説明

エンコーダとアクチュエータ

【課題】 光学系の改善によりより大きな光学信号のコントラストを得られるように工夫し、それによって、その後の工程において信号処理の安定化や高信頼性化を図ることが可能なエンコーダとそのエンコーダを搭載したアクチュエータを提供すること。
【解決手段】 光学検出器と光源の間に遮光板を設け、その遮光板が上記光学検出器寄りに設置し、それによって、迷光を低減させて信号のコントラストを改善させ、その後の工程において信号処理の安定化や高信頼性化を図ることが可能となるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、精密位置決めシステムに用いられるエンコーダとそのエンコーダを使用したアクチュエータに係り、特に、光学系の改善によってより大きな光学信号のコントラストを得られるように構成し、それによって、その後の工程において信号処理の安定化や信頼性の向上を図ることができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
精密位置決め装置において、位置決めフィードバック用のセンサーとして、例えば、リニアエンコーダが使用される。これはリニアエンコーダが高精度であって低コストであることに起因する。ところが、現在多く用いられているリニアエンコーダは原点復帰動作の必要なインクリメンタル型である。この種のインクリメンタル型のリニアエンコーダの場合には、装置立ち上げ時或いはトラブル発生時には原点復帰動作を行う必要があり、その為、装置の稼働率が低下してしまうという問題があった。
【0003】
そこで、インクリメンタル型のリニアエンコーダに代わってアブソリュート型のリニアエンコーダの使用が提案されている。この種のアブソリュート型のリニアエンコーダの場合には上記原点復帰動作が不要になるからである。
【0004】
尚、本件特許出願人も、特許文献1に示すように、装置起動時に短い距離だけ動くことにより絶対位置を知ることができる簡易型のアブソリュート型リニアエンコーダに関する出願を行っている。そこに開示されているアブソリュート型リニアエンコーダは、PN符号系列の必要ビット数のデータを読み込むセンサーが搭載されている装置可動部を必要ビット数だけ動かす構成になっていて、それによって、一個のセンサーで済むように構成したものであり、簡易な構成で絶対位置を知ることができるというものである。
【0005】
しかしながら、装置によっては装置起動時に僅かでも動くとワークやジグ類等を破損させてしまう装置もあり、そのような場合には上記簡易型のアブソリュート型リニアエンコーダを適用できないという問題があった。
【0006】
一方、全く動かなくてもよいアブソリュート型リニアエンコーダの提案も多くなされている。そのようなアブソリュート型リニアエンコーダを開示するものとして、例えば、特許文献2、特許文献3等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−68978号公報
【特許文献2】特開平03−274414号公報
【特許文献3】特開2005−121593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の構成によると次のような問題があった。
すなわち、上記特許文献2、特許文献3に開示されているアブソリュート型リニアエンコーダの場合には、信頼性の確保が不十分であってコストが高く、又、検出ヘッドのコンパクト化が困難であるという問題があった。具体的に説明すると、まず、上記特許文献2に記載されているアブソリュート型リニアエンコーダの場合には、1ビットエラー或いは奇数項のエラーについてはこれを検出することはできるが、2ビットエラー或いは偶数項のエラーについてはこれを検出することができないという問題があった。又、全てのビットのエラー検出を行うためには必要ビット数の約2倍のビット長の検査が必要であり、その為多くのセンサー(受光素子)が必要となってしまい、コンパクト化及び低コスト化が困難になってしまうという問題もあった。
又、特許文献3に記載された発明の場合には、コンパクトなセンサー部が開示されているが、その場合には所定の検出に必要なビット数分の受光素子しか搭載されておらず、結局、限定的なエラー検出ができるだけであった。
又、特許文献2に記載された発明の場合には、そこに開示されているエラー検出方法によってエラーが検出された場合、装置が停止したままとなってしまうという問題もあった。
因みに、本件特許出願人は、特許文献4に示すように、この種の問題を解決するものとして別の特許出願を行っている。
【0009】
【特許文献4】特開2010−217160号公報
【0010】
しかしながら、さらに安定した信頼性を確保するためには、光学系の改善によってより大きな光学信号のコントラストが得られることが望ましい。すなわち、光学信号のより大きなコントラストは、光学検出器によってより大きな信号出力に変換され、それがその後の工程において信号処理の安定化や信頼性の向上につながるからである。
【0011】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、光学系の改善によってより大きな光学信号のコントラストを得られるように工夫し、それによって、その後の工程において信号処理の安定化や信頼性の向上を図ることが可能なエンコーダとそのエンコーダを搭載したアクチュエータを提供することにある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するべく本願発明の請求項1によるエンコーダは、光学検出器と光源の間に遮光板を設け、その遮光板が上記光学検出器に寄った位置に設置されていることを特徴とするものである。
又、請求項2によるエンコーダは、請求項1記載のエンコーダにおいて、上記遮光板が上記光学検出器に接していることを特徴とするものである。
又、請求項3によるエンコーダは、請求項2記載のエンコーダにおいて、上記遮光板はバネ性を有していて、上記光学検出器に取付けられていることを特徴とするものである。
