説明

エレベータ

【課題】エレベータが専用運転を実施中、エレベータは、真っ先に救出に向かうべき停止階を避難誘導者に知らせることができない。
【解決手段】本発明の一実施形態によれば、複数の階床を有する建物の昇降路を昇降するかご10と、かご10の昇降を制御する運転制御部13と、運転制御部13によるエレベータ運転を通常運転および専用運転の何れかに切替えるスイッチ部14と、スイッチ部14による専用運転の選択および災害監視機器15からの災害発生信号の出力によって運転制御部13に専用運転を実行させる切替制御部16と、専用運転中、避難者の人数を入力する停止階毎に設けられた入出力装置27と、各入出力装置27に入力された停止階毎の避難者の人数を一覧表示するかご10の人数表示部30と、停止階毎の難者の人数を一覧表示する避難階に設けられた人数表示部20とを備えたエレベータ1が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
病院や養護施設などでは、火災が発生したとき、通常のエレベータを避難用のエレベータとして利用することがあり、例えば火災発生時にエレベータを利用して安全に多くの人が避難可能にしたエレベータシステムが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
他方、災害発生時、現在の運転状態を解除して専用運転に設定し、救急隊員等による目的階のかご呼び登録に対し、かごをかご呼び登録された目的階に直行させ、救急患者のいる目的階に急行するエレベータの管制運転システムが知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−116530号公報
【特許文献2】特開2005−154063号公報
【特許文献3】特開2002−128406号公報
【特許文献4】特開平08−59108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、エレベータが専用運転を実施中、エレベータは真っ先に救出に向かうべき停止階を避難誘導者に知らせることができない。避難誘導者はどの階へかごを移動させればよいかを知ることができない。火災などの災害が発生すると、階段利用によって移動する人が出てくるため、各乗場でエレベータを利用する避難者の人数が変動する。エレベータでは、限られた時間内に、避難者の人数がより多い乗場から先にかごを配車することができず、効率のよい避難誘導が行えない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するため、本発明の一実施形態によれば、複数の階床を有する建物の昇降路を昇降するかごと、このかごの昇降を制御する運転制御部と、この運転制御部によるエレベータ運転を、通常運転および専用運転の何れかに切替えるスイッチ部と、このスイッチ部による前記専用運転の選択および災害監視機器からの災害発生信号の出力によって前記運転制御部に前記専用運転を実行させる切替制御部と、この切替制御部の切替えによる前記専用運転中、避難者の人数を入力する停止階毎に設けられた入出力装置と、これらの入出力装置に入力された前記停止階毎の前記避難者の人数を一覧表示し、前記かごあるいは前記避難階に設けられた人数表示部と、を備えたことを特徴とするエレベータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るエレベータの概略的な構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るエレベータに用いられる入出力装置の通常運転時及び専用運転時の各表示例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るエレベータに用いられる避難階及びかごの各人数表示部の表示例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るエレベータの主動作処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るエレベータに用いられる乗場側の人数表示部の初期画面の第1の表示例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るエレベータに用いられる乗場側の人数表示部の初期画面の第2の表示例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るエレベータに用いられる入出力装置の専用運転時の表示例を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るエレベータに用