説明

エレメント挿入工法、地中構造物の構築工法および矩形エレメント

【課題】狭隘な作業空間である掘削部での掘削作業を作業性よく掘削できることのできるエレメント挿入工法および矩形エレメントを提供することを目的とする。
【解決手段】角型鋼製エレメント10の先端に装着した刃口30で地山400を掘削し、後方に掘削土砂を排土しながら、連結方向X方向に隣接する角型鋼製エレメント10同士を連結して地山400に挿入するエレメント挿入工法であって、角型鋼製エレメント10において、隣接する角型鋼製エレメント10との対向部分のうち、後で自身に連結しながら挿入される後挿入角型鋼製エレメント10側の対向部分に、内部空間15と外部とを貫通するエレメント側開口14aと、エレメント側開口14aに対して開閉自在に構成したスライド式サイドカバー20とを備え、刃口30において、挿入済みエレメント10’に対向する対向部分に、作業空間35と外部とを貫通する刃口側開口34aを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えば、敷設された軌道の下方の地中に構造物を構築するために、切羽が露出する状態で掘削してエレメントを挿入するエレメント挿入工法、地中構造物の構築工法および矩形エレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、渋滞緩和や交通網の複雑化に伴って、軌道と道路や、軌道同士、あるいは道路同士の立体交差化が進んでいる。一般的には、軌道等の既設構造物の上空を交差するように道路等の新設構造物を構築するオーバーパス工法や、既設構造物の下方の地中部分に交差する新設の地中構造物を構築するアンダーパス工法によって立体化される。
【0003】
特に、既設軌道に対する立体交差化においては、大地震による交差道路の軌道への影響を懸念し、アンダーパス工法が多く採用されている。
例えば、アンダーパス工法の場合、軌道等の既設構造物の下方に横断する方向で、切羽が露出する状態で掘削してエレメントを挿入し、地下構造物を構築する工法がある。
【0004】
このように、切羽が露出する状態で掘削する開放型掘削の場合、エレメント内部は狭隘であり、エレメント内部での掘削作業は作業性が悪かった。また、掘削土砂を排土するためにはベルトコンベア等の排土設備の設置が必要であり、さらに作業空間を狭めることになっていた。
【0005】
このような状態においても、連結するエレメント同士は独立するとともに、エレメント内部への地山の流入を防ぐため、両端部以外を閉塞したエレメントを用いる必要があるため、エレメント同士を行き来することはできず、例えば、支障物の出現等の切羽部分でトラブルが発生しても、発進側から切羽までの行き来が困難であり、トラブルの対応が遅れるといった問題があった。
【0006】
例えば、特許文献1では、連結する外側の側面に窓を設けた角形エレメントが提案されているものの、この窓は、角形エレメントの挿入箇所の側方に支障物が出現した場合に撤去することを目的としており、上述のような問題に対応するように、連結するエレメント内部同士を挿通させることはできず、狭隘な内部空間での作業性の向上を図ることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−299782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、狭隘な作業空間である掘削部での掘削作業を作業性よく掘削できることのできるエレメント挿入工法、地中構造物の構築工法および矩形エレメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、エレメント先端に装着した掘削部で地山を掘削し、後方に掘削土砂を排土しながら、挿入する方向に対して交差する方向に隣接するエレメント同士を連結して地山に挿入するエレメント挿入工法であって、前記エレメントにおいて、隣接するエレメントとの対向部分のうち、後で自身に連結しながら挿入される後挿入エレメント側の対向部分に、エレメント内部と外部とを貫通するエレメント側開口部と、エレメント側開口部に対して開閉自在に構成した開閉カバーとを備え、前記掘削部において、挿入済みエレメントに対向する対向部分に、掘削部内部と外部とを貫通する掘削部側開口部を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記掘削部は、開放型の掘削装置における人力掘削や機械掘削、あるいは密閉型の掘削装置における機械掘削等による掘削部とすることができる。
【0011】
この発明により、開閉カバーを開くことにより、挿入済みエレメントのエレメント内部と掘削部内部とを、エレメント側開口部及び掘削部側開口部を介して連通することができる。したがって、掘削部における作業空間を拡大させ、掘削作業の作業性を向上することができる。
【0012】
また、連結するエレメント同士がエレメント側開口部及び掘削部側開口部を介して導通可能になるため、例えば、支障物の出現等の切羽部分でトラブルが発生しても、発進側から容易に切羽まで行くことができ、早期にトラブル対応することができる。このように、この発明により、エレメント挿入の施工性を向上することができる。
【0013】
この発明の態様として、前記エレメントを、断面略矩形の矩形エレメントで構成し、矩形エレメントを、連結方向に対して平行に配置し、隣接する矩形エレメント同士を連結する連結部を連結方向の両端部に備え、所定の間隔で隔てて配置した2枚のフランジ材と、矩形断面のうち前記連結方向の一方側である挿入済みエレメント側において、2枚の前記フランジ材を間隔方向に接続するウェブ材とで、矩形断面のうち3方向が少なくとも板材で囲われ、連結方向前側に対して断面凹状に形成することができる。
【0014】
前記連結部は、互いに嵌合するとともに、長さ方向にスライド可能な嵌合接手で構成することができる。
この発明により、必要強度を確保しながら、空間的無駄の少ない内部空間を確保することができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記開閉カバーを、連結方向前側に対して凹状である断面のうち開放部分に、長さ方向に対してスライド可能に構成することができる。
前記長さ方向に対してスライド可能な構成は、長さ方向のレール上を転動するローラ等の転動手段や、レール上を滑走する滑走手段等とすることができる。
これにより、開閉カバーを脱着して開閉する場合と比較して、簡便に開閉できるため、開閉カバーの開閉作業の作業性を向上することができる。したがって、エレメント挿入における施工効率を向上することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記掘削部を、刃口で構成するとともに、前記挿入済みエレメント内部に、前記掘削土砂を後方に排土する排土設備を装備し、前記開閉カバーを開放して、前記エレメント側開口部と、前記掘削部側開口部とを連通し、前記刃口で掘削した掘削土砂を、連通する前記エレメント側開口部及び前記掘削部側開口部を介して、前記排土設備で排土することができる。
前記排土設備は、ベルトコンベア、スクリュウコンベア、圧送式排土設備、吸引式排土設備、バッテリロコ等の運搬式排土設備等の排土設備とすることができる。
【0017】
この発明により、刃口で掘削した掘削土砂を、挿入済みエレメント内部の排土設備で排土できるため、作業性が向上する。
詳しくは、刃口で掘削した掘削土砂を、刃口を接続した挿入するエレメント内部に設置した排土設備で排土する場合、前方で掘削した掘削土砂を後方の排土設備に排土するため、掘削作業者はおよそ180度旋回して排土する必要がある。しかし、挿入済みエレメント内部に設置した排土設備で排土する場合は、前方で掘削した掘削土砂をエレメント側開口部及び掘削部側開口部を介して排土するため、掘削作業者はおよそ90度旋回して排土することができる。したがって、掘削作業の作業性を向上することができる。また、刃口でトラブルが発生したり、作業員の交代であっても、挿入するエレメント内に排土設備がないため、容易に発進側と切羽とを行き来でき、施工性がさらに向上する。