又、請求項4によるエンコーダは、請求項3記載のエンコーダにおいて、上記遮光板は上記光学検出器の両側を遮光するものであることを特徴とするものである。
又、請求項5によるエンコーダは、請求項4記載のエンコーダにおいて、上記光学検出器は1個で2種類のスケールを読み取ることができるものであることを特徴とするものである。
又、請求項6によるエンコーダは、請求項5記載のエンコーダにおいて、上記遮光板は1個の光学検出器に被冠・固定されるものであることを特徴とするものである。
又、請求項7によるアクチュエータは、請求項1〜請求項6の何れかに記載のアブソリュート型リニアエンコーダを用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、本願発明の請求項1によるエンコーダによると、光学検出器と光源の間に遮光板を設け、その遮光板が上記光学検出器に寄った位置に設置されている構成になっているので、まず、迷光を低減させることができ、それによって、信号のコントラストを改善させ、その後の工程において信号処理の安定化や高信頼性化を図ることが可能となる。又、遮光板は光学検出器寄りに設置されているので、上記効果をより確実なものとすることができる。
又、請求項2によるエンコーダによると、請求項1記載のエンコーダにおいて、上記遮光板が上記光学検出器に接している構成になっているので、上記効果を奏することができることはもとより、遮光板の位置決め等が容易になる。
又、請求項3によるエンコーダによると、請求項2記載のエンコーダにおいて、上記遮光板はバネ性を有していて、上記光学検出器に取付けられている構成になっているので、光学検出器に対する遮光板の位置決めおよび保持が確実なものとなる。
又、請求項4によるエンコーダによると、請求項3記載のエンコーダにおいて、上記遮光板は上記光学検出器の両側を遮光するものとして構成されているので、少ない数の遮光板で事足りることになる。
又、請求項5によるエンコーダによると、請求項4記載のエンコーダにおいて、上記光学検出器は1個で2種類のスケールを読み取ることができる構成になっているので、上記構成と相まって構成の簡略化を図ることができる。
又、請求項6によるエンコーダによると、請求項5記載のエンコーダにおいて、上記遮光板は1個の光学検出器に被冠・固定される構成になっているので、遮光板の位置決め・取り付けが容易化される。
又、請求項7によるアクチュエータによると、請求項1〜請求項6の何れかに記載のアブソリュート型リニアエンコーダを用いた構成になっているので、低コストで信頼性の高いアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、アクチュエータの構成を示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、アブソリュート型リニアエンコーダの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、LSFRの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図4(a)は光学検出器と光源の構成を示す側面図、図4(b)は図4(a)のb−b矢視図、図4(c)は図4(a)のc−c断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態を示す図で、図5(a)は光学検出器と光源の構成を示す側面図、図5(b)は図5(a)のb−b矢視図、図5(c)は図5(a)のc−c断面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態を示す図で、図6(a)は光学検出器と光源の構成を示す側面図、図6(b)は図6(a)のb−b矢視図、図6(c)は図6(a)のc−c断面図、図6(d)は遮光板の拡大平面図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態を示す図で、図7(a)は光学検出器と光源の構成を示す側面図、図7(b)は図7(a)のb−b矢視図、図7(c)は図7(a)のc−c断面図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態を示す図で、図8(a)は遮光板の平面図、図8(b)は図8(a)のb−b矢視図、図8(c)は図8(a)のc−c矢視図、図8(d)は遮光板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1乃至図4を参照して本発明の第1の実施の形態を説明する。この実施の形態は本願発明を一軸アクチュエータに適用した例を示すものである。図1は本実施の形態によるアクチュエータの全体の構成を示す平面図であり、まず、ハウジング1がある。このハウジング1にはスライダ3が図1中左右方向(矢印a方向)に移動可能な状態で取り付けられている。上記ハウジング1内にはボールねじ5が内装されていると共に駆動モータ7が設置されている。上記ボールねじ5は上記駆動モータ7の出力軸に連結されていて、駆動モータ7によって回転・駆動されるように構成されている。
尚、図示したアクチュエータはボールねじ5と駆動モータ7の出力軸が一体化されたものであるが、そのような構成のアクチュエータに限定されるものではない。
【0016】
上記ボールねじ5には図示しないボールナットがその回転を規制された状態で螺合・配置されている。既に説明したスライダ3はこのボールナットに固着されている。上記ハウジング1にはガイド9、11が設置されていて、これらガイド9、11によって上記スライダ3の図1中左右方向(矢印a方向)への移動をガイドする。そして、駆動モータ7を適宜の方向に回転させることによりボールねじ5が同方向に回転し、それによって、ボールナットを介してスライダ3が上記ガイド9、11によってガイドされながら図1中左右方向(矢印a方向)に移動する。
【0017】
