説明

エレベータ

【課題】動作信頼性が高く、設置作業や保守作業の危険性が少なく、配線を短くすることができるエレベータを提供することにある。
【解決手段】調速機ロープ3に最上階検出用検出体7aと最下階検出用検出体7bを設け、最上階検出用センサー6aと最下階検出用センサー6bを調速機駆動側プーリ2の付近に設置して、センサー6a,6bの検出信号で調速機の駆動動作を制御する制御部9を設けて、最上階検出用センサー6aによる最上階検出用検出体7aの検出、最下階検出用センサー6bによる最下階検出用検出体7bの検出に基づいて、制御部2により調速機の駆動動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータに係り、特にエレベータの安全運転のために乗りかごの過上昇あるいは過降下を防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来、例えば下記の特許文献1などに記載されているエレベータの概略構成図である。同図において、1はエレベータの乗りかごで、それの昇降路内に立設されたかご用ガイドレール(図示せず)に案内されて昇降動作する。2は調速機(図示せず)の駆動軸に付設された駆動側プーリ、3はその調速機駆動側プーリに掛けられているエンドレス状の調速機ロープである。
【0003】
また、4aならびに4bは昇降路内の終端階(最上階、最下階)付近にそれぞれ設置されたレバー付きのリミットスイッチ、5は前記リミットスイッチ4a,4bを作動させるために乗りかご1の側面に取り付けられたスイッチカムである。図中の9は制御部(制御盤)で、前記リミットスイッチ4a,4bの検出信号などの各種信号が取り入れられて、乗りかご1の昇降動作あるいは緊急停止動作などの動作制御を行っている。
【0004】
前記乗りかご1の昇降動作に伴って前記スイッチカム5により前記レバーが押されて、前記リミットスイッチ4aあるいは4bが動作すると、そのリミットスイッチ4aあるいは4bの検出信号が前記制御部9に入力される。その検出信号に基づいて制御部9から出力される停止指令信号により前記乗りかご1の移動を停止して、乗りかご1の過上昇あるいは過降下を防止するシステムになっている。
【0005】
また、下記の特許文献2には、釣り合い錘用ガイドレール及び釣り合い錘に検出センサー及び検出体を取り付け、一方、調速機用ロープと調速機用ロープ張り車にそれぞれ検出用センサー及び検出体を取り付けたエレベータ釣り合い錘・調速機ロープ張り車のクリアランス管理測定装置及び方法が提案されている。
【0006】
さらに、下記の特許文献3には、機械室の巻き上げ機に掛けられたロープの一端に乗りかごを連結し、前記ロープの他端に釣り合い錘を連結して、昇降路内における前記乗りかごの上限位置および下限位置をリミットスイッチにより検出し、このリミットスイッチの検出信号を前記巻き上げ機の制御部に入力するエレベータ工事安全装置において、前記巻き上げ機の付近の前記乗りかご側および釣り合い錘側の前記ロープの付近に、前記リミットスイッチをそれぞれ設け、前記乗りかごの上限位置および下限位置に対応する位置で、前記リミットスイッチをそれぞれ作動させる部材を前記ロープに設けることが提案されている。
【0007】
さらにまた、下記の特許文献4には、乗りかごの昇降に連動して循環する調速機ロープに、位置情報が書き込まれた複数のICタグを設け、前記乗りかごの昇降路壁に前記ICタグの位置情報を読み取るタグリーダを設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−69676号公報
【特許文献2】特開2008−280101号公報
【特許文献3】特公平6−20989号公報
【特許文献4】特開2006−36430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1に記載の従来技術では、リミットスイッチ4a,4bは乗りかご1の昇降路内に設置されており、昇降路内で点検作業を行わなければならないため、時間がかかるうえ、操作ミスにより保守員に危険が及ぶ場合があった。さらに、昇降路内に設置されたリミットスイッチ4a,4bから機械室内にある制御部9へ信号を伝送するための配線は高階床になればなるほど長くなり、そのため配線作業が煩雑となり、またコスト高を招くなどの問題がある。
【0010】
また、前記特許文献2に記載の従来技術は、前述のように釣り合い錘用ガイドレール及び釣り合い錘に検出センサー及び検出体を取り付け、調速機用ロープと調速機用ロープ張り車にそれぞれ検出用センサー及び検出体を取り付けて、エレベータ釣り合い錘・調速機ロープ張り車のクリアランスを測定する方法である。
【0011】
そのため、乗りかごが終端階を超えて過昇降するのを防ぐリミットスイッチの役割はなく、従来通りリミットスイッチを設ける必要がある。さらにエレベータ調速機用ロープの検出器は昇降路内頂部に設置されているため、昇降路内下部に取り付けられた制御部へ信号を送るための配線は高階床になればなるほど長くなり、そのため配線作業が煩雑となり、またコスト高を招くなどの問題がある。