いられる入出力装置及び人数表示部の表示更新方法を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の第1の実施形態に係るエレベータの避難階の人数表示部の表示例を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係るエレベータのかごの人数表示部の表示例を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係るエレベータの概略的な構成図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係るエレベータに用いられる避難階及びかごの各人数表示部の表示例を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係るエレベータの専用運転時の避難階の人数表示部の表示例を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係るエレベータの専用運転時のかごの人数表示部の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態に係るエレベータについて、図1乃至図14を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るエレベータの概略的な構成図である。エレベータ1(本実施形態に係るエレベータ)は、N階床を有する建物の昇降路を昇降するかご10と、かご10に設けられたかご呼び登録装置(COP:Control Operation Panel)11と、テールコード12を介してこのかご呼び登録装置11との間で制御信号を授受しかご10の昇降を制御する運転制御部13と、運転制御部13によるエレベータ運転を、通常運転及び専用運転の何れかに切替えるスイッチ部14と、建物内に設けられ火災の発生を検知する火災監視機器15(災害監視機器)と、スイッチ部14による専用運転の選択及び火災監視機器15からの災害発生信号の出力によって運転制御部13に専用運転を実行させる切替制御部16とを備えている。専用運転とはかご呼び登録装置からの1つのかご呼びのみを受付けかご10を目的階に直行させ、乗場呼びには応答しない運転を指す。
【0010】
更にエレベータ1は、切替制御部16の切替えによる専用運転の実行中、避難者の人数を人が入力するための停止階毎に設けられた入出力パネル27(入出力装置)と、これらの入出力パネル27に入力された停止階毎の避難者の人数を収集して一覧表を生成する収集部19と、各入出力パネル27に入力された停止階毎の避難者の人数を一覧表示し、避難階に設けられた乗場側人数表示部20(人数表示部)と、乗場側人数表示部20の表示と同じ停止階毎の避難者の人数を一覧表示するかご10内のかご側人数表示部30(人数表示部)とを備えている。乗場側人数表示部20及びかご側人数表示部30は、専用運転時に階別人数を表示し、アテンダント(避難誘導者)によるかごの行き先階の決定の作業を補助するようになっている。
【0011】
アテンダントとはエレベータ1の特殊な操作を行えるように特別な訓練を受けた操作者を指す。アテンダントは例えば病院内の看護士、医師、警備員であり、養老施設の介護士である。避難者とはアテンダントによって避難誘導をされる入院中の患者や施設の入居者を指す。アテンダントが乗場側人数表示部20あるいはかご側人数表示部30の表示情報を参照して行き先階を決定し、エレベータ1は決定された行き先階へ避難階からかご10を移動させ、この行き先階へかご10を着床させた後、避難者を乗せたかご10を避難階へ戻すようにしている。
【0012】
かご10にはメインロープ21が連結されており、このメインロープ21の他端にはカウンタウェイト22が連結されている。メインロープ21の途中部は、巻上機24のシーブに巻掛けられている。巻上機24は運転制御部13により駆動制御されている。巻上機24が回転駆動されることにより、メインロープ21を介してかご10とカウンタウェイト22とが昇降路内をつるべ式に移動する。また、このかご10はかご制御装置31を有する。かご制御装置31は運転制御部13からの戸開閉指令によって戸開、戸閉を行う。
【0013】
かご呼び登録装置11は、N階分の階床ボタン、かごドア開閉ボタン、上方向ボタン、及び下方向ボタン等を有する。かご側人数表示部30はこれらのボタンの近傍に設けられている。かご呼び登録装置11はかご制御装置31を介してかご呼びを運転制御部13へ通知する。
【0014】