上記ガイド11側にはリニアスケール部21が設置されており、一方、上記スライダ3には検出ヘッド部23が取り付けられている。又、アクチュエータに対して離間した場所にはコントローラ部25が設置されている。
【0018】
次に、上記リニアスケール部21、検出ヘッド部23、コントローラ部25の構成について詳しく説明する。図2は図1の中から上記リニアスケール部21、検出ヘッド部23、コントローラ部25を抽出して示す図である。まず、リニアスケール部21は、位相検出用リニアスケール31とPN符号系列アブソリュートリニアスケール33とから構成されている。上記PN符号系列アブソリュートリニアスケール33だけでも必要な機能を奏することは可能であるが、PN符号系列アブソリュートリニアスケール33の分解能はアブソリュート信号の1ビットに等しく、よってPN符号系列アブソリュートリニアスケール33だけで長いストロークと高分解能を両立させることは応答速度やコスト面で困難である。
そこで、本実施の形態の場合には、ややラフな幅のPN符号系列アブソリュートリニアスケール33を用いて、ストロークに対して必要PN符号系列ビット数を適度に抑え、且つ、アブソリュート1ビットをさらに高分解能に分割できる位相検出用リニアスケール31を別途設けているものである。
因みに、ストローク2.6mで分解能0.1μmを実現するためには、アブソリュート1ビット幅80μmで15ビットのPN符号系列で800分割(位相0.45°)可能な位相検出用リニアスケール31が必要となる。
【0019】
上記位相検出用リニアスケール31は縞状をなしていて、例えば、80μmピッチの光学反射式のものとして構成されている。すなわち、上記位相検出用リニアスケール31は、40μmの高反射率領域31aと40μmの低反射領域31bが交互に配置されて連なった構成をなしている。
【0020】
一方、上記PN符号系列アブソリュートリニアスケール33は1ビットが80μmに構成されていて、高反射率領域33aと低反射領域33bがPN符号系列に基づいて配置された構成になっている。
尚、図2ではアブソリュートリニアスケール33のパターンを、説明を容易にするために、PN符号系列に1:1に対応するように、高反射率領域(黒)33aと低反射率領域(白)33bにて表示しているが、本実施の形態におけるアブソリュートリニアスケール33ではPN符号系列に狭帯域化のために変調を施している。
上記PN符号系列は擬似ランダム系列(Pseudo Random Noise、その一部はM系列とも呼ばれる)である。この擬似ランダム系列とは、例えば、スペクトラム拡散通信、白色雑音生成、暗号化、エラー訂正等に広く使われているものである。
【0021】
又、上記PN符号系列の生成にはLFSR(Linear Feedback Shift Register)と称されるシフトレジスタが使用される。このシフトレジスタは、図3に示すような構成になっており、XORゲート(又は、XNORゲート)50によって帰還をかける構成になっている。
尚、このLFSRについては追って詳細に説明する。
【0022】
図2に戻って検出ヘッド部23側の構成をみてみると、まず、上記位相検出用リニアスケール31に対応する位相検出用リニアスケール用光学検出器(CMOSリニアアレイを使用したもの)35と、PN符号系列アブソリュートリニアスケール33に対応するPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器(CMOSリニアアレイを使用したもの)37が夫々設置されている。上記位相検出用リニアスケール31と位相検出用リニアスケール用光学検出器35とによって位相検出リニアスケール部を構成している。又、上記PN符号系列アブソリュートリニアスケール33とPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37とによってアブソリュートリニアスケール部を構成している。
【0023】
上記位相検出用リニアスケール用光学検出器35とPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37は、図4に示すような状態で設置される。図4中符号39はLED光源であり、図4に示す構成においては、2個のLED光源39、39が設置されている。このLED光源39より位相検出用リニアスケール31に対してLED光を投光する。位相検出用リニアスケール31にて反射した光は上記位相検出用リニアスケール用光学検出器35によって受光される。これは、上記PN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37の場合も同様である。すなわち、LED光源39よりPN符号系列アブソリュートリニアスケール33に対してLED光が投光される。PN符号系列アブソリュートリニアスケール33にて反射した光は上記PN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37によって受光されることになる。位相検出用リニアスケール31、PN符号系列アブソリュートリニアスケール33の反射率に応じて位相検出用リニアスケール用光学検出器35、PN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37に入光する光の強度が異なり、これにより位相検出用リニアスケール31、PN符号系列アブソリュートリニアスケール33の信号パターンを読むことができる。
因みに、PN符号系列アブソリュートリニアスケール33の低反射率領域33bで反射される光強度は低くPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37では低強度と検出され、信号「0」を検出することができ、高反射率領域33aで反射される光強度は高くPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37では高強度と検出され、信号「1」を検出することができる。
【0024】