【0012】
前記レバー付きのリミットスイッチは機械的な構成部品であるため、各種トラブルが生じ易く、動作信頼性に問題がある。またそのレバー付きリミットスイッチを動作させるためのスイッチカムを乗りかごに設置する必要があるため、その設置作業が煩雑である。
【0013】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、動作信頼性が高く、設置作業や保守作業の危険性が少なく、配線を短くすることができるエレベータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために本発明の第1の手段は、
乗りかごの上昇ならびに降下を調整する調速機と、
その調速機の駆動側プーリと従動側プーリの間に掛け渡されて、前記乗りかごの昇降動作に伴って循環するエンドレス状の調速機ロープを備えたエレベータにおいて、
前記調速機ロープの所定の位置に最上階検出用検出体と最下階検出用検出体を取り付け、
前記最上階検出用検出体の到来を検出する最上階検出用センサーと前記最下階検出用検出体の到来を検出する最下階検出用センサーを、前記調速機ロープの循環経路上に設置して、
前記最上階検出用センサーならびに最下階検出用センサーからの検出信号に基づいて、前記調速機の駆動動作を制御する制御部を設けて、
前記最上階検出用センサーによる前記最上階検出用検出体の検出、ならびに前記最下階検出用センサーによる前記最下階検出用検出体の検出に基づいて、前記制御部により前記調速機の駆動動作を制御することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、
前記最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体は、前記乗りかごが最上階または最下階に着床する前であることを検出して乗りかごの移動速度を減速するための減速域検出部を有していることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第3の手段は前記第1または第2の手段において、
前記最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体は、前記乗りかごが最上階または最下階に着たことを検出して乗りかごを停止するための停止域検出部を有していることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第4の手段は前記第1ないし第3の手段において、
前記最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体は、前記乗りかごが最上階または最下階を行き過ぎたことを検出して乗りかごを停止するための行き過ぎ域検出部を有していることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の第5の手段は前記第1ないし第4の手段において、
前記最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体は、
前記乗りかごが最上階または最下階に着床する前であることを検出して乗りかごの移動速度を減速するための減速域検出部と、
前記乗りかごが最上階または最下階に着たことを検出して乗りかごを停止するための停止域検出部と、
前記乗りかごが最上階または最下階を行き過ぎたことを検出して乗りかごを停止するための行き過ぎ域検出部を有していることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の第6の手段は前記第5の手段において、
前記減速域検出部と停止域検出部と行き過ぎ域検出部は、前記最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体の移動方向に沿って設けられていることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の第7の手段は前記第1ないし第6の手段において、
前記最上階検出用センサーと最下階検出用センサーが、発光素子と、その発光素子から出射した検出光を受光する受光素子とを有する光センサーで構成され、
前記最上階検出用検出体と最下階検出用検出体が、前記発光素子から出射された検出光を遮蔽する遮蔽体で構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の第8の手段は前記第7の手段において、
前記最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体を構成する遮蔽体が、
前記乗りかごが最上階または最下階に着床する前であることを検出して乗りかごの移動速度を減速するための減速域検出部と、
前記乗りかごが最上階または最下階に着たことを検出して乗りかごを停止するための停止域検出部と、