運転制御部13は制御盤(C/P:Control Panel)23内に設けられている。この運転制御部13は巻上機24との間でデータを送受信している。運転制御部13は巻上機24より巻上モータの回転速度を表すパルス列信号を受信しており、このパルス列信号からかご走行距離を演算により取得している。運転制御部13はかご10の昇降路での高さ位置と、昇降速度とを常時モニタしている。運転制御部13の機能はCPU、ROM及びRAM等によって実行される。
【0015】
スイッチ部14は専用運転切換スイッチである。スイッチ部14が切替える運転モードの種別は少なくとも通常運転モード及び専用運転モードである。スイッチ部14はこれらの運転モードに対応する複数の接点を有する回路基板と、この回路基板上に設けられこれらの接点を選択的に閉成するシリンダ錠前と、このシリンダ錠前を廻す鍵とを備える。鍵をアテンダントが保管している。鍵をシリンダ錠前に差込んだ状態でアテンダントが解錠しシリンダを回す操作によってスイッチ部14は制御盤23へ運転モードの種別を示す信号やモード変更を示す信号を通知するようになっている。このスイッチ部14はかご呼び登録装置11の例えば直下に設けられ、パネルによって覆われている。このパネルには施錠された扉が設けられている。この扉もアテンダントの操作によってのみ解錠されるようになっている。
【0016】
火災監視機器15は、それぞれ建物内の部屋などに取付けられた火災報知器25と、これらの火災報知器25の出力により火災の発生の有無を判断し火災発生と判断した場合、災害発生信号として火災信号を制御盤23へ通知する監視盤26とを有する。
【0017】
切替制御部16は、スイッチ部14からの信号を受信すると、運転制御部13の運転モードを切替える。切替制御部16が運転モードを通常運転モードに切替えることにより、運転制御部13はかご呼び及び全階からの乗場呼びに対して応答する。切替制御部16が運転モードを専用運転モードに切替えることにより、運転制御部13はかご呼び登録装置11からのかご呼びだけに応答する。専用運転では運転制御部13は階床の乗場呼びを無視する。切替制御部16の機能はCPU、ROM及びRAM等によって実行される。
【0018】
入出力パネル27は避難運転専用のタッチパネルである。入出力パネル27の全領域は左右や上下に分けられている。領域は、避難者人数を表示する表示部17と、入力テンキー18(入力キー)としてテンキー操作領域とに区画されている。
【0019】
図2(a)は入出力パネル27の通常運転中の表示例を示す図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。通常運転中、表示部17はかご10のかご位置や移動方向を表示する。入力テンキー18は行き先階6階を例えば「6」と人に入力させる。通常運転中、これらの表示部17及び入力テンキー18は共同して乗場呼びの登録装置として機能している。図2(b)は入出力パネル27の専用運転中の表示例を示す図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。専用運転中、表示部17は避難者の人数の入力を促す画面を表示する。専用運転中、入力テンキー18は病院内や介護施設などに在館する利用客や避難者に待ち客数を入力させる。利用客は入力テンキー18に、例えば「1」、「2」と連続入力し、待ち客が12人であることを制御盤23に通知する。これらの図2(a)、図2(b)の表示及び入力は、2階からN階までの各停止階において同じである。入出力パネル27は、2階からN階までの全階床の乗場の三方枠28の周囲の壁に埋設されている。
【0020】
図1の収集部19は、2階からN階までの各階の入出力パネル27と壁内の配線29を介して電気的に接続されている。収集部19はこれらの入出力パネル27の入力テンキー18からの信号から、停止階毎の避難者の人数の一覧表を生成する。収集部19は配線29からの信号を読込み、停止階毎の避難者の人数の値を周期的に更新する。
【0021】
人数表示部は乗場、かご10に設けられている。乗場側人数表示部20と、かご側人数表示部30とは、例えば液晶表示器を用いる。図3(a)は乗場側人数表示部20の通常運転中の表示例を示す図である。避難階である1階に設けられた乗場側人数表示部20は、表示領域39と、ボタン領域40とから成る。通常運転中、乗場側人数表示部20は1階乗場呼びの登録装置として機能する。専用運転時、図3(b)に示すように、乗場側人数表示部20の表示領域39は、停止階毎の避難階の人数を表示する。乗場側人数表示部20は、1階乗場の三方枠28の周囲の壁内に埋設されている。
【0022】
かご10内のかご側人数表示部30は、表示領域41と、戸開閉ボタン領域42とから成る。かご側人数表示部30は通常運転時、例えば図3(c)に示すように、かご10の移動方向やかご位置等を表示させる。専用運転時、例えば図3(d)に示すように、かご側人数表示部30の表示領域41は停止階毎の避難階の人数を表示する。