尚、図4の光学系では、位相検出用リニアスケール用光学検出器35やPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37上の信号ピッチは、位相検出用リニアスケール31やPN符号系列アブソリュートリニアスケール33上のピッチの約2倍に拡大されるが、図2の模式図ではわかり易くするために、位相検出用リニアスケール31やPN符号系列アブソリュートリニアスケール33と位相検出用リニアスケール用光学検出器35やPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37の信号は等倍で上下対応するように記載してある。
【0025】
又、本実施の形態では、上記位相検出用リニアスケール用光学検出器(CMOSリニアアレイを使用したもの)35、PN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器(CMOSリニアアレイを使用したもの)37として、プリント基板の上に汎用のパッケージ品のCMOSリニアアレイ及び汎用パッケージ品のチップLEDを表面実装したものを用いている。このような汎用品を用いることにより低コストで製造することができる。又、図4において、LED光源39が2個搭載されているのは、上記位相検出用リニアスケール用光学検出器(CMOSリニアアレイを使用したもの)35、PN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器(CMOSリニアアレイを使用したもの)37に比べ寿命の短いLED光源39が劣化した場合、他方のLED光源39に切り換えることができるようにするためである。又、2個のLED光源39を切り換えることにより、LED光源39の照射領域を拡大することもできる。
【0026】
又、本実施の形態における上記位相検出用リニアスケール31とPN符号系列アブソリュートリニアスケール33は、PETフィルムの上に熱転写印刷により、アルミ蒸着層の熱転写、さらに、その上に黒色インクの熱転写印刷を行うことにより、アルミ蒸着層による高反射領域と黒インクによる低反射領域により、位相検出用リニアスケール31の繰り返しパターンとPN符号系列アブソリュートリニアスケール33のPN信号系列(変調)パターンを形成している。
【0027】
又、図2に示すように、上記検出ヘッド部23には、位相演算器41、絶対位置データ演算器43、絶対位置データ構成器45、トランシーバ47が設置されている。又、上記コントローラ部25には、トランシーバ49、コントローラ51が設置されている。又、上記絶対位置データ演算器43では、LFSRを介して合致する絶対位置を検出しているが、予め作成されている信号データと絶対位置の対応表より求めても良い。
【0028】
そして、PN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37より出力された信号は絶対位置データ演算器43に入力され、その絶対位置データ演算器43においてアブソリュートビット単位の絶対位置が求められる。一方、位相検出用リニアスケール用光学検出器35より出力された信号は位相演算器41に入力され、その位相演算器41によりアブソリュート1ビットを360度とした位相が演算され、さらに高分解能の情報が得られる。絶対位置データ構成器45では、絶対位置データ演算器43と位相演算器41より求められた結果を結合して長ストロークで、且つ、高分解能の絶対位置データを演算・出力する。上記高分解能の絶対位置データはトランシーバ47、トランシーバ49を介してコントローラ51に入力される。コントローラ51はその入力した高分解能の絶対位置データに基づいて駆動モータ7を制御してスライダ3を位置決めするものである。
【0029】
尚、本実施の形態におけるアブソリュート型リニアエンコーダは、既に説明したように、位相検出用リニアスケール部とアブソリュートリニアスケール部の二つのエンコーダ機能を持っている。前述したように、本来アブソリュートリニアスケール部のみであっても必要な機能を得ることはできるが、アブソリュートリニアスケール部の長ストローク化と高分解能化で応答速度を上げ、且つ、低コスト化することは困難であった。そこで、本実施の形態の場合には、位相検出用リニアスケール部を設け、アブソリュート1ビットをさらに高分解能分割することにより、ややラフな幅のアブソリュートビットを用いることができ、それによって、高分解能、高応答速度で且つ低コストのアブソリュート型リニアエンンコーダを実現しているものである。
以上が本実施の形態によるアクチュエータ及びそこに使用されているアブソリュート型リニアエンコーダの概略の構成である。以下、各部の構成をその作用・効果を交えながら説明する。
【0030】
まず、前述したLFSRについて詳細に説明する。LFSRは、図3に示されているように、15個(0〜14の15ビット)のシフトレジスタによって構成されている。このような構成をなすLFSRにおいて、発生可能なPN符号系列の周期長(PN符号系列長、L)は次の式(I)に示すようなものである。
L=2−1―――(I)
但し、
L:PN符号系列長
m:ビット数(検出連続信号数)
である。
PN符号系列は二値「0/1(ここでは白黒)」の擬似ランダム系列の一つであって、比較的短い連続したm個の信号によって長大な信号周期(L)を得ることができる信号系列である。例えば、m=15個であればPN符号系列長(L)は、既に説明した式(I)によれば、次の式(II)に示すようなものとなる。
L=215−1=32767―――(II)
又、本実施の形態における上記LFSRの場合には、前述したように、0ビットと1ビットの信号がXORゲート50を介して14ビットへフィードバックされるように構成されている。
【0031】
図2に示した位相検出用リニアスケール31は、既に説明したように、80μmピッチである。又、PN符号系列アブソリュートリニアスケール33も1ビットが80μmであり、よって、m=15でのPN符号系列アブソリュートスケール33のストローク(S)は次の式(III)に示すようなものとなる。
S=80μm×32767=約2.6m―――(III)