前記乗りかごが最上階または最下階を行き過ぎたことを検出して乗りかごを停止するための行き過ぎ域検出部を、前記最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体の移動方向に沿って階段状に設け、
前記最上階検出用センサーならびに最下階検出用センサーに、
前記減速域検出部を検出するための第1の発光素子−受光素子対と、
前記停止域検出部を検出するための第2の発光素子−受光素子対と、
前記行き過ぎ域検出部を検出するための第3の発光素子−受光素子対が、それぞれ設けられていることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の第9の手段は前記第1ないし第8の手段において、
前記最上階検出用センサーと最下階検出用センサーが、前記調速機の駆動側プーリ付近に設置されていることを特徴とするものである。
【0023】
本発明の第10の手段は前記第9の手段において、
前記駆動側プーリを付設した調速機と、前記最上階検出用センサーならびに最下階検出用センサーと、前記最上階検出用センサーならびに最下階検出用センサーからの検出信号を入力して前記調速機に駆動制御信号を出力する制御部が、前記乗りかごの昇降路から区画された機械室内に設置されていることを特徴とするものである。
【0024】
本発明の第11の手段は前記第1ないし第8の手段において、
前記調速機の従動側プーリが前記乗りかごの昇降路内に設けられ、その従動側プーリ付近に前記最上階検出用センサーと最下階検出用センサーが設置されていることを特徴とするものである。
【0025】
本発明の第12の手段は前記第11の手段において、
前記従動側プーリにガバナウェイトが連結されていることを特徴とするものである。
【0026】
本発明の第13の手段は前記第11の手段において、
前記昇降路の高さの半分より下側の位置に前記制御部が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明は前述のような構成になっており、
請求項1に記載のように、調速機ロープの所定の位置に最上階検出用検出体と最下階検出用検出体を取り付け、最上階検出用検出体の到来を検出する最上階検出用センサーと前記最下階検出用検出体の到来を検出する最下階検出用センサーを、調速機ロープの循環経路上に設置して、
最上階検出用センサーならびに最下階検出用センサーからの検出信号に基づいて、調速機の駆動動作を制御する制御部を設けて、
最上階検出用センサーによる最上階検出用検出体の検出、ならびに最下階検出用センサーによる最下階検出用検出体の検出に基づいて、制御部により調速機の駆動動作を制御する構成になっている。
【0028】
そのため、トラブルが生じ易いリミットスイッチが不要となり、またそのリミットスイッチのレバーを動かすためのスイッチカムを乗りかごに設けたりする必要がなく、動作信頼性の向上ならびに構成の簡略化を図ることができる。
【0029】
請求項2に記載のように、最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体が、乗りかごが最上階または最下階に着床する前であることを検出して乗りかごの移動速度を減速するための減速域検出部を有しているため、乗りかごが最上階または最下階に着床する前に自動的に減速して、階への着床をスムーズに行なうことができる。
【0030】
請求項3に記載のように、最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体が、乗りかごが最上階または最下階に着たことを検出して乗りかごを停止するための停止域検出部を有しているため、乗りかごを最上階または最下階に自動的に着床することができる。
【0031】
請求項4に記載のように、最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体が、乗りかごが最上階または最下階を行き過ぎたことを検出して乗りかごを停止するための行き過ぎ域検出部を有しているため、万が一、乗りかごが最上階または最下階を行き過ぎても、建物の天井もしくは緩衝器を圧縮させてしまうような事態を未然に防止することができる。
【0032】
請求項5に記載のように、最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体が、
乗りかごが最上階または最下階に着床する前であることを検出して乗りかごの移動速度を減速するための減速域検出部と、
乗りかごが最上階または最下階に着たことを検出して乗りかごを停止するための停止域検出部と、
乗りかごが最上階または最下階を行き過ぎたことを検出して乗りかごを停止するための行き過ぎ域検出部を有しているため、最上階または最下階での乗りかごの着床をスムーズにかつ安全に行なうことができる。
【0033】