【0018】
またこの発明は、上述のエレメント挿入工法によって、前記地山に前記エレメントを連結しながら挿入し、前記エレメント内部に充填材を充填して地山内に構造物を構築する地中構造物の構築工法であることを特徴とする。
前記地中構造物は、新幹線等の軌道の下方を横断するアンダーパス構造物、あるいは地下の共同溝等の地下構造物とすることができる。
この発明により、施工性よくエレメントを挿入し、地中構造物を構築することができる。
【0019】
さらにまたこの発明は、先端に装着した掘削部で地山を掘削しながら、挿入する方向に対して交差する方向に連結しながら地山に挿入する矩形エレメントであって、連結方向に対して平行に配置し、隣接する矩形エレメント同士を連結する連結部を連結方向の両端部に備え、所定の間隔で隔てて配置した2枚のフランジ材と、矩形断面のうち前記連結方向の一方側である挿入済みエレメント側において、2枚の前記フランジ材を間隔方向に接続するウェブ材とで、矩形断面のうち少なくとも3方向が板材で囲われ、連結方向前側に対して断面凹状に形成し、連結方向前側に対して凹状である断面のうち開放部分に、エレメント内部と外部とを貫通するエレメント側開口部と、エレメント側開口部において構成した開閉カバーとを備え、該開閉カバーに、所定のスライド操作によって、エレメント側開口部に対して長さ方向にスライドして開閉するスライド手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、狭隘な作業空間である掘削部での掘削作業を作業性よく掘削できることのできるエレメント挿入工法、地中構造物の構築工法および矩形エレメントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】軌道下に構築する地下横断構造物の概略斜視図。
【図2】同状態の概略正面図。
【図3】同状態の概略縦断面図。
【図4】角型鋼製エレメントについての拡大正面図。
【図5】スライド式サイドカバーについての説明図。
【図6】刃口及び角型鋼製エレメントについての説明図。
【図7】刃口についての説明図。
【図8】裏込めバッグについての説明図。
【図9】裏込めグラウト注入システムについての概略図。
【図10】エアーバッグについての説明図。
【図11】エレメント挿入工に関するフローチャート。
【図12】エレメント挿入工についての説明図。
【図13】エレメント挿入工における掘削・排土について説明する説明図。
【図14】裏込めグラウト注入工に関するフローチャート。
【図15】裏込めグラウト注入圧力管理に関するグラフ。
【図16】裏込めグラウト注入工についての説明図。
【図17】切羽防護施工についての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の一実施形態を以下図面とともに説明する。
図1は軌道200の下方に構築する地下横断構造物300についての概略斜視図を示し、図2は軌道200の下方に構築する地下横断構造物300についての概略正面図を示し、図3は軌道200の下方に構築する地下横断構造物300についての概略縦断面図を示している。なお、図3は、複線の軌道200の中間部分、つまり挿入方向Lの中間部分を省略して図示している。
【0023】
図4は角型鋼製エレメント10についての拡大正面図を示し、図5はスライド式サイドカバー20についての説明図を示している。なお、図5(a)はスライド式サイドカバー20の外側面についての斜視図を示し、図5(b)はスライド式サイドカバー20の内側面についての斜視図を示している。
【0024】
図6は刃口30及び角型鋼製エレメント10についての説明図を示し、図7は刃口30についての説明図を示している。
なお、図6(a)は刃口30及び角型鋼製エレメント10の縦断面図を示し、図6(b)は刃口30及び角型鋼製エレメント10の側面図を示し、図6(c)は刃口30及び角型鋼製エレメント10の平面図を示している。また、図7(a)は、刃口30における短尺裏込めバッグ50を送り出すバッグ送り出し開口40部分の断面図を示し、図7(b)はベルト取り付け部42より後方側から見た刃口30の断面図を示している。
【0025】
図8は短尺裏込めバッグ50についての説明図を示し、図9は裏込めグラウト注入システム70についての概略図を示し、図10はエアーバッグ61についての説明図を示している。なお、図8(a)は短尺裏込めバッグ50の底面図を示し、図8(b)は短尺裏込めバッグ50の平面図を示し、図8(c)は短尺裏込めバッグ50の端面図を示している。また、図10(a)はエアーバッグ61の斜視図を示し、図10(b)はエアーバッグ61の構成を説明するための断面図を示している。
【0026】
本発明の切羽防護手段であるエアーバッグ61及び可撓性のあるラッシングベルト62を用いた切羽防護方法は、新幹線等の軌道200の下方の地山400に地下横断構造物300を構築するアンダーパス工法において、地下横断構造物300を構築するため、刃口30を連結した角型鋼製エレメント10を地山400に掘削・挿入する際の掘削停止時に切羽400aを防護するための工法である。
【0027】
詳しくは、図1〜図3に示すように、地山400の上部に、路床401aと路盤401bとを盛土して盛土部401を構成している。さらに、盛土部401の上にバラスト402を締め固め、枕木202を長さ方向に等間隔で載置し、枕木202の上に軌条201を固定して軌道200を構成している。
【0028】
軌道200を横断する方向(図3において左右方向)に構築する地下横断構造物300は、上床部300aが所定の土被りとなる位置で、地山400に構築される矩形断面のボックスである。なお、図1乃至3において、連結した角型鋼製エレメント10がむき出したままで地下横断構造物300を図示しているが、地下横断構造物300の用途に応じて、地下横断構造物300の内部空間300bや端部に舗装やコンクリートを構築して地下横断構造物300を完成させる。
【0029】
このように、地下横断構造物300は、軌道200の横断方向両側に予め建て込んだ土留め壁410(図1乃至3では図示省略、図16参照)を用いて掘り下げて構築した立坑420(420a,420b)間の軌道200下の地山400を貫通する構造物である。
【0030】
そして、地下横断構造物300は、図1及び2に示すように、正面視横長四角形状に配置した角型鋼製エレメント10を連結し、その内部を掘削して構築している。なお、地下横断構造物300を構築するための角型鋼製エレメント10を挿入する前に、盛土部401の地盤改良を行ってから角型鋼製エレメント10を挿入するとよい。
【0031】
角型鋼製エレメント10は、図2及び図4に示すように、略四角形型に形成され、後述する連結継手11で連結方向Xに連結可能に構成するとともに、所定の長さに形成している。そして、所定の長さに形成した角型鋼製エレメント10を複数、長さ方向(挿入方向)Lにおいて、接続部材(図支省略)で接続して、地下横断構造物300の長さを確保する構成である。
【0032】
なお、連結方向Xは、地下横断構造物300の上床部300a及び下床部を構成する角型鋼製エレメント10の場合、地下横断構造物300の幅方向と一致し、地下横断構造物300の側壁を構成する角型鋼製エレメント10の場合、地下横断構造物300の高さ方向と一致する。したがって、連結方向Xに対して直交する交差方向Yは、地下横断構造物300の上床部300a及び下床部を構成する角型鋼製エレメント10の場合、地下横断構造物300の高さ方向と一致し、地下横断構造物300の側壁を構成する角型鋼製エレメント10の場合、地下横断構造物300の幅方向と一致する。
【0033】
