説明

エレベータ

この発明に係るエレベータは、かごの容量、速度等のエレベータの仕様変更に対して、それ専用の巻上機を必ずしも必要としないことを目的としたものである。この発明に係るエレベータは、昇降路内を昇降するかごと、前記昇降路内を前記かごに連動して昇降する釣合重りと、前記かごおよび前記釣合重りを昇降路内に吊り下げたロープと、このロープを通じて前記かごおよび前記釣合重りを昇降させるとともに釣合重りに搭載された巻上機とを備え、前記釣合重りには複数個の前記巻上機が搭載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明は、かごおよび釣合重りを昇降させるための巻上機が釣合重りに搭載されたエレベータに関するものである。
【背景技術】
図3は国際公開WO00/53520号パンフレットに示された従来のエレベータの斜視図である。
このエレベータは、昇降路内を昇降するかご1と、昇降路内をかご1に連動して昇降する釣合重り5と、かご1および釣合重り5を昇降路内に吊り下げたロープ3と、このロープ3を通じてかご1および釣合重り5を昇降させるとともに釣合重り5に搭載された巻上機10と、この巻上機10の駆動を制御するとともに釣合重り5に搭載された制御装置11とを備えている。
かご1は、昇降路の上下方向に延びたかごレール7、かご1のかごレール7側に設けられたガイドシュー(図示せず)およびガイドローラ(図示せず)により上下方向に移動可能に案内されている。釣合重り5も同様に、昇降路の上下方向に延びたガイドレール8およびローラ9により上下方向に移動可能に案内されている。
昇降路天井に一端部が固定されたロープ3は、かご1の底面に固定されたプーリ2を介して頂部プーリ4に掛かっている。このロープ3は、さらに釣合重り5の上部プーリ6を懸垂し、その端部は昇降路天井に固定されている。
上記エレベータでは、ガイドレール8に接触するローラ9の一つは、巻上機10に接続され、この巻上機10の駆動によりローラ9が回転することにより、釣合重り5、巻上機10および制御装置11は上下方向に移動し、これらの移動に伴い、かご1もその反対方向に移動する。
上記のように構成されたエレベータでは、巻上機10が釣合重り5に搭載されており、巻上機10自身が釣合重り5の働きをなしているが、かご1の容量、速度等の仕様に応じた専用の巻上機10を釣合重り5に搭載しなければならないという問題点があった。
また、ロープ3は一本のロープでかご1および釣合重り5を吊しているので、それぞれのかご1および釣合重り5に対して最適なロープを選択できないという問題点があった。
【発明の開示】
この発明は、上記のような問題点を解決することを課題とするものであって、かごの容量、速度等のエレベータの仕様変更に対して、それ専用の巻上機を必ずしも必要としないエレベータを得ることを目的とする。
また、ロープは、かご用および巻上機用にそれぞれ分けられ、それぞれ最適なロープを選択できるエレベータを得ることを目的とする。
この発明に係るエレベータは、昇降路内を昇降するかごと、前記昇降路内を前記かごに連動して昇降する釣合重りと、前記かごおよび前記釣合重りを昇降路内に吊り下げたロープと、このロープを通じて前記かごおよび前記釣合重りを昇降させるとともに釣合重りに搭載された巻上機とを備え、前記釣合重りには複数個の前記巻上機が搭載されているものである。
また、この発明に係るエレベータは、昇降路内を昇降するかごと、前記昇降路内を前記かごに連動して昇降する釣合重りと、前記かごおよび前記釣合重りを昇降路内に吊り下げたかご用ロープと、このかご用ロープを走行させて前記かごおよび前記釣合重りを昇降させるとともに釣合重りに搭載された巻上機と、上端部が前記昇降路の天井に直接または間接に接続されているとともに下端部が前記昇降路の床面に接続され、また中間部が前記巻上機に巻回された巻上機用ロープとを備えたものである。
【図面の簡単な説明】
図1はこの発明の実施の形態1のエレベータの構成図である。
図2は図1のエレベータの要部正面図である。
図3は従来のエレベータの斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、この発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明するが、従来のものと同一、相当部材、部位については、同一符号を付して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1のエレベータの構成図である。
このエレベータは、昇降路内を昇降するかご1と、昇降路内をかご1に連動して昇降する釣合重り20と、この釣合重り20に搭載された2台の巻上機22a,22bと、巻上機22a、22bに搭載されているとともに巻上機22a、22bの駆動を制御する制御装置11と、一端部がかご1に接続され、他端部が、吊り車23、返し車24を通じて制御装置11に接続されたかご用ロープ21と、上端部が昇降路の天井にテンションコントローラ26を介して接続されているとともに、下端部が昇降路の床面に接続され、また中間部が巻上機22a,22bにそれぞれ巻回された巻上機用ロープ27a,27bを備えている。
巻上機22a,22bは同一の仕様である。また、釣合重り20、巻上機22a,22bおよび制御装置11は、エレベータの据え付け前、即ち製造工場の出荷時に既に一体であり、重り本体25を構成している。
また、巻上機22a,22bは、昇降路の延長線上に沿って視たときに、釣合重り22の外形内に収まっている。
また、巻上機用ロープ27a,27bは、樹脂製ロープ、または樹脂が被覆されたロープで、可撓性を有しており、巻上機22a,22bに対して360°の巻回が可能であるとともに、テンションコントローラ26により巻上機用ロープ27a,27bの経年的延び、振動等に対しても常に一定の張力が得られるようになっている。
上記エレベータでは、例えば図1において巻上機22a,22bが反時計方向に同期駆動したときには、巻上機用ロープ27a,27bが巻回された巻上機22a,22bを含む重り本体25は、上昇するが、その重り本体25に連動してかご1は降下する。
また、図1において巻上機22a,22bが時計方向に回転したときには、巻上機用ロープ27a,27bが巻回された巻上機22a,22bを含む重り本体25は、降下するが、その重り本体25に連動してかご1は上昇する。