請求項6に記載のように、減速域検出部と停止域検出部と行き過ぎ域検出部が、最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体の移動方向に沿って設けられているから、乗りかごの減速、最上階または最下階への着床ならびに最上階または最下階を行き過ぎたときの乗りかごの停止を時系列的に行なうことができる。
【0034】
請求項7に記載のように、最上階検出用センサーと最下階検出用センサーが光センサーで構成され、最上階検出用検出体と最下階検出用検出体が遮蔽体で構成されているから、構成が簡単で、安価で、保守点検も容易である。
【0035】
請求項8に記載のように、最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体を構成する遮蔽体が、
乗りかごが最上階または最下階に着床する前であることを検出して乗りかごの移動速度を減速するための減速域検出部と、
乗りかごが最上階または最下階に着たことを検出して乗りかごを停止するための停止域検出部と、
乗りかごが最上階または最下階を行き過ぎたことを検出して乗りかごを停止するための行き過ぎ域検出部を、最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体の移動方向に沿って階段状に設け、
最上階検出用センサーならびに最下階検出用センサーに、減速域検出部を検出するための第1の発光素子−受光素子対と、停止域検出部を検出するための第2の発光素子−受光素子対と、前記行き過ぎ域検出部を検出するための第3の発光素子−受光素子対がそれぞれ設けられているから、
最上階または最下階での乗りかごの着床をスムーズにかつ安全に行なうことができ、乗りかごの減速、最上階または最下階への着床ならびに最上階または最下階を行き過ぎたときの乗りかごの停止を時系列的に行なえ、しかも構成が簡単で、安価である。
【0036】
請求項9に記載のように、最上階検出用センサーと最下階検出用センサーが、調速機の駆動側プーリ付近に設置されているから、最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体を支持している調速機ロープの振れが少なく、そのために検出の信頼性が高い。
【0037】
請求項10に記載のように、駆動側プーリを付設した調速機と、最上階検出用センサーならびに最下階検出用センサーと、最上階検出用センサーならびに最下階検出用センサーからの検出信号を入力して調速機に駆動制御信号を出力する制御部が、機械室内に設置されているから、前記センサーと制御部を接続する配線の長さを乗りかごの昇降高さに関係なく、すなわち昇降路内の配線を考慮しないで、短くすることができ、配線作業も簡便で、しかも前記センサーの保守点検作業の危険性が少ない。
【0038】
請求項11に記載のように、最上階検出用センサーと最下階検出用センサーが、調速機の従動側プーリ付近に設置されているから、最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体を支持している調速機ロープの振れが少なく、そのために検出の信頼性が高い。
【0039】
請求項12に記載のように、従動側プーリにガバナウェイトが連結されているから調速機ロープの緊張状態が維持され、さらに最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体を支持している調速機ロープの振れが少なく、さらに検出の信頼性が高い。
【0040】
請求項13に記載のように、昇降路の高さの半分より下側の位置に制御部が設けられているから、前記センサーと制御部を接続する配線の長さを乗りかごの昇降高さに関係なく短くすることができ、配線作業も簡便である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエレベータの概略構成図である。
【図2】この第1実施形態に係るエレベータにおいて、検出体がセンサーに到達する直前の状態を示した斜視図である。
【図3】その検出体がセンサーに到達する直前の状態を示した上面図である。
【図4】本実施形態における調速機駆動側プーリ付近でのセンサーの支持構造を示す一部正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るエレベータの概略構成図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るエレベータを説明するための一部正面図である。
【図7】従来のエレベータの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
次に本発明の各実施形態について、図面とともに説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るエレベータの概略構成図である。
【0043】
同図において、1はエレベータの乗りかごで、昇降路内に立設されたかご用ガイドレール(図示せず)に案内されて昇降する。2は機械室10内に設置された調速機(図示せず)の駆動軸に付設されている駆動側プーリ、3はその調速機駆動側プーリ2と従動側プーリであるガバナプーリ21に巻き掛けられたエンドレス状の調速機ロープである。