【0023】
制御盤23は、図3(b)、図3(d)のように、乗場側人数表示部20及びかご側人数表示部30に、この制御盤23が通知する階床毎の避難者の人数を表示させる。制御盤23は、かご側人数表示部30と、乗場側人数表示部20とに同じ情報を表示させる。図3中、同じ符号は互いに同じ要素を表す。
【0024】
また、図1の収集部19、運転制御部13及び切替制御部16は、制御盤23内に設けられている。制御盤23と、各階床の表示部17、入力テンキー18、及び乗場側人数表示部20とは配線29によって電気的に接続されている。この制御盤23はかご側人数表示部30、1階の乗場側人数表示部20、及び2階からN階までの各表示部17の各表示内容や表示タイミングを制御する表示制御部34を備えている。制御盤23にはCPU、ROM、RAM、LSI等が用いられる。
【0025】
図4はエレベータ1の主動作処理を説明するためのフローチャートである。上述の構成のエレベータ1の制御盤23は、ステップA1において火災信号を受信したかどうかを監視している。制御盤23は火災信号を受信しない間、NOルートを通り、ステップA2において運転モードを通常運転モードにする。火災などの災害が発生しない間、平常運転をエレベータ1は続ける。
【0026】
何れかの火災報知器25は熱や煙あるいは炎を検知すると、警報を報知する。監視盤26は、火災報知器25の検知により制御盤23へ火災を通知する。ステップA1において制御盤23は火災信号を受信すると、YESルートを通り、ステップA3において、制御盤23はスイッチ部14(専用運転切替スイッチ)がオンであるかどうかを判定する。オンでない場合、制御盤23は、NOルートを通り、ステップA4において、火災管制運転を実行する。火災管制運転では、一例として、制御盤23は、走行中のかご10を最寄り階に直行させる。最寄り階にかご10が着床後、制御盤23は一定時間戸開させて乗客を降車させる。制御盤23はかご10を最寄り階に留めるか、あるいは避難階へ戻す。
【0027】
ステップA4の火災管制運転の終了後、制御盤23は避難運転の開始が可能か否かを判定する。制御盤23は、各階床や昇降路に設けられたセンサ類から、ギャップ、歪み、浸水の有無、電気系統の短絡、電源確保の可否などの情報を収集する。アテンダントは、専用運転への切替え操作を決める。アテンダントは何れかの階あるいは避難階で戸開中のかご10に乗込む。アテンダントはスイッチ部14を手動操作して運転モードを専用運転モードに切替える。制御盤23は、専用運転への切替えを検知すると、例えば2階からN階の各入出力パネル27と、かご側人数表示部30と、1階の乗場側人数表示部20とにそれぞれ、専用運転を知らせる専用灯を点灯させる。制御盤23は音声アナウンス等を併用して専用運転を報知してもよい。
【0028】
制御盤23は専用運転を開始する。専用運転中、制御盤23は、かご10が一つの呼びに応じて移動中はこのかご10を他の呼びに応答させないように制御する。かご10はアテンダントによる手動の行き先指定によって昇降可能な状態になる。
【0029】
専用運転の開始後、制御盤23は、再度、ステップA1に戻り、YESルートを通り、ステップA3に進む。制御盤23は、スイッチ部14がオンになっている状況であると判断し、YESルートを通り、ステップA5において避難者による乗場呼びが上がっているかどうかを判定する。ステップA5において乗場呼びが上がっていない場合、制御盤23は、NOルートを通り、ステップA6で、1階の乗場側人数表示部20と、かご側人数表示部30とに、全階床からの呼びが入っていない状態における初期画面を表示する。
【0030】
図5、図6にそれぞれ呼び無し、呼び有りの場合の乗場側人数表示部20の初期画面の表示例を示す。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。制御盤23が初期画面を表示させるために乗場呼びの有無を読込むタイミングによって、図5、図6の何れかが表示される。
【0031】
図5は乗場側人数表示部20の初期画面の表示例を示す図である。かご側人数表示部30の表示内容も図5の表示例と同じである。同図は停止階の最上階が6階である場合の例である。2階から6階までの何れの乗場からも乗場呼びが上がっておらず、全停止階について避難者人数0が表示される。
【0032】
また、ステップA5において何れかの階から乗場呼びが上がっている場合、制御盤23は、YESルートを通り、ステップA7において、乗場側人数表示部20と、かご側人数表示部30とに、呼びが入っている状態における初期画面を表示する。