上記のように構成されたエレベータでは、釣合重り20には同一の2台の巻上機22a,22bが搭載されており、かご1の容量、速度に対する専用仕様の巻上機ではなく、2台の同期駆動する巻上機22a,22bで対処している。このような構成を採用することで、かごの容量、速度に対する専用仕様の巻上機を準備する必要性はない。
また、巻上機22a,22bは、それぞれ同一(形状、寸法、出力)であるので、据え付け作業および部品管理が簡単であり、またメンテナンスも容易である。
また、巻上機用ロープ27a,27bおよびかご用ロープ21は別個であり、それぞれの使用状況に応じた最適なロープを選定することができるとともに、それだけロープ27a,27b,かご用ロープ21に対する負荷が軽減されて長寿命化が図れ、かつロープ全体を一律に交換するようなことが無く、要交換のロープのみを交換すればよい。
また、天井には巻上機用ロープ27a,27bを張設するテンションコントローラ26が固定され、このテンションコントローラ26により巻上機用ロープ27a,27bの張力が常に一定になるように調整されているので、巻上機22a,22bの駆動中に、巻上機用ロープ27a,27bが巻上機22a,22bからその軸線方向にずれるようなことは防止され、巻上機22a,22bの駆動力は、重り本体25およびかご1の昇降力として確実に伝達される。
また、巻上機用ロープ27a,27bは可撓性のロープであるので、巻上機用ロープ27a,27bは曲率半径が小さい巻上機22a,22bに簡単に巻き掛けすることができる。
また、巻上機22a,22bは、昇降路の延長線上に沿って視たときに、釣合重り20の外形内に収まる外形寸法であるので、巻上機22a,22bのために平面面積が増大するようなことは無い。
また、据え付け前に、予め釣合重り20、巻上機22a,22bおよび制御装置11は一体化されているので、現場での釣合重り20、巻上機22a,22bおよび制御装置11の据え付け時間が短縮化される。なお、据え付け前に、例えば予め釣合重り20および巻上機22a,22bを一体化してもよいし、また巻上機22a,22bおよび制御装置11を一体化してもよい。
なお、上記の実施の形態では、2台の巻上機22a,22bが釣合重り20に搭載され、かつかご用ロープ21、巻上機用ロープ27a,27bを備えたエレベータについて説明したが、一本のロープによりかごおよび釣合重りが吊されたエレベータにおいて、釣合重りに複数台の巻上機を搭載するものでもよい。
また、一台の巻上機が釣合重りに搭載されたエレベータにおいて、かご用ロープによりかごが吊され、巻上機用ロープによりその巻上機が吊されるようにしてもよい。
また、巻上機については、その台数については、3台以上であってもよい。
また、巻上機用ロープについては、その端部を昇降路天井に直接固定するようにしてもよい。
また、上記の実施の形態では、釣合重り20に制御装置11が搭載されているが、この発明は、釣合重りに制御装置11が搭載されていないエレベータにも適用することができるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
以上のように、この発明は、専用仕様の巻上機を用意する必要性が無いという点で、巻上機が釣合重りに搭載されたエレベータに有用である。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降するかごと、前記昇降路内を前記かごに連動して昇降する釣合重りと、前記かごおよび前記釣合重りを昇降路内に吊り下げたロープと、このロープを通じて前記かごおよび前記釣合重りを昇降させるとともに釣合重りに搭載された巻上機とを備えたエレベータにおいて、
前記釣合重りには複数個の前記巻上機が搭載されたことを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
昇降路内を昇降するかごと、前記昇降路内を前記かごに連動して昇降する釣合重りと、前記かごおよび前記釣合重りを昇降路内に吊り下げたかご用ロープと、このかご用ロープを走行させて前記かごおよび前記釣合重りを昇降させるとともに釣合重りに搭載された巻上機とを備えたエレベータにおいて、
上端部が前記昇降路の天井に直接または間接に接続されているとともに、下端部が前記昇降路の床面に接続され、また中間部が前記巻上機に巻回された巻上機用ロープを有することを特徴とするエレベータ。
【請求項3】
前記釣合重りには、前記巻上機の駆動を制御する制御装置が搭載された請求項1または請求項2に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記釣合重りには複数個の前記巻上機が搭載された請求項2または請求項3に記載のエレベータ。
【請求項5】
複数個の前記巻上機は、それぞれ同一である請求項1または請求項4に記載のエレベータ装置。
【請求項6】
前記天井には前記巻上機用ロープを張設するテンションコントローラが固定され、このテンションコントローラに前記巻上機用ロープの前記上端部が接続された請求項2ないし請求項5の何れかに記載のエレベータ。
【請求項7】
前記巻上機用ロープは可撓性のロープである請求項2ないし請求項6の何れかに記載のエレベータ。
【請求項8】
前記巻上機は、前記昇降路の延長線上に沿って視たときに、前記釣合重りの外形内に収まる請求項1ないし請求項7の何れかに記載のエレベータ。
【請求項9】
据え付け前に、予め前記釣合重り、前記巻上機および前記制御装置の少なくとも2つについては一体化された請求項3ないし請求項9の何れかに記載のエレベータ装置。

【国際公開番号】WO2004/074157
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【発行日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568473(P2004−568473)
【国際出願番号】PCT/JP2003/001801
【国際出願日】平成15年2月19日(2003.2.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】