【0044】
6aは前記調速機側駆動プーリ2の付近に取り付けられて、乗りかご1が最上階付近に到来したことを検出する最上階検出用センサー、6bは前記調速機側駆動プーリ2の付近に取り付けられて、乗りかご1が最下階付近に到来したことを検出する最下階検出用センサーである。この最上階検出用センサー6aと最下階検出用センサー6bは、間に調速機側駆動プーリ2を介して、前記調速機ロープ3と対向するように設置されている。
【0045】
すなわち、両センサー6a,6bは機械室10内における調速機ロープ3の循環経路上に設置されていることになり、両センサー6a,6bの検出信号は、同じ機械室10内に設置されている制御部9に入力される。
【0046】
7aは調速機ロープ3に取り付けられた最上階検出用検出体、7bは最下階検出用検出体である。乗りかご1が最上階付近に来たときに前記最上階検出用検出体7aが最上階検出用センサー6aで検出され、乗りかご1が最下階付近に来たときに前記最下階検出用検出体7bが最下階検出用センサー6bで検出されように、前記検出体7a,7bは図1に示すように調速機ロープ3の上下反対位置に取り付けられる。
【0047】
図2は前記検出体7a,7bがセンサー6a,6bに到達する直前の状態を示した斜視図、図3は前記検出体7a,7bがセンサー6a,6bに到達する直前の状態を示した上面図である。
【0048】
図3に示すようにセンサー本体11は平面形状がコの字形をしており、内側に検出体7a,7bが通過する中空部12が形成されている。そしてこの中空部12に面したセンサー本体11の内面には第1発光素子13a、第2発光素子13b、第3発光素子13cが所定の間隔をおいて並設されている。そして前記中空部12を介して前記第1発光素子13a、第2発光素子13b、第3発光素子13cと対向するように第1受光素子14a、第2受光素子14b、第3受光素子14cが並設されて、所謂、3光軸センサーを構成している。
【0049】
乗りかご1の昇降に伴って、前記センサー6a,6bの中空部12内に前記検出体7a,7bが挿入される形態となっている。前記検出体7a,7bは例えば金属板や合成樹脂板などの不透明な光遮蔽体で構成され、図2に示すように側面形状がほぼ長方形をしており、それの上部に階段状の切欠部が設けられている。
【0050】
検出体7a,7bの下端部15は、その全幅にわたって延びている。一方、検出体7a,7bの上端部には、減速域検出部16と停止域検出部17と行き過ぎ域検出部18が、それぞれ設けられている。
【0051】
前記減速域検出部16は、乗りかご1の移動速度を減速させるためのスローダウンスイッチ(SDS)の機能を有している。
前記停止域検出部17は、乗りかご1を所望の着床位置に止めるスイッチの機能を有し、最上階検出用検出体7aではアップリミットスイッチ(ULS)の機能、最上階検出用検出体7bではダウンリミットスイッチ(DLS)の機能を有している。
前記行き過ぎ域検出部18は、乗りかご1が終端階を行き過ぎたことを検出し、建物の天井もしくは緩衝器を圧縮させてしまわぬように、乗りかご1がそれ以上移動しないように止めるファイナルリミットスイッチ(FLS)の機能を有している。
【0052】
これら減速域検出部16、停止域検出部17、行き過ぎ域検出部18は各々の機能により、図2に示すように下端部15からの高さが、減速域検出部16>停止域検出部17>行き過ぎ域検出部18の関係にあり、従って全体的に階段状になっている。
【0053】
本実施形態の場合、前記最上階検出用センサー6aと最下階検出用センサー6b、ならびに前記最上階検出用検出体7aと最下階検出用検出体7bは、それぞれ同一形状をしている。
【0054】
図3に示すように、第1発光素子13aと第1受光素子14aの対(第1の発光素子−受光素子対)が減速域検出部16と、第2発光素子13bと第2受光素子14bの対(第2の発光素子−受光素子対)が停止域検出部17と、第3発光素子13cと第3受光素子14cの対(第3の発光素子−受光素子対)が行き過ぎ域検出部18と対向するように配置されている。
【0055】
乗りかご1の上昇過程において、最上階検出用センサー6aに最上階検出用検出体7aが近づく前は、各発光素子13a〜13cから出射した検出光19(図3参照)は、それぞれの受光素子14a〜14cに受光されている。従って、第1受光素子14a、第2受光素子14b、第3受光素子14cは全てON状態となっている。
【0056】
乗りかご1の上昇に伴って図2に示すように最上階検出用検出体7aが最上階検出用センサー6aに近づき、減速域検出部16によって発光素子13aからの検出光19を遮光すると、第1受光素子14aのみOFF状態となり(第2受光素子14bと第3受光素子14cはON状態を維持)、この変化によって生成した検出信号は最上階検出用センサー6aから制御部9に入力される。
【0057】