【0033】
図6は乗場側人数表示部20の初期画面の表示例を示す図である。かご側人数表示部30の表示内容も図6の表示例と同じである。同図は、4階から乗場呼びが上がっており、2階、3階、5階及び6階からは乗場呼びが上がっていない場合の例を示している。4階の避難者人数は未確定である。即ち、増又は減の変更があるかもしれないことを、制御盤23は、「?」マークの挿入によって表している。かご側人数表示部30の表示内容も図6の表示例と同じである。また、5階からも乗場呼びが上がっている場合、4階、5階にそれぞれ「?」マークが重畳的に付される。
【0034】
引き続きステップA8において制御盤23は、2階からN階の各階床の乗場の入出力パネル27に避難者の人数の入力を促す旨を表示させる。「待ち客」とは避難者を指す。
【0035】
図7は専用運転時の第2階における入出力パネル27の表示例を示す図である。既述の符号はそれらと同じ要素を表す。3階からN階までの各表示部17の表示、及び各入力テンキー18の表示も図7の例と同じである。各乗場では表示部17が「現在の待ち客数を入力してください」と表示し、避難者や介添人らに人数の入力を促す。病院の各階の入院患者、介添人、看護士、検査技士又は医師は部屋から階床の乗場に集まる。あるいは介護施設では、各階の入居者、介護士や介添人が乗場に集まる。何れかの利用客は周囲の状況を見渡して、集まっている人のうち、エレベータ1を利用して避難する避難者をその場で、又は予め定められたルール等によって決める。人数を数えた利用者は、階床の避難者の人数を入力テンキー18により入力する。入出力パネル27上の入力テンキー18は、一旦入力された人数を増加させるための増加ボタン32(ボタン)と、人数を減少させるための減少ボタン33(ボタン)とを有する。利用客は適宜これらの増加ボタン32、減少ボタン33を使って人数変更を入力する。3階からN階までの各階での入力動作も同様である。
【0036】
ステップA9において、2階からN階の各入出力パネル27から入力された情報を制御盤23は読込み更新する。表示器とは乗場側人数表示部20、入出力パネル27及びかご側人数表示部30を指す。ステップA10において、制御盤23は専用運転がオンのままかオフにされたかをスイッチ部14の値によって判定する。スイッチ部14の操作はアテンダントによるため、アテンダントが専用運転を続ける限り、専用運転が続けられる。ステップA10においてスイッチ部14がオフである場合、NOルートを通り、制御盤23は処理を終える。ステップA10においてスイッチ部14がオンである場合、YESルートを通り、制御盤23は専用運転を続行する。この後、制御盤23は各入出力パネル27、1階の乗場側人数表示部20、及びかご側人数表示部30に表示の更新をさせる。
【0037】
以上はエレベータ1のメインフローの説明である。以下、エレベータ1の表示内容の更新処理について述べる。
【0038】
図8は2階からN階の各入出力パネル27、1階の乗場側人数表示部20及びかご側人数表示部30の表示情報の更新方法を説明するためのフローチャートである。専用運転の開始時、かご10は手動により避難階又は何れかの階に着床中、あるいは走行中であるとする。
【0039】
ステップB1において、制御盤23は、待ち客数が入力されたかどうかを判定している。制御盤23は何れかの階の入出力パネル27の入力テンキー18に人数が入力されたと判断すると、YESルートを通り、ステップB2において、図3(d)のかご側人数表示部30の表示領域41内の階別人数を変更する。制御盤23は、入力があった階床の避難者の人数を変更し、変更後の階別人数を表示する。
【0040】
続いてステップB3において、制御盤23は、入力された待ち客数を表示する。図9は1階の乗場側人数表示部20の表示例を示す図であり、呼び登録の待ち画面が表示されている。アテンダントは同図を参照し、2階、4階から待ち客数の入力があった状況を知る。制御盤23は、この乗場側人数表示部20と同じ階別人数を、かご側人数表示部30に表示させる。
【0041】
ステップB1にて待ち客数が入力されない場合、及びステップB3の処理が実行された場合、制御盤23は何れもステップB4にて増加ボタン32又は減少ボタン33が押されたかどうかを判定する。制御盤23は増加ボタン32及び減少ボタン33の何れか一方でも押されたと判定すると、YESルートを通り、ステップB5において、制御盤23は、入力があった階床の避難者人数の一覧表を生成し、図9の例と同様に階別人数の一覧表をかご側人数表示部30に表示させる。ステップB6において、制御盤23は、増加ボタン32又は減少ボタン33が押された場合、階別人数の一覧表を生成し、待ち数の一覧を乗場側人数表示部20に表示させる。何れか人数変更が生じた階の変更後の状況をアテンダントは知る。
