形態3におけるエレベータ装置の全体構成図である。
【図12】この発明の実施の形態3におけるかごの戸及び乗場の戸が全て閉じていて、かご戸スイッチ及び各階の乗場戸スイッチの常閉接点が全て閉じた状態を示す回路図である。
【図13】この発明の実施の形態3におけるエレベータ装置のかごが最下階で停止してかごの戸及び乗場の戸が開き、かご戸スイッチ及び最下階の乗場戸スイッチの常閉接点が開いた状態を示す回路図である。
【図14】この発明の実施の形態4におけるエレベータ装置のかごの戸及び乗場の戸が全て閉じていて、かご戸スイッチ及び各階の乗場戸スイッチの常閉接点が全て閉じた状態を示す回路図である。
【図15】この発明の実施の形態4におけるエレベータ装置のかごが最下階で停止して乗場の戸のみが開き、最下階の乗場戸スイッチの常閉接点が開いた状態を示す回路図である。
【符号の説明】
【0062】
1 昇降路、 2 機械室、 3 巻上機、 4 そらせ車、 5 巻上ロープ、
6 かご、 7 つり合いおもり、 8 かごガイドレール、
9 おもりガイドレール、 10 かご用緩衝器、 11 つり合いおもり用緩衝器、
12 かごの戸、 13 かご戸装置、 14a〜14d 乗場の戸、
15a〜15d 乗場戸装置、 16 制御装置、 17 かご非常止め装置、
18 動作用アーム、 19 かご調速用ロープ、 20 かご張り車、
21 かご調速機、 22 カム、 23 かご戸スイッチ、 24 ローラ、
25 綱車、 26 綱車軸、 27 基台、 28 フライウエイト、 29 ピン、30 リンク、 31 作動爪、 32 平衡ばね、 33 かご停止用スイッチ、
33a スイッチレバー、 34 ラッチ部、 35 ラチェット、 36 アーム、
36a ばね受け部、 37 シュー、 38 ばね軸、 39 接続レバー、
40 ばね受け部材、 41 ロープ掴みばね、 42 操作レバー、 43 軸、
44 ローラ、 45 戻しばね、 46 操作ワイヤ、 47 ソレノイド、
47a 可動鉄心、 48 導線、 49 常閉接点、 50a〜50d 常閉接点、
51 電源、 52 おもり非常止め装置、 53 動作用アーム、
54 おもり調速用ロープ、 55 おもり張り車、 56 おもり調速機、
57 ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降する昇降体と、
前記昇降体を鉛直方向にガイドするガイドレールと、
エレベータの戸の開閉状態を検出する戸開閉検出器と、
前記昇降体の昇降に同期して循環移動する調速用ロープと、
前記調速用ロープに接続された状態で前記昇降体に設けられ、前記調速用ロープが前記昇降体に対して引き上げられることにより動作して、前記ガイドレールを把持して前記昇降体の下降を制止する非常止め装置と、
前記昇降体が所定速度よりも大きい速度で下降している状態を検出した場合に、前記調速用ロープを制止して前記非常止め装置を動作させ、前記昇降体の下降を制止させる調速機と、
を備え、
前記調速機は、前記戸開閉検出器により前記戸が開いていると検出されているときは、前記調速用ロープを把持し、前記戸開閉検出器により前記戸が開いていると検出されている状態で前記昇降体が下降した場合に、前記非常止め装置を動作させ、前記昇降体の下降を防止することを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記昇降体は、かごと連動して反対方向に昇降するつり合いおもりからなり、
前記調速用ロープは、前記つり合いおもりの昇降に同期して循環移動し、
前記非常止め装置は、前記調速用ロープに接続された状態で前記つり合いおもりに設けられ、前記調速用ロープが前記つり合いおもりに対して引き上げられることにより動作して、前記ガイドレールを把持して前記つり合いおもりの下降を制止し、
前記調速機は、前記戸開閉検出器により前記戸が開いていると検出されているときは、前記調速用ロープを把持し、前記戸開閉検出器により前記戸が開いていると検出されている状態で前記つり合いおもりが下降した場合に、前記非常止め装置を動作させ、前記つり合いおもりの下降を防止することにより、前記かごの上昇を防止することを特徴とする請求項1記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記調速機は、前記昇降路上部の機械室に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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