尚、式(I)、(II)から明らかなように、アブソリュートリニアスケール部側のPN符号系列の上記検出連続信号数mを増加させることにより長いストロークが実現できる。
【0032】
上記PN符号系列アブソリュートリニアスケール33からの信号検出には、既に説明したように、PN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37を使用しているが、このPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37はストロークに対して必要なPN符号系列ビット数以上の検出素子が必要となる。例えば、前記の例では、ストローク2.6mに対して15ビットのPN符号系列が必要であり、検出素子は15個以上必要となる。このようにアブソリュート用検出器37は多くの検出素子を必要とし、そのコンパクト化のためには専用の半導体ICを開発して使用される。しかしながら、専用の半導体ICは非常に高価という難点がある。一方CMOSリニアアレイはチャージアンプにより出力を増大させることできるため受光面積を小さくしても容易に出力を確保でき信頼性が高く、又、小型で低コストである。そこで、本実施の形態の場合には、汎用のCMOSリニアアレイを用いることにより、コンパクト化と低コスト化を実現するようにしている。
【0033】
上記CMOSリニアアレイは、例えば、12.5μmピッチで512個の検出素子が並んでいる検出器であり、多くの検出素子を内蔵している。又、その信号出力を同時に行うことはできず1個ずつの信号出力となるため、例えば、512個の検出素子の信号出力を得ようとすると、略500倍の時間を要することになり、よって、高速の信号出力が困難である難点がある。そこで、本実施の形態の場合には、連続的に(あるいは極めて短時間応答で)位置データを出力する方式ではなく、ある一定時間間隔(またはある応答時間)にて位置データを出力する方式を用いることにより、ある一定サンプリング時間内にてCMOSリニアアレイの検出素子の出力を得てエラーチェックや絶対位置データの演算等を行う方式を採用している。
【0034】
例えば、CMOSリニアアレイの検出素子1つ当りの出力時間が170nsec(6MHz)であれば、全検出素子512個の出力を得るのに略100μsec(10KHz)要することになる。よって、他のロス時間を無視すると、この略10KHzが最大応答周波数となる。この応答周波数は高々100Hz程度のアクチュエータの応答周波数に比べ十分高応答であり実用上十分である。
【0035】
又、位相検出用リニアスケール31は、図2に示すように、PN符号系列アブソリュートリニアスケール33の1ビットをさらに分割し高分解能を得るものであり、既に説明したように、PN符号系列アブソソリュートリニアスケール33の1ビットに対して略1/2ビットの高反射率部31aと略1/2ビットの低反射率部31bが対応する構成になっている。PN符号系列アブソリュートリニアスケール33の1ビットを360度とした時、これら高反射率部31a、低反射率部31bよりの光反射強度が略正弦波1周期(360度)になるよう位相検出用リニアスケール用光学検出器35によって検出する。
【0036】
又、位相検出用リニアスケール用光学検出器35においては少なくとも2個の検出素子が必要であり、互いに略90度の位相差(アブソリュート1/4ビット相当)を持つものである。そして、90度位相差を持つ2個の信号強度が得られれば、次の式(IV)、(V)に基づいて位相演算器41によって位相が算出される。
tanθ=sinθ/cosθ
={α・sinθ}/{α・sin(θ−90°)}―――(IV)
θ=arctan-1θ ―――(V)
【0037】
そして、アブソリュート1ビット内における位置が位相で求められる。アブソリュート1ビットが360度に相当するので、例えば、位相45度が算出されたら、次の式(VI)に示すような位置となる。
80μm×45°/360°=10μm―――(VI)
つまり、アブソリュート1ビットの内側10μmの位置ということになる。このようにして位相検出用リニアスケール部を用いてややラフなアブソリュートスケール部の分解能を向上させることができるものである。
【0038】
ところで、位相検出用リニアスケール用検出器35においては、既に説明したように、少なくとも2個のお互いに略90度位相差を持つ検出素子が必要であり、そのコンパクト化のためには専用の半導体ICを開発し用いるのが一般的である。しかしながら、専用の半導体ICは非常に高価という難点がある。そこで本実施の形態では、前述したPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37の場合と同様に汎用のCMOSリニアアレイを用いることによってコンパクト化と低コスト化を実現している。CMOSリニアアレイは、例えば、12.5μmピッチで512個の検出素子が並んでいる検出器であって多くの検出素子を内蔵しており、2個の略90度位相差の検出素子のみではなく、多数組の略90度位相差を持つ検出素子を用いることができる。各組の検出素子は位相差が等しく(360度の整数倍)、1組に多くの検出素子を用いて平均化することによって信号出力の安定化を図ることができる。例えば、位相検出用リニアスケール31のある箇所にゴミ付着等により信号出力が劣化してもより広い範囲にわたり平均化していればそのゴミの影響は軽微なものとすることができる。又、夫々の組と180°位相差を持つ検出素子を設けることにより、各信号出力との差動をとることができるので、信号出力の増大や外乱安定性を増加させることができる。
【0039】
又、狭ピッチの多くの検出素子を内蔵しているので、PN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37との対応付けも容易にできる。PN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37の固定位置と位相検出用リニアスケール用光学検出器35の固定位置が検出器の実装ばらつきに起因してずれた場合には、位相検出用リニアスケール用光学検出器35における選択する検出素子をずれ量だけずらして選択することによって調整することができる。例えば、選択する検出素子が何番目の出力かFPGA(Field Programable Gate Array)のソフトを書き替えてやれば良い。