【0042】
かご10にアテンダントが乗車して移動中のステップB7において、制御盤23は避難階と異なる救出階へ着床したかどうかを判定する。かご側人数表示部30に避難者が待っていると表示された何れかの階にかご10が着床すると、YESルートを通り、ステップB8において、制御盤23は、かご側人数表示部30の着床した階の避難者の人数をリセットする。ステップB9において制御盤23は、1階の乗場側人数表示部20の着床した階の避難者の人数もリセットする。
【0043】
更にステップB10において、制御盤23はアテンダントによってかご側人数表示部30の階床ボタンが押された場合、YESルートを通り、ステップB11において、このかご側人数表示部30に登録済みの人数情報を更新させる。
【0044】
図10はかご側人数表示部30の表示例を示す図である。制御盤23はこのかご側人数表示部30の表示内容を乗場側人数表示部20にも表示させる。避難者が2階と9階とに待機している状況において、4階に9名いるため、アテンダントは先に4階へ行くつもりで4階を押したとする。制御盤23は、この4階の押下を検知すると、かご10のかご制御装置31へ通知を送る。かご制御装置31はこのかご側人数表示部30の4階部分を反転させる。かご10が移動中、制御盤23は、RAMテーブルに停止階と、避難者人数との関係を常時更新している。更新後の表示情報を制御盤23は、かご側人数表示部30と、2階からN階までの各入出力パネル27と、1階の乗場側人数表示部20とにそれぞれ表示情報として配信している。このように専用運転でもかご10には正確な避難者の人数が伝達される。
【0045】
この後、制御盤23は、かご10を4階に移動させて戸開させる。アテンダントは避難者をかご10に導き入れる。かご10は1階に戻り、避難者は館外へ移動する。アテンダントは次に優先順位の高い階床をかご側人数表示部30により探して行き先階を決定する。
【0046】
以上のように、各階床で専用運転中、避難者人数が変更されても表示内容がアテンダントに伝達されるため、効率的な配車を行える。避難時、一旦人数が入力された後、例えば何人かの患者や入居者が階段で3階から1階に下りることや、6階の乗場で待っていた利用客が階段により降りられる下階まで移動するケースが想定される。全階床で人数が増減することもある。アテンダントは1階において救出に向かうべき行き先階の優先順位を検討した後、かご10に乗車するため、人数変動に対応可能となる。
【0047】
従来例ではかごに乗車中、アテンダントは階床毎の待ち客数を把握できず、結果的に待ち客数の少ない階へ先にかごが行ってしまう等の事態が起こりうる。これに対して、実施形態に係るエレベータでは、階床間の優先順位を乗車中のアテンダントが得られるようになる。後から一人避難する人が増えた場合にも適切に待ち客数が把握できる。救出にかご10が向かって救出階に着床して戸開したところ、人が乗り切れないといった状況が避けられる。手動で行き先階を決定する際、始めから開かないほうがよいといった情報をアテンダントが得られるようになる。限られた時間内に、待ち客数がより多い乗場から先にかごを配車させることができるようになる。効率のよい避難誘導が行える。
【0048】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、エレベータ1は単一号機により構成されていたが、実施の形態に係るエレベータは、複数号機でもよい。
【0049】
図11は本発明の第2の実施形態に係るエレベータの構成図である。エレベータ35(本実施形態に係るエレベータ)は、DCS(Destination Control System)機能を有する複数号機から成るエレベータである。DCSとは、利用客がかご乗車前に予め行き先階を各乗場において直接入力し、行き先階と異なる階での戸開閉無しにこの行き先階へ直行するサービスシステムを指す。図11中、上述した符号と同じ符号を有する要素はそれらと同じ要素を表す。
【0050】
エレベータ35は、それぞれ建物内の昇降路を昇降する複数台のかご10と、各かご10の昇降を制御するかご10毎の運転制御部13と、配線36を介してこれらの運転制御部13とデータを授受する制御盤37と、2階からN階までの乗場毎に号機数分設けられ、専用運転時、避難者の人数を人が入力するための入出力パネル43と、避難階に号機数分設けられこれらの入出力パネル43に入力された停止階毎の人数を一覧表示する乗場側人数表示部44と、各かご10に設けられ、同じく停止階毎の人数を一覧表示するかご側人数表示部45とを備えている。
【0051】