そして制御部9では乗りかご1が最上階に着床する前であることを判断し、乗りかご1の上昇速度を減速する減速信号を調速機(図示せず)に出力して、乗りかご1の速度を減速する。
【0058】
次に停止域検出部17(この最上階検出用検出体7aの場合、前述のように停止域検出部17はアップリミットスイッチ(ULS)の機能を有している)によって発光素子13bからの検出光19が遮光されると、第2受光素子14bもOFF状態となり(第1受光素子14aは既にOFF状態、第3受光素子14cはON状態を維持)、この変化によって生成した検出信号は最上階検出用センサー6aから制御部9に入力される。
【0059】
そして制御部9では乗りかご1が最上階に着床したことを判断し、乗りかご1の上昇を停止する停止信号を調速機(図示せず)に出力して、乗りかご1を着床する。
【0060】
ここで何らかの原因で乗りかご1が上昇を続けると、行き過ぎ域検出部18によって発光素子13cからの検出光19が遮光されて、第1受光素子14a、第2受光素子14b、第3受光素子14cの全てがOFF状態となり、この変化によって生成した検出信号は最上階検出用センサー6aから制御部9に入力される。
【0061】
そして制御部9では乗りかご1が最上階を行き過ぎたことを判断し、乗りかご1の上昇を緊急停止する緊急停止信号を調速機(図示せず)に出力して、乗りかご1がこれ以上上昇しないように直ちに停止する。
【0062】
また、乗りかご1の降下過程において、最下階検出用センサー6bに最下階検出用検出体7bが近づく前は、各発光素子13a〜13cから出射した検出光19(図3参照)は、それぞれの受光素子14a〜14cに受光されている。従って、第1受光素子14a、第2受光素子14b、第3受光素子14cは全てON状態となっている。
【0063】
乗りかご1の降下に伴って図2に示すように最下階検出用検出体7bが最下階検出用センサー6bに近づき、減速域検出部16によって発光素子13aからの検出光19を遮光すると、第1受光素子14aのみOFF状態となり(第2受光素子14bと第3受光素子14cはON状態を維持)、この変化によって生成した検出信号は最上階検出用センサー6aから制御部9に入力される。
【0064】
そして制御部9では乗りかご1が最下階に着床する前であることを判断し、乗りかご1の降下速度を減速する減速信号を調速機(図示せず)に出力して、乗りかご1の速度を減速する。
【0065】
次に停止域検出部17(この最下階検出用検出体7bの場合、前述のように停止域検出部17はダウンリミットスイッチ(DLS)の機能を有している)によって発光素子13bからの検出光19が遮光されると、第2受光素子14bもOFF状態となり(第1受光素子14aは既にOFF状態、第3受光素子14cはON状態を維持)、この変化によって生成した検出信号は最下階検出用センサー6bから制御部9に入力される。
【0066】
そして制御部9では乗りかご1が最下階に着床したことを判断し、乗りかご1の降下を停止する停止信号を調速機(図示せず)に出力して、乗りかご1を着床する。
【0067】
ここで何らかの原因で乗りかご1が降下を続けると、行き過ぎ域検出部18によって発光素子13cからの検出光19が遮光されて、第1受光素子14a、第2受光素子14b、第3受光素子14cの全てがOFF状態となり、この変化によって生成した検出信号は最下階検出用センサー6bから制御部9に入力される。
【0068】
そして制御部9では乗りかご1が最下階を行き過ぎたことを判断し、乗りかご1の降下を緊急停止する緊急停止信号を調速機(図示せず)に出力して、乗りかご1がこれ以上降下しないように直ちに停止する。
【0069】
図4は、調速機の駆動側プーリ2付近でのセンサー6a,6bの支持構造を示す一部正面図である。
同図に示すようにセンサー6a,6bは調速機駆動側プーリ2を間にして、枠型あるいは箱型のセンサー支持部材20によって支持されている。このセンサー支持部材20を図示しない調速機の支持部材として兼用することもできる。この図の状態は、最下階検出用検出体7bが最下階検出用センサー6bに到達した状態を示している。
【0070】
エレベータの定期点検時は、機械室10内で制御部9の操作により乗りかご1を高速運転させ、前記センサー6a,6bと検出体7a,7bが正常に動作しているかどうかの確認を行なう。
【0071】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係るエレベータの概略構成図である。本実施形態は機械室が無い場合を示している。
【0072】
同図において、1はエレベータの乗りかごで、昇降路内に立設されたかご用ガイドレール(図示せず)に案内されて昇降する。2はその昇降路の底部付近に設置された調速機に付設された駆動側プーリ、3はその調速機駆動側プーリ2と上方の従動側プーリとの間に巻き掛けられたエンドレス状の調速機ロープである。
【0073】