詳しくは、図4に示すように、連結方向Xに対して直交する交差方向Yに所定の間隔を隔てて配置する2枚のフランジ板12と、フランジ板12における連結方向Xの基端側(図4において右側)で交差方向Yに向いたウェブ板13と、フランジ板12における連結方向Xの先端側(図4において左側)で該ウェブ板13と平行かつ所定間隔を隔て、交差方向Yの中間付近にエレメント側開口14aを有する開口ウェブ板14とで構成し、フランジ板12、ウェブ板13及び開口ウェブ板14によって囲まれた内部空間15を形成している。
【0034】
また、内部空間15において、角型鋼製エレメント10の長さ方向Lの先端側から、長さ方向Lに所定間隔を隔てて、エレメント側開口14aより上方の位置において、ウェブ板13と開口ウェブ板14とを掛け渡し、後述する短尺裏込めバッグ50の載置を許容する棚板17を複数枚備えている(図4及び図6参照)。
【0035】
なお、上述の角型鋼製エレメント10の長さ方向Lは、角型鋼製エレメント10の挿入方向と一致する方向であるため、本明細書において同じ符号Lで示している。
【0036】
なお、フランジ板12の両端には、略C型断面の連結継手11を備えている。詳しくは、フランジ板12の連結方向Xの基端側に配置した基端側連結継手11aは、フランジ板12より交差方向Yの外側に突出態様で略逆C型に形成されている。これに対し、フランジ板12の連結方向Xの先端側に配置した先端側連結継手11bは、フランジ板12より交差方向Yの内側に突出態様で略C型に形成されている。したがって、隣接する角型鋼製エレメント10同士は、既に挿入された挿入済みエレメント10’の先端側連結継手11bと、後で挿入する角型鋼製エレメント10の基端側連結継手11aとを嵌合させて連結している。
【0037】
また、ウェブ板13及び開口ウェブ板14は、フランジ板12の先端側及び基端側において、連結継手11より連結方向Xの適宜の間隔を隔てて配置されている。したがって、隣接する角型鋼製エレメント10同士の間には、挿入済みエレメント10’の開口ウェブ板14と、後で挿入する角型鋼製エレメント10のウェブ板13と、フランジ板12の連結継手11によって囲まれた連結空間16を構成している。
【0038】
また、連結空間16を構成する角型鋼製エレメント10の連結方向Xの先端側における先端側連結継手11b同士の交差方向Yの間には、スライド式サイドカバー20を装着している。なお、このスライド式サイドカバー20は、自身に連結して挿入する次の角型鋼製エレメント10が挿入されるまでは装着しているが、次の角型鋼製エレメント10が挿入後は、取り外して再利用するものである。
【0039】
スライド式サイドカバー20は、薄板材21の交差方向Yの端部を内側向き(角型鋼製エレメント10に装着した状態において連結方向Xの基端側:図4参照)で鋭角に折り曲げて内向きテーパー面21aを形成するとともに、図4及び図5に示すように、補強材として、アングル材やC型鋼材による補強縦材22と、補強縦材22間において、高さ方向に所定間隔を隔てて幅方向Wに配置したアングル材による補強横材23とを薄板材21の内側面に配置して構成している。
【0040】
また、上段の補強横材23の上面から内側向きにアングル材を張り出して構成した台座24の先端付近には、下方に突出し、幅方向Wに回転自在なローラ25を備えている。なお、図5に示す幅方向Wは、角型鋼製エレメント10の長さ方向Lに一致する方向であり、つまり図4における表裏方向に一致する方向である。
【0041】
なお、ローラ25は、図4に示すように、開口ウェブ板14における連結方向Xの先端側面において、エレメント側開口14aの上端付近に、角型鋼製エレメント10の長さ方向L(図4において表裏方向)に配置した凹状のレール材26を走行する構成である。
【0042】
また、図4のa部拡大図に示すように、内向きテーパー面21aの表面には、ゴムパッキン材21bを張り付けており、スライド式サイドカバー20を装着した状態において、先端側連結継手11bの内側円弧面11baに密着する構成である。
【0043】
また、スライド式サイドカバー20は、図4に示すように、取り外し自在に構成した固定冶具27で角型鋼製エレメント10に対して固定している。詳しくは、固定冶具27は、エレメント側開口14aの下端縁や、レール材26の連結方向Xの基端側のフランジに係止する係止台座27aと、先端側折り曲げ部を補強横材23に設けた係止孔23aに係止し、係止台座27aを貫通するL型ボルト27bと、L型ボルト27bに螺合するつまみナット27cで構成している。
【0044】
このように固定冶具27を構成することによって、補強横材23の係止孔23aに先端側折り曲げ部を係止させ、係止台座27aを貫通するL型ボルト27bを、つまみナット27cで螺入することによって、エレメント側開口14aの下端縁やレール材26の基端側のフランジに係止させた係止台座27aを反力として、スライド式サイドカバー20を開口ウェブ板14側に引き寄せながら取り付けることができる。
【0045】
また、スライド式サイドカバー20は、固定冶具27によって開口ウェブ板14側に引き寄せられるため、内向きテーパー面21aに張り付けたゴムパッキン材21bと、先端側連結継手11bの内側円弧面11baとの密着性は高まり、先端側連結継手11bと内向きテーパー面21aとの密着部分における止水性を確保できるとともに、スライド式サイドカバー20を角型鋼製エレメント10に対して長さ方向Lに拘束することができる。
【0046】
また、固定冶具27を取り外したスライド式サイドカバー20は、先端側連結継手11bの内側円弧面11baと内向きテーパー面21aとが離れるため、スライド式サイドカバー20は、ローラ25がレール材26を走行して、角型鋼製エレメント10の長さ方向Lにスライド可能となる。
【0047】
このように構成した角型鋼製エレメント10は、仮設構造物ではなく、地下横断構造物300の本体の構造部材として本設利用される。したがって、フランジ板12の交差方向Yの間隔、つまりウェブ板13や開口ウェブ板14の交差方向Yの長さは、内部空間15及び連結空間16に充填するコンクリートとともに、地下横断構造物300の上床部、下床部あるいは側壁として、作用する荷重に耐える間隔で構成されている。また、角型鋼製エレメント10の幅、つまりフランジ板12の連結方向Xの長さは、構築する地下横断構造物300の高さや幅寸法に応じて割り付けて決定する。
【0048】
なお、上述の角型鋼製エレメント10の説明では、地下横断構造物300を構成する一般部の角型鋼製エレメント10について説明したが、図2に示すように、最初に地山400に挿入する基準エレメント10a、地下横断構造物300の隅角部を構成する隅角部エレメント10b、最後に挿入し、環状に閉合する調整エレメント10cは、以下に説明するように、上述の一般部の角型鋼製エレメント10とわずかに構成が異なる。
【0049】
最初に、地山400に挿入する基準エレメント10aは、基準エレメント10aを基準として左右両側に角型鋼製エレメント10を連結するため、フランジ板12の両端に先端側連結継手11bを備えるとともに、ウェブ板13の代わりに、開口ウェブ板14が連結方向Xの両側に配置される(図示省略)。逆に、最後に挿入し、環状に閉合する調整エレメント10cは、左右両側に挿入されている挿入済みエレメント10’の間において、両方の挿入済みエレメント10’に連結するため、フランジ板12の両側に基端側連結継手11aを備えるとともに、開口ウェブ板14の代わりに、ウェブ板13が連結方向Xの両側に配置される(図示省略)。
【0050】
隅角部エレメント10bは、連結方向が基端側連結継手11aのある基端側に対して直交するため、先端側連結継手11bが、交差方向Yであるウェブ板13及び開口ウェブ板14の延長上に配置され、エレメント側開口14aは、先端側連結継手11bが配置された側のフランジ板12に形成されることとなる(図示省略)。
【0051】