各入出力パネル43の通常運転時及び専用運転時の表示内容は、図2の例と同じである。本実施形態では、入出力パネル43及び乗場側人数表示部44がDCS入力及び表示用のタッチパネルを共用して使っている。
【0052】
図12(a)は乗場側人数表示部44の表示例を示す図である。乗場側人数表示部44は表示領域46及び入力テンキー47を有する。図12(b)はかご側人数表示部45の表示例を示す図である。かご側人数表示部45は表示領域48を有する。
【0053】
また、制御盤37は、各運転制御部13からの運行情報によって配車割当てを行う群管理制御部38と、切替制御部16と、収集部19と、表示制御部34とを備えている。
【0054】
このような構成のエレベータ35が平常運転を実施中、群管理制御部38は、行き先階を利用客に予め乗車前に登録させる。利用客は、2階からN階までの各乗場において入出力パネル43の入力テンキー18を使って行き先階を押す。利用客は、1階の乗場では、乗場側人数表示部44を使って行き先階を押す。群管理制御部33は、利用客それぞれの行き先階に応じて複数のかご10のうちの何れかを割当てる。
【0055】
DCS機能に着目すると、エレベータ35では、例えば1階の利用客が9階へ行きたい場合、利用客はこの機器に入力して1階で9階を乗車前に登録する。そうすると群管理制御部38は9階に一番早く到着可能なかご10が何号機であるかをパネル機器に表示する。利用者が1階で表示された号機のかご10に乗ると、9階に一番早く到着する。利用客がかご10内部で操作する必要がない。同じ1台のかご10内で他の別階へ行く別客と乗り合わせることがなくなるようにしてエレベータ35は運用される。
【0056】
平常運転中、制御盤37は、火災監視機器15より火災信号を入力されると、火災管制運転を実行する。その後、病院や介護施設内のアテンダントがスイッチ部14を切替えることによって、制御盤37はエレベータ運転を専用運転に切替える。一旦、エレベータ運転が避難のための専用運転に変えられると、制御盤37は手動モードとして、複数号機を全て単一号機として動作させる。制御盤37は、各かご10を各昇降路で独立して昇降させる。エレベータ35が複数号機を互いに独立させて専用運転を実施させる例は、第1の実施形態のエレベータ1の動作例と同じである。
【0057】
図13は専用運転時の乗場側人数表示部44の表示例を示す図である。かご側人数表示部45もこの乗場側人数表示部44の表示内容と同じ階別人数の一覧表を表示する。アテンダントは複数のかご10の中から適切なかご10を選択する。また、乗場側人数表示部44及びかご側人数表示部45は何れも人数の増減も反映される。アテンダントが、かご側人数表示部45の階床ボタンを押すことにより、制御盤37は階別の人数を更新する。
【0058】
図14はかご側人数表示部45の表示例を示す図である。制御盤37アテンダントが押下した階床番号を検知すると、かご側人数表示部45の当該部分を反転させる。専用運転において一台のかご10について正確な避難者の人数がアテンダントへ伝達される。複数のかご10についても同様である。
【0059】
本実施形態では、4台のかご10をまとめて一名のアテンダントが操作してもよい。あるいはアテンダントの人数を複数人揃えた状況でエレベータ35の専用運転を稼動させてもよい。複数人とは、各号機毎にアテンダントを配置し、各名のアテンダントが複数号機を操作すること、あるいは2名のアテンダントが複数号機を分担して操作すること等を指す。エレベータ35が各アテンダントに階別人数情報を伝達する。各乗場側人数表示部44あるいはかご側人数表示部45の表示が1又は複数人のアテンダントによる各かご10の行き先階の決定を補助する。どの階に行くべきかという情報がアテンダントへ伝達される。名アテンダントが4台のかご10に乗って、各階床の避難客を救出に行く。あるいは1階の乗場側人数表示部44、かご側人数表示部45を2名のアテンダントが監視し、交替しつつ、何れかのかご10に乗車して救出階へ向かう。
【0060】
本発明のこの実施形態に係るエレベータによれば、DCS機能のサービスのため、予め建物の各乗場に設けられた入出力パネル43をそのまま表示部17、入力テンキー18及び乗場側人数表示部44として使用することができる。
【0061】
表示部17及び入力テンキー18はタッチパネルに一体化されて形成され、乗場側人数表示部44はタッチパネルが用いられており、これらのタッチパネルをタッチパネルに用いられるソフトウェアの入替えだけで表示情報及び入力画面を変更可能である。
【0062】
(その他)
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記の実施形態では、火災監視機器15は火災の発生を検知したが、実施形態に係るエレベータは、建物内外の地震観測設備からの情報によって専用運転に切替えてもよい。停電、強風、雷、冠水といった災害発生に応じてこれらの停電、強風等毎に決められた手順にしたがって専用運転を実行するようにしてもよい。