【0040】
前述したように、本実施の形態では、アブソリュートスケール部と位相用検出用スケール部との2つのスケール部を用いることにより、ややラフな幅のアブソリュートビットを用いて適度なPN符号系列ビット数にて長ストロークを実現すると共に、位相検出用スケール部によりアブソリュート1ビットを更に位相分割し高分解能も実現している。これらを低コストかつコンパクトに実現するために、各検出器、すなわち、位相検出用リニアスケール用光学検出器35とPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37としてCMOSリニアアレイを使用している。前記したようにCMOSリニアアレイは多くの検出素子を内蔵していて高速での信号出力は困難である。そこであるサンプリング時間内にて検出素子の出力を得て絶対位置データ演算等を行う方式を用いることにより、低コストでかつコンパクトでありながら適度な応答周波数を確保している。
【0041】
したがって、図2に示す絶対位置データ構成器45からの出力は連続的ではなくあるサンプリング時間で更新される間欠的なものとなっている。よって、絶対位置データ構成器45より受信したデータをコントローラ51側に送信するトランシーバ47は適度な送信ビットレートで十分であり、省配線化できるシリアル通信用トランシーバが望ましい。
【0042】
又、図4に示すように、位相検出用リニアスケール用光学検出器35とLED光源39と間、PN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37と光源39との間には、コ字型であって薄板製の遮光板51、53が設置されている。これら遮光板51、53を設置することにより、位相検出用リニアスケール用光学検出器35とPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37への迷光の入射を軽減させ、それによって、光学信号のコントラストの低下を防止し、その後の工程において信号処理の安定化や信頼性の向上を図ることができるように工夫している。
【0043】
上記遮光板51、53について詳しく説明する。上記 遮光板51、53は、上記したように、コ字型であって薄板製となっており、位相検出用リニアスケール用光学検出器35と一方のLED光源39と間、PN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37と他方のLED光源39との間に設置されている。上記遮光板51、53をコ字型に成形しているのは、薄板製であるため自立が困難であることに基づくものであり、薄板の両端を折り曲げることにより自立できるようにしたものである。又、上記 遮光板51、53は、例えば、接着剤によって、検出ヘッド部23上に接着・固定されている。
【0044】
又、上記遮光板51、53は、例えば、ステンレス等の金属製、又は、ポリアセタール樹脂等の樹脂製である。又、上記遮光板51、53の表面は光を反射し難いように鏡面ではなく艶消しの状態が望ましく、又、色は黒色または灰色が望ましい。又、本実施の形態において使用しているLED光源39は、微小な発光部(例えば、直径数10μm)から全方向に放射状に光が放出する擬似点光源である。したがって、図4に示すように、LED光源39から出た光が、位相検出用リニアスケール31やPN符号系列アブソリュートリニアスケール33にて反射され、その反射光が位相検出用リニアスケール用光学検出器35やPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37に入射するといった理想的な経路を経由する光ばかりではなく、様々な箇所にて反射されて、位相検出用リニアスケール用光学検出器35やPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37に入射される(これが「迷光」である。)。このように、位相検出用リニアスケール用光学検出器35やPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37には、理想的な経路にて反射された信号光と迷光の両方が入射されることとなり、迷光が多いと信号光のコントラスト低下が生じ,検出される信号品質の劣化を生じることになる。
【0045】
そこで、本実施の形態においては、上記遮光板51、53を設置しているものである。すなわち、遮光板51、53を設置することにより、上記迷光を減じて信号光のコントラストを改善させようとするものである。また、本実施の形態では、擬似点光源であるLED光源39を使用しているので、例えば、LED光源39が少し傾いた状態で取り付けられていても、あらゆる方向に光を放射しているので、光源としての性能は十分に担保されるものである。そのため、LED光源39、位相検出用リニアスケール用光学検出器35、PN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器39の検出ヘッド23への取付姿勢、および検出ヘッド23のアクチュエータへの取付姿勢、位相検出用リニアスケール31、PN符号系列アブソリュートリニアスケール33のアクチュエータへの取付姿勢(ローリング、ピッチング、ヨーイング)に対して比較的大きな許容領域を持つことができる。
【0046】