なお、上述の説明では、一般部の角型鋼製エレメント10、基準エレメント10a、隅角部エレメント10b及び調整エレメント10cで断面横長四角形状の地下横断構造物300を構築することについて説明しているが、基準エレメント10aと隅角部エレメント10bとで横一文字状配置、または縦一列配置、あるいは角型鋼製エレメント10、基準エレメント10a、及び隅角部エレメント10bでT字状配置、門型配置またはL型配置にして地下横断構造物300を構築してもよい。さらには、台形断面や帯状円弧型の角型鋼製エレメント10、基準エレメント10a及び調整エレメント10cを用いて、円形断面や円弧状断面の地下横断構造物300を構築してもよい。
このような場合であっても、連結方向Xの先端側にエレメント側開口14aを形成することとなる。
【0052】
このような構成の角型鋼製エレメント10(以下において、角型鋼製エレメント10には、矛盾がない限り基準エレメント10a、隅角部エレメント10b及び調整エレメント10cを含むものとする)は、図6に示すように、連結方向Xの先端側にスライド式サイドカバー20を装着した状態で、角型鋼製エレメント10の長さ方向Lの先端に刃口30を装着し、刃口30内部で掘削作業員が掘削する人力掘削によって、刃口30の前方の地山400を掘削しながら、到達側立坑420bから1次けん引ワイヤー38aでけん引して地山400に挿入する構成である。
【0053】
刃口30は、連結方向Xの基端側に連結継手31aを備えたフランジ板32と、連結方向Xの先端側の交差方向Yに向いたウェブ板33と、フランジ板32における連結方向Xの基端側(図7(a)において右側)で該ウェブ板33と平行かつ所定間隔を隔て交差方向Yの中間付近に刃口側開口34aを有する開口ウェブ板34とで構成し(図6(b)参照)、フランジ板32、ウェブ板33及び開口ウェブ板34によって囲まれた作業空間35を形成している。
【0054】
なお、刃口30は、図7(b)に示すように、開口ウェブ板34を上述の角型鋼製エレメント10における開口ウェブ板14と連結方向Xにおける同じ位置に配置しているが、ウェブ板33は、角型鋼製エレメント10における先端側連結継手11bの連結方向Xの先端側位置と同じ位置に配している。
【0055】
また、刃口30は、フランジ板32の先端にカッター36を備え、開口ウェブ板34の先端にサイドカッター37を備えるとともに、刃口30をけん引する1次けん引ワイヤー38aの後端をクランプする1次クランプ38を備えている。さらに、ウェブ板33における長さ方向Lの後側の外側面には、次の角型鋼製エレメント10をけん引するための2次けん引ワイヤー39aの先端をクランプする2次クランプ39を備えている。
【0056】
また、地下横断構造物300の外側となるフランジ板12(図6や図7において上側となるフランジ板12)の後側には、刃口30の幅方向、つまり連結方向Xで、刃口30の外部と内部とを、刃口30の後ろ向きに傾斜する方向に貫通するバッグ送り出し開口40を幅方向に2つ並設している。
【0057】
そして、図6に示すように、作業空間35における、バッグ送り出し開口40の少し前側の下方に、角型鋼製エレメント10の棚板17の上に載置した短尺裏込めバッグ50の方向を転換させる方向転換ローラ41を配置している。なお、バッグ送り出し開口40の外側前方には、バッグ送り出し開口40から後側に送り出される短尺裏込めバッグ50を保護する保護カッター44を備えている。
【0058】
さらに、図6及び図7に示すように、作業空間35の前側において、エアーバッグ61を刃口30の前方の切羽400aに対して押し付け支持するラッシングベルト62の係止固定を許容するベルト取り付け部42を、ウェブ板33と開口ウェブ板34から作業空間35に向かって立設している。なお、3つの係止孔42aを備えたベルト取り付け部42を、高さ方向及び長さ方向Lにずらしてそれぞれ2つずつ設けている。
【0059】
また、刃口30と角型鋼製エレメント10とは、角型鋼製エレメント10の前端付近における内部空間15の隅角部に設けた接続台座18と、刃口30の後端付近において、接続台座18に対応する断面位置に設けた接続台座36とを貫通固定する接続鋼棒37で接続している。
【0060】
なお、角型鋼製エレメント10同士を長さ方向Lに接続する場合も、角型鋼製エレメント10の後端付近に設けた接続台座18と、接続する角型鋼製エレメント10の前端部付近に設けた接続台座18とを貫通固定する接続鋼棒37で接続することとなる。
【0061】
次に、角型鋼製エレメント10の前側の棚板17に載置し、刃口30及び角型鋼製エレメント10のけん引挿入に伴って、バッグ送り出し開口40から送り出される短尺裏込めバッグ50について説明する。
【0062】
短尺裏込めバッグ50は、図8に示すように、所定の長さで形成した帯状の袋体であり、バッグ送り出し開口40より送り出して、フランジ板12の外側に載置した状態において、挿入方向Lの後側のエレメント側底面に鉤状面ファスナ51aを備え、挿入方向Lの前側の地山側表面にループ状面ファスナ51bを備えるとともに、短尺裏込めバッグ50の挿入方向Lの前端部に、短尺裏込めバッグ50内部に挿通し、裏込めグラウト53の注入を許容する注入パイプ52を備えている。
【0063】
なお、短尺裏込めバッグ50は、裏込めグラウト53を内部に注入した際に、地山400の形状に追従する形状追従性の高い合成繊維製のシームレス袋体54と、角型鋼製エレメント10のフランジ板12の外側面上を摺動するため、耐摩耗性の高い合成繊維製底面布55とで構成している。そして、裏込めグラウト53を注入する前の短尺裏込めバッグ50は、バッグ送り出し開口40を通過可能な幅及び厚みで形成している。
【0064】
なお、注入パイプ52を介して短尺裏込めバッグ50に裏込めグラウト53を所定圧力で制御して注入する裏込めグラウト注入システム70によって注入することができる(図9参照)。
【0065】
次に、切羽防護手段として機能するエアーバッグ61及びラッシングベルト62について説明する。
ラッシングベルト62は、図7(b)において点線で示すように、両端に係止孔42aに係止する係止フック62bを備え、可撓性のある高張力繊維帯体62aを調整バックル62cによって長さ調整可能に構成している。
【0066】
エアーバッグ61は、内側の本体袋61aと、外側の補強袋61bとによる2層構造で構成し(図10(b)参照)、給気孔61cを備え、給気孔61cに接続されたエアーホース63から本体袋61a内部に空気を加圧封入することによって、略直方体状に膨らむ。
【0067】
なお、エアーバッグ61は、空気を加圧封入した状態において、刃口30の作業空間35の断面を4等分したサイズよりひとまわり大きくなるサイズで構成している。
【0068】
なお、エアーバッグ61の外周の稜線部分に形成した襞部61dに備えたハトメ61eによって、複数のエアーバッグ61を図示省略する固定紐で縫着して一体化することができる。
【0069】
続いて、このように構成された角型鋼製エレメント10や刃口30を用いて角型鋼製エレメント10を挿入するエレメント挿入工について図11乃至17とともに説明する。
図11はエレメント挿入工に関するフローチャートを示し、図12はエレメント挿入工についての説明図を示し、図13はエレメント挿入工の掘削・排土について説明するための交差方向Yの上部における断面図を示している。なお、図12(a)は挿入済みエレメント10’に対して、連結継手11を嵌合させて刃口30及び角型鋼製エレメント10をけん引挿入する状態の斜視図を示し、図12(b)は挿入済みエレメント10’のエレメント側開口14aと刃口30の刃口側開口34aとが隣合う位置まで刃口30及び角型鋼製エレメント10のけん引挿入が進んだ状態の斜視図を示している。
【0070】
また、図14は裏込めグラウト53を注入するグラウト注入工に関するフローチャートを示し、図15は裏込めグラウト53の注入圧力管理に関するグラフを示している。
【0071】