6aは前記調速機駆動側プーリ2の付近に取り付けられ最上階を検出する最上階検出用センサー、6bは前記調速機駆動側プーリ2の付近に取り付けられ最下階を検出する最下階検出用センサーで、この最上階検出用センサー6aならびに最下階検出用センサー6bは、間に調速機駆動側プーリ2を介して、前記調速機ロープ3と対向するように設置されている。
図示していないが、前記センサー6a、6bは、枠型あるいは箱型のセンサー支持部材によって支持されている。
【0074】
最上階検出用センサー6a及び最下階検出用センサー6bの検出信号は、昇降路の側壁24に設置されている制御部9に入力される。この制御部9は図に示すように、昇降路の高さHの半分より下側に設置されている。
【0075】
なお、この制御部9は配線の長さを可及的に短くするため、前記側壁24の下端部付近あるいは昇降路の底部に設置することも可能である。
【0076】
7aは調速機ロープ3に取り付けられた最上階検出用検出体、7bは最下階検出用検出体である。乗りかご1が最上階付近に来たときに前記最上階検出用検出体7aが最上階検出用センサー6aで検出され、乗りかご1が最下階付近に来たときに前記最下階検出用検出体7bが最下階検出用センサー6bで検出されように、前記検出体7a,7bは図に示すように調速機ロープ3の上下反対位置に取り付けられる。
【0077】
前記センサー6a,6bと検出体7a,7bの構成、機能ならびにこれら検出手段に基づく乗りかご1の制御動作などは、前記第1実施形態と同様なので重複する説明は省略する。
【0078】
エレベータの定期点検時は、エレベータホールにおいて保守用のパソコンの操作により乗りかご1を高速運転させ、前記センサー6a,6bと検出体7a,7bが正常に動作しているかどうかの確認を行なう。
【0079】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態に係るエレベータを説明するための一部正面図である。
本実施形態の場合、エンドレス状調速機用ロープ3の下部折り返し部がガバナプーリ21に掛けられ、さらにガバナプーリ21にはガバナウエイト22が連結されている。このガバナプーリ21とガバナウエイト22により、調速機用ロープ3の緊張状態が良好に維持されている。ガバナプーリ21とガバナウエイト22は、ガバナ支持部材23により上下方向に揺動可能に支持されている。
【0080】
前記ガバナプーリ21の付近には、それを間にして最上階検出用センサー6aと最下階検出用センサー6bが配置され、両センサー6a,6bはセンサー支持部材20に支持されている。
【0081】
本実施例に係るセンサー6a,6bは調速機用ロープ3ならびに検出体7a,7bが挿通できるように筒型をしており、図示していないがそのセンサー6a,6bの内面に発光素子13a〜13cと受光素子14a〜14cが対になって設置されている。
【0082】
本実施例では筒型のセンサー6a,6bを用いたが、図2に示すようなコの字形のセンサー6a,6bを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 エレベータの乗りかご
2 調速機駆動側プーリ
3 調速機用ロープ
6a 最上階検出用センサー
6b 最下階検出用センサー
7a 最上階検出用検出体
7b 最下階検出用検出体
9 制御部
10 機械室
11 センサー本体
12 中空部
13a 第1発光素子
13b 第2発光素子
13c 第3発光素子
14a 第1受光素子
14b 第2受光素子
14c 第3受光素子
15 下端部
16 減速域検出部
17 停止域検出部
18 行き過ぎ域検出部
19 検出光
20 センサー支持部材
21 ガバナプーリ
22 ガバナウェイト
23 ガバナ支持部材
24 昇降路の側壁
H 昇降路の高さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの上昇ならびに降下を調整する調速機と、
その調速機の駆動側プーリと従動側プーリの間に掛け渡されて、前記乗りかごの昇降動作に伴って循環するエンドレス状の調速機ロープを備えたエレベータにおいて、
前記調速機ロープの所定の位置に最上階検出用検出体と最下階検出用検出体を取り付け、
前記最上階検出用検出体の到来を検出する最上階検出用センサーと前記最下階検出用検出体の到来を検出する最下階検出用センサーを、前記調速機ロープの循環経路上に設置して、
前記最上階検出用センサーならびに最下階検出用センサーからの検出信号に基づいて、前記調速機の駆動動作を制御する制御部を設けて、
前記最上階検出用センサーによる前記最上階検出用検出体の検出、ならびに前記最下階検出用センサーによる前記最下階検出用検出体の検出に基づいて、前記制御部により前記調速機の駆動動作を制御することを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータにおいて、
前記最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体は、前記乗りかごが最上階または最下階に着床する前であることを検出して乗りかごの移動速度を減速するための減速域検出部を有していることを特徴とするエレベータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエレベータにおいて、