又、遮光板51、53をLED光源39側に近づけ過ぎると、擬似点光源であるLED光源39の多くの部分を遮断してしまうことになり、上記取付姿勢許容領域を制限してしまうことになる。又、LED光源39に近いところに設置された遮光板51、53では、より強い光を遮光することになるので、反射率を低減させた遮光板51、53であってもかなりの光が反射され、それらは迷光へと繋がることになる。そこで、遮光板51、53は、位相検出用リニアスケール用光学検出器35とLED光源39と間、N符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37とLED光源39との間であって、位相検出用リニアスケール用光学検出器35とPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37に寄った位置に設置されていることが望ましい。
【0047】
以上、本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、位相検出用リニアスケール用光学検出器35とLED光源39と間、PN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37とLED光源39との間に、遮光板51、53を設置しているので、いわゆる迷光を低減させることができ、それによって、信号光のコントラストを改善させ、その後の工程において信号処理の安定化や高信頼性化を図ることが可能となる。
又、上記遮光板51、53は、上記位相検出用リニアスケール用光学検出器35と一方のLED光源39と間、N符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37と他方のLED光源39との間であって、位相検出用リニアスケール用光学検出器35とPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37に寄った位置に設置されているので、上記効果をより確実なものとすることができる。
又、上記遮光板51、53はコ字型をなしていて自立性が高められているので、位置決め、接着剤を使用した接着・固定作業も容易である。
又、本実施の形態では、光源として、擬似点光源であるLED光源39を採用しているので、遮光板51、53を光学検出器35,37寄りに配置することで検出ヘッド23の取付姿勢や位相検出用リニアスケール31、PN符号系列アブソリュートリニアスケール33の取付姿勢(ローリング、ピッチング、ヨーイング)に対して比較的大きな許容領域を持つことができる。
【0048】
次に、図5を参照して本発明の第2の実施の形態を説明する。
尚、前記第1の実施の形態の場合と同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
この第2の実施の形態の場合には、図5に示すように、薄板の片側を折り曲げL字型とした遮光板61、63を、位相検出用リニアスケール用光学検出器35の側面とPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37の側面にそれぞれ貼り付けた状態で設置した構成になっている。
その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同じであるのでその説明は省略する。
【0049】
L字型の遮光板61、63を、位相検出用リニアスケール用光学検出器35とPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37にそれぞれ貼り付けたのは、次のような理由による。すなわち、位相検出用リニアスケール用光学検出器35と一方のLED光源39との間、PN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37と他方のLED光源39との間に遮光板を位置精度よく設置するためには、何等かの機械的な位置決め突起などが不可欠であると考えられる、しかしながら、そのような位置決め突起を設けようとすると、そのための設置スペースも必要となり、又、コストも掛かってしまう。
【0050】
そこで、本実施の形態の場合には、位相検出用リニアスケール用光学検出器35とPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37の側面にL字型の遮光板61、63を貼り付けたものである。それによって、別途位置決め突起を設けることなく高精度の位置決めが可能となったものである。又、L字型としているので、遮光板61、63をヘッド取付部23に対して直角に設置することが容易になるという利点もある。
【0051】
次に、図6を参照して本発明の第3の実施の形態を説明する。
尚、前記第1の実施の形態の場合と同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
この第3の実施の形態の場合には、図6(特に、図6(d))に示すように、薄板の両側を折り曲げコ字形状より口をさらに狭くしバネ性を持たせた遮光板71、73を使用し、それら遮光板71、73を位相検出用リニアスケール用光学検出器35とPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37にそれぞれ嵌合・固定したものである。
その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同じであるのでその説明は省略する。
【0052】
前記第2の実施の形態の場合には、接着剤が硬化するまで、遮光板61、63を押さえておく必要があった。これに対して、本実施の形態の場合には、遮光板71、73自身がバネ性を備えているので、単に、遮光板71、73を位相検出用リニアスケール用光学検出器35とPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37にそれぞれ嵌合させるだけで固定することができる。又、仮に、接着剤を使用して接着・固定する場合であっても、そのバネ性で位相検出用リニアスケール用光学検出器35とPN符号系列アブソリュートリニアスケール用光学検出器37に対する嵌合状態は保持されているので、接着剤が硬化するまでを待つ必要はないという利点がある。
【0053】
次に、図7及び図8を参照して本発明の第4の実施の形態を説明する。