さらに、図16は裏込めグラウト注入工についての概略縦断面図を示し、図17はエアーバッグ61及びラッシングベルト62を用いた切羽防護施工についての概略縦断面図を示している。
【0072】
まず、角型鋼製エレメント10を地山400の所定場所に挿入するに当たり、前側に刃口30を接続した角型鋼製エレメント10を発進側立坑420a(図3)にセットし、角型鋼製エレメント10のけん引方向、つまり挿入方向Lにおいて到達側立坑420b(図3)まで貫通する1次けん引ワイヤー38a(図6(b),(c))を刃口30の1次クランプ38(図6(b),(c))に接続し、到達側立坑420b(図3)に設置したけん引装置(図示省略する)でけん引する。
【0073】
なお、地山400に最初に挿入する基準エレメント10a以外の角型鋼製エレメント10は、既に地山400に挿入された挿入済みエレメント10’の先端側連結継手11bに、挿入する刃口30の連結継手31a及び角型鋼製エレメント10の基端側連結継手11aを嵌合させる。ここまでの挿入準備が完了すると、1本目の短尺裏込めバッグ50をバッグ送り出し開口40に挿通するとともに、棚板17に載置してセットし、刃口30の外側部分において、短尺裏込めバッグ50の後端部を発進側立坑420aの土留め壁410に固定する(ステップs1)。
【0074】
さらに、ウェブ板33の外側に設置したエアーバッグ61には、次の角型鋼製エレメント10及び刃口30をけん引するための2次けん引ワイヤー39aの先端をセットし、到達側立坑420bまで2次けん引ワイヤー39aの先端を把持したまま、けん引する。
【0075】
そして、図12(a)に示すように、刃口30の作業空間35で刃口30の前側の地山400である切羽400aを掘削するとともに、到達側立坑420bのけん引装置で1次けん引ワイヤー38aをけん引し、刃口30を地山400に挿入する。
【0076】
そして、刃口30のけん引に伴って、短尺裏込めバッグ50をバッグ送り出し開口40を介して刃口30及び角型鋼製エレメント10の外側に送り出す(ステップs2)。このとき、刃口30で切羽400aを掘削した掘削土砂は、作業空間35及び内部空間15を通って発進側立坑420aに排土する。このように、切羽400aを掘削した掘削土砂を、作業空間35及び内部空間15を通じて発進側立坑420aに排土する掘削・けん引過程を初期けん引という。
【0077】
そして、図12(b)に示すように、挿入済みエレメント10’のエレメント側開口14aと、刃口30の刃口側開口34aとが隣り合う位置まで初期けん引を繰り返し(ステップs3:No)、挿入済みエレメント10’のエレメント側開口14aと、刃口30の刃口側開口34aとが隣り合う位置まで掘削・けん引が進むと、挿入済みエレメント10’のスライド式サイドカバー20を挿入方向Lの後側にスライドさせて、刃口側開口34aとエレメント側開口14aとを介して作業空間35と内部空間15とを連通させる(ステップs4)。
【0078】
なお、スライド式サイドカバー20を挿入方向Lの後側にスライドさせるためには、固定冶具27を取り外す必要があるが、スライド式サイドカバー20をスライドさせる際に、挿入済みエレメント10’の内部空間15より固定冶具27を取り外してもよく、予め挿入済みエレメント10’における全部のスライド式サイドカバー20を固定する固定冶具27を取り外してから、刃口30が接続された角型鋼製エレメント10をけん引してもよい。
【0079】
このように、スライド式サイドカバー20を後側にスライドさせることによって、図13に示すように、挿入済みエレメント10’の内部空間15と、刃口30の作業空間35とが連結空間16を介して連通する。
【0080】
そこで、予め、挿入済みエレメント10’の内部空間15に設置しておいた排土用のベルトコンベア19を稼動させ(ステップs5)、刃口30の作業空間35で切羽400aを掘削した掘削土砂を刃口側開口34a及びエレメント側開口14aを介して、ベルトコンベア19で発進側立坑420aに排土するとともに、けん引しながら、けん引した分の短尺裏込めバッグ50をバッグ送り出し開口40から送り出す(ステップs6:図17参照)。
【0081】
このような切羽400aを掘削した掘削土砂を、隣接する挿入済みエレメント10’の内部空間15に設置したベルトコンベア19から発進側立坑420aに排土する掘削・けん引過程を通常けん引という。
【0082】
上述の初期けん引のように、切羽400aを掘削した掘削土砂を、およそ掘削方向に対して180度旋回となるけん引方向(挿入方向L)後側の内部空間15から排土する場合と比較して、通常けん引では、掘削方向に対しておよそ90度旋回となる側方に排土できるため、格段に排土効率が向上する。サイクルタイムを比較すると、施工試験ではおよそ17%の短縮できることを確認した。したがって、エレメント挿入工の工程においてクリティカルな作業である切羽400aの掘削及びけん引を効率化し、エレメント挿入工の工程を大幅に短縮することができる。
【0083】
また、けん引方向(挿入方向L)後側に排土する場合、刃口30に接続された角型鋼製エレメント10の内部空間15にベルトコンベア19を設置する必要があり、発進側立坑420aから刃口30までの通路が塞がれ、発進側立坑420aと刃口30との行き来が困難となる。したがって、例えば、刃口30の前方に礫等の支障物が出現するといったトラブルが生じた場合であっても、刃口30が接続された角型鋼製エレメント10の内部空間15が通路として確保されているため、発進側立坑420aから刃口30まで容易に行くことができ、容易にトラブルに対処することができる。
【0084】
上述の通常けん引によって、所定の長さで形成した短尺裏込めバッグ50の1本分の距離まで掘削・けん引を続け(ステップs7:No)、掘削・けん引が短尺裏込めバッグ50の1本分の距離進むと(ステップs7:Yes)、一旦、掘削・けん引を停止し、作業空間35において、短尺裏込めバッグ50の注入パイプ52(図8)に、図9に示す裏込めグラウト注入システム70を接続し、短尺裏込めバッグ50内に裏込めグラウト53を注入する(ステップs8)。
【0085】
このときのグラウト注入工について、図14とともに詳述する。
まず、短尺裏込めバッグ50の注入パイプ52に裏込めグラウト注入システム70の注入配管72を接続し、発進側立坑420aに設置した注入ポンプ71(図16)を起動し、裏込めグラウト53の注入を開始する(ステップt1)。そのとき、裏込めグラウト注入システム70の圧力センサで注入圧力を検出し、地上の軌道200に影響するとされる絶対停止圧力(図15参照)以下かどうか判定し、絶対停止圧力以上であれば(ステップt2:No)、注入ポンプ71を即座に停止し(ステップt3)、グラウト注入工を一旦終了する。
【0086】
このように、絶対停止圧力以上の圧力がかかるということは注入パイプ52や短尺裏込めバッグ50内部や裏込めグラウト注入システム70内部の配管が閉塞しているおそれがあるため、原因を究明し、解消してからグラウト注入工を再開する。
【0087】
これに対し、通常通り、絶対停止圧力以下であれば(ステップt2:Yes)、図15に示すように、注入初期の突入圧力が落ち着いた後の安定圧力を判定し(ステップt4)、判定した安定圧力に所定圧力を加えた管理圧力を設定する(ステップt5)。
【0088】
上述の安定圧力は、裏込めグラウト53を注入する短尺裏込めバッグ50に作用する土圧等の外力によって異なるため、安定圧力に基づいてそれぞれの管理圧力を設定することによって、各短尺裏込めバッグ50に応じて適切な圧力で裏込めグラウト53を注入することができる。
【0089】
ステップt5で設定した管理圧力で管理しながら裏込めグラウト53を注入し、裏込めグラウト53の積算注入量が増加すると、図15に示すように、注入圧力は増大するため、注入圧力が設定した管理圧力に達するまで注入し(ステップt6:No)、注入圧力が管理圧力に達すると(ステップt6:Yes)、注入ポンプ71を停止し(ステップt7)、注入パイプ52を閉塞して(ステップt8)、グラウト注入工を終了する。
【0090】
このように、裏込めグラウト53の注入圧力を管理圧力で管理しながら注入することによって、図16に示すように、角型鋼製エレメント10の外側の地山400との空隙を裏込めグラウト53が注入された短尺裏込めバッグ50で確実に埋めることができる。
【0091】
詳しくは、短尺裏込めバッグ50を地山400の形状に追従する形状追従性の高い合成繊維製のシームレス袋体54で形成しているため、裏込めグラウト53の注入によって、シームレス袋体54は地山400の形状に追従し、地山400に略密着するように角型鋼製エレメント10の外側の地山400との空隙を埋めることができる。また、裏込めグラウト53の注入を管理圧力で管理しているため、地表面の軌道200等に影響することなく、確実に充填することができる。
【0092】
なお、このグラウト注入工は、上述したように、所定長さで形成された短尺裏込めバッグ50の長さ分の掘削・けん引が進むごとに、短尺裏込めバッグ50に裏込めグラウト53を注入するため、例えば、刃口30及び角型鋼製エレメント10が到達側立坑420bに到達した後、角型鋼製エレメント10の延長分を纏めて注入する場合と比べて、角型鋼製エレメント10の外側の地山400との空隙を確実に埋めることができる。
【0093】
詳しくは、裏込めグラウト53の注入距離が長くなると、注入口付近での注入圧力が高くなるとともに、注入途中で、裏込めグラウト53が脱水したり、硬化したりして、確実に注入することが困難となる。しかし、上述のように、所定長さで形成した短尺裏込めバッグ50ごとに裏込めグラウト53を注入することによって、注入圧力も抑制しながら確実に裏込めグラウト53を注入することができる。
【0094】
また、刃口30及び角型鋼製エレメント10が到達側立坑420bに到達した後、角型鋼製エレメント10の延長分を纏めて注入する場合、角型鋼製エレメント10の外側の地山400が緩んで前記空隙がふさがれるおそれがある。この場合、角型鋼製エレメント10の周りの地山400を緩めるのみならず、角型鋼製エレメント10の外周面を締め付けるため、角型鋼製エレメント10の挿入抵抗となる。
【0095】
これに対して、所定長さで形成した短尺裏込めバッグ50ごとに裏込めグラウト53を注入することによって、角型鋼製エレメント10の外側の地山400との空隙を埋めながら、掘削・けん引できるため、角型鋼製エレメント10外側の地山400が緩むことを防止できる。
【0096】
また、短尺裏込めバッグ50の角型鋼製エレメント10側に耐摩耗性の高い合成繊維製底面布55を設けているため、地山400が緩んで外周面を締め付ける場合と比較して、挿入抵抗の増大を抑制することになる。なお、短尺裏込めバッグ50の後側は、図16に示すように、発進側立坑420aの土留め壁410に固定されているため、掘削・けん引して到達側立坑420bに向かって進む角型鋼製エレメント10と摺動するものの、上述のように、短尺裏込めバッグ50の角型鋼製エレメント10側に耐摩耗性の高い合成繊維製底面布55を設けているため、短尺裏込めバッグ50の耐久性も確保している。
【0097】
上述したように、短尺裏込めバッグ50への裏込めグラウト53の注入が完了すると(ステップs8)、鉤状面ファスナ51で次の短尺裏込めバッグ50を接続し、棚板17(図7)に載置して収容する(ステップs9)。
【0098】
そして、掘削・けん引を、刃口側開口34aが次のエレメント側開口14aに隣り合う位置まで続け(ステップs10:No)、刃口側開口34aが次のエレメント側開口14aに隣り合う位置にまで掘削・けん引が進むと(ステップs10:Yes)、ステップs4と同様に、挿入済みエレメント10’のスライド式サイドカバー20を挿入方向Lの後側にスライドさせて、刃口側開口34aとエレメント側開口14aとを介して作業空間35と内部空間15とが連通させる(ステップs11)。
【0099】
このように、上述のステップs7〜11で示すグラウト注入と、掘削・けん引とを、刃口30が土留め壁410から抜き出て、角型鋼製エレメント10の前端部が到達側立坑420bの土留め壁410から突出する到達状態まで繰り返すが、その途中で(ステップs12:No)、作業員交代や、その他の段取り替え等のために、掘削・けん引作業を中断する場合(ステップs13:Yes)、刃口30の先端部分で露出する切羽400aを防護するために、エアーバッグ61及びラッシングベルト62をセットする(ステップs14)。
【0100】
詳述すると、まず、エアーを注入した状態において、刃口30の先端の開口断面をおよそ4分割したサイズよりわずかに大きく形成したエアーバッグ61を刃口30の先端部分において下段側から配置し、図17に示すエアー管理システム80の圧力制御装置81でエアーをある程度入れて膨らまし、ベルト取り付け部42にラッシングベルト62の係止フック62bを係止するとともに、調整バックル62cで高張力繊維帯体62aの長さを調整し、さらに圧力制御装置81で土圧に応じた所定の管理圧力まで加圧注入する。
【0101】
そして、この下段側のエアーバッグ61の上に、上段側のエアーバッグ61を載置し、同様にエアーを注入するとともに、ラッシングベルト62で締め付けて固定する。上段のエアーバッグ61のセットが完了後、再度調整バックル62cで高張力繊維帯体62aの長さを緩みのないように再調整して、すべてのエアーバッグ61の圧力を所定の管理圧力となるよう圧力調整する(ステップs15)。
【0102】
これにより、所定の管理圧力でエアーが加圧注入されたエアーバッグ61を、ラッシングベルト62によって、作業空間35に露出する切羽400aに対して押し付けて防護することができる。このとき、エアーバッグ61同士の対向部分において襞部61dのハトメ61e同士を図示省略する固定紐で縫着して固定してもよい。
【0103】
なお、エアー管理システム80は、圧力制御装置81、エアーレシーバ82、コンプレッサ83および圧力管理装置84とで構成している。
圧力管理装置84は、CPUとROMとRAMで構成される制御装置、マウスやキーボード等の入力装置である操作装置、ハードディスク等の記憶装置、DVD−RAM等の各種記憶媒体を読取る記憶媒体読取装置、または記憶媒体読書き装置、及びLAN回線に接続可能なLANボード等の通信装置で構成する送受信装置等を備えたコンピュータであり、図示省略するエアーバッグ61の圧力を検出する圧力センサからの検出結果を受信する構成である。
【0104】
そして、圧力制御装置81、エアーレシーバ82及びコンプレッサ83は直列接続されるとともに、圧力制御装置81は圧力管理装置84に接続されており、圧力管理装置84は、圧力センサから受信したエアーバッグ61の圧力検出結果に基づいて、圧力制御装置81、エアーレシーバ82及びコンプレッサ83を稼働させて、エアーバッグ61の圧力を所定の管理圧力で保持することができる。
【0105】
また、圧力センサがエアーバッグ61の圧力が急激に低下したり、上昇したりする異常圧力を検出し(ステップs16:Yes)、その異常圧力の検出結果を受信した圧力管理装置84は、前記送受信装置により、施工管理者への警報を発信する(ステップs18)。これにより、施工管理者は、掘削・けん引作業停止時における切羽防護の異常を早期に察知して、直ちにエアーバッグ61の異常圧力に対応することができる。
【0106】
このようにして、エアーバッグ61及びラッシングベルト62を用い、エアー管理システム80で圧力管理することにより、掘削・けん引作業を停止している間に切羽400aが緩んだり、崩落したりするおそれをなくし、確実に切羽防護することができる。
【0107】
上述したような異常圧力を、エアー管理システム80が検出することなく(ステップs16:No)、掘削・けん引作業を再開するには、エアーバッグ61に封入したエアーを抜いてエアーバッグ61を萎ませて、エアーバッグ61とラッシングベルト62とを撤去してから作業を再開する(ステップs17)。