【0063】
また、各階の入出力パネル27、43にかご10の定員を表示させたり、かご10が満員であること及びかご10に人が乗る空きがあることなどを併せて表示してもよい。これらの表示により、避難客に冷静に行動させるようにもできる。
【0064】
昇降路が透明材質を含む場合、かご10で移動中のアテンダントは、乗場の避難者の人数を推定することが可能である。第2の実施形態では、アテンダントがかご呼び登録装置により、階別の人数を入力できるように構成することもできる。これにより、1階の他のアテンダントは行き先階の選定に役立つ。
【0065】
第1実施形態では表示部17、入力テンキー18及び乗場側人数表示部20は別々の入出力装置を用いてもよい。
【0066】
各実施形態では、避難階が1階だけであったが、高層建物では、実施の形態に係るエレベータは、全階床を上層ゾーン、中層ゾーン、下層ゾーンとに分け、避難階をゾーン毎にそれぞれ設けてもよい。収集部19は各ゾーンごとに階別人数の一覧表を生成し、ゾーン毎の一覧表を各乗場の乗場側人数表示部20や44へ通知してもよい。これにより、避難客を効率的に誘導することができる。
【0067】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…エレベータ(第1の実施形態に係るエレベータ)、10…かご、11…かご呼び登録装置、12…テールコード、13…運転制御部、14…スイッチ部、15…火災監視機器(災害監視機器)、16…切替制御部、17…表示部、18…入力テンキー(入力キー)、19…収集部、20…乗場側人数表示部(人数表示部)、21…メインロープ、22…カウンタウェイト、23…制御盤、24…巻上機、25…火災報知器、26…監視盤、27…入出力パネル(入出力装置)、28…三方枠、29…配線、30…かご側人数表示部(人数表示部)、31…かご制御装置、32…増加ボタン(ボタン)、33…減少ボタン(ボタン)、34…表示制御部、35…エレベータ(第2の実施形態に係るエレベータ)、36…配線、37…制御盤、38…群管理制御部、39…表示領域、40…ボタン領域、41…表示領域、42…戸開閉ボタン領域、43…入出力パネル、44…乗場側人数表示部(人数表示部)、45…かご側人数表示部(人数表示部)、46,48…表示領域、47…入力テンキー(入力キー)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の階床を有する建物の昇降路を昇降するかごと、
このかごの昇降を制御する運転制御部と、
この運転制御部によるエレベータ運転を、通常運転および専用運転の何れかに切替えるスイッチ部と、
このスイッチ部による前記専用運転の選択および災害監視機器からの災害発生信号の出力によって前記運転制御部に前記専用運転を実行させる切替制御部と、
この切替制御部の切替えによる前記専用運転中、避難者の人数を入力する停止階毎に設けられた入出力装置と、
これらの入出力装置に入力された前記停止階毎の前記避難者の人数を一覧表示し、前記かごあるいは前記避難階に設けられた人数表示部と、を備えたことを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
前記入出力装置は、前記人数の入力キーと、前記人数の表示部とを備え、この表示部は、前記専用運転時、前記人数の入力を促す画面を表示することを特徴とする請求項1記載のエレベータ。
【請求項3】
前記入力キーは、利用客が前記かごに乗車前に行き先階を入力しこの行き先階へ前記かごを直行させるサービスシステムに用いられる表示及び入力用の機器と共用されたことを特徴とする請求項2記載のエレベータ。
【請求項4】
前記入出力装置は、一旦入力された前記人数を増加させるボタンと、前記人数を減少させるボタンとを備えることを特徴とする請求項1記載のエレベータ。
【請求項5】
前記かごおよび前記運転制御部が複数設けられ、前記避難階に前記人数表示部が複数設けられ、これらの人数表示部の表示が前記停止階毎の前記人数を表示することを特徴とする請求項1記載のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−103774(P2013−103774A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246552(P2011−246552)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】