前記最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体は、前記乗りかごが最上階または最下階に着たことを検出して乗りかごを停止するための停止域検出部を有していることを特徴とするエレベータ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエレベータにおいて、
前記最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体は、前記乗りかごが最上階または最下階を行き過ぎたことを検出して乗りかごを停止するための行き過ぎ域検出部を有していることを特徴とするエレベータ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のエレベータにおいて、
前記最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体は、
前記乗りかごが最上階または最下階に着床する前であることを検出して乗りかごの移動速度を減速するための減速域検出部と、
前記乗りかごが最上階または最下階に着たことを検出して乗りかごを停止するための停止域検出部と、
前記乗りかごが最上階または最下階を行き過ぎたことを検出して乗りかごを停止するための行き過ぎ域検出部を有していることを特徴とするエレベータ。
【請求項6】
請求項5に記載のエレベータにおいて、
前記減速域検出部と停止域検出部と行き過ぎ域検出部は、前記最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体の移動方向に沿って設けられていることを特徴とするエレベータ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のエレベータにおいて、
前記最上階検出用センサーと最下階検出用センサーが、発光素子と、その発光素子から出射した検出光を受光する受光素子とを有する光センサーで構成され、
前記最上階検出用検出体と最下階検出用検出体が、前記発光素子から出射された検出光を遮蔽する遮蔽体で構成されていることを特徴とするエレベータ。
【請求項8】
請求項7に記載のエレベータにおいて、
前記最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体を構成する遮蔽体が、
前記乗りかごが最上階または最下階に着床する前であることを検出して乗りかごの移動速度を減速するための減速域検出部と、
前記乗りかごが最上階または最下階に着たことを検出して乗りかごを停止するための停止域検出部と、
前記乗りかごが最上階または最下階を行き過ぎたことを検出して乗りかごを停止するための行き過ぎ域検出部を、前記最上階検出用検出体ならびに最下階検出用検出体の移動方向に沿って階段状に設け、
前記最上階検出用センサーならびに最下階検出用センサーに、
前記減速域検出部を検出するための第1の発光素子−受光素子対と、
前記停止域検出部を検出するための第2の発光素子−受光素子対と、
前記行き過ぎ域検出部を検出するための第3の発光素子−受光素子対が、それぞれ設けられていることを特徴とするエレベータ。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のエレベータにおいて、
前記最上階検出用センサーと最下階検出用センサーが、前記調速機の駆動側プーリ付近に設置されていることを特徴とするエレベータ。
【請求項10】
請求項9に記載のエレベータにおいて、
前記駆動側プーリを付設した調速機と、前記最上階検出用センサーならびに最下階検出用センサーと、前記最上階検出用センサーならびに最下階検出用センサーからの検出信号を入力して前記調速機に駆動制御信号を出力する制御部が、前記乗りかごの昇降路から区画された機械室内に設置されていることを特徴とするエレベータ。
【請求項11】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のエレベータにおいて、
前記調速機の従動側プーリが前記乗りかごの昇降路内に設けられ、その従動側プーリ付近に前記最上階検出用センサーと最下階検出用センサーが設置されていることを特徴とするエレベータ。
【請求項12】
請求項11に記載のエレベータにおいて、
前記従動側プーリにガバナウェイトが連結されていることを特徴とするエレベータ。
【請求項13】
請求項11に記載のエレベータにおいて、
前記昇降路の高さの半分より下側の位置に前記制御部が設けられていることを特徴とするエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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