【0108】
このとき、このエアーバッグ61とラッシングベルト62とを用いた切羽防護方法では、エアーを注入した状態において、刃口30の先端の開口断面を、幅方向及び高さ方向に2分割ずつ合計4分割したサイズよりわずかに大きく形成したエアーバッグ61を刃口30の先端部分に配置するとともに、可撓性のある高張力繊維帯体62aで構成したラッシングベルト62で、エアーバッグ61を切羽400aの全面に押し付け支持するため、可撓性のない反力角材を狭隘な作業空間35でセットするより、設置、撤去ともにはるかに施工性がよいことが確認できた。
【0109】
さらには、これまで一般的に行われていた土嚢を切羽400aの全面に押し付けるように作業空間35の先端部に積み上げて切羽防護する場合とサイクルタイムを比較した結果、設置において10%、撤去において40%の施工時間を短縮できることを確認した。
【0110】
これは、角型鋼製エレメント10を挿入する施工深度が大きくなるほど切羽400aに作用する土圧は大きくなるため、切羽防護するための土嚢の数や重量を増加させる必要があるが、可撓性のある高張力繊維帯体62aで構成したラッシングベルト62で、エアーバッグ61を切羽400aの全面に押し付け支持するこの切羽防護方法であれば、エアーバッグ61の管理圧力を大きくするだけで対応でき、土嚢積みによる切羽防護に対する優位性は、土圧がおおきくなればさらに高まると考えられる。
【0111】
このようにして掘削・けん引作業を再開した後は、上述のステップs6〜s11までを繰り返す。
そして、掘削・けん引作業を続け、刃口30及び角型鋼製エレメント10の挿入方向Lの前側が到達側立坑420bの土留め壁410から突出して到達した後(ステップs12:Yes)、掘削・けん引作業時に、スライドさせたスライド式サイドカバー20を、連結空間16から発進側立坑420aや到達側立坑420bまでスライドさせて取り出し(ステップs19)、このエレメント挿入工を終了する。
【0112】
なお、ステップs4,S11において、スライド式サイドカバー20をスライドさせて(図12参照)、刃口30の刃口側開口34aと、挿入済みエレメント10’のエレメント側開口14aとを連通させ、到達後のステップs19でスライドさせたスライド式サイドカバー20を撤去したが、スライド式サイドカバー20をその都度、取り外して撤去する場合と比較して、格段に作業効率がよくなる。
【0113】
詳しくは、エレメント挿入工の工程においてクリティカルな作業である切羽400aの掘削及びけん引が、スライド式サイドカバー20の撤去によって中断されるが、スライド式サイドカバー20を撤去せずにスライドさせるだけで、エレメント側開口14aと刃口側開口34aとが連通するため、掘削及びけん引の中断時間を大幅に短縮することができる。
【0114】
なお、上述の説明では、刃口30及び角型鋼製エレメント10の到達後にまとめてスライド式サイドカバー20を撤去しているが、例えば、ステップs10で短尺裏込めバッグ50で裏込めグラウト53を注入するためなどで掘削作業を停止する場合に、スライド式サイドカバー20を撤去してもよい。この場合であっても、スライド式サイドカバー20を発進側立坑420aまで連通する連結空間16内をスライドさせることで撤去できるため、効率よく撤去することができる。また、角型鋼製エレメント10の内部空間15には、ベルトコンベア19が設置されず通路が確保されているため、作業性よくスライド式サイドカバー20を撤去することができる。
【0115】
また、上述の説明では、上床部300aの角型鋼製エレメント10を挿入する際について図示するとともに説明したが、地下横断構造物300の側壁部分の角型鋼製エレメント10を挿入する際には、図16に示すように、刃口30のバッグ送り出し開口40が地下横断構造物300の幅方向外側となる向きで掘削・けん引し、角型鋼製エレメント10の外側に短尺裏込めバッグ50が配置されるように構成することとなる。
【0116】
これに対し、上床部300aを構築してから地下横断構造物300の下床部の角型鋼製エレメント10を挿入する際には、直接土圧が挿入する角型鋼製エレメント10に作用しないため、短尺裏込めバッグ50を挿入する角型鋼製エレメント10の上下いずれに配置してもよく、さらには短尺裏込めバッグ50を用いずに角型鋼製エレメント10を挿入してもよい。しかし、上床部300aより先に下床部の角型鋼製エレメント10を挿入する場合には、上床部300aより角型鋼製エレメント10に作用する土圧は大きくなるため、短尺裏込めバッグ50が角型鋼製エレメント10の上となるように角型鋼製エレメント10を挿入することによって、上述の効果はより顕著となる。
【0117】
このように、地下横断構造物300の外面側に短尺裏込めバッグ50を配置することにより、構築された地下横断構造物300の周辺の地山400が緩むことを防止できる。したがって、安定した地下横断構造物300を構築することができる。
【0118】
上述したように、角型鋼製エレメント10の先端に装着した刃口30で地山400を掘削し、後方に掘削土砂を排土しながら、挿入方向Lに対して連結方向Xに隣接する角型鋼製エレメント10同士を連結して地山400に挿入するエレメント挿入工法の角型鋼製エレメント10において、隣接する角型鋼製エレメント10との対向部分のうち、後で自身に連結しながら挿入される角型鋼製エレメント10側の対向部分に、内部空間15と外部とを貫通するエレメント側開口14aと、エレメント側開口14aに対して開閉自在に構成したスライド式サイドカバー20とを備え、刃口30において、挿入済みエレメント10’に対向する対向部分に、作業空間35と外部とを貫通する刃口側開口34aを備え、スライド式サイドカバー20を開くことにより、挿入済みエレメント10’の内部空間15と作業空間35とを、エレメント側開口14a及び刃口側開口34aを介して連通することができる。したがって、刃口30における作業空間を拡大させ、掘削作業の作業性を向上することができる。
【0119】
また、連結する角型鋼製エレメント10同士がエレメント側開口14a及び刃口側開口34aを介して導通可能になるため、例えば、支障物の出現等の切羽部400aでトラブルが発生しても、発進側立坑420aから容易に切羽400aまで行くことができ、早期にトラブル対応することができる。このように、この発明により、エレメント挿入の施工性を向上することができる。
【0120】
また、断面略矩形の角型鋼製エレメント10を、連結方向Xに対して平行に配置し、隣接する角型鋼製エレメント10同士を連結する連結継手11を連結方向Xの両端部に備え、所定の間隔で隔てて配置した2枚のフランジ板12と、矩形断面のうち連結方向Xの一方側である挿入済みエレメント10’側において、2枚のフランジ板12を交差方向Yに接続するウェブ板13とで、矩形断面のうち3方向が少なくとも板材で囲われ、連結方向X前側に対して断面凹状に形成しているため、必要強度を確保しながら、空間的無駄の少ない内部空間(15,35)を確保することができる。
【0121】
また、スライド式サイドカバー20を、連結空間16において、長さ方向Lに対してスライド可能に構成しているため、スライド式サイドカバー20を脱着して開閉する場合と比較して、簡便に開閉でき、スライド式サイドカバー20の開閉作業の作業性を向上することができる。したがって、エレメント挿入における施工効率を向上することができる。
【0122】
また、挿入済みエレメント10’の内部空間15に、掘削土砂を後方に排土するベルトコンベア19を装備し、スライド式サイドカバー20を開放して、エレメント側開口14aと、刃口側開口34aとを連通させ、刃口30で掘削した掘削土砂を、連通するエレメント側開口14a及び刃口側開口34aを介して、ベルトコンベア19で排土するため、作業性が向上する。
【0123】
詳しくは、刃口30で掘削した掘削土砂を、刃口30を接続した挿入する角型鋼製エレメント10の内部空間15に設置したベルトコンベア19で排土する場合、前方の切羽400aで掘削した掘削土砂を後方のベルトコンベア19に排土するため、掘削作業者はおよそ180度旋回して排土する必要がある。しかし、挿入済みエレメント10’内部に設置したベルトコンベア19で排土する場合は、前方の切羽400aで掘削した掘削土砂をエレメント側開口14a及び刃口側開口34aを介して排土するため、掘削作業者はおよそ90度旋回して排土することができる。したがって、掘削作業の作業性を向上することができる。また、刃口30でトラブルが発生したり、作業員の交代であっても、挿入する角型鋼製エレメント10の内部空間15にベルトコンベア19がないため、容易に発進側立坑420aと切羽400aとを行き来でき、施工性がさらに向上する。
【0124】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、この発明のエレメント及び矩形エレメントは、角型鋼製エレメント10に対応し、
以下同様に、
掘削部及び刃口は、刃口30に対応し、
挿入する方向は、挿入方向Lに対応し、
エレメント内部は、内部空間15に対応し、
エレメント側開口部は、エレメント側開口14aに対応し、
開閉カバーは、スライド式サイドカバー20に対応し、
連結部は、連結継手11,基端側連結継手11a,先端側連結継手11bに対応し、
フランジ材は、フランジ板12に対応し、
間隔方向は、交差方向Yに対応し、
ウェブ材は、ウェブ板13に対応し、
排土設備は、ベルトコンベア19に対応し、
地中構造物は、地下横断構造物300に対応し、
スライド手段は、ローラ25に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0125】
例えば、人力掘削による刃口30によって角型鋼製エレメント10を挿入したが、駆動装置によって掘削するバケットを備えた機械式刃口としてもよい。さらには、刃口30の代わりに、密閉型の掘削装置を用いてもよい。
さらに、スライド式サイドカバー20をスライドさせるローラ25は、長さ方向Lのレール材26上を転動する構成であるが、レール材26上を滑走する滑走手段としてもよく、レール材26にローラを備えてもよい。また、挿入済みエレメント10’に設置したベルトコンベア19は、スクリュウコンベア、圧送式排土設備、吸引式排土設備、バッテリロコ等の運搬式排土設備等の排土設備とすることができる。
【0126】
また、短尺裏込めバッグ50を連結する方法として面ファスナ51の代わりに、接着剤による接着、粘着剤による粘着、縫合、係止フックと係止孔による係止、係止フック同士の係止、あるいは凹部材と凸部材の嵌合等によって連結してもよい。
【0127】
また、裏込めグラウト53は、セメント系のグラウト材以外に、モルタル材、ベントナイトを配合したグラウト材で構成してもよい。
【0128】
さらには、合成繊維製底面布55を、摩擦係数が低い合成繊維製布帛としてもよい。
【0129】
また、エアーバッグ61を一体化するための襞部61dのハトメ61eを縫合する固定紐の変わりに、エアーバッグ61同士の対向面に備える面ファスナを備えてもよい。
【0130】
エアーバッグ61にエアーを封入したが、エアー以外でも、無害な気体、水などの無害な液体、あるいはゲル体をエアーバッグ61に封入してもとよい。
さらには、地下横断構造物300を構成する角型断面である角型鋼製エレメント10の代わりに、円形断面鋼管や押し管等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0131】
10…角型鋼製エレメント
10’…挿入済みエレメント
11…連結継手
11a…基端側連結継手
11b…先端側連結継手
12…フランジ板
13…ウェブ板
14a…エレメント側開口
15…内部空間
19…ベルトコンベア
20…スライド式サイドカバー
25…ローラ
30…刃口
35…作業空間
300…地下横断構造物
400…地山
L…挿入方向(長さ方向)
X…連結方向
Y…交差方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレメント先端に装着した掘削部で地山を掘削し、後方に掘削土砂を排土しながら、挿入する方向に対して交差する方向に隣接するエレメント同士を連結して地山に挿入するエレメント挿入工法であって、
前記エレメントにおいて、隣接するエレメントとの対向部分のうち、後で自身に連結しながら挿入される後挿入エレメント側の対向部分に、エレメント内部と外部とを貫通するエレメント側開口部と、エレメント側開口部に対して開閉自在に構成した開閉カバーとを備え、
前記掘削部において、挿入済みエレメントに対向する対向部分に、掘削部内部と外部とを貫通する掘削部側開口部を備えた
エレメント挿入工法。
【請求項2】
前記エレメントを、断面略矩形の矩形エレメントで構成し、
矩形エレメントを、
連結方向に対して平行に配置し、隣接する矩形エレメント同士を連結する連結部を連結方向の両端部に備え、所定の間隔で隔てて配置した2枚のフランジ材と、
矩形断面のうち前記連結方向の一方側である挿入済みエレメント側において、2枚の前記フランジ材を間隔方向に接続するウェブ材とで、
矩形断面のうち3方向が少なくとも板材で囲われ、連結方向前側に対して断面凹状に形成した
請求項1に記載のエレメント挿入工法。
【請求項3】
前記開閉カバーを、
連結方向前側に対して凹状である断面のうち開放部分に、長さ方向に対してスライド可能に構成した
請求項2に記載のエレメント挿入工法。
【請求項4】
前記掘削部を、刃口で構成するとともに、
前記挿入済みエレメント内部に、前記掘削土砂を後方に排土する排土設備を装備し、
前記開閉カバーを開放して、前記エレメント側開口部と、前記掘削部側開口部とを連通し、
前記刃口で掘削した掘削土砂を、連通する前記エレメント側開口部及び前記掘削部側開口部を介して、前記排土設備で排土する
請求項2又は3に記載のエレメント挿入工法。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載のエレメント挿入工法によって、前記地山に前記エレメントを連結しながら挿入し、
前記エレメント内部に充填材を充填して地山内に構造物を構築する
地中構造物の構築工法。
【請求項6】
先端に装着した掘削部で地山を掘削しながら、挿入する方向に対して交差する方向に連結しながら地山に挿入する矩形エレメントであって、
連結方向に対して平行に配置し、隣接する矩形エレメント同士を連結する連結部を連結方向の両端部に備え、所定の間隔で隔てて配置した2枚のフランジ材と、
矩形断面のうち前記連結方向の一方側である挿入済みエレメント側において、2枚の前記フランジ材を間隔方向に接続するウェブ材とで、
矩形断面のうち少なくとも3方向が板材で囲われ、連結方向前側に対して断面凹状に形成し、
連結方向前側に対して凹状である断面のうち開放部分に、エレメント内部と外部とを貫通するエレメント側開口部と、エレメント側開口部において構成した開閉カバーとを備え、
該開閉カバーに、所定のスライド操作によって、エレメント側開口部に対して長さ方向にスライドして開閉するスライド手段を備えた
矩形エレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−256614(P2011−256614A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132372(P2010−132372)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(391042601)ジェイアール東海建設株式会社 (7)
【出願人】(591065848)名工建設株式会社 (15)
【出願人】(000216025)鉄建建設株式会社 (109)
【出願人】(399101337)株式会社ジェイテック (20)
【Fターム(参考)】