尚、前記第1の実施の形態の場合と同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
この第4の実施の形態の場合には、図8に示すようなバネ性を有するコ字形状の遮光板81を単一の光学検出器91の上から被冠・固定させるような構成になっている。又、上記光学検出器91を挟むように、LED光源93、95、97、99が設置されている。そして、図7に示すように、上記光学検出器91の両側の遮光を単一の遮光板81によって同時に行うように構成されている。
【0054】
以下、詳細に説明する。上記遮光板81は、図8(特に、図8(c)、図8(d))に示すように、開口側が狭い断面コ字型となっており、これを単一の光学検出器91に被冠・固定させるものであり、遮光板81は自身のバネ性で光学検出器91に弾性・保持されることになる。又、接着剤を併用して保持信頼性を高める子も考えられる。また、図8(a)に示すように、遮光板81には大きな開口81aが形成されていて、この開口81aを介して光が入射するように構成されている。又、その両側の側面81b、81cが遮光機能を発揮する部位となっている。
因みに、図8に示した遮光板81は、厚み0.1mmのステンレス鋼薄板(SUS304)を打ち抜き、曲げ加工を施して製作したものであり,表面処理はつや消しの黒色クロムメッキを施している。
尚、これはあくまで一例であり、材質や表面処理はこれに限定されるものではなく、例えば、材質は鋼板、リん青銅板、樹脂板でもよく、表面処理は黒ニッケルメッキでも黒色つや消し塗装でも良い。
その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同じであるのでその説明は省略する。
【0055】
そして、この第4の実施の形態の場合には、遮光板81の左右両側から入射する光を側面81b、81cによって遮光できるので、図7に示すように、1つの光学検出器91により、左右両側からの光信号を切り換えて検出することができ、高価な光検出器の使用個数を半減させることができる。例えば、PN符号系列アブソリュートリニアスケール33の信号読み出し時にはLED光源97(又は、LED光源99)のみを点灯することにより読み出す。又、位相検出用リニアスケール31の信号読出し時にはLED光源93(又は、LED光源95)のみを点灯することにより読み出すことができる。
【0056】
尚、本発明は前記第1〜第4の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、前記第1〜第4の実施の形態の場合には、検出連続信号数mはここでは主に15を用いたが、アブソリュートリニアエンコーダの必要な分解能およびストロークで最適なmの値は変わってくる。例えば、より長いストロークではm=16〜18が適している場合もある。
又、前記第1〜第4の実施の形態の場合には、低コストであるが故にCMOSリニアアレイを用いた例を挙げて説明したが、例えば、CCDリニアアレイ等を用いてもコストは高くつくが、同様の効果は期待できる。
又、本実施例ではアブソリュートリニアエンコーダに適用した例を挙げたが、インクリメンタルエンコーダやロータリーエンコーダ等にも適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、エンコーダとそのエンコーダを使用したアクチュエータに係り、特に、光学系の改善によってより大きな光学信号のコントラストを得られるように構成し、それによって、その後の工程において信号処理の安定化や信頼性の向上を図ることができるように工夫したものに関し、例えば、精密位置決めシステムに好適である。
【符号の説明】
【0058】
1 ハウジング
3 スライダ
5 ボールネジ
7 駆動モータ
9 ガイド
11 ガイド
21 リニアスケール部
23 検出ヘッド部
25 コントローラ部
31 位相検出用リニアスケール
33 アブソリュートリニアスケール
35 位相検出用リニアスケール用光学検出器
37 アブソリュートリニアスケール用光学検出器
41 位相演算器
43 絶対位置データ演算器
45 絶対位置データ構成器
47 トランシーバ
49 トランシーバ
51 コントローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学検出器と光源の間に遮光板を設け、その遮光板が上記光学検出器に寄った位置に設置されていることを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
請求項1記載のエンコーダにおいて、
上記遮光板が上記光学検出器に接していることを特徴とするエンコーダ。
【請求項3】
請求項2記載のエンコーダにおいて、
上記遮光板はバネ性を有していて、上記光学検出器に取付けられていることを特徴とするエンコーダ。
【請求項4】
請求項3記載のエンコーダにおいて、
上記遮光板は上記光学検出器の両側を遮光するものであることを特徴とするエンコーダ。
【請求項5】
請求項4記載のエンコーダにおいて、
上記光学検出器は1個で2種類のスケールを読み取ることができるものであることを特徴とするエンコーダ。
【請求項6】
請求項5記載のエンコーダにおいて、
上記遮光板は1個の光学検出器に被冠・固定されるものであることを特徴とするエンコーダ
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れかに記載のエンコーダを用いたことを特徴とするアクチュエータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−242313(P2012−242313A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114428(P2011−114428)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(391008515)株式会社アイエイアイ (107)
【Fターム